説明

燃料電池システムの電力供給装置

【課題】発電効率及び信頼性を向上することができる燃料電池システムの電力供給装置を提供する。
【解決手段】燃料電池11の出力端子14,15に対し、DC/DCコンバータ18及びインバータ23を直接に接続する。該インバータ23のアルミニウム製の出力端子25にアルミニウム製の一次側コイル29を接続する。モータ27の銅製の入力端子36に接続された入力端子に銅製の二次側コイル35を接続する。インバータ23から出力される交流電流を電磁誘導作用によって、一次側コイル29から二次側コイル35に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用の燃料電池システムにおける電力供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の発電セルを積層した燃料電池スタックにおいては、燃料である水素と酸化ガスである空気中の酸素とが反応ガスとして供給されて電気化学反応により発電される。
燃料電池スタックは、例えば電動車両の電源装置として用いられ、燃料電池スタックから出力された直流電圧がDC/DCコンバータで昇圧され、昇圧された直流電流がインバータで交流電流に変換され、この交流電流が車輪駆動用のモータに供給されて車両の走行が行われる。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池スタックには、電力を取り出すための正極及び負極の出力端子が備えられ、両出力端子にはバスバーがそれぞれ接続されている。両バスバーは前記DC/DCコンバータの正極及び負極の入力端子に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−272458号公報(明細書の段落0038及び図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の特許文献1も含めて、従来構成においては、次のような問題があった。
すなわち、一般に燃料電池スタックのケースやスタック内のセルのケースはアルミニウムで形成されている。そして、前記出力端子はアルミニウムにより形成され、バスバーは銅により形成されており、従って、前記出力端子とバスバーとは異種金属が接触された状態となる。このため、端子の接続部分に異種金属接触腐食が生じる。このため、該接触界面における電気抵抗が増大して、エネルギーロスが生じるという問題があった。この腐蝕の問題を解消するために出力端子またはバスバーに腐蝕防止用の鍍金が施す対策が講じられていたが、この場合には鍍金の経年劣化により、やはり前記のような問題が生じるおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、異種金属接触腐食を防止することができる燃料電池システムの電力供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池の両端に設けられた正極及び負極の出力端子にインバータの入力端子を同系導電材よりなる導電線により接続し、前記インバータの出力端子と、負荷側の電気機器の入力端子との間に非接触の接続手段を設けていることを要旨とする。
【0008】
前記の構成において、燃料電池の正極及び負極の出力端子に入力端子を同系金属よりなる導電線によりインバータを接続してもよい。
前記の構成において、前記接続手段は、インバータの出力端子に接続された一次側コイルと、前記電気機器の入力端子に接続された二次側コイルとにより構成されていることが望ましい。
【0009】
前記の構成において、前記一次側コイルまたは二次側コイルには、コイルの巻数を変更する巻数変更手段が設けられていることが望ましい。
前記の構成において、前記燃料電池の出力端子とインバータの入力端子との間には、DC/DCコンバータが接続されていることが望ましい。
【0010】
(作用)
この発明の燃料電池システムの電力供給装置においては、前記インバータの出力端子と、負荷側の電気機器の入力端子との間に非接触の接続手段を設けた。このため、前記出力端子と入力端子とを異種金属接触させる必要がなく、両端子の異種金属接触による接触界面の腐蝕が回避される。従って、インバータから電気機器への電力の供給が円滑に行われる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、異種金属接触腐食を防止することが可能になるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の燃料電池システムの電力供給装置を具体化した一実施形態を示すブロック回路図。
【図2】(a)は接続装置の拡大断面図、(b)は一部拡大断面図。
【図3】この発明の別の実施形態を示す略体図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明を具体化した燃料電池システムの電力供給装置の一実施形態を図面に従って説明する。この燃料電池システムは、車両の車載電源システムとして用いられる。
燃料電池11は、そのケース内に多数の燃料電池セル(図示しない)を電気的に直列接続した状態で内装して構成されている。この燃料電池11のケース及び燃料電池セルのケースはアルミニウムで構成されている。なお、この実施形態において、アルミニウムとは、アルミニウム合金を含むものとする。燃料電池11には空気中の酸素を該電池11に供給するための空気供給系12が接続されるとともに、水素を供給するための水素供給系13が接続されている。そして、燃料電池11に供給された反応ガスとしての酸素と水素が各燃料電池セル内で電気化学的に反応して発電が行われる。
【0014】
前記燃料電池11の両端部にはアルミニウム製の正極側の出力端子14と負極側の出力端子15が設けられている。両出力端子14,15には電力を供給するとともに、供給された電力を活用するための電力系16が接続されている。前記空気供給系12、水素供給系13及び電力系16には、システム全体を統括して制御する制御装置17が接続されている。
【0015】
次に、前記電力系16の構成について説明する。
電圧変換装置としてのDC/DCコンバータ18のアルミニウム製の一対の入力端子19には、前記燃料電池11のアルミニウム製の出力端子14,15からアルミニウム製の二本のリード線20を通して直流電圧が印加される。前記DC/DCコンバータ18のアルミニウム製の一対の出力端子21には、アルミニウム製のリード線22がそれぞれ接続され、両リード線22は、直流電圧を交流電圧に変換するためのインバータ23に設けられたアルミニウム製の一対の入力端子24に接続されている。そして、前記DC/DCコンバータ18は、燃料電池11から供給される直流電圧を昇圧してインバータ23に出力する。
【0016】
前記インバータ23に設けられたアルミニウム製の一対の出力端子25には、次に述べる非接触式の接続手段としての非接触接続装置(以下、単に接続装置という)26を介して、車両の車輪を回転させるための電気機器としてのモータ27が接続されている。
【0017】
前記インバータ23のケース31には、絶縁材よりなる別のケース32が取り付けられている。図2(a)(b)に示すように、前記ケース31内において、前記両出力端子25間には、絶縁材よりなる棒状のコア28が架設されている。このコア28の外周面には、アルミニウム製の線材が螺旋状に多数回巻き付けられ、一次側コイル29が形成されている。この線材は断面四角形をなすとともに、外周面に絶縁被覆が施されている。一次側コイル29の両端は前記出力端子25に電気的に接続されている。
【0018】
前記ケース32には前記両出力端子25と対応するように銅製の一対の入力端子33が取り付けられている。前記両入力端子33間には、絶縁材よりなる円柱状のコア34が架設されている。このコア34の外周面には、銅製の線材が螺旋状に巻き付けられ、二次側コイル35が形成されている。この線材は断面四角形をなすとともに、外周面に絶縁被覆が施されている。二次側コイル35の両端は前記入力端子33に電気的に接続されている。前記入力端子33の外端部には、前記モータ27の駆動回路27aに設けられた銅製の入力端子36に連結されている。
【0019】
次に、前記のように構成された燃料電池システムの作用を説明する。
さて、制御装置17から空気供給系12、水素供給系13及び電力系16に動作制御信号が出力されると、両供給系12,13から燃料電池11に空気と反応ガスである水素が供給されて、燃料電池11において電気化学反応により発電が行われる。発電された電力は出力端子14,15、リード線20及び入力端子19を介してDC/DCコンバータ18に直流電流として供給され、該コンバータ18により昇圧されてリード線22を介してインバータ23に供給される。このインバータ23によって直流電流が交流電流に変換され、この交流電流は出力端子25を介して接続装置26の一次側コイル29に供給される。このため、二次側コイル35に電磁誘導作用により交流電流が発生し、この交流電流が入力端子33,36を介してモータ27に供給され、該モータ27によって車輪が回転され、車両の走行が行われる。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)この燃料電池システムにおいては、燃料電池11やその内部のセルのケースがアルミニウムで形成されているため、燃料電池11と一次側コイル29との間のリード線20,22や端子15,21,24,25等がアルミニウムによって構成される。そして、インバータ23のアルミニウム製の出力端子25と、モータ27の銅製の入力端子36との間に一次側コイル29及び二次側コイル35よりなる非接触式の接続装置26を設けた。このため、異種金属接触腐食が回避される。従って、腐食によって電気抵抗が高くなったり、導電に障害が生じたりすることを回避できる。このため、電力ロスを防止して省エネルギーを達成できるとともに、信頼性が向上する。
【0021】
(2)この燃料電池システムにおいては、絶縁性のコア28,34の外周面に断面四角形の帯状の線材を巻き付けて一次側コイル29及び二次側コイル35を形成したので、横断面が円形の線材をコア28,34に巻き付けるのと比較して、磁束密度を向上でき、高効率と小型化を達成できる。
【0022】
(3)この燃料電池システムにおいては、インバータ23のケース32内に一次側コイル29及び二次側コイル35を収容したので、両コイル29,35の汚損を防止することができる。
【0023】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図3に示すように、二次側コイル35の巻数を調整する巻数変更手段51を設けるようにしてもよい。すなわち、二次側コイル35の複数位置に固定端子35aをそれぞれ設けるとともに、アクチュエータ52の作動ロッド53の先端に可動端子54を設け、可動端子54と前記入力端子36をフレキシブルの導電線55により接続する。そして、前記可動端子54を移動させることによってその可動端子54と接続される固定端子35aのひとつを選択することにより、二次側コイル35の有効巻数を調整し、モータ27に印加する電圧の高低を調整する。前記巻数変更手段51を一次側コイル29に設けてもよい。
【0024】
この図3の実施形態では、巻数変更手段51によって、モータ27に印加される交流電圧を調整することができるので、図1に示す昇圧用のDC/DCコンバータ18を省略することが可能となる。
【0025】
・ インバータ23として、直流電流を三相交流電流に変換できるものを用いるとともに、三相交流モータ27を使用し、接続装置26として三相交流方式のものを用いるようにしてもよい。
【0026】
・ 図1に示すDC/DCコンバータ18を省略してもよい。
・ 電気機器として、モータ27以外に例えば電磁ソレノイド等の各種の電気機器を用いてもよい。
【0027】
・ 前記リード線22には、別のDC/DCコンバータを前記DC/DCコンバータ18と並列に接続する。そして、このコンバータには、バッテリが接続される。このコンバータは、燃料電池11からDC/DCコンバータ18を通して供給される直流電流やモータ27の回生制動により回収された回生電力を降圧してバッテリに充電することができる。つまり、余剰の電力をDC/DCコンバータを介してバッテリに蓄電することができる。
【符号の説明】
【0028】
11…燃料電池、14…出力端子、15…出力端子、18…DC/DCコンバータ、19…入力端子、21…出力端子、23…インバータ、24…入力端子、25…出力端子、26…接続手段としての非接触接続装置、26、27…電気機器としてのモータ、29…一次側コイル、32…ケース、33…入力端子、35…二次側コイル、36…入力端子、51…巻数変更手段、55…導電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の正極及び負極の出力端子と、負荷側の電気機器の入力端子との間を非接触の接続手段を介して接続したことを特徴とする燃料電池システムの電力供給装置。
【請求項2】
燃料電池の正極及び負極の出力端子に入力端子を同系金属よりなる導電線によりインバータを接続したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムの電力供給装置。
【請求項3】
前記接続手段は、インバータの出力端子に接続された一次側コイルと、前記電気機器の入力端子に接続された二次側コイルとにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムの電力供給装置。
【請求項4】
前記一次側コイルまたは二次側コイルには、コイルの巻数を変更する巻数変更手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システムの電力供給装置。
【請求項5】
前記燃料電池の出力端子とインバータの入力端子との間には、DC/DCコンバータが接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池システムの電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−243468(P2012−243468A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110699(P2011−110699)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】