説明

燃料電池スタック

【課題】積層方向に関する中央部付近に配設された単位セルの放熱性を端部付近よりも高めることによって、積層方向に関する寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セルの寿命を長くすることができるようにする。
【解決手段】電解質層を燃料極と酸素極とで挟持した燃料電池がセパレータユニットを挟んで積層され、積層方向に関する中央部付近における燃料電池の放熱性が端部付近における燃料電池の放熱性よりも高くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池は発電効率が高く、有害物質を排出しないので、産業用、家庭用の発電装置として、又は、人工衛星や宇宙船などの動力源として実用化されてきたが、近年は、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として開発が進んでいる。そして、前記燃料電池は、アルカリ水溶液型(AFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)、直接型メタノール(DMFC)等のものであってもよいが、純水素を燃料ガスとした固体高分子型燃料電池(PEMFC)は、出力当たりのシステム体積及び重量を小さくすることができることから、積極的に用いられている。
【0003】
この場合、固体高分子電解質膜を2枚のガス拡散電極で挟み、一体化させて接合する。そして、該ガス拡散電極の一方を燃料極(アノード極)とし、その表面に燃料ガスとしての水素ガスを供給すると、水素が水素イオン(プロトン)と電子とに分解され、水素イオンが固体高分子電解質膜を透過する。また、前記ガス拡散電極の他方を酸素極(カソード極)とし、その表面に酸化剤としての空気を供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子とが結合して、水が生成される。このような電気化学反応によって起電力が生じるようになっている。
【0004】
そして、固体高分子型燃料電池は、MEAの外側に燃料ガスとしての水素ガスや酸素等の酸化剤ガスのような反応ガスの供給通路を形成するセパレータを配した積層構造を有する。前記セパレータは、積層方向に隣り合うMEAへの反応ガスの透過を防止するとともに、発生した電流を外部へ取り出すための集電を行う。このように、MEAとセパレータとから成る単位セルを多数積層して燃料電池スタックが構成される。
【0005】
ところで、前記電気化学反応によって反応熱が発生するが、積層構造を有する燃料電池スタックでは、中央付近に配設された単位セルは、両端に配設された単位セルと比較して放熱性が低いので、温度が上昇してしまう。そのため、積層方向に関して温度分布が生じてしまう。そこで、燃料電池スタックの積層方向に関する中央部付近に配設された単位セルの空気の流路断面積を、端部付近に配設された単位セルの空気の流路断面積よりも大きくすることによって、積層方向に関して温度を均一化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−149967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の燃料電池スタックにおいては、中央部付近に配設された単位セルの空気の流路断面積を大きくするので、積層方向に関する寸法が大きくなってしまう。そのため、燃料電池スタックが大型化してしまい、設置するために大きなスペースが必要になってしまう。
【0007】
本発明は、前記従来の燃料電池スタックの問題点を解決して、積層方向に関する中央部付近に配設された単位セルの放熱性を端部付近よりも高めることによって、積層方向に関する寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セルの寿命を長くすることができる燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の燃料電池スタックにおいては、電解質層を燃料極と酸素極とで挟持した燃料電池がセパレータユニットを挟んで積層され、積層方向に関する中央部付近における燃料電池の放熱性が端部付近における燃料電池の放熱性よりも高くなるように構成されている。
【0009】
本発明の他の燃料電池スタックにおいては、さらに、前記セパレータユニットは酸化剤流路の出口から外側に延出する延長部を備え、前記積層方向に関する中央部付近の延長部は端部付近の延長部よりも小さく形成されている。
【0010】
本発明の更に他の燃料電池スタックにおいては、さらに、前記セパレータユニットは、酸化剤流路の内部に突出し、酸化剤の流れ方向に延在する複数のリブを備え、前記積層方向に関する中央部付近における隣接するリブ同士の間隔は端部付近における隣接するリブ同士の間隔よりも大きく形成されている。
【0011】
本発明の更に他の燃料電池スタックにおいては、さらに、前記セパレータユニットは熱伝導率の異なる材料で形成され、前記積層方向に関する中央部付近におけるセパレータユニットは端部付近におけるセパレータユニットよりも熱伝導率の高い材料で形成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、積層方向に関する寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セルの寿命を長くすることができる。
【0013】
請求項2の構成によれば、延長部の大きさを調整することによって、空気流路抵抗を積層方向に関して調整することができる。これにより、空気による冷却の度合いを積層方向に関して容易に調整することができ、積層方向に関する温度分布を均一化することができる。
【0014】
請求項3の構成によれば、隣接するリブ同士の間隔を調整することによって、空気流路抵抗を積層方向に関して調整することができる。これにより、酸化剤による冷却の度合いを積層方向に関して容易に調整することができ、積層方向に関する温度分布を容易に均一化することができる。
【0015】
請求項4の構成によれば、熱伝導率の異なる材料で形成されたセパレータユニットを組み合わせることによって、酸化剤による冷却の度合いを積層方向に関して変化させることができる。これにより、積層方向に関する温度分布を容易に均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図2は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの構成を示す模式斜視図、図3は本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの構成を示す図である。
【0018】
図において、11は燃料電池(FC)装置としての燃料電池スタックであり、乗用車、バス、トラック、乗用カート、荷物用カート等の車両用の動力源として使用される。ここで、前記車両は、照明装置、ラジオ、パワーウィンドウ等の車両の停車中にも使用される電気を消費する補機類を多数備えており、また、走行パターンが多様であり、動力源に要求される出力範囲が極めて広いので、動力源としての燃料電池スタック11と図示されない蓄電手段としての二次電池又はキャパシタとを併用して使用することが望ましい。
【0019】
そして、燃料電池スタック11は、アルカリ水溶液型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、直接型メタノール等のものであってもよいが、固体高分子型燃料電池であることが望ましい。
【0020】
なお、更に望ましくは、水素ガスを燃料ガス、すなわち、アノードガスとし、酸素又は空気を酸化剤、すなわち、カソードガスとするPEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)型燃料電池、又は、PEM(Proton Exchange Membrane)型燃料電池と呼ばれるものである。ここで、該PEM型燃料電池は、一般的に、プロトン等のイオンを透過する電解質層の両側に触媒、電極及びセパレータを結合したセル(Fuel Cell)を複数及び直列に結合したスタック(Stack)から成る。
【0021】
本実施の形態において、燃料電池スタック11は、複数のセルモジュール10を有する。該セルモジュール10は、燃料電池としての単位セル(MEA:Membrane Electrode Assembly)10Aと、該単位セル10A同士を電気的に接続するとともに、単位セル10Aに導入される、アノードガスとしての水素ガスの流路とカソードガスとしての空気の流路とを分離するセパレータユニット10Bとを1セットとして、板厚方向に複数のセットを重ねて構成されている。なお、セルモジュール10は、単位セル10A同士が所定の間隙(げき)を隔てて配置されるように、単位セル10Aとセパレータユニット10Bとが、フレーム17とともに、多段に重ねられて積層されている。この場合、セルモジュール10は、導電可能に、かつ、燃料ガス流路、すなわち、水素ガス流路が連続するように相互に接続されている。
【0022】
そして、単位セル10Aは、電解質層としての固体高分子電解質膜、並びに、該固体高分子電解質膜の一側に設けられた酸素極としての空気極(カソード極)及び他側に設けられた燃料極(アノード極)から成る。前記空気極及び燃料極は、反応ガスを拡散しながら透過する導電性材料から成る電極拡散層と、該電極拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜と接触させて支持される触媒層とから成る。
【0023】
前記単位セル10Aにおいては水が移動する。この場合、セパレータユニット10Bの燃料極側に形成された燃料室内に燃料ガス、すなわち、アノードガスとしての水素ガスを供給すると、水素が水素イオンと電子とに分解され、水素イオンがプロトン同伴水を伴って、固体高分子電解質膜を透過する。また、前記空気極をカソード極とし、セパレータユニット10Bの空気極側に形成された空気流路である酸化剤流路としての酸素室内に酸化剤、すなわち、カソードガスとしての空気を供給すると、空気中の酸素と、前記水素イオン及び電子とが結合して水が生成される。なお、水分が逆拡散水として固体高分子電解質膜を透過し、燃料室内に移動する。ここで、逆拡散水とは、酸素室において生成される水が固体高分子電解質膜内に拡散し、該固体高分子電解質膜内を前記水素イオンと逆方向に透過して燃料室にまで浸透したものである。
【0024】
また、燃料電池スタック11に酸化剤としての空気を供給する図示されない装置が示されている。この場合、空気は、エアフィルタを通って、酸化剤供給源としての空気供給ファンに吸引され、該空気供給ファンから、空気供給管路、吸気マニホールド等を通って、燃料電池スタック11の酸素室、すなわち、空気流路に供給される。この場合、供給される空気の圧力は、大気圧程度の常圧であってもよいし、より高い圧力であってもよい。なお、前記空気供給ファンは、空気を吸引して吐出することができるものであれば、いかなる種類のものであってもよく、高圧の空気を供給するためのポンプであってもよい。また、前記エアフィルタは、空気に含まれる塵埃(じんあい)、不純物等を除去することができるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。なお、酸化剤として、空気に代えて酸素を使用することもできる。そして、空気流路から排出される空気は、図示されない排気マニホールドを通って大気中へ排出される。図に示される例において、空気は燃料電池スタック11内を流通する。
【0025】
また、前記空気供給管路には、必要に応じて、空気流路に供給される空気中に水をスプレーして供給し、燃料電池スタック11の空気極を湿潤な状態に維持するための水供給ノズルを配設することもできる。さらに、前記排気マニホールドの端部に、前記燃料電池スタック11から排出される空気中の水分を凝縮して除去するための凝縮器を配設することもできる。この場合、該凝縮器によって凝縮された水は図示されない水タンクに回収されることが望ましい。そして、該水タンク内の水を前記水供給ノズルに供給することによって水を無駄に廃棄することなく、循環させて再利用することができる。
【0026】
一方、燃料ガスとしての水素ガスは、水素吸蔵合金を収納した容器、デカリンのような水素吸蔵液体を収納した容器、水素ガスボンベ等から成る図示されない燃料貯蔵手段から燃料供給管路を通って、燃料電池スタック11の燃料ガス流路の入口に供給される。図に示される例において、水素ガスは燃料電池スタック11内を流通する。そして、該燃料電池スタック11の燃料ガス流路の出口から未反応成分として排出される水素ガスは、図示されない燃料排出管路を通って燃料電池スタック11外に排出される。なお、前記燃料排出管路には、排出された水素ガスが含まれる水分を分離して回収するための水回収ドレインタンクが配設されていることが望ましい。これにより、水分が分離されて水回収ドレインタンクから排出された水素ガスを回収し、燃料電池スタック11の燃料ガス流路に供給して再利用することができる。
【0027】
この場合、燃料電池スタック11は、全体として扁(へん)平な直方体状の形状を有し、内部における空気の流れは、図2において矢印Aで示されるように、重力方向、すなわち、上から下に直線状になっている。また、水素ガスの流れは、矢印Bで示されるように、重力方向、すなわち、前記矢印Aで示される方向とほぼ直交する水平面内において、セルモジュール10毎に折り返すサーペンタイン状に、すなわち、蛇行状になっている。
【0028】
また、前記燃料電池スタック11は、水素ガスの入口側及び出口側に配設された図示されないエンドプレートによって積層方向に締め付けられている。なお、前記エンドプレートは締付用シャフトによって、セルモジュール10を締め付ける力が付与された状態で、相互に接続されている。
【0029】
次に、前記燃料電池スタック11の構成を詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの形状を示す模式断面図であり図5及び6のE−E矢視断面図、図4は本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第1の図、図5は本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第2の図、図6は本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第3の図、図7は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。なお、図1及び7における(a)及び(b)は従来例及び本実施の形態を示し、図4における(a)及び(b)は平面図及びそのD−D矢視断面図である。
【0031】
図4(a)に示されるように、セパレータユニット10Bは、概略長方形状を備える平板状のコレクタ14を有し、該コレクタ14は長方形の短辺方向に延在する複数のリブ14bを備える。該リブ14bは、空気流路の内部に突出し、空気の流れ方向に延在する。そして、燃料電池スタック11に供給される空気は、複数のリブ14b同士の間に形成された凹部14c内を通って、矢印Cで示される方向に流れる。また、単位セル10Aも、前記コレクタ14とほぼ同様の大きさの長方形状の形状を備える。なお、図4は、説明の都合上、単位セル10A及びセパレータユニット10Bの一組のみを示しており、セルモジュール10においては、図4(b)における上下に、隣接する単位セル10A及びセパレータユニット10Bの組が積層される。
【0032】
そして、単位セル10Aとセパレータユニット10Bとの位置関係を保持するように、コレクタ14の左右両側に配設されたフレーム17は、図5及び6に示されるように、上下端を相互にバックアッププレート17a及び17bで連結されて枠状となっている。
【0033】
本実施の形態においては、燃料電池スタック11の空気流路内を流れる空気の抵抗を調整するために、図5及び6に示されるように、コレクタ14における空気の出口側端(図5及び6における下側端)に流路抵抗を調節する延長部14aが接続されている。なお、該延長部14aは、空気流路の出口から外側に延出する部材であり、コレクタ14と一体的に形成されたものであってもよい。
【0034】
前述のように、単位セル10Aは、固体高分子電解質膜、空気極及び燃料極を備え、電気化学反応によって起電力を発生するものであり、前記電気化学反応によって反応熱が発生する。そして、該反応熱は、主として、燃料電池スタック11に供給される空気によって奪われる。すなわち、燃料電池スタック11に供給される空気は、酸化剤として機能するとともに、単位セル10Aを冷却する冷媒としても機能する。なお、燃料電池スタック11の空気極を湿潤な状態に維持するために供給される空気中に水をスプレーして供給した場合には、冷却能力がより増大する。
【0035】
ここで、延長部14aをコレクタ14における空気の出口側端に接続すると、コレクタ14から排出された空気の流れに対する抵抗が増大し、燃料電池スタック11の空気流路内を流れる空気の流量が低下する。すなわち、空気流路抵抗が増大して空気流量が低下する。そのため、空気による冷却能力も低下する。そこで、本実施の形態においては、燃料電池スタック11において、放熱性が良好で温度が低い部位に大きな延長部14aを配設するとともに、放熱性が良好でなく温度が高い部位に小さな延長部14aを配設することによって、各部の温度を均一化するようになっている。
【0036】
図1(a)に示されるように、従来の燃料電池スタックにおいては、延長部14aが配設されていない。この場合、「背景技術」の項において説明したように、セルモジュール10の積層方向に関する中央付近に配設された単位セル10Aは、両端に配設された単位セル10Aと比較して放熱性が低いので、温度が上昇してしまう。そのため、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布は、図7(a)に示されるように、中央付近が高く両端に近付くにつれて低くなっている。なお、空気流量はほぼ均一である。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、コレクタ14における空気の出口側端に延長部14aを接続するとともに、図1(b)に示されるように、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近に配設される延長部14aを小さくし、端部付近に配設される延長部14aを大きくしている。なお、該延長部14aの大きさは、空気の出口方向(図における下方向)への突出量を調整することによって、調整することができる。これにより、空気流路抵抗は、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近において小さく、端部付近において大きくなるので、セルモジュール10の積層方向に関する空気流量の分布は、図7(b)に示されるように、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて低くなっている。そのため、空気の冷却能力は、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて低くなる。したがって、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布はほぼ均一となる。
【0038】
なお、図5及び6に示される例においては、延長部14aの下端縁が水平でなく、傾斜しており、延長部14aの形状が三角形となっている。これは、燃料電池スタック11の空気流路内において凝縮した水分を燃料電池スタック11外に排出しやすくするためである。延長部14aの形状が三角形となっているので、コレクタ14の表面を伝って延長部14aまで流下してきた水分は、傾斜した延長部14aの下端縁を伝って一方向(図5及び6における右方向)に移動し、前記三角形の頂点から滴下しやすくなる。これにより、前記水分は、延長部14aの下端縁近傍に滞留することなく、スムーズに燃料電池スタック11外に排出される。
【0039】
このように、本実施の形態においては、コレクタ14における空気の出口側端に接続される延長部14aの大きさをセルモジュール10の積層方向に関して変化させることによって、空気流路抵抗をセルモジュール10の積層方向に関して変化させ、これにより、空気による冷却の度合いをセルモジュール10の積層方向に関して変化させてセルモジュール10の積層方向に関する温度分布を均一化するようになっている。
【0040】
これにより、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近に配設された単位セル10Aの放熱性を高めることができ、燃料電池スタック11の寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、セルモジュール10の積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セル10Aの寿命を長くすることができる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、一つのセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組の延長部14aの大きさを変化させる場合について説明したが、燃料電池スタック11全体に含まれるすべての単位セル10A及びコレクタ14の組の延長部14aを変化させることもできる。この場合、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組の延長部14aを小さくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組の延長部14aを大きくする。
【0042】
また、延長部14aの大きさが漸次変化する場合について説明したが、延長部14aの大きさを段階的に変化させることもできる。例えば、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設されたセルモジュール10における延長部14aを小さくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設されたセルモジュール10における延長部14aを大きくする。この場合、同一のセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組の延長部14aは互いに等しくなるようにする。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0044】
図8は本発明の第2の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの要部拡大図、図9は本発明の第2の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。なお、図9における(a)及び(b)は従来例及び本実施の形態を示している。
【0045】
本実施の形態において、コレクタ14の隣接するリブ14b同士の間隔は、図8に示されるように、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組では広く、燃料電池スタック11の端部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組では狭くなっている。
【0046】
従来の燃料電池スタックにおいては、リブ14bの間隔はセルモジュール10の積層方向に関して変化しない。この場合、「背景技術」の項において説明したように、セルモジュール10の積層方向に関する中央付近に配設された単位セル10Aは、両端に配設された単位セル10Aと比較して放熱性が低いので、温度が上昇してしまう。そのため、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布は、図9(a)に示されるように、中央付近が高く両端に近付くにつれて低くなっている。なお、空気流量はほぼ均一である。
【0047】
これに対し、本実施の形態においては、コレクタ14の隣接するリブ14b同士の間隔がセルモジュール10の積層方向に関する中央部付近において大きく、端部付近において小さくなるので、セルモジュール10の積層方向に関する空気流量の分布は、図9(b)に示されるように、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて低くなっている。そのため、空気の冷却能力は、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて低くなる。したがって、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布はほぼ均一となる。
【0048】
このように、本実施の形態においては、コレクタ14の隣接するリブ14b同士の間隔をセルモジュール10の積層方向に関して変化させることによって、空気流路抵抗をセルモジュール10の積層方向に関して変化させ、これにより、空気による冷却の度合いをセルモジュール10の積層方向に関して変化させてセルモジュール10の積層方向に関する温度分布を均一化するようになっている。
【0049】
これにより、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近に配設された単位セル10Aの放熱性を高めることができ、燃料電池スタック11の寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、セルモジュール10の積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セル10Aの寿命を長くすることができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、一つのセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組のリブ14b同士の間隔を変化させる場合について説明したが、燃料電池スタック11全体に含まれるすべての単位セル10A及びコレクタ14の組のリブ14b同士の間隔を変化させることもできる。この場合、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組のリブ14b同士の間隔を小さくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組のリブ14b同士の間隔を大きくする。
【0051】
また、リブ14b同士の間隔が漸次変化する場合について説明したが、リブ14b同士の間隔を段階的に変化させることもできる。例えば、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設されたセルモジュール10におけるリブ14b同士の間隔を大きくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設されたセルモジュール10におけるリブ14b同士の間隔を小さくする。この場合、同一のセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組のリブ14b同士の間隔は互いに等しくなるようにする。
【0052】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0053】
図10は本発明の第3の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの要部拡大図、図11は本発明の第3の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。なお、図11における(a)及び(b)は従来例及び本実施の形態を示している。
【0054】
本実施の形態において、コレクタ14は、図10に示されるように、熱伝導率の異なる材料21〜23で形成されている。図10に示される例において、燃料電池スタック11の端部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組では、コレクタ14は熱伝導率の値が小さい材料21、例えば、ステンレス鋼で形成され、燃料電池スタック11のやや中央に近い部位に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組では、コレクタ14は材料21より熱伝導率の値が大きい材料22、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、燃料電池スタック11の中央部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組では、コレクタ14は材料22より熱伝導率の値が大きい材料23、例えば、銅又は銅合金で形成されている。
【0055】
従来の燃料電池スタックにおいては、コレクタ14を形成する材料の熱伝導率はセルモジュール10の積層方向に関して変化しない。この場合、「背景技術」の項において説明したように、セルモジュール10の積層方向に関する中央付近に配設された単位セル10Aは、両端に配設された単位セル10Aと比較して放熱性が低いので、温度が上昇してしまう。そのため、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布は、図11(a)に示されるように、中央付近が高く両端に近付くにつれて低くなっている。なお、コレクタ14を形成する材料の熱伝導率はほぼ均一である。
【0056】
これに対し、本実施の形態においては、コレクタ14はセルモジュール10の積層方向に関する中央部付近において熱伝導率の値が大きい材料から形成され、端部付近において熱伝導率が値が小さい材料から形成されるので、セルモジュール10の積層方向に関するコレクタ14の熱伝導率の値の分布は、図11(b)に示されるように、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて小さくなっている。そのため、空気の冷却能力は、中央部付近が高く、端部に近付くにつれて低くなる。したがって、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布はほぼ均一となる。
【0057】
このように、本実施の形態においては、コレクタ14を形成する材料の熱伝導率をセルモジュール10の積層方向に関して変化させることによって、空気による冷却の度合いをセルモジュール10の積層方向に関して変化させ、これにより、セルモジュール10の積層方向に関する温度分布を均一化するようになっている。
【0058】
これにより、セルモジュール10の積層方向に関する中央部付近に配設された単位セル10Aの放熱性を高めることができ、燃料電池スタック11の寸法が増加することなく、大きな設置スペースを必要とすることなく、セルモジュール10の積層方向に関して温度を均一化させることができ、各単位セル10Aの寿命を長くすることができる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、一つのセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組のコレクタ14を形成する材料の熱伝導率を変化させる場合について説明したが、燃料電池スタック11全体に含まれるすべての単位セル10A及びコレクタ14の組のコレクタ14を形成する材料の熱伝導率を変化させることもできる。この場合、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組のコレクタ14を形成する材料の熱伝導率の値を小さくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設された単位セル10A及びコレクタ14の組のコレクタ14を形成する材料の熱伝導率の値を高くする。
【0060】
また、コレクタ14を形成する材料の熱伝導率が段階的に変化する場合について説明したが、コレクタ14を形成する材料の熱伝導率が漸次変化するようにしてもよい。さらに、例えば、セルモジュール10の積層方向に関して燃料電池スタック11の中央部付近に配設されたセルモジュール10におけるコレクタ14を形成する材料の熱伝導率の値を大きくして、燃料電池スタック11の端部付近に配設されたセルモジュール10におけるコレクタ14を形成する材料の熱伝導率の値を小さくすることもできる。この場合、同一のセルモジュール10に含まれる単位セル10A及びコレクタ14の組のコレクタ14を形成する材料の熱伝導率の値は等しくなるようにする。
【0061】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの形状を示す模式断面図であり図5及び6のE−E矢視断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの構成を示す模式斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第1の図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第2の図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における燃料電池のセパレータユニットの構成を示す第3の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの要部拡大図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における燃料電池のセルモジュールの要部拡大図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における燃料電池スタックの温度分布及び空気流量を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10A 単位セル
10B セパレータユニット
11 燃料電池スタック
14a 延長部
14b リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層を燃料極と酸素極とで挟持した燃料電池がセパレータユニットを挟んで積層され、
積層方向に関する中央部付近における燃料電池の放熱性が端部付近における燃料電池の放熱性よりも高くなるように構成されていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記セパレータユニットは酸化剤流路の出口から外側に延出する延長部を備え、
前記積層方向に関する中央部付近の延長部は端部付近の延長部よりも小さく形成されている請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記セパレータユニットは、酸化剤流路の内部に突出し、酸化剤の流れ方向に延在する複数のリブを備え、
前記積層方向に関する中央部付近における隣接するリブ同士の間隔は端部付近における隣接するリブ同士の間隔よりも大きく形成されている請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記セパレータユニットは熱伝導率の異なる材料で形成され、
前記積層方向に関する中央部付近におけるセパレータユニットは端部付近におけるセパレータユニットよりも熱伝導率の高い材料で形成されている請求項1に記載の燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−59874(P2008−59874A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234714(P2006−234714)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】