説明

燃料電池セル、及び燃料電池

【課題】 内部のガス流を折り返した構成の燃料電池セルであって、局部的な温度上昇を抑制し、発電反応を均一に行うことができる燃料電池セルを提供すること。
【解決手段】 この燃料電池セルFC1は、空気極支持体20と、燃料極50と、電解質部40と、インターコネクタ部60と、を備え、空気極支持体20の内部には空気が流れる流路70が形成されており、流路70は、空気が流入する往路71と、往路71に流入した空気が折り返して流出する復路72とを含み、流路70に沿って延在し、空気極支持体20よりもガス透過率の低い仕切部30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、燃料電池セル、及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような燃料電池セルは、電解質を挟んで空気極と燃料極を配置すべく様々な態様のものが提案されている。一つの態様は、下記特許文献1の図4等に示されているように、有底円筒状のものとして形成されている燃料電池セルである。この燃料電池セルは、空気極支持体の外側に電解質層が形成され、その電解質層に重ねて燃料極層が形成され、空気極支持体に接続されるようにインターコネクタが形成されている。有底円筒状の空気極支持体の内部には空気導入管が挿入され、この空気導入管を介して空気が導入される。また別の態様は、下記特許文献2に示されるように、空気流路又は燃料ガス流路を折り返すように形成した燃料電池セルである。この燃料電池セルの場合、流路の一端から空気又は燃料ガスを流入させ、流路の他端から流出させている。
【特許文献1】特開2006−66387号公報
【特許文献2】特許3137177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献2に記載されているような、燃料電池セル内部の流路を折り返す態様のものは、その折り返し部分において温度が局部的に上昇し発電が安定しない現象が現れる。上記特許文献2では、そのための対策として、往路を流れるガスを復路に拡散するように構成している(上記特許文献2の段落番号0026〜0028、図16参照)。しかしながら、実際にそのような構成の燃料電池セルを用いても、現実には局部的な温度上昇が発生する場合もあり、往路を流れるガスを復路に拡散させる構成は必ずしも局部的な温度上昇を抑制することにはならず、発電反応も均一に行われないことを本発明者らは見出したものである。
【0004】
そこで、本発明では、内部のガス流を折り返した構成の燃料電池セルであって、局部的な温度上昇を抑制し、発電反応を均一に行うことができる燃料電池セル及びその燃料電池セルによって構成される燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池セルは、燃料ガス及び酸化剤ガスの一方を含む第1ガスと他方を含む第2ガスとによって作動する燃料電池セルであって、前記第1ガスに対応する第1電極と、前記第2ガスに対応する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される電解質部と、前記第1電極と電気的に接続されたインターコネクタ部と、前記第1電極、前記第2電極、前記電解質部、及び前記インターコネクタ部を支持するための支持体と、を備え、前記電解質部及び前記電解質部を挟んで形成される前記第1電極及び前記第2電極からなる第1反応部が前記支持体の外表面の一部に形成され、前記インターコネクタ部は、前記支持体の外表面であって前記第1反応部が形成されていない残部に形成され、前記支持体は導電性を有する材料によって形成されると共に、前記支持体の内部には前記第1ガスが流れる流路が形成されており、前記流路は、前記第1ガスが流入する往路と、前記往路に流入した前記第1ガスが折り返して流出する復路とを含み、前記往路と前記復路とは仕切部によって仕切られることで形成されており、前記仕切部のガス透過率が前記支持体のガス透過率よりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内部のガス流を折り返した構成の燃料電池セルであって、局部的な温度上昇を抑制し、発電反応を均一に行うことができる燃料電池セル及びその燃料電池セルによって構成される燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0008】
本発明に係る燃料電池セルは、燃料ガス及び酸化剤ガスの一方を含む第1ガスと他方を含む第2ガスとによって作動する燃料電池セルであって、前記第1ガスに対応する第1電極と、前記第2ガスに対応する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される電解質部と、前記第1電極と電気的に接続されたインターコネクタ部と、前記第1電極、前記第2電極、前記電解質部、及び前記インターコネクタ部を支持するための支持体と、を備え、前記電解質部及び前記電解質部を挟んで形成される前記第1電極及び前記第2電極からなる第1反応部が前記支持体の外表面の一部に形成され、前記インターコネクタ部は、前記支持体の外表面であって前記第1反応部が形成されていない残部に形成され、前記支持体は導電性を有する材料によって形成されると共に、前記支持体の内部には前記第1ガスが流れる流路が形成されており、前記流路は、前記第1ガスが流入する往路と、前記往路に流入した前記第1ガスが折り返して流出する復路とを含み、前記往路と前記復路とは仕切部によって仕切られることで形成されており、前記仕切部のガス透過率が前記支持体のガス透過率よりも低いことを特徴とする。
【0009】
本発明の燃料電池セルのように、第1ガスが支持体内へと流入するための往路と、その往路によって支持体内へと流入した第1ガスが折り返して支持体外へと流出するための復路とが形成される場合、往路と復路との仕切りを含む支持体全体を同じ材料で形成すると、支持体はその内部を通る第1ガスを第1電極へと透過させる必要があるため、開気孔率が20%〜40%程度となるように仕切りも形成される。往路と復路との仕切りがこのような開気孔率で形成されると、往路へと流入した第1ガスは、実際には復路への折り返し部分へ到達する前に復路側へと透過してしまう。このような透過現象が発生すると、往路から復路への折り返し部への第1ガスの供給が不足すると共に、第1ガスによる熱伝導も十分に行えなくなり、結果として燃料電池セルの軸方向において発電性能がばらついてしまい、燃料電池としての性能を十分に発揮できなくなることを本発明者らは見出したのである。そこで本発明では、往路と復路とを仕切部によって仕切ることで形成し、その仕切部のガス透過率を、支持体のガス透過率よりも低くすることで、往路から復路への無用なガス透過を抑制している。その結果、往路から復路への折り返し部分において、第1ガス中の酸素濃度または水素濃度の低下による酸素枯れまたは燃料枯れを生じ、燃料電池セルの軸方向における発電反応の不均一や燃料電池セルの損傷が抑制できる。また、第1ガスによる熱伝達量の低下による燃料電池セルの軸方向における温度分布の不均一が抑制できる。これにより燃料電池セルの軸方向における発電性能を均一化することができる。従って、燃料電池セル内外の第1ガス及び第2ガスの流れを安定的に保つことができ、この燃料電池セルを複数個組み込んで燃料電池モジュール或いは燃料電池を構成した場合にも実用的で安全かつ高効率な発電性能を得ることができる。
【0010】
本発明に係る燃料電池セルは、燃料ガス及び酸化剤ガスの一方を含む第1ガスと他方を含む第2ガスとによって作動する燃料電池セルであって、前記第1ガスに対応する第1電極材料によって形成される電極支持体と、前記第2ガスに対応する第2電極と、前記電極支持体と前記第2電極との間に配置される電解質部と、前記電極支持体と電気的に接続されたインターコネクタ部と、を備え、前記電解質部は前記電極支持体の外表面の一部に形成され、当該形成された電解質部に重ねて前記第2電極部が形成されることで第2反応部を形成しており、前記インターコネクタ部は、前記電極支持体の外表面であって前記電解質部が形成されていない残部に形成され、前記電極支持体は、前記第2電極、前記電解質部、及び前記インターコネクタ部を支持すると共に、前記電極支持体の内部には前記第1ガスが流れる流路が形成されており、前記流路は、前記第1ガスが流入する往路と、前記往路に流入した前記第1ガスが折り返して流出する復路とを含み、前記往路と前記復路とは仕切部によって仕切られることで形成されており、前記仕切部のガス透過率が前記支持体のガス透過率よりも低いことを特徴とする。
【0011】
本発明の燃料電池セルのように、第1ガスが電極支持体内へと流入するための往路と、その往路によって電極支持体内へと流入した第1ガスが折り返して電極支持体外へと流出するための復路とが形成される場合、往路と復路との仕切りを含む電極支持体全体を同じ材料で形成すると、支持体はその内部を通る第1ガスを電解質部へと透過させる必要があるため、開気孔率が20%〜40%程度となるように仕切りも形成される。往路と復路との仕切りがこのような開気孔率で形成されると、往路へと流入した第1ガスは、実際には復路への折り返し部分へ到達する前に復路側へと透過してしまう。このような透過現象が発生すると、往路から復路への折り返し部への第1ガスの供給が不足すると共に、第1ガスによる熱伝導も十分に行えなくなり、結果として燃料電池セルの軸方向において発電性能がばらついてしまい、燃料電池としての性能を十分に発揮できなくなることを本発明者らは見出したのである。そこで本発明では、往路と復路とを仕切部によって仕切ることで形成し、その仕切部のガス透過率を、支持体のガス透過率よりも低くすることで、往路から復路への無用なガス透過を抑制している。その結果、往路から復路への折り返し部分において、第1ガス中の酸素濃度または水素濃度の低下による酸素枯れまたは燃料枯れを生じ、燃料電池セルの軸方向における発電反応の不均一や燃料電池セルの損傷が抑制できる。また、第1ガスによる熱伝達量の低下による燃料電池セルの軸方向における温度分布の不均一が抑制できる。これにより燃料電池セルの軸方向における発電性能を均一化することができる。従って、燃料電池セル内外の第1ガス及び第2ガスの流れを安定的に保つことができ、この燃料電池セルを複数個組み込んで燃料電池モジュール或いは燃料電池を構成した場合にも実用的で安全かつ高効率な発電性能を得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料電池セルでは、前記仕切部は、少なくともその一部が緻密体によって形成されていることも好ましい。仕切部の少なくとも一部を緻密体によって形成することで、より確実にガス透過率を低くすることができる。
【0013】
また、本発明に係る燃料電池セルでは、前記仕切部は、前記往路又は前記復路に接する表面が緻密体によって形成されていることも好ましい。往路又は復路に接する表面を緻密体によって形成することで、第1ガスの透過をより確実に抑制できる。また、仕切部の表面以外の部分を緻密体以外で形成することが可能となるので、例えば、熱膨張係数を支持体や電極支持体と合わせることで、熱の発生による不必要な応力の発生を低減することができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池セルを備える燃料電池では、上述したような作用効果を奏する燃料電池を提供することができる。
【0015】
続いて、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1〜図6を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る燃料電池セルFC1について説明する。図1は、燃料電池セルFC1の外形を説明するための斜視図である。図2は、図1のA―A線を含むxz平面における燃料電池セルFC1の断面図である。図3は、図1のB―B線を含むyz平面における燃料電池セルFC1の断面図である。図4は、図1のC―C線を含むyz平面における燃料電池セルFC1の断面図である。図5は、図1のD―D線(E−E線)を含むxy平面における燃料電池セルFC1の断面図である。図6は、図1のF―F線を含むxy平面における燃料電池セルFC1の断面図である。
【0017】
図1において、燃料電池セルFC1の軸方向(燃料電池セルFC1が延在する方向)をy方向とし、y方向に直交する燃料電池セルFC1の幅方向(後述する流路70が連設される方向)をx方向とし、y方向及びx方向の双方に直交する方向であって燃料電池セルFC1の厚み方向をz方向としている。
【0018】
図1に示すように、燃料電池セルFC1は、直方体状を成すように形成されている。燃料電池セルFC1は、xy平面を含む面であって図1においては天面として描かれている第一面101と、第一面101に対する裏面である第二面102と、第一面101と第二面102とを繋ぐ側面であってyz平面を含む面である第三面103及び第四面104と、第一面101と第二面102とを繋ぐ端面であってxz平面を含む面である第五面105及び第六面106と、によって直方体状を成すように形成されている。第五面105は、流路70が開口されている端面である開口端として形成され、第六面106は、流路70が封止されている端面である封止端として形成されている。
【0019】
燃料電池セルFC1は、空気極支持体20(本発明における電極支持体に相当する)と、仕切部30と、電解質部40と、燃料極50(本発明における第2電極に相当する)と、インターコネクタ部60と、流路70とを備えている。
【0020】
空気極支持体20は、仕切部30、電解質部40、燃料極50、及びインターコネクタ部60を支持するための支持体であって、その内部には流路70が形成されている。空気極支持体20は、ペロブスカイト型酸化物からなる空気極材料によって形成されている。そのような空気極材料としては、例えばLaCoO、LaMnO、LaFeO等であって、SrやCa等をLaサイトにドープしたもの、あるいはドープしないもの、又はそれらの複合材等が用いられる。空気極支持体20の開気孔率は、20%〜40%で構成される。尚、開気孔率とは、外気と接続されている気孔の含有率を示し、アルキメデス法により算出するものである。
【0021】
空気極支持体20には、燃料電池セルFC1の軸方向(燃料電池セルFC1が延在する方向)であるy方向に沿って流路70が形成されている。本実施形態の場合、流路70はy方向と直交するx方向に4つ連なって形成されている。各流路70は、第1ガスである空気(酸化剤ガス)が流入する往路71と、流入した空気が流出するための復路72とを含んでいる。往路71及び復路72は、開口端としての第五面105から、封止端としての第六面106に向けて空気極支持体20の内部を刳り貫くように形成されている。往路71及び復路72は、仕切部30によって仕切られることで分離形成されている。
【0022】
このように、往路71及び復路72を含む流路70は、空気極支持体20内に軸方向であるy方向に沿った空洞を形成し、その空洞内に仕切部30を配置することで形成されている。空気極支持体20内にy方向に沿った空洞を形成するにあたっては、一体的にプレス成型等で形成してもよく、空気極支持体20を二分割してそれぞれに半円形上の空洞用溝を形成してもよい。
【0023】
仕切部30は、上述したように、開口端としての第五面105から、封止端としての第六面106に向けて形成されている。図2に示すように、燃料電池セルFC1の中ほどにおいても、第五面105に現れるのと同様の断面形態を成している。また、図3に示すように、仕切部30は、封止端である第六面106近傍において、往路71と復路72とが繋がるように、所定の空間としての接続部73を形成するように配置されている。また、図6に示すように、仕切部30は板状体として第五面105から接続部73に至るまで配置されている。図4及び図5に示すように、本実施形態の場合、4つの各流路70に設けられている接続部73は互いに連通するように形成されている。従って、各流路70ごとにみた場合には、接続部73においてガス流方向に直交する断面積が広がっており、この部分において酸化剤ガスとしての空気の流速は低下するように形成されている。
【0024】
仕切部30は、ペロブスカイト型酸化物からなる空気極材料(例えばLaCoO、LaMnO、LaFeO等であって、SrやCa等をLaサイトにドープしたもの、あるいはドープしないもの、又はそれらの複合材等)や、銀、金、タングステン、ロジウム、イリジウムを少なくとも1種以上含む合金、またはそれらの複合材などで空気極支持体よりも低い透過率で形成される材料からなり、熱膨張係数が空気極支持体20と略同一である板状体として形成されている。ここでいう略同一とは、空気極支持体20の熱膨張係数が約10.5×10-6(cm/cm・K-1)に対して、仕切部30の熱膨張係数が約8.5〜12.5×10-6(cm/cm・K-1)である程度を指している。仕切部30は、その表面に緻密体が層状に形成されている。層状に形成されている緻密体は、仕切部30の往路71に臨む面にのみ形成されていてもよく、復路72に臨む面にのみ形成されていてもよい。尚、仕切部30全体が緻密体として構成されていてもよい。仕切部30の開気孔率は、好ましくは0〜20%未満であり、より好ましくは0〜10%である。このように仕切部30の開気孔率を空気極支持体20の開気孔率よりも低くなるように形成すると、確実にガス透過率を空気極支持体20よりも低くすることができる。もっとも、仕切部30のガス透過率を空気極支持体20よりも低くする態様は、開気孔率の制御によるもののみには限定されない。
【0025】
電解質部40は、空気極支持体20の第二面102、第三面103、第四面104、第六面106を覆うように層状に形成されている。空気極支持体20の第一面101においては、インターコネクタ部60が形成されていない部分を覆うように層状に形成されている。電解質部40は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0026】
燃料極50は、空気極支持体20の第二面102、第三面103、及び第四面104にかけて繋がるように層状に形成されている。燃料極50は、多孔質のニッケルとYSZのサーメットにより形成されている。
【0027】
インターコネクタ部60は、空気極支持体20の第一面101の一部を覆うように層状に形成されている。インターコネクタ部60は、LaCrOにSrやCa等をドープしたものにより形成されている。
【0028】
尚、この第一実施形態では、空気極支持体20として構成したが、燃料極支持体として構成しても構わない。その場合、燃料極50は空気極として構成される。空気極支持体20を燃料極支持体として構成する場合には、多孔質のニッケルとYSZのサーメットにより形成される。その場合、燃料極50を空気極として構成するため、例えばLaCoO、LaMnO、LaFeO等であって、SrやCa等をLaサイトにドープしたもの、あるいはドープしないもの、又はそれらの複合材等が用いられる。
【0029】
尚、この第一実施形態では、空気(空気極支持体20を燃料極支持体とする場合は燃料ガス)を、反応部として形成されている燃料極50側から導入して、インターコネクタ部60側から導出しているが、これとは逆に構成することも好ましい。具体的には、空気(空気極支持体20を燃料極支持体とする場合は燃料ガス)を、インターコネクタ部60側から導入して、燃料極50側から導出する態様である。
【0030】
続いて、図7〜図12を参照しながら、本発明の第二実施形態に係る燃料電池セルFC2について説明する。図7は、燃料電池セルFC2の外形を説明するための斜視図である。図8は、図7のA2―A2線を含むxz平面における燃料電池セルFC2の断面図である。図9は、図7のB2―B2線を含むyz平面における燃料電池セルFC2の断面図である。図10は、図7のC2―C2線を含むyz平面における燃料電池セルFC2の断面図である。図11は、図7のD2―D2線(E2―E2線)を含むxy平面における燃料電池セルFC2の断面図である。図12は、図7のF2―F2線を含むxy平面における燃料電池セルFC2の断面図である。
【0031】
図7において、燃料電池セルFC2の軸方向(燃料電池セルFC2が延在する方向)をy方向とし、y方向に直交する燃料電池セルFC2の幅方向(後述する流路702が連設される方向)をx方向とし、y方向及びx方向の双方に直交する方向であって燃料電池セルFC2の厚み方向をz方向としている。
【0032】
図7に示すように、燃料電池セルFC2は、直方体状を成すように形成されている。燃料電池セルFC2は、xy平面を含む面であって図7においては天面として描かれている第一面121と、第一面121に対する裏面である第二面122と、第一面121と第二面122とを繋ぐ側面であってyz平面を含む面である第三面123及び第四面124と、第一面121と第二面122とを繋ぐ端面であってxz平面を含む面である第五面125及び第六面126と、によって直方体状を成すように形成されている。第五面125は、流路702が開口されている端面である開口端として形成され、第六面126は、流路702が封止されている端面である封止端として形成されている。
【0033】
燃料電池セルFC2は、支持体202(本発明における支持体に相当する)と、仕切部302と、空気極902(本発明における第1電極に相当する)と、電解質部402と、燃料極502(本発明における第2電極に相当する)と、インターコネクタ部602と、流路702とを備えている。
【0034】
支持体202は、仕切部302、空気極902、電解質部402、燃料極502、及びインターコネクタ部602を支持するための支持体であって、その内部には流路702が形成されている。支持体202は、導電性の材料によって形成されており、例えばインターコネクタを形成する場合に用いられるLaCrOにSrやCa等をドープしたものにより形成されている。支持体202の開気孔率は、20%〜40%で構成される。尚、開気孔率とは、外気と接続されている気孔の含有率を示し、アルキメデス法により算出するものである。
【0035】
支持体202には、燃料電池セルFC2の軸方向(燃料電池セルFC2が延在する方向)であるy方向に沿って流路702が形成されている。本実施形態の場合、流路702はy方向と直交するx方向に4つ連なって形成されている。各流路702は、第1ガスである空気(酸化剤ガス)が流入する往路712と、流入した空気が流出するための復路722とを含んでいる。往路712及び復路722は、開口端としての第五面125から、封止端としての第六面126に向けて支持体202の内部を刳り貫くように形成されている。往路712及び復路722は、仕切部302によって仕切られることで分離形成されている。
【0036】
このように、往路712及び復路722を含む流路702は、支持体202内に軸方向であるy方向に沿った空洞を形成し、その空洞内に仕切部302を配置することで形成されている。支持体202内にy方向に沿った空洞を形成するにあたっては、一体的にプレス成型等で形成してもよく、支持体202を二分割してそれぞれに半円形上の空洞用溝を形成してもよい。
【0037】
仕切部302は、上述したように、開口端としての第五面125から、封止端としての第六面126に向けて形成されている。図8に示すように、燃料電池セルFC1の中ほどにおいても、第五面125に現れるのと同様の断面形態を成している。また、図9に示すように、仕切部302は、封止端である第六面126近傍において、往路712と復路722とが繋がるように、所定の空間としての接続部732を形成するように配置されている。また、図15に示すように、仕切部302は板状体として第五面125から接続部732に至るまで配置されている。
【0038】
図10及び図11に示すように、本実施形態の場合、4つの各流路702に設けられている接続部732は互いに連通するように形成されている。従って、各流路702ごとにみた場合には、接続部732においてガス流方向に直交する断面積が広がっており、この部分において酸化剤ガスとしての空気の流速は低下するように形成されている。
【0039】
仕切部302は、支持体202の内側に供給される第1ガスに対応する電極材料(ペロブスカイト型酸化物からなる空気極材料、例えばLaCoO、LaMnO、LaFeO等であって、SrやCa等をLaサイトにドープしたもの、あるいはドープしないもの、又はそれらの複合材等、またはニッケルとYSZのサーメットからなる燃料極材料)、LaCrOにSrやCa等をドープしたインターコネクタ材料、銀、金、タングステン、ロジウム、イリジウムを少なくとも1種以上含む合金、またはそれらの複合材などで支持体よりも低い透過率で形成される材料からなり、熱膨張係数が支持体202と略同一である板状体として形成されている。ここでいう略同一とは、支持体202の熱膨張係数が約10.5×10-6(cm/cm・K-1)に対して、仕切部302の熱膨張係数が約8.5〜12.5×10-6(cm/cm・K-1)である程度を指している。仕切部302は、その表面に緻密体が層状に形成されている。層状に形成されている緻密体は、仕切部302の往路712に臨む面にのみ形成されていてもよく、復路722に臨む面にのみ形成されていてもよい。尚、仕切部302全体が緻密体として構成されていてもよい。仕切部302の開気孔率は、好ましくは0〜20%未満であり、より好ましくは0〜10%である。このように仕切部302の開気孔率を支持体202の開気孔率よりも低くなるように形成すると、確実にガス透過率を支持体202よりも低くすることができる。もっとも、仕切部302のガス透過率を支持体202よりも低くする態様は、開気孔率の制御によるもののみには限定されない。
【0040】
空気極902は、支持体202の第二面122、第三面123、及び第四面124にかけて繋がるように層状に形成されている。空気極902は、ペロブスカイト型酸化物からなる空気極材料によって形成されている。そのような空気極材料としては、例えばLaCoO、LaMnO、LaFeO等であって、SrやCa等をLaサイトにドープしたもの、あるいはドープしないもの、又はそれらの複合材等が用いられる。
【0041】
電解質部402は、支持体202の第二面122、第三面123、第四面124、第六面126を覆うように層状に形成されている。支持体202の第一面121においては、インターコネクタ部602が形成されていない部分を覆うように層状に形成されている。電解質部402は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0042】
燃料極502は、支持体202の第二面122、第三面123、及び第四面124にかけて繋がるように層状に形成されている。燃料極502は、多孔質のニッケルとYSZのサーメットにより形成されている。
【0043】
インターコネクタ部602は、支持体202の第一面121の一部を覆うように層状に形成されている。インターコネクタ部602は、LaCrOにSrやCa等をドープしたものにより形成されている。
【0044】
尚、この第二実施形態では、空気(又は燃料ガス)を、インターコネクタ部602側から導入して、反応部として形成されている空気極902及び燃料極502側から導出しているが、これとは逆に構成することも好ましい。具体的には、空気(又は燃料ガス)を、反応部として形成されている空気極902及び燃料極502側から導入して、インターコネクタ部602側から導出する態様である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図3】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図4】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図5】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図6】第一実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図7】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す斜視図である。
【図8】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図9】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図10】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図11】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【図12】第二実施形態に係る燃料電池セルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
20…空気極支持体
30…仕切部
40…電解質部
50…燃料極
60…インターコネクタ部
70…流路
71…往路
72…復路
73…接続部
FC1…燃料電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスの一方を含む第1ガスと他方を含む第2ガスとによって作動する燃料電池セルであって、
前記第1ガスに対応する第1電極と、前記第2ガスに対応する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される電解質部と、前記第1電極と電気的に接続されたインターコネクタ部と、前記第1電極、前記第2電極、前記電解質部、及び前記インターコネクタ部を支持するための支持体と、を備え、
前記電解質部及び前記電解質部を挟んで形成される前記第1電極及び前記第2電極からなる第1反応部が前記支持体の外表面の一部に形成され、
前記インターコネクタ部は、前記支持体の外表面であって前記第1反応部が形成されていない残部に形成され、
前記支持体は導電性を有する材料によって形成されると共に、前記支持体の内部には前記第1ガスが流れる流路が形成されており、前記流路は、前記第1ガスが流入する往路と、前記往路に流入した前記第1ガスが折り返して流出する復路とを含み、
前記往路と前記復路とは仕切部によって仕切られることで形成されており、
前記仕切部のガス透過率が前記支持体のガス透過率よりも低いことを特徴とする燃料電池セル。
【請求項2】
燃料ガス及び酸化剤ガスの一方を含む第1ガスと他方を含む第2ガスとによって作動する燃料電池セルであって、
前記第1ガスに対応する第1電極材料によって形成される電極支持体と、前記第2ガスに対応する第2電極と、前記電極支持体と前記第2電極との間に配置される電解質部と、前記電極支持体と電気的に接続されたインターコネクタ部と、を備え、
前記電解質部は前記電極支持体の外表面の一部に形成され、当該形成された電解質部に重ねて前記第2電極部が形成されることで第2反応部を形成しており、
前記インターコネクタ部は、前記電極支持体の外表面であって前記電解質部が形成されていない残部に形成され、
前記電極支持体は、前記第2電極、前記電解質部、及び前記インターコネクタ部を支持すると共に、前記電極支持体の内部には前記第1ガスが流れる流路が形成されており、前記流路は、前記第1ガスが流入する往路と、前記往路に流入した前記第1ガスが折り返して流出する復路とを含み、
前記往路と前記復路とは仕切部によって仕切られることで形成されており、
前記仕切部のガス透過率が前記支持体のガス透過率よりも低いことを特徴とする燃料電池セル。
【請求項3】
前記仕切部は、少なくともその一部が緻密体によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記仕切部は、前記往路又は前記復路に接する表面が緻密体によって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池セル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池セルを複数備え、当該複数の燃料電池セルが互いに電気的に接続されていることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−283239(P2009−283239A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133102(P2008−133102)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】