説明

燃料電池

【課題】簡単且つコンパクトな構成で、所望のシール性を確保するとともに、燃料電池全体の小型化を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、アノード側複合セパレータ14及びカソード側複合セパレータ16とを備える。アノード側複合セパレータ14を構成する第1樹脂枠部材50の両面には、第1及び第2導電体52、54が設けられるとともに、カソード側複合セパレータ16を構成する第2樹脂枠部材59には、第3導電体60が設けられる。第1及び第3導電体52、60は、電解質膜・電極構造体12を構成する樹脂枠34に接触し、発熱することによって溶着するとともに、所望のシールラインが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極が電解質の両側に設けられた電解質・電極構造体と、セパレータとを積層する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜(電解質)を採用している。この電解質膜の両側にアノード側電極及びカソード側電極を対設した電解質膜・電極構造体が、セパレータによって挟持された単位セルを備えている。通常、単位セルが複数積層されることにより燃料電池が構成されている。
【0003】
この単位セルにおいて、アノード側電極には、燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガス(以下、水素含有ガスともいう)が供給される一方、カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気(以下、酸素含有ガスともいう)が供給されている。アノード側電極に供給された燃料ガスは、電極触媒上で水素がイオン化され、電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。
【0004】
上記の燃料電池では、セパレータの面内に、アノード側電極に燃料ガスを流すための燃料ガス流路と、カソード側電極に酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路とが設けられている。さらに、セパレータ間には、必要に応じて冷却媒体を流すための冷却媒体流路が前記セパレータの面方向に沿って設けられている。
【0005】
一般的に、燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する流体供給連通孔及び流体排出連通孔が燃料電池内部に設けられた、所謂、内部マニホールドを構成している。そして、流体である燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体は、それぞれの流体供給連通孔から燃料ガス流路、酸化剤ガス流路及び冷却媒体流路に供給された後、それぞれの流体排出連通孔に排出されている。
【0006】
このため、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体が混在したり、漏洩したりすることを阻止する必要がある。そこで、例えば、特許文献1に開示されている単電池は、図18に示すように、電解質膜1と、この電解質膜1の外延部を支持する一対のフレーム2と、前記電解質膜1を両側から挟持する2つの電極3と、前記電極3を挟持するとともに、各電極3との間に反応ガス流路を形成する2つの集電極4と、両集電極4の外側に配置されるセパレータ5と、前記セパレータ5と前記フレーム2との間に介装されるシール部材6とを備えている。
【0007】
一対のフレーム2は、樹脂により形成されており、各フレーム2から互いに近接する方向に突出する突出部2a、2aが溶着される一方、突出部2b、2bが電解質膜1に溶着されることにより一体化されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−235314号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、燃料電池では、スタック全体の小型化を図るため、単電池(単位セル)の厚さを相当に薄肉化することが望まれている。従って、フレーム2と共にシール部材6自体を薄肉化する必要があり、前記シール部材6の寸法公差が高精度に要求される。これにより、シール部材6の製造コストが高騰するとともに、薄肉状の前記シール部材6の取り扱い作業性が著しく低下し、燃料電池の組立作業が煩雑化するという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つコンパクトな構成で、所望のシール性を確保するとともに、燃料電池全体の小型化を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一対の電極が電解質の両側に設けられた電解質・電極構造体と、セパレータとを積層する燃料電池である。セパレータは、導電性の電極反応部と、前記電極反応部の周囲を覆って設けられる樹脂製の第1外周部とを備えるとともに、電解質・電極構造体は、電極の周囲を覆って樹脂製の第2外周部を設けている。そして、第1外周部と第2外周部との間に介装される発熱体を介して、前記第1外周部と前記第2外周部とが溶融により一体化されている。
【0012】
また、本発明の燃料電池では、セパレータは、導電性の電極反応部と、前記電極反応部の周囲を覆って設けられる樹脂製の外周部とを備えるとともに、電解質・電極構造体を挟んで対向する一対のセパレータは、それぞれの外周部の間に介装される発熱体を介して、前記外周部同士が溶融により一体化されている。
【0013】
さらに、セパレータは、電極の面方向に沿って所望の反応ガスを供給する反応ガス流路と、積層方向に貫通して前記反応ガスを通流させる反応ガス連通孔とを設け、発熱体は、前記反応ガス流路と前記反応ガス連通孔とを連結するシールラインを形成することが好ましい。第1外周部材と第2外周部との間、又は外周部同士の間には、所望の気密性を有するシールラインが容易且つ確実に形成されるからである。
【0014】
さらにまた、互いに重なり合う2つのセパレータ間には、電極の面方向に沿って冷却媒体を供給する冷却媒体流路と、積層方向に貫通して前記冷却媒体を通流させる冷却媒体連通孔とが設けられるとともに、前記2つのセパレータ間に介装される発熱体を介して、前記冷却媒体流路と前記冷却媒体連通孔とを連結するシールラインが形成されることが好ましい。2つのセパレータ間には、所望の液密性を有するシールラインが容易且つ確実に形成されるからである。
【0015】
また、発熱体は、導電性部材で構成されるとともに、一方のセパレータの電極反応部に一部を接触させて前記一方のセパレータと電気的に接続されることが好ましく、さらに、前記発熱体は、電解質・電極構造体に一部を接触させて前記電解質・電極構造体と電気的に接続されることが好ましい。発熱体は、セル運転時の電圧を監視するためのセル電圧端子として利用することが可能になるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、セパレータの外周部と電解質・電極構造体の外周部、又は、一対のセパレータの外周部同士が、発熱体を介して溶融されることにより一体化される。このため、発熱体の形状を選択するだけで、所望のシールラインを容易且つ確実に形成することができる。これにより、簡単且つコンパクトな構成で、所望のシール性を確保するとともに、燃料電池全体の小型化を図ることが可能になる。しかも、燃料電池が溶着により一体化されるため、前記燃料電池の取り扱い作業性が有効に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10の要部分解斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池10が積層された状態の、図1中、II−II線断面説明図である。
【0018】
図1に示すように、燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12をアノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とで挟持して構成される。アノード側複合セパレータ14及びカソード側複合セパレータ16は、導電性の電極反応部と、後述する樹脂製の第1外周部(第1樹脂枠部材50及び第2樹脂枠部材59)との複合体で構成される。この導電性の電極反応部として、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板が使用されるが、これに限定されるものではなく、例えば、カーボン材等、種々の導電性材料が使用可能である。
【0019】
燃料電池10の長辺方向(図1中、矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔18aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔20bとが設けられる。
【0020】
燃料電池10の長辺方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔20aと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔18bとが設けられる。
【0021】
燃料電池10の上端縁部には、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔22a、22aが設けられるとともに、前記燃料電池10の下端縁部には、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔22b、22bが設けられる。
【0022】
電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜24と、前記固体高分子電解質膜24を挟持するアノード側電極26及びカソード側電極28とを備える。
【0023】
図2に示すように、アノード側電極26及びカソード側電極28は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層30a、30bと、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層30a、30bの表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層32a、32bとを有する。電極触媒層32a、32bは、固体高分子電解質膜24の両面に形成される。
【0024】
カソード側電極28の外周部には、図1及び図2に示すように、樹脂枠(樹脂製の第2外周部)34が設けられる。この樹脂枠34は、熱可塑性樹脂(エラストマと含む)で構成されており、ガス拡散層30bの先端部分に含浸部位34aが設けられる(図2参照)。樹脂枠34は、接着部位36を介して固体高分子電解質膜24に接着される。
【0025】
図3に示すように、アノード側複合セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、燃料ガス入口連通孔20aと燃料ガス出口連通孔20bとに連通する燃料ガス流路40が形成される。この燃料ガス流路40は、例えば、矢印B方向に延在する複数の溝部により構成される。
【0026】
図1に示すように、アノード側複合セパレータ14の面14bには、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとに連通する冷却媒体流路42が形成される。この冷却媒体流路42は、矢印C方向に延在する複数の溝部により構成される。
【0027】
カソード側複合セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、矢印B方向に延在する複数の溝部からなる酸化剤ガス流路44が設けられる。この酸化剤ガス流路44は、酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス出口連通孔18bとに連通する。
【0028】
図1〜図4に示すように、アノード側複合セパレータ14の面14a、14bには、導電性の電極反応部である燃料ガス流路40の周囲を覆って、第1樹脂枠部材(樹脂製の第1外周部)50が射出成形等により一体化される。第1樹脂枠部材50としては、例えば、PEEK(ポリエーテル−テルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶プラスチック)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)とPS(ポリスチレン)のアロイ等が用いられる。
【0029】
図2に示すように、第1樹脂枠部材50の両面には、第1及び第2導電体(発熱体)52、54がアノード側複合セパレータ14の成形時に一体的に設けられる。第1及び第2導電体52、54は、例えば、銅箔をスクリーン印刷することにより設けられる。
【0030】
図3に示すように、第1導電体52は、燃料ガス入口連通孔20aと燃料ガス出口連通孔20bとを燃料ガス流路40に連結するシールラインを形成する。この第1導電体52には、酸化剤ガス入口連通孔18aと燃料ガス出口連通孔20bとの間、及び燃料ガス入口連通孔20aと酸化剤ガス出口連通孔18bとの間に位置し、アノード側複合セパレータ14の矢印B方向両端部に延在する通電部56a、56bが一体的に設けられる。
【0031】
図1に示すように、第2導電体54は、冷却媒体入口連通孔22aと冷却媒体出口連通孔22bとを冷却媒体流路42に連結するシールラインを形成する。この第2導電体54には、第1導電体52と同様に、アノード側複合セパレータ14の矢印B方向両端部に延在する通電部58a、58bが一体的に設けられる。
【0032】
図1に示すように、カソード側複合セパレータ16の面16aには、導電性の電極反応部である酸化剤ガス流路44の周囲を覆って、第2樹脂枠部材(樹脂製の第1外周部)59が一体化される。第2樹脂枠部材59には、第3導電体(発熱体)60が一体成形される。この第3導電体60は、酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス出口連通孔18bとを酸化剤ガス流路44に連結するシールラインを形成する。
【0033】
第3導電体60には、酸化剤ガス入口連通孔18aと燃料ガス出口連通孔20bとの間、及び燃料ガス入口連通孔20aと酸化剤ガス出口連通孔18bとの間に位置し、カソード側複合セパレータ16の矢印B方向両端部に延在する通電部62a、62bが一体的に設けられる。この通電部62bには、酸化剤ガス流路44側に突出して導通部64が一体成形される。
【0034】
図4に示すように、カソード側複合セパレータ16が電解質膜・電極構造体12に積層される際、導通部64は、前記電解質膜・電極構造体12を構成するカソード側電極28に、より具体的には、ガス拡散層30bに直接接触している。すなわち、通電部62bは、カソード側電極28に一部を接触させて電気的に接続されることにより、後述するように、セル電圧端子を構成する。
【0035】
なお、第1〜第3導電体52、54及び60は、銅箔をスクリーン印刷することにより設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、銅をスパッタリングして薄層66aを形成することにより第1〜第3導電体52、54及び60を構成してもよい。図6に示すように、複数本の銅製細線66bによって第1〜第3導電体52、54及び60を構成してもよく、さらに、図7に示すように、カーボン製フェルト材66cによって前記第1〜第3導電体52、54及び60を構成してもよい。
【0036】
次に、このように構成される燃料電池10を組み立てる作業について、説明する。
【0037】
先ず、電解質膜・電極構造体12を挟んで、アノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とが配設されることにより、燃料電池10が積層される。この燃料電池10は、複数積層されてユニット70が得られ、このユニット70は、例えば、図8に示す加熱装置80に配置される。加熱装置80は、電源部82を備えており、この電源部82の一方のケーブル84aが、各燃料電池10の通電部56a、58a及び62aに接続されるとともに、他方のケーブル84bが、前記燃料電池10の通電部56b、58b及び62bに接続される。
【0038】
そこで、ユニット70には、積層方向(矢印方向)に所定の面圧が付与されるとともに、電源部82が駆動されて第1〜第3導電体52、54及び60に通電される。このため、第1〜第3導電体52、54及び60は、通電によって発熱する。
【0039】
第1導電体52は、電解質膜・電極構造体12を構成する樹脂枠34に接触しており、この樹脂枠34及び第1樹脂枠部材50が前記第1導電体52に沿って溶融する。さらに、通電が停止されることによって、第1導電体52を覆って樹脂枠34及び第1樹脂枠部材50が溶着し、電解質膜・電極構造体12とアノード側複合セパレータ14の面14aとが密着する。その際、樹脂枠34と第1樹脂枠部材50との間には、第1導電体52の形状に沿って燃料ガス入口連通孔20a及び燃料ガス出口連通孔20bと燃料ガス流路40とを連結するシールラインが形成される。
【0040】
一方、第3導電体60は、電解質膜・電極構造体12を構成する樹脂枠34の他方の面に接触している。従って、第3導電体60が発熱することによって、樹脂枠34及び第2樹脂枠部材59は、前記第3導電体60の形状に沿って溶融し、電解質膜・電極構造体12とカソード側複合セパレータ16の面16aとが溶着する。その際、樹脂枠34と第2樹脂枠部材59との間には、第3導電体60の形状に沿って酸化剤ガス入口連通孔18a及び酸化剤ガス出口連通孔18bと酸化剤ガス流路44とを連結するシールラインが形成される。
【0041】
さらに、各燃料電池10を構成するアノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とは、第2導電体54が発熱することによって第1及び第2樹脂枠部材50、59が溶融して溶着される。このため、各燃料電池10同士は、アノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とが溶着されて一体化されるとともに、これらの間には、第2導電体54の形状に沿って冷却媒体入口連通孔22a及び冷却媒体出口連通孔22bと冷却媒体流路42とを連結するシールラインが形成される。
【0042】
これにより、所定数の燃料電池10が積層されたユニット70は、加熱装置80により互いに溶着して一体化される。従って、燃料電池10の組み立て作業性が一挙に向上し、生産性が向上するとともに、前記燃料電池10の取り扱い作業性が良好になるという効果がある。
【0043】
なお、上記の加熱装置80に代えて、例えば、図9に示す高周波誘導加熱装置90を用いてもよい。この高周波誘導加熱装置90は、コイル92を備えており、前記コイル92の内方にユニット70が配置された状態で、前記コイル92に高周波電流が供給される。このため、第1〜第3導電体52、54及び60が高周波誘導加熱され、上記の加熱装置80と同様に、各燃料電池10及び前記燃料電池10同士が溶着されて一体化される。
【0044】
次に、上記の燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0045】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔18aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔20aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔22aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0046】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔18aからカソード側複合セパレータ16の酸化剤ガス流路44に導入され、矢印B方向に移動して電解質膜・電極構造体12のカソード側電極28に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔20aからアノード側複合セパレータ14の燃料ガス流路40に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路40に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極26に供給される。
【0047】
従って、各電解質膜・電極構造体12では、カソード側電極28に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極26に供給される燃料ガスとが、電極触媒層32b、32a内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0048】
次いで、カソード側電極28に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード側電極26に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。
【0049】
また、冷却媒体入口連通孔22aに供給された冷却媒体は、アノード側複合セパレータ14の冷却媒体流路42に導入された後、矢印C方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体12を冷却した後、冷却媒体出口連通孔22bから排出される。
【0050】
この場合、第1の実施形態では、アノード側複合セパレータ14を構成する第1樹脂枠部材50の両面には、第1及び第2導電体52、54が設けられるとともに、カソード側複合セパレータ16を構成する第2樹脂枠部材59の一方の面には、第3導電体60が設けられている。そして、電解質膜・電極構造体12を挟んで、アノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とを積層した状態で、加熱装置80又は高周波誘導加熱装置90を介して第1〜第3導電体52、54及び60が発熱される。
【0051】
これによって、樹脂枠34と第1及び第2樹脂枠部材50、59とは、第1〜第3導電体52、54及び60の形状に沿って溶融されるため、電解質膜・電極構造体12の両面には、アノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とが溶着して一体化される。しかも、第1導電体52は、燃料ガス入口連通孔20a及び燃料ガス出口連通孔20bと燃料ガス流路40とを連結するシールラインを形成する一方、第3導電体60は、酸化剤ガス入口連通孔18a及び酸化剤ガス出口連通孔18bと酸化剤ガス流路44とを連通するシールラインを形成する。
【0052】
従って、電解質膜・電極構造体12とアノード側複合セパレータ14及びカソード側複合セパレータ16との間には、薄肉状のシール部材(例えば、ガスケット)を配設する必要がない。これにより、第1の実施形態では、簡単な作業で、燃料ガス及び酸化剤ガスの所望のシールラインを容易且つ確実に形成することができるという効果が得られる。
【0053】
さらに、複数の燃料電池10を積層したユニット70に対して、上記の溶融加熱処理が施される。このため、各燃料電池10間、すなわち、アノード側複合セパレータ14とカソード側複合セパレータ16とは、第2導電体54の発熱作用下に一体化されるとともに、これらの間には、冷却媒体入口連通孔22a及び冷却媒体出口連通孔22bと冷却媒体流路42とを連結するシールラインが形成される。
【0054】
これにより、簡単且つコンパクトな構成で、所望のシール性を確保するとともに、燃料電池10及び燃料電池スタック全体の小型化を容易に図ることが可能になる。
【0055】
さらにまた、カソード側複合セパレータ16では、第3導電体60が導通部64を備えている。この導通部64は、図4に示すように、電解質膜・電極構造体12を構成するカソード側電極28に直接接触して前記カソード側電極28に電気的に接続されている。従って、導通部64に一体化される通電部62bは、セル電圧端子として機能する。すなわち、通電部62bには、図示しないセル電圧検出器が接続され、例えば、セル電圧モニタによって各燃料電池10の電位を検出することができる。
【0056】
なお、第1の実施形態では、アノード側複合セパレータ14及びカソード側複合セパレータ16を構成する金属プレート部分の外方に突出して第1及び第2樹脂枠部材50、59が成形されており、この第1及び第2樹脂枠部材50、59にのみ(金属プレート部分以外)酸化剤ガス入口連通孔18a、酸化剤ガス出口連通孔18b、燃料ガス入口連通孔20a、燃料ガス出口連通孔20b、冷却媒体入口連通孔22a及び冷却媒体出口連通孔22bが形成されているが、これに限定されるものではない。
【0057】
例えば、アノード側複合セパレータ14及びカソード側複合セパレータ16を構成する導電性プレート部分に酸化剤ガス入口連通孔18a、酸化剤ガス出口連通孔18b、燃料ガス入口連通孔20a、燃料ガス出口連通孔20b、冷却媒体入口連通孔22a及び冷却媒体出口連通孔22bが形成されるとともに、これらを囲繞して前記導電性プレート部分に第1及び第2樹脂枠部材50、59を成形してもよい。
【0058】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池100の要部分解斜視図であり、図11は、前記燃料電池100の一部拡大平面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3〜第6の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0059】
燃料電池100は、電解質膜・電極構造体102をアノード側複合セパレータ104及びカソード側複合セパレータ106により挟持して構成される。アノード側複合セパレータ104では、第1導電体52の通電部56a、56bと、第2導電体54の導電部58a、58bとが、積層方向(矢印A方向)に対して矢印C方向に離間して設けられる。カソード側複合セパレータ106では、第3導電体60の通電部62a、62bが、積層方向に対して第1及び第2導電体52、54の通電部56a、58a間及び通電部56b、58b間に対応して設けられる。
【0060】
カソード側複合セパレータ106の矢印B方向両端部には、第2導電体54の通電部58a、58bの位置に対応して切り欠き部108a、108bが形成される。電解質膜・電極構造体102の矢印B方向両端部には、それぞれ通電部56a、58a及び62aと、通電部56b、58b及び62bを外部に露呈させるための切り欠き部110a、110bが形成される。
【0061】
このように構成される第2の実施形態では、複数の燃料電池100が積層されてユニットが構成される際、第1及び第3導電体52、60の通電部56a、62a及び56b、62bは、電解質膜・電極構造体102の切り欠き部110a、110bを介して前記電解質膜・電極構造体102の両側から外部に露呈する。さらに、第2導電体54の通電部58a、58bは、切り欠き部110a、110bとカソード側複合セパレータ106の切り欠き部108a、108bとを介して外部に露呈する(図11参照)。
【0062】
これにより、通電部56a、56b、58a、58b及び62a、62bを介して、第1〜第3導電体52、54及び60に対する通電処理が、一層容易且つ確実に遂行されるという効果が得られる。
【0063】
図12は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池120が積層された状態の要部拡大断面図である。
【0064】
燃料電池120は、電解質膜・電極構造体122を挟持するアノード側複合セパレータ124と、カソード側複合セパレータ16とを備える。電解質膜・電極構造体122は、アノード側電極26の表面積がカソード側電極28の表面積よりも小さく設定されるとともに、前記アノード側電極26の外周部及び前記カソード側電極28の外周部にそれぞれ樹脂枠126a、126bを設ける。樹脂枠126a、126bは、接着部位36a、36bを介して固体高分子電解質膜24の両面に接着される。
【0065】
図13は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池130が積層された状態の要部拡大断面図である。
【0066】
燃料電池130は、電解質膜・電極構造体132を挟持するアノード側複合セパレータ134及びカソード側複合セパレータ16を備える。電解質膜・電極構造体132では、第3の実施形態と同様に、アノード側電極26及びカソード側電極28に接着部位36a、36bを介して樹脂枠136a、136bが設けられる。カソード側電極28を構成するガス拡散層30bの先端部分には、金属に樹脂が含浸された含浸部位34aが設けられる。
【0067】
このように構成される第3及び第4の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
図14は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池140の要部分解斜視説明図であり、図15は、前記燃料電池140の、図14中、XV−XV線断面図である。
【0069】
燃料電池140は、電解質膜・電極構造体12を挟持するアノード側複合セパレータ144及びカソード側複合セパレータ146を備える。アノード側複合セパレータ144に設けられる第2導電体54は、通電部58bとは反対側に、すなわち、冷却媒体流路42側に突出する通電部148を設ける。この通電部148は、アノード側複合セパレータ144の金属部位150に接触しており、通電部58bは、セル電圧端子として利用される(図15参照)。従って、第5の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
なお、第1〜第5の実施形態では、アノード側複合セパレータ14、104、124、134及び144と、カソード側複合セパレータ16、106及び146とに、第1〜第3導電体52、54及び60が設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、電解質膜・電極構造体12、102、122及び132を構成する樹脂枠34の一方の面に第1導電体52を、あるいは、前記樹脂枠34の両方の面に第1及び第3導電体52、60を、それぞれ設けてもよい。
【0071】
図16は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池160の要部分解斜視説明図であり、図17は、前記燃料電池160の、図16中、XVII−XVII線断面図である。
【0072】
燃料電池160は、電解質膜・電極構造体162を挟持するアノード側複合セパレータ164及びカソード側複合セパレータ166を備える。電解質膜・電極構造体162は、固体高分子電解質膜24と略同一表面積に設定されるカソード側電極28と、前記カソード側電極28よりも小さな表面積に設定されるアノード側電極26とを備える。
【0073】
アノード側複合セパレータ164は、燃料ガス入口連通孔20a及び燃料ガス出口連通孔20bに近接して複数の供給孔部168a及び排出孔部168bを設ける。アノード側複合セパレータ164は、電解質膜・電極構造体162に向かう一方の面に第1導電体を設けることがなく、他方の面に第3導電体54を設ける。
【0074】
カソード側複合セパレータ166に設けられる第3導電体60は、アノード側複合セパレータ164を構成する第1樹脂枠部材50に直接接触している。この第3導電体60が発熱することによって、第1樹脂枠部材50と第2樹脂枠部材59とが一体化し、且つ電解質膜・電極構造体162を挟んでカソード側電極28側に酸化剤ガス用のシールラインが形成される。
【0075】
これにより、第6の実施形態では、アノード側複合セパレータ164とカソード側複合セパレータ166とに設けられた第1樹脂枠部材50と第2樹脂枠部材59とは、第3導電体60の発熱作用下に溶融して一体化される。このため、所望のシールラインを容易且つ確実に形成することができる等、第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解概略斜視図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成するアノード側複合セパレータの正面説明図である。
【図4】前記燃料電池の、図1中、IV−IV線断面図である。
【図5】銅製スパッタにより導電体を構成する際の説明図である。
【図6】銅製細線により前記導電体を構成する際の説明図である。
【図7】カーボン製フェルト材により前記導電体を構成する際の説明図である。
【図8】加熱装置の概略説明図である。
【図9】高周波誘導加熱装置の概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図11】前記燃料電池の一部拡大平面説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池が積層された状態の要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池が積層された状態の要部拡大断面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図15】前記燃料電池の、図14中、XV−XV線断面図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図17】前記燃料電池の、図16中、XVII−XVII線断面図である。
【図18】特許文献1の単電池の一部断面説明図である。
【符号の説明】
【0077】
10、100、120、130、140、160…燃料電池
12、102、122、132、162…電解質膜・電極構造体
14、104、124、134、144、164…アノード側複合セパレータ
16、106、146、166…カソード側複合セパレータ
18a…酸化剤ガス入口連通孔 18b…酸化剤ガス出口連通孔
20a…燃料ガス入口連通孔 20b…燃料ガス出口連通孔
22a…冷却媒体入口連通孔 22b…冷却媒体出口連通孔
24…固体高分子電解質膜 26…アノード側電極
28…カソード側電極 30a、30b…ガス拡散層
32a、32b…電極触媒層
34、126a、126b、136a、136b…樹脂枠
40…燃料ガス流路 42…冷却媒体流路
44…酸化剤ガス流路 50、59…樹脂枠部材
52、54、60…導電体
56a、56b、58a、58b、62a、62b、148…通電部
64…導通部 80…加熱装置
90…高周波誘導加熱装置
108a、108b、110a、110b…切り欠き部
150…金属部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極が電解質の両側に設けられた電解質・電極構造体と、セパレータとを積層する燃料電池であって、
前記セパレータは、導電性の電極反応部と、
前記電極反応部の周囲を覆って設けられる樹脂製の第1外周部と、
を備えるとともに、
前記電解質・電極構造体は、前記電極の周囲を覆って樹脂製の第2外周部を設け、
前記第1外周部と前記第2外周部との間に介装される発熱体を介して、前記第1外周部と前記第2外周部とを溶融により一体化することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
一対の電極が電解質の両側に設けられた電解質・電極構造体と、セパレータとを積層する燃料電池であって、
前記セパレータは、導電性の電極反応部と、
前記電極反応部の周囲を覆って設けられる樹脂製の外周部と、
を備えるとともに、
前記電解質・電極構造体を挟んで対向する一対のセパレータは、それぞれの外周部の間に介装される発熱体を介して、前記外周部同士を溶融により一体化することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記セパレータは、前記電極の面方向に沿って所望の反応ガスを供給する反応ガス流路と、
積層方向に貫通して前記反応ガスを通流させる反応ガス連通孔と、
を設け、
前記発熱体は、前記反応ガス流路と前記反応ガス連通孔とを連結するシールラインを形成することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池において、互いに重なり合う2つのセパレータ間には、前記電極の面方向に沿って冷却媒体を供給する冷却媒体流路と、
積層方向に貫通して前記冷却媒体を通流させる冷却媒体連通孔と、
が設けられるとともに、
前記2つのセパレータ間に介装される発熱体を介して、前記冷却媒体流路と前記冷却媒体連通孔とを連結するシールラインを形成することを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記発熱体は、導電性部材で構成されるとともに、
一方のセパレータの電極反応部に一部を接触させて前記一方のセパレータと電気的に接続されることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記発熱体は、導電性部材で構成されるとともに、
前記電解質・電極構造体に一部を接触させて前記電解質・電極構造体と電気的に接続されることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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