説明

燃料電池用のガス供給パネル及びガス供給パネルを有する燃料電池

本発明は、蛇行形状の構造を有し、平行に伸延してガス誘導流路が配置される燃料電池用のガス供給パネルに関する。本発明は、蛇行形状の規定流路に沿った媒質の側方輸送を低減するため、様々な幅を有するセルコネクタを、蛇行形状の規定流路に備えることを特徴とする。また、本発明は、カソード側及び/又はアノード側にガス供給流路が配置された燃料電池、特に高分子電解質膜(PEM)燃料電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行に並んでガス供給流路が蛇行構造で配置された、燃料電池用のガス供給パネルに関する。本発明はさらに、このようなガス供給パネルをカソード側及び/又はアノード側に有する燃料電池に関する。かかる燃料電池は、特にポリマー電解質膜(PEM)燃料電池の形態をとる。
【背景技術】
【0002】
様々な供給源の、20〜約70%の不活性ガス成分で処理した水素又は改質ガス(reformat)は、PEM燃料電池のアノード側で電気的に変換される。実質的に、カソード側での酸素源として常に空気が使用される。
【0003】
両方の電極においても、セルの電圧を維持しつつ、できるだけ大量の反応ガスを変換することは重要な要素となる。これには、大幅な電流密度の低減を部分的にもたらす反応ガスの減少領域をできるだけ回避するように、セル全体に均一に反応ガスを供給することが必要である。
【0004】
さらなる目的は、液滴を除去するのに十分速い速度において、少なくとも一方向に、ガスの供給を調整することができるようにすることである。
【0005】
十分速い速度を得るため、個々の流路、又は平行に配置され且つ蛇行構造を有する複数の流路によって、ガスを供給することが知られている。これらの流路は、活性領域全体に均一に伸延してもよく、又はさらに複雑な構造の分岐を部分的に含んでもよい。
【0006】
個々の流路がほぼ同一の流路長で、ほぼ同一の湾曲数であるといった適切な構成の流路において、均一な速度分布を得ることができるということが知られている。
【0007】
独国特許出願公開第10015360号明細書の一例として記載された、従来の技術による蛇行構造を有する流路構成の場合、静圧が互いに大きく異なる多くの流路が互いに平行に並び、圧力低下を伴う比較的長い流路がそれぞれ互いに近接したガス流路の間に位置する可能性がある。このため、ガス拡散層による側方拡散が起こり、反応物の部分的な濃縮と、特定の流路部の部分的な圧力減少を引き起こす。またそれ自体で、活性面の他の領域における反応物が減少するため、得ようとする電流密度の低減をもたらす。
【0008】
その結果、付随するセルスタックは低い変換率で動作する必要があり、つまり、システム効率の低下を導くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、蛇行長の全体にほぼ均一なガス供給を行うように、ガス供給流路は蛇行構造を有し、流路において発生するガス拡散層によって側方拡散を低減する、燃料電池用のガス供給パネルを提供することである。さらなる目的は、反応ガス変換率とシステム効率が高い燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、請求項1記載のガス供給パネル、及び請求項5記載の燃料電池によって上記目的が達成される。
【0011】
本願の主題の好ましく且つ特に好適な実施態様を、従属項にて特定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるガス供給パネルの場合、媒質境界の流路に沿って媒質の側方輸送を低減することによって、流路全体に均一に流れる。これにより、高い変換率及び効率の燃料電池を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の主題は、平行に並ぶガス供給流路が蛇行構造で配置される、燃料電池用のガス供給パネルであって、蛇行境界の流路に沿った媒質の側方輸送を低減するために、様々な幅を有するリブ又はウェブを蛇行境界の流路に備えることを特徴とするガス供給パネルである。
【0014】
本発明の主題はまた、カソード側及び/又はアノード側にこのようなガス供給パネルを有する燃料電池である。
【0015】
本発明によれば、発生する側方流によってウェブ区画の上方の反応領域における反応物の濃度を適切なものにするように、ガス供給流路の接合部に設置されるウェブの幅を変えることで、上記の目的を達成できることが見出されている。
【0016】
本発明によれば、蛇行境界の流路でのウェブの幅を変えるのに、以下の二つの構成が提供される。
a)一定幅の広がったウェブ。
b)可変幅の広がったウェブ。具体的には、ウェッジ形状に広がったウェブ。
【0017】
本発明によれば、構成a)によって側方流の問題を解決することができる。しかしながら、短い橋絡流路長でウェブ領域を広げると、反応物濃度が一定量減少する。このため、可変幅のb)が特に好ましく、短い流路長でもウェブ部における反応物の減少をさせることなく、本発明で側方流の問題を解決することができる。
【0018】
具体的にウェブをどれくらい広げたり、ウェッジに形状したりするかどうかは、選択されたガス拡散層と流路の形状寸法の特性に依存する。本発明における有効な形状寸法は、モデル計算だけでなく、可変幅のウェブの形状寸法で構築される燃料電池の性能特性によっても決定される。
【0019】
カソード側及び/又はアノード側、好ましくはカソード側及びアノード側の双方に有する本発明によるガス供給パネルを除いて、本発明による燃料電池の要素の構成は従来の技術に一致する。本発明による燃料電池は、高分子電解質膜(PEM)燃料電池の形態をとることが特に好ましい。
【0020】
好ましい実施態様を用い図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】
図1に示す典型的な実施態様は、3回の蛇行を基とする本発明の配置を例示する。しかしながら、本発明は、この配置に限定されることはなく、平行に並ぶ流路のいかなる所望の数にも適用される。好ましいウェッジは、水滴を容易に除去するため、水平及び垂直に僅かに傾斜した構造で主流の方向が下向きとなる形態において、さらなる利点がもたらされる。
【0022】
高分子膜燃料電池について、本発明を説明するがこの電池の型には限定されない。
【0023】
本発明に従って構築されたガス供給パネル(流れ場)の典型的な実施態様を、100cmの活性領域を有する高分子膜燃料電池を参照して説明する。
【0024】
従来の技術に従って構築された電池は、約0.8mmの流路及びウェブ幅を備え平行に3回蛇行する流れ場を有する。流路の深さは、1.2mmから1.6mmの範囲にある。従来の技術によると、流れ場のウェブが流れを複数回遮断することによって全ての流路に均一に流すことができるようにするため、流れ場に入口と出口が構築される。アノード側及びカソード側において蛇行配置をとることにより、同じ流れ方向、交差した流れ方向、又は逆の流れ方向に流すことができる。典型的な実施態様において、蛇行配置は、媒質が同じ方向及び逆の方向のどちらにも流すことを可能にする。
【0025】
本発明に従って構築した流れ場を備えた電池は、上記のように構築されているが、逆の流れ方向に対するウェブはウェッジ形状を有し、ウェッジに流れ込む圧力差に対応している。流れが逆となる端において、逆の流れ方向に対するウェブは他のウェブと同じ幅を有する。ウェブは一方の端に向かって1.8mmの幅にまで均一に厚くなっており、ウェブ全体に適量の媒質を供給するように、その一方の端において発生するウェブ全体の側方流れ(圧力差によって生じる)をほぼ低減する。
【0026】
従来の技術と比べ、この配置によって、電流密度が高くなり、およびガス変換率や空気変換率が増加し、電池の電圧が向上することが特に期待される。
【0027】
図2は、a)従来の技術に従って構築した流れ場、及びb)本発明に従って構築した流れ場に関する電流/電圧特性の対応を示す。図に示すように、本発明によって高い電流密度の特性ファイルにおいて有意な改善を達成することができる。
【0028】
さらに、図3からわかるように、本発明に従って構築した電池は、変換特性のプロファイルが改善される。
【0029】
本発明に従って構築した電池は、45%を上回る変換率で上限50mVまで改善される電圧を有することは自明であり、これは、本発明によるウェッジ形状のウェブが側方拡散を低減し、そして、この結果をもたらす均一な流れ分散によって説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従って構築した燃料電池用のガス供給パネルの詳細を示す図である。
【図2】従来の技術に従って構築したガス供給パネルと本発明に従って構築したガス供給パネルの電流/電圧特性を示す図である。
【図3】従来の技術に従って構築した燃料電池と本発明に従って構築した燃料電池の変換特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に並ぶガス供給流路が蛇行構造で配置される、燃料電池用のガス分配パネルであって、前記蛇行境界流路に沿った媒質の側方輸送を低減するために、可変幅を有するウェブを蛇行境界の流路に備える燃料電池用のガス分配パネル。
【請求項2】
前記蛇行境界の流路には、幅が増加するウェブが設けられる請求項1記載のガス分配パネル。
【請求項3】
前記蛇行境界の流路には、幅が増加するウェブが設けられ、該ウェブはウェッジ形状である請求項2記載のガス分配パネル。
【請求項4】
前記蛇行境界の航路には、他のウェブと比較して均一に幅が増加するウェブが設けられる請求項1記載のガス分配パネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガス分配パネルをカソード側及び/又はアノード側に有する燃料電池。
【請求項6】
高分子電解質膜(PEM)燃料電池の形態をとる請求項5記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504601(P2007−504601A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524219(P2006−524219)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001890
【国際公開番号】WO2005/024985
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506064072)ツェントゥルム フューア ゾンネンエネルギー−ウント ヴァッサーシュトッフ−フォルシュング バーデン−ヴァルテムベルク ゲマインニュッツィヒ シュティフトゥング (2)
【Fターム(参考)】