説明

燃料電池装置

【課題】 大型化を抑制できる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】 本発明の燃料電池装置は、収納容器16内に設けられた発電室19内に、柱状の燃料電池セル3を、燃料電池セル3の下端部を固定するとともに燃料電池セル3に第1の反応ガスを供給するためのガスタンク7に立設させた状態で列状に配列して電気的に接続してなるセルスタック装置1と、長尺状の筒状部材27を有し、内部が燃料電池セル3の外部に供給される第2の反応ガス流路とされた第2の反応ガス流路部材と、を備えるとともに、セルスタック装置1の複数個を、燃料電池セル3の配列方向が、筒状部材27の長手方向と対応して、かつ筒状部材27に沿って周回状に配置されていることにより、大型化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納容器内に複数個の燃料電池セルを収納してなる燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と空気(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数個配列してなるセルスタックを収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや、燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような燃料電池装置は、その用途に応じて、家庭用の小規模のものから、発電所等に用いられる大規模なものまで各種の燃料電池装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−59377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大規模発電用の燃料電池装置として、例えば特許文献1に記載の燃料電池装置を大規模発電用にそのまま適用すると、収納容器内に2つのセルスタックを収納してなる燃料電池モジュールを複数個組み合わせる必要があり、燃料電池装置そのものが非常に大型化してしまうという問題があった。
【0006】
それゆえ、本発明は、大規模発電に用いられる燃料電池装置において、小型化が可能な燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池装置は、収納容器内に設けられた発電室内に、柱状の燃料電池セルを、該燃料電池セルの下端部を固定するとともに前記燃料電池セルに第1の反応ガスを供給するためのガスタンクに立設させた状態で列状に配列して電気的に接続してなるセルスタック装置と、長尺状の筒状部材を有し、内部が前記燃料電池セルの外部に供給される第2の反応ガス流路とされた第2の反応ガス流路部材と、を備えるとともに、前記セルスタック装置の複数個を、前記燃料電池セルの配列方向が、前記筒状部材の長手方向と対応して、かつ該筒状部材に沿って周回状に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池装置は、セルスタック装置が、燃料電池セルの配列方向が、長尺状の筒状部材の長手方向と対応して、かつ該筒状部材に沿って周回状に配置されていることから、燃料電池装置が大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の燃料電池装置を構成するセルスタック装置を示し、(a)は側面図、(b)は一部を抜粋した平面図である。
【図2】図1に示すセルスタック装置を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールの一例を概略的に示す断面図である。
【図3】第2の反応ガス流路部材と図2に示すセルスタック装置の配置を説明するための説明図である。
【図4】本発明の燃料電池装置を構成するセルスタック装置の他の例を示す斜視図である。
【図5】図4に示すセルスタック装置を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールの一例を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の燃料電池装置を構成するセルスタック装置のさらに他の例を示す斜視図である。
【図7】第2の反応ガス流路部材と図6に示すセルスタック装置の配置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の燃料電池装置を構成するセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置1を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置1の一部拡大平面図であり、(a)で示した点線枠で囲った部分を抜粋して示している。また、同一の部材については同一の番号を付するものとし、以下同様とする。
【0011】
セルスタック装置1は、内部に第1の反応ガスである燃料ガスが流れるガス流路13を有して、一対の対向する平坦面をもつ断面が扁平状の導電性支持体12の一方の平坦面上に内側電極層としての燃料極層8と、固体電解質層9と、外側電極層としての空気極層10とを順次積層してなるとともに、他方の平坦面のうち空気極層10が形成されていない部位にインターコネクタ11を積層してなる柱状(中空平板状)の燃料電池セル3の複数個を、隣接する燃料電池セル3間に集電部材4を介して配置することで、燃料電池セル3同士を電気的に直列に接続してなるセルスタック2が形成される。なお、インターコネクタ11の外面にはP型半導体層14を設けることもできる。集電部材4を、P型半導体層14を介してインターコネクタ11に接続させることより、両者の接触がオーム接触となって電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に抑制することができる。このP型半導体層14は、空気極層10の外面に設けることもできる。
【0012】
なお、以下では、導電性支持体12のガス流路13を第1の反応ガスである燃料ガスが流れる形態の燃料電池セル3を例示して説明するが、ガス流路13の内部を第2の反応ガスである酸素含有ガスが流れる形態の燃料電池セル3とすることもでき、この場合、導電性支持体12の一方の平坦状に内側電極層としての空気極層と、固体電解質層と、外側電極層としての燃料極とが順次積層された燃料電池セル3とすればよい。
【0013】
そして、セルスタック2を構成する各燃料電池セル3の下端部が、ガス流路13を介して燃料電池セル3に燃料ガスを供給するためのガスタンク7にガラスシール材等の接合材により固定されている。また、ガスタンク7の側面に、燃料ガスをガスタンク7内に供給するための燃料ガス供給管15が接続されている。
【0014】
また、燃料電池セル3の配列方向の両端から集電部材4を介してセルスタック2を挟持するように、ガスタンク7に下端が固定された導電部材5を具備している。ここで、図1に示す導電部材5においては、燃料電池セル3の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック2(燃料電池セル3)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部6が設けられている。
【0015】
ちなみに、このようなセルスタック装置1においては、ガス流路13より排出される燃料ガス(余剰の燃料ガス)を燃料電池セル3の上端部側で燃焼させるように構成することにより燃料電池セル3の温度を上昇させることができる。それにより、セルスタック装置1の起動を早めることができる。
【0016】
以下に、図1において示す燃料電池セル3を構成する各部材について説明する。
【0017】
燃料極層8は、一般的に公知のものを使用することができ、多孔質の導電性セラミックス、例えば希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニアと称する)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
【0018】
固体電解質層9は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされ、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrOから形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いて形成してもよい。
【0019】
空気極層10は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成することができる。空気極層10はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
【0020】
インターコネクタ11は、導電性セラミックスから形成することができるが、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、それゆえランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ11は導電性支持体12に形成された複数のガス流路13を流通する燃料ガス、および導電性支持体12の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
【0021】
導電性支持体12は、燃料ガスを燃料極層8まで透過するためにガス透過性であること、さらには、インターコネクタ11を介して集電するために導電性であることが要求される。したがって、導電性支持体12としては、かかる要求を満足するものを材質として採用する必要があり、例えば導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。
【0022】
ちなみに、燃料電池セル3を作製するにあたり、燃料極層8または固体電解質層9との同時焼成により導電性支持体12を作製する場合においては、鉄属金属成分と特定希土類酸化物とから導電性支持体12を形成することが好ましい。また、導電性支持体12は、所要ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
【0023】
さらに、P型半導体層14としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、インターコネクタ11を構成するランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層14の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
なお、図示はしていないが、固体電解質層9と空気極層10との間に、固体電解質層9と空気極層10との接合を強固とするとともに、固体電解質層9の成分と空気極層10の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で、Ce(セリウム)と他の希土類元素(SmやGd等)とを含有する組成にて形成される中間層を備えることもできる。
【0025】
また、図示はしていないが、インターコネクタ11と導電性支持体12との間に、イン
ターコネクタ11と導電性支持体12との間の熱膨張係数差を軽減する等のために、燃料極層8と類似した組成の密着層を設けることもできる。
【0026】
上述したセルスタック装置1を、収納容器の内部に複数個配置することで、大規模発電用の燃料電池モジュールとすることができる。
【0027】
図2は、本発明の燃料電池装置を構成する燃料電池モジュール16(以下、モジュールという場合がある。)の一例を概略的に示す断面図である。
【0028】
収納容器17は、外壁20にて収納容器17の外枠が形成された直方体状で、内部にセルスタック装置1を収納するための発電室19が形成されている。
【0029】
このような収納容器17においては、外壁20の内側に所定間隔をあけて内壁21が配置され、内壁21の内側(内壁21の側壁の内側)に排ガス用内壁22が配置され、内壁21と排ガス用内壁22とで囲まれる空間が発電室19となっている。
【0030】
ここで、収納容器17は外壁20の側壁と内壁21の側壁とで形成された空間が第1の流路23となり、外壁20の上壁と内壁21の上壁とで形成された空間が第2の流路24となり、内壁21と排ガス用内壁22とで形成された空間が第4の流路(排ガス流路)26となる。ここで、内壁21の上壁には、排ガス用内壁22よりも内側で、かつ第2の流路24と通じて発電室19内に垂下するように配置された、長尺状の筒状部材27が設けられており、筒状部材27の内部が、第3の流路25となり、第2の反応ガス流路の一部をなしている。なお筒状部材27は、第2の流路24と反対側の一端が封止されている。
【0031】
また、発電室19内に配置されるセルスタック装置1は、燃料電池セル3の配列方向が、筒状部材27の長手方向と対応するように、かつ筒状部材27の周囲に沿って周回状に配置されている。すなわち、図2に示すモジュール16においては、燃料電池セル3の配列方向が上下方向となるようにして、セルスタック装置1が配置されている。
【0032】
また、収納容器17の底部には、酸素含有ガス(空気)を収納容器17内に供給するための酸素含有ガス導入管18が接続されており、酸素含有ガス導入管18から供給される酸素含有ガスは酸素含有ガス導入部28に流れる。なお、内壁21の底壁と外壁20の底壁とで形成された空間が酸素含有ガス導入部28となる。酸素含有ガス導入部28は、酸素含有ガス導入口29により第1の流路23とつながっているため、酸素含有ガス導入部28を流れた酸素含有ガスは、酸素含有ガス導入口29を通して、第1の流路23に流れる。第1の流路23を上方に向けて流れた酸素含有ガスは、第2の流路24を発電室19側(図2に示す収納容器17おいては外壁20の上壁に沿った中央部側)に向けて流れたのち、筒状部材27の内部に設けられた第3の流路25を下方に向けて流れる。
【0033】
ここで、図2に示すモジュール16においては、セルスタック2の燃料電池セル3の配列方向の幅と対応した大きさの板状で、各燃料電池セル3の下端部側に酸素含有ガスを導入するための酸素含有ガス導入孔(図示せず)を備える酸素含有ガス導入部材34が、筒状部材27に接続されている。それにより、燃料電池セル3に効率よく酸素含有ガスが供給される。
【0034】
なお、酸素含有ガス導入部材34は、セルスタック装置におけるセルスタック2の幅と同じ幅もしくはそれ以上の幅とすることが好ましく、酸素含有ガス導入孔は、各燃料電池セル3に酸素含有ガスを導入することができるよう、燃料電池セル3の配列方向に沿って適宜間隔をあけて複数設けるほか、細長い1つの孔とすることもできる。
【0035】
一方、燃料電池セル3より排出される排ガスや、燃料電池セル3の上端部側で余剰の燃料ガスを燃焼させることにより生じる排ガスは、発電室19の上方より第4の流路26(以下、排ガス流路という場合がある。)に流入する。排ガス流路26を下方に向けて流れた排ガスは、排ガス収集口30を通して排ガス収集室31に流れた後、排ガス収集室31に接続された排ガス排気管32を通して収納容器17の外部に排気される。なお、排ガス用内壁22の底壁と内壁21の底壁とで形成された空間が排ガス収集室31となる。また、図2に示す収納容器17においては、排ガス排気管32が、酸素含有ガス導入管18の内部に設けられた形状(2重管)としているが、それぞれをずらして配置することもできる。
【0036】
そして、酸素含有ガス導入管18より導入された酸素含有ガスは、酸素含有ガス導入部28を流れる間に、排ガス収集室31を流れる排ガスと熱交換され、第1の流路23を流れる間に、排ガス流路26を流れる排ガスと熱交換され、第2の流路24および第3の流路25を流れる間に、発電室19内の熱とで熱交換されることとなる。
【0037】
それにより、効率よく酸素含有ガスの温度を高めることができることから、燃料電池セル3の発電効率を向上することができる。
【0038】
なお、収納容器17の内部には、発電室19内を高温に維持し、燃料電池セル3の温度が低下して発電量が低減することを抑制するための断熱材33が適宜配置されており、図2に示す収納容器17においては、排ガス用内壁22とガスタンク7との間、排ガス用内壁22の底壁と酸素含有ガス導入部材34および筒状部材27との間にそれぞれ配置されている。
【0039】
また、図2に示すモジュール16においては、ガスタンク7に供給する燃料ガスについては、例えば、ガスタンク7に直接供給する構成とするほか、モジュール16とは別個に原燃料を改質するための改質器を設けて、該改質器にて生成した燃料ガス(改質ガス)をガスタンク7に供給する構成とすることができる。
【0040】
図3は、筒状部材27、酸素含有ガス導入部材34およびセルスタック装置1を抜粋して示す説明図である。
【0041】
図3においては、筒状部材27が直方体状であり、直方体状の各側面と対向するように、ガスタンク7に燃料電池セル3が一列だけ配置されたセルスタック装置1が配置されている。そして、燃料電池セル3の配列方向に沿って延びる酸素含有ガス導入部材34が、筒状部材27に接続されている。
【0042】
また、燃料電池セル3の配列方向に沿って延びる酸素含有ガス導入部材34が、セルスタック2の両側に配置されている。なお、それぞれの酸素含有ガス導入部材34は、燃料電池セル3に面する側に、複数個の酸素含有ガス導入孔が設けられている(図示せず)。
【0043】
それにより、酸素含有ガス導入部材34から効率よく燃料電池セル3に酸素含有ガスを供給することができる。なお、この場合において、酸素含有ガス導入部材34が、供給された酸素含有ガスが、燃料電池セル3の側方へ通り抜けることを抑制するための流動方向調整部材としての役割を果たすこととなる。それにより、燃料電池セル3の下端側に供給された酸素含有ガスは、燃料電池セル3の側方へ通り抜けることを抑制でき、隣接する燃料電池セル3の間を通って、燃料電池セル3の上端側へ流れることとなる。
【0044】
なお、酸素含有ガスが燃料電池セル3の側方へ通り抜けることを効率よく抑制するにあたり、酸素含有ガス導入部材34を燃料電池セル3の側方に接触するように配置して、セ
ルスタック2の側面を覆うように配置することもできる。この場合、燃料電池セル3と酸素含有ガス導入部材34とが電気的に導通しないようにすることが好ましく、例えば酸素含有ガス導入部材34を絶縁性の材料より構成するほか、酸素含有ガス導入部材34の表面に絶縁性のコーティングを施すこともできる。
【0045】
また、酸素含有ガス導入部材34を燃料電池セル3の側方に接触しないように配置する場合において、燃料電池セル3と酸素含有ガス導入部材34との間に、絶縁性の耐熱性部材(断熱材等)を配置することもできる。
【0046】
なお、酸素含有ガス導入部材34は、セルスタック2の側面全体を覆う大きさであることが好ましく、セルスタック2の幅方向の長さと同じもしくはそれ以上の幅を有していることが好ましい。
【0047】
また、セルスタック装置1を筒状部材27に沿って周回状に配置することで、それぞれのセルスタック装置における温度分布を均一に近づけることができ、セルスタック装置1の発電効率を向上することができる。
【0048】
さらに、モジュール16を上述のような構成とすることにより、セルスタック装置1における温度分布のみならず、発電室19内の温度分布も均一に近づけることができる。それにより、収納容器17やガスタンク7において、局所的な熱応力や温度差が生じることを抑制することができる。それにより、燃料電池セル3とガスタンク7との接合部が破損することを抑制することができ、セルスタック装置1の耐久性を向上することができるとともに、収納容器17の耐久性を向上することができる。
【0049】
なお、セルスタック装置1の発電において、燃料利用率を高めて発電させる場合、すなわち発電に使用されなかった燃料ガスが少ない量となる運転を行った場合に、発電に使用されなかった燃料ガスのエネルギー量が低下し、燃焼温度が下がる場合がある。この場合に、セルスタック2の温度が低下し、燃料電池セル3の発電性能が低下するおそれがある。一方、上述のモジュール16においては、セルスタック装置1において、発電に使用されなかった燃料ガスを燃焼させるための燃焼部が、筒状部材27の周囲に配置されていることから、燃焼部が一箇所に集まることとなる。それにより、燃料利用率を高めて発電を行なう場合であっても、全体として燃料ガスのエネルギーを高くすることができることから、燃焼部での燃焼性が低下せず、温度を高く維持することができる。それゆえ、セルスタック2の温度を高く維持することができることから、発電効率を向上することができる。
【0050】
図4は、セルスタック装置の他の例を示す斜視図であり、図5は図4に示すセルスタック装置を収納容器内に収納してなるモジュールの一例を概略的に示す断面図である。
【0051】
図4に示すセルスタック装置35においては、ガスタンク7に燃料電池セル3が一列だけ配置されており、燃料電池セル3の上方に、燃料電池セル3に供給する燃料ガスを生成するための改質器36が配置されている。なお、改質器36には、灯油や天然ガス等の原燃料を供給するための原燃料供給管38が接続されており、内部には原燃料を改質するための改質触媒が配置されている(図示せず)。なお改質器36においては、改質効率のよい水蒸気改質を行なうことが好ましく、他に部分酸化改質や、部分酸化改質と水蒸気改質とを組み合わせたオートサーマル改質を行ってもよい。なお、改質器36にて水蒸気改質を行なう場合は、改質器36に水を供給するための水供給管を別途設けることが好ましい。改質器36で生成された燃料ガスは、燃料ガス供給管37を介してガスタンク7に供給されて、燃料電池セル3に供給される。
【0052】
このようなセルスタック装置35においては、燃料電池セル3の上端より排出される発電に使用されなかった燃料ガスを燃焼させることで、改質器36を温めることができる。それにより、改質器36での改質反応を効率よく行なうことができる。
【0053】
また、図5は、図4に示すセルスタック装置35を発電室19内に収納してなるモジュール39の断面図を示している。このようなモジュール39においても、上述したモジュール16と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、図5に示すモジュール39においては、燃料電池セル3に供給する燃料ガスを生成するための改質器36を発電室19内に配置してなることから、モジュール16と別個に改質器を設ける必要がなく、燃料電池装置が大型化することを抑制できる。
【0055】
なお、図5に示すモジュール39においては、隣り合うセルスタック装置35が、燃料ガス供給管37の位置が上下で逆方向となるように配置している。
【0056】
改質器36にて水蒸気改質を行なう場合において、水が供給される側の温度が低く、燃料ガス供給管37側の温度が高くなる温度分布を生じる場合がある。それゆえ、図5に示すモジュール39においては、隣り合うセルスタック装置35を上下逆方向となるようにして配置することで、発電室19内での温度分布をより均一化できる。
【0057】
なお、セルスタック装置35において、特に温度分布が生じない場合においては、必ずしも隣り合うセルスタック装置35を上下逆方向となるように配置する必要はなく、上下が同じ方向となるように配置してもよい。
【0058】
図6は、セルスタック装置のさらに他の例を示す斜視図である。
【0059】
図6に示すセルスタック装置40は、ガスタンク7にセルスタック2を2つ並置して設けており、該セルスタック2の上方に、コの字状の改質器41が配置されている。
【0060】
セルスタック装置40における改質器41は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる構造とすることが好ましく、水を気化させるための気化部42と、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部43とを備えている。そして、上述の改質器36と同様に、原燃料供給管38より供給された原燃料を改質して生成された燃料ガスが、燃料ガス供給管39を通してガスタンク7に供給され、ガスタンク7より燃料電池セル3の内部に設けられたガス流路13に供給される。
【0061】
このような改質器41においても、燃料電池セル3の上端より排出される発電に使用されなかった燃料ガスを燃焼させることで、改質器41を効率よく温めることができ、それにより改質反応を効率よく行うことができる。
【0062】
図7は、筒状部材27、酸素含有ガス導入部材34、セルスタック装置40および後述する流動方向調整部材44を抜粋して示す説明図である。
【0063】
図7においては、筒状部材27が直方体状であり、直方体状の各側面と対向するように、図6に示したセルスタック装置40配置されている。そして、燃料電池セル3の配列方向に沿って延びる酸素含有ガス導入部材34が、筒状部材27に接続されているとともに、ガスタンク7に設けられた2つのセルスタック2の間に配置されている。なお、図示していないが、酸素含有ガス導入部材34の燃料電池セル3に面する両面で、燃料電池セル3の下端部と対応する部位に、複数個の酸素含有ガス導入孔が設けられている。なお、酸素含有ガス導入部材34は、セルスタック2の側面全体を覆う大きさであることが好まし
く、セルスタック2の幅方向の長さと同じもしくはそれ以上の幅を有していることが好ましい。
【0064】
ここで、図7に示すセルスタック装置40においては、各セルスタック2の酸素含有ガス導入部材34と反対側の側面に、酸素含有ガスの流動方向を調整するための流動方向調整部材44が設けられている。
【0065】
セルスタック2の間に酸素含有ガス導入部材34が配置されていることから、酸素含有ガス導入部材34から供給される酸素含有ガスが、燃料電池セル3の側方へ通り抜けてしまい、燃料電池セル3の上端側へ流れなくなるおそれがある。この場合に、燃料電池セル3に十分量の酸素含有ガスが供給されず、発電量が低下するおそれがある。
【0066】
ここで、図7に示すセルスタック装置40においては、各セルスタック2の酸素含有ガス導入部材34と反対側の側面に、流動方向調整部材44が設けられていることから、酸素含有ガスが燃料電池セル3の側方へ通り抜けることを抑制でき、燃料電池セル3の下端側に供給された酸素含有ガスは、燃料電池セル3の上端側へ流れることとなる。それにより、燃料電池セル3にて効率よく発電することができる。
【0067】
なお、流動方向調整部材44は、セルスタック2の側面全体を覆う大きさであることが好ましく、セルスタック2の幅方向の長さと同じもしくはそれ以上の幅を有し、燃料電池セル3の長手方向と同じ長さもしくはそれ以上の幅を有することが好ましい。
【0068】
また、図7に示すセルスタック装置40においては、流動方向調整部材44をガスタンク7に接続して設ける例を示しているが、これに限られるものではなく、筒状部材27に接続された形状とすることもできる。なお、その場合、燃料電池セル3より排出される排ガスや、燃料電池セル3の上端側で排ガスを燃焼させて生じた燃焼ガスを逃がすための逃がし孔を有していることが好ましい。
【0069】
なお、酸素含有ガスが燃料電池セル3の側方へ通り抜けることを効率よく抑制するにあたり、流動方向調整部材44を燃料電池セル3の側方に接触するように配置して、セルスタック2の側面を覆うように配置することもできる。この場合、燃料電池セル3と流動方向調整部材44が電気的に導通しないようにすることが好ましく、例えば流動方向調整部材44を絶縁性の材料より構成するほか、流動方向調整部材44の表面に絶縁性のコーティングを施すこともできる。
【0070】
そして、上述したモジュール16、39等を、モジュール16、39を動作させるための補機とあわせて外装容器内に収納することで、大型化を抑制した燃料電池装置とすることができる。
【0071】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0072】
例えば、上述の説明において、筒状部材27を直方体状として説明したが、円筒状とすることもできる。この場合、セルスタック装置1を円筒状の筒状部材の周囲に沿って配置するとともに、収納容器7を円柱状とすることができる。また、この場合において、全てのセルスタック2の間に、酸素含有ガス導入部材34を配置して、酸素含有ガス導入部材34に流動方向調整部材44の機能を兼ね備えるようにしてもよい。
【0073】
また、上述の説明において、セルスタック2における燃料電池セル3の配列方向が上下
方向となるようにしたモジュールについて説明したが、燃料電池セル3の配列方向が水平方向となるようにしてモジュールを構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1、35、40:セルスタック装置
2:セルスタック
3:燃料電池セル
7:ガスタンク
27:筒状部材
34:酸素含有ガス導入部材
44:流動方向調整部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器内に設けられた発電室内に、柱状の燃料電池セルを、該燃料電池セルの下端部を固定するとともに前記燃料電池セルに第1の反応ガスを供給するためのガスタンクに立設させた状態で列状に配列して電気的に接続してなるセルスタック装置と、長尺状の筒状部材を有し、内部が前記燃料電池セルの外部に供給される第2の反応ガス流路とされた第2の反応ガス流路部材と、を備えるとともに、
前記セルスタック装置の複数個を、前記燃料電池セルの配列方向が、前記筒状部材の長手方向と対応して、かつ該筒状部材に沿って周回状に配置されていることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記燃料電池セルの配列方向に沿って設けられ、前記燃料電池セルの下端部側に第2の反応ガス導入孔を備える第2の反応ガス導入部材が、前記筒状部材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記セルスタック装置および前記第2の反応ガス流路部材が、前記燃料電池セルの配列方向が上下方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記ガスタンクに、前記燃料電池セルが列状に配列されたセルスタックが1つ設けられており、前記第2の反応ガス導入部材が、前記セルスタックの両側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記ガスタンクに、前記燃料電池セルが列状に配列されたセルスタックが2つ並置されており、前記第2の反応ガス導入部材が、前記セルスタックの間に配置されているとともに、それぞれの前記セルスタックの前記第2の反応ガス導入部材と反対側に、第2の反応ガスの流動方向を調整するための流動方向調整部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池装置。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate