説明

燃料電池

【課題】押圧装置を構成する板体同士の傾きを許容しつつ面方向への位置ずれを抑制し、セル積層体へ良好に圧縮荷重を付与することが可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】セル積層体20の積層方向の外側に配置されたエンドプレート12と、セル積層体20とエンドプレート12との間に設けられてセル積層体20への圧縮荷重を調整するスプリングモジュール23とを設ける。アッパプレート41とロアプレート42との間にコイルスプリング43を配置させてスプリングモジュール23を構成する。ロアプレート42に円弧状のガイド部51aを有するガイド棒51を設け、ガイド棒51のガイド部51aをアッパプレート41の摺動駒53に形成された摺動孔54に摺動可能に挿通し、ガイド部51aの円弧の中心点Oを中心としてロアプレート42に対してアッパプレート41を揺動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セルを積層させたセル積層体を有する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とした燃料電池自動車等が注目されている。
【0003】
このような燃料電池は、通常、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電するセルを所要数積層したセル積層体と、このセル積層体の積層方向の外側に配置されるとともに荷重調整ネジで調整された圧縮荷重をセル積層体に与えるエンドプレートとを備えた燃料電池スタックとして構成されている。
【0004】
そして、この燃料電池では、セル積層体への圧縮荷重の均一化及び圧縮荷重の変動の低減のため、プレート間に複数のスプリングを配置したスプリングモジュールをセル積層体とエンドプレートとの間に介在させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−183358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記スプリングモジュールでは、スプリングが軸方向以外にも変形することより、プレート同士の傾きを許容することができるが、これらプレート同士の面方向への相対的な位置ずれが生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、押圧装置を構成する板体同士の傾きを許容しつつ面方向への位置ずれを抑制し、セル積層体へ良好に圧縮荷重を付与することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、複数のセルが積層されてなるセル積層体と、該セル積層体の積層方向の外側に配置されたエンドプレートと、前記セル積層体と前記エンドプレートとの間に設けられて前記セル積層体への圧縮荷重を調整する押圧装置とを備えた燃料電池であって、前記押圧装置は、一対の板体と、これら板体間に配置されて弾性力によって前記板体同士を互いに離間させる弾性部材とを備え、一方の板体に円弧状のガイド部を有するガイド部材が設けられ、該ガイド部材のガイド部が他方の板体に摺動可能とされている。
【0008】
かかる構成とすることにより、板体同士の面方向への相対的な位置ずれを規制しつつ、一方の板体に対して他方の板体を揺動可能し、板体同士の傾きを許容することができる。これにより、押圧装置では、板体同士の傾きを許容しつつ面方向への位置ずれを抑制し、弾性部材による弾性力を円滑に発揮させることができ、セル積層体へ良好に圧縮荷重を付与することができる。
【0009】
また、前記ガイド部材が複数設けられ、これらガイド部材の前記ガイド部が同一円周上に配置されていても良い。
【0010】
この構成によれば、同一円周上に配置された複数のガイド部の摺動方向に沿って一方の板体に対して他方の板体を揺動可能とすることができる。
【0011】
さらに、前記ガイド部材が複数設けられ、これらガイド部材の前記ガイド部が同一球面上に配置されていても良い。
【0012】
この構成によれば、同一球面上に配置された複数のガイド部の摺動方向に沿って一方の板体に対して他方の板体を揺動可能とすることができる。
【0013】
そして、前記ガイド部の円弧の中心点が前記押圧装置と前記セル積層体との境界部分に配置されていても良い。
【0014】
この構成によれば、押圧装置とセル積層体との境界部分の中心点を中心として互いの板体を揺動可能とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の燃料電池によれば、押圧装置を構成する板体同士の傾きを許容しつつ面方向への位置ずれを抑制し、セル積層体へ良好に圧縮荷重を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る燃料電池の第1実施形態を図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、燃料電池10の一部を示す断面図である。この燃料電池10は、燃料電池自動車の車載発電システムや船舶、航空機、電車あるいは歩行ロボット等のあらゆる移動体用の発電システム、さらには、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システム等に適用可能であるが、具体的には自動車用となっている。
【0018】
燃料電池10は、燃料電池スタック11と、この燃料電池スタック11の外側を覆う合成樹脂等の絶縁材料からなる図示しないスタックケースとを有している。燃料電池スタック11は、一対の矩形状のエンドプレート12(一方は図示略)を、互いの外縁部同士をテンションプレート13で連結して外側部分が構成されており、これらエンドプレート12及びテンションプレート13は例えばジュラルミン等で形成されている。
【0019】
また、燃料電池スタック11は、エンドプレート12同士の間に燃料ガス及び酸化ガスの供給を受けて発電する平面視矩形状のセル21を所要数積層してなるセル積層部22を有している。そして、一方のエンドプレート12とセル積層部22との間には、エンドプレート12側から順に、スプリングモジュール(押圧装置)23、絶縁プレート24、ターミナルプレート25及びカバープレート26が配置されている。なお、カバープレート26は省略することも可能である。
【0020】
また、図示はしないが他方のエンドプレート12とセル積層部22との間には、エンドプレート12側から順に、絶縁プレート24、ターミナルプレート25及びカバープレート26が配置されている。そして、これらセル積層部22、絶縁プレート24、ターミナルプレート25及びカバープレート26からセル積層体20が構成されている。
【0021】
スプリングモジュール23が設けられた側のエンドプレート12は、その略中央部にメネジ31が形成されており、このメネジ31には、芋ネジからなるアジャストスクリュ32が螺合され、その先端部がスプリングモジュール23に当接されている。ここで、アジャストスクリュ32には、後端側に六角ボルト等の工具を嵌合させる工具嵌合部33が形成されており、アジャストスクリュ32は、この工具嵌合部33に嵌合する工具を介して回転させられることで、その軸線方向に沿って移動して、セル積層体20への荷重を調整する。
【0022】
スプリングモジュール23は、エンドプレート12側のアッパプレート(板体)41と、セル積層体20側のロアプレート(板体)42とを有し、これらアッパプレート41とロアプレート42との間に、複数のコイルスプリング(弾性部材)43が配設されている。アッパプレート41及びロアプレート42は、例えば、アルミニウムなどの比重の小さい金属材料から形成されており、アッパプレート41に、荷重調整ネジ32が当接される。
【0023】
ロアプレート42には、円弧状に湾曲したガイド部51aを有する複数のガイド棒(ガイド部材)51が立設されている。これらガイド棒51は、耐衝撃性に優れた鉄系材料から形成されたもので、スプリングモジュール23とセル積層体20との境界における中心点Oを中心とした半球面上に配置されている。
【0024】
また、アッパプレート41には、一部がロアプレート42側に開口する複数の収容凹部52がエンドプレート12側に形成されており、これら収容凹部52には、摺動駒53が摺動可能に収容され、エンドプレート12側へ出没可能とされている。これら摺動駒53には、円弧状の摺動孔54が形成されており、この摺動孔54には、ガイド棒51のガイド部51aが摺動可能に挿通されている。
【0025】
そして、上記燃料電池10では、荷重調整ネジ32によってセル積層体20へ付与される圧縮荷重が、複数のコイルスプリング43を有するスプリングモジュール23によって面方向に均一化(調整)され、また、発電時の膨張または収縮による圧縮荷重の変動が吸収される。
【0026】
このとき、図2に示すように、アッパプレート41の摺動駒53は、摺動孔54にガイド棒51が挿入されて位置が規制されるので、ロアプレート42に対するアッパプレート41の近接により、収容凹部52から摺動しながら突出する。これにより、荷重調整ネジ32による圧縮荷重が円滑にセル積層体20に付与される。
【0027】
ここで、上記のスプリングモジュール23は、ガイド棒51がロアプレート42に立設され、このガイド棒51の中心点Oを中心とした半球面に沿う円弧状のガイド部51aが、アッパプレート41の摺動駒53の摺動孔54に摺動可能に挿通されているので、図3に示すように、ロアプレート42に対してアッパプレート41が、中心点Oを中心として揺動可能とされる。
【0028】
したがって、スプリングモジュール23は、アッパプレート41に対するロアプレート42の傾斜を許容しつつ、荷重調整ネジ32による圧縮荷重をセル積層体20へ付与させることができる。
【0029】
また、このとき、アッパプレート41の摺動駒53の摺動孔54にロアプレート42のガイド棒51が挿入されているので、アッパプレート41とロアプレート42との横方向への相対移動が規制され、スプリングモジュール23では、コイルスプリング43による弾性力を円滑に発揮させることができる。
【0030】
しかも、摺動駒53がアッパプレート41に対して出没することにより、ロアプレート42とアッパプレート41との間の距離が変化しても、アッパプレート41の揺動中心を常に中心点Oに維持することができる。
【0031】
つまり、本実施形態に係る燃料電池10によれば、アッパプレート41及びロアプレート42の相対的な傾きを許容しつつ、これらアッパプレート41及びロアプレート42の面方向への位置ずれを抑制し、セル積層体20へ良好に圧縮荷重を付与することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、複数のガイド棒51のガイド部51aを同一球面上に配置したが、同一円周上に配置しても良く、このようにすれば、ロアプレート42に対してアッパプレート41を、中心点Oを中心とした円周に沿って揺動可能とすることができる。また、ガイド棒51としては、その一部を円弧状に湾曲させてガイド部51aとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係る燃料電池の一部の断面図である。
【図2】燃料電池に設けられたスプリングモジュールの動きを説明する断面図である。
【図3】燃料電池に設けられたスプリングモジュールの動きを説明する断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10…燃料電池、12…エンドプレート、20…セル積層体、21…セル、23…スプリングモジュール(押圧装置)、41…アッパプレート(板体)、42…ロアプレート(板体)、43…コイルスプリング(弾性部材)、51…ガイド棒(ガイド部材)、51a…ガイド部、O…中心点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが積層されてなるセル積層体と、該セル積層体の積層方向の外側に配置されたエンドプレートと、前記セル積層体と前記エンドプレートとの間に設けられて前記セル積層体への圧縮荷重を調整する押圧装置とを備えた燃料電池であって、
前記押圧装置は、一対の板体と、これら板体間に配置されて弾性力によって前記板体同士を互いに離間させる弾性部材とを備え、一方の板体に円弧状のガイド部を有するガイド部材が設けられ、該ガイド部材のガイド部が他方の板体に摺動可能とされている燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記ガイド部材が複数設けられ、これらガイド部材の前記ガイド部が同一円周上に配置されている燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記ガイド部材が複数設けられ、これらガイド部材の前記ガイド部が同一球面上に配置されている燃料電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記ガイド部の円弧の中心点が前記押圧装置と前記セル積層体との境界部分に配置されている燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−41367(P2008−41367A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212440(P2006−212440)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】