説明

燃料電池システム

【課題】高強度な保護部品を取り付けることなく、ポンプの端子台などの要保護部材を外部からの衝撃から保護することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行う単セルが複数積層されてなり、単セルの積層方向両端部に配置された一対のエンドプレート41に挟持された燃料電池スタック10Aと、エンドプレート41に固定された循環電動ポンプ37と、外力からの保護を要する端子台59などの要保護部材と、を備えた燃料電池システムであって、要保護部材は、燃料電池スタック10Aの単セルの積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池スタックを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガスと酸化ガス(以下、これらを反応ガスという。)との電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とした燃料電池システムが注目されている。このような燃料電池システムに用いられる燃料電池は、例えば、単セルを複数積層した燃料電池スタックが、そのセル積層方向両端をエンドプレートで挟持された構成となっている。
【0003】
また、このような燃料電池システムには、燃料ガスを有効利用するために燃料電池スタックから排出された燃料オフガスを再び燃料電池スタックに供給する燃料ガス循環系を有するものがあり、その燃料オフガスを循環させるための循環電動ポンプをエンドプレートに固定する等している(例えば、特許文献1参照)。さらに、循環電動ポンプには、車両衝突時等の衝撃から端子台等を保護するべくカバー等の保護部品が取り付けられている。
【特許文献1】特開2008−16402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような保護部品の取り付けにより、重量の増大を招き、また、保護部品の取り付けスペースが必要であった。あるいは、衝突等の際に他の物体が進入(あるいは侵入)し難い部位に端子台等を設置しようとすれば、設置場所が限られるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、高強度な保護部品を取り付けることなく、ポンプの端子台などの要保護部材を外部からの衝撃から保護することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行うセルが複数積層されてなり、セルの積層方向両端部に配置された一対のエンドプレートに挟持された燃料電池スタックと、エンドプレートのセル積層方向外側に配置されたポンプと、外力からの保護を要する要保護部材と、を備え、要保護部材は、燃料電池スタックのセルの積層方向におけるポンプのエンドプレートと反対側の外周よりもエンドプレート側に配置されているものである。
【0007】
かかる構成の燃料電池システムの場合、要保護部材が、セルの積層方向におけるポンプのエンドプレートと反対側の外周よりもエンドプレート側に配置されているので、外部からの衝撃が加わるような場合に、その衝撃が剛性の高いポンプによって受け止められる。したがって、別個の高強度な保護部品を用いることなく要保護部材を保護することができる。
【0008】
この場合、要保護部材は、例えばポンプに動力線を接続する端子台である。
【0009】
かかる燃料電池システムにおいてポンプとエンドプレートとの間に隙間がある場合、要保護部材は、当該隙間の大きさの分だけさらにエンドプレート寄りに配置されていることも好ましい。このようにポンプとエンドプレートとの間に隙間があると、外部から衝撃が加わった際、当該ポンプがエンドプレートに接触するまで動く可能性がある。この点、本発明においてはこのようなポンプの動きにも配慮し、当該隙間分だけあらかじめ要保護部材をエンドプレート寄りに配置しておくから、ポンプに動きがあったとしても当該要保護部材を衝撃から十分保護することが可能である。
【0010】
また、要保護部材は、ポンプのエンドプレートと反対側の外周からエンドプレート側への寸法が、ポンプとエンドプレートとの隙間よりも大きくされていても良い。
【0011】
かかる構成とすることによって、要保護部材は、ポンプのエンドプレートと反対側の外周からエンドプレート側への寸法が、ポンプとエンドプレートとの隙間よりも大きくされているので、外部からの衝撃によってポンプがエンドプレート側に変位しても、その衝撃をポンプによって受け止めさせて要保護部材を衝撃から保護することができる。また、ポンプの変位が許容されるため、ポンプの取り付け剛性を低減させることができ、取り付け構造の簡略化を図ることができる。
【0012】
ポンプは、例えば水素オフガスの循環ポンプである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、別個の高強度な保護部品を取り付けることなく、ポンプの端子台などの要保護部材を外部からの衝撃から保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、参照する図面においては、図示の都合上、当該燃料電池システムの構成要素のうち、配管あるいは配管部と称している構成要素の図示を簡略化している。
【0015】
図1は、燃料電池システム1のシステム構成図である。この燃料電池システム1は、燃料電池自動車の車載発電システムや船舶、航空機、電車あるいは歩行ロボット等のあらゆる移動体用の発電システム、さらには、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システム等に適用可能であるが、具体的には自動車用となっている。
【0016】
燃料電池システム1は、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電気化学反応により発電して電力を発生する複数(例えば二つ)の燃料電池スタック10A,10Bを備えるとともに、これら燃料電池スタック10A,10Bへの酸化ガスとしての空気のガス供給を調整するカソード系の酸化ガス配管系2と、燃料ガスとしての水素ガスのガス供給を調整するアノード系の燃料ガス配管系3とを備えている。
【0017】
酸化ガス配管系2は、加湿器20により加湿された酸化ガス(空気)を分岐した二系統の配管21A,21Bを介して二つの燃料電池スタック10A,10Bそれぞれに供給する空気供給配管21と、これら燃料電池スタック10A,10Bから二系統の配管22A,22Bを介して排出された酸化オフガスを合流後に加湿器20に導く空気排出配管22と、加湿器20から外部に酸化オフガスを導くための排出配管23とを備えている。空気供給配管21には、大気中の酸化ガスを取り込んで加湿器20に圧送するコンプレッサ24が設けられている。
【0018】
燃料ガス配管系3は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク30と、水素タンク30の水素ガスを配管31aと配管31aが分岐部31bで分岐した二系統の配管31A,31Bとを介して二つの燃料電池スタック10A,10Bに供給するための燃料供給配管31と、燃料電池スタック10A,10Bから二系統の配管32A,32Bを介して排出された燃料ガスのオフガスとしての水素オフガスを合流部32aでの合流後の配管32bで燃料供給流路31の分岐前の合流部32cに戻す循環配管32と、を備えている。
【0019】
燃料供給配管31には、燃料電池スタック10A,10Bに燃料ガスを供給するために、水素タンク30からの水素ガスの供給を遮断又は許容するとともに許容時に水素ガスの圧力を調整する遮断弁付レギュレータ33が配管31aに設けられている。
【0020】
循環配管32には、燃料電池スタック10A,10Bから排出された水素オフガス(燃料ガス)を再び燃料電池スタック10A,10Bに供給するために、気液分離器34が配管32bに設けられている。この気液分離器34は、燃料電池スタック10A,10Bから排出された水素オフガスの気液を分離するもので、具体的には水素オフガスから水分を回収するものである。
【0021】
この気液分離器34には、排出配管35が接続されており、この排出配管35には、排出弁36が設けられている。この排出弁36は、図示略の制御装置からの指令によって作動することにより、気液分離器34で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素オフガスとを排出配管35を介して外部に排出(パージ)するものである。
【0022】
循環配管32には、燃料電池スタック10A,10Bから排出された循環配管32内の水素オフガスを吸引し加圧して燃料供給配管31側へ吐出することで、燃料電池スタック10A,10Bから排出されるガスの循環を調整する循環電動ポンプ(ポンプ)37が設けられている。
【0023】
燃料電池スタック10A,10Bは、図2に示すように、反応ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する単セル40を所要数積層して構成されるもので、互いに単セル40の積層方向を平行にして並設された状態で、これらに共通で積層方向両端部に配置された一対のエンドプレート41,42で挟持されている。なお、これらエンドプレート41,42は図示略のテンションプレートで互いに連結されている。
【0024】
このようにエンドプレート41,42で挟持された燃料電池スタック10A,10Bは、スタックケース43に収納される。このようにスタックケース43に収納された状態で燃料電池スタック10A,10Bは、互いに水平方向に並ぶ姿勢で車体に設置されることになり、以下、この設置時の姿勢で説明する。
【0025】
上記した一対のエンドプレート41,42は、複数の燃料電池スタック10A,10Bに共通であるため横方向に長い略長方形状をなしており、一方のエンドプレート41に、図3に示すように、循環配管32、循環電動ポンプ37、気液分離器34、排出弁36及び排出配管35が配置されており、また、燃料ガス供給系構成部品である遮断弁付レギュレータ33も配置されている。
【0026】
具体的には、まず、エンドプレート41には循環電動ポンプ37が取り付けられている。この循環電動ポンプ37は給電を受けて回転駆動力を発生させる電動モータ部50と、この電動モータ部50の駆動力で回転してガスを吸引し吐出するポンプロータ部51とを有しており、これら電動モータ部50とポンプロータ部51とが互いの回転軸線方向を一致させてこの方向に並設されることで、この回転軸線方向に長い形状をなしている。
【0027】
この循環電動ポンプ37には、給電用の3相あるいは2相の動力線が接続される端子台(要保護部材)59を備えている。ターミナル部として機能するこの端子台59は、循環電動ポンプ37を構成する電動モータ部50の周面の一部にて、側方へ突出するように設けられている。この端子台59は、燃料電池スタック10A,10Bの単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置され、循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周から突出しないようにされている。
【0028】
循環電動ポンプ37には、ポンプロータ部51側に上下二箇所の取付座部53,54が設けられ、電動モータ部50側に取付座部55が設けられ、これら取付座部53〜55によってエンドプレート41にボルト止めされている。そして、これら取付座部53〜55によってエンドプレート41に取り付けられた循環電動ポンプ37は、エンドプレート41との間に隙間Gが形成されている。
【0029】
ここで、循環電動ポンプ37の端子台59は、燃料電池スタック10A,10Bの単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周から寸法Lだけエンドプレート41側に変位した位置に配置されている。そして、この循環電動ポンプ37の外周から端子台59までの寸法Lは、循環電動ポンプ37とエンドプレート41との隙間Gよりも大きくされている。
【0030】
また、ポンプロータ部51には、外部からガスを吸引する吸引口56が下部に下方に向いて設けられ、外部へガスを吐出する吐出口57が上部に上方を向いて設けられている。
【0031】
循環電動ポンプ37の円筒状の電動モータ部50の外周面には、その構成部品であるモータ温度検出用サーミスタ58が電動モータ部50の最もエンドプレート41から離間する端部位置よりも下側に取り付けられている。
【0032】
エンドプレート41の循環電動ポンプ37の下側には、電気部品である遮断弁付レギュレータ33が取り付けられている。この遮断弁付レギュレータ33は、ガスの通過を遮断し又は許容する遮断弁部60と、この遮断弁部60を通過後のガスの圧力を調整するレギュレータ部61とが並設されており、これら遮断弁部60及びレギュレータ部61の並設方向に長い形状をなしている。
【0033】
遮断弁付レギュレータ33は、遮断弁部60を外側にレギュレータ部61を内側にした状態でエンドプレート41に取り付けられており、外部からガスが導入される導入口62が遮断弁部60の下部に下方に向いて設けられ、遮断弁部60及びレギュレータ部61を通過したガスを外部に導出させる導出口63がレギュレータ部61の上部に上方に向いて設けられている。さらに、遮断弁部60及びレギュレータ部61にはそれぞれ電気接続用のコネクタ部64,65が設けられている。
【0034】
この遮断弁付レギュレータ33は、全体として電動モータ部50の最もエンドプレート41から離間する端部位置よりもエンドプレート41側に配置されており、その結果、遮断弁付レギュレータ33の電気接続用のコネクタ部64,65も電動モータ部50で上側が覆われている。
【0035】
エンドプレート41の循環電動ポンプ37のポンプロータ部51の下側には、気液分離器(要保護部材)34が、エンドプレート41の長さ方向において遮断弁付レギュレータ33と並設されて取り付けられている。この気液分離器34は、外部からガスが導入される導入口67が、遮断弁付レギュレータ33とは反対側の側部にこの方向に向いて設けられ、外部にガスを導出する導出口68が、遮断弁付レギュレータ33側の側部にこの方向に向いて設けられている。
【0036】
気液分離器34の遮断弁付レギュレータ33とは反対の側方であってエンドプレート41の長さ方向の略中央位置には、燃料電池スタック10A,10Bから排出された水素オフガスを導く図1に示す配管32A,32Bの合流後の出口部69が設けられており、この出口部69には、気液分離器34側の側部に気液分離器34側に向いて水素オフガスを導出する導出口66が設けられている。
【0037】
エンドプレート41の気液分離器34の直下位置には、排出弁36が取り付けられている。この排出弁36は、気液分離器34に上部で接続されており、気液分離器34から水分及び水素オフガスをパージする際に外部にガスを排出する排出口70が、下部に下方に向いて設けられている。これら気液分離器34及び排出弁36も、ポンプロータ部51の最もエンドプレート41から離間する端部位置よりもエンドプレート41側に配置されており、ポンプロータ部51で上側が覆われている。
【0038】
エンドプレート41の長さ方向の両端部の上端位置には燃料電池スタック10A,10Bに個別に水素ガスを供給するための供給口71A,71Bが設けられている。
【0039】
そして、燃料供給配管31の分岐前の配管31aのうち水素タンク30と遮断弁付レギュレータ33とを結ぶ配管部80が、遮断弁付レギュレータ33の導入口62に接続され、配管31aのうち遮断弁付レギュレータ33と合流部32cとを結ぶ配管部81が、遮断弁付レギュレータ33の導出口63及び合流部32cに接続されている。さらに、合流部32cと分岐部31bとが配管31aの配管部82で連結されている。
【0040】
さらに、分岐部31bと燃料電池スタック10Aとを結ぶ配管31Aが、分岐部31bと供給口71Aとに接続され、分岐部31bと燃料電池スタック10Bとを結ぶ配管31Bが、分岐部31bと供給口71Bとに接続されている。ここで、水素ガスを均等に分配できるように配管31Aと配管31Bとが均等な長さとされ、その結果、分岐部31bは、エンドプレート41の長さ方向の略中央に配置されている。
【0041】
また、循環配管32の合流後の配管32bのうち出口部69と気液分離器34とを結ぶ配管部83が、出口部69の導出口66と気液分離器34の導入口67とに接続されており、配管32bのうち気液分離器34と循環電動ポンプ37とを結ぶ配管部84が、気液分離器34の導出口68と循環電動ポンプ37の吸引口56とに接続されている。
【0042】
さらに、配管32bのうち循環電動ポンプ37と燃料供給配管31とを結ぶ配管部85が循環電動ポンプ37の吐出口57と合流部32cとに接続されている。さらに、排出弁36の排出口70に排出配管35が接続されている。
【0043】
そして、上記構造において、水素ガスが流される燃料供給配管31、水素オフガスが流される循環配管32及び気液分離器34も、燃料電池スタック10A,10Bの単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置されている。
【0044】
また、燃料供給配管31及び循環配管32は、弾性変形によって単セル40の積層方向に変位可能とされている。
【0045】
また、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34も、燃料電池スタック10A,10Bの単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周から、循環電動ポンプ37とエンドプレート41との隙間Gよりも大きい寸法Lだけエンドプレート41側に変位した位置に配置されている。
【0046】
以上により、水素タンク30から供給された水素ガスは、配管部80から、遮断弁付レギュレータ33、配管部81、合流部32c、及び配管部82を介して分岐部31bに導入され、分岐部31bで配管31A,31Bに分流されて燃料電池スタック10A,10Bに分配される。
【0047】
また、燃料電池スタック10A,10Bからの水素オフガスは、出口部69から配管部83、気液分離器34、配管部84、循環電動ポンプ37、及び配管部85を介して合流部32cに導入され、水素タンク30から供給された水素ガスと合流して、配管部82を介して分岐部31bに導入されて再び燃料電池スタック10A,10Bに分配される。
【0048】
ここで、遮断弁付レギュレータ33、循環電動ポンプ37、気液分離器34、排出弁36及び配管部80〜85は、予めエンドプレート41に取り付けられてモジュール化されることになり、その後、燃料電池スタック10A,10B及びエンドプレート42等に組み付けられる。
【0049】
そして、上記燃料電池システム1は、車両に搭載する場合では、例えば、車両の床下にて、単セル40の積層方向を車両の幅方向に沿うように設置される。このような設置状態において、車両の車幅によって制限されるスペース内にて、単セル40の積層枚数によって決定する出力電圧を大きくするためには、燃料電池スタック10A,10Bの寸法を制限されたスペース内にて極力大きくする必要がある。この場合、燃料電池スタック10A,10Bの端部が車両の側部近傍にまで達することとなる。
【0050】
すると、燃料電池スタック10A,10Bは、その端部にて、車両の側方からの衝撃力を受け易くなるが、循環電動ポンプ37の端子台59、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34は、いずれも燃料電池スタック10A,10Bの単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置されているので、剛性が高い循環電動ポンプ37が外部からの衝撃を受け止めることとなる。つまり、例えば衝突等の際に他の物体が当該領域に進入してきたとしても、本実施形態の燃料電池システム1においては循環電動ポンプ37が外部からの荷重を受け、端子台59を保護して破壊等に至るのを抑える。
【0051】
これにより、高電圧の電力を供給する動力線が接続される端子台59、水素ガスや水素オフガスが流される燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34が、循環電動ポンプ37によって外部衝撃から保護され、端子台59における絶縁性、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34における気密性が確保される。
【0052】
特に、循環電動ポンプ37が外部衝撃によってエンドプレート41側へ隙間G分変位したとしても、端子台59、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周からエンドプレート41側への寸法Lが、循環電動ポンプ37とエンドプレート41との隙間Gよりも大きくされているので、端子台59、燃料供給配管31、循環配管32へ外部衝撃が加わるのが抑制される。
【0053】
以上に述べた燃料電池システム1によれば、高電圧の電力を供給する動力線が接続される端子台59、水素ガスや水素オフガスが流される燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離機34などの要保護部材が、単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置されているので、外部からの衝撃が加わるような場合に、その衝撃が剛性の高い循環電動ポンプ37によって受け止められ、あるいは吸収される。したがって、別個の高強度な保護部品を用いることなく端子台59、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34などの要保護部材を保護することができる。このため、従来必要とされていたカバー等の保護部材ないしは強度部材を省略することが可能である。また、これにより、当該燃料電池システム1の開発時ないしは組立時に要する工数(工程数)を減少させることも可能となる。
【0054】
また、循環電動ポンプ37が衝撃によって変位しても、弾性変形によって燃料供給配管31及び循環配管32が単セル40の積層方向に変位するので、これら燃料供給配管31及び循環配管32が衝撃によって塑性変形するような不具合が抑制される。
【0055】
特に、端子台59、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34などの要保護部材における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周からエンドプレート41側への寸法Lが、循環電動ポンプ37とエンドプレート41との隙間Gよりも大きくされているので、外部からの衝撃によって循環電動ポンプ37がエンドプレート41側に変位しても、その衝撃を循環電動ポンプ37によって受け止めさせて端子台59、燃料供給配管31、循環配管32及び気液分離器34などの要保護部材を衝撃から保護することができる。
【0056】
また、この場合、循環電動ポンプ37の変位が許容されるため、循環電動ポンプ37の取り付け剛性を低減させることができ、取り付け構造の簡略化を図ることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、端子台59を、循環電動ポンプ37の上方に配置させたが、この端子台59は、単セル40の積層方向における循環電動ポンプ37のエンドプレート41と反対側の外周よりもエンドプレート41側に配置されていれば、循環電動ポンプ37の下方側に配置しても良い。
【0058】
また、遮断弁付レギュレータ33を、上流側のガス状態(流量、圧力、温度、モル濃度等)を調整して下流側に供給するインジェクタに換えても良い。
【0059】
また、上述した実施形態のごとく循環電動ポンプ37とエンドプレート41との間に隙間Gがある場合、要保護部材を、隙間Gが無い場合よりも当該隙間Gの大きさの分だけさらにエンドプレート41寄りに配置することも好ましい。一般に、循環電動ポンプ37とエンドプレート41との間に隙間Gがあると、外部から衝撃が加わった際、循環電動ポンプ37がエンドプレート41に接触するまで動く可能性がある。このような循環電動ポンプ37の動きを見越しておき、当該隙間Gの分だけあらかじめ要保護部材をエンドプレート41寄りに配置しておけば、循環電動ポンプ37に隙間Gの大きさに相当する動きがあったとしても当該要保護部材を衝撃から十分保護することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムのスタックケース及びその内部の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムのエンドプレート及び燃料ガス循環系構成部品等を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…燃料電池システム、10A,10B…燃料電池スタック、37…循環電動ポンプ(ポンプ)、40…単セル(セル)、41…エンドプレート、59…端子台(要保護部材)、G…隙間、L…寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行うセルが複数積層されてなり、前記セルの積層方向両端部に配置された一対のエンドプレートに挟持された燃料電池スタックと、
前記エンドプレートの前記セル積層方向外側に配置されたポンプと、
外力からの保護を要する要保護部材と、を備え、
前記要保護部材は、前記燃料電池スタックの前記セルの積層方向における前記ポンプの前記エンドプレートと反対側の外周よりも前記エンドプレート側に配置されている燃料電池システム。
【請求項2】
前記要保護部材は、前記ポンプに動力線を接続する端子台である請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ポンプと前記エンドプレートとの間に隙間がある場合、前記要保護部材は、当該隙間の大きさの分だけさらに前記エンドプレート寄りに配置されている請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記要保護部材は、前記ポンプの前記エンドプレートと反対側の外周から前記エンドプレート側への寸法が、前記ポンプと前記エンドプレートとの隙間よりも大きくされている請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ポンプは、水素オフガスの循環ポンプである請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−259593(P2009−259593A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107082(P2008−107082)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】