説明

燃料電池及び燃料電池用セパレータ

【課題】 ガスマニホールドと燃料電池積層体の間のシール材による流路溝の閉塞が発生し難く、組立てが容易な燃料電池を提供する。
【解決手段】 電極複合体とセパレータ2からなる単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、燃料電池積層体及びエンドプレートの側面にシール材13を介して固定され、セパレータ2の流路溝2aに連通する単数若しくは複数のマニホールド室9a,9b,10aを有するマニホールド9,10と、を具備した燃料電池であって、セパレータ2は、同一のマニホールド室10aに連通される全ての流路溝2aの幅と、該流路溝2aの間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた流体の流通範囲の全幅を、反応領域に相対する位置よりもマニホールド室10aに近接した位置の方で小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池及び燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素の結合エネルギーを直接電気エネルギーに変換するものであり、化学反応であるために発電効率が高く、汚染物質の排出が少ない環境性に優れた発電システムとして評価されている。この燃料電池は、電極複合体とセパレータからなる単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体に、水素等の燃料と空気等の酸化剤を供給して、電気化学的に反応させることにより発電するようになっている。セパレータには、燃料ガス流路溝や酸化剤ガス流路溝などが設けられている。
【0003】
外部マニホールド方式の燃料電池は、燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、燃料電池積層体のそれぞれの燃料ガス流路溝及び酸化剤ガス流路溝に連通するマニホールド室を有する単数若しくは複数のガスマニホールドとから構成されている。そして、マニホールド室から燃料電池積層体のそれぞれの燃料ガス流路溝及び酸化剤ガス流路溝に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するようになっている。
【0004】
ここで、燃料電池積層体に対してガスマニホールドを取り付ける方法としては、ガスマニホールド内のガスが外部へ漏洩するのを防止するために、燃料電池積層体のセパレータ外周部でガス流路の設置されていない範囲とガスマニホールドの間に硬化性の液状シール材を塗布したり、弾性のあるシール材を挟み込んだりする方法等が提案されている。しかし、この種の方法では、シール材の設置寸法誤差や液状シール材の流動により流路溝が閉塞され易いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−54378号公報
【特許文献2】特開2005−16605号公報
【特許文献3】特公平5−44781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、ガスマニホールドと燃料電池積層体の間のシール材による流路溝の閉塞が発生し難く、組立てが容易な燃料電池及び燃料電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極が配置され、前記アノード電極と前記カソード電極が相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートにシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、を具備した燃料電池であって、前記流路溝のうち、同一のマニホールド室に連通される全ての流路溝の幅と、該流路溝の間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた流体の流通範囲の全幅を、前記電極複合体の前記反応領域に相対する位置よりも前記マニホールド室に近接した位置の方で小さくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスマニホールドと燃料電池積層体との間のシール材により流路溝が閉塞され難く、組立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係わる燃料電池に用いた単位電池の構成を示す分解斜視図。
【図2】図1の単位電池の電極複合体の構成を示す斜視図。
【図3】図1の単位電池の燃料セパレータの構成を示す斜視図。
【図4】図1の単位電池の空気セパレータの構成を示す斜視図。
【図5】第1の実施形態における燃料電池積層体及び端板の構成を示す斜視図。
【図6】第1の実施形態に係わる燃料電池の全体構成を示す斜視図。
【図7】第1の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図8】第1の実施形態の要部構成を説明するためのもので、空気セパレータと電極複合体の接合面から空気流路溝側を見た切断図。
【図9】第1の実施形態の要部構成を説明するためのもので、空気セパレータと燃料セパレータの接合面から冷却水流路溝側を見た切断図。
【図10】第2の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図11】第3の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図12】第4の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図13】第5の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図14】第6の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図15】第6の実施形態の要部構成を説明するためのもので、空気セパレータと電極複合体の接合面から空気流路溝側を見た切断図。
【図16】第6の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から電極複合体側を見た切断図。
【図17】第7の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図18】第8の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【図19】第9の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータと電極複合体の接合面から燃料流路溝側を見た切断図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、同一又は類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1〜図9を参照して、第1の実施形態に係わる燃料電池について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の燃料電池に用いた単位電池の構成を示す分解斜視図である。電極複合体1を挟んで燃料セパレータ2と空気セパレータ3を配置することにより、単位電池4が構成されている。
【0013】
電極複合体1は、図2に示すように、固体高分子膜(電解質膜)をアノード電極1aとカソード電極1bで挟んだものである。即ち、図2(a)に示すように、電解質膜の一方の主面にアノード電極1aが形成され、図2(b)に示すように、他方の主面にカソード電極1bが形成されている。そして、アノード電極1aとカソード電極1bとが対向する反応領域の周辺部は、電極のシール範囲1cとなっている。
【0014】
燃料セパレータ2は、図3(a)に示すように、一方の主面に燃料流路溝(燃料ガス流路溝)2aを形成したものである。燃料セパレータ2の他方の主面は、図3(b)に示すように、平坦となっている。この燃料セパレータ2は、燃料流路溝2aをアノード電極1aに対向させて電極複合体1の一方の主面上に配置されている。
【0015】
空気セパレータ3は、図4に示すように、空気流路溝(酸化剤ガス流路溝)3aと冷却水流路溝3bを設けたものである。即ち、図4(a)に示すように、一方の主面に空気流路溝3aが形成され、図4(b)に示すように、他方の主面に冷却水流路溝3bが形成されている。この空気セパレータ2は、空気流路溝3aをカソード電極1bに対向させて電極複合体1の他方の主面上に配置されている。
【0016】
アノード電極1aとカソード電極1bは、多孔質カーボンペーパーなどで形成されたガス拡散層と、固体高分子膜と接する表面に形成された白金或いは白金化合物からなる触媒層を有する。そして、アノード電極1aとカソード電極1bにそれぞれ燃料ガスと酸素が供給されることにより、電気化学反応による電気エネルギーを発生させるようになっている。
【0017】
燃料セパレータ2と空気セパレータ3は、黒鉛板から切削加工したり、黒鉛粉と樹脂の混合物をモールド加工したり、表面に耐食性を付加した金属材料を加工したりして形成されたガス不透過性で導電性の部材である。各セパレータ2,3の外縁部から燃料流路溝2aと空気流路溝3aに導入された燃料ガスと空気が各流路溝2a,3aを流通して電極複合体1に供給されると共に、電極複合体1で消費されなかった排ガス及び電気化学反応により発生した水蒸気又は水が燃料流路溝2aと空気流路溝3aを流通して各セパレータ2,3の外縁部から各流路溝2a,3aの外部に排出される。
【0018】
また、本実施形態の空気セパレータ3では空気流路溝3aが形成された面の裏面に冷却水流路溝3bが形成されており、冷却水流路溝3bに流通する冷却水により電極複合体1での電気化学反応により発生した熱を燃料電池外部に持ち出すことができるようになっている。
【0019】
図5は、本実施形態の燃料電池積層体及び端板の構成を示す斜視図である。燃料電池積層体5は、単位電池4を複数積層したものであり、単位電池4の各構成部材は互いに隣接する部材と所定の範囲で接着されるか、それぞれの部材間に図示されない積層シール材を挟持して積層されている。
【0020】
燃料電池積層体5の積層方向の両端には一対の集電板6が設置され、集電板6の外側には燃料電池積層体5を互いに近接する方向に締め付けて保持する一対のエンドプレート7と、一対のエンドプレート7を互いに固定するタイロッド8が設置されている。
【0021】
燃料電池積層体5のそれぞれの電極複合体1で発生した電流は、集電板6に接続された図示されない電流取出しケーブルにより燃料電池外部に接続されて消費されるようになっている。
【0022】
図6は、本実施形態の燃料電池の全体構成を示す斜視図であり、図7は本実施形態の燃料電池の燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図、図8は本実施形態の燃料電池の空気セパレータ3と電極複合体1の接合面から空気流路溝3a側を見た切断図、図9は本実施形態の燃料電池の空気セパレータ3と燃料セパレータ2の接合面から冷却水流路溝3b側を見た切断図である。
【0023】
燃料電池積層体5の燃料流路溝2a,空気流路溝3a,及び冷却水流路溝3bの積層面(積層によって形成された面)側の開口部のそれぞれを覆い隠す位置にシール材13を挟持して、燃料入出ガスマニホールド9,燃料ターンマニホールド10,空気入出マニホールド11,及び空気ターンマニホールド12がそれぞれ設置されている。
【0024】
シール材13は、燃料電池積層体5の積層面と各ガスマニホールドの接合面で各ガスマニホールド内部のガス又は冷却水が燃料電池外部と流通するのを防止するために設置されている。さらに、このシール材13は、燃料電池積層体5の積層面に発生する微細な段差を吸収するために、硬化性の液状シール材を塗布して形成したり、弾性のあるシール材を挟み込んだり、硬化性の液状シール材を塗布した上に弾性のあるシール材を挟み込んだりして形成される。
【0025】
各マニホールドは、燃料電池積層体5の向きに開口部を有する箱型の筐体である。
【0026】
燃料入出ガスマニホールド9は、内部に燃料電池積層体5の積層方向に平行な仕切り板9aを有している。燃料入出ガスマニホールド9には、燃料入出ガスマニホールド9,仕切り板9a,燃料電池積層体5,及びシール材13に囲まれた、燃料入口マニホールド室9bと燃料出口マニホールド室9cが形成されている。そして、燃料入口マニホールド室9bには燃料入口配管9dを流通して燃料電池外部から燃料ガスが流入し、燃料出口マニホールド室9cから燃料出口配管9eを流通して燃料排ガスが燃料電池外部に流出するようになっている。
【0027】
燃料ターンガスマニホールド10の内部には、燃料ターンガスマニホールド10,燃料電池積層体5,及びシール材13に囲まれた燃料ターンマニホールド室10aが形成されている。
【0028】
空気入出ガスマニホールド11は、内部に燃料電池積層体5の積層方向に平行な仕切り板11aと11bを有している。空気入出ガスマニホールド11には、空気入出ガスマニホールド11,仕切り板11a,11b,燃料電池積層体5,及びシール材13に囲まれた、空気入口マニホールド室11c,空気出口マニホールド室11d,及び冷却水入口マニホールド室11eが形成されている。そして、空気入口マニホールド室11cには空気入口配管11fを流通して燃料電池外部から空気が流入し、空気出口マニホールド室11dから空気出口配管11gを流通して空気排ガスが燃料電池外部に流出し、冷却水入口マニホールド室11eには冷却水入口配管11hを流通して燃料電池外部から冷却水が流入するようになっている。
【0029】
空気ターンガスマニホールド12は、内部に燃料電池積層体5の積層方向に平行な仕切り板12aを有し、空気ターンガスマニホールド12,燃料電池積層体5,及びシール材13に囲まれた、空気ターンマニホールド室12bと冷却水出口マニホールド室12cが形成されている。そして、冷却水出口マニホールド室12cからは冷却水出口配管12dを流通して燃料電池外部から冷却水が流出するようになっている。
【0030】
燃料入口マニホールド室9bに流入した燃料は、燃料流路溝2aの燃料入口マニホールド室9bに対して開口部を持つ流路溝を流通して燃料ターンマニホールド室10aに流通し、燃料ターンマニホールド室10aから燃料出口マニホールド室9cに対して開口部を持つ流路溝を流通して燃料出口マニホールド室9cに流出する。
【0031】
空気入口マニホールド室11cに流入した空気は、空気流路溝3aの空気入口マニホールド室11cに対して開口部を持つ流路溝を流通して空気ターンマニホールド室12bに流通し、空気ターンマニホールド室12bから空気出口マニホールド室11dに対して開口部を持つ流路溝を流通して空気出口マニホールド室11dに流出する。
【0032】
冷却水入口マニホールド室11eに流入した冷却水は、冷却水流路溝3bを流通して冷却水出口マニホールド室12cに流出する。
【0033】
また、図7に示す通り、本実施形態の燃料セパレータ2の燃料流路溝2aは、燃料入口マニホールド室9bに接する部分で、燃料入口マニホールド室9bに対して開口部を持つそれぞれの燃料流路溝2aの間のリブ部の幅が狭くなっている。このため、燃料入口マニホールド室9bに近接した位置での燃料入口マニホールド室9bに対して開口部を持つ全ての燃料流路溝2aの幅と、隣接した燃料流路溝2aの間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた燃料ガスの流通範囲の全幅が、セパレータ中央部での燃料入口マニホールド室9bに対して開口部を持つ全ての燃料流路溝2aの幅と、隣接した燃料流路溝2aの間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた燃料ガスの流通範囲の燃料ガスの流通方向に対して垂直方向の全幅よりも小さくなっている。従って、燃料流路溝2aがセパレータの中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、燃料入口マニホールド室9bに対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が広くなっている。
【0034】
同様に、燃料ターンマニホールド室10aに対して開口部を持つ燃料流路溝2aと燃料出口マニホールド室9cに対して開口部を持つ燃料流路溝2aでも、それぞれのマニホールド室に対して開口部を持つそれぞれの燃料流路溝2aの間のリブ部の幅がマニホールド室に近接した位置で狭くなっている。このため、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、燃料流路溝2aがセパレータの中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0035】
即ち、燃料セパレータ2は、同一のマニホールド室(9b,9c,10aの何れか)に連通される全ての流路溝2aの幅と、該流路溝2aの間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた流体の流通範囲の全幅が、反応領域に相対する位置よりもマニホールド室に近接した位置の方で小さくなっている。
【0036】
また、上記と同様に、図8及び図9に示す通り、空気セパレータ3の空気流路溝3a及び冷却水流路溝3bも、それぞれのマニホールド室に対して開口部を持つ流路溝の間のリブ部の幅が各マニホールド室に近接した位置で狭くなっている。このため、各マニホールド室に対して開口部を持つ流路溝とシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝がセパレータの中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用を説明する。本実施形態の燃料電池では、シール材13として硬化性の液状シール材を塗布する場合に、シール材13の設置位置と流路溝との間に十分な間隔を確保できているため、液状シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や液状シール材の塗布後に液状シール材が流動した場合にも、流路溝との間隔内に収まるようにすることで液状シール材による流路溝の閉塞が発生しない。また、シール材13として弾性のあるシール材を挟み込んだ場合にも、シール材13の設置位置と流路溝との間に十分な間隔を確保できているため、弾性シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や弾性シール材の弾性変形により弾性シール材が流路溝方向に張り出した場合にも、流路溝との間隔内に収まるようにすることで弾性シール材による流路溝の閉塞が発生しない。
【0038】
このように本実施形態によれば、シール材13による流路溝の閉塞が発生しないため、高精度な組立て作業を要さず、組立てが容易で安価な燃料電池を提供することができる。また、シール材13による流路溝の閉塞が発生しないため、シール材13による流路溝の閉塞に起因する燃料電池の性能低下が発生しない信頼性の高い燃料電池を実現することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。
【0040】
第1の実施形態の燃料電池では、燃料セパレータ2の燃料流路溝2aのそれぞれのマニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aの間のリブ部の幅が各マニホールド室に近接した位置で狭くしていた。これに対して本実施形態の燃料電池では、リブ部の幅を一定にしながら、燃料セパレータ2の燃料流路溝2aのそれぞれのマニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aの流路幅を、各マニホールド室に近接した位置で狭くしている。これにより、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝2aがセパレータの中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0041】
また、本実施形態では、燃料流路溝2aの流路幅が各マニホールド室に近接した位置で狭くなるのに応じ、燃料流路溝2aの溝の深さを深くしている。これにより、燃料流路溝2aの幅の狭い範囲に燃料ガスが流通する時に発生する圧力損失を低減している。
【0042】
このように本実施形態では、第1の実施形態と同等の効果が得られると共に、燃料セパレータ2の製造時及び組立て作業時において燃料流路溝2aの間のリブ部の欠けが発生し難く、セパレータの製造及び組立てが容易な燃料電池を実現することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。
【0044】
第1の実施形態の燃料電池では、燃料セパレータ2の燃料流路溝2aのそれぞれのマニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aの間のリブ部の幅が各マニホールド室に近接した位置で狭くしていた。これに対して本実施形態の燃料電池では、燃料流路溝2aの一部を合流或いは分岐させることで、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝2aがセパレータ2の中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0045】
また、本実施形態では、分岐後の流路での燃料ガスの流量不足を緩和するために、燃料流路溝2aのガスの流れ方向に対して上流側で分岐している部分では、分岐している燃料流路溝2aと隣接する燃料流路溝2aの間に連絡溝を設けている。これにより、分岐した燃料流路溝2aに隣接した燃料流路溝2aからも燃料ガスが流入することで、燃料ガスの流量の不均一が一部解消されている。
【0046】
ここで、全ての燃料流路溝2aに均一な流量の燃料ガスの配流を期待するのであれば、燃料流路溝2aのガスの流れ方向に対して上流側で燃料流路溝2aが分岐していることは好ましくない。しかし、アノード電極1aの外周付近に相対する位置に設置された燃料流路溝2aで、その他の燃料流路溝2aよりも一溝当たりの燃料消費量が少ない場合や、アノード電極1aで燃料不足が発生しない程度に隣接する燃料流路溝2aから連絡溝又はアノード電極1aのガス拡散層を流通して燃料ガスが供給される構成であれば、ガスの流れ方向に対して上流側で燃料流路溝2aを分岐する構成とすることが可能である。
【0047】
また、ガスの流れ方向に対して下流側で燃料流路溝2aが合流した部分では、合流後の流路溝での圧損の増加により合流部を有する燃料流路溝2aでのガスの流量はその他の燃料流路溝2aを流通するガスの流量より少なくなる傾向にある。しかし、アノード電極1aの外周付近に相対する位置に設置された燃料流路溝2aで、その他の燃料流路溝2aよりも一溝当たりの燃料消費量が少ない場合や、アノード電極1aで燃料不足が発生しない程度に隣接する燃料流路溝2aから連絡溝又はアノード電極1aのガス拡散層を流通して燃料ガスが供給又は排気される構成であれば、ガスの流れ方向に対して下流側で燃料流路溝2aを合流する構成とすることが可能である。
【0048】
このように本実施形態では、第1の実施形態と同等の効果が得られると共に、燃料セパレータ2の各燃料流路溝2aの幅と各燃料流路溝2aの間のリブ幅がそれぞれセパレータ全面でほぼ均一であるので、セパレータの製造が容易であり、製造性に優れ安価な燃料電池を実現することができる。
【0049】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。
【0050】
第3の実施形態の燃料電池では、燃料流路溝2aと流路溝間のリブ部の一部を屈曲させて合流或いは分岐させることで、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝がセパレータの中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くしていた。これに対して本実施形態の燃料電池では、燃料流路溝2aの一部を合流或いは分岐させる部分で流路溝間のリブ部を屈曲させずに合流部又は分岐部を形成し、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝2aがセパレータ2の中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0051】
また、本実施形態では、流路溝2aが合流又は分岐した位置より各マニホールド室に近い部分で流路溝2aの幅を広げ、合流又は分岐の前後で流路溝2aを通過する燃料ガスに発生する圧力損失の増大が防止されている。
【0052】
このように本実施形態では、第1の実施形態と同等の効果が得られると共に、燃料セパレータ2の各燃料流路溝2aの間のリブ部に屈曲部が無いため、セパレータの製造が容易である。さらに、燃料セパレータ2の全ての燃料流路溝2aで燃料ガスが1本の燃料流路溝2aの全長を通過するときの圧力損失がほぼ同じであるため、合流又は分岐した燃料流路溝2aでも燃料ガスの供給不足に起因する燃料電池の性能低下が発生し難い。従って、製造性に優れ信頼性の高い燃料電池を実現することができる。
【0053】
(第5の実施形態)
図13は、第5の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。
【0054】
本実施形態の燃料電池が先に説明した第3の実施形態と異なる点は、第3の実施形態の燃料電池で燃料流路溝2aの合流部であった箇所を、燃料流路溝の閉塞部2bで置き換えたことにある。これにより、各マニホールド室に対して開口部を持つ燃料流路溝2aとシール材13の設置位置との間の間隔が、流路溝2aがセパレータ2の中央部から直線状に各マニホールド室まで延長された場合と比較して、広くなっている。
【0055】
ここで、ガスの流れ方向に対して下流側に燃料流路溝の閉塞部2bを設置した場合は、閉塞部を有する燃料流路溝2aでのガスの流量はその他の燃料流路溝2aを流通するガスの流量より少なくなる傾向にある。しかし、アノード電極1aの外周付近に相対する位置に設置された燃料流路溝2aで、その他の燃料流路溝2aよりも一溝当たりの燃料消費量が少ない場合や、アノード電極1aで燃料不足が発生しない程度に隣接する燃料流路溝2aから連絡溝又はアノード電極1aのガス拡散層を流通して燃料ガスが供給又は排気される構成であれば、ガスの流れ方向に対して下流側に燃料流路溝の閉塞部2bを設置した構成とすることが可能である。
【0056】
また、全ての燃料流路溝2aに均一な流量の燃料ガスの配流を期待するのであれば、燃料流路溝2aのガスの流れ方向に対して上流側に燃料流路溝の閉塞部2bを設置することは好ましくない。しかし、アノード電極1aの外周付近に相対する位置に設置された燃料流路溝2aで、その他の燃料流路溝2aよりも一溝当たりの燃料消費量が少ない場合や、アノード電極1aで燃料不足が発生しない程度に隣接する燃料流路溝2aから連絡溝又はアノード電極1aのガス拡散層を流通して燃料ガスが供給される構成であれば、ガスの流れ方向に対して上流側に燃料流路溝の閉塞部2bを設置する構成とすることも可能である。
【0057】
このように本実施形態では、第1の実施形態と同等の効果が得られると共に、燃料セパレータ2の各燃料流路溝2aの幅と各燃料流路溝2aの間のリブ幅がそれぞれセパレータ全面でほぼ均一であるので、セパレータの製造が容易であり、製造性に優れ安価な燃料電池を実現することができる。
【0058】
(第6の実施形態)
図14から図16を用いて第6の実施形態の構成を説明する。図14は本実施形態の燃料電池の燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図、図15は本実施形態の燃料電池の空気セパレータ3と電極複合体1の接合面から空気流路溝3a側を見た切断図、図16は本実施形態の燃料電池の燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から電極複合体1を見た切断図である。
【0059】
本実施形態の燃料電池では、第1の実施形態の電極複合体1,燃料セパレータ2,及び空気セパレータ3の外周部に、燃料ガスマニホールド側突起部と空気ガスマニホールド側突起部を追加した。燃料セパレータ2に設置された燃料ガスマニホールド側突起部2cは、燃料入出ガスマニホールド9及び燃料ターンガスマニホールド10と燃料セパレータ2の間にシール材13が設置される位置と、シール材13の設置位置に近接する燃料流路溝2aの各マニホールド室側の端部との間に設置された、燃料セパレータ2の外側方向に凸の突起部である。
【0060】
空気セパレータ3に設置された空気ガスマニホールド側突起部3dは、本実施形態の燃料電池の空気セパレータ3において、空気入出ガスマニホールド11及び空気ターンガスマニホールド12と空気セパレータ3の間にシール材13が設置される位置と、シール材13の設置位置に近接する空気流路溝3a又は冷却水流路溝3bの各マニホールド室側の端部との間に設置された、空気セパレータ3の外側方向に凸の突起部である。
【0061】
また、燃料セパレータ2に設置された空気ガスマニホールド側突起部2dは、隣接する空気セパレータ3に設置された空気ガスマニホールド側突起部3dと相対する位置に設置された燃料セパレータ2の外側方向に凸の突起部である。空気セパレータ3に設置された燃料ガスマニホールド側突起部3cは、隣接する燃料セパレータ2に設置された燃料ガスマニホールド側突起部2dと相対する位置に設置された空気セパレータ3の外側方向に凸の突起部である。電極複合体1に設置された燃料ガスマニホールド側突起部1dと空気ガスマニホールド側突起部1eは、それぞれ隣接する空気セパレータ3に設置された空気ガスマニホールド側突起部3dと燃料セパレータ2に設置された燃料ガスマニホールド側突起部2cとに相対する位置に設置された電極複合体1の外側方向に凸の突起部である。
【0062】
それぞれの突起部2c,2d,3c,3d,1d,1eは各部材に予め形成された突起部であるか、長方形の形状に成型した各部材に樹脂材料などからなる部材を接合して形成したものである。
【0063】
次に、本実施形態の作用を説明する。本実施形態の燃料電池では、シール材13として硬化性の液状シール材を塗布する場合に、シール材13の設置位置と流路溝との間に突起部が形成されているため、液状シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や液状シール材の塗布後に液状シール材が流動した場合にも、液状シール材はセパレータ外周部に設置された突起部で堰き止められ液状シール材による流路溝の閉塞が発生しない。また、シール材13として弾性のあるシール材を挟み込んだ場合にも、シール材13の設置位置と流路溝との間に突起部が形成されているため、弾性シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や弾性シール材の弾性変形により弾性シール材が流路溝方向に張り出した場合にも、弾性シール材が突起部を超えて流路溝側に移動することが防止され、弾性シール材による流路溝の閉塞が発生しない。
【0064】
ここで、燃料セパレータ2の外周に、燃料ガスマニホールド側突起部2cが設置されていれば、空気セパレータ3の燃料ガスマニホールド側突起部3cと電極複合体1の燃料ガスマニホールド側突起部1dが設置されていなくても、燃料セパレータ2の燃料流路溝2aのシール材13による閉塞の防止には一定の効果がある。しかし、その場合は、液状シール材が空気セパレータ3の外周部を迂回して燃料セパレータ2の燃料流路溝2aに到達し溝を閉塞する恐れがあると共に、燃料電池積層体5の積層状態で燃料セパレータ2の燃料ガスマニホールド側突起部2cは積層方向に隣接した部材と接触していないため、突起部が破損しやすい。従って、燃料セパレータ2の燃料ガスマニホールド側突起部2cを設置する場合は、合わせて積層状態で隣接した各部材の相対する位置に突起部を設置することが望ましい。同様に、空気セパレータ3の空気ガスマニホールド側突起部3dを設置する場合も、合わせて積層状態で隣接した各部材の相対する位置に突起部を設置することが望ましい。
【0065】
以上の通り本実施形態では、突起部2c,2d,3c,3d,1d,1eを設けることにより、シール材13による流路溝の閉塞が発生しないため、高精度な組立て作業を要さず、組立てが容易で安価な燃料電池を提供することができる。また、シール材13による流路溝の閉塞が発生しないため、シール材13による流路溝の閉塞に起因する燃料電池の性能低下が発生しない信頼性の高い燃料電池を実現することができる。
【0066】
(第7の実施形態)
図17は、第7の実施形態の要部構成を滅瞑するためのもので、燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。なお、本実施形態の空気セパレータ3と電極複合体1については、外周の形状は本実施形態の燃料セパレータ2と同じであるので、図示は省略する。
【0067】
本実施形態の燃料電池が先に説明した第6の実施形態と異なる点は、第6の実施形態のの電極複合体1,燃料セパレータ2,及び空気セパレータ3の外周部に設置したそれぞれの突起部2c,2d,3c,3d,1d,1eを、部材の内側方向に窪んだ窪み部、即ち外側方向に凹の窪み部で置き換えたことである。なお、図17中の22c,22dは燃料セパレータ2に設けた窪み部を示している。
【0068】
次に、本実施形態の作用を説明する。本実施形態の燃料電池では、シール材13として硬化性の液状シール材を塗布する場合に、シール材13の設置位置と流路溝との間に窪み部が形成されている。このため、液状シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や液状シール材の塗布後に液状シール材が流動した場合にも、液状シール材はセパレータ外周部に設置された窪み部に充填され、流路溝まで到達しない。従って、液状シール材による流路溝の閉塞が発生しない。また、シール材13として弾性のあるシール材を挟み込んだ場合にも、シール材13の設置位置と流路溝との間に窪み部が形成されているため、弾性シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や弾性シール材の弾性変形により弾性シール材が流路溝方向に張り出した場合にも、弾性シール材の一部が窪み部に納まり窪み部を超えて流路溝側に移動することが防止され、弾性シール材による流路溝の閉塞が発生しない。
【0069】
また、各部材のそれぞれの窪み部は、長方形の形状に成型した各部材の一部を切断又は切削して容易に形成が可能である上に、突起部を設置した場合に発生する突起部の欠けの発生が防止できる。
【0070】
以上の通り本実施形態では、第6の実施形態と同等の効果が得られると共に、電極複合体1及びセパレータ2,3の製造が容易であり、製造性に優れ安価な燃料電池を実現することができる。
【0071】
(第8の実施形態)
図18は、第8の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料電池の燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。なお、本実施形態の空気セパレータ3と電極複合体1については、外周の形状は本実施形態の燃料セパレータ2と同じであるので、図示は省略する。
【0072】
本実施形態の燃料電池では、第6の実施形態の電極複合体1,燃料セパレータ2,及び空気セパレータ3の外周部に設置したそれぞれの突起部2c,2d,3c,3d,1d,1eを、部材の外周に設置した段差部で換え、更にシール材13の設置部から段差部までの範囲を部材の外側方向に凸の突起部とした。なお、図18中の32c,32dは燃料セパレータ2に設けた突起部を示している。
【0073】
また、各部材のそれぞれの突起部は各部材に予め形成された突起部であるか、長方形の形状に成型した各部材に樹脂材料などからなる部材を接合して形成したものである。
【0074】
次に、本実施形態の作用を説明する。本実施形態の燃料電池では、シール材13として硬化性の液状シール材を塗布する場合に、シール材13の設置位置と流路溝との間に段差部が形成されている。このため、液状シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や液状シール材の塗布後に液状シール材が流動した場合にも、液状シール材はセパレータ外周部に設置された段差部で堰き止められ、液状シール材による流路溝の閉塞が発生しない。また、シール材13として弾性のあるシール材を挟み込んだ場合にも、シール材13の設置位置と流路溝との間に段差部が形成されているため、弾性シール材の設置位置に寸法誤差が発生した場合や弾性シール材の弾性変形により弾性シール材が流路溝方向に張り出した場合にも、弾性シール材が段差部を超えて流路溝側に移動することが防止され、弾性シール材による流路溝の閉塞が発生しない。
【0075】
また、本実施形態のシール材13の設置位置と近接する流路溝のマニホールド室側の端部との間に段差部を設置する方法では、シール材13の設置位置と近接する流路溝のマニホールド室側の端部との間の間隔を比較的小さくすることが可能である。しかも、シール材13の設置位置と近接する流路溝のマニホールド室側の端部との間の間隔を広く確保するために、マニホールド室近傍で各流路溝又は流路溝間のリブ部の形状を大幅に変更する必要が無く、セパレータの流路溝の形成が容易となる。
【0076】
以上の通り本実施形態では、第6の実施形態と同等の効果が得られると共に、セパレータ2,3の製造が容易であり、製造性に優れ安価な燃料電池を実現することができる。
【0077】
(第9の実施形態)
図19は、第9の実施形態の要部構成を説明するためのもので、燃料電池の燃料セパレータ2と電極複合体1の接合面から燃料流路溝2a側を見た切断図である。なお、本実施形態の空気セパレータ3と電極複合体1については、外周の形状は本実施形態の燃料セパレータ2と同じであるので、図示は省略する。
【0078】
本実施形態の燃料電池では、第8の実施形態の電極複合体1,燃料セパレータ2,及び空気セパレータ3の外周部に設置したそれぞれの突起部を、部材の外周に設置した窪み部で置き換えた。なお、図19中の42c,42dは燃料セパレータ2に設けた窪み部を示している。
【0079】
また、各部材のそれぞれの窪み部は、長方形の形状に成型した各部材の一部を切断又は切削して容易に形成が可能である上に、突起部を設置した場合に発生する突起部の欠けの発生が防止できる。
【0080】
以上の通り本実施形態では、第8の実施形態と同等の効果が得られると共に、電極複合体1及びセパレータ2,3の製造が容易であり、製造性に優れ安価な燃料電池を実現することができる。
【0081】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、全ての流路溝に対して、反応領域に相対する位置よりもマニホールド室に近接した位置の方で流通範囲の全幅を小さくしたが、燃料流路溝、空気流路溝、及び冷却水流路溝の少なくとも一つに対して、反応領域に相対する位置よりもマニホールド室に近接した位置の方で流通範囲の全幅を小さくしても良い。
【0082】
また、実施形態では、空気流路溝と燃料流路溝は、ガス入り口側とガス出口側が同じ辺となるようにセパレータの表面でターンする構造としたが、一方向に流体を流すような流路であっても良い。この場合は、入出ガスマニホールドとターンマニホールドの代わりに、入口マニホールドと出口マニホールドを設ければよい。さらに、各流路溝のパターンは、仕様に応じて適宜変更可能である。
【0083】
また、燃料電池積層体を構成する単位電池の個数、各流路溝の寸法更には本数等は、仕様に応じて適宜定めればよい。
【0084】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…電極複合体
1a…アノード電極
1b…カソード電極
1c…電極のシール範囲
1d,2c,3c,32c…燃料ガスマニホールド側突起部
1e,2d,3d,32d…空気ガスマニホールド側突起部
2…燃料セパレータ
2a…燃料流路溝
2b…燃料流路溝の閉塞部
3…空気セパレータ
3a…空気流路溝
3b…冷却水流路溝
4…単位電池
5…燃料電池積層体
6…集電板
7…エンドプレート
8…タイロッド
9…燃料入出ガスマニホールド
9a,11a,11b,12a…仕切り板
9b…燃料入口マニホールド室
9c…燃料出口マニホールド室
9d…燃料入口配管
9e…燃料出口配管
10…燃料ターンマニホールド
10a…燃料ターンマニホールド室
11…空気入出マニホールド
11c…空気入口マニホールド室
11d…空気出口マニホールド室
11e…冷却水入口マニホールド室
11f…空気入口配管
11g…空気出口配管
11h…冷却水入口配管
12…空気ターンガスマニホールド
12b…空気ターンマニホールド室
12c…冷却水出口マニホールド室
13…シール材
22c,42c…燃料ガスマニホールド側窪み部
22d,42d…空気ガスマニホールド側窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面にそれぞれアノード電極とカソード電極とが配置され、前記アノード電極と前記カソード電極とが相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、
前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、
前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートの側面にシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、
を具備した燃料電池であって、
前記セパレータは、同一のマニホールド室に連通される全ての流路溝の幅と、該流路溝の間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた流体の流通範囲の全幅を、前記反応領域に相対する位置よりも前記マニホールド室に近接した位置の方で小さくしてなることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記単位電池の1つ毎に、前記電解質膜のアノード電極側に接して配置され、アノード電極側に燃料ガス流路溝が形成された第1のセパレータと、前記電解質膜のカソード電極側に接して配置され、カソード電極側に酸化剤ガス流路溝が形成され、且つカソード電極と反対側に冷却水流路が形成された第2のセパレータとを有し、
前記燃料ガス流路溝、前記酸化剤ガス流路溝、及び前記冷却水流路溝の少なくとも一つに対し、前記反応領域に相対する位置での前記流通範囲の全幅よりも前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記リブ部の少なくとも一つの幅を、前記反応領域に相対する位置よりも前記マニホールド室に近接した位置の方で小さくすることで、前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記流路溝の少なくとも一つの幅を、前記反応領域に相対する位置よりも前記マニホールド室に近接した位置の方で小さくすることで、前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記流路溝の少なくとも一つに対し、前記反応領域に相対する位置よりも前記マニホールド室に近接した位置の方で幅を小さくすると共に深さを深くすることで、前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記反応領域に相対する位置での前記流路溝の少なくとも一つを、前記マニホールド室に近接した位置で隣接した流路溝と合流,分岐,又は連結させることで、前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを請求項1又は2に記載の特徴とする燃料電池。
【請求項7】
前記反応領域に相対する位置での前記流路溝の少なくとも一つを、前記マニホールド室に近接した位置で閉塞させることで、前記マニホールド室に近接した位置での前記流通範囲の全幅を小さくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項8】
電解質膜の両面にそれぞれアノード電極とカソード電極とが配置され、前記アノード電極と前記カソード電極とが相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、
前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、
前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートの側面にシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、
を具備した燃料電池であって、
前記セパレータの少なくとも一箇所で、前記シール材の設置位置に近接する前記流路溝の前記マニホールド室側の端部と前記シール材の設置位置との間の位置に、前記セパレータの外側方向に突出させた突起部を設置したことを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
電解質膜の両面にそれぞれアノード電極とカソード電極とが配置され、前記アノード電極と前記カソード電極とが相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、
前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、
前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートの側面にシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、
を具備した燃料電池であって、
前記セパレータの少なくとも一箇所で、前記シール材の設置位置に近接する前記流路溝の前記マニホールド室側の端部と前記シール材の設置位置との間の位置に、前記セパレータの内側方向に窪ませた窪み部を設置したことを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
電解質膜の両面にそれぞれアノード電極とカソード電極とが配置され、前記アノード電極と前記カソード電極とが相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、
前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、
前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートの側面にシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、
を具備した燃料電池であって、
前記セパレータの少なくとも一箇所で、前記シール材の設置位置に近接する前記流路溝の前記マニホールド室側の端部と前記シール材の設置位置との間の位置に段差部を設置し、前記シール材の設置範囲を前記セパレータの外側方向に突出させた突起部としたことを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
電解質膜の両面にそれぞれアノード電極とカソード電極とが配置され、前記アノード電極と前記カソード電極とが相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体と、前記電極複合体に接して配置され、流体を流すための流路溝を有するセパレータと、を備えた単位電池を複数個積層して構成された燃料電池積層体と、
前記燃料電池積層体を積層方向両端から締め付けて保持する一対のエンドプレートと、
前記燃料電池積層体及び前記エンドプレートの側面にシール材を介して固定され、前記セパレータの流路溝に連通する単数若しくは複数のマニホールド室を有するマニホールドと、
を具備した燃料電池であって、
前記セパレータの少なくとも一箇所で、前記シール材の設置位置に近接する前記流路溝の前記マニホールド室側の端部と前記シール材の設置位置との間の位置に段差部を設置し、前記シール材の設置範囲を前記セパレータの内側方向に窪ませた窪み部としたことを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
アノード電極とカソード電極との相対した反応領域の周辺部にシール範囲を設けた電極複合体に接して配置され、表面又は裏面に流体を流すための流路溝を有する燃料電池用セパレータであって、
前記反応領域における全て又は複数の流路溝の幅と、該流路溝の間に形成される全てのリブ部の幅とを合わせた流体の流通範囲の全幅を、前記反応領域に相対する位置よりも周辺部の方で小さくしてなることを特徴とする燃料電池用セパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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