説明

燃料電池スタック

【課題】簡単な構成で、マニホールド内の圧損を可及的に低減させることができ、冷却媒体を円滑且つ確実に流通させることを可能にする。
【解決手段】燃料電池スタック10を構成する第1エンドプレート18aには、冷却媒体供給マニホールド50及び冷却媒体排出マニホールド52が設けられる。冷却媒体供給マニホールド50は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体供給連通孔30a、30aに連通する一対の供給マニホールド部54a、54aと、一対の前記供給マニホールド部54a、54aの上部側同士を連結する供給連結部56aとを備える。供給マニホールド部54aの内壁面には、直線部位60aから湾曲部位60bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位60cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層されるとともに、積層方向両端に長方形状のエンドプレートが配設される燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持した単位セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の単位セルを積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックでは、単位セルの積層方向に貫通して燃料ガスを流すための燃料ガス供給連通孔及び燃料ガス排出連通孔と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス供給連通孔及び酸化剤ガス排出連通孔と、冷却媒体を流すための冷却媒体供給連通孔及び冷却媒体排出連通孔とを内部に備える、所謂、内部マニホールド型燃料電池を構成する場合が多い。
【0004】
内部マニホールド型燃料電池に関連する技術として、例えば、特許文献1が知られている。この特許文献1は、電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層されるとともに、積層方向両端に長方形状のエンドプレートが配設される燃料電池スタックに関するものである。
【0005】
燃料電池スタックの互いに対向する長辺側の2辺には、それぞれ積層方向に連通して冷却媒体を流通させる一対の冷却媒体供給連通孔と一対の冷却媒体排出連通孔とが設けられている。そして、一方のエンドプレートには、少なくとも一対の冷却媒体供給連通孔又は一対の冷却媒体排出連通孔のいずれかに連通する一対のマニホールド部と、前記一対のマニホールド部同士を連結し且つ長辺側に沿う幅寸法が前記一対のマニホールド部の寸法よりも小さく設定される連結部とが設けられている。
【0006】
これにより、マニホールド内に流入する冷却媒体の圧損の増加を有効に抑制することができ、前記冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−54425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この種の内部マニホールド型燃料電池に関連してなされたものであり、特にマニホールド内の圧損を可及的に低減させることができ、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層されるとともに、積層方向両端に長方形状のエンドプレートが配設される燃料電池スタックに関するものである。
【0010】
この燃料電池スタックでは、前記燃料電池スタックの互いに対向する長辺側の2辺には、それぞれ積層方向に連通して冷却媒体を流通させる一対の冷却媒体供給連通孔と一対の冷却媒体排出連通孔とが設けられている。
【0011】
そして、一方のエンドプレートには、一対の冷却媒体供給連通孔に連通し、2辺に沿って長尺な一対の供給マニホールド部と、前記一対の供給マニホールド部同士を連結する供給連結部とが設けられるとともに、少なくとも一方の供給マニホールド部の内壁面には、直線部位から湾曲部位を介して滑らかに傾斜する傾斜部位が設けられている。
【0012】
また、この燃料電池スタックでは、一方のエンドプレートには、冷却媒体排出連通孔に連通し、2辺に沿って長尺な一対の排出マニホールド部と、前記一対の排出マニホールド部同士を連結する排出連結部とが設けられるとともに、少なくとも一方の排出マニホールド部の内壁面には、直線部位から湾曲部位を介して滑らかに傾斜する傾斜部位が設けられることが好ましい。
【0013】
さらに、この燃料電池スタックでは、一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の上部に連結され、少なくとも一方の供給マニホールド部の内壁面の下方角部に、傾斜部位が設けられることが好ましい。
【0014】
さらにまた、この燃料電池スタックでは、一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の下部に連結され、少なくとも一方の供給マニホールド部の内壁面の上方角部に、前記傾斜部位が設けられることが好ましい。
【0015】
また、この燃料電池スタックでは、一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の中央部に連結され、少なくとも一方の供給マニホールド部の内壁面の下方角部及び上方角部に、それぞれ傾斜部位が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一方の供給マニホールド部の内壁面には、直線部位から湾曲部位を介して滑らかに傾斜する傾斜部位が設けられている。従って、一方の供給マニホールド部内を流動する冷却媒体の圧損を可及的に低減させることができるとともに、一対の冷却媒体供給連通孔への前記冷却媒体の分配性が良好に向上する。これにより、簡単な構成で、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックの正面説明図である。
【図4】前記第1エンドプレートの側面説明図である。
【図5】比較例及び第1の実施形態の各マニホールド部の圧損を比較する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図7】前記燃料電池スタックの正面説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図9】前記燃料電池スタックの正面説明図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックの正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、燃料電池12を備え、複数の前記燃料電池12を水平方向(矢印A方向)又は鉛直方向(矢印C方向)に沿って互いに積層して構成される。
【0019】
燃料電池12の積層方向一端には、第1ターミナルプレート14a、第1絶縁プレート16a及び第1エンドプレート18aが積層される一方、積層方向他端には、第2ターミナルプレート14b、第2絶縁プレート16b及び第2エンドプレート18bが積層される。
【0020】
長方形状に構成される第1エンドプレート18a及び第2エンドプレート18bは、矢印A方向に延在する複数のタイロッド19により一体的に締め付け保持される。なお、燃料電池スタック10は、第1エンドプレート18a及び第2エンドプレート18bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持されてもよい。
【0021】
図2に示すように、燃料電池12は、電解質膜・電極構造体20が、第1及び第2セパレータ22、24に挟持される。第1及び第2セパレータ22、24は、例えば、カーボンセパレータの他、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、あるいはめっき処理鋼板等の金属セパレータにより構成される。
【0022】
燃料電池12の矢印C方向(図2中、重力方向)の上端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔26a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔28aが、矢印B方向(水平方向)に配列して設けられる。
【0023】
燃料電池12の矢印C方向の下端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔26b、及び燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔28bが、矢印B方向に配列して設けられる。
【0024】
燃料電池12の矢印B方向の両端縁部(長辺側の2辺)には、冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体供給連通孔30a、及び前記冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体排出連通孔30bが、例えば、それぞれ上下に設けられる。一対の冷却媒体供給連通孔30aは、同一の開口面積を有する一方、一対の冷却媒体排出連通孔30bは、同一の開口面積を有する。なお、各冷却媒体供給連通孔30a及び各冷却媒体排出連通孔30bは、それぞれ上下に2以上に分割されていてもよい。
【0025】
第1セパレータ22の電解質膜・電極構造体20に向かう面22aには、酸化剤ガス供給連通孔26aと酸化剤ガス排出連通孔26bとに連通する酸化剤ガス流路32が設けられる。
【0026】
第2セパレータ24の電解質膜・電極構造体20に向かう面24aには、燃料ガス供給連通孔28aと燃料ガス排出連通孔28bとに連通する燃料ガス流路34が設けられる。
【0027】
互いに隣接する燃料電池12を構成する第1セパレータ22の面22bと、第2セパレータ24の面24bとの間には、冷却媒体供給連通孔30aと冷却媒体排出連通孔30bとを連通する冷却媒体流路36が設けられる。各冷却媒体供給連通孔30aと冷却媒体流路36とは、連通路38aを介して連通するとともに、各冷却媒体排出連通孔30bと前記冷却媒体流路36とは、連通路38bを介して連通する。
【0028】
第1セパレータ22の面22a、22bには、第1シール部材40aが、一体的に又は個別に設けられるとともに、第2セパレータ24の面24a、24bには、第2シール部材40bが、一体的に又は個別に設けられる。
【0029】
電解質膜・電極構造体20は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜42と、前記固体高分子電解質膜42を挟持するカソード側電極44及びアノード側電極46とを備える。
【0030】
カソード側電極44及びアノード側電極46は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜42の両面に形成されている。
【0031】
図1に示すように、第1エンドプレート18aの外面側には、上部側に冷却媒体供給マニホールド50が設けられるとともに、下部側に冷却媒体排出マニホールド52が設けられる。冷却媒体供給マニホールド50及び冷却媒体排出マニホールド52は、下方に開口する略コ字状を有する。
【0032】
なお、第1エンドプレート18a側に、例えば、冷却媒体供給マニホールド50を設ける一方、第2エンドプレート18b側に、例えば、冷却媒体排出マニホールド52を設けてもよい。また、上記とは逆の構成でもよい。
【0033】
図1及び図3に示すように、冷却媒体供給マニホールド50は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体供給連通孔30a、30aに連通する一対の供給マニホールド部54a、54aと、前記一対の供給マニホールド部54a、54aの上部側同士を連結するとともに、長辺方向(矢印C方向)に沿う幅寸法W1が、前記一対の供給マニホールド部54a、54aの寸法よりも小さく設定される供給連結部56aとを備える。
【0034】
供給マニホールド部54a、54aは、第1エンドプレート18aの長辺方向(矢印C方向)に沿って長尺な直方体形状を有している。一方の供給マニホールド部54aには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体供給配管58aが別体(又は一体)に設けられる。この冷却媒体供給配管58aは、図示しない冷却媒体供給部に連通する。
【0035】
図4に示すように、冷却媒体供給配管58aは、一方の供給マニホールド部54aの下方端部に、鉛直方向から水平方向に所定の角度θ°(例えば、10°〜40゜)だけ傾斜して連結される。冷却媒体供給配管58aは、冷却媒体を一方の供給マニホールド部54a内に斜め下方から供給する。
【0036】
図3に示すように、供給マニホールド部54aの内壁面には、直線部位60aから湾曲部位60bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位60cが設けられる。傾斜部位60cは、湾曲面により構成されてもよく、又は、平坦面で構成されてもよい。以下に説明する各傾斜部位も同様である。
【0037】
冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部54a内で外側に偏って設けられており、傾斜部位60cは、前記供給マニホールド部54aの内壁面下方の内側の角部(他の供給マニホールド部54aに対向する角部)に設けられる。傾斜部位60cは、少なくとも冷却媒体供給配管58aが連結される一方の供給マニホールド部54aの内壁面に設けられることが好ましい。
【0038】
図1及び図3に示すように、冷却媒体排出マニホールド52は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体排出連通孔30b、30bに連通する一対の排出マニホールド部54b、54bと、前記一対の排出マニホールド部54b、54bの上部側同士を連結するとともに、長辺方向(矢印C方向)に沿う幅寸法W2が、前記一対の排出マニホールド部54b、54bの寸法よりも小さく設定される排出連結部56bとを備える。
【0039】
排出マニホールド部54b、54bは、第1エンドプレート18aの長辺方向(矢印C方向)に沿って長尺な直方体形状を有している。一方の供給マニホールド部54aと対角位置に位置する一方の排出マニホールド部54bには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体排出配管58bが別体(又は一体)に設けられる。この冷却媒体排出配管58bは、一方の排出マニホールド部54bの中央部位から水平方向(矢印A方向)に延在している。
【0040】
図3に示すように、排出マニホールド部54bの内壁面には、直線部位62aから湾曲部位62bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位62cが設けられる。冷却媒体排出連通孔30bは、排出マニホールド部54b内で外側に偏って設けられており、傾斜部位62cは、前記排出マニホールド部54bの内壁面下方の内側の角部(他の排出マニホールド部54bに対向する角部)に設けられる。傾斜部位62cは、少なくとも冷却媒体排出配管58bが連結される一方の排出マニホールド部54bの内壁面に設けられることが好ましい。
【0041】
第2エンドプレート18bには、図示しないが、酸化剤ガス供給連通孔26a、酸化剤ガス排出連通孔26b、燃料ガス供給連通孔28a及び燃料ガス排出連通孔28bに対応して、それぞれマニホールドが設けられる。
【0042】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、第2エンドプレート18bでは、酸化剤ガス供給連通孔26aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔28aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。
【0044】
さらに、図1に示すように、第1エンドプレート18aでは、冷却媒体供給配管58aから冷却媒体供給マニホールド50内に純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。この冷却媒体の一部分は、冷却媒体供給配管58aが設けられる一方の供給マニホールド部54aから冷却媒体供給連通孔30aに供給されるとともに、前記冷却媒体の残余の部分は、供給連結部56aを通って他方の供給マニホールド部54aから冷却媒体供給連通孔30aに供給される。
【0045】
このため、図2に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔26aから第1セパレータ22の酸化剤ガス流路32に導入される。この酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路32に沿って矢印C方向(重力方向)に移動し、電解質膜・電極構造体20のカソード側電極44に供給される。
【0046】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔28aから第2セパレータ24の燃料ガス流路34に導入される。この燃料ガスは、燃料ガス流路34に沿って重力方向(矢印C方向)に移動し、電解質膜・電極構造体20のアノード側電極46に供給される。
【0047】
従って、電解質膜・電極構造体20では、カソード側電極44に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極46に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0048】
次いで、電解質膜・電極構造体20のカソード側電極44に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔26bに沿って矢印A方向に排出される。電解質膜・電極構造体20のアノード側電極46に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔28bに沿って矢印A方向に排出される。
【0049】
一方、2つの冷却媒体供給連通孔30a、30aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ22と第2セパレータ24との間に形成された冷却媒体流路36に導入される。この冷却媒体は、矢印C方向に移動して電解質膜・電極構造体20を冷却した後、2つの冷却媒体排出連通孔30b、30bから冷却媒体排出マニホールド52の一対の排出マニホールド部54b、54bに排出される。
【0050】
図1に示すように、一方の排出マニホールド部54bに排出された冷却媒体は、直接、冷却媒体排出配管58bを介して外部に排出される。他方の排出マニホールド部54bに排出された冷却媒体は、排出連結部56bを通って一方の排出マニホールド部54bに流入した後、冷却媒体排出配管58bを介して外部に排出される。
【0051】
この場合、第1の実施形態では、図3に示すように、少なくとも一方の供給マニホールド部54aの内壁面には、直線部位60aから湾曲部位60bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位60cが設けられている。そして、冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部54a内で外側に偏って設けられており、傾斜部位60cは、供給マニホールド部54aの内壁面下方の内側の角部に設けられている。
【0052】
従って、供給マニホールド部54a内を流動する冷却媒体の圧損を可及的に低減させることができるとともに、一対の冷却媒体供給連通孔30aへの前記冷却媒体の分配性が良好に向上する。これにより、簡単な構成で、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になるという効果が得られる。
【0053】
なお、第1の実施形態では、他方の供給マニホールド部54aの他、一対の排出マニホールド部54b、54bも、上記の一方の供給マニホールド部54aと同様に構成されている。このため、マニホールド内部の圧損の低減を図るとともに、冷却媒体の分配性が向上するという利点がある。また、以下に説明する各実施形態においても、供給マニホールド部側についてのみ説明するが、同様の効果が得られる。
【0054】
そこで、一対の供給マニホールド部54a及び一対の排出マニホールド部54bの内壁面を長方形状に形成した比較例1と、一対の供給マニホールド部54a及び一対の排出マニホールド部54bの内壁面に傾斜部位60c、62cを設けた第1の実施形態を用いて、それぞれの圧損を検出した。その結果が、図5に示されている。
【0055】
これにより、第1の実施形態では、比較例に比べてマニホールド内部の圧損が大幅に低減するという結果が得られた。しかも、一対の冷却媒体供給連通孔30aに対する冷却媒体の分配性は、第1の実施形態では、比較例に比べて良好に向上している。
【0056】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック70の概略斜視説明図である。
【0057】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0058】
燃料電池スタック70は、第1エンドプレート18aの外面側に設けられる冷却媒体供給マニホールド72及び冷却媒体排出マニホールド74を備える。冷却媒体供給マニホールド72及び冷却媒体排出マニホールド74は、略H字状を有する。
【0059】
冷却媒体供給マニホールド72は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体供給連通孔30a、30aに連通する一対の縦長形状の供給マニホールド部76a、76aと、一対の前記供給マニホールド部76a、76aの略中間位置同士を連結し且つ長辺方向(矢印C方向)に沿う幅寸法が、一対の前記供給マニホールド部76a、76aよりも小さく設定される供給連結部78aとを備える。一方の供給マニホールド部76aには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体供給配管80aが設けられる。
【0060】
冷却媒体供給配管80aは、一方の供給マニホールド部76aの中央部に、積層方向から水平方向外方(供給連結部材78a側とは反対側)に傾斜して連結される。冷却媒体供給配管80aは、冷却媒体を一方の供給マニホールド部76a内に斜め側方から供給する。
【0061】
図7に示すように、供給マニホールド部76aの内壁面には、直線部位82aから湾曲部位82bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位82cが設けられる。冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部76a内で外側に偏って設けられており、傾斜部位82cは、前記供給マニホールド部76aの内壁面下方及び内壁面上方の各内側の角部(他の供給マニホールド部76aに対向する上下両角部)に設けられる。傾斜部位82cは、少なくとも冷却媒体供給配管80aが連結される一方の供給マニホールド部76aの内壁面に設けられることが好ましい。
【0062】
図6及び図7に示すように、冷却媒体排出マニホールド74は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体排出連通孔30b、30bに連通する一対の排出マニホールド部76b、76bと、一対の前記排出マニホールド部76b、76bの略中間位置同士を連結し且つ長辺方向(矢印C方向)に沿う幅寸法が、一対の前記排出マニホールド部76b、76bよりも小さく設定される排出連結部78bとを備える。
【0063】
排出マニホールド部76bには、冷却媒体供給配管80aと対角位置に、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体排出配管80bが設けられる。この冷却媒体排出配管80bは、一方の排出マニホールド部76bの中央部位から水平方向(積層方向)に延在している。
【0064】
図7に示すように、排出マニホールド部76bの内壁面には、直線部位84aから湾曲部位84bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位84cが設けられる。冷却媒体排出連通孔30bは、排出マニホールド部76b内で外側に偏って設けられており、傾斜部位84cは、排出マニホールド部76bの内壁面下方及び内壁面上方の各内側の角部(他の排出マニホールド部76bに対向する上下両角部)に設けられる。傾斜部位84cは、少なくとも冷却媒体排出配管80bが連結される一方の排出マニホールド部76bの内壁面に設けられることが好ましい。
【0065】
このように構成される第2の実施形態では、図7に示すように、一方の供給マニホールド部76aの中央部に冷却媒体供給配管80aが連結されるとともに、前記供給マニホールド部76aの内壁面下方及び内壁面上方の各内側の角部に、それぞれ傾斜部位82cが設けられている。
【0066】
従って、供給マニホールド部76a内を流動する冷却媒体の圧損を可及的に低減させることができるとともに、一対の冷却媒体供給連通孔30aへの前記冷却媒体の分配性が良好に向上する。これにより、簡単な構成で、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック90の概略斜視説明図である。
【0068】
燃料電池スタック90は、第1エンドプレート18aの外面側に設けられる冷却媒体供給マニホールド92及び冷却媒体排出マニホールド94を備える。冷却媒体供給マニホールド92及び冷却媒体排出マニホールド94は、上方に開口する略コ字状を有する。
【0069】
冷却媒体供給マニホールド92は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体供給連通孔30a、30aに連通する一対の縦長形状の供給マニホールド部96a、96aと、一対の前記供給マニホールド部96a、96aの下部側同士を連結し且つ長辺方向に沿う幅寸法が、一対の前記供給マニホールド部96a、96aよりも小さく設定される供給連結部98aとを備える。一方の供給マニホールド部96aには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体供給配管100aが別体(又は一体)に設けられる。
【0070】
冷却媒体供給配管100aは、一方の供給マニホールド部96aの上方端部に、鉛直方向から水平方向に傾斜して連結される。冷却媒体供給配管100aは、冷却媒体を一方の供給マニホールド部96a内に斜め上方から供給する。
【0071】
図9に示すように、供給マニホールド部96aの内壁面には、直線部位102aから湾曲部位102bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位102cが設けられる。冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部96a内で外側に偏って設けられており、傾斜部位102cは、前記供給マニホールド部96aの内壁面上方の内側の角部(他の供給マニホールド部96aに対向する角部)に設けられる。傾斜部位102cは、少なくとも冷却媒体供給配管100aが連結される一方の供給マニホールド部96aの内壁面に設けられることが好ましい。
【0072】
図8及び図9に示すように、冷却媒体排出マニホールド94は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体排出連通孔30b、30bに連通する一対の排出マニホールド部96b、96bと、一対の前記排出マニホールド部96b、96bの下部側同士を連結し且つ長辺方向に沿う幅寸法が、一対の前記排出マニホールド部96b、96bよりも小さく設定される排出連結部98bとを備える。
【0073】
排出マニホールド部96bには、冷却媒体供給配管100aと対角位置に、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体排出配管100bが設けられる。この冷却媒体排出配管100bは、一方の排出マニホールド部96bの中央部位から水平方向(積層方向)に延在している。
【0074】
図9に示すように、排出マニホールド部96bの内壁面には、直線部位104aから湾曲部位104bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位104cが設けられる。冷却媒体排出連通孔30bは、排出マニホールド部96b内で外側に偏って設けられており、傾斜部位104cは、前記排出マニホールド部96bの内壁面上方の内側の角部(他の排出マニホールド部96bに対向する角部)に設けられる。傾斜部位104cは、少なくとも冷却媒体排出配管100bが連結される一方の排出マニホールド部96bの内壁面に設けられることが好ましい。
【0075】
このように構成される第3の実施形態では、一方の供給マニホールド部96aの上部に冷却媒体供給配管100aが連結されるとともに、前記供給マニホールド部96aの内壁面上方の内側の角部に、傾斜部位102cが設けられている。
【0076】
従って、供給マニホールド部96a内を流動する冷却媒体の圧損を可及的に低減させることができるとともに、一対の冷却媒体供給連通孔30aへの前記冷却媒体の分配性が良好に向上する。これにより、簡単な構成で、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタック110の概略斜視説明図である。
【0078】
燃料電池スタック110では、第1エンドプレート18aの外面側に冷却媒体供給マニホールド112と冷却媒体排出マニホールド114とが上下に配置される。
【0079】
冷却媒体供給マニホールド112は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体供給連通孔30a、30aに連通する一対の供給マニホールド部116a、116aと、一対の前記供給マニホールド部116a、116aの上部側同士を連結する供給連結部118aとを備える。
【0080】
供給マニホールド部116a、116aは、第1エンドプレート18aの長辺方向(矢印C方向)に沿って長尺な直方体形状を有している。一方の供給マニホールド部116aには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体供給配管58aが設けられる。
【0081】
供給マニホールド部116aの内壁面には、直線部位120aから湾曲部位120bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位120cが設けられる。冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部116a内で内側に偏って設けられており、傾斜部位120cは、前記供給マニホールド部116aの内壁面下方の外側の角部に設けられる。傾斜部位120cは、少なくとも冷却媒体供給配管58aが連結される一方の供給マニホールド部116aの内壁面に設けられることが好ましい。
【0082】
冷却媒体排出マニホールド114は、第1エンドプレート18aの一対の冷却媒体排出連通孔30b、30bに連通する一対の排出マニホールド部116b、116bと、一対の前記排出マニホールド部116b、116bの上部側同士を連結する排出連結部118bとを備える。
【0083】
排出マニホールド部116b、116bは、第1エンドプレート18aの長辺方向(矢印C方向)に沿って長尺な直方体形状を有している。一方の供給マニホールド部116aと対角位置に位置する一方の排出マニホールド部116bには、第1エンドプレート18aの外部に延在する冷却媒体排出配管58bが設けられる。
【0084】
排出マニホールド部116bの内壁面には、直線部位122aから湾曲部位122bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位122cが設けられる。冷却媒体排出連通孔30bは、排出マニホールド部116b内で内側に偏って設けられており、傾斜部位122cは、前記排出マニホールド部116bの内壁面下方の外側の角部に設けられる。傾斜部位122cは、少なくとも冷却媒体排出配管58bが連結される一方の排出マニホールド部116bの内壁面に設けられることが好ましい。
【0085】
このように構成される第4の実施形態では、供給マニホールド部116aの内壁面には、直線部位120aから湾曲部位120bを介して滑らかに傾斜する傾斜部位120cが設けられている。そして、冷却媒体供給連通孔30aは、供給マニホールド部116a内で内側に偏って設けられており、傾斜部位120cは、前記供給マニホールド部116aの内壁面下方の外側の角部に設けられている。
【0086】
従って、供給マニホールド部116a内を流動する冷却媒体の圧損を可及的に低減させることができるとともに、一対の冷却媒体供給連通孔30aへの前記冷却媒体の分配性が良好に向上する。これにより、簡単な構成で、冷却媒体を円滑且つ均一に燃料電池に供給流通させることが可能になる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0087】
なお、第1〜第4の実施形態では、冷却媒体排出配管58b、80b及び100bが、水平方向に延在して構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、冷却媒体排出配管58b、80b及び100bは、それぞれ冷却媒体供給配管58a、80a及び100aと同様に構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10、70、90、110…燃料電池スタック
12…燃料電池 18a、18b…エンドプレート
20…電解質膜・電極構造体 22、24…セパレータ
26a…酸化剤ガス供給連通孔 26b…酸化剤ガス排出連通孔
28a…燃料ガス供給連通孔 28b…燃料ガス排出連通孔
30a…冷却媒体供給連通孔 30b…冷却媒体排出連通孔
32…酸化剤ガス流路 34…燃料ガス流路
36…冷却媒体流路 38a、38b…連通路
42…固体高分子電解質膜 44…カソード側電極
46…アノード側電極
50、72、92、112…冷却媒体供給マニホールド
52、74、94、114…冷却媒体排出マニホールド
54a、76a、96a、116a…供給マニホールド部
54b、76b、96b、116b…排出マニホールド部
56a、78a、98a、118a…供給連結部
56b、78b、98b、118b…排出連結部
58a、80a、100a…冷却媒体供給配管
58b、80b、100b…冷却媒体排出配管
60a、62a、82a、84a、102a、104a、120a、122a…直線部位
60b、62b、82b、84b、102b、104b、120b、122b…湾曲部位
60c、62c、82c、84c、102c、104c、120c、122c…傾斜部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層されるとともに、積層方向両端に長方形状のエンドプレートが配設される燃料電池スタックであって、
前記燃料電池スタックの互いに対向する長辺側の2辺には、それぞれ積層方向に連通して冷却媒体を流通させる一対の冷却媒体供給連通孔と一対の冷却媒体排出連通孔とが設けられ、
一方のエンドプレートには、前記一対の冷却媒体供給連通孔に連通し、前記2辺に沿って長尺な一対の供給マニホールド部と、
前記一対の供給マニホールド部同士を連結する供給連結部と、
が設けられるとともに、
少なくとも一方の供給マニホールド部の内壁面には、直線部位から湾曲部位を介して滑らかに傾斜する傾斜部位が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記一方のエンドプレートには、前記冷却媒体排出連通孔に連通し、前記2辺に沿って長尺な一対の排出マニホールド部と、
前記一対の排出マニホールド部同士を連結する排出連結部と、
が設けられるとともに、
少なくとも一方の排出マニホールド部の内壁面には、直線部位から湾曲部位を介して滑らかに傾斜する傾斜部位が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、
前記供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の上部に連結され、
少なくとも前記一方の供給マニホールド部の内壁面の下方角部に、前記傾斜部位が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、
前記供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の下部に連結され、
少なくとも前記一方の供給マニホールド部の内壁面の上方角部に、前記傾斜部位が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、前記一対の供給マニホールド部は、鉛直方向に長尺に配設されるとともに、
前記供給連結部は、前記一対の供給マニホールド部の中央部に連結され、
少なくとも前記一方の供給マニホールド部の内壁面の下方角部及び上方角部に、それぞれ前記傾斜部位が設けられることを特徴とする燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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