説明

燃料電池システム

【課題】小型化が容易で、かつ、燃料電池に安定して酸化剤ガスを供給し、安定した発電を行うことができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池システムは、酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物をセパレータを介して複数積層してなる燃料電池100と、セパレータの一主面に形成され、酸化剤ガスの供給口及び排出口を有する酸化剤ガス流路と、酸化剤ガスを酸化剤ガス流路の供給口に供給する供給用送気部91と、酸化剤ガス流路内の酸化剤ガスを酸化剤ガス流路の排出口から外部に排出する排出用送気部90とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、小型化が容易で安定して発電を行う燃料電池の酸化剤ガス供給機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、室温から100℃以下までの低温で動作し、迅速な起動停止、高出力密度化が可能であるなどの特徴を有するため、民生用コージェネレーションや自動車用などの移動体用発電器、携帯用電源として期待されている。
【0003】
一般的なPEFCでは、正極と、負極と、電解質としての固体高分子電解質膜とからなる電極・電解質一体化物(MEA:Membrene electrode assembly)が複数積層されて構成されている。各MEAは、酸素流路(酸化剤ガス流路)を形成した正極側セパレータと、燃料流路を形成した負極側セパレータとの2種類のセパレータで挟持された状態で積層されている。また、負極側セパレータと正極側セパレータとの間に冷却媒体を流通させるための流路が形成されている場合もある。この場合、通常は、1対のセパレータ内で、MEAの積層方向に、酸素流路、冷却媒体流路及び燃料流路の3つの流路が形成されている。
【0004】
酸素流路、冷却媒体流路及び燃料流路は、通常、セパレータの表面に溝を設けることにより形成されるため、各セパレータはある程度の厚みを必要とする。しかし、ある程度の厚みを有するセパレータで挟持されたMEAを複数積層して構成したセルスタックは、かさ高くなってしまう。
【0005】
また、セパレータには、その積層方向に貫通する燃料供給マニホールド、燃料排出マニホールド、酸素供給マニホールド、酸素排出マニホールド、冷却媒体供給マニホールド及び冷却媒体排出マニホールドがそれぞれ必要であるため(例えば、特許文献1)、セパレータと重ねられる電極は、セパレータの上記各マニホールド形成部に相当する位置以外の領域に、発電に直接関与できる部分が配置される必要があるが、こうした発電に直接関与できる部分の面積を十分に大きく取ることが難しい。
【0006】
また、このようなPEFCは、エアーコンプレッサまたは空圧ポンプのような空気供給手段を用いて酸化剤ガス(酸素を含む空気)が強制的にセルスタックに供給されることにより発電する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、このようなPEFCは、ポータブル電源として用いる場合、容積や重量に制限が生じるため、携行型の燃料電池に用いることは難しい。
【0007】
このような問題を解決するため、燃料電池の燃料流路とは別に、セパレータの正極に接する側の面に、複数の酸化剤ガス流路を、一側端から反対側端に渡って直線状に複数平行に形成し、また酸化剤ガス流路の断面積が酸化剤ガスの供給口から排気口に亘って減少する構成であって、上記排気口に送気部を設置して酸化剤ガスを流路内に供給して発電するコンパクトなセミパッシブタイプの燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−310288号公報
【特許文献2】特開2006−164766号公報
【特許文献3】特許第3356721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の燃料電池においても、負極に燃料を供給するための燃料流路がセパレータに形成されているため、セル積層方向において小型化を図るには限界がある。さらに、特許文献3には、燃料電池と送気部との間隔が示されていない。燃料電池と送気部との間隔が小さい場合、酸化剤ガスが送気部に近い流路に偏って通気しやすくなり、発電効率が低下する虞がある。燃料電池と送気部との間隔が大きい場合、送気部を含めた燃料電池全体としての容積の小型化を図るには不十分である。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、小型化が容易で、かつ、安定した発電を行うことができる燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、上記正極と上記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物をセパレータを介して複数積層してなる燃料電池と、上記セパレータの一主面に形成され、酸化剤ガスの供給口及び排出口を有する酸化剤ガス流路と、酸化剤ガスを上記酸化剤ガス流路の上記供給口に供給する供給用送気部と、上記酸化剤ガス流路内の酸化剤ガスを上記酸化剤ガス流路の上記排出口から外部に排出する排出用送気部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化が容易で、かつ、燃料電池に安定して酸化剤ガスを供給し、安定した発電を行うことができる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の燃料電池システムの一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の燃料電池の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図1に示す燃料電池システムのI−I線断面図である。
【図4】図2に示す燃料電池の要部の分解斜視図である。
【図5】図2に示す燃料電池の要部の一部断面図である。
【図6】セパレータの一例を示す概略構成図であり、図6Aは平面図、図6Bは図6AのII−II線断面図、Cは底面図である。
【図7】電極・電解質一体化物を構成する、正極触媒層、固体高分子電解質膜及び負極触媒層の積層体の一例を示す概略構成図であり、図7Aは平面図、図7Bは図7AのIII−III線断面図である。
【図8】電極・電解質一体化物を構成する、正極拡散層及び正極ガスシールの一例を示す概略構成図であり、図8Aは平面図、図8Bは図8AのIV−IV線断面図である。
【図9】電極・電解質一体化物を構成する、負極拡散層及び負極ガスシールの一例を示す概略構成図であり、図9Aは平面図、図9Bは図9AのV−V線断面図である。
【図10】本発明の燃料電池システムの他の例を示す概略斜視図である。
【図11】本発明の燃料電池システムを用いた燃料電池発電システムの一例を示す概略構成図である。
【図12】気液分離容器の一例を示す概略透視図である。
【図13】比較例1の燃料電池システムの概略構成を示す斜視図である。
【図14】図13に示す燃料電池システムのVI−VI線断面図である。
【図15】実施例1及び比較例1の燃料電池発電システムでの発電特性の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃料電池システムは、酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、上記正極と上記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物をセパレータを介して複数積層してなる燃料電池と、上記セパレータの一主面に形成され、酸化剤ガスの供給口及び排出口を有する酸化剤ガス流路と、酸化剤ガスを上記酸化剤ガス流路の上記供給口に供給する供給用送気部と、上記酸化剤ガス流路内の酸化剤ガスを上記酸化剤ガス流路の上記排出口から外部に排出する排出用送気部とを有することを特徴とする。これにより、排出用送気部と燃料電池との間の距離を短くできるため、送気方向において小型化でき、また、燃料電池に酸化剤ガスを安定に供給し、安定した発電を行う燃料電池システムを実現可能である。
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、本明細書において、燃料電池に送気部を設置したものを「燃料電池システム」とし、この燃料電池システムに水素製造装置や気液分離装置及び水素消費装置などを設置したものを「燃料電池発電システム」と区分した。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態1では、本発明の燃料電池システムの一例について図1〜図3を用いて説明する。図1は、本実施形態の燃料電池システムの一例を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態の燃料電池システムにおける燃料電池の一例を示す概略斜視図である。図3は、図1に示す燃料電池システムのI−I線断面図である。図1〜3において、同一構成要素については同一符号を付している。図3の断面図では、酸化剤ガス流路を省略し、送気部90、91を簡略化して表している。また、図3の断面図では、ハッチングを省略している。
【0017】
本実施形態の燃料電池システム101は、図1に示すように、供給用送気部91と、排出用送気部90と、燃料電池100と、ダクト80、80とを備えている。
【0018】
供給用送気部91は、酸化剤ガスの供給口51(図3)側に設置されており、酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)を、酸化剤ガスの供給口51(図3)に供給するものである。排出用送気部90は、酸化剤ガスの排気口52(図3)側に設置されており、酸化剤ガス流路内の酸化剤ガスを、酸化剤ガスの排出口52から外部に排出するものである。また、供給用送気部91及び排出用送気部90は、図3に示すように、酸化剤ガスの供給口51及び排気口52を密封するようにダクト80で接続されている。図3において、矢印は酸化剤ガスの送気方向を示している。
【0019】
供給用送気部91及び排出用送気部90としては、送風できる装置であれば特に限定されない。例えば、DCファン、ACファン、ブロア及び小型コンプレッサーなどを用いることができ、省スペースの観点から、小型のファン及びブロアなどが好適に用いられる。
【0020】
また、供給用送気部91及び排出用送気部90の風量は、燃料電池100の出力、酸化剤ガスの排気口の大きさ、用いる送気部の静圧などによって変わるため、一義的に決めることはできないが、0.05m3/minから0.5m3/minの範囲で、かつ静圧が10Paから100Paの範囲が好適に用いられる。
【0021】
さらに、供給用送気部91及び排出用送気部90の風量は、燃料電池の温度が一定範囲内となるように調整されることが望ましい。固体高分子電解質膜の乾燥を防ぎ、燃料電池の長寿命化を図るためには、燃料電池の温度は70℃以下、より好ましくは60℃以下とすることが望ましい。また、発電で生成した水分が結露するのを防ぐためには、燃料電池の温度は30℃以上、より好ましくは40℃以上とすることが好ましい。すなわち、発電中の燃料電池の温度は50℃付近に保たれることが最も望ましい。
【0022】
ここで、供給用送気部91及び排出用送気部90の風量と、燃料電池100の温度及び出力との関係を調べたところ、供給用送気部91及び排出用送気部90の駆動電圧が12Vの場合、燃料電池100の温度は54℃、燃料電池100の出力は32Wであった。一方、供給用送気部91及び排出用送気部90の駆動電圧が16Vの場合、燃料電池100の温度は51℃、燃料電池100の出力は38Wであった。このことから、送気部の駆動電圧を増加させて風量を増加させると、燃料電池の出力が向上することが分かる。これは、送気部の風量が増加したことにより、燃料電池の温度が低下し、固体高分子電解質膜の乾燥が抑制されたために、燃料電池の出力が向上したものと推測される。
【0023】
燃料電池100は、図2に示すように、セパレータ10を介して積層された複数の電極・電解質一体化物(以下、MEAという)20を有し、水素を燃料として発電するものである。また、セパレータ10を介して積層された複数のMEA20からなる積層体は、2つのエンドプレート50で挟持され、ボルトとナットで固定されている。また、2つのエンドプレートのうちの一方(図2では、上側のエンドプレート50)には、燃料供給口60、燃料排出口70が設けられている。燃料は、燃料供給口60から燃料電池100内に導入され、各MEA20の負極に供給されて発電に利用される。また、各MEA20で消費されなかった燃料は、燃料排出口70から燃料電池100外に排出される。
【0024】
ダクト80、80は、燃料電池100の対向する2つの側面の全体を覆うように設けられている。本実施形態では、ダクト80、80は、上下のエンドプレート50、50に接するように配置され、かつ、供給用送気部91及び排出用送気部90と共に、酸化剤ガスの供給口51(図3)及び排気口52(図3)を密閉するように配置されている。ダクトとしては、酸化剤ガスを送気する際に、空気が漏れたり、割れたりしない材料であれば、特に制限されない。例えば、アルミニウムやステンレス鋼などの金属材料またはポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル及びポリスチレンなどの樹脂材料などを用いることができるが、成形加工のしやすさと軽量化の観点から、ポリカーボネートなどの樹脂材料が好適に用いられる。
【0025】
以下、燃料電池100の要部について図4及び図5を用いて詳細に説明する。図4は、図2に示す燃料電池100の要部の分解斜視図であり、図5は、図2に示す燃料電池100の要部の一部断面図である。図4及び図5において、図2と同一構成要素については同一符号を付している。なお、図5は断面図であるが、後述する各構成要素の燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドにより形成される燃料流路の理解を容易にする目的で、上側のセパレータ10の上端、及び下側のセパレータ10の下端以外については、背面部分を省略している。
【0026】
MEA20は、図4及び図5に示すように、上から、正極拡散層21、積層体20a、負極拡散層25が順次積層されたものであり、MEA20の上下には、セパレータ10、10が配置されている。
【0027】
積層体20aは、図5に示すように、上から、正極触媒層22、固体高分子電解質膜23、負極触媒層24の順に積層されたものである。各層の詳細については後述する。
【0028】
セパレータ10は、平面視での形状が四角形で、かつ、単一部材で構成されている。このセパレータ10には、燃料流路となる燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12が形成されている。燃料供給マニホールド11は、上記四角形を構成する4辺のうちの1辺の近傍に形成されており、燃料排出マニホールド12は、上記1辺に対向する1辺の近傍に形成されている。
【0029】
また、セパレータ10の一方の主面(ここでは、下面)には、溝状の酸化剤ガス流路13が複数形成されており、他方の主面(ここでは、上面)は平板状である。複数の酸化剤ガス流路13は、セパレータ10の一方の主面(下面)において、燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12が近傍に形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐように、互いに平行または略平行に形成されている。また、酸化剤ガス流路13の両端部は、セパレータ10の側面において開口しており、各開口部が酸化剤ガスの供給口51(図3)及び排出口52(図3)となる。
【0030】
さらに、積層体20aを構成する正極触媒層22、固体高分子電解質膜23及び負極触媒層24にも、セパレータ10に形成されている燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12に相当する位置に、燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドがそれぞれ形成されている。これについては後述する。
【0031】
正極拡散層21は、図4において上側に位置するセパレータ10の酸化剤ガス流路13形成面の全面を覆うように配置されている。この正極拡散層21は、平面視での形状が四角形であり、上記四角形を構成する4辺のうち、酸化剤ガス流路13と平行または略平行である2辺の外側には、燃料ガスの流出を抑制するための正極ガスシール30が配置されている。また、正極ガスシール30には、セパレータ10に形成されている燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12に相当する位置に、燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドがそれぞれ形成されている。
【0032】
負極拡散層25は、図4において下側に位置するセパレータ10の平板面(上面)と接するように配置されている。この負極拡散層25は、平面視での形状が四角形であり、上記四角形の外周外側には、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシール40が配置されている。また、負極ガスシール40には、セパレータ10に形成されている燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12に相当する位置に、燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドがそれぞれ形成されている。
【0033】
次に、酸化剤ガス及び燃料の流れを図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5では、酸化剤ガスの流れを点線矢印で示し、燃料の流れを実線矢印で示している。
【0034】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路13に導入されると、正極拡散層21を通って正極触媒層22に供給される。また、発電反応に関与せず消費されなかった酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路13を通って外部に排出される。より詳細に説明すると、酸化剤ガス流路13は、上述したように、平面視での形状が四角形であるセパレータ10の対向する2辺を直線状に繋ぐように形成されており、その両端部が、セパレータの側面において開口しているため、例えば、セパレータ10における酸化剤ガス流路13の一方の開口端、つまり、酸化剤ガスの供給口51(図3)側からファンなどを用いて酸素を含む空気を送ることで、酸化剤ガス流路13内へ空気を導入することができる。そして、酸化剤ガス流路13内に導入された空気(酸素)は、MEA20の正極拡散層21を通じて正極触媒層22に供給される。また、発電反応に関与せず消費されなかった酸素、及び空気中の酸素以外の成分は、酸化剤ガス流路13の他方の開口端、つまり、酸化剤ガスの排気口52(図3)側から外部に排出されることになる。
【0035】
燃料は、燃料供給マニホールド11に導入されると、負極拡散層25を通って負極触媒層24に供給される。また、発電反応に関与せず消費されなかった燃料は、負極拡散層25を通って燃料排出マニホールド12から外部へ排出される。より詳細に説明すると、負極に係る負極拡散層25は、撥水処理をした多孔質炭素シートのように、その内部を燃料が流通可能な材料で構成されることが一般的である。そのため、本発明の燃料電池が、例えば、燃料の供給圧力が比較的低い状態で使用される場合、燃料供給マニホールド11から導入された燃料は、負極拡散層25内の孔を経て負極触媒層24に供給され、発電反応に関与せず消費されなかった燃料は、負極拡散層25内の孔を経て燃料排出マニホールド12から外部へ排出される。この場合、図4や図5に示すように、隣り合うMEA20間に介在させるセパレータ10には、酸化剤ガス流路13のみを形成すればよく、燃料流路を形成する必要はないことから、セパレータを単一部材で構成でき、また、セパレータ自体を薄くすることが可能である。従って、本発明の燃料電池を、積層方向においてコンパクト化できる。一方、本発明の燃料電池が、例えば、燃料の供給圧力が比較的高い状態で使用される場合、後述するように、負極拡散層25の表面に、燃料供給マニホールド11と燃料排出マニホールド12とを直線状に繋ぐ溝状の燃料流路を複数平行または略平行に形成することが好ましい。この場合、負極拡散層の破損を抑制することもできる。
【0036】
図4及び図5に示す燃料電池では、酸化剤ガス流路13を通過する空気は、冷却媒体としても作用する。つまり、酸化剤ガス流路13が冷却媒体流路を兼ねることになる。そのため、セパレータに別途冷却媒体流路を形成する必要がなく、セパレータを単一部材の層で構成し、片面を平面状としてセパレータを薄くしても、冷却媒体による冷却が可能である。
【0037】
ここで、図1及び図3に示す本実施形態の燃料電池システム101が、酸化剤ガス流路の供給口51側及び排気口52側にそれぞれ送気部91、90を備える理由について説明する。
【0038】
燃料電池100を発電させるためには、酸化剤ガス(この場合、酸素を含む空気)を正極に供給する必要があるが、従来(特許文献3)では、図13及び図14に示すように酸化剤ガスの排気口52側に送気部90を設置し、空気を供給口51側から排気口52側に送気することにより、正極を構成する正極拡散層21に供給していた。しかし、送気部を排気口52側にのみ設置した場合、供給口51と排気口52とでは送気量が異なり、発電時に同一セルにおいて酸化剤ガスが不均一となり、発電効率が低下し、安定した発電ができなくなる虞がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、図1及び図3に示すように、酸化剤ガスの供給口51側にも送気部91を設置し、供給口51側から強制的に空気を送気するようにした。この場合、送気部91によって送気された空気がセパレータ10のリブ14に当たり、送気部91と供給口51との間の空間内で気流が発生して僅かに加圧状態になることで、燃料電池100の供給口51側の側面全体に空気が拡がる。このような状態で、送気部90によって空気を燃料電池100内から外部へ排気する方向へ送気させると、上述した排気口52側にのみ送気部を設置した場合に生じる不均一な送気状態を回避でき、発電効率が向上し、安定して発電させることができる。
【0040】
ここで、送気部の配置位置による、燃料電池の出力への影響を調べたところ、送気部を、排気口52側にのみ2つ設けた場合、燃料電池の平均出力は29Wであった。一方、送気部を、供給口51及び排気口52のそれぞれに1つずつ設けた場合、燃料電池の平均出力は32Wであった。このように、送気部は排気口52側だけでなく、供給口51側にも設けた方が、燃料電池の出力が向上することが分かる。従って、本発明では、送気部を酸化剤ガスの排気口52及び供給口51の両方に設けた。
【0041】
供給用送気部91と供給口51の間の距離、及び、排出用送気部90と排気口52との間の距離は、設置する燃料電池100の長辺方向の長さや、用いる送気部の風量及び静圧によって変わるため、限定されないが、5mmから10mmの間であれば、特に発電に影響を及ぼさない。上述のように、排気口52側にのみ送気部を設置した場合、発電効率の観点から、送気部と排気口52との間の距離は15mm以上に設定していたが、本発明では、排気口52及び供給口51の両方に送気部を設けることで、送気部と排気口52との間の距離を5mm〜10mmにまで短くしても安定して発電することができ、その結果、燃料電池システム全体の容積を小さくすることが可能となる。
【0042】
また、供給用送気部91の位置は、供給用送気部91と供給口51との間に気流を発生させることができるのであれば特に限定されない。
【0043】
図6は、図4及び図5に示すセパレータ10の一例を示す概略構成図である。図6Aは、セパレータ10の、酸化剤ガス流路13が形成されていない側の面(負極拡散層に接する側の面)を示す平面図、図6Bは、図6AにおけるII−II線断面図、図6Cは、セパレータ10の、酸化剤ガス流路13が形成されている側の面(正極拡散層に接する側の面)を示す平面図である。
【0044】
燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12は、平面視での形状が四角形であるセパレータ10の4辺のうちの対向する2辺の近傍に、それぞれ配置されている。また、セパレータ10の燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12を上記のような配置とし、MEA20を構成する正極、負極及び固体高分子電解質膜にも、セパレータ10の燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12に相当する位置に燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドを形成することで、負極における燃料が良好に流通する領域、すなわち、燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールドとで挟まれた領域をより大きくとることができ、発電に良好に関与できる電極面積をより大きくすることが可能で、より効率よく発電させることができる。また、水素を燃料とする燃料電池においては、発電に伴って生成した水や燃料中に含まれる水分が負極で滞留してその後の発電反応を阻害する虞があるが、燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドを上記のように配置することで、燃料は、負極の殆どの箇所で、燃料供給マニホールドから燃料排出マニホールドへ直線状に向かうように流れるようになるため、負極内の水を、燃料排出マニホールドを通じて外部へ良好に排出することができ、負極内で水が滞留することによる発電効率の低下を抑制することができる。
【0045】
セパレータ10の一方の主面(上面)は、図6Aに示したように平面状である。他方の主面(下面)には、図6Cに示したように、平面視で四角形を構成する4辺のうちの、燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12が近傍に形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐ複数の酸化剤ガス流路13が、互いに平行または略平行に形成されている。酸化剤ガス流路13は溝状であり、隣り合う酸化剤ガス流路13間には、リブ14が存在している。なお、図6Cでは、酸化剤ガス流路13とリブ14とを識別しやすくするために、酸化剤ガス流路13を、ドットを入れて示している。セパレータに係る酸化剤ガス流路における「互いに平行または略平行」とは、基本的には、各酸化剤ガス流路は互いに平行に形成されるが、多少平行からずれている場合であっても、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、許容される意味である。
【0046】
セパレータ10の酸化剤ガス流路13方向の長さ(図6A及び図6C中、縦方向の長さ)は、電極面積を十分に確保する観点から、10mm以上であることが好ましい。また、上記の通り、酸化剤ガス流路13を通過するガスは、例えば、酸素(酸化剤ガス)の供給源となる他、冷却媒体としても機能させることができるが、セパレータ10の酸化剤ガス流路方向の長さが長すぎると、燃料電池の発電時における発熱を、酸化剤ガス流路を通過するガスによって十分に冷却できない虞がある。そのため、セパレータ10の酸化剤ガス流路13方向の長さは、100mm以下であることが好ましい。
【0047】
セパレータ10における燃料供給マニホールド11と燃料排出マニホールド12との間の距離(最短の距離。燃料供給マニホールド11と燃料排出マニホールド12との間の距離について、以下同じ。)は、電極面積を十分に確保する観点から、10mm以上であることが好ましい。また、燃料供給マニホールド11と燃料排出マニホールド12との間の距離が長すぎると、燃料流路が長くなって、燃料流通の圧損が大きくなることがある。そのため、セパレータ10における燃料供給マニホールド11と燃料排出マニホールド12との間の距離は、300mm以下であることが好ましい。
【0048】
セパレータ10における燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12の幅(図6A及び図6C中、横方向の長さ)は、燃料流通時の圧損を小さくするためには、後述するガスシール性を確保できる範囲でできる限り大きくすることが好ましい。
【0049】
燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12は、上述したように、平面視での形状が四角形であるセパレータ10の4辺のうちの対向する2辺の近傍にそれぞれ設けられるが、具体的には、燃料供給マニホールド11は、図6A及び図6C中で、後述するガスシール性を確保できる範囲で、左側の縦の辺からの距離ができる限り短くなるように配置することが好ましい。また、燃料排出マニホールド12も、図6A及び図6C中で、後述するガスシール性を確保できる範囲で、右側の縦の辺からの距離ができる限り短くなるようにすることが好ましい。
【0050】
本発明の燃料電池において、MEAを構成する正極、負極及び固体高分子電解質膜に形成する燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドは、上述したように、セパレータの燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドの存在位置に相当する箇所に配置する。これにより、セパレータ及びMEAに形成された燃料供給マニホールドが重なり、また、セパレータ及びMEAに形成された燃料排出マニホールドが重なることで、燃料電池の厚み方向(セパレータ及びMEAの積層方向)に燃料流路が形成される。
【0051】
MEAに形成される燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールド、並びにセパレータに形成される燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドの形成位置の決定に当たっては、後述する正極ガスシール及び負極ガスシールの幅を考慮することが好ましい。
【0052】
酸化剤ガス流路13の幅(図6B及び図6C中、横方向の長さ)は、ガスの流通をより良好にする観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、セパレータ10の強度低下を抑制する観点から、5mm以下とすることが好ましい。
【0053】
酸化剤ガス流路13の高さ(溝の深さ)は、ガスの流通をより良好にする観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、セパレータ10の厚みの増大を抑制する観点から、5mm以下とすることが好ましい。
【0054】
隣り合う酸化剤ガス流路13間に存在するリブ14の幅(図6B及び図6C中、横方向の長さ)は、セパレータ10の強度低下を抑制する観点から、0.5mm以上とすることが好ましく、また、酸化剤ガス流路13でのガスの流通を良好にする観点から、5mm以下とすることが好ましい。
【0055】
酸化剤ガス流路13部分の最薄部の厚み(図6Bでは、セパレータ10の下面に形成された溝状の酸化剤ガス流路13の天面からセパレータ10の上面までの長さ)は、セパレータ10の強度を確保して、割れ、ゆがみなどを防止する観点から、0.2mm以上とすることが好ましく、また、セパレータ10の厚みの増大を抑制する観点から、5mm以下であることが好ましい。
【0056】
セパレータ10の材質としては、電子伝導性及び耐食性の高いものであれば特に制限は無いが、例えば、黒鉛、カーボンと樹脂との混練物、ステンレス鋼、ステンレス鋼に金や白金をメッキしたもの、チタン、チタンに金や白金をメッキしたもの、ステンレス鋼−銅クラッド、ステンレス鋼−銅クラッドに金や白金をメッキしたものなどが好適である。
【0057】
図7は、図4及び図5に示すMEA20を構成する、正極触媒層22、固体高分子電解質膜23及び負極触媒層24の積層体20aの一例を示す概略構成図である。図7Aは平面図、図7Bは図7AにおけるIII−III線断面図である。
【0058】
積層体20aを構成する、正極触媒層22と固体高分子電解質膜23と負極触媒層24とは、図7に示すように平面視で同一形状であることが好ましい。これにより、正極触媒層22と固体高分子電解質膜23と負極触媒層24とで構成される積層体20aの全面で厚みを均一にできるため、正負極の拡散層及び正負極のガスシールを介したセパレータ(MEAの上下面に配置される2枚のセパレータ)による締め付けが均一になり、ガス漏れをより良好に抑制できるようになる。また、MEAの製造時において、固体高分子電解質膜23を挟んで正極触媒層22と負極触媒層24との位置を精度よく決定する必要もなくなるため、MEAの製造、ひいては燃料電池の製造がより容易となり、その生産性を高めることができる。
【0059】
また、積層体20aは平面視での形状が四角形であり、上記四角形を構成する4辺のうちの1辺の近傍に燃料供給マニホールド201が形成され、上記1辺に対向する1辺の近傍に燃料排出マニホールド202が形成されている。
【0060】
図8は、図4に示す正極拡散層21及び正極ガスシール30の一例を示す概略構成図である。図8Aは平面図、図8Bは図8AにおけるIV−IV線断面図である。
【0061】
正極拡散層21は、上記の通り、セパレータの酸化剤ガス流路形成面の全面を覆うように配置される。この正極拡散層21は、平面視での形状が四角形であり、上記四角形を構成する4辺のうち、セパレータの酸化剤ガス流路と平行または略平行な2辺(図8A中、縦の2辺)の外側に、燃料ガスの流出を抑制するための正極ガスシール30が配置されている。そのため、セパレータの酸化剤ガス流路の開口端に相当する位置に正極ガスシール30が存在せず、固体高分子電解質膜の、燃料による圧力や水分によって生じ得る膨張収縮の応力を緩和することができる。
【0062】
また、正極ガスシール30には、燃料供給マニホールド31及び燃料排出マニホールド32が形成されている。
【0063】
正極拡散層21と正極ガスシール30との界面の位置は、セパレータの酸化剤ガス流路の形成面よりも長手方向外側(燃料供給マニホールド側及び燃料排出マニホールド側)に相当する位置であることが好ましい。上記界面がセパレータの酸化剤ガス流路に相当する位置や、酸化剤ガス流路とこれに隣り合う酸化剤ガス流路との間に相当するリブの位置に存在していた場合、ガスシール性が低下する虞がある。
【0064】
正極ガスシール30の幅(図8A中、aやbの長さ)は、ガスシール性をより良好にする観点からは、0.5mm以上であることが好ましく、また、電極面積のロスを低減する観点からは、5mm以下であることが好ましい。
【0065】
正極拡散層21の厚みは、100〜1000μmであることが好ましい。また、正極ガスシール30の厚みは、50〜1000μmであることが好ましい。
【0066】
図9は、図4に示す負極拡散層25及び負極ガスシール40の一例を示す概略構成図である。図9Aは平面図、図9Bは図9AにおけるV−V線断面図である。
【0067】
負極拡散層25は、上記の通り、セパレータの平板面(酸化剤ガス流路の形成面とは反対側の面)と接するように配置される。この負極拡散層25は、平面視での形状が四角形であり、上記四角形の外周外側に、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシール40が配置されている。また、上記四角形を構成する4辺のうちの1辺(図9A中、左側の縦の辺)と負極ガスシール40とで燃料供給マニホールド41が形成され、上記1辺に対向する1辺(図9A中右側の縦の辺)と負極ガスシール40とで燃料排出マニホールド42が形成されている。
【0068】
負極拡散層25としては、上述の通り、その内部に、燃料ガスが流通可能な孔を有する材料で構成することが一般的であるが、本実施形態では、負極拡散層25、負極ガスシール40、燃料供給マニホールド41及び燃料排出マニホールド42を上記のように配置することで、負極拡散層25の全体に、燃料供給マニホールド41から燃料排出マニホールド42へ向かう燃料流路が形成されることになる。そのため、例えば、負極内に水分量の多い燃料が供給された場合や、発電に伴って水が生成するなどして負極内に水が溜まった場合にも、これを良好に排出することができるようになる。
【0069】
なお、負極拡散層25には、必ずしも燃料流路を形成する必要はない。燃料流路を形成しない場合には、負極拡散層25の一方の主面(図4では、下面)の全面がセパレータ10(図4)と接することになるため、電気的な接触抵抗を最小限に抑えることが可能となる。他方、例えば、燃料ガスの供給圧が比較的高い場合には、負極拡散層の破損の虞もあるため、負極拡散層25の他方の主面(図4では、上面)に、燃料供給マニホールド41と燃料排出マニホールド42とを直線状に繋ぐ溝状の燃料流路を、好ましくは複数平行または略平行に形成して、負極拡散層の破損を抑制することもできる。
【0070】
負極ガスシール40の幅(図9A中、cやdの長さ)は、ガスシール性をより良好にする観点からは、0.5mm以上であることが好ましく、また、電極面積のロスを低減する観点からは、5mm以下であることが好ましい。
【0071】
負極拡散層25の厚みは、100〜1000μmであることが好ましい。また、負極ガスシール40の厚みは、50〜1000μmであることが好ましい。
【0072】
本実施形態では、正極拡散層及び負極拡散層は、多孔性の電子導電性材料で構成され、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが用いられる。正極拡散層の正極触媒層側の面、及び負極拡散層の負極触媒層側の面には、更なる撥水性向上及び触媒層との接触向上を目的として、フッ素樹脂粒子(PTFE樹脂粒子など)を含む炭素粉末のペーストを塗布してもよい。
【0073】
また、正極ガスシール及び負極ガスシールの材質には、燃料電池分野などにおいてシール材として公知の各種材料、例えば、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、PTFEフィルム、ポリイミドフィルムなどを用いることができる。
【0074】
本発明の燃料電池では、燃料電池を構成するMEAにおいて、正極と負極とを、例えば、抵抗及びスイッチを介してリード体などで接続するなどして、導通可能なように構成していることが好ましい。このような構成のMEAを有する燃料電池では、燃料電池による発電の終了時に、上記のスイッチを入れるなどしてMEAに係る正極と負極とを短絡させて、燃料電池内に残留する水素などの燃料を消費することができる。そのため、燃料電池による発電の終了時に燃料電池内に残留する燃料による燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0075】
燃料電池に係るMEAにおいて、正極と負極とを、上記のように抵抗を介して導通可能なように構成する場合、かかる抵抗としては、例えば、燃料電池発電システムにおいて、燃料電池の停止後、MEAの正極−負極間の電圧が0.1V以下となるのに要する時間が1分以内となるような抵抗値を有するものを用いればよく、抵抗を用いなくても、このような時間でMEAの正極−負極間の電圧を上記のように下げることができるのであれば、抵抗を用いずにスイッチのみを介してリード体などで接続して、導通可能としてもよい。
【0076】
燃料電池を構成するMEAに係る正極触媒層は、正極拡散層を介して拡散してきた酸素を還元する機能を有している。正極触媒層は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。また、必要に応じて、樹脂などのバインダをさらに含有していてもよい。
【0077】
正極触媒層が含有する触媒としては、酸素を還元できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金微粒子が挙げられる。また、上記触媒は、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウム及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素と白金との合金で構成される微粒子などであってもよい。
【0078】
触媒の担体である炭素粉末としては、例えば、BET比表面積が10〜2000m2/gであり、平均粒子径が20〜100nmのカーボンブラックなどが用いられる。炭素粉末への上記触媒の担持は、例えば、コロイド法などで行うことができる。
【0079】
上記炭素粉末と上記触媒との含有比率としては、例えば、炭素粉末100質量部に対して、触媒が5〜400質量部であることが好ましい。このような含有比率であれば、十分な触媒活性を有する正極触媒層が構成できるからである。また、例えば、炭素粉末上に触媒を析出させる方法(例えば、コロイド法)で触媒担持炭素粉末が作製される場合には、炭素粉末と触媒とが上記の含有比率であれば、触媒の径が大きくなりすぎず、十分な触媒活性が得られるからである。
【0080】
正極触媒層に含まれるプロトン伝導性材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができる。ポリパーフルオロスルホン酸樹脂としては、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。
【0081】
正極触媒層におけるプロトン伝導性材料の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、2〜200質量部であることが好ましい。プロトン伝導性材料が上記の量で含有されていれば、正極触媒層において十分なプロトン伝導性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0082】
正極触媒層に係るバインダとしては、特に制限はないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体及びエチレン・アクリル酸共重合体などの非フッ素樹脂などが用いることができる。
【0083】
正極触媒層におけるバインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。バインダが上記の量で含有されていれば、正極触媒層について十分な結着性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0084】
正極触媒層の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。
【0085】
負極触媒層は、負極拡散層を介して拡散してきた水素などの燃料を酸化する機能を有している。負極触媒層は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。また、必要に応じて、樹脂などのバインダをさらに含有していてもよい。
【0086】
負極触媒層に係る触媒は、水素などの燃料を酸化できれば特に制限はなく、例えば、正極触媒層に係る触媒として例示した上記の各触媒を用いることができる。負極触媒層に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、及びバインダについても、正極触媒層に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、及びバインダとして例示した上記の各材料を用いることができる。
【0087】
負極触媒層の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。
【0088】
固体高分子電解質膜は、プロトンを輸送可能であり、かつ電子伝導性は示さない材料で構成された膜であれば、特に制限はない。固体高分子電解質膜を構成し得る材料としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなども、固体高分子電解質膜の材料として用いることができる。
【0089】
固体高分子電解質膜の厚みは、5〜150μmであることが好ましい。
【0090】
(実施形態2)
本実施形態2では、本発明の燃料電池システムの他の例について説明する。図10は、本実施形態の燃料電池システムの概略斜視図を示す。図10において、図1及び図2と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。上記実施形態1と異なる点は、供給用送気部91及び排出用送気部90をそれぞれ複数(ここでは2つずつ)設置した点である。
【0091】
本実施形態では、2つの供給用送気部91、91及び2つの排出用送気部90、90をそれぞれ制御可能である。例えば、燃料電池100の負極側に供給する燃料が少ない場合、図10に示す2つの供給用送気部91及び2つの排出用送気部90のうち、それぞれ1つずつ停止させることにより、正極側へ供給される酸化剤ガスの供給量を抑えて発電させることができる。
【0092】
このように、複数の供給用送気部91及び複数の排出用送気部90をそれぞれ制御することで、燃料電池100の発電状態に応じて送気量を調整することができる。また、供給用送気部及び排出用送気部に使用する電力も抑えることができる。さらに、図10のような直方体形状の燃料電池100を用いる場合、セル全体に均一に酸化剤ガスを送気する場合においても有利である。
【0093】
(実施形態3)
本実施形態3では、本発明の燃料電池システムを用いた燃料電池発電システムの一例を説明する。図11は、本実施形態の燃料電池発電システムの一例を示す概略構成図である。
【0094】
本実施形態の燃料電池発電システムは、上記実施形態1の燃料電池システム101と、燃料電池100の燃料となる水素を製造する水素製造装置600と、燃料電池100内の燃料ガスをシステム外に排出する排気手段(符号は付していない)とを備えている。以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0095】
<燃料電池システム>
本実施形態における燃料電池システム101については、上記実施形態1において図1〜図9を用いて説明したので、ここでは説明を省略する。図11において、破線矢印は、排出用送気部90及び供給用送気部91により送気されるガスの流れ方向を示している。
【0096】
<水素製造装置>
本実施形態における水素製造装置600は、水素発生物質604を収容した水素発生物質収容容器603と、水602を収容した水収容容器601と、水収容容器601内の水602を水素発生物質収容容器603に輸送する輸送部としての例えばポンプ201と、気液混合流体を水素を含む気体と水とに分離する気液分離容器800と、気液分離容器800により気液混合流体から分離された水を水収容容器601に回収するための三方バルブ401とを備えている。この水素製造装置600は、水素発生物質604と水602とを発熱反応させることにより水素を製造する。この水素は、配管503、504及び505からなる燃料流路を経て燃料電池100に供給され、燃料として用いられる。
【0097】
水素発生物質収容容器603は、水素を発生させる水素発生物質604を収納可能であれば、その材質や形状は特に限定されないが、水や水素が漏れない材質や形状が好ましい。具体的な容器の材質としては、水及び水素を透過しにくく、かつ120℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、角柱状、円柱状などが採用できる。
【0098】
水収容容器601については特に制限はなく、例えば、従来の水素製造装置に使用されているものと同様の水を収容するタンクなどが採用できる。
【0099】
水素発生物質収容容器603及び水収容容器601は脱着式とすることもできる。これにより、水素発生物質収容容器603内の水素発生物質604が消費されつくしたり、水収容容器601内の水602がなくなったりした場合に、これらを取り外し、所定量の水素発生物質604が充填された水素発生物質収容容器603や、所定量の水602が充填された水収容容器601を新たに取り付けることで、再び水素を製造できる。
【0100】
水収容容器601に収容する水は、中性の水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液など、少なくとも水を含む液体であればよく、使用する水素発生物質との反応性などに応じて好適なものを選択すればよい。
【0101】
水素発生物質収容容器603に収容する水素発生物質604としては、特に制限はないが、水と120℃以下の低温で反応して水素を発生し得るものが望ましい。水素発生物質としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムの中の一種以上の元素を主体とする合金、さらには、金属水素化物などが好適に使用できる。上記合金を用いる場合、主体となる元素以外の金属成分は特に限定されない。主体となる元素とは、合金全体に対して50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有されている元素のことを意味する。
【0102】
上記の金属や合金からなる水素発生物質は、表面に酸化皮膜を形成して安定化する。このため、反応性を高めるためには、水素発生物質の粒径をできるだけ小さくし、反応面積を大きくすることが好ましい。例えば、水素発生物質粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、粒子形状は、反応効率を高めるためにフレークであることが好ましい。粒径が小さすぎると、嵩密度が小さくなり、充填密度が低下するだけでなく、取り扱いが困難になるため、水素発生物質の粒径は、0.1μm以上とすることが好ましい。
【0103】
上記平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱法などを用いることができる。具体的には、水などの液相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法である。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックHRA」などを用いることができる。
【0104】
また、水素発生物質として用い得る金属水素化物としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。これらの金属水素化物は、アルカリ水溶液中では比較的安定であるが、触媒が存在する場合、速やかに水と反応して水素を発生することができる。触媒としては例えばPt、Niなどの金属や酸などを用いることができる。
【0105】
水素発生物質は、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
また、上記水素発生物質は、水との反応性を高めるため、水と混合された状態で加熱してもよく、加熱された水を供給してもよい。
【0107】
さらに、上記水素発生物質を、水と反応して発熱する発熱物質(水素発生物質以外の物質)と共に用いることにより、低温(例えば5℃程度)の水を供給しても、上記発熱物質の発熱によって反応系内の温度を高めて、迅速な水素発生が可能となる。
【0108】
水と反応して発熱する発熱物質としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなど、水との反応により水酸化物となるか、あるいは、水和することにより発熱するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、塩化物、硫酸化合物などが挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムなどの金属水素化物などのように水との反応により水素を生成するものは、上記の通り、水素発生物質として使用することが可能であるが、上記の金属や合金を水素発生物質として使用する場合の発熱物質としても用いることができる。
【0109】
特に、水素発生物質として、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムの中の1種以上の元素を主体とする合金を使用する場合には、上記発熱物質を併用することが好ましい。他方、水素発生物質として上記の金属水素化物を用いる場合には、上記発熱物質を併用しなくても、比較的良好な速度で水素を製造できるが、発熱物質を併用して、さらに水素発生速度を高めてもよい。
【0110】
気液分離容器800は、気液混合流体を導入する導入管801、気液混合流体から分離された液体を排出する2つの排液管803及び804、気液混合流体から分離された気体を排出する排気管802を有する半球状の容器である。本実施形態では、気液分離容器800を設けることにより、燃料電池100に供給される水素を含む気体中の液体成分量を削減することができ、これにより、水分が供給されることによる燃料電池100の不具合を防止できる。図11において、排液管804は、配管510を介して水収容容器601に連結され、排液管803は、配管511、三方バルブ401、ポンプ201、配管501を介して水収容容器601に連結されている。導入管801は、配管503を介して水素発生物質収容容器603に連結されている。排気管802は、配管504、三方バルブ402、配管505を介して燃料電池100に連結されている。
【0111】
気液分離容器800としては、耐熱性及び耐腐食性に優れ、容器が変形しない不撓性材料からなるものであれば特に限定されないが、水や水素が漏れない材質や、50kPa程度の減圧及び加圧などの内圧変動に耐えうる構造がより好ましい。具体的な容器の材質としては、水及び水素を透過しにくく、かつ120℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、アクリル樹脂、硬質のポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、ここでは半球状としたが、他に角柱状、円柱状、球状などが採用できる。
【0112】
ここで、本実施形態の気液分離容器800の詳細な構成について図12を用いて説明する。図12は、本実施形態における気液分離容器800の内部の様子を示す概略透視図である。
【0113】
図12において、排液管803及び804は、気液分離容器800の上面に配置され、気液分離容器800の内部から外部に延伸している。この排液管803及び804は、気液分離容器800の内部側に第1開口部(符号は付していない)を有し、液体を気液分離容器800の内部から外部に排出する。排液管803及び804の第1開口部にはそれぞれ、可撓性を有する吸水管805の末端部が接続されており、吸水管805の先端部には錘806が設けられている。吸水管805は、錘806の作用により曲がり、吸水管805の吸水口809は気液分離容器800内で重力方向に移動し、気液分離容器800がどのような方向に傾いても気液分離容器800内に貯留する液体と接触可能な状態となる。これにより、気液分離容器800の傾きに関わらず、気液分離容器800内に貯留する液体を吸い込んで排出できる。
【0114】
また、2つの吸水管805は、互いに絡まないように固定バンド810で固定されている。これにより、吸水管805の曲がる角度を制限し、吸水管805同士の絡みつきや、吸水管805と排液管803、804または吸気管807との絡みつきを抑制可能である。なお、上記絡みつきを抑制する効果は、固定バンド810に限定されるものではなく、複数の吸水管805を接続する他の機構によっても得ることができる。例えば、錘806が複数の吸水管805を固定する役割を兼ねるものであれば、固定バンド810の設置を省略でき、固定バンド810が外れるなどの問題を回避することもできる。
【0115】
導入管801は、気液分離容器800の上面に配置され、気液分離容器800の内部から外部へ延伸している。この導入管801は、気液分離容器800の内部側に第2開口部(符号は付していない)を有し、気液混合流体を気液分離容器800の外部から内部に導入する。
【0116】
排気管802は、気液分離容器800の上面に配置され、気液分離容器800の内部から外部へ延伸している。この排気管802は、気液分離容器800の内部側に第3開口部(符号は付していない)を有し、気体を気液分離容器800の内部から外部に排出する。この排気管802の第3開口部には吸気管807の末端部が接続されており、吸気管807の先端部は気液分離容器800の中心部に配置されており、先端部の開口部である吸気口808から気液分離容器800内の気体を吸い込み排気管802内へ輸送する。これにより、気液分離容器800内に貯留する液体の液面が吸気口808にまで達しない限り、気液分離容器800がどのような方向に傾いても、吸気口808が気液分離容器800内の液体と接触するのを回避し、排気管802方向への液体の侵入を抑制できる。なお、図12において、排気管802と吸気管807は、区分不可能なように一体的に形成されている。
【0117】
排液管803、804、導入管801及び排気管802としては、耐熱性、耐薬品性及び強度に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、PTFE、硬質シリコン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、四フッ化エチレン、ポリサルフォンなどの樹脂製チューブ、ステンレス鋼製パイプなどの金属パイプが好適に用いられる。
【0118】
吸水管805としては、中空でかつ可撓性を有するものであれば特に限定されないが、耐熱性及び耐薬品性などに優れたフロンチューブや、シリコンチューブが好適に用いられる。
【0119】
錘806としては、耐薬品性に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、メッキを施した鉛製のものや、ステンレス鋼製のものが好適に用いられる。また、錘806の重量は、例えば、捕集する液体が水である場合、その比重(d=1.0)以上であって、吸水管805の浮力を差し引いた重量よりも大きければ特に限定されないが、錘の応答性から、比重(d≧10)以上が好ましい。錘806の大きさは、方向自在性を確保するため、壁面や配管に当たらない程度の大きさであれば、特に問題にならないが、気液分離容器800全体積の10%未満であることが好ましい。
【0120】
吸気管807としては、耐熱性及び耐薬品性に優れたものであれば、特に限定されないが、PTFEチューブや、硬質シリコンチューブなどが好適に用いられる。吸気管807の形状は、気液分離容器800の中心に吸気口808を配置できる形状であれば特に限定されないが、錘806によりあらゆる方向に移動する吸水管805と絡まないように配置することがより好ましい。
【0121】
固定バンド810としては、腐食しにくいものであれば特に限定されないが、例えば容器と同じ材質のものを用いることができる。
【0122】
このような構成の気液分離容器800内に気液混合流体が導入されると、気液混合流体中の液体は、排液管803、804の方向に排出され、気液混合流体中の気体は、排気管802の方向に排出される。例えば、気液混合流体が水と水素を含むものである場合、導入管801から気液分離容器800内に導入された気液混合流体中の水は、気液分離容器800がどのような方向に傾いたとしても、気液分離容器800内において重力方向下向きに溜まる。そして、この貯留水は、錘806の作用により重力方向に曲がった吸水管805の吸水口809から吸い込まれ、吸水管805を経て排液管803、804方向に排出される。このときの排水の動力源は、例えば、排液管803、804の流路上にポンプを経由し、送液する場合や、また水収容容器から水素発生物質収容容器へ送液するポンプの作用によって、気液分離容器800の外部に排液させることができる。一方、気液混合流体中の水素は、気液分離容器800の中心に設置した吸気口808より吸い込まれ、吸気管807を経て、排気管802方向に排出される。この排出された水素を、燃料電池の水素源にすることができる。
【0123】
以上で図12を用いた気液分離容器800の説明を終わり、以下、本実施形態の水素製造装置の動作について図11を用いて説明する。
【0124】
水収容容器601に収容されている水602は、ポンプ201を駆動させることによって、配管501及び配管502を通じて水素発生物質収容容器603に輸送される。水素発生物質収容容器603内では、水素発生物質604と水602とが反応して水素が発生し、この水素は配管503に排出される。水素と共に水蒸気が配管503に排出された場合、水蒸気は配管503内で冷却されて水となり、水と水素との気液混合流体が気液分離容器800の導入管801に導入されることになる。気液分離容器800内では、上記気液混合流体は、重力差により、水素を含む気体と、水とに分離される。
【0125】
分離された水素を含む気体は、排気管802、配管504、505を通じて燃料電池100に供給される。気液分離容器800は上述したように方向自在性を有するため、水素製造装置がどのような方向に傾いても気液分離を行うことができ、燃料電池100に安定して水素を供給可能であるとともに、水分が供給されることにより燃料電池100に不具合が生じるのを回避できる。
【0126】
一方、分離された水は、以下のようにして水収容容器601に回収され、水素発生物質収容容器603に供給される水602として再利用される。これにより、水の利用効率を高めることができる。さらに、水素製造用の水を収容している水収容容器601を回収容器としても利用するため、気液分離容器800で分離された水を回収するための回収容器を別途備える必要がなく、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0127】
次に、気液分離容器800内で分離された水を水収容容器601に回収する機構について詳述する。
【0128】
ポンプ201を用いて水収容容器601内の水602を水素発生物質収容容器603に一定割合で供給している間は、水収容容器601の内部圧力が減圧状態になる。この減圧状態を補償するように、水収容容器601に接続された他の配管510内において、気液分離容器800の排液管804側から水収容容器601側の方向に吸引力が生じる。この現象を利用することにより、気液分離容器800内の貯留水を、水収容容器601に回収することができる。そのため、配管510の途中に、気液分離容器800内の水を水収容容器601へ輸送するポンプを別途設ける必要がなく、省電力化できる。
【0129】
一方、燃料電池100の発電終了時など水素を製造する必要がない場合は、ポンプ201の駆動を停止して水素発生物質収容容器603への水供給を停止するが、水供給を停止してもしばらくの間は、水素発生物質収容容器603内に残留する水602と水素発生物質604が反応して水素が発生し、これに伴い水が生じ、この水が気液分離容器800内に溜まる。そのため、上記水供給の停止後一定時間、気液分離容器800内から水を回収する必要がある。そこで、本実施形態では、三方バルブ401を配管511と配管501が通じる方向に切り替え、ポンプ201を、水収容容器601から水素発生物質収容容器603へ送液する方向とは逆向きに動作させることによって、気液分離容器800内に溜まった水を配管511、三方バルブ401、配管501を通じて水収容容器601に回収する。さらに、水収容容器601へ回収した水の体積分に相当する気体(空気)が、水収容容器601から配管510、気液分離容器800、配管504、505を経て燃料電池100に送られるため、水収容容器601及び気液分離容器800の内圧も高くならないため、安全である。
【0130】
<排気手段>
本実施形態における排気手段は、上述したように、燃料電池100内の燃料ガスをシステム外に排出するためのものである。図11において、排気手段は、配管506、507、508、509、圧力センサ300、バルブ402、バルブ403、逆止弁700、及び燃料電池100から排出されたガス中の水素を消費するための水素消費装置900により構成されている。
【0131】
バルブ403は、燃料電池100内の燃料ガスを燃料電池100外に間欠的に排出するためのものである。図11に示す本実施形態の燃料電池発電システムでは、燃料電池100による発電に伴って、燃料電池100の負極側に燃料ガス(発電に関与しなかった残留水素、及び発電の際に正極側から拡散してくる不純ガスを含むガス)や微量の生成水が蓄積するが、これらによって燃料電池100内の圧力がある程度高まった時点で、バルブ403を用いて上記ガスや微量の生成水を配管507側に排出する。このように、バルブ403の作用によって、燃料電池100内のガスや生成水を間欠的に燃料電池100外に排出できる。
【0132】
圧力センサ300は、配管505内の圧力を測定するものである。この圧力センサ300での測定結果に基づいて、適時バルブ403の開閉動作を制御することで、燃料電池100内のガスや生成水を配管507側へ排出することができる。バルブ403は、燃料電池100内の負極の圧力と外部の圧力(例えば大気圧)との差圧が1〜300kPaに達した段階で開閉動作を行うよう制御されるのが望ましい。差圧が1kPa未満で開く場合は、圧力差が小さすぎて水を排出する能力が低下し、差圧が300kPaを超えるまで開かない場合は、内圧が高くなりすぎてMEAを破損する虞が生じる。また、バルブ403が、上記適正圧力範囲にある場合、一定時間毎にバルブ403を開閉させることもできる。一定時間毎に開閉させた場合、燃料電池100の発電時に生じた生成水を外部に強制的に排出させることが可能になる。
【0133】
このように、圧力センサ300を用いて燃料電池の圧力を測定しながらバルブ403の開閉動作を制御することで、燃料電池の圧力が高くなりすぎて燃料電池から水素が漏れ出たり、燃料電池が破裂したりすることを抑制でき、適正に発電させることができる。また、燃料電池の出力状態と圧力情報を考慮して、出力を適正に維持できるように発電させることも可能となる。
【0134】
水素消費装置900は、燃料電池100から排出されたガスや、気液分離容器800で水分が除去された後のガスに含まれる水素を消費する。図11に示すシステムでは、燃料電池100から排出されたガスは、配管507を通じて水素消費装置900に導入され、気液分離容器800で水分が除去された後のガスは、後述するように、配管506を通じて水素消費装置900に導入される。図11の水素消費装置900はMEAを有しており(図示しない)、燃料電池100の有するMEAによる発電と同じ機構によって、上記ガス中の水素を消費する。水素消費装置900によって水素が除去されたガスは、配管509を経てシステム外に排出される。なお、図11に示すシステムでは、配管509の出口が、排出用送気部90からの送風が当たるように配置しているため、水素消費装置900で処理しきれずに僅かに水素が残留していても、希釈しつつシステム外に排出することができる。
【0135】
また、水素消費装置900の後には水蒸散装置(図示せず)を設置してもよい。燃料電池100の発電で生じた微量の生成水や、気液分離容器800で分離しきれなかった水が燃料電池100に導入され、圧力センサ300とバルブ403の制御によって、燃料電池100の外部へ排出される水が、配管507を経て、水素消費装置900に導入され、水素が除去されて残った水が、水蒸散装置に供給される。この水蒸散装置を設置することで、燃料電池発電システムの外部へ水を排出することを抑制することができる。また、この水蒸散装置は、水素消費装置900を兼ねることもできる。
【0136】
ところで、一般的に、燃料電池では、発電が停止している際に、燃料電池内の正極に空気、負極に水素がそれぞれ貯留した状態が長時間継続すると、電極の劣化が生じる。この原因は定かではないが、この場合、電圧が発電時よりも高い状態で維持されるために、正負極の炭素や触媒が酸化するためではないかと推測される。よって、燃料電池発電システムでは、発電の終了時に、燃料電池内への水素の侵入を防止できるように構成されていたり、燃料電池内に残留する水素を除去できるように構成されていたりすることが好ましい。
【0137】
図11に示すシステムでは、水素製造装置600からの水素を燃料電池へ導入するための配管504と配管505との間にバルブ402が設けられている。また、このバルブ402は、配管506を経由して水素消費装置900に接続されている。そのため、燃料電池100の発電終了時に、バルブ402を作動させて、水素製造装置600からの水素を、燃料電池100に送らずに、配管506を通じて水素消費装置900に直接供給し、処理することができる。同時にバルブ403は、配管507と逆止弁700が通じる方向に切り替えることもできる。これは、燃料電池100内の残存水素を消費させるため、燃料電池100の正負極をショートさせることで残存水素を消費することができる。この場合、燃料電池100の内部が減圧され、MEAが破損する虞がある。このため、バルブ403を配管507と逆止弁700が通じる方向に切り替え、外気を取り入れることで燃料電池100の内圧低下を防止することができる。これらの操作により、図11に示すシステムでは、燃料電池100による発電の終了時に、燃料電池100内への水素の侵入を防止して、かかる水素による燃料電池100の劣化を抑制することができる。
【0138】
本実施形態の燃料電池発電システムに係る水素消費装置は、システム内の水素を消費して除去できるものであれば特に制限はないが、例えば、MEAを有し、燃料電池に係るMEAによる発電と同じ機構により水素を消費する装置や、水素を酸化し得る触媒を有する装置などが挙げられる。
【0139】
燃料電池に係るMEAによる発電と同じ機構により水素を消費する装置としては、具体的には、図4及び図5に示した燃料電池を構成するMEAのように、正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層及び負極拡散層が順次積層されており、正極と負極とが、例えば、スイッチ及び抵抗を介して導通可能なように接続されている構成のMEAを有する水素消費装置が挙げられる。
【0140】
水素消費装置のMEAに係る正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層及び負極拡散層については、燃料電池のMEAに係る正極拡散層、正極触媒層、固体高分子電解質膜、負極触媒層及び負極拡散層として、先に記載したものと同じものが使用できる。
【0141】
上記の水素消費装置の場合、ガス中の水素を消費する必要が生じたときに、正極と負極との接続部におけるスイッチを入れ、MEAの正極−負極間を導通させることで、ガス中の水素を消費できる。これにより、燃料電池内から排気され、システム外に排出する必要のあるガス中の水素や、燃料電池による発電の終了時に、水素製造装置から燃料電池内に侵入する水素を、完全に無くすか、またはそれらの水素量を大幅に低減することができる。
【0142】
上記のMEAを有する水素消費装置において、MEAの正極と負極とを抵抗を介して接続する場合、かかる抵抗としては、例えば、水素消費装置内に水素が導入されてから、MEAの正極−負極間の電圧が0.1V以下となるのに要する時間が1分以内となるような抵抗値を有するものを用いればよい。また、抵抗を用いなくても、このような時間でMEAの正極−負極間の電圧を上記のように下げることができるのであれば、MEAの正極と負極とは、抵抗を用いずにスイッチのみを介してリード体などで接続して、導通可能としてもよい。
【0143】
水素消費装置は、上記の通り、燃料電池と同様にMEAを備えているため、例えば、燃料電池に複数のMEAを有するもの(スタック)を使用し、その一部のMEA(例えば、1つ、2つ、3つなど)を水素消費装置として使用する形態で、燃料電池と水素消費装置とを一体化(図示せず)した構成とすることもできる。
【0144】
水素を酸化し得る触媒を有する水素消費装置としては、例えば、上記触媒を含有するフィルター、筒状などの外装体に上記触媒を充填したもの、などが例示できる。なお、水素を酸化し得る触媒としては、例えば、MEAの負極触媒層における触媒として先に例示した各種触媒などを用いることができる。
【0145】
供給用送気部91及び排出用送気部90の送気方向は、燃料電池システムを動作させる周囲の環境温度などによって適宜変えることもできる。燃料電池100は、制御するための補機類や回路と共にシステムの筐体内に設置させる必要がある。また筐体内部の補機類や回路からは、発電の制御に伴い、発熱を伴うこともある。燃料電池100を効率よく発電させるためには、5℃以上50℃以下の範囲が好ましい。5℃未満では、燃料電池100の発電効率が低下し、また燃料電池100の内部に残存している水が凍結する虞もある。一方、50℃を大きく越える場合、燃料電池100内の水が蒸散しやすくなり、発電効率が低下する虞がある。
【0146】
このため、燃料電池発電システムを作動させる環境が低い温度(例えば、0℃付近)の場合、筐体内部の補機類や回路で発熱した酸化剤ガス(例えば、空気)を用いることで安定に発電することができる。このため、供給用送気部91及び排出用送気部90は、筐体内部の補機類や回路を経た気体を燃料電池100に供給する方向に送気させるのが好ましい。一方、環境温度が高い温度(例えば、60℃付近)の場合、燃料電池100へ供給される酸化剤ガス(例えば、空気)の温度は、外気を取り込む方向(例えば、排出用送気部90から供給用送気部91の方向)に送気するのが好ましい。
【0147】
上記実施形態1〜3において、図1〜図12を用いて本発明の燃料電池システム及び本発明の燃料電池システムを用いた燃料電池発電システムについて説明したが、図1〜図12は、本発明の燃料電池、燃料電池システム及び燃料電池発電システムに使用可能な構成要素の一部を示したものに過ぎず、本発明の燃料電池システムや、本発明の燃料電池システムを用いた燃料電池発電システムは、これらの図面に示すもの、またはこれらの図面に示す構成要素を有するものに限定される訳ではない。
【実施例】
【0148】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0149】
(実施例1)
<燃料電池の作製>
まず、図2に示すものと同様の構造の燃料電池100を作製した。
【0150】
正極触媒層、固体高分子電解質膜、及び負極触媒層の積層体には、図7に示す構成のものを用いた。固体高分子電解質膜には、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)112」を用いた。Pt担持カーボン(田中貴金属社製「TEC10E50E」)と、5質量%濃度のNafion溶液(Aldrich社製)とを所定量で混合し、これをポリテトラフルオロエチレンシートの片面に塗布し、乾燥させた。そして、固体高分子電解質膜の両面に、ポリテトラフルオロエチレンシートを、Pt担持カーボンとNafion溶液との混合物の塗布面が固体高分子電解質膜側となるように重ねてホットプレスを行い、ポリテトラフルオロエチレンシートを除去し、正極触媒層、固体高分子電解質膜及び負極触媒層の積層体を得た。その後、上記積層体を、外形が24mm×85.5mmとなるように切り出した。
【0151】
SGLカーボン社製の「GDL10DC」(厚み470μm)を24mm×71.5mmのサイズに切り出して正極拡散層に用いた。また、正極ガスシールには、24mm×7mmのシリコンゴムシート(厚み0.3mm)を2枚用意し、いずれにも20mm×3mmの穴(燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールド)を形成した。
【0152】
負極ガスシールには、正極ガスシールと同じシリコンゴムシートを用い、サイズを24mm×85.5mmとし、かつ、負極拡散層を挿入すると共に燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドを構成するための、20mm×81.5mmのサイズの穴を形成した。負極拡散層には、正極拡散層に用いたものと同じ材料を使用し、20mm×75.5mmのサイズに切り出して用いた。
【0153】
上記の積層体、正極拡散層、正極ガスシール、負極拡散層及び負極ガスシールを、図4に示す順序及び配置で積層したMEAを15個作製した。
【0154】
セパレータには、カーボン製(最も厚い部分の厚みが2mm)で、図6に示す構成のものを用いた。外形は24mm×85.5mmとし、燃料供給マニホールド11及び燃料排出マニホールド12のサイズは20mm×3mmとした。酸化剤ガス流路(冷却媒体流路を兼ねた酸化剤ガス流路)13は、幅1.5mm、深さ1.5mmとし、酸化剤ガス流路13間のリブ14の幅は1mmとした。
【0155】
上記15個のMEAを、上記セパレータを酸化剤ガス流路形成面側が正極拡散層側となるようにして各MEA間に介在させつつ重ね、これら積層体の上下を2枚のエンドプレート(アルミニウム製で、サイズが38mm×90mm)で挟持し、ボルト及びナットを用いて固定して、図2に示す構造の燃料電池100を作製した。
【0156】
<燃料電池システムの作製>
上記燃料電池100に、図1及び図3に示すように供給用送気部91及び排出用送気部90を設置することにより、燃料電池システム101を作製した。供給用送気部91及び排出用送気部90には、40mm角のDCファンを用いた。供給用送気部91及び排出用送気部90は、エンドプレート50との間の距離を0mmとして固定し、供給口51及び排気口52を密閉するように、ダクト80を設置した。
【0157】
<水素製造装置の作製>
図11に示す水素製造装置600を作製した。水素発生物質収容容器603には、内容積50cm3のポリプロピレン製角柱状の容器を用い、その中に、平均粒径6μmのアルミニウム粉末(水素発生物質)20.7gと、酸化カルシウム(発熱物質)3.5gとを入れた。
【0158】
<燃料電池発電システムの組み立て>
燃料電池システム101と、水素製造装置600と、排気手段としての圧力センサ300、水素消費装置900、逆止弁700を用いて、図11に示す燃料電池発電システムを組み立てた。
【0159】
(比較例1)
比較例1では、供給口51側に供給用送気部91及びダクト80を設置しなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして燃料電池システムを作製した。図13に、比較例1の燃料電池システムの概略構成を示し、図14に、図13に示す燃料電池システムのVI−VI線断面図を示す。図13及び図14において、図1及び図3と同一構成要素には同一符号を付している。なお、図14の断面図では、酸化剤ガス流路を省略し、排出用送気部90を簡略化して表している。また、図14ではハッチングを省略している。
【0160】
本比較例の燃料電池システムでは、排出用送気部90として、40mm角のDCファンを1個設置した。エンドプレート50と40mm角のDCファンとの間の距離は0mmとし、排気口52には、ダクト80を設置した。そして、この燃料電池システムを用いて、実施例1と同様にして燃料電池発電システムを組み立てた。
【0161】
<発電試験>
実施例1の燃料電池発電システム及び比較例1の燃料電池発電システムの発電試験を行った。具体的には、水収容容器601内の水602を水素発生物質収容容器603へ供給して水素を発生させ、供給口51から排気口52の方向に酸化剤ガス(酸素を含む空気)を送気し、外部負荷(図示せず)によって9.5Vの定電圧で発電試験を行った。
【0162】
実施例1及び比較例1の燃料電池発電システムでの発電特性の結果を図15に示す。図15において、縦軸は出力(W)を示し、横軸は時間(分)を示している。図15から、排気口のみに送気部を設置している比較例1と比べ、供給口と排気口の双方にそれぞれ1個送気部を設置している実施例1の方が、発電性能が長時間に亘り安定していることが分かった。よって、安定に発電して省スペース化を達成するためには、供給口及び排気口の双方に送気部があるのが好ましいと言える。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の燃料電池システムは、パソコン、携帯電話などのコードレス機器といった高機能のポータブル型電子機器の電源用途を始めとして、従来の燃料電池が使用されている各種用途に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0164】
10 セパレータ
11 燃料供給マニホールド
12 燃料排出マニホールド
13 酸化剤ガス流路
14 リブ
20 MEA
20a 積層体
21 正極拡散層
22 正極触媒層
23 固体電解質膜
24 負極触媒層
25 負極拡散層
30 正極ガスシール
40 負極ガスシール
50 エンドプレート
51 供給口
52 排気口
60 燃料供給口
70 燃料排出口
80 ダクト
90 排出用送気部
91 供給用送気部
100 燃料電池
101 燃料電池システム
201 ポンプ
300 圧力センサ
401、402、403 バルブ
501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511 配管
600 水素製造装置
601 水収容容器
602 水
603 水素発生物質収容容器
604 水素発生物質
700 逆止弁
800 気液分離容器
801 導入管
802 排気管
803、804 排液管
805 吸水管
806 錘
807 吸気管
808 吸気口
809 吸水口
810 固定バンド
900 水素消費装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を還元する正極触媒層を有する正極と、燃料を酸化する負極触媒層を有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置される固体高分子電解質膜とを有する電極・電解質一体化物をセパレータを介して複数積層してなる燃料電池と、
前記セパレータの一主面に形成され、酸化剤ガスの供給口及び排出口を有する酸化剤ガス流路と、
酸化剤ガスを前記酸化剤ガス流路の前記供給口に供給する供給用送気部と、
前記酸化剤ガス流路内の酸化剤ガスを前記酸化剤ガス流路の前記排出口から外部に排出する排出用送気部とを含む、ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記供給用送気部または前記排出用送気部を複数含む請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
複数の前記供給用送気部または複数の前記排出用送気部をそれぞれ制御可能である請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記供給用送気部及び前記排出用送気部の風量は、前記燃料電池の温度が一定範囲内になるよう調整される請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記電極・電解質一体化物は、平面視での形状が四角形であり、
前記セパレータは、平面視での形状が四角形であり、かつ単一部材で構成されており、
前記電極・電解質一体化物、及び前記セパレータには、前記四角形を構成する4辺のうちの1辺の近傍に燃料供給マニホールドが形成され、前記1辺に対向する1辺の近傍に燃料排出マニホールドが形成されており、
前記酸化剤ガス流路は、前記セパレータの一主面における、前記燃料マニホールド及び前記燃料排出マニホールドが近傍に形成された対向する2辺とは別の2辺を直線状に繋ぐように複数個平行または略平行に形成されており、その両端部が酸化剤ガスの前記供給口と前記排出口である請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記電極・電解質一体化物の前記負極は、前記セパレータの前記酸化剤ガス流路が形成されていない側の面に接するように配置された負極拡散層を有し、
前記負極拡散層は、平面視での形状が四角形であり、前記負極拡散層の外周外側には、燃料ガスの流出を抑制するための負極ガスシールが形成されており、
前記負極拡散層の前記四角形を構成する4辺のうちの1辺と前記負極ガスシールとで燃料供給マニホールドが形成され、かつ、前記負極拡散層の前記1辺に対向する1辺と前記負極ガスシールとで燃料排出マニホールドが形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記電極・電解質一体化物の前記正極は、前記セパレータの前記酸化剤ガス流路が形成されている側の面に接するように配置された正極拡散層を有し、
前記正極拡散層は、平面視での形状が四角形であり、前記四角形を構成する4辺のうち、前記セパレータの前記酸化剤ガス流路と平行または略平行な2辺の外側に、燃料ガスの流出を抑制するための正極ガスシールが配置されており、
前記正極ガスシールには、燃料供給マニホールド及び燃料排出マニホールドが形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記セパレータの前記酸化剤ガス流路は、冷却媒体流路を兼ねている請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記正極触媒層と、前記負極触媒層と、前記固体高分子電解質とが、平面視で同一形状である請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate