説明

燃料電池システム用浄化剤収容装置および燃料電池システム

【課題】流体の漏れを容易に検知でき、流体の漏れに対する信頼性を高め得る燃料電池システム用浄化剤収容装置および燃料電池システムを提供する。
【解決手段】脱硫器600や水精製器等を構成する収容容器610は、浄化剤を収容するための浄化室620と、流体を浄化室620に供給させる入口ポート630と、浄化室620の流体を排出させる出口ポート640ともつ。仕切壁710は、収容容器610の内部において接合部740により接続され、浄化剤で浄化される流体が流れる浄化流路を浄化室620内に形成させる。中空状仕切部材700は、接合部740を介して漏れた流体を通過させ得る漏洩中空室730を有する。漏洩検出流路750は、漏洩中空室730の内部と外部とを連通させ、且つ、浄化室620から漏洩中空室730に漏れた流体を排出可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムで用いられる燃料、改質用の水蒸気となる水等の流体を浄化させる燃料電池システム用浄化剤収容装置および燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムで用いられる燃料に含まれる付臭剤を除去する脱硫器を例にとって説明する。脱硫剤を収容する脱硫器の設計にあたり、限られた脱硫器のスペースで、コストを抑えつつ、脱硫剤を有効に利用することは重要な課題である。そのため脱硫器となる容器の内部にUターン部を形成する仕切壁を設置し、ガスの流れを整流することが、しばしば試みられる。特許文献1、2では、脱硫器となる容器の内部に仕切壁を設置し、ガス状の燃料が容器内で偏流することを防止すると共に意図的な流れを構成して、脱硫剤の有効活用を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−117652号公報
【特許文献2】特開2007−273142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1、2ともに、ねらいとした機能(偏流防止、効率的な脱硫剤の利用)を果たすためには、仕切壁を接合部でシールさせつつ容器の内部に固定させる構造が必要である。仮に仕切壁を接合させる接合部のシール性が損なわれている場合には、仕切壁と容器との境界域、即ち接合部をガス状の燃料がすり抜けるおそれがある。この場合、脱硫剤で脱硫されていない脱硫不充分のガス状の燃料が下流に流出する不具合がある。この場合、燃料電池システムでは、脱硫器の下流に配置されている改質器に担持されている触媒を劣化させたり、改質器の下流に配置されている燃料電池のアノードに担持されている触媒を劣化させたりするおそれがある。
【0005】
脱硫器の製造時またはメンテナンス時において、仕切壁を接合させる接合部のシール性が機能しているかを検査することが出来れば、上述の不具合は防止することができる。しかしながら上記した特許文献1、2に示されている構造では、一般的なリーク検査(加圧→漏れ計測、水没検査など)により、接合部のリークを検出することが困難である。X線等の検査方法を用いることも考えられるが、すべての接合部(ろう付け部等)を検査することは、検査コストが高くなり、更に、接続部における微小なピンホールをX線で検出することは容易ではない。このため、流体の漏れに対する信頼性を高め得るには限界があった。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、製造時またはメンテナンス時等において、仕切壁等の仕切部材を接合させる接合部を介しての燃料、改質用の水等の流体の漏れを容易に検知でき、燃料、水等の流体の漏れに対する信頼性を高め得る燃料電池システムで用いられる燃料電池システム用浄化剤収容装置および燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る燃料電池システム用浄化剤収容装置は、(i)燃料電池システムで用いられるガス状または液相状の流体を浄化させる浄化剤を収容するための浄化室と、流体を浄化室に供給させる入口ポートと、浄化室の流体を排出させる出口ポートともつ収容容器と、(ii)収容容器の収容室の内部において接合部により接合され、浄化剤で浄化される流体が流れるUターン部をもつ浄化流路を浄化室内に形成させるように収容容器に配置された仕切壁と、仕切壁で区画され接合部、仕切壁および収容容器のうちの少なくとも一方から漏れた流体を通過させ得る漏洩中空室とを有する中空状仕切部材と、(iii)浄化室の内部と収容容器の外部とを連通させ、且つ、浄化室から接合部を介して漏洩中空室に漏れた流体を収容容器外に排出可能な漏洩検出流路とを具備する。
【0008】
浄化剤収容装置の用途としては、燃料の付臭剤を除去させる脱硫器、または、改質用の水を精製させる水精製器が例示される。脱硫器に適用される場合には、流体は付臭剤を含む燃料であり、浄化剤は脱硫機能をもつゼオライト、活性炭等が例示される。水精製器に適用される場合には、流体は、燃料を水蒸気改質させる水蒸気となる水であり、浄化剤はイオン交換樹脂等の水精製剤が例示される。すなわち、水蒸気を用いて燃料を改質させた水素を含むアノード流体を供給した発電する燃料電池システムが対象とされ、液相状の流体が、前記水蒸気の基となる水であることが好ましい。
【0009】
入口ポートから浄化室に流入されたガス状または液相状の流体は、浄化室の浄化剤によって浄化され、浄化後、出口ポートから外部に吐出される。浄化剤収容装置の収容容器が工業製品である以上、製造には万全の対策が施されているものの、仕切壁を収容容器に接合する、または、仕切壁同士を接合する接合部(例えばろう付け部、溶接部)を介して流体が漏れるおそれが皆無であるとは言えない。このように接合部を介して流体が漏洩中空室に漏れた場合であっても、漏洩中空室に漏れた流体は、漏洩中空室から漏洩検出流路に流れ、漏洩検出流路から収容容器の外部に排出されることになる。
【0010】
製造時またはメンテナンス時等において、漏洩検出流路から外部に排出された流体は、漏洩検出流路付近に設けられた検出流体漏れ検知手段によって検知される。流体漏れ検知手段としては、漏洩検出流路を閉鎖する膨出変形可能または破裂可能な石鹸膜等の膜、弾性袋、あるいは、漏洩検出流路から漏れた流体を検知する電気センサ等が例示される。電気センサとしては物理的原理または化学的原理のものでも良い。このように接合部(例えばろう付け部、溶接部)を介して流体が漏洩中空室に漏れた場合であっても、その漏洩中空室に漏れた流体は、漏洩中空室から漏洩検出流路に流れ、結果として、漏洩検出流路から外部に排出されることになる。よって、浄化剤で充分に浄化されなかった流体が出口ポートからこれの下流機器(例えば改質器または燃料電池)に向けて吐出されることが抑制される。従って、下流機器(例えば改質器または燃料電池)に対する保護性が高まる。
【0011】
(2)本発明に係る燃料電池システムは、アノード流体およびカソード流体が供給されて発電する燃料電池と、水蒸気を用いて燃料を改質させてアノード流体を形成する改質部と、アノード流体となる燃料を改質部に供給する燃料通路と、燃料通路に設けられ燃料に含まれる付臭剤を除去して燃料を浄化させる脱硫剤を浄化剤として収容するための脱硫器とを具備しており、脱硫器は、上記した燃料電池システム用浄化剤収容装置で構成されている。燃料通路は、アノード流体となる燃料を改質部に供給する。脱硫器は、燃料通路に設けられており、燃料に含まれる付臭剤を除去して燃料を浄化させる。改質部は、付臭剤を除去した燃料を水蒸気を用いて改質させてアノード流体(一般的には水素含有流体)を形成する。アノード流体はカソード流体と共に燃料電池に供給され、発電運転に使用される。脱硫器の入口ポートから浄化室に流入された流体は、浄化室の浄化剤によって浄化され、その後、脱硫器の出口ポートから下流機器(例えば改質器または燃料電池)に吐出される。浄化剤収容装置が工業製品である以上、製造には万全が施されており、漏れる発生頻度は実に少ないものの、接合部が高いシール性を発揮しない場合には、接合部(例えばろう付け部、溶接部)から流体が漏れるおそれがないとは言えない。このように接合部から流体が漏れた場合であっても、その漏れた流体は、中空状仕切部材の漏洩中空室から漏洩検出流路に流れ、漏洩検出流路から排出されることになる。なお、製造時またはメンテナンス時等においては、漏洩検出流路から外部に排出された流体は、漏洩検出流路付近に設けられた検出流体漏れ検知手段によって検知される。このように接合部から流体が漏れた場合であっても、その漏れた流体は、漏洩中空室から漏洩検出流路に流れ、漏洩検出流路から外部に排出されることになり、結果として、出口ポートからこれの下流側の下流機器(例えば改質器または燃料電池)に吐出されることが抑制される。従って、下流機器に対する保護性が高まる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る燃料電池システム用浄化剤収容装置および燃料電池システムによれば、万一、接合部を介して流体が漏れるおそれがある場合であっても、その漏れた流体は、浄化室から漏洩検出流路に流れて漏洩検出流路から外部に排出されることになる。このため浄化剤で充分に浄化されなかった流体が出口ポートからこれの下流機器(例えば改質器または燃料電池)に吐出されることが抑制される。従って、浄化剤収容装置における触媒の劣化が長期にわたり抑制され、システムの長期にわたる信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係り、脱硫器を示す断面図である。
【図3】比較形態に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図4】他の比較形態に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図5】実施形態2に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図6】実施形態3に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図7】実施形態4に係り、脱硫器を示す斜視図である。
【図8】実施形態5に係り、脱硫器を示す平面図である。
【図9】実施形態6に係り、脱硫器を示す平面図である。
【図10】実施形態6に係り、脱硫器を示す断面図である。
【図11】実施形態6に係り、脱硫器の要部を示す断面図である。
【図12】実施形態7に係り、水精製器の要部を示す断面図である。
【図13】実施形態7に係り、水精製器を示す平面図である。
【図14】適用形態1に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図15】適用形態2に係り、燃料電池システムの燃料供給経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい形態によれば、流体の漏れ検査において接合部からの漏れが無いことが確認された後に、漏洩検出流路は、閉鎖部材で閉鎖される。漏洩検出流路は、流体の漏れ検査後において開放状態に維持されることもできる。好ましい形態によれば、本装置が脱硫器に適用される場合には、流体は付臭剤を含む燃料であり、浄化剤は、燃料に含まれている付臭剤を除去させるゼオライト、活性炭等が例示される。好ましい形態によれば、本装置が水精製器に適用される場合には、流体は燃料を改質させる水蒸気となる水であり、浄化剤はイオン交換樹脂等の水精製剤であり、浄化室は、水に含まれている不純物を除去させて純水化を促進させる水精製剤を収容する。
【0015】
[実施形態1]
図1および図2は実施形態1の概念を示す。図1は、燃料電池システムで用いられる脱硫器600(燃料電池システム用浄化剤収容装置)を示す。図1に示すように、脱硫器600は箱状の収容容器610をもつ。収容容器610は、燃料電池システムで用いられるガス状の燃料(例えば都市ガス、流体)を浄化させるための脱硫剤611(浄化剤)を収容するための浄化室620と、ガス状の燃料を浄化室620に供給させる入口ポート630と、浄化室620で浄化されたガス状の燃料を浄化室620の改質器2Aに排出させる出口ポート640ともつ。入口ポート630および出口ポート640は浄化室620の上部を閉鎖する蓋部材760において間隔を隔てて形成されている(図1参照)。
【0016】
図1から理解できるように、組付時において、収容容器610の内部には中空状仕切部材700が接合されている。中空状仕切部材700は縦形の偏平な箱形状をなしており、収容容器610に配置された複数の平板状をなす互いに対向する仕切壁710と、複数の仕切壁710で区画された偏平な漏洩中空室730とを有する。このように中空状仕切部材700は、収容容器610の内部において接合部740により接合されて一体化されている。接合部740は収容容器610の内部に隠蔽されており、外部から視認できない。接合部740としては、ろう付け部または溶接部等が例示される。このような接合部740は、仕切壁710ひいては中空状仕切部材700を収容容器610の内部において収容容器610に一体的に接合させている。このような中空状仕切部材700は、脱硫剤611で浄化されるガス状の燃料が流れるUターン部623をもつ浄化流路を浄化室620内に形成させる。Uターン部623は中空状仕切部材700の下端部700dに対面する。なお図1に示すように、Uターン部623のU形状を透視する一の側面視において、中空状仕切部材700の幅をLAとし、収容容器610の幅をLBとするとき、LA<LBの関係にできる。LA/LB=0.05〜0.5の範囲内、0.1〜0.3の範囲内の関係にできる。但しこれに限定されない。図1に示すように、他の側面視において、中空状仕切部材700の幅をDAとし、収容容器610の幅をDBとするとき、DA=DB、DA≒DBの関係にできる。
【0017】
一般的には、仕切壁710を収容容器610に接合させる接合部740(ろう付け部または溶接部)において、接合部740は高いシール性をもち正常であり、ピンホール等の接合不良が存在しない。この場合、接合部740はガス通過性を有しない。このため、入口ポート630から浄化室620に供給されたガス状の燃料(流体)は、脱硫剤611に接触して浄化されつつ下向きに流れ、更に、Uターン部623をUターンし、上向きに流れ、出口ポート640から収容容器610の外部の改質器2A、更には燃料電池1のアノードに吐出される。このとき、燃料に含まれている硫黄系の付臭剤は脱硫剤611で浄化される。このように浄化されたガス状の燃料は、中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することなく、改質器2Aでアノードガスとして改質され、改質されたアノードは燃料電池1のアノードに供給されて発電反応に使用される。
【0018】
しかし工業製品である以上、製造には万全の対策が施されているものの、仕切壁710を収容容器610の内壁面に接合させている接合部740において、ピンホール等の接合不良が発生し、接合部740のシール性が損なわれているおそれがないこともない。万一、ピンホール等の接合不良742(図1参照)が接合部740に存在する場合には、接合部740は高いシール性をもたないため、入口ポート630から浄化室620に供給されたガス状の燃料(流体)が接合不良742を介して、矢印M1方向(図1参照)に中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することになる。
【0019】
本実施形態によれば、図1および図2に示すように、漏洩検出流路750は、中空状仕切部材700の漏洩中空室730の内部と収容容器610の外部とを連通させているが、出口ポート640には連通されていない。漏洩中空室730は出口ポート640に非連通である。万一、接合部740の接合不良742によりガス状の燃料(流体)が矢印M1方向に浄化室620から中空状仕切部材700の漏洩中空室730に漏れた場合には、そのガス状の燃料(流体)を漏洩検出流路750から矢印M3方向(図1)に沿って収容容器610の外部に吐出可能である。ここで、図1から理解できるように、漏洩検出流路750は、改質器2A、更には燃料電池1のアノードに連通していない。このように接合不良742から漏洩検出流路750に漏れた燃料は、脱硫剤611に接触する時間が短いため、充分に脱硫されていない。このように脱硫が充分でない燃料は、改質器2A、更には燃料電池1のアノードには供給されない。このため、改質器2Aに担持されている改質触媒の活性度が低下させることが抑制される。更には、燃料電池1のアノードに担持されているアノード触媒等の触媒の活性度が低下させることが抑制される。従ってシステムの信頼性を長期にわたり維持できる。
【0020】
さて、脱硫器600の収容容器610の製造時またはメンテナンス時において、漏れテストを実行するときには、試験用ガスを入口ポート630から浄化室620に流入させる。仕切壁710の接合部740が正常である場合には、図1に示すように、入口ポート630から矢印K1方向に浄化室620に流入された試験用ガスは、浄化室620内を矢印K2方向(下向き)に流れ、Uターン部623を矢印K3,K4方向にUターンし、矢印K5方向(上向き)に流れ、更に出口ポート640から矢印K6方向(上向き)に収容容器610の外部に吐出される。このように本実施形態によれば、仕切壁710を接合させるための接合部740(例えばろう付け部、溶接部)が正常であり、高いシール性をもつ場合には、入口ポート630から浄化室620に流入された試験用ガスが中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することなく浄化室620を流れ、出口ポート640から収容容器610の外部に吐出される。なお、上向きを下向きまたは横向きとしても良い。下向きを上向きまたは横向きとしても良い。
【0021】
ところで、脱硫器600を構成する収容容器610が工業製品である以上、製造には万全の対策を施している。しかし、ろう付け部や溶接部等で形成されている接合部740において漏れが発生する頻度は実に少ないものの、0ではない。例えば、仕切壁710を収容容器610の内部に接合させるための接合部740(例えばろう付け部、溶接部等)にピンホール等の接合不良742が存在する場合には、入口ポート630から矢印K1方向に向けて浄化室620に流入された試験用ガスは、接合部740の接合不良742から、矢印M1方向(図1参照)に中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入する。よって、脱硫が充分ではない燃料は、漏洩中空室730から漏洩検出流路750に至り、矢印M3方向(図1参照)に沿って外部に吐出される。
【0022】
上記した漏れ試験では、漏洩検出流路750付近に検出流体漏れ検知手段950を設けておくことが好ましい。この場合、上記したように漏洩検出流路750から矢印M3方向に沿って吐出される試験用ガスは、漏洩検出流路750付近に設けられた流体漏れ検知手段950によって検知される。漏洩検出流路750付近に設けられる流体漏れ検知手段950としては、漏洩検出流路750を閉鎖する膨出変形可能または破裂可能な石鹸膜等の膜、弾性袋等が例示される。あるいは、漏洩検出流路750から漏れた流体を検知する電気センサ等が例示される。電気センサの検知原理としては物理的原理または化学的原理のものでも良い。
【0023】
このように製造時またはメンテナンス時において接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常であると判定された場合には、漏洩検出流路750は閉鎖部材780で閉鎖される。すなわち、漏洩検出流路750は、流体の漏れ検査において接合部740の漏れが無いことが確認された後に、閉鎖部材780で閉鎖される。このように漏洩検出流路750が閉鎖部材780で閉鎖されると、漏洩中空室730に異物が進入することが抑制される。但し、場合によっては漏洩検出流路750を開放させておいても良い。これに対して、接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常ではないと判定された場合には、接合部740を再接合させるか、あるいは、その脱硫器600の収容容器610はNG品として認識される。
【0024】
さて、収容容器610が脱硫器600として使用される場合には、ゼオライトや活性炭等の脱硫剤611が浄化剤として収容容器610の浄化室620に収容される。燃料電池システムの運転時には、ガス状の燃料が入口ポート630から浄化室620に流入され、燃料に含まれている硫黄系の付臭剤がガス浄化室620の脱硫剤611によって浄化され、その後、浄化されたガス状の燃料は、出口ポート640から収容容器610の外部の改質器2Aに吐出される。なお、Uターン部623により燃料が脱硫器600においてUターンするので、収容容器610の小型化を図りつつ、脱硫性能における信頼性を高め得る。なお、漏洩中空室730は断熱空間としても期待できるため、外気が急激に冷えるような場合であっても、結露等の不具合が抑制される。
【0025】
[比較形態1,2]
図3は比較形態1の概念を示す。図3に示すように、従来では、脱硫器を大型化させる場合には、図3に示すように、複数の独立した収容容器610Bに脱硫剤を装填しつつ、ガス状の燃料をUターンさせるべく、独立した収容容器610Bの先端部同士を連通管620Bで連通させていた。しかしコスト高となる。そこで図4に係る比較形態2として示すように、一枚の仕切壁710Cを単一の収容容器610の内部において接合部740Cで接合させ、ガス状の燃料をUターン可能とさせていた。しかし接合部740Cは収容容器610の内部に隠蔽されているため、接合部740Cのシール性が充分か否かの検査は容易ではない。X線透過で検査可能であるが、X線透過は検査コストが高くなる。
【0026】
[実施形態2]
本実施形態は実施形態1と基本的には共通の構成および共通の作用効果を有する。使用環境が厳しいとき等においては、接合部740(例えばろう付け部、溶接部)が経年変化し、シール性が低下するおそれがある。そこで本実施形態によれば、製造時またはメンテナンス時において、接合部740について漏れテストを実行して接合部740が正常であると判定された場合であっても、漏洩検出流路750は閉鎖部材で閉鎖されない。そして、燃料電池システムの使用時において、図5に示すように、漏洩検出流路750に対面するように漏洩検出流路750の付近にガス検知センサ955を流体漏れ検知手段として配置した状態で燃料電池システムのパッケージ内に組み込む。燃料電池システムが発電運転するとき、漏洩検出流路750からガス状の燃料が漏れるときには、その漏れた燃料はガス検知センサ955により積極的に検知され、警報器が警報を出力する。この場合、接合部740の経年変化に対処することができる。
【0027】
[実施形態3]
図6は実施形態3の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。図6は脱硫器600を示す。中空状仕切部材700を構成する仕切壁710の外壁面710mは、収容容器610の外面側に露出している。接合部740も収容容器610の外面側に露出している。この場合においても、接合部740は収容容器610に隠蔽されている。
【0028】
[実施形態4]
図7は実施形態4の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。図7は脱硫器600を示す。図7に示すように、脱硫器600の収容容器610に形成されている小孔状の漏洩検出流路750は横向きとされている。
【0029】
[実施形態5]
図8は実施形態5の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。図8は脱硫器600を示す。図8に示すように、中空状仕切部材700の漏洩中空室730の幅LAは偏平な薄形とされている。漏洩検出流路750は一端750aから他端750cにかけて細く延びるスリットとされている。このようにスリットであれば、漏れた燃料を一端750aから他端750cにかけてむらなく排出させ得る。スリットであれば、漏洩中空室730は一層薄形となり、収容容器610の小型化を図りつつ、脱硫剤611の装填量を増加できる利点が得られる。
【0030】
[実施形態6]
図9〜図11は実施形態5の脱硫器600を示す。図9および図10に示すように、脱硫器600は、鉛直方向に延びる中心軸線P1をもつ円筒形状の収容容器610をもつ。収容容器610は、燃料電池システムで用いられるガス状の燃料(流体)を浄化させる脱硫剤611(浄化剤)を収容するための浄化室620と、ガス状の燃料を浄化室620に供給させる入口ポート630と、浄化室620で浄化されたガス状の燃料を浄化室620の外部に排出させる出口ポート640ともつ。入口ポート630は浄化室620の上部に形成されている。出口ポート640は浄化室620の側部の上部に形成されている。図9および図10に示すように、中空状仕切部材700は縦形の偏平な円筒形状をなしており、中心軸線P1に対して同軸となるように収容容器610に配置された円筒形状の内仕切壁710iと、中心軸線P1に対して同軸となる円筒形状の外仕切壁710pと、外仕切壁710pおよび内仕切壁710iで区画された円筒形状の漏洩中空室730とを有する。中空状仕切部材700の底部の側には、燃料を通過させる複数の透孔をもつ透孔部材705が設けられている。
【0031】
図11は図10の要部を拡大して示す。図11に示すように、円筒形状の外仕切壁710pの上端部710puおよび円筒形状の内仕切壁710iの上端部710iuは、リング状の接合部740により接合されている。図11に示すように、外仕切壁710pの下端部710pdおよび内仕切壁710iの下端部710idは、リング状の接合部740により底壁735に接合されている。接合部740としては、ろう付け部または溶接部が例示される。このような中空状仕切部材700は、脱硫剤611で浄化されたガス状の燃料が流れるUターン部623を浄化室620内の下部に形成させる。Uターン部623は中空状仕切部材700の下端700dに対面する。
【0032】
一般的には、内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを接合させる接合部740において、接合部740は正常であり、高いシール性をもち、ピンホール等の接合不良が存在しない。この場合には、入口ポート630から下向きに浄化室620に供給されたガス状の燃料(流体)が漏洩中空室730に流入することなく、透孔部材705を透過させた後、Uターン部623をUターンして上向きに流れ、出口ポート640から吐出され、改質器2Aで改質され、水素リッチなアノードガスとされる。アノードガスは燃料電池1のアノードに向かい、発電反応に使用される。上記したように脱硫剤611で付臭剤が浄化された燃料が改質器2Aでアノードガスとされ、アノードガスは燃料電池1のアノードに向かう。このため、改質器2Aに担持されている改質触媒が付臭剤成分等で損傷することが抑制される。同様に、燃料電池1のアノードに担持されているアノード触媒が付臭剤成分等で損傷することが抑制される。但し、接合部740において、ピンホール等の接合不良742(図11参照)が存在することは、皆無ではない。この場合、入口ポート630から浄化室620に供給されたガス状の燃料(流体)が矢印M1方向(図11参照)に接合部740の接合不良742を介して中空状仕切部材700の円筒形状の漏洩中空室730に流入することになる。この場合、燃料と脱硫剤611とが接触する時間が不足し、燃料の付臭剤の浄化は不充分となる。
【0033】
本実施形態によれば、図9および図11に示すように、漏洩検出流路750は小孔状をなしており、中空状仕切部材700の円筒形状の漏洩中空室730の上側に位置しており、漏洩中空室730の内部と外部とを連通させている。万一、接合部740の接合不良742(図1参照)によりガス状の燃料(流体)が浄化室620から矢印M1方向(図11参照)に沿って中空状仕切部材700の漏洩中空室730に漏れた場合には、そのガス状の燃料(脱硫剤611で脱硫浄化が不充分なガス状の燃料)を漏洩検出流路750から収容容器610の外部に矢印M3方向に吐出可能である。
【0034】
ところで、製造時またはメンテナンス時において、脱硫器600となる収容容器610に対して接合部740の漏れテストを実行する。このときには、試験用ガスを入口ポート630から収容容器610の浄化室620に流入させる。内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを接合させている接合部740が正常であり、高いシール性をもつ場合には、入口ポート630から矢印K1,K2方向に沿って浄化室620に流入された試験用ガスは、Uターン部623を矢印K3,K4方向にUターンし、出口ポート640から矢印K6方向に収容容器610の外部に吐出される。このように接合部740が正常である場合には、入口ポート630から浄化室620に流入された試験用ガスは中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することなく浄化室620を流れ、脱硫剤611との接触時間を確保させつつ、出口ポート640から収容容器610の外部の改質器2Aひいては燃料電池1のアノードに吐出される。
【0035】
脱硫器600を構成する収容容器610が工業製品である以上、接合部740において漏れが発生する頻度は実に少ないものの、0ではない。例えば、内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを収容容器610の内部に接合させる接合部740(例えばろう付け部、溶接部等)にピンホール等の接続不良742(図11参照)が存在する場合がある。この場合には、入口ポート630から矢印K1,K2方向に向けて浄化室620に流入された試験用ガスは、接続不良742から矢印M1方向に沿って中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入し、結果として、出口ポート640から浄化室620の外部に吐出されることなく、漏洩検出流路750から矢印M3方向に外部に吐出される。このように接合部740のシール性が必ずしも充分ではない場合には、入口ポート630から浄化室620に流入された試験用ガスが、接合部740の接合不良742から漏洩中空室730に流入し、更に漏洩中空室730を流れ、漏洩検出流路750から矢印M3方向に沿って収容容器610の外部に吐出される。
【0036】
このような漏れ試験では、上記したように漏洩検出流路750から矢印M3方向に沿って吐出される試験用ガスは、漏洩検出流路750付近に設けられた流体漏れ検知手段950によって検知される。流体漏れ検知手段950としては、漏洩検出流路750を閉鎖する変形または破裂可能な石鹸膜等の膜、あるいは、漏洩検出流路750から漏れた燃料を検知する電気センサ等が例示される。このように製造時またはメンテナンス時において接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常であると判定された場合には、漏洩検出流路750は閉鎖部材780で閉鎖されることが好ましい。接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常ではないと判定された場合には、接合部740を再接合させるか、あるいは、その脱硫器600の収容容器610はNG品として認識される。
【0037】
[実施形態7]
図12および図13は実施形態7の概念に係り、改質用の水を浄化させて精製させる水精製器800を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には共通の構成、共通の作用効果を有する。図12および図13に示すように、水精製器800は、鉛直方向に延びる中心軸線P1をもつ円筒形状の収容容器610をもつ。本実施形態によれば、蓋部材760は、入口ポート630をもつ内側蓋部材761と、内側蓋部材761の外周側を包囲するように配置された外側蓋部材762とを有する。漏洩検出流路750は中心軸線P1の回りでリング状に延びており、内側蓋部材761の外周面761pと外側蓋部材762の内周面762iとで形成されている。
【0038】
図12および図13に示すように、水精製器80は、鉛直方向に延びる中心軸線P1をもつ円筒形状の収容容器610をもつ。収容容器610は、燃料電池システムで使用される凝縮水または水道水である液相状の水(流体)を浄化させるイオン交換樹脂で形成された水精製剤811(浄化剤)を収容するための浄化室620と、水を浄化室620に供給させる入口ポート630と、浄化室620で浄化された液相状の水を浄化室620の外部に排出させる出口ポート640ともつ。入口ポート630は浄化室620の上部に形成されている。出口ポート640は浄化室620の側部の上部に形成されている。
【0039】
図12および図13に示すように、中空状仕切部材700は縦形の偏平な円筒形状をなしており、中心軸線P1に対して同軸となるように収容容器610に配置された円筒形状の内仕切壁710iと、中心軸線P1に対して同軸となる円筒形状の外仕切壁710pと、外仕切壁710pおよび内仕切壁710iで区画された円筒形状の漏洩中空室730とを有する。中空状仕切部材700の底部の側には、水を通過させる複数の透孔をもつ透孔部材705が設けられている。図12に示すように、外仕切壁710pの上端部710puおよび内仕切壁710iの上端部710iuは、接合部740により接合されている。外仕切壁710pの下端部710pdおよび内仕切壁710iの下端部710idは、接合部740により接合されている。接合部740としては、ろう付け部または溶接部が例示される。このような中空状仕切部材700は、水精製剤811で浄化されたガス状の燃料が流れるUターン部623を浄化室620内の下部に形成させる。Uターン部623は中空状仕切部材700の下端700dに対面する。
【0040】
一般的には、内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを接合させる接合部740において、接合部740が正常であり、高いシール性をもち、ピンホール等の接合不良を有しない。この場合には、入口ポート630から下向きに浄化室620に供給された水(流体)が漏洩中空室730に流入することなく、透孔部材705を透過させた後、Uターン部623をUターンして上向きに流れ、出口ポート640から吐出され、蒸発部をもつ改質器2Aに向かう。このように水精製剤811で良好に浄化されて精製された水(純水)が、改質器2Aにおいて蒸発され水蒸気となり、燃料を水蒸気改質させるために使用される。この場合、改質器2Aに担持されている改質触媒が損傷することが抑制される。
【0041】
さて、工業製品である以上、内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを収容容器610に接合させるための接合部740において、もしピンホール等の接合不良742が存在することは、皆無ではない。この場合、入口ポート630から浄化室620に供給された水(流体)は、接合部740の接合不良742(図12参照)を介して、矢印M1方向(図12参照)に中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することになる。この場合、水と水精製剤811とが接触する時間が不足し、水の浄化が不充分となり易い。
【0042】
本実施形態によれば、図12および図13に示すように、漏洩検出流路750は中心軸線P1の回りでリング状をなしており、中空状仕切部材700の円筒形状の漏洩中空室730の上側に位置しており、漏洩中空室730の内部と外部とを連通させている。万一、接合部740の接合不良742により矢印M1方向(図12参照)に沿って液相状の水(流体)が浄化室620から中空状仕切部材700の漏洩中空室730に漏れた場合には、その水(水精製剤811による浄化が不充分な水)を漏洩検出流路750から収容容器610の外部に吐出させることが可能である。
【0043】
ところで、製造時またはメンテナンス時において、水精製器800となる収容容器610の接合部740に対して漏れテストを実行するときには、試験用のガスまたは水を入口ポート630から収容容器610の浄化室620に流入させる。内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを接合させている接合部740が正常であり、高いシール性を有する場合には、入口ポート630から矢印K1,K2方向に沿って浄化室620に流入された試験用のガスまたは水は、Uターン部623を矢印K3,K4方向にUターンし、出口ポート640から矢印K6方向に収容容器610の外部に吐出される。この場合、試験用のガスまたは水は、中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入することなく浄化室620を流れ、出口ポート640から、蒸発部付きの改質器2Aに吐出される。
【0044】
さて脱硫器600を構成する収容容器610が工業製品である以上、接合部740において漏れが発生する頻度は実に少ないものの、0ではない。例えば、内仕切壁710iおよび外仕切壁710pを収容容器610の内部に接合させる接合部740(例えばろう付け部、溶接部等)にピンホール等の接続不良742(図12参照)が存在する場合がある。この場合、入口ポート630から矢印K1,K2方向に向けて浄化室620に流入された試験用のガスまたは水は、接続不良742から矢印M1方向(図12参照)に沿って中空状仕切部材700の漏洩中空室730に流入し、結果として、出口ポート640から浄化室620の外部に吐出されることなく、漏洩検出流路750から矢印M3方向に外部に吐出される。このように内仕切壁710iおよび外仕切壁710pの接合部740のシール性が必ずしも充分ではない場合には、入口ポート630から浄化室620に流入された試験用のガスまたは水が、接合部740の接合不良742から漏洩中空室730に流入し、更に漏洩中空室730を流れ、漏洩検出流路750から矢印M3方向(図12参照)に沿って収容容器610の外部に吐出される。この場合、矢印M3方向に沿って吐出される試験用のガスまたは水は、漏洩検出流路750付近に設けられた検出流体漏れ検知手段950によって検知される。流体漏れ検知手段950としては、漏洩検出流路750を閉鎖する変形または破裂可能な石鹸膜等の膜、あるいは、漏洩検出流路750から漏れた水を検知する電気センサ等が例示される。電気センサの検知原理としては静電容量、電気抵抗式が例示される。
【0045】
このように製造時またはメンテナンス時において接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常であると判定された場合には、漏洩検出流路750を閉鎖部材780で閉鎖させる。このように漏洩検出流路750は流体の漏れ検査において漏れが無いことが確認された後に、閉鎖部材780で閉鎖されることが好ましい。場合によっては、漏洩検出流路750を閉鎖部材780で閉鎖せずとも良い。漏洩検出流路750を閉鎖しないときには、中空状仕切部材700の漏洩中空室730内の水(漏れ現象)を視認できる。但し、接合部740の漏れテストを実行して接合部740が正常ではないと判定された場合には、接合部740を再接合させるか、あるいは、その脱硫器600の収容容器610はNG品として認識される。
【0046】
さて、収容容器610が水精製器800として使用される場合には、図12に示すように、水精製剤811が収容容器610の浄化室620に収容される。燃料電池システムの運転時には、水が入口ポート630から浄化室620に流入され、水に含まれている不純物が浄化室620の水精製剤811(浄化剤)によって浄化され、その後、浄化された水は出口ポート640からポンプ80により収容容器610の外部に吐出される。Uターン部623により水がUターンするので、収容容器610の小型化を図りつつ、水精製性能における信頼性を高め得る。本実施形態によれば、中空状仕切部材700を構成する内仕切壁710iおよび外仕切壁710pは、収容容器610の内部に接合部740で接合されており、漏洩中空室730を形成している。
【0047】
[適用形態1]
図14は、上記した脱硫器および水精製器を適用した適用形態1の概念を示す。図14において、脱硫器62は上記した実施形態に係る脱硫器で形成されている。水精製器43は上記した水精製器で形成されている。図14に示すように、燃料電池システムは、燃料電池1と、液相状の水を蒸発させて水蒸気を生成させる蒸発部2と、蒸発部2で生成された水蒸気を用いて燃料を改質させてアノード流体を形成する改質部3と、蒸発部2と改質部3を加熱する燃焼部105と、蒸発部2に供給される液相状の水を溜めるタンク4と、これらを収容するケース5とを有する。燃料電池1は、イオン伝導体を挟むアノード10とカソード11とをもち、例えば、SOFCとも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(運転温度:例えば400℃以上)を適用できる。アノード10側から排出されたアノード排ガスはアノード排ガス路103を介して、燃焼部105に供給される。カソード11側から排出されたカソード排ガスはカソード排ガス路104を介して、燃焼部105に供給される。燃焼部105はアノード排ガスとカソード排ガスとを燃焼させ蒸発部2と改質部3を加熱させる。燃焼部105には燃焼排ガス路75が設けられ、燃焼部105における燃焼後のガスおよび、未燃焼のガスを含む燃焼排ガスが燃焼排ガス路75を介して大気中に放出される。改質部3は、セラミックス等の担体に改質触媒を担持させて形成されており、蒸発部2に隣設されている。改質部3および蒸発部2は改質器2Aを構成しており、燃料電池1と共に断熱壁19で包囲され、発電モジュール18を形成している。改質部3の内部には、改質部3の温度を検知する温度センサ33と、燃焼部105には燃料を着火させるヒータである着火部35が設けられている。着火部35は燃焼部105の燃料に着火できるものであれば何でも良い。温度センサ33の信号は制御部100に入力される。制御部100は着火部35を作動させて燃焼部105を着火させて高温化させる。制御部100は警報器102をもつ。
【0048】
発電運転時には、改質器2Aは改質反応に適するように断熱壁19内において加熱される。発電運転時には、蒸発部2は水を加熱させて水蒸気とさせ得るように加熱される。燃料電池1がSOFCタイプの場合には、燃焼部105においてアノード排ガスとカソード排ガスを燃焼させて燃料電池1のアノード10およびカソード11が加熱されるため、改質部3および蒸発部2は同時に加熱される。燃料通路6は、燃料源63からの燃料を改質器2Aに供給させるものであり、燃料ポンプ60および脱硫器62をもつ。燃料電池1のカソード11には、カソード流体(空気)をカソード11に供給させるためのカソード流体通路70が繋がれている。カソード流体通路70には、カソード流体搬送用の水搬送源として機能するカソードポンプ71が設けられている。
【0049】
図14に示すように、ケース5は外気に連通する吸気口50と排気口51とをもち、更に、第1室である上室空間52と、第2室である下室空間53とをもつ。燃料電池1は、改質部3および蒸発部2と共に、ケース5の上側つまり上室空間52に収容されている。ケース5の下室空間53には、改質部3で改質される液相状の水を溜めるタンク4が収容されている。タンク4には、電気ヒータ等の加熱機能をもつ加熱部40が設けられている。加熱部40は、タンク4に貯留されている水を加熱させるものであり、電気ヒータ等で形成できる。外気温度等の環境温度が低いとき等には、制御部100からの指令に基づいて、タンク4の水は加熱部40により所定温度(例えば5℃、10℃、20℃)以上に加熱され、凍結が抑制される。図14に示すように、下室空間53側のタンク4の出口ポート4pと上室空間52側の蒸発部2の入口ポート2iとを連通させる給水通路8が、配管としてケース5内に設けられている。図8に示すように、ケース5内において、タンク4は蒸発部2の下側に配置されているため、給水通路8は基本的には縦方向に沿って延びる。給水通路8は、タンク4内に溜められている水をタンク4の入口ポート2iから蒸発部2に供給させる通路である。給水通路8には、タンク4内の水を蒸発部2まで搬送させる水搬送源として機能するポンプ80が設けられている。ポンプ80はこれを駆動させる電気式のモータ82をもつ。
【0050】
ポンプ80を駆動させるモータ82は正回転および逆回転可能とされている。すなわち、モータ82は、正方向に回転駆動してタンク4内の水を出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて搬送させる正モードと、逆方向に回転駆動して給水通路8の水を出口4pからタンク4内に戻す逆モードとに切り替え可能とされている。従って、モータ82を有するポンプ80は、タンク4内の水を蒸発部2に搬送させる正モードと、給水通路8の水をタンク4内に戻す逆モードとに切り替え可能とされている。モータ82を駆動回路を介して制御するための制御部100が設けられている。モータ82としては、正回転および逆回転可能なモータであれば何でも良いが、ステッピングモータ、DCモータが好ましい。但しモータ82は正回転のみ可能でも良い。制御部100はモータ82を介してポンプ80を制御する。更に、制御部100はポンプ71,79,60を駆動させるモータを介してポンプ71,79,60を制御する。
【0051】
システムの起動時において、ポンプ60が駆動すると、燃料通路6から燃料が蒸発部2,改質部3,アノード流体通路73,燃料電池1のアノード10,流路103を介して燃焼部105に流れる。カソードポンプ71によりカソード流体(空気)がカソード流体通路70、カソード11,流路104を介して燃焼部105に流れる。この状態で着火部35が着火すると、燃焼部105において燃焼が発生し、改質部3および蒸発部2が加熱される。このように改質部3および蒸発部2が加熱された状態で、ポンプ80が正モードで駆動すると、タンク4内の水はタンク4の出口ポート4pから蒸発部2の入口ポート2iに向けて給水通路8内を搬送され、蒸発部2で加熱されて水蒸気とされる。水蒸気は、燃料通路6から供給される燃料(ガス状が好ましいが、場合によっては液相状としても良い)と共に改質部3に移動する。改質部3において燃料は水蒸気で改質されてアノード流体(水素含有ガス)となる。アノード流体はアノード流体通路73を介して燃料電池1のアノード10に供給される。更にカソード流体(酸素含有ガス、ケース5内の空気)がカソード流体通路70を介して燃料電池1のカソード11に供給される。これにより燃料電池1が発電する。アノード10から排出されたアノード流体のオフガス、カソード11から排出されたカソード流体のオフガスは、流路103,104を通過し、燃焼部105に至り、燃焼部105で燃焼される。高温の排ガスは、排ガス通路75を介してケース5の外方に排出される。
【0052】
排ガス通路75には、凝縮機能をもつ熱交換器76が設けられている。貯湯槽77に繋がる貯湯通路78および貯湯ポンプ79が設けられている。貯湯通路78は往路78aおよび復路78cをもつ。貯湯槽77の低温の水は、貯湯ポンプ79の駆動により、貯湯槽77の吐出ポート77pから吐出されて往路78aを通過し、熱交換器76に至り、熱交換器76の熱交換作用により加熱される。熱交換器76で加熱された水は、復路78cを介して帰還ポート77iから貯湯槽77に帰還する。このようにして貯湯槽77の水は温水となる。前記した排ガスに含まれていた水蒸気は、熱交換器76で凝縮されて凝縮水となる。凝縮水は、熱交換器76から延設された凝縮水通路42を介して重力等により水精製器43に供給される。水精製器43はイオン交換樹脂等の水精製器43aを有するため、凝縮水の不純物は除去される。不純物が除去された水は水タンク4に移動し、水タンク4に溜められる。ポンプ80が正モードで駆動すると、水タンク4内の水は給水通路8を介して高温の蒸発部2に供給され、蒸発部2で水蒸気とされて改質部3に供給され、改質部3において燃料を改質させる改質反応として消費される。
【0053】
[適用形態2]
図15は適用形態2の概念を示す。図15に示すように、燃料源63から改質器2Aに向かう燃料通路6が設けられている。図15に示すように、燃料通路6には、二連式の燃料バルブ65、燃料ポンプ60,脱硫器62,流量センサ66,入口バルブ67が直列に配置されている。更に改質器2Aの蒸発部2に向かう給水通路8が設けられている。給水通路8には、水精製剤43aを収容させる水精製器43,水精製器43で精製させた水を貯留するタンク4,水搬送源として機能するポンプ80,入口バルブ89が設けられている。制御装置100は信号線を介して燃料ポンプ60を,入口バルブ67,89、ポンプ80を制御する。流量センサ66の検知信号は制御部100に入力される。
【0054】
[その他]
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態および適用形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。加熱部40は温暖地などでは、加熱部40を廃止しても良い。燃料電池1は、場合によっては、PEFCとも呼ばれる固体高分子形燃料電池でも良いし、PAFCとも呼ばれるリン酸形燃料電池でも良く、他のタイプの燃料電池でも良い。要するに、燃料を脱硫させる脱硫器を有する燃料電池システムであれば良い。燃料も特に制限されず、都市ガス、プロパンガス、バイオガス、LPG、CNG、灯油、ガソリン、アルコール等を利用できる。水搬送源としては、モータで駆動させるポンプ80に限定されず、水搬送能力をもつものであれば何でも良い。
【0055】
上記した記載から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノード流体およびカソード流体が供給されて発電する燃料電池と、水蒸気を用いて燃料を改質させてアノード流体を形成する改質器と、アノード流体となる燃料を改質部に供給する燃料通路と、燃料通路に設けられ燃料に含まれる付臭剤を除去して燃料を浄化させる脱硫器と、水蒸気となる水を改質器に供給され給水通路と、給水通路に設けられ水を精製させる水精製剤を有する水精製器とを具備しており、前記水精製器は、請求項1〜5のうちの一項に記載された燃料電池システム用浄化剤収容装置で構成されている燃料電池システム。
[付記項2](i)燃料電池システムで用いられるガス状または液相状の流体を浄化させる浄化剤を収容するための浄化室と、前記流体を前記浄化室に供給させる入口ポートと、前記浄化室の前記流体を排出させる出口ポートともつ収容容器と、(ii)前記収容容器の前記収容室の内部において接合部により接合され、前記浄化剤で浄化される前記流体が流れるUターン部をもつ浄化流路を前記浄化室内に形成させるように前記収容容器に配置された仕切壁と、前記仕切壁で区画され接合部から漏れた流体を通過させ得る漏洩中空室とを有する中空状仕切部材と、を具備する燃料電池システム用浄化剤収容装置。この場合、接合部から漏れた流体を出口ポートではなく漏洩中空室に流す。
【符号の説明】
【0056】
1は燃料電池、10はアノード、11はカソード、2Aは改質器、2は蒸発部、3は改質部、33は温度センサ、35は着火部、4はタンク、40は加熱部、5はケース、57は温度センサ、6は燃料通路、70はカソード流体通路、73はアノード流体通路、75は排ガス通路、77は貯湯槽、8は給水通路、80はポンプ(水搬送源)、82はモータ、87は水センサ、100は制御部を示し、更に、600は脱硫器(燃料電池システム用浄化剤収容装置)、610は収容容器、611は脱硫剤(浄化剤)、623はUターン部、630は入口ポート、640は出口ポート、700は中空状仕切部材、710は仕切壁、730は中空室、740は接合部、742は接合不良、750は漏れ検出通路、760は蓋部材、780は閉鎖部材、800は水精製器(燃料電池システム用浄化剤収容装置)、811は水精製剤(浄化剤)、950は流体漏れ検知手段、955はガス検知センサを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)燃料電池システムで用いられるガス状または液相状の流体を浄化させる浄化剤を収容するための浄化室と、前記流体を前記浄化室に供給させる入口ポートと、前記浄化室の前記流体を排出させる出口ポートともつ収容容器と、
(ii)前記収容容器の前記収容室の内部において接合部により接合され、前記浄化剤で浄化される前記流体が流れるUターン部をもつ浄化流路を前記浄化室内に形成させるように前記収容容器に配置された仕切壁と、前記仕切壁で区画され接合部から漏れた流体を通過させ得る漏洩中空室とを有する中空状仕切部材と、
(iii)前記漏洩中空室の内部と前記収容容器の外部とを連通させ、且つ、前記浄化室から前記接合部を介して前記漏洩中空室に漏れた前記流体を前記収容容器の外部に排出可能な漏洩検出流路とを具備する燃料電池システム用浄化剤収容装置。
【請求項2】
請求項1において、前記漏洩検出流路は、前記流体の漏れ検査において前記接合部からの漏れが無いことが確認された後に、閉鎖部材で閉鎖される燃料電池システム用浄化剤収容装置。
【請求項3】
請求項1において、前記漏洩検出流路は、前記流体の漏れ検査後において開放状態に維持される燃料電池システム用浄化剤収容装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記流体は付臭剤を含む燃料であり、前記浄化室は、前記燃料に含まれている付臭剤を除去させる脱硫剤を前記浄化剤として収容する燃料電池システム用浄化剤収容装置。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、水蒸気を用いて燃料を改質させた水素を含むアノード流体を供給した発電する燃料電池が対象とされ、前記液相状の流体が、前記水蒸気の基となる水であり、前記浄化室は、水に含まれている不純物を除去させて純水化を促進させる水精製剤を前記浄化剤として収容する燃料電池システム用浄化剤収容装置。
【請求項6】
アノード流体およびカソード流体が供給されて発電する燃料電池と、水蒸気を用いて燃料を改質させてアノード流体を形成する改質部と、アノード流体となる燃料を前記改質部に供給する燃料通路と、前記燃料通路に設けられ燃料に含まれる付臭剤を除去して燃料を浄化させる脱硫剤を収容するための脱硫器とを具備しており、前記脱硫器は、請求項1〜5のうちの一項に記載された燃料電池システム用浄化剤収容装置で構成されている燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−133911(P2012−133911A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282913(P2010−282913)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】