説明

燃料電池システム

【課題】シリカを除去し、安定な運転を維持する燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システムが、燃料電池13と水素生成器11から排出されるガスから回収される凝縮水を貯える凝縮水タンク15と、凝縮水タンク15に貯水した凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置19と、凝縮水を浄化する浄水器18と、浄化水を貯える浄化水タンク17を具備して構成される。凝縮水タンク15に貯水した凝縮水が凝縮水供給器110によってアルカリ化装置19に送られ、凝縮水中のシリカがイオン化された後、浄水器18に送られる。浄水器18において、イオン化したシリカが吸着除去された後、浄化水タンク17に送られる。浄化水タンク17から、浄化水が水素生成器11と燃料電池13に供給され、燃料電池システム10が起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器を利用した燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムには、燃料電池から排出される排空気中の水分と、水素生成器で原料ガスを燃焼して得られる燃焼排ガス中の水分とを凝縮することによって得た凝縮水を一旦凝縮水タンクに貯水し、当該凝縮水タンクから、ポンプなどの送水手段を用いて凝縮水を浄水器に送り、凝縮水に含まれるカチオン及びアニオンを除去した後、燃料電池の冷却水や、燃料電池の発電に利用する水素を生成するための水として利用する構成をとるものがある。特に、浄水器は、凝縮水に含まれるカチオンを除去するためのカチオン交換樹脂と、凝縮水に含まれるアニオンを除去するためのアニオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂から構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、少なくとも強塩基性アニオン交換樹脂を用いて構成されるカートリッジを有し、当該カートリッジの上流側に、フッ酸を注入するフッ酸供給装置を配置し、被処理水に含まれるシリカを処理する浄水器もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図5は、特許文献1に開示された従来の燃料電池システムの概略を示した構成図である。図5に示すように、燃料電池53は、水素生成器51の燃焼部52において原料ガスを燃焼して得られる水素を主成分とする燃料ガスと、外部から供給される空気を利用して発電する。燃料電池53から排出される排空気は、排空気凝縮器510に供給され、そこで、排空気に含まれる水蒸気が凝縮され、凝縮水として凝縮水タンク54に回収される。また、水素生成器51で原料ガスの改質反応の際に発生する燃焼排ガスは、燃焼排ガス凝縮器511に供給され、そこで、燃焼排ガスに含まれる水蒸気が凝縮され凝縮水として凝縮水タンク54に回収される。また、凝縮水タンク54には、燃料電池システムの外部から水道水が補給される。
【0005】
凝縮水タンク54に貯えられた凝縮水と水道水は、ポンプ56によって、浄水器57に送られる。浄水器57にはイオン交換樹脂を使用している。イオン交換樹脂は、凝縮水に含まれるカチオンとアニオンを除去するため、カチオンを吸着除去するカチオン交換樹脂と、アニオンを吸着除去するアニオン交換樹脂とが利用される。カチオン及びアニオンが除去された凝縮水は、浄化水として、浄化水タンク55に貯えられる。浄化水タンク55に貯水した浄化水は、改質水ポンプ59によって水素生成器51に送られ、原料ガスの改質反応に利用される。また、浄化水タンク55に貯えた浄化水は、冷却水循環ポンプ58によって、燃料電池53を循環する。このように、電気伝導率の低い浄化水が燃料電池53を循環することにより、燃料電池53の絶縁が可能になるだけでなく、配管部材や水タンクの腐食を防止することが可能になる。
【0006】
図6は、特許文献2に開示された従来の浄水器の概略を示した構成図である。図6に示すように、浄水器61は、カートリッジ62と、フッ酸供給装置63で構成される。ここで、カートリッジ62は、少なくとも強塩基性アニオン交換樹脂を容器に充填して構成され、また、フッ酸供給装置63は、フッ酸を有して構成される。被処理水中のシリカは、フッ酸供給装置63において、フッ素イオンと反応し、強酸イオンであるSiF2−になった後、その上流側に配置されるカートリッジ62に送られる。カートリッジ62において、SiF2−が、カートリッジ62に充填される強塩基性アニオン交換樹脂で吸着され、被処理水中のシリカが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−231990号公報
【特許文献2】特開平7−136648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る従来の構成では、燃料電池システムに供給される水道水に含まれるシリカや、配管及び当該配管等の接合に利用される接着剤やシール剤に使用されるシリコーン樹脂に含まれるシリカは、凝縮水中でイオンとして電離しないため、イオン交換樹脂を用いた浄水器で除去できないという課題を有していた。これにより、浄水器の下流側に配置される水素生成器や燃料電池、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積し、水やガスの通流を妨げ、燃料電池システムを長期に亘り安定して運転できないという課題を有していた。
【0009】
また、特許文献2に係る浄水器を燃料電池システムに利用した場合、フッ酸供給装置によりシリカを予めイオン化するので、強塩基性アニオン交換樹脂でシリカを吸着し除去できるが、フッ酸供給装置をカートリッジとは別に配置する必要がある。これにより、浄水器の容積が大きくなり、燃料電池システムの低容積化を図ることができないという重要な課題を有していた。また、フッ酸を利用するため、強酸を貯蔵するための容器や強酸を通流するための配管等において、錆等を防止する目的で、耐酸性に優れるフッ素樹脂等の高価な部材を使用する必要があるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、水道水に含まれるシリカや、配管及び当該配管等の接合に利用される接着剤やシール剤に使用されるシリコーン樹脂に含まれるシリカを、簡易な構成でイオン化し、除去できる低容積の浄水器を提供し、安定な運転を継続できる低容積の燃料電池システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、水素生成器と、燃料電池と、凝縮水を貯える凝縮水タンクと、凝縮水タンクに貯えた凝縮水を送水する凝縮水供給器と、凝縮水供給器により送水される凝縮水を浄化し浄化水とする浄水器と、浄化水を貯える浄化水タンクと、凝縮水タンク及び浄水タンクを連通する浄水経路と、浄水経路のうち浄水器より上流側の部分に設けられ、浄水器に供給される凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置を備える構成としたものである。
【0012】
これによって、アルカリ化装置を通過した凝縮水がアルカリ化し、浄水器に供給される凝縮水に含まれるシリカがイオン化するため、イオン化したシリカを浄水器におけるイオン交換樹脂により吸着除去することができ、シリカが浄水器の下流側に漏洩することを抑制できる。そのため、浄水器の下流側に配置される水素生成器や燃料電池、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積することを抑制でき、燃料電池システムを安定して運転することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムは、凝縮水供給器を、浄水経路のうちアルカリ化装置より上流側の部分、又は浄水器より下流側の部分に設ける構成としたものである。
【0014】
これによって、凝縮水供給器がアルカリ化された凝縮水に曝されるのを回避することができるので、凝縮水供給器の耐久性が低下することを防止できる。
【0015】
また、本発明の燃料電池システムは、アルカリ化装置を、凝縮水に含まれるアニオンを
水酸化物イオンに交換して、凝縮水をアルカリ化するアニオン交換体を含む構成としたものである。
【0016】
これによって、凝縮水の中に含まれるアニオンが水酸化物イオンに交換され、交換された水酸化物イオンが凝縮水中に溶出し、アルカリ化装置を通過する凝縮水をより確実にアルカリ化できるので、凝縮水に含まれるシリカが容易にイオン化し、浄水器におけるイオン交換樹脂によるシリカの吸着除去を促進することができる。
【0017】
また、本発明の燃料電池システムは、アルカリ化装置を、凝縮水に溶解して凝縮水をアルカリ化するアルカリ化剤を含む構成としたものである。
【0018】
これによって、アルカリ化装置を通過する凝縮水をより確実にアルカリ化できるので、凝縮水に含まれるシリカが容易にイオン化し、浄水器におけるイオン交換樹脂によるシリカの吸着除去を促進することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の燃料電池システムは、簡易かつ低容積な構成で、水道水に含まれるシリカや、配管及び当該配管等の接合に利用される接着剤やシール剤に使用されるシリコーン樹脂に含まれるシリカを除去でき、安定な運転を継続する低容積の燃料電池システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池システムを示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるアルカリ化装置を示す構成図
【図3】本発明の実施の形態2におけるアルカリ化装置を示す構成図
【図4】シリカの存在状態のpH依存性を示す相関図
【図5】従来の燃料電池システムを示す構成図
【図6】従来の浄水器を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、原料ガス及び水を改質して水素を含む燃料ガスを生成する水素生成器と、前記燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、前記原料ガス、燃料ガス、及び前記燃料電池から排出される燃料排ガスの少なくとも一つを燃焼する燃焼器と、前記燃料電池から排出される燃料排ガスに含まれる水蒸気を凝縮した燃料排ガス凝縮水、及び、前記燃焼器から排出される燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮した燃焼排ガス凝縮水のうちの少なくとも一方である凝縮水を貯える凝縮水タンクと、前記水素生成器に供給する浄化水を貯える浄化水タンクと、前記凝縮水タンクに貯水した凝縮水を前記浄化水タンクに供給する凝縮水供給器と、前記浄化水タンクに貯えた浄化水を前記水素生成器に供給する浄化水供給器と、前記凝縮水タンク及び前記浄水タンクを連通する浄水経路と、前記浄水経路の途中に設けられ、前記凝縮水タンクに貯水した凝縮水を浄化し浄化水とする浄水器と、前記浄水経路のうち前記浄水器より上流側の部分に設けられ、前記浄水器に供給される凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置を備える燃料電池システムである。
【0022】
この構成により、アルカリ化装置を通過した凝縮水がアルカリ化し、浄水器に供給される凝縮水に含まれるシリカがイオン化するため、イオン化したシリカを浄水器におけるイオン交換樹脂により吸着除去することができる。したがって、シリカが浄水器の下流側に漏洩することはなく、浄水器の下流側に配置される水素生成器やスタック、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積することはなく、燃料電池システムを安定して運転することができる。
【0023】
ここで、アルカリ化装置により凝縮水がアルカリ化され、凝縮水に含まれるシリカが浄水器において吸着除去されることについて、以下、図面を参酌し、より詳細に説明する。
【0024】
図4は、シリカの水溶液中での存在状態のpH依存性を示す相関図である。シリカ(SiO)は、水溶液中で水と反応し、非イオン性のHSiOとなるが、HSiOは、図4に示すように、アルカリ性域(pH8以上)で一部電離し、イオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)の状態で存在する。一方、pH8以下のpH域では、HSiOは電離せず、非イオン性のシリカ(HSiO)の状態で存在する。
【0025】
ここで、凝縮水タンクに貯水した凝縮水は、燃料器で燃料排ガス等を燃焼する際に発生する炭酸ガスを含むため弱酸性(概ねpH5)を示す。したがって、凝縮水タンクに貯水した凝縮水中において、シリカ(SiO)は非イオン性のHSiOの状態で存在する。次に、凝縮水タンクに貯水した凝縮水は、凝縮水供給器によりアルカリ化装置に送られ、アルカリ化装置を通過する際にアルカリ化される(概ねpH11以上)。この時、凝縮水中に含まれるシリカ(SiO)は、イオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)となり、浄水器に送られる。浄水器において、凝縮水中のイオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)がイオン交換樹脂と接触し、その表面に吸着されることで、除去されることになる。
【0026】
第2の発明は、特に、第1の発明の燃料電池システムにおいて、凝縮水供給器を、浄水経路のうちのアルカリ化装置より上流側の部分、又は浄水器より下流側の部分に設けた構成とした燃料電池システムである。
【0027】
この構成により、凝縮水供給器がアルカリ化された凝縮水に曝されるのを回避できる。つまり、アルカリ化装置の上流側は弱酸性(概ねpH5)の凝縮水が通水し、また、浄水器の下流側は中性の浄化水が通水するため、凝縮水供給器にアルカリ化された凝縮水が通水しない。その結果、凝縮水供給器の耐久劣化を防止することができ、燃料電池システムを安定して運転することができる。
【0028】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のアルカリ装置を、凝縮水に含まれるアニオンを水酸化物イオンに交換して、凝縮水をアルカリ化するアニオン交換体を含む構成としたものである。
【0029】
この構成によって、凝縮水の中に含まれるアニオンが水酸化物イオンに交換され、交換された水酸化物イオンが凝縮水中に溶出し、アルカリ化装置を通過する凝縮水を確実にアルカリ化できるので、凝縮水に含まれるシリカを容易にイオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)にすることができ、浄水器におけるイオン交換樹脂によるシリカの吸着除去を促進することができる。その結果、シリカが浄水器の下流側に漏洩することはなく、浄水器の下流側に配置される水素生成器やスタック、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積することを防止することができ、燃料電池システムを安定して運転することができる。
【0030】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明のアルカリ化装置を、凝縮水に溶解して凝縮水をアルカリ化するアルカリ化剤を含む構成としたものである。
【0031】
この構成によって、アルカリ化装置を通過する凝縮水を確実にアルカリ化できるので、凝縮水に含まれるシリカを容易にイオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)にすることができ、浄水器におけるイオン交換樹脂によるシリカの吸着除去を促進することができる。その結果、シリカが浄水器の上流側に漏洩することはなく、浄水器の下流側に配置される水素生成器やスタック、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積
することを防止することができ、燃料電池システムを安定して運転することができる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの構成図を示すものである。
【0034】
図1において、燃料電池システム10は、水素生成器11と、燃焼器12と、燃料電池13と、空気供給装置14と、凝縮水タンク15と、排水口16と、浄化水タンク17と、浄水器18と、アルカリ化装置19と、凝縮水供給器110と、第1の浄化水供給器111と、第2の浄化水供給器112と、三方弁113と、燃料ガス凝縮器114と、排空気凝縮器115と、燃焼排ガス凝縮器116と、燃料排ガス凝縮器117と、排空気凝縮水流路118と、燃料排ガス凝縮水流路119と、燃料排ガス流路121と、燃料ガスバイパス流路122と、浄水経路123と、を備えている。
【0035】
水素生成器11は、第1の浄化水供給器111から浄化水の供給を受けて、原料ガスとしての都市ガスを改質し水素を主成分とする燃料ガスを生成するものである。例えばステンレスなどで構成された容器に、アルミナ担体にルテニウムを担持した触媒が充填されている。そして、原料ガスとしての都市ガスと、浄化水タンク17から第1の浄化水供給器111を介して供給される浄化水とを約650℃で化学反応させて、水素と二酸化炭素を生成する。
【0036】
燃焼器12は、水素生成器11の中に配置され、原料ガスとしての都市ガスと、燃料ガスバイパス流路122と燃料ガス凝縮器114を介して流れる燃料ガスと、燃料排ガス流路121を通流する燃料排ガスを燃焼するものである。
【0037】
燃料電池13は、水素生成器11から供給される燃料ガスと空気供給装置14から供給される空気により発電を行うものである。具体的には、燃料電池13は、フッ化炭素の主鎖にスルホン基の側鎖を付着させた高分子系の水素イオン伝導性電解質膜(図示せず)の両側に、カーボンブラックに触媒の白金粒子を担持して構成した燃料極と空気極(図示せず)とを備えた電池を複数積層した集合体から構成される。そして、水素生成器11から燃料極へ供給される燃料ガス中の水素と、空気供給装置14から空気極へ供給される空気中の酸素との電気化学反応により、発電する。
【0038】
空気供給装置14は、燃料電池13に空気を供給するものである。
【0039】
凝縮水タンク15は、例えばステンレスや樹脂などで構成され、その内に凝縮水が貯水される。凝縮水タンク15には、凝縮水の水量が不足した場合、水道水配管(図示せず)を介して、水道水が補給される。排水口16は、凝縮水タンク15に備えられ、凝縮水タンク15に貯水した余剰の凝縮水を排水するものである。
【0040】
浄化水タンク17は、浄水器18から供給される浄化水を貯えるものである。浄水経路123は、凝縮水タンク15と浄化水タンク17を連通するものである。浄水器18は、凝縮水タンク15に貯水した凝縮水を、該凝縮水に含まれるカチオンとアニオンを除去して浄化水とするものである。浄水器18は、例えば、ステンレスや樹脂で構成される容器にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を充填して構成され、カチオン交換樹脂は凝縮水及び水道水に含まれるカチオンを吸着除去し、アニオン交換樹脂は凝縮水及び水道水に含まれるアニオンを吸着除去する。
【0041】
アルカリ化装置19は、浄水経路123において、浄水器18の上流側の部分に配置されるものである。凝縮水供給器110は、凝縮水タンク15に貯水した凝縮水をアルカリ化装置19に送るものである。第1の浄化水供給器111及び第2の浄化水供給器112は、浄化水タンク17から浄化水を送水するものである。
【0042】
三方弁113は、水素生成器11から供給される燃料ガスの通流方向を切り換えるものである。具体的には、三方弁113は、燃料ガスを燃料電池13に供給する経路と、燃料ガスバイパス流路122を介して燃料ガスを燃焼器12に供給する経路と、を切り替える。
【0043】
燃料ガスバイパス流路122は、水素生成器11から供給される燃料ガスを燃料ガス凝縮器114に導くものである。燃料ガス凝縮器114は、燃料ガスバイパス流路122の途中に配置され、水素生成器11から送られる燃料ガス中に含まれる水蒸気を凝縮し除去するものである。
【0044】
排空気凝縮器115は、燃料電池13から排出される排空気中に含まれる水蒸気を凝縮し排空気凝縮水を得るものである。排空気凝縮水流路118は、排空気凝縮器115で凝縮した排空気凝縮水を凝縮水タンク15に導くものである。
【0045】
燃料排ガス凝縮器117は、燃料電池13から排出される燃料排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮し燃料排ガス凝縮水を得るものである。燃料排ガス凝縮水流路119は、燃料排ガス凝縮器117で凝縮した燃料排ガス凝縮水を凝縮水タンク15に導くものである。燃料排ガス流路121は、燃料排ガス凝縮器117で水蒸気が除去された燃料排ガスを通流するものである。
【0046】
燃焼器12は、原料ガス、燃料ガスバイパス流路122から供給される流れる燃料ガス及び燃料排ガス流路121から供給される燃料排ガスのうちの少なくとも1つと、空気と、を燃焼し、燃焼排ガスを生成する。燃焼排ガス凝縮器116は、燃焼器12で発生した燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮し、燃焼排ガス凝縮水を得るものである。燃焼排ガス凝縮水流路120は、燃焼排ガス凝縮器116で凝縮した燃焼排ガス凝縮水を凝縮水タンク15に導くものである。
【0047】
続いて、本実施の形態の燃料電池システム10の運転動作について説明する。
【0048】
まず、運転開始時、ガス供給管(図示せず)から、原料ガスとしての都市ガスと、送風機(図示せず)からの空気が、燃焼器12に供給されて燃焼が始まり、燃料ガスが得られる。燃料ガスは、三方弁113を介して燃料ガスバイパス流路122を通流し、燃料ガス凝縮器114に送られる。燃料ガス凝縮器114に送られた燃料ガスは、燃料ガス凝縮器114において、その中に含まれる水蒸気が凝縮され除去された後、燃焼器12に送られる。また、同時に、燃焼器12は、水素生成器11の内部に充填した触媒を約650℃に加熱する。そして、水素生成器11の触媒が約650℃まで加熱されると、水素生成器11は、以下の第2の段階の運転動作を行う。
【0049】
つまり、水素生成器11は、浄化水タンク17から第1の浄化水供給器111により供給される浄化水と、ガス供給管(記載せず)からの供給される都市ガスとの改質反応により、水素を主成分とする燃料ガスを生成する。次に、燃料電池13が、水素生成器11から三方弁113を介して供給される燃料ガス中の水素と、空気供給装置14から供給される空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0050】
続いて、本実施の形態の燃料電池システム10における凝縮水と浄化水の流れについて説明する。
【0051】
まず、燃料電池13からの排空気流路に配置した排空気凝縮器115により、燃料電池13から排出される排空気に含まれる水蒸気を凝縮して排空気凝縮水が得られる。そして、得られた排空気凝縮水は、排空気凝縮水流路118を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15に貯えられる。
【0052】
また、燃料電池13からの燃料排ガス流路に配置した燃料排ガス凝縮器117により、燃料電池13から排出される燃料排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して燃料排ガス凝縮水が得られる。そして、得られた燃料排ガス凝縮水は、燃料排ガス凝縮水流路119を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15に貯えられる。
【0053】
さらに、水素生成器11からの燃焼排ガス流路に配置した燃焼排ガス凝縮器116により、水素生成器11で原料ガスとしての都市ガスと、燃料ガスバイパス流路122を介して流れる燃料ガスと、燃料排ガス流路121を通流する燃料排ガスとを燃焼して得られる燃焼排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して燃焼排ガス凝縮水が得られる。そして、得られた燃焼排ガス凝縮水は、燃焼排ガス凝縮水流路120を介して、凝縮水タンク15に送られ、凝縮水タンク15に貯えられる。
【0054】
凝縮水タンク15において、余剰となった凝縮水は、凝縮水タンク15に設けた排水口16から排水される。一方、凝縮水タンク15には、凝縮水の水量が不足した場合、水道水配管(図示せず)を介して、水道水が補給される。
【0055】
凝縮水タンク15に貯水された凝縮水は、凝縮水供給器110によりアルカリ化装置19を介して浄水器18に送られる。この際、凝縮水がアルカリ化装置19を通過する際にアルカリ化されるため、凝縮水に含まれるシリカが電離し、イオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)となり、凝縮水に含まれるカチオンおよびアニオンと共に、浄水器18で吸着除去された後、浄化水として浄化水タンク17に貯えられる。浄化水タンク17に貯えられた浄化水は、第1の浄化水供給器111により水素生成器11に供給され、原料ガスとしての都市ガスの改質に利用され、また、第2の浄化水供給器112により、燃料電池13を循環し、燃料電池13を一定の温度に維持する。
【0056】
図2は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムのアルカリ化装置19の構成図を示すものである。アルカリ化装置19は、入口側接続部22及び出口側接続部23を具備したポリプロピレンを材質とする容器24の内に、アニオン交換体25としての強塩基性アニオン交換膜が3枚積層され、フィルタ21に保持され構成されている。ここで、アニオン交換体25としての強塩基性アニオン交換樹膜は、凝縮水に含まれるアニオンを水酸化物イオンに交換し、交換された水酸化物イオンを凝縮水中に溶出せしめ、凝縮水をアルカリ化するものである。
【0057】
以下、本実施の形態における燃料電池システム10の具体的な効果について説明する。
【0058】
まず、本実施の形態の構成の燃料電池システム10を1kWの発電状態で運転を継続した時に浄化水タンクに貯水した浄化水のシリカ濃度を評価したところ、シリカ濃度は0mg/Lであった。
【0059】
一方、比較のために、アルカリ化装置を配置しない燃料電池システムで、同様の評価をしたところ、浄化水タンクに貯水した浄化水のシリカ濃度は5mg/Lであり、アルカリ化装置を具備した燃料電池システムに比べシリカ濃度が高いものであった。
【0060】
上記より、本実施の形態の燃料電池システムにおいて、凝縮水タンクに貯水した凝縮水に含まれるシリカを充分に除去できていることがわかった。
【0061】
以上のように、本実施の形態においては、燃料電池システムの凝縮水タンクと浄化水タンクを連通する浄水経路において、浄水器の上流側の部分に、凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置を配置し、凝縮水に含まれるシリカを電離させ、イオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)を浄水器におけるイオン交換樹脂により吸着除去できるため、シリカが浄水器の下流側に漏洩することはなく、浄水器の下流側に配置される水素生成器や燃料電池、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積することはなく、継続して安定した運転を維持できる燃料電池システムを実現することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、凝縮水供給器をアルカリ化装置の上流側に配置したが、凝縮水供給器を浄水器の下流側に配置しても同じ効果を奏する。また、本実施の形態においては、アニオン交換体としての強塩基型アニオン交換膜の枚数は3枚としているが、これに限定されるものではなく、凝縮水に含まれるアニオンを水酸化物イオンに交換する機能を有する限りにおいて、枚数を変えて利用することができる。
【0063】
(実施の形態2)
アルカリ化装置のみ、凝縮水に溶解して凝縮水をアルカリ化するアルカリ化剤を充填したアルカリ化装置に変更した以外は、上述した実施の形態1と同一の構成により、燃料電池システムを構成した。他の構成要素やその動作は実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
以下に、本実施の形態の燃料電池システムの発明のポイントである、アルカリ化装置36の構成と作用について、図面を参酌し説明する。
【0065】
図3は、本発明の実施の形態2における燃料電池システムにおけるアルカリ化装置の構成図を示すものである。図3において、アルカリ化装置36は、入口側接続部32及び出口側接続部33を具備したポリプロピレンを材質とする容器34の内に、アルカリ化剤35として、炭酸カルシウムがフィルタ31に保持され構成される。ここで、アルカリ化剤35としての炭酸カルシウムは、凝縮水に溶解し、凝縮水をアルカリ化する。
【0066】
以下、本実施の形態における燃料電池システムの具体的な効果について説明する。
【0067】
まず、本実施の形態の構成の燃料電池システムを1kWの発電状態で運転を継続した時に浄化水タンクに貯水した浄化水のシリカ濃度を評価したところ、シリカ濃度は0mg/Lであった。
【0068】
一方、比較のために、アルカリ化装置を配置しない燃料電池システムで、同様の評価をしたところ、浄化水タンクに貯水した浄化水のシリカ濃度は5mg/Lであり、アルカリ化装置を具備した燃料電池システムに比べシリカ濃度が高いものであった。
【0069】
上記より、本実施の形態の燃料電池システムにおいて、凝縮水タンクに貯水した凝縮水に含まれるシリカを充分に除去できていることがわかった。
【0070】
以上のように、本実施の形態においては、燃料電池システムの凝縮水タンクと浄化水タンクを連通する浄水経路において、浄水器の上流側に部分に、凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置を配置し、凝縮水に含まれるシリカを電離させ、イオン性シリカ(HSiO,HSiO2−)を浄水器におけるイオン交換樹脂により吸着除去するもので
ある。これにより、シリカが浄水器の下流側に漏洩することなく、また、浄水器の下流側に配置される水素生成器や燃料電池、及び配管等において、シリカがスケールとして堆積することはなく、継続して安定した運転を維持できる燃料電池システムを実現することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、凝縮水供給器をアルカリ化装置の上流側に配置したが、これに限定されず、凝縮水供給器を浄水器の下流側に配置しても、同様の効果を奏することができる。また、アルカリ化剤は本実施の形態に記載した炭酸カルシウムに限定されるものではなく、凝縮水に溶解し、凝縮水をアルカリ化する機能を有する材料を利用することができ、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属塩、その他、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の水溶性の各種金属塩が利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる燃料電池システムは、水道水に含まれるシリカや、配管及び当該配管等の接合に利用される接着剤やシール剤として使用されるシリコーン樹脂に含まれるシリカを、簡易な構成で除去でき、安定な運転を継続する低容積の燃料電池システムを実現できるので、定置式や移動式あるいは可搬式の燃料電池システム等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 燃料電池システム
11 水素生成器
12 燃焼器
13 燃料電池
14 空気供給装置
15 凝縮水タンク
16 排水口
17 浄化水タンク
18 浄水器
19,36 アルカリ化装置
110 凝縮水供給器
111 第1の浄化水供給器
112 第2の浄化水供給器
113 三方弁
114 燃料ガス凝縮器
115 排空気凝縮器
116 燃焼排ガス凝縮器
117 燃料排ガス凝縮器
118 排空気凝縮水流路
119 燃料排ガス凝縮水流路
120 燃焼排ガス凝縮水流路
121 燃料排ガス流路
122 燃料ガスバイパス流路
123 浄水経路
21,31 フィルタ
22,32 入口側接続部
23,33 出口側接続部
24,34 容器
25 アニオン交換体
35 アルカリ化剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス及び水を改質して水素を含む燃料ガスを生成する水素生成器と、
前記燃料ガス及び酸化剤ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記原料ガス、燃料ガス、及び前記燃料電池から排出される燃料排ガスの少なくとも一つを燃焼する燃焼器と、
前記燃料排ガス中の水蒸気を凝縮した燃料排ガス凝縮水、及び、前記燃焼器から排出される燃焼排ガス中の水蒸気を凝縮した燃焼排ガス凝縮水のうちの少なくとも一方である凝縮水を貯える凝縮水タンクと、
前記水素生成器に供給する水を貯える浄化水タンクと、
前記凝縮水タンクに貯水した凝縮水を前記浄化水タンクに供給する凝縮水供給器と、
前記浄化水タンクの水を前記水素生成器に供給する水供給器と、
前記凝縮水タンク及び前記浄化水タンクを連通する浄水経路と、
前記浄水経路の途中に設けられ、前記凝縮水タンクに貯水した凝縮水を浄化する浄水器と、
前記浄水経路のうち前記浄水器より上流側の部分に設けられ、前記浄水器に供給される前記凝縮水をアルカリ化するアルカリ化装置と、
を備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記凝縮水供給器が、前記浄水経路のうちの前記アルカリ化装置より上流側の部分、又は浄水器より下流側の部分に設けられる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記アルカリ化装置は、前記凝縮水に含まれるアニオンを水酸化物イオンに交換して、前記凝縮水をアルカリ化するアニオン交換体を含む、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記アルカリ化装置は、前記凝縮水に溶解して前記凝縮水をアルカリ化するアルカリ化剤を含む、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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