説明

燃料電池システム

【課題】簡単な構成で、換気デバイスを経済的に駆動させるとともに、燃料電池ボックス内の換気を良好に遂行することを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、複数の発電セル12が積層された燃料電池14と、前記燃料電池14が収容される燃料電池ボックス34とを備える。燃料電池システム10は、燃料電池ボックス34の外部に配設される換気デバイス40と、前記換気デバイス40に接続され、前記燃料電池ボックス34内に換気用空気を供給する吸気ダクト42と、前記吸気ダクト42の一部に設けられ、該吸気ダクト42よりも小さな開口断面積を有し、且つ、前記燃料電池ボックス34の外部に開放される排気配管部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側にカソード電極及びアノード電極が設けられた電解質膜・電極構造体を有する発電セルを備えるとともに、前記カソード電極に供給される酸化剤ガス及び前記アノード電極に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電する燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持している。
【0003】
燃料電池は、通常、一方のセパレータと電解質膜・電極構造体との間に、アノード電極に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路が形成されるとともに、他方のセパレータと前記電解質膜・電極構造体との間に、カソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路が形成されている。さらに、各燃料電池を構成し、互いに隣接するセパレータ間には、電極範囲内に冷却媒体を流すための冷却媒体流路が形成されている。
【0004】
この種の燃料電池では、特に燃料電池電気自動車に搭載される際に、燃料電池ボックス内に収容された状態で搭載される場合がある。その際、燃料電池ボックス内には、燃料電池を収容するための燃料電池室が形成されており、この燃料電池室内を換気するための換気装置が用いられている。この換気装置は、例えば、燃料電池の水素ラインから水素が進入したことを検出すると、その水素を換気ファンによって燃料電池ボックスの外部に排出する機能を有している。
【0005】
また、車載用燃料電池では、車体床下やフロントボックス等の限定されたスペース内を燃料電池室として燃料電池を搭載する場合がある。このため、燃料電池が配置されるスペース内、すなわち、燃料電池室内では、上記の燃料電池ボックス内と同様に換気する必要がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池ボックス換気装置が知られている。この燃料電池ボックス換気装置は、図3に示すように、三方弁1、換気配管2、換気ファン3、排出口4、水素検出センサ5及び制御装置6によって構成されている。
【0007】
そして、燃料電池ボックスBの内部の水素が、水素検出センサ5により検出されると、その検出値に応じて三方弁1がスーパーチャージャ7から燃料電池Vに供給されている空気を、排気配管2から前記燃料電池ボックスB内に放出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−132916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1では、燃料電池ボックスBの内部に微量な水素が検出された際にも、燃料電池ボックス換気装置により換気処理をしながら、燃料電池Vによる発電を継続する必要がある。
【0010】
このため、三方弁1では、発電側のエア流路、すなわち、燃料電池Vに供給されるエア流量が減少してしまい、燃料電池電気自動車の走行に影響を及ぼすおそれがある。しかも、スーパーチャージャ7の出力を高く設定しなければならず、騒音の問題が発生し易い。
【0011】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、換気デバイスを経済的に駆動させるとともに、燃料電池ボックス内の換気を良好に遂行することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質膜の両側にカソード電極及びアノード電極が設けられた電解質膜・電極構造体を有する発電セルを備えるとともに、前記カソード電極に供給される酸化剤ガス及び前記アノード電極に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池が収容される燃料電池ボックスとを備える燃料電池システムに関するものである。
【0013】
この燃料電池システムでは、換気デバイスと、前記換気デバイスに接続され、燃料電池ボックス内にエアを供給する吸気ダクトと、前記吸気ダクトの一部に設けられ、該吸気ダクトよりも小さな開口断面積を有し、且つ、前記燃料電池ボックスの外部に開放される排気配管部とを備えている。
【0014】
また、この燃料電池システムでは、吸気ダクトは、燃料電池ボックスの上部に連通するとともに、排気配管部は、前記燃料電池ボックスの上方に延在して開口することが好ましい。
【0015】
さらに、この燃料電池システムでは、吸気ダクトの途上から分岐ダクトが形成され、前記分岐ダクトは、燃料電池ボックスの下部に連通するとともに、前記分岐ダクトには、前記燃料電池ボックスの下方に延在して開口し、且つ該分岐ダクトよりも小さな開口断面積を有する排水配管部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、燃料電池室内が微少な水素濃度である際に、換気デバイスが停止されている。このため、燃料電池室内の水素は、吸気ダクトの一部に設けられた排気配管部を通って燃料電池ボックスの外部に自然換気されている。
【0017】
一方、燃料電池室内に規定以上の水素濃度が検出された際、換気デバイスが駆動されている。従って、吸気ダクトから燃料電池室内に換気用エアが導入され、強制換気されている。その際、排気配管部は、吸気ダクトよりも小さな開口断面積を有しており、前記排気配管部から外部に水素が逆流することを阻止することができる。
【0018】
これにより、自然換気と強制換気とを切り替えるための弁等を不要にし、簡単な構成で、換気デバイスを経済的に駆動させるとともに、燃料電池ボックス内の換気を良好に遂行することが可能になる。しかも、換気デバイスによる騒音を有効に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムが、燃料電池車両に搭載された状態の概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システムが、燃料電池車両に搭載された状態の概略構成図である。
【図3】特許文献1に開示されている燃料電池ボックス換気装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10は、例えば、燃料電池電気自動車等の燃料電池車両11に搭載される車載用燃料電池システムを構成する。
【0021】
燃料電池システム10は、複数の発電セル12が水平方向又は重力方向に積層(スタック)される燃料電池14を備える。燃料電池14は、電解質膜・電極構造体(MEA)16が、カソード側セパレータ18及びアノード側セパレータ20間に挟持される。電解質膜・電極構造体16は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜22と、前記固体高分子電解質膜22を挟持するカソード電極24及びアノード電極26とを備える。
【0022】
カソード電極24及びアノード電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜22の両面に形成されている。
【0023】
カソード側セパレータ18の電解質膜・電極構造体16に向かう面には、酸化剤ガス通路28が形成される。アノード側セパレータ20の電解質膜・電極構造体16に向かう面には、燃料ガス通路30が形成される。互いに隣接するカソード側セパレータ18とアノード側セパレータ20との間には、冷却媒体通路(図示せず)が形成される。
【0024】
燃料電池14には、図示しないが、酸化剤ガス通路28に酸化剤ガス、例えば、空気を供給する酸化剤ガス供給装置と、燃料ガス通路30に燃料ガス、例えば、水素ガスを供給する燃料ガス供給装置と、冷却媒体通路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置とが接続される。
【0025】
燃料電池14は、燃料電池室32に配設される。この燃料電池室32は、例えば、燃料電池ボックス34内に形成される。燃料電池ボックス34内には、燃料電池14及び水素濃度を検出するための水素検出センサ36が収容されるとともに、燃料電池14の補機類を収容してもよい。水素検出センサ36は、燃料電池ボックス34内の上面(天板)34aに配置される。燃料電池ボックス34には、壁面34bの下方側にボックス換気排気ダクト38が接続される。
【0026】
燃料電池システム10は、燃料電池ボックス34の外部に配設される換気デバイス(例えば、エアポンプ)40と、前記換気デバイス40に接続され、前記燃料電池ボックス34内に換気用空気を供給する吸気ダクト42と、前記吸気ダクト42の一部に設けられ、該吸気ダクト42よりも小さな開口断面積を有し、且つ、前記燃料電池ボックス34の上方に設けられて外部に開放される排気配管部44とを備える。
【0027】
吸気ダクト42は、一端が換気デバイス40のエア出口40aに連通するとともに、他端が燃料電池ボックス34の上部開口部46に連通する。排気配管部44は、燃料電池ボックス34の上方に延在して開口する。吸気ダクト42の内径D1は、排気配管部44の内径D2よりも大きく設定される(D1>D2)。好ましくは、4×D2≧D1≧1.5×D2、より好ましくは、4×D2≧D1≧2×D2に設定される。実質的には、自然換気能力と強制換気能力の要求値に対して、適宜、D1及びD2が設定される。
【0028】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0029】
先ず、燃料電池システム10が搭載されている燃料電池車両11の通常走行時には、酸化剤ガス供給装置、燃料ガス供給装置及び冷却媒体供給装置が駆動される。このため、燃料電池14の酸化剤ガス通路28に酸化剤ガス(空気)が供給される一方、前記燃料電池14の燃料ガス通路30に燃料ガス(水素ガス)が供給される。
【0030】
従って、各発電セル12では、カソード電極24に供給される酸化剤ガス中の酸素と、アノード電極26に供給される燃料ガス中の水素とが、電気化学的に反応して発電が行われる。このため、燃料電池14から図示しない走行モータに電力が供給され、燃料電池車両11の走行が行われる。また、燃料電池14に供給される冷却媒体により、前記燃料電池14が冷却される。
【0031】
燃料電池ボックス34内では、水素検出センサ36により燃料電池室32に規定以上の水素濃度が発生したか否かを検出している。そして、規定以上の水素濃度が検知されると、換気デバイス40が駆動される。なお、燃料電池14に発電用に供給される空気を分岐して供給してもよい。
【0032】
従って、換気デバイス40から吸気ダクト42に空気が送られ、前記空気は、燃料電池ボックス34の上部開口部46から燃料電池室32に吹き出される。これにより、燃料電池室32に侵入した水素は、空気によりボックス換気排気ダクト38を通って室外に排出されて、燃料電池ボックス34内の換気が行われる。
【0033】
その際、吸気ダクト42の内径D1は、排気配管部44の内径D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。このため、吸気ダクト42を流通する空気は、燃料電池ボックス34内に良好に噴出されて燃料電池室32の換気が遂行される一方、排気配管部44から外部に水素が逆流することを阻止することができる。これにより、燃料電池車両11内では、水素の漏出を抑制したい空間、例えば、モータルームや客室内等に前記水素が進入することを阻止することが可能になる。
【0034】
また、燃料電池ボックス34内の燃料電池室32が、微少な水素濃度(規定未満の水素濃度)である際には、換気デバイス40が停止されている。従って、燃料電池室32内の水素は、吸気ダクト42の一部に設けられた排気配管部44を通って燃料電池ボックス34の外部に自然換気される。
【0035】
特に、排気配管部44は、燃料電池ボックス34の上部開口部46から上方に延在して開口している。このため、燃料電池ボックス34内の上部に滞留し易い水素は、効率的に換気される。
【0036】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池室32内が微少な水素濃度である際、換気デバイス40が停止されており、前記燃料電池室32内の水素は、自然換気されている。
【0037】
一方、燃料電池室32内に規定以上の水素濃度が検出された際、換気デバイス40が駆動されており、吸気ダクト42から前記燃料電池室32内に換気用エアが導入され、強制換気されている。
【0038】
これにより、自然換気と強制換気とを切り替えるための弁等を不要にすることができ、簡単な構成で、換気デバイス40を経済的に駆動させることが可能になる。しかも、燃料電池ボックス34内の換気を良好に遂行するとともに、換気デバイス40による騒音を有効に低減させることができるという効果が得られる。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム60が、燃料電池車両11に搭載された状態の概略構成図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0040】
燃料電池システム60は、吸気ダクト42の途上から分岐ダクト62が形成される。分岐ダクト62は、燃料電池ボックス34の重力方向下部開口部64に連通するとともに、前記分岐ダクト62には、前記燃料電池ボックス34の下方に延在して開口する排水配管部66が設けられる。
【0041】
分岐ダクト62の内径D3は、排水配管部66の内径D4よりも大きく設定される(D3>D4)。好ましくは、4×D4≧D3≧1.5×D4、より好ましくは、4×D4≧D3≧2×D4に設定される。
【0042】
このように構成される燃料電池システム60の動作について、以下に説明する。
【0043】
燃料電池室32内が微少な水素濃度である際、換気デバイス40が停止されており、前記燃料電池室32内の水素は、吸気ダクト42の一部に設けられた排気配管部44を通って燃料電池ボックス34の外部に自然換気されている。
【0044】
また、燃料電池室32では、結露水が底部に滞留し易い。その際、燃料電池ボックス34の下部開口部64に連通して分岐ダクト62が設けられるとともに、前記分岐ダクト62には、前記燃料電池ボックス34の下方に延在して開口する排水配管部66が設けられている。このため、燃料電池室32の底部に滞留する結露水は、分岐ダクト62から排水配管部66を通って外部に排出される。従って、燃料電池室32に滞留水が発生することを阻止することができる。
【0045】
一方、燃料電池室32内に規定以上の水素濃度が検出された際、換気デバイス40が駆動されており、吸気ダクト42から前記燃料電池室32内に換気用エアが導入され、強制換気されている。
【0046】
同様に、吸気ダクト42から分岐する分岐ダクト62から燃料電池室32内に換気用エアが導入される。その際、分岐ダクト62の内径D3は、排水配管部66の内径D4よりも大きく設定されている(D3>D4)。このため、分岐ダクト62を流通する空気は、燃料電池ボックス34内に良好に噴出されて燃料電池室32の換気が遂行される一方、排水配管部66から外部に水素が逆流することを阻止することができる。
【0047】
これにより、自然換気と強制換気とを切り替えるための弁等を不要にすることができ、簡単な構成で、換気デバイス40を経済的に駆動させることが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10、60…燃料電池システム 12…発電セル
14…燃料電池 16…電解質膜・電極構造体
22…固体高分子電解質膜 24…カソード電極
26…アノード電極 28…酸化剤ガス通路
30…燃料ガス通路 32…燃料電池室
34…燃料電池ボックス 38…ボックス換気排気ダクト
40…換気デバイス 42…吸気ダクト
44…排気配管部 46…上部開口部
62…分岐ダクト 64…下部開口部
66…排水配管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側にカソード電極及びアノード電極が設けられた電解質膜・電極構造体を有する発電セルを備えるとともに、前記カソード電極に供給される酸化剤ガス及び前記アノード電極に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池が収容される燃料電池ボックスと、
を備える燃料電池システムであって、
換気デバイスと、
前記換気デバイスに接続され、前記燃料電池ボックス内にエアを供給する吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの一部に設けられ、該吸気ダクトよりも小さな開口断面積を有し、且つ、前記燃料電池ボックスの外部に開放される排気配管部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記吸気ダクトは、前記燃料電池ボックスの上部に連通するとともに、
前記排気配管部は、前記燃料電池ボックスの上方に延在して開口することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、前記吸気ダクトの途上から分岐ダクトが形成され、
前記分岐ダクトは、前記燃料電池ボックスの下部に連通するとともに、
前記分岐ダクトには、前記燃料電池ボックスの下方に延在して開口し、且つ該分岐ダクトよりも小さな開口断面積を有する排水配管部が設けられることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate