説明

燃料電池装置

【課題】燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】酸化剤ガス供給装置(3)よりも酸化剤ガス流路(5)の下流側に下流側タンク(7)を設け、酸化剤ガス供給装置よりも酸化剤ガス流路の上流側に酸化剤ガス吸込み配管部(9)を設け、酸化剤ガス吸込み配管部内に酸化剤ガスを吸い込むために設けられた酸化剤ガス吸込み口(10)の内径が酸化剤ガス吸込み配管部の中で最小の内径となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス中の水素と、空気などの酸化剤ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池を備えた燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新発電システムの一つとして、小容量分散発電が容易であり、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの有害物質の発生がないというメリットを有する燃料電池装置が注目されている。
【0003】
従来、この種の燃料電池装置としては、例えば、特許文献1(特開2002−216828号公報)などに開示された装置がある。燃料電池装置は、基本構成機器として一般に、改質装置と、空気供給装置(空気ブロワ)と、燃料電池と、電力変換装置(インバータ)と、熱回収装置と、送風装置(換気ファン)と、放熱装置(クーリングモジュール)とを備えている。
【0004】
改質装置は、天然ガスなど原料ガスから水素リッチな燃料ガスを生成する装置である。空気供給装置は、酸化剤ガスとしての空気を燃料電池に供給する装置である。燃料電池は、改質装置で生成された燃料ガス中の水素と、空気供給装置から供給された空気中の酸素とを電気化学反応させて発電を行う装置である。電力変換装置は、燃料電池で発生した電気エネルギーを商用電圧及び周波数に変換する装置である。熱回収装置は、熱交換器を具備し、燃料電池や改質装置で発生する熱を回収して他の排熱利用外部機器に熱を供給する装置である。送風装置は、燃料電池装置の内部を換気する装置である。放熱装置は、燃料電池装置内で発生した排熱を冷却する装置である。
【0005】
また、燃料電池装置は、各基本構成機器を円滑に動作させるために様々な補助機器を備えている。そのような補助機器としては、例えば、天然ガスを昇圧するブロワ、天然ガスの硫黄分を除去する脱硫器、改質装置に水(蒸気)を送るポンプ、燃料電池の電解質膜を加湿するために当該燃料電池に水を送るポンプ、水中の不純物を除去する浄化装置、水の電解質を除去するイオン交換装置、燃料ガス、空気、水の流量を電磁弁で制御するコントローラなどがある。前記各基本構成機器と各補助機器とは、配管や配線によって物理的又は電気的に接続されている。
【0006】
燃料電池装置は比較的大型の装置であるため、燃料電池装置を家庭用の発電機として使用する場合には、屋外に設置することが一般的である。また、燃料電池装置は、家庭で使用する電力の一部又は全部を発電するため、終日運転されることが通常である。そのため、燃料電池装置の運転時(特に夜間)に、燃料電池装置から大きな騒音が発生すると、使用者のみならず、近隣住民にも不快感を与えることとなる。従って、使用者や近隣住民に与える不快感を低減するために燃料電池装置の低騒音化が求められている。
【0007】
燃料電池装置から発生する騒音は、主として燃料電池装置の基本構成機器の1つである空気供給装置から発生する。例えば、空気供給装置がダイヤフラム式の電磁ポンプで構成されている場合、当該電磁ポンプの往復運動により脈動や振動が発生し、当該脈動や振動により発生した音が空気吸込み口で気柱共鳴することにより、大きな吸気音(吸込み騒音)が発生する。このような空気供給装置の吸気音や振動が配管や燃料電池装置の外郭となる筐体などに伝播されることにより、燃料電池装置から大きな騒音が発生する。そのため、燃料電池装置の低騒音化を図るには、空気供給装置の騒音を抑えることが効果的であると考えられる。
【0008】
空気供給装置の騒音を抑える技術が、例えば、特許文献2(特開2008−84564号公報)に開示されている。図4は、特許文献2の燃料電池装置の概略構成を示す図である。
【0009】
図4に示すように、特許文献2の燃料電池装置では、燃料電池101に空気を供給する空気供給装置である空気ブロワ102が防音箱103内に収容されている。防音室103内には、空気ブロワ102が備える空気ブロワモータ102aが冷却されるように、筐体104に設けられた開口104aを通じて取り込まれた空気を誘導する空気流路105が形成されている。この空気流路105は、筐体104の外側から開口104aを通じて空気ブロワ102が直接見通せないように、曲がって形成されている。この構成により、空気ブロワ102などの冷却を確保しつつ騒音の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−216828号公報
【特許文献2】特開2008−84564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、近年、燃料電池装置から発生する騒音を一層抑えることが求められており、前記従来の技術では、騒音の低減効果は十分ではない。
【0012】
従って、本発明の目的は、前記従来の課題を解決することにあって、燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができる燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
燃料電池装置の騒音を低減する方法の1つとして、空気供給装置と燃料電池などの空気供給先の機器とを接続する配管の直径を大きくして、圧力損失を低減する方法が考えられる。圧力損失を低減することにより、空気供給装置が備えるモータなどの駆動源の出力を下げることができ、空気供給装置の脈動や振動を低減することができる。また、空気を吸気するときの圧力が低減されるため、吸気音を低減することができる。
【0014】
しかしながら、前記方法では、駆動源の出力を下げることにより、空気供給装置の振動を低減できる一方で、空気供給装置の空気供給量が減少し、燃料電池装置の発電出力や発電効率が低下するという課題がある。
【0015】
また、燃料電池装置の騒音を低減する他の方法として、燃料電池装置の外郭となる筐体に防音壁や振動吸収材を取り付ける方法が考えられる。この方法によれば、特に、入射音エネルギーの透過損失の大きい高周波数域(例えば1KHz以上)の騒音を低減することができる。
【0016】
しかしながら、前記他の方法では、入射音エネルギーの透過損失の小さい低周波数域(例えば1KHz未満)の騒音を低減するには、防音壁や振動吸収材の厚さを厚くしたり、それらの材料を適切に選定する必要がある。すなわち、前記他の方法では、製造コストが高くなるとともに、防音壁や振動吸収材の厚さ分、燃料電池装置が大型化するという課題がある。
【0017】
そこで、本発明の発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、空気供給装置と燃料電池との間にタンクを設けることにより、空気供給装置から発生した振動を低減して、燃料電池装置の騒音を低減できることを見出した。また、本発明の発明者らは、空気吸込み口の内径を空気吸込み配管部の中で最小の内径とすることにより、騒音が空気吸込み配管部から漏れるのを抑制するとともに、騒音の周波数を上げることができることを見出した。これらの知見に基づき、本発明の発明者らは、本発明に想到した。
【0018】
本発明によれば、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路に設けられた酸化剤ガス供給装置と、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の下流側に設けられた下流側タンクと、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の上流側に設けられた酸化剤ガス吸込み配管部と、
を備え、
前記酸化剤ガス吸込み配管部内に前記酸化剤ガスを吸い込むために設けられた酸化剤ガス吸込み口の内径が、前記酸化剤ガス吸込み配管部の中で最小の内径となるように構成されている、燃料電池装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる燃料電池装置によれば、酸化剤ガス供給装置よりも酸化剤ガス流路の下流側に下流側タンクを設けているので、酸化剤ガス供給装置よりも酸化剤ガス流路の下流側に発生した酸化剤ガス供給装置の脈動や振動を吸収することができる。これにより、燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができる
【0020】
また、本発明にかかる燃料電池装置によれば、酸化剤ガス吸込み口の内径が酸化剤ガス吸込み配管部の中で最小の内径となるように構成しているので、騒音が酸化剤ガス吸込み配管部から漏れるのを抑制するとともに、騒音の周波数を上げることができる。すなわち、入射音エネルギーの透過損失の小さい低周波数域の騒音を、入射音エネルギーの透過損失の大きい高周波数域の騒音にすることができる。これにより、例えば筐体に防音壁や振動吸収材を取り付けたとき(あるいは、筐体自体を防音壁や振動吸収材で構成したとき)の騒音低減効果を向上させることができる。また、製造コストの増加や燃料電池装置の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる燃料電池装置の概略構成図である。
【図2A】本発明の実施形態にかかる燃料電池装置における、空気吸込み口の内径と騒音値との関係を示すグラフである。
【図2B】本発明の実施形態にかかる燃料電池装置における、空気吸込み口の内径と電圧値との関係を示すグラフである。
【図3】図1の燃料電池装置及び上流側タンクのみを備える燃料電池装置における、空気吸込み口の内径と騒音値、及び空気吸込み口の内径と制御電圧値とを関係を示すグラフである。
【図4】特許文献2の燃料電池装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路に設けられた酸化剤ガス供給装置と、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の下流側に設けられた下流側タンクと、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の上流側に設けられた酸化剤ガス吸込み配管部と、
を備え、
前記酸化剤ガス吸込み配管部内に前記酸化剤ガスを吸い込むために設けられた酸化剤ガス吸込み口が、前記酸化剤ガス吸込み配管部の中で最小の内径となるように構成されている、燃料電池装置を提供する。
【0023】
本発明の第2態様によれば、前記酸化剤ガス吸込み配管部は、上流側タンクを備える、第1態様に記載の燃料電池装置を提供する。
【0024】
本発明の第3態様によれば、前記下流側タンク及び前記上流側タンクのうちの少なくとも一方は、内部に前記酸化剤ガス中の不要物を除去するフィルタを備える、第2態様に記載の燃料電池装置を提供する。
【0025】
本発明の第4態様によれば、前記下流側タンク及び前記上流側タンクのうちの少なくとも一方は、前記空気供給装置と一体的に構成されている、第2又は3態様に記載の燃料電池装置を提供する。
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態にかかる燃料電池装置の概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態にかかる燃料電池装置1は、燃料ガス供給装置2と、空気供給装置(酸化剤ガス供給装置)3と、燃料電池4とを備えている。
【0029】
燃料ガス供給装置2は、水素を含有する燃料ガスを燃料電池4に供給する装置であり、例えば、高圧ボンベで構成されている。
【0030】
空気供給装置3は、酸化剤ガスとして空気を吸気し、当該空気を燃料電池4に供給する装置である。空気供給装置3は、例えば、一定の周波数で往復運転するダイヤフラム式の電磁ポンプで構成されている。空気供給装置3は、燃料電池4に空気を供給するための空気流路(酸化剤ガス流路)5に設けられている。
【0031】
燃料電池4は、燃料ガス供給装置2から供給された燃料ガス中の水素と、空気供給装置3から供給された空気中の酸素とを電気化学反応させて発電する装置である。燃料電池4の発電により得られた直流電力は、電力変換装置(インバータ)6により交流電力に変換される。
【0032】
空気供給装置3よりも空気流路5の下流側には、下流側タンク7と加湿器8とが設けられている。下流側タンク7は、空気供給装置3よりも空気流路5の下流側に発生した空気供給装置3の脈動や振動を吸収するためのタンクである。下流側タンク7は、空気供給装置3と一体的に(接するように)構成されている。加湿器8は、燃料電池4に供給される空気を加湿する装置である。
【0033】
下流側タンク7は、その上流側及び下流側の少なくとも一方に接続される配管よりも、流れ方向に対して垂直な断面積が大きくなるように形成されていれば、どのような形状であってもよい。例えば、直方体形状であってもよく、円柱状の形状であってもよい。
【0034】
空気供給装置3よりも空気流路5の上流側には、空気吸込み配管部(酸化剤ガス吸込み配管部)9が設けられている。空気吸込み配管部9は、空気吸込み口(酸化剤吸込み口)10と、上流側タンク11とを備えている。空気吸込み口10は、空気流路5内に空気を吸い込むために設けられた開口部である。空気吸込み口10の内径は、空気吸込み配管部9の中で最小の内径となるように構成されている。例えば、空気吸込み配管部9の内径が9〜12mmの場合、空気吸込み口10の内径は9mm未満とされている。上流側タンク11は、空気供給装置3よりも空気流路5の上流側に発生した空気供給装置3の脈動や振動を吸収するためのタンクである。
【0035】
上流側タンク11は、その上流側及び下流側の少なくとも一方に接続される配管よりも、流れ方向に対して垂直な断面積が大きくなるように形成されていれば、どのような形状であってもよい。例えば、直方体形状であってもよく、円柱状の形状であってもよい。また、上流側タンク11は、下流側タンク7と同様の形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
【0036】
上流側タンク11の内部には、空気吸込み口10から吸い込まれた空気中の不要物を吸着するフィルタ12が設けられている。このフィルタ12により、空気中の不要物に起因する燃料電池4の電圧低下及び耐久性の劣化が抑えられている。
【0037】
また、燃料電池装置1は、燃料電池4などの各装置の駆動を制御する制御部(図示しない)と、燃料電池装置1の外郭となる筐体(本体カバーともいう)13とを備えている。筐体13は、燃料電池装置1の内部部品に雨や風が侵入することを防ぐとともに、外部に漏れる騒音を低減する。
【0038】
本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、空気供給装置3よりも空気流路5の下流側に下流側タンク7を設けているので、空気供給装置3よりも空気流路5の下流側に発生した空気供給装置3の脈動や振動を吸収することができる。これにより、燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができる。
【0039】
また、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、空気吸込み口10の内径が空気吸込み配管部9の中で最小の内径となるように構成しているので、騒音が空気吸込み配管部9から漏れるのを抑制するとともに、騒音の周波数を上げることができる。すなわち、入射音エネルギーの透過損失の小さい低周波数域の騒音を、入射音エネルギーの透過損失の大きい高周波数域の騒音にすることができる。これにより、例えば筐体13に防音壁や振動吸収材を取り付けたとき(あるいは、筐体13自体を防音壁や振動吸収材で構成したとき)の騒音低減効果を向上させることができる。また、製造コストの増加や燃料電池装置の大型化を抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、空気供給装置3よりも空気流路5の上流側に上流側タンク11を設けているので、空気供給装置3よりも空気流路5の下流側に発生した空気供給装置3の脈動や振動を吸収することができる。これにより、燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができる。但し、上流側タンク11を設けた場合の騒音低減効果は、後述するように、下流側タンク7を設けた場合の騒音低減効果に比べて高くない。また、後述するように、下流側タンク7及び上流側タンク11を両方設けることにより、高い騒音低減効果を維持しつつ、空気吸込み口10の内径を大きくして、圧力損失を小さくすることができる。これにより、空気供給装置の空気供給量を多くして、燃料電池装置の発電出力や発電効率の低下を抑えることができる。その結果、燃料電池装置の消費電力を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、騒音低減効果の高い下流側タンク7の容積を上流側タンク11の容積よりも大きくしているので、燃料電池装置の大型化を抑えて、より効率良く騒音を低減することができる。
【0042】
また、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、上流側タンク11の内部に空気中の不要物を吸着するフィルタ12を設けているので、別途、フィルタ12を収容する容器を設ける必要性をなくすことができる。これにより、燃料電池装置の大型化を抑えることができる。なお、フィルタ12は、上流側タンク11の内部ではなく、下流側タンク7の内部に設けられてもよい。また、フィルタ12は、下流側タンク7の内部と上流側タンク11の内部の両方に設けられてもよい。これらの場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、下流側タンク7が空気供給装置3と一体的に構成されているので、燃料電池装置の大型化を一層抑えることができる。なお、下流側タンク7に代えて、上流側タンク11が空気供給装置3と一体的に構成されてもよい。また、下流側タンク7と上流側タンク11の両方が空気供給装置3と一体的に構成されてもよい。これらの場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0044】
次に、本実施形態にかかる燃料電池装置1の騒音低減効果を検証するために行った試験結果について、表1、図2及び図3を参照しつつ説明する。
【0045】
【表1】

【0046】
ここでは、空気供給装置3として、一定の周波数で往復運転するダイヤフラム式の電磁ポンプを用いた。当該電磁ポンプの電源周波数は、50Hzとした。また、測定対象である燃料電池装置1は防音室の中央に設置し、騒音値を測定するマイクロフォンは燃料電池装置1の正面から0.5m離れた位置に設置した。マイクロフォンは人間の可聴域特性を模擬したA特性フィルタをかけて使用した。騒音の測定は、電磁ポンプのみを単独運転し、その騒音値が最大となる条件で行った。具体的には、空気流量が最大となる55NL/minの条件で行った。表1に示すように、下流側タンク7の容積は450mlとし、上流側タンク11の容積は50ml、220ml、450ml、750mlとした。
【0047】
まず、下流側タンク7による騒音低減効果と上流側タンク11による騒音低減効果を検証するため、下流側タンク7のみを備えた燃料電池装置、及び、下流側タンク7及び上流側タンク11の容積が異なる燃料電池装置を用意し、それらの燃料電池装置の騒音試験を行った。なお、それらの燃料電池装置は、下流側タンク7又は上流側タンク11以外は燃料電池装置1と同様の構成を有している。また、ここでは、下流側タンク7及び上流側タンク11のいずれにもフィルタ12を設けないで、前記騒音試験を行った。
【0048】
図2Aは、前記騒音試験により得られた、空気吸込み口10の内径と騒音値の関係を示すグラフである。図2Bは、前記騒音試験により得られた、及び空気吸込み口10の内径と制御電圧値との関係を示すグラフである。図2Aにおいて、実施例1は、下流側タンク7のみを備える燃料電池装置の騒音値のデータを示している。実施例2〜4は、下流側タンク7及び上流側タンク11を備える燃料電池装置の騒音値のデータを示している。比較例1は、上流側タンク11のみを備える燃料電池装置の騒音値のデータを示している。
【0049】
図2Aより、空気吸込み口10の内径を5mmにした場合には、12mmにした場合と比べて、下流側タンク7のみを備える燃料電池装置(実施例1)の騒音値は6.1db低減され、上流側タンク11のみを備える燃料電池装置(比較例1)の騒音値は2.4db低減されていることが分かる。これにより、下流側タンク7のみを備える燃料電池装置及び上流側タンク11のみを備える燃料電池装置の両方とも、空気吸込み口10の内径が小さくなるほど、騒音値を低減できることが分かる。また、上流側タンク11による騒音低減効果よりも、下流側タンク7による騒音低減効果の方が高いことが分かる。
【0050】
なお、図2Bより、空気吸込み口10の内径が小さくなるほど、電磁ポンプに印加する電圧値が高くなっていることが分かる。これは、空気吸込み口10の内径が小さくなることにより、空気の吸込み効率が低減するため、所定の空気流量を維持するように電磁ポンプを駆動しているためである。電磁ポンプに印加する電圧値を高くすると、当該電磁ポンプに起因する騒音は大きくなるが、前述したように燃料電池装置全体の騒音値は低減されている。このことから、下流側タンク7又は上流側タンク11を設けることによる騒音低減効果が高いことが分かる。
【0051】
また、実施例2は、実施例1に対して、50mlの上流側タンク11を備えている点が異なる。表1及び図2Aより、50mlの上流側タンク11を備えた燃料電池装置(実施例2)の騒音値は、下流側タンク7のみを備えた燃料電池装置(実施例1)の騒音値とほぼ同等であることが分かる。
【0052】
また、実施例3は、実施例1に対して、220mlの上流側タンク11を備えている点が異なる。表1及び図2Aより、220mlの上流側タンク11を備えた燃料電池装置(実施例3)の騒音値は、下流側タンク7のみを備えた燃料電池装置(実施例1)の騒音値に比べて、空気吸込み口10の内径を5mmにした場合はほぼ同等であり、空気吸込み口10の内径を9mm、12mmにした場合は、それぞれ2.5dB、4.6dB低減されていることが分かる。
【0053】
また、実施例4は、実施例1に対して、750mlの上流側タンク11を備えている点が異なる。表1及び図2Aより、750mlの上流側タンク11を備えた燃料電池装置(実施例2)の騒音値は、下流側タンク7のみを備えた燃料電池装置(実施例1)の騒音値に比べて、空気吸込み口10の内径を5mmにした場合は2.4dB増加していることが分かる。
【0054】
また、実施例1は、比較例1に対して、450mlのタンクを上流側タンク7としてではなく、下流側タンク11として備えている点で異なる。表1及び図2Aより、450mlの下流側タンク7を備えた燃料電池装置(実施例1)の騒音値は、上流側タンク11のみを備えた燃料電池装置(比較例1)の騒音値に比べて、空気吸込み口10の内径を5mmにした場合は7.6dB低減され、空気吸込み口10の内径を9mm、12mmにした場合は、それぞれ6.0dB、3.7dB低減されていることが分かる。すなわち、上流側タンク11のみを備える燃料電池装置(比較例1)よりも、下流側タンク7を備える燃料電池装置(実施例1〜4)のほうが、騒音低減効果が高いことが分かる。
【0055】
なお、下流側タンク7及び上流側タンク11の両方を備える場合は、上流側タンク11の容積が、下流側タンク7の容積の0.5倍〜1.5倍程度であることがより好ましい。また、上流側タンク11の容積は、220ml〜750ml程度であることがより好ましい。
【0056】
次に、下流側タンク7及び上流側タンク11の両方を備える本実施形態にかかる燃料電池装置1と、上流側タンク11のみを備える比較例2にかかる燃料電池装置を用意し、それらの燃料電池装置の騒音試験を行った結果について説明する。なお、比較例2にかかる燃料電池装置は、下流側タンク7を設けないこと以外は燃料電池装置1と同様の構成を有している。また、ここでは、上流側タンク11の内部にフィルタ12を設けて前記騒音試験を行った。
【0057】
図3は、前記騒音試験により得られた、空気吸込み口10の内径と騒音値、及び空気吸込み口10の内径と制御電圧値とを関係を示すグラフである。図3において、実線で結ばれる丸印は、比較例2にかかる燃料電池装置の騒音値のデータを示している。点線で結ばれる丸印は、当該騒音値を測定する際に電磁ポンプに印加した電圧値を示している。また、実線で結ばれる三角印は、本実施形態にかかる燃料電池装置1の騒音値のデータを示している。点線で結ばれる丸印は、当該騒音値を測定する際に電磁ポンプに印加した電圧値を示している。
【0058】
図3より、空気吸込み口10の内径を5mmにした場合には、30mmにした場合と比べて、本実施形態にかかる燃料電池装置の騒音値は約11db低減されことが分かる。これにより、本実施形態にかかる燃料電池装置によれば、大幅に騒音を低減できることが分かる。一方、比較例2にかかる燃料電池装置の騒音値は、僅か(約1db程度)しか低減されなかった。この原因は、以下の通りと考えられる。
【0059】
比較例2にかかる燃料電池装置は、図2A及び図2Bで説明した上流側タンク11のみを備える燃料電池装置(比較例1)と、上流側タンク11の内部にフィルタ12を設けている点でのみ相違する。それらの燃料電池装置の騒音値のデータを比較すると、空気吸込み口10の内径が5〜12mmであるとき、比較例2にかかる燃料電池装置の方が、上流側タンク11のみを備える燃料電池装置(比較例1)よりも騒音低減効果が低くなっていることが分かる。これは、フィルタ12を設けたことにより、空気吸込み口10の内径が小さくなるほど、圧力損失が大きくなるためと考えられる。すなわち、所定の空気流量を維持するためには、電磁ポンプに印加する電圧値を高くする必要があり、その結果、当該電磁ポンプに起因する騒音が大きくなるためと考えられる。
【0060】
これに対して、本実施形態にかかる燃料電池装置1によれば、上流側タンク11に加えて下流側タンク7を備えているので、電磁ポンプに印加する電圧値が高くなっても、図3に示すように十分な騒音低減効果を得ることができる。従って、燃料電池装置の発電出力や発電効率の低下を抑えることができる。また、燃料電池装置の発電出力や発電効率の低下させることなく、空気吸込み口10の内径を大きくすること(例えば18mm程度まで)も可能になる。
【0061】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、酸化剤ガスとして空気を用いたが、本願発明はこれに限定されない。酸化剤ガスは、酸素を含む気体であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる燃料電池装置は、燃料電池装置から発生する騒音を一層低減することができるので、特に、屋外に設置される家庭用の燃料電池装置、定置用燃料電池コージェネレーションシステム、燃料電池自動車等に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池装置
2 燃料ガス供給装置
3 空気供給装置(酸化剤ガス供給装置)
4 燃料電池
5 空気流路(酸化剤ガス流路)
6 電力変換装置(インバータ)
7 下流側タンク
8 加湿器
9 空気吸込み配管部(酸化剤ガス吸込み配管部)
10 空気吸込み口
11 上流側タンク
12 フィルタ
13 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路に設けられた酸化剤ガス供給装置と、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の下流側に設けられ下流側タンクと、
前記酸化剤ガス供給装置よりも前記酸化剤ガス流路の上流側に設けられた酸化剤ガス吸込み配管部と、
を備え、
前記酸化剤ガス吸込み配管部内に前記酸化剤ガスを吸い込むために設けられた酸化剤ガス吸込み口の内径が、前記酸化剤ガス吸込み配管部の中で最小の内径となるように構成されている、燃料電池装置。
【請求項2】
前記酸化剤ガス吸込み配管部は、上流側タンクを備える、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記下流側タンク及び前記上流側タンクのうちの少なくとも一方は、内部に前記酸化剤ガス中の不要物を除去するフィルタを備える、請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記下流側タンク及び前記上流側タンクのうちの少なくとも一方は、前記空気供給装置と一体的に構成されている、請求項2又は3に記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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