燃料電池
【課題】白金の使用量当たりの発電性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】触媒層100を有する燃料電池10であって、前記触媒層100中の白金120の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、前記触媒層100のガス拡散抵抗が40s/m以下である、燃料電池。
【解決手段】触媒層100を有する燃料電池10であって、前記触媒層100中の白金120の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、前記触媒層100のガス拡散抵抗が40s/m以下である、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の触媒層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、電気化学反応を促進するための触媒として白金が使われている。白金は高価であるため、使用量を少なくすることが好ましい。従来は、触媒層にスルホン酸基導入無定形炭素を含有させることにより白金の使用量を少なくする技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−265844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、触媒層におけるアイオノマーの酸素透過性については十分に考慮されていなかった。そのため、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることは不十分であった。
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決し、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
触媒層を有する燃料電池であって、前記触媒層中の白金の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、前記触媒層の拡散抵抗が40s/m以下である、燃料電池。
この適用例によれば、触媒層の拡散抵抗が小さいので、触媒層中の白金(触媒)に多くの反応ガスを供給できる。そのため、白金の使用量が少なくても、燃料電池の発電性能を維持できる。すなわち、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池の他、燃料電池の触媒層の構造等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】燃料電池の触媒層近傍の構造を模式的に示す説明図である。
【図2】触媒層の触媒粒子表面を拡大して示す説明図である。
【図3】サンプル1について、反応ガスの拡散抵抗を示す説明図である。
【図4】白金の使用量を少なくする方法の例を示す説明図である。
【図5】触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の温度依存性を示す説明図である。
【図6】触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の相対湿度依存性を示す説明図である。
【図7】サンプル3とサンプル4の触媒層の構造を比較して示す説明図である。
【図8】白金の量と平均粒径と触媒層拡散抵抗の関係示す説明図である。
【図9】貴金属粒子の粒径を変えたときの発電性能を比較して示す説明図である。
【図10】別のサンプル5〜7の触媒層の構造を比較して示す説明図である。
【図11】貴金属粒子のCO吸着表面積を示す説明図である。
【図12】白金表面積と拡散抵抗の関係を示す説明図である。
【図13】サンプル5〜7の発電性能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、燃料電池の触媒層近傍の構造を模式的に示す説明図である。燃料電池10は、触媒層100と、電解質膜200と、ガス拡散層300と、を備える。触媒層100は、触媒粒子110と電解質140と、を備える。触媒粒子110は、貴金属粒子120と、触媒担持カーボン130と、を備える。貴金属粒子120は、触媒として機能する。本実施例では、貴金属粒子120の材料として、白金を用いている。なお、貴金属粒子120の材料として、白金と他の貴金属との合金を用いることも可能である。触媒担持カーボン130としては、例えば、カーボンブラックを用いることが可能である。
【0011】
電解質140として、例えばフッ素系樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーや、非フッ素系樹脂であるのBPSH(ポリアリーレンエーテルスルホン酸共重合体)などを有するプロトン伝導性のイオン交換樹脂などを用いることが可能である。パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーやBPSHは、スルホン酸基を備えている。すなわち、これらの樹脂は、イオン性を有しており、「アイオノマー(イオン+ポリマー)」とも呼ばれる。以下、電解質140を「アイオノマー140」とも呼ぶ。後述するように、アイオノマー140の拡散抵抗が40s/m以下のものを選択することが好ましい。
【0012】
電解質膜200として、アイオノマー140を用いて形成した膜を用いることが可能である。この場合、電解質膜200の成分と、アイオノマー140の成分とは、ほぼ同じであってもよい。また、電解質膜200のイオン交換等量とアイオノマー140のイオン交換等量とを異ならせてもよい。また、アイオノマー140以外の、他のプロトン伝導性のイオン交換樹脂などを用いて膜を形成してもよい。
【0013】
ガス拡散層300としては、例えば、不織布により形成されたカーボンクロスやカーボンペーパーを用いることが可能である。また、ガス拡散層300として、樹脂製や金属製の多孔体を用いることも可能である。
【0014】
図2は、触媒層の触媒粒子表面を拡大して示す説明図である。図2(a)は、従来の触媒粒子110の表面を示している。触媒担持カーボン130の表面には、貴金属粒子120が付着している。触媒粒子110の周りには、アイオノマー140が存在している。図2(b)は、図2(a)に示す貴金属粒子120の量を1/4にしたときの触媒粒子110の表面を示している。ここでは、貴金属粒子120の大きさを変えずに、貴金属粒子の数を少なくしている。
【0015】
図2(b)においても図2(a)に示すのと同様に、触媒担持カーボン130の表面に貴金属粒子120が付着している。しかし、図2(a)に比べると、図2(b)では、触媒担持カーボン130への貴金属粒子120の付着は、疎らである。触媒粒子110の周りには、アイオノマー140が存在しているが、アイオノマー140を透過した酸素の多くは、貴金属粒子120に供給されない。すなわち、アイオノマー140には、貴金属粒子120に隣接し、透過した酸素が貴金属粒子120に供給されるアイオノマーと、貴金属粒子120に隣接せず、透過した酸素が貴金属粒子120に供給されないアイオノマーとが存在する。以下、透過させた酸素が貴金属粒子120に供給されないアイオノマーを「酸素非供給アイオノマー150」と呼ぶ。一方、透過させた酸素が貴金属粒子120に供給されるアイオノマーを「酸素供給アイオノマー145」と呼ぶ。破線160は、酸素非供給アイオノマー150の表面積を示している。なお、酸素供給アイオノマー145と、酸素非供給アイオノマー150とは、貴金属粒子120に酸素を供給するために用いられているか、用いられていないか、により区別されているだけである。したがって、両者の反応ガスの拡散抵抗、あるいは酸素透過度は同じである。
【0016】
図3は、サンプル1について、反応ガスの拡散抵抗を示す説明図である。本実施例では、低酸素濃度環境下での限界電流密度を測定することにより、拡散抵抗を取得した。反応ガスの拡散抵抗は、触媒層100における拡散抵抗(以下「触媒層拡散抵抗」と呼ぶ。)と、ガス拡散層300における拡散抵抗(以下、「GDL拡散抵抗」と呼ぶ。)と、に分けられる。ここで、GDL拡散抵抗は、反応ガスがガス拡散層300(図1参照)を流れるときの抵抗であり、触媒粒子110への触媒粒子110に含まれる白金の量(以下「Pt目付け量」と呼ぶ。)に依存しない。一方、触媒層拡散抵抗は、反応ガスが触媒層100を流れるときの抵抗であり、Pt目付け量に依存している。具体的には、Pt目付け量が0.2mg/cm2以上の場合、触媒層拡散抵抗の値は、およそ40s/mで、ほぼ一定であるが、Pt目付け量が0.2mg/cm2以下になると、触媒層拡散抵抗が大きくなる。
【0017】
触媒層拡散抵抗が大きくなる理由として、以下の理由が考えられる。触媒粒子110は、酸素供給アイオノマー145及び酸素非供給アイオノマー150により覆われている。ここで、Pt目付け量が0.2mg/cm2以上あれば、触媒粒子110の周りは、ほとんどが、酸素供給アイオノマー145である。低酸素濃度環境下では、触媒粒子110に供給される酸素はほぼ消費される。したがって、Pt目付け量にかかわらず、反応量は変わらないため、一定の触媒層拡散抵抗となる。一方、Pt目付け量が0.2mg/cm2以下になると、酸素供給アイオノマー145の割合が減少し、酸素非供給アイオノマー150の割合が増大する。この場合、低酸素濃度環境下で酸素を供給した場合、酸素非供給アイオノマー150を通過した酸素は、消費されず、酸素供給アイオノマー145を通過した酸素のみが消費される。その結果、供給酸素量に比して燃料電池に流れる電流は小さくなる。その結果、触媒層拡散抵抗が大きく測定される。
【0018】
図4は、白金の使用量を少なくする方法の例を示す説明図である。図4(a)は、白金の量を少なくする前の状態を示している。図4(b)は、貴金属粒子120の数を少なくすることにより白金の使用量を少なくしている。図4(c)は、貴金属粒子120の大きさを小さくすることにより白金の使用量を少なくしている。図4(d)は、触媒層100の厚さを薄くすることにより白金の使用量を少なくしている。
【0019】
図4(b)に示す、貴金属粒子120の数を少なくする方法では、酸素供給アイオノマー145の割合が減り、酸素非供給アイオノマー150の割合が増加する。その結果、貴金属粒子120への酸素供給量の総量が少なくなる。その結果、燃料電池10の発電性能が低下する。したがって、白金の使用量を少なくする前と同程度の発電性能を維持しようとすれば、酸素供給アイオノマー145における貴金属粒子120への酸素透過度を向上することが好ましい。すなわち、酸素供給アイオノマー145の拡散抵抗を低減し、貴金属粒子120に供給される酸素の量を増大させることが好ましい。
【0020】
図4(c)に示す、貴金属粒子120の大きさを小さくする方法では、貴金属粒子の数が変わらなければ、触媒粒子110の周りの、酸素供給アイオノマー145の割合と酸素非供給アイオノマー150の割合は変わらない。したがって、貴金属粒子120への酸素供給量は変わらない。しかし、貴金属粒子120の大きさを小さくすれば、貴金属粒子120の表面積(触媒面積)は小さくなる。その結果、燃料電池の発電効率は低下する。ここで、貴金属粒子120の重さ(使用量)は貴金属粒子120の半径の3乗で効き、貴金属粒子120の表面積は、貴金属粒子120の半径の2乗で効く。したがって、貴金属粒子120の数を少し多くすれば、白金の使用量を少なくしながら、貴金属粒子120の表面積の総量を変わらなくすることが可能である。貴金属粒子120の表面積の総量が変わらなければ、燃料電池の発電量を維持することが可能である。すなわち、白金を高分散担持することにより、燃料電池の発電量を維持することは可能である。
【0021】
図4(d)に示す触媒層100の厚さを薄くする方法では、個々の触媒粒子110の周りの、酸素供給アイオノマー145の割合と酸素非供給アイオノマー150の割合は変わらない。したがって、触媒粒子110一個当たりの反応量は変わらないが、貴金属粒子120の数が少なくなっている分、全体として発電効率が低下する。この場合、酸素供給アイオノマー145における貴金属粒子120への酸素透過性を向上させ、1個の触媒粒子110の反応量を増大させることが好ましい。
【0022】
白金の使用量、すなわちPt目付け量を少なくしても、酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗の値を小さく、具体的には、40s/m以下となるようにすれば、燃料電池の発電効率を維持することが可能である。酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗が40s/mであるようにするには、高酸素透過度を有するアイオノマーを選択する方法が可能である。この場合、貴金属粒子120への酸素供給量を増大させることが可能となる。その結果、Pt目付け量を0.2mg/cm2以下としても、燃料電池の発電性能を維持することが可能となる。
【0023】
また、白金の使用量、すなわちPt目付け量を少なくする場合に、貴金属粒子120の粒径を小さくしてもよい。Pt目付け量を0.2mg/cm2以下としても、貴金属粒子120の表面積を維持し、燃料電池の発電性能を維持することが可能となる。なお、Pt目付け量をあまりに小さくすると、白金の溶出やシンダリングという問題が発生し易くなるので、Pt目付け量は、0.01mg/cm2以上にすることが好ましい。
【0024】
アイオノマー140の酸素透過度を、マイクロPt電極を用いたポテンシャルステップ法を用いて測定した。触媒層拡散抵抗の値が40s/mとなるアイオノマー140の酸素透過度は、温度50℃、相対湿度50%の条件で、おおよそ2×10-12molcm-1s-1であった。したがって、2×10-12molcm-1s-1以上の酸素透過度を有するアイオノマー140を選択すれば、酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗の値を40s/mとすることが可能である。
【0025】
図5は、触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の温度依存性を示す説明図である。この図は、ECS Transaction, 16(2),881-889(2008)より引用したものである。ここでは、大気圧、相対湿度90%の条件でフッ素系の材料であるNafion117(デュポン社の登録商標)と非フッ素系の材料であるBPSH−50(50mol%のスルホン酸基を有するポリアリーレンエーテルスルホン酸共重合体)と、を比較している。Nafion117の方が、酸素透過度が大きくなっている。
【0026】
図6は、触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の相対湿度依存性を示す説明図である。この図も、ECS Transaction, 16(2),881-889(2008)より引用したものである。図5と同様に、Nafion117とBPSH−50との酸素透過度を比較している。なお、大気圧、温度50℃の条件である。この条件では、Nafion117の方が、酸素透過度が大きくなっている。また、BPSH−50は、湿度の依存性が大きいのに対し、Nafion117は、湿度の依存性が小さい。しかし、Nafion117の酸素透過度は、相対湿度50%でも約1.2molcm-1s-1であり、触媒層拡散抵抗を40s/mに下げる酸素透過度2×10-12molcm-1s-1には、やや不足していた。したがって、Nafion117やBPSH−50よりも酸素透過度の大きなアイオノマーを選択することが好ましい。
【0027】
図7は、サンプル3とサンプル4の触媒層の構造を比較して示す説明図である。サンプル3とサンプル4のPt目付け量は、いずれも0.1mg/cm2であり、同量である。サンプル3の貴金属粒子120の平均粒径は、約3nmであり、サンプル4の貴金属粒子120の平均粒径は約6nmであった。なお、平均粒径は、X線回折(XRD)のデータを解析することにより求めることが可能である。Pt目付け量が同じであれば、貴金属粒子120の平均粒径が小さいサンプル3の方が、貴金属粒子120の平均粒径が大きいサンプル4よりも、貴金属粒子120の数が多い。また、サンプル3における貴金属粒子120の表面積の総量は、サンプル4における貴金属粒子120の表面積の総量よりも大きい。
【0028】
図8は、白金の量と、平均粒径と、触媒層拡散抵抗の関係示す説明図である。貴金属粒子120の平均粒径が3nmであるサンプル3の触媒層拡散抵抗は40s/mであり、貴金属粒子120の平均粒径が6nmであるサンプル4の触媒層拡散抵抗は105s/mであった。このことからわかるように、同じアイオノマーを用い、同じPt目付け量であっても、貴金属粒子120の粒径を小さくすることにより、触媒層拡散抵抗を小さくすることが可能である。例えば、サンプル3のように、貴金属粒子120の粒径を3nmとすれば、触媒層拡散抵抗を40s/mにすることが可能である。貴金属粒子120の粒径を小さくすることは、重さが同じであれば、粒の数が増えることになり、高分散が可能となる。その結果、酸素供給アイオノマー145の割合が増え、触媒層拡散抵抗をが小さくなると考えられる。
【0029】
図9は、貴金属粒子の粒径を変えたときの発電性能を比較して示す説明図である。サンプル3の方が、サンプル4よりも、同じ電流量を流したときの起電圧が大きく、同じ起電圧では、多くの電流を流すことが可能である。すなわち、同じ白金量であっても貴金属粒子120(白金)の粒径を小さくすることにより、燃料電池10の発電効率を向上させることが可能となる。
【0030】
図10は、別のサンプル5〜7の触媒層の構造を比較して示す説明図である。サンプル5における貴金属粒子120のXRD法による平均粒径は、約2nmであった。サンプル6、7における貴金属粒子120のXRD法による平均粒径はサンプル5の平均粒径よりも大きかった。
【0031】
図11は、貴金属粒子のCO吸着表面積を示す説明図である。CO吸着法は、白金の表面積を測定するために、一般に用いられる方法である。平均粒径の小さいサンプル5の表面積151m2/g−Ptは、平均粒径が大きいサンプル6、7の表面積124m2/g−P、85m2/g−Pよりも大きくなっている。同じ量の酸素が貴金属粒子120に供給された場合、表面積の大きなサンプル5の方が、表面積が小さなサンプル6、7よりも発電効率を上げることが可能である。
【0032】
図12は、白金表面積と拡散抵抗の関係を示す説明図である。サンプル5は、触媒層による拡散抵抗が約40s/mであるが、サンプル6、7は、触媒層による拡散抵抗が約60s/mである。このように、貴金属粒子120の粒径を小さくして白金表面積を大きくした方が触媒層による拡散抵抗を小さくすることが可能となる。
【0033】
図13は、サンプル5〜7の発電性能を示す説明図である。湿度100%の条件下、1cm2の評価セルに純水素と空気とを過剰に供給し、起電力と電流密度を測定した。このときの背圧は150kPaであった。表面積の大きい、サンプル5、6、7の順に、同じ電流量を流したときの起電圧が大きく、また、同じ起電圧では、多くの電流を流すことが可能であった。
【0034】
以上、本実施例によれば、触媒層100中の白金量を0.01〜0.2mg/cm2とすることにより、白金の使用量を減らすことが可能となる。この場合に、貴金属触媒120への酸素供給を妨げる拡散抵抗の主原因は、貴金属粒子120の表面を覆っているアイオノマーの酸素透抵抗である。したがって、酸素透過度の大きなアイオノマーを用いること、すなわち、触媒層拡散抵抗の小さなアイオノマー、例えば拡散抵抗が40s/m以下のアイオノマーを用いることにより、燃料電池の発電効率を向上させることが可能となる。すなわち、白金の使用量が少なくても、白金に多くの反応ガスを供給できるので、燃料電池10の発電性能を維持できる。その結果、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることが可能となる。なお、酸素透過度の大きなアイオノマーを用いれば、粒径が大きな貴金属粒子120を用いることが可能となるので、触媒の溶出やシンダリングなどを起こり難くする効果がある。
【0035】
また、同重量の白金を用いる場合には、粒子径を小さくすることにより、白金の表面積を大きくすることが可能となり、燃料電池の発電効率を向上させることが可能となる。なお、この場合、酸素供給アイオノマー145の割合が増え、酸素非透過アイオノマー150の割合が少なくなるので、触媒層100の拡散抵抗が小さくなる。
【0036】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
10…燃料電池
100…触媒層
110…触媒粒子
120…貴金属粒子
130…触媒担持カーボン
140…電解質(アイオノマー)
145…酸素供給アイオノマー
150…酸素非供給アイオノマー
160…破線
200…電解質膜
300…ガス拡散層
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の触媒層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、電気化学反応を促進するための触媒として白金が使われている。白金は高価であるため、使用量を少なくすることが好ましい。従来は、触媒層にスルホン酸基導入無定形炭素を含有させることにより白金の使用量を少なくする技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−265844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、触媒層におけるアイオノマーの酸素透過性については十分に考慮されていなかった。そのため、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることは不十分であった。
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決し、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
触媒層を有する燃料電池であって、前記触媒層中の白金の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、前記触媒層の拡散抵抗が40s/m以下である、燃料電池。
この適用例によれば、触媒層の拡散抵抗が小さいので、触媒層中の白金(触媒)に多くの反応ガスを供給できる。そのため、白金の使用量が少なくても、燃料電池の発電性能を維持できる。すなわち、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池の他、燃料電池の触媒層の構造等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】燃料電池の触媒層近傍の構造を模式的に示す説明図である。
【図2】触媒層の触媒粒子表面を拡大して示す説明図である。
【図3】サンプル1について、反応ガスの拡散抵抗を示す説明図である。
【図4】白金の使用量を少なくする方法の例を示す説明図である。
【図5】触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の温度依存性を示す説明図である。
【図6】触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の相対湿度依存性を示す説明図である。
【図7】サンプル3とサンプル4の触媒層の構造を比較して示す説明図である。
【図8】白金の量と平均粒径と触媒層拡散抵抗の関係示す説明図である。
【図9】貴金属粒子の粒径を変えたときの発電性能を比較して示す説明図である。
【図10】別のサンプル5〜7の触媒層の構造を比較して示す説明図である。
【図11】貴金属粒子のCO吸着表面積を示す説明図である。
【図12】白金表面積と拡散抵抗の関係を示す説明図である。
【図13】サンプル5〜7の発電性能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、燃料電池の触媒層近傍の構造を模式的に示す説明図である。燃料電池10は、触媒層100と、電解質膜200と、ガス拡散層300と、を備える。触媒層100は、触媒粒子110と電解質140と、を備える。触媒粒子110は、貴金属粒子120と、触媒担持カーボン130と、を備える。貴金属粒子120は、触媒として機能する。本実施例では、貴金属粒子120の材料として、白金を用いている。なお、貴金属粒子120の材料として、白金と他の貴金属との合金を用いることも可能である。触媒担持カーボン130としては、例えば、カーボンブラックを用いることが可能である。
【0011】
電解質140として、例えばフッ素系樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーや、非フッ素系樹脂であるのBPSH(ポリアリーレンエーテルスルホン酸共重合体)などを有するプロトン伝導性のイオン交換樹脂などを用いることが可能である。パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーやBPSHは、スルホン酸基を備えている。すなわち、これらの樹脂は、イオン性を有しており、「アイオノマー(イオン+ポリマー)」とも呼ばれる。以下、電解質140を「アイオノマー140」とも呼ぶ。後述するように、アイオノマー140の拡散抵抗が40s/m以下のものを選択することが好ましい。
【0012】
電解質膜200として、アイオノマー140を用いて形成した膜を用いることが可能である。この場合、電解質膜200の成分と、アイオノマー140の成分とは、ほぼ同じであってもよい。また、電解質膜200のイオン交換等量とアイオノマー140のイオン交換等量とを異ならせてもよい。また、アイオノマー140以外の、他のプロトン伝導性のイオン交換樹脂などを用いて膜を形成してもよい。
【0013】
ガス拡散層300としては、例えば、不織布により形成されたカーボンクロスやカーボンペーパーを用いることが可能である。また、ガス拡散層300として、樹脂製や金属製の多孔体を用いることも可能である。
【0014】
図2は、触媒層の触媒粒子表面を拡大して示す説明図である。図2(a)は、従来の触媒粒子110の表面を示している。触媒担持カーボン130の表面には、貴金属粒子120が付着している。触媒粒子110の周りには、アイオノマー140が存在している。図2(b)は、図2(a)に示す貴金属粒子120の量を1/4にしたときの触媒粒子110の表面を示している。ここでは、貴金属粒子120の大きさを変えずに、貴金属粒子の数を少なくしている。
【0015】
図2(b)においても図2(a)に示すのと同様に、触媒担持カーボン130の表面に貴金属粒子120が付着している。しかし、図2(a)に比べると、図2(b)では、触媒担持カーボン130への貴金属粒子120の付着は、疎らである。触媒粒子110の周りには、アイオノマー140が存在しているが、アイオノマー140を透過した酸素の多くは、貴金属粒子120に供給されない。すなわち、アイオノマー140には、貴金属粒子120に隣接し、透過した酸素が貴金属粒子120に供給されるアイオノマーと、貴金属粒子120に隣接せず、透過した酸素が貴金属粒子120に供給されないアイオノマーとが存在する。以下、透過させた酸素が貴金属粒子120に供給されないアイオノマーを「酸素非供給アイオノマー150」と呼ぶ。一方、透過させた酸素が貴金属粒子120に供給されるアイオノマーを「酸素供給アイオノマー145」と呼ぶ。破線160は、酸素非供給アイオノマー150の表面積を示している。なお、酸素供給アイオノマー145と、酸素非供給アイオノマー150とは、貴金属粒子120に酸素を供給するために用いられているか、用いられていないか、により区別されているだけである。したがって、両者の反応ガスの拡散抵抗、あるいは酸素透過度は同じである。
【0016】
図3は、サンプル1について、反応ガスの拡散抵抗を示す説明図である。本実施例では、低酸素濃度環境下での限界電流密度を測定することにより、拡散抵抗を取得した。反応ガスの拡散抵抗は、触媒層100における拡散抵抗(以下「触媒層拡散抵抗」と呼ぶ。)と、ガス拡散層300における拡散抵抗(以下、「GDL拡散抵抗」と呼ぶ。)と、に分けられる。ここで、GDL拡散抵抗は、反応ガスがガス拡散層300(図1参照)を流れるときの抵抗であり、触媒粒子110への触媒粒子110に含まれる白金の量(以下「Pt目付け量」と呼ぶ。)に依存しない。一方、触媒層拡散抵抗は、反応ガスが触媒層100を流れるときの抵抗であり、Pt目付け量に依存している。具体的には、Pt目付け量が0.2mg/cm2以上の場合、触媒層拡散抵抗の値は、およそ40s/mで、ほぼ一定であるが、Pt目付け量が0.2mg/cm2以下になると、触媒層拡散抵抗が大きくなる。
【0017】
触媒層拡散抵抗が大きくなる理由として、以下の理由が考えられる。触媒粒子110は、酸素供給アイオノマー145及び酸素非供給アイオノマー150により覆われている。ここで、Pt目付け量が0.2mg/cm2以上あれば、触媒粒子110の周りは、ほとんどが、酸素供給アイオノマー145である。低酸素濃度環境下では、触媒粒子110に供給される酸素はほぼ消費される。したがって、Pt目付け量にかかわらず、反応量は変わらないため、一定の触媒層拡散抵抗となる。一方、Pt目付け量が0.2mg/cm2以下になると、酸素供給アイオノマー145の割合が減少し、酸素非供給アイオノマー150の割合が増大する。この場合、低酸素濃度環境下で酸素を供給した場合、酸素非供給アイオノマー150を通過した酸素は、消費されず、酸素供給アイオノマー145を通過した酸素のみが消費される。その結果、供給酸素量に比して燃料電池に流れる電流は小さくなる。その結果、触媒層拡散抵抗が大きく測定される。
【0018】
図4は、白金の使用量を少なくする方法の例を示す説明図である。図4(a)は、白金の量を少なくする前の状態を示している。図4(b)は、貴金属粒子120の数を少なくすることにより白金の使用量を少なくしている。図4(c)は、貴金属粒子120の大きさを小さくすることにより白金の使用量を少なくしている。図4(d)は、触媒層100の厚さを薄くすることにより白金の使用量を少なくしている。
【0019】
図4(b)に示す、貴金属粒子120の数を少なくする方法では、酸素供給アイオノマー145の割合が減り、酸素非供給アイオノマー150の割合が増加する。その結果、貴金属粒子120への酸素供給量の総量が少なくなる。その結果、燃料電池10の発電性能が低下する。したがって、白金の使用量を少なくする前と同程度の発電性能を維持しようとすれば、酸素供給アイオノマー145における貴金属粒子120への酸素透過度を向上することが好ましい。すなわち、酸素供給アイオノマー145の拡散抵抗を低減し、貴金属粒子120に供給される酸素の量を増大させることが好ましい。
【0020】
図4(c)に示す、貴金属粒子120の大きさを小さくする方法では、貴金属粒子の数が変わらなければ、触媒粒子110の周りの、酸素供給アイオノマー145の割合と酸素非供給アイオノマー150の割合は変わらない。したがって、貴金属粒子120への酸素供給量は変わらない。しかし、貴金属粒子120の大きさを小さくすれば、貴金属粒子120の表面積(触媒面積)は小さくなる。その結果、燃料電池の発電効率は低下する。ここで、貴金属粒子120の重さ(使用量)は貴金属粒子120の半径の3乗で効き、貴金属粒子120の表面積は、貴金属粒子120の半径の2乗で効く。したがって、貴金属粒子120の数を少し多くすれば、白金の使用量を少なくしながら、貴金属粒子120の表面積の総量を変わらなくすることが可能である。貴金属粒子120の表面積の総量が変わらなければ、燃料電池の発電量を維持することが可能である。すなわち、白金を高分散担持することにより、燃料電池の発電量を維持することは可能である。
【0021】
図4(d)に示す触媒層100の厚さを薄くする方法では、個々の触媒粒子110の周りの、酸素供給アイオノマー145の割合と酸素非供給アイオノマー150の割合は変わらない。したがって、触媒粒子110一個当たりの反応量は変わらないが、貴金属粒子120の数が少なくなっている分、全体として発電効率が低下する。この場合、酸素供給アイオノマー145における貴金属粒子120への酸素透過性を向上させ、1個の触媒粒子110の反応量を増大させることが好ましい。
【0022】
白金の使用量、すなわちPt目付け量を少なくしても、酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗の値を小さく、具体的には、40s/m以下となるようにすれば、燃料電池の発電効率を維持することが可能である。酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗が40s/mであるようにするには、高酸素透過度を有するアイオノマーを選択する方法が可能である。この場合、貴金属粒子120への酸素供給量を増大させることが可能となる。その結果、Pt目付け量を0.2mg/cm2以下としても、燃料電池の発電性能を維持することが可能となる。
【0023】
また、白金の使用量、すなわちPt目付け量を少なくする場合に、貴金属粒子120の粒径を小さくしてもよい。Pt目付け量を0.2mg/cm2以下としても、貴金属粒子120の表面積を維持し、燃料電池の発電性能を維持することが可能となる。なお、Pt目付け量をあまりに小さくすると、白金の溶出やシンダリングという問題が発生し易くなるので、Pt目付け量は、0.01mg/cm2以上にすることが好ましい。
【0024】
アイオノマー140の酸素透過度を、マイクロPt電極を用いたポテンシャルステップ法を用いて測定した。触媒層拡散抵抗の値が40s/mとなるアイオノマー140の酸素透過度は、温度50℃、相対湿度50%の条件で、おおよそ2×10-12molcm-1s-1であった。したがって、2×10-12molcm-1s-1以上の酸素透過度を有するアイオノマー140を選択すれば、酸素供給アイオノマー145の触媒層拡散抵抗の値を40s/mとすることが可能である。
【0025】
図5は、触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の温度依存性を示す説明図である。この図は、ECS Transaction, 16(2),881-889(2008)より引用したものである。ここでは、大気圧、相対湿度90%の条件でフッ素系の材料であるNafion117(デュポン社の登録商標)と非フッ素系の材料であるBPSH−50(50mol%のスルホン酸基を有するポリアリーレンエーテルスルホン酸共重合体)と、を比較している。Nafion117の方が、酸素透過度が大きくなっている。
【0026】
図6は、触媒層に用いるアイオノマーの酸素透過度の相対湿度依存性を示す説明図である。この図も、ECS Transaction, 16(2),881-889(2008)より引用したものである。図5と同様に、Nafion117とBPSH−50との酸素透過度を比較している。なお、大気圧、温度50℃の条件である。この条件では、Nafion117の方が、酸素透過度が大きくなっている。また、BPSH−50は、湿度の依存性が大きいのに対し、Nafion117は、湿度の依存性が小さい。しかし、Nafion117の酸素透過度は、相対湿度50%でも約1.2molcm-1s-1であり、触媒層拡散抵抗を40s/mに下げる酸素透過度2×10-12molcm-1s-1には、やや不足していた。したがって、Nafion117やBPSH−50よりも酸素透過度の大きなアイオノマーを選択することが好ましい。
【0027】
図7は、サンプル3とサンプル4の触媒層の構造を比較して示す説明図である。サンプル3とサンプル4のPt目付け量は、いずれも0.1mg/cm2であり、同量である。サンプル3の貴金属粒子120の平均粒径は、約3nmであり、サンプル4の貴金属粒子120の平均粒径は約6nmであった。なお、平均粒径は、X線回折(XRD)のデータを解析することにより求めることが可能である。Pt目付け量が同じであれば、貴金属粒子120の平均粒径が小さいサンプル3の方が、貴金属粒子120の平均粒径が大きいサンプル4よりも、貴金属粒子120の数が多い。また、サンプル3における貴金属粒子120の表面積の総量は、サンプル4における貴金属粒子120の表面積の総量よりも大きい。
【0028】
図8は、白金の量と、平均粒径と、触媒層拡散抵抗の関係示す説明図である。貴金属粒子120の平均粒径が3nmであるサンプル3の触媒層拡散抵抗は40s/mであり、貴金属粒子120の平均粒径が6nmであるサンプル4の触媒層拡散抵抗は105s/mであった。このことからわかるように、同じアイオノマーを用い、同じPt目付け量であっても、貴金属粒子120の粒径を小さくすることにより、触媒層拡散抵抗を小さくすることが可能である。例えば、サンプル3のように、貴金属粒子120の粒径を3nmとすれば、触媒層拡散抵抗を40s/mにすることが可能である。貴金属粒子120の粒径を小さくすることは、重さが同じであれば、粒の数が増えることになり、高分散が可能となる。その結果、酸素供給アイオノマー145の割合が増え、触媒層拡散抵抗をが小さくなると考えられる。
【0029】
図9は、貴金属粒子の粒径を変えたときの発電性能を比較して示す説明図である。サンプル3の方が、サンプル4よりも、同じ電流量を流したときの起電圧が大きく、同じ起電圧では、多くの電流を流すことが可能である。すなわち、同じ白金量であっても貴金属粒子120(白金)の粒径を小さくすることにより、燃料電池10の発電効率を向上させることが可能となる。
【0030】
図10は、別のサンプル5〜7の触媒層の構造を比較して示す説明図である。サンプル5における貴金属粒子120のXRD法による平均粒径は、約2nmであった。サンプル6、7における貴金属粒子120のXRD法による平均粒径はサンプル5の平均粒径よりも大きかった。
【0031】
図11は、貴金属粒子のCO吸着表面積を示す説明図である。CO吸着法は、白金の表面積を測定するために、一般に用いられる方法である。平均粒径の小さいサンプル5の表面積151m2/g−Ptは、平均粒径が大きいサンプル6、7の表面積124m2/g−P、85m2/g−Pよりも大きくなっている。同じ量の酸素が貴金属粒子120に供給された場合、表面積の大きなサンプル5の方が、表面積が小さなサンプル6、7よりも発電効率を上げることが可能である。
【0032】
図12は、白金表面積と拡散抵抗の関係を示す説明図である。サンプル5は、触媒層による拡散抵抗が約40s/mであるが、サンプル6、7は、触媒層による拡散抵抗が約60s/mである。このように、貴金属粒子120の粒径を小さくして白金表面積を大きくした方が触媒層による拡散抵抗を小さくすることが可能となる。
【0033】
図13は、サンプル5〜7の発電性能を示す説明図である。湿度100%の条件下、1cm2の評価セルに純水素と空気とを過剰に供給し、起電力と電流密度を測定した。このときの背圧は150kPaであった。表面積の大きい、サンプル5、6、7の順に、同じ電流量を流したときの起電圧が大きく、また、同じ起電圧では、多くの電流を流すことが可能であった。
【0034】
以上、本実施例によれば、触媒層100中の白金量を0.01〜0.2mg/cm2とすることにより、白金の使用量を減らすことが可能となる。この場合に、貴金属触媒120への酸素供給を妨げる拡散抵抗の主原因は、貴金属粒子120の表面を覆っているアイオノマーの酸素透抵抗である。したがって、酸素透過度の大きなアイオノマーを用いること、すなわち、触媒層拡散抵抗の小さなアイオノマー、例えば拡散抵抗が40s/m以下のアイオノマーを用いることにより、燃料電池の発電効率を向上させることが可能となる。すなわち、白金の使用量が少なくても、白金に多くの反応ガスを供給できるので、燃料電池10の発電性能を維持できる。その結果、白金の使用量当たりの発電性能を向上させることが可能となる。なお、酸素透過度の大きなアイオノマーを用いれば、粒径が大きな貴金属粒子120を用いることが可能となるので、触媒の溶出やシンダリングなどを起こり難くする効果がある。
【0035】
また、同重量の白金を用いる場合には、粒子径を小さくすることにより、白金の表面積を大きくすることが可能となり、燃料電池の発電効率を向上させることが可能となる。なお、この場合、酸素供給アイオノマー145の割合が増え、酸素非透過アイオノマー150の割合が少なくなるので、触媒層100の拡散抵抗が小さくなる。
【0036】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
10…燃料電池
100…触媒層
110…触媒粒子
120…貴金属粒子
130…触媒担持カーボン
140…電解質(アイオノマー)
145…酸素供給アイオノマー
150…酸素非供給アイオノマー
160…破線
200…電解質膜
300…ガス拡散層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層を有する燃料電池であって、
前記触媒層中の白金の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、
前記触媒層の拡散抵抗が40s/m以下である、
燃料電池。
【請求項1】
触媒層を有する燃料電池であって、
前記触媒層中の白金の量が前記触媒層の表面積1cm2当たり0.01〜0.2mgであり、
前記触媒層の拡散抵抗が40s/m以下である、
燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−251086(P2010−251086A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98647(P2009−98647)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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