説明

燃料電池

【課題】簡単な構成で、接着剤が発電部領域に進入することを抑制し、前記発電部領域からの生成水の排水性を確保して良好な発電性能を維持することを可能にする。
【解決手段】燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜46と、前記固体高分子電解質膜46を挟持するカソード側電極48及びアノード側電極50とを備える。固体高分子電解質膜46には、電極触媒層48b、50bと接着層54a、54bとが離間して設けられるとともに、前記電極触媒層48b、50bと前記接着層54a、54bとの間には、ガス拡散層48a、50a内に埋設されて隔壁層62a、62bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に、それぞれ触媒層及びガス拡散層が設けられる電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持した単位セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の単位セルを積層することにより、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、一方のセパレータの面内に、アノード側電極に対向して燃料ガスを流すための燃料ガス流路が設けられるとともに、他方のセパレータの面内に、カソード側電極に対向して酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路が設けられている。さらに、各燃料電池を構成し、互いに隣接するセパレータ間には、電極範囲内に冷却媒体を流すための冷却媒体流路が形成されている。
【0004】
ところで、アノード側電極及びカソード側電極は、それぞれ触媒層(電極触媒層)及びガス拡散層(多孔質カーボン)を備えており、電解質膜の両側に、それぞれ前記触媒層及び前記ガス拡散層が接合されて電解質膜・電極構造体が製造されている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている膜・電極構造体は、図10に示すように、固体高分子電解質膜1の一方の面に、この面を覆ってガス拡散電極層2が設けられるとともに、前記固体高分子電解質膜1の他方の面に、この面よりも表面積の小さなガス拡散電極層3が設けられている。
【0006】
ガス拡散電極層2、3は、固体高分子電解質膜1の両面に当接する触媒層4a、4bと、ガス拡散層5a、5bとを備えており、前記触媒層4a、4bは、互いに異なる寸法に設定されている。触媒層4aの外周側には、接着層6が設けられており、この接着層6を介してガス拡散電極層2と固体高分子電解質膜1とが一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−68323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の膜・電極構造体では、ガス拡散電極層2が、接着層6を介して、固体高分子電解質膜1に接着されている。このため、燃料電池の発電環境下では、接着層6が高温の生成水による影響下に曝されてしまう。従って、接着層6から生成水中に接着剤が溶出し易く、ガス拡散電極層2のセパレータの表面が接着剤に覆われてしまい、発電部領域の排水性が低下するという問題がある。さらに、発電部領域に水が滞留することにより、反応ガスの供給が確実になされず、発電性能が低下するという問題がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、接着剤が発電部領域に進入することを抑制し、前記発電部領域からの生成水の排水性を確保して良好な発電性能を維持することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電解質膜の両側に、それぞれ触媒層及びガス拡散層が設けられる電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層される燃料電池に関するものである。
【0011】
この燃料電池は、電解質膜には、触媒層が設けられる電極反応面と、前記電極反応面に隣接し、ガス拡散層が接着層により接合される接着面とが設けられるとともに、前記触媒層と前記接着層との間には、前記ガス拡散層内に埋設されて隔壁層が設けられている。
【0012】
また、この燃料電池は、セパレータには、反応ガスを電極面に沿って流通させる反応ガス流路と、前記反応ガス流路に連通するバッファ部とが設けられるとともに、接着層は、前記バッファ部に対向する一方、少なくとも反応ガス流路出口側の前記バッファ部に対向する前記接着層と触媒層との間に、隔壁層が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒層と接着層との間には、ガス拡散層内に埋設されて隔壁層が設けられるため、前記ガス拡散層の内部、電解質膜・電極構造体の表面又はセパレータの表面に、生成水を介して接着剤が溶出することを抑制することができる。従って、簡単な構成で、接着剤が発電部領域に進入することを抑制し、前記発電部領域からの生成水の排水性を確保して良好な発電性能を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面図である。
【図3】前記燃料電池を構成する第2セパレータの一方の正面の説明図である。
【図4】前記燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体の正面説明図である。
【図5】前記電解質膜・電極構造体の、図4中、V−V線断面説明図である。
【図6】前記電解質膜・電極構造体の製造方法の説明図である。
【図7】前記電解質膜・電極構造体の製造方法の説明図である。
【図8】前記電解質膜・電極構造体の製造方法の説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【図10】特許文献1に開示されている膜・電極構造体の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、矢印A方向(水平方向)に複数積層されて燃料電池スタック11を構成する。燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、前記電解質膜・電極構造体12を挟持する第1セパレータ14及び第2セパレータ16とを備える。
【0016】
第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成される。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。なお、第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、金属セパレータに代えて、例えば、カーボンセパレータを使用してもよい。
【0017】
図1に示すように、第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、縦長形状を有するとともに、長辺が重力方向(矢印C方向)に向かい且つ短辺が水平方向(矢印B方向)に向かう(水平方向の積層)ように構成される。なお、長辺が水平方向に向かい且つ短辺が重力方向に向かうように構成してもよく、また、セパレータ面が水平方向に向かう(鉛直方向の積層)ように構成してもよい。
【0018】
燃料電池10の長辺方向(矢印C方向)の上端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔18aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔20aとが設けられる。
【0019】
燃料電池10の長辺方向の下端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔20bと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔18bとが設けられる。
【0020】
燃料電池10の短辺方向(矢印B方向)の両端縁部上方には、矢印A方向に連通して、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体供給連通孔22aが対称位置に設けられる。燃料電池10の両端縁部下方には、矢印A方向に連通して、冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体排出連通孔22bが対称位置に設けられる。
【0021】
第1セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス供給連通孔18aと酸化剤ガス排出連通孔18bとを連通して鉛直方向に延在する酸化剤ガス流路24が形成される。酸化剤ガス流路24の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部26a及び出口バッファ部26bが設けられる。第1セパレータ14の面14b(面14aとは反対の面)には、後述する冷却媒体流路28の一部が構成される。
【0022】
図3に示すように、第2セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス供給連通孔20aと燃料ガス排出連通孔20bとを連通する燃料ガス流路30が鉛直方向に延在して形成される。燃料ガス流路30の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部32a及び出口バッファ部32bが設けられる。
【0023】
第2セパレータ16の面16bと第1セパレータ14の面14bとの間には、冷却媒体供給連通孔22a、22aと冷却媒体排出連通孔22b、22bとに連通する冷却媒体流路28が形成される(図1及び図3参照)。冷却媒体流路28の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部34a及び出口バッファ部34bが設けられる。
【0024】
第1セパレータ14の面14a、14bには、この第1セパレータ14の外周端縁部を周回して第1シール部材36が一体成形される。第2セパレータ16の面16a、16bには、この第2セパレータ16の外周端縁部を周回して第2シール部材38が一体成形される。第1シール部材36及び第2シール部材38としては、例えば、弾性を有するEPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0025】
図1に示すように、第1セパレータ14の面14aには、第1シール部材36を切り欠いて、酸化剤ガス供給連通孔18aと酸化剤ガス流路24とを連通する複数の連結通路40aが形成される。面14aには、第1シール部材36を切り欠いて、酸化剤ガス排出連通孔18bと酸化剤ガス流路24とを連通する複数の連結通路40bが形成される。
【0026】
図3に示すように、第2セパレータ16の面16aには、第2シール部材38を切り欠いて、燃料ガス供給連通孔20aと燃料ガス流路30とを連通する複数の連結通路42aが形成される。面16aには、第2シール部材38を切り欠いて、燃料ガス排出連通孔20bと燃料ガス流路30とを連通する複数の連結通路42bが形成される。
【0027】
図1に示すように、第2セパレータ16の面16bには、第2シール部材38を切り欠いて、一対の冷却媒体供給連通孔22a、22aと冷却媒体流路28とを連通する複数の連結通路44aが形成される。面16bには、第2シール部材38を切り欠いて、一対の冷却媒体排出連通孔22b、22bと冷却媒体流路28とを連通する複数の連結通路44bが形成される。
【0028】
図2に示すように、電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜46と、前記固体高分子電解質膜46を挟持するカソード側電極48及びアノード側電極50とを備える。
【0029】
カソード側電極48及びアノード側電極50は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層48a、50aと、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層48a、50aの表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層48b、50bとを有する。電極触媒層48b、50bは、固体高分子電解質膜46の両面に形成される。
【0030】
図4に示すように、固体高分子電解質膜46には、電極触媒層48b、50bが設けられる電極反応面52と、前記電極反応面52の下流側に隣接し、ガス拡散層48a、50aが接着層54a、54bにより接合される接着面56と、前記電極反応面52の上流側に隣接し、前記ガス拡散層48a、50aが接着層58a、58bにより接合される接着面60とが設けられる。
【0031】
電極反応面52は、発電面(発電部領域)に対応する流路長さH1にわたって設けられる。接着面56は、出口バッファ部26b、32bに対応する長さ寸法H2を有する一方、接着面60は、入口バッファ部26a、32aに対応する長さ寸法H3を有する。なお、接着面56、60は、バッファ部形状に対応しており、例えば、三角形状、台形状等の他、種々の異形状に設定されてもよい。
【0032】
図5に示すように、出口バッファ部26b、32bに対向する接着層54a、54bと、電極触媒層48b、50bとの間には、隔壁層62a、62bが設けられる。同様に、入口バッファ部26a、32aに対向する接着層58a、58bと、電極触媒層48b、50bとの間には、隔壁層64a、64bが設けられる(図4参照)。隔壁層64a、64bは、直線状の他、曲線状を有していてもよい。
【0033】
接着層54a、54b、58a及び58bは、例えば、フッ素系接着剤を用いることができる。隔壁層62a、62b、64a及び64bとしては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂や、可視光硬化樹脂等の光硬化樹脂が用いられる。隔壁層62a、62b、64a及び64bは、酸化剤ガス流路24の流路幅及び燃料ガス流路30の流路幅である幅寸法Lの全長にわたって延在している(図4参照)。
【0034】
次に、電解質膜・電極構造体12を製造する作業について、以下に説明する。
【0035】
先ず、図6に示すように、ガス拡散層48aの固体高分子電解質膜46に接合される面には、第1セパレータ14の出口バッファ部26bと入口バッファ部26aとに対向する位置に、接着層54a、58aを構成する接着剤が塗布される。
【0036】
さらに、各接着剤の内側端部に沿って、隔壁層62a、64aが形成される。隔壁層62a、64aは、例えば、熱硬化樹脂又は光硬化樹脂により形成される。熱硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が用いられ、この熱硬化樹脂は、ガス拡散層48aに塗布されるとともに、前記ガス拡散層48aの内部に充填される。一方、光硬化樹脂として、例えば、可視光硬化樹脂が用られる際には、この光硬化樹脂は、ガス拡散層48aに塗布されて前記ガス拡散層48a内に充填されるとともに、可視光の照射により重合される。
【0037】
同様に、ガス拡散層50aには、第2セパレータ16の出口バッファ部32b及び入口バッファ部32aに対向する位置に、接着層54b、58bを構成する接着剤が塗布される。そして、接着剤の内側端部に沿って、熱硬化樹脂又は光硬化樹脂が塗布される。
【0038】
次に、図7に示すように、固体高分子電解質膜46では、ガス拡散層48a側の面に、電極触媒層48bと、接着層54a、58aを構成する接着剤とが塗布される。電極触媒層48bの端部と接着剤の端部との間には、隙間Sが形成されており、この隙間Sは、隔壁層62a、64aの幅寸法と同一寸法に設定される。固体高分子電解質膜46のガス拡散層50aに向かう面には、同様に、電極触媒層50bと接着層54b、58bを構成する接着剤とが塗布される。
【0039】
固体高分子電解質膜46の両面に、それぞれガス拡散層48a、50aが重ねられ、ホットプレス処理が施されることにより、電解質膜・電極構造体12が製造される(図8参照)。接着剤として熱硬化樹脂が用いられている際には、ホットプレス処理時に前記熱硬化樹脂が硬化して互いに一体化され、接着層54a、58a及び54b、58bが形成される。一方、接着剤として光硬化樹脂が用いられる際には、ホットプレス処理により互いに接合されて一体化され、接着層54a、58a及び54b、58bが形成される。
【0040】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0041】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス供給連通孔18aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔20aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体供給連通孔22aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0042】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔18aから第1セパレータ14の酸化剤ガス流路24に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路24に沿って矢印C方向(重力方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のカソード側電極48に供給される。
【0043】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔20aから第2セパレータ16の燃料ガス流路30に供給される。燃料ガスは、図3に示すように、燃料ガス流路30に沿って重力方向(矢印C方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極50に供給される(図1及び図2参照)。
【0044】
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード側電極48に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極50に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0045】
次いで、電解質膜・電極構造体12のカソード側電極48に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極50に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。
【0046】
また、一対の冷却媒体供給連通孔22aに供給された冷却媒体は、図1に示すように、第1セパレータ14及び第2セパレータ16間の冷却媒体流路28に導入される。冷却媒体は、一旦矢印B方向(水平方向)に沿って流動した後、矢印C方向(重力方向)に移動して電解質膜・電極構造体12を冷却する。この冷却媒体は、矢印B方向両側に移動した後、一対の冷却媒体排出連通孔22bに排出される。
【0047】
この場合、第1の実施形態では、図1及び図4に示すように、電解質膜・電極構造体12において、酸化剤ガス流路24の下流端(下端)と出口バッファ部26bとの境界部位に対応して、隔壁層62aが設けられる一方、燃料ガス流路30の下流端(下端)と出口バッファ部32bとの境界部位に対応して、隔壁層62bが設けられている。
【0048】
その際、図5に示すように、固体高分子電解質膜46の一方の面には、電極触媒層48b、隔壁層62a及び接着層54aが、互いの端部同士を密着させて設けられている。同様に、固体高分子電解質膜46の他方の面には、電極触媒層50b、隔壁層62b及び接着層54bが互いの端部同士を密着させて設けられている。
【0049】
このため、燃料電池10の発電状況下において、特に、生成水が滞留し易い出口バッファ部26b、32bにおいて、接着層54a、54bからガス拡散層48a、50aの内部、電解質膜・電極構造体12の表面及び第1及び第2セパレータ14、16の表面に、生成水を介して接着剤が溶出することを抑制することができる。従って、簡単な構成で、接着剤が発電部領域(電極反応面52)に進入することを抑制し、前記発電部領域からの生成水の排水性を確保して良好な発電性能を維持することが可能になるという効果が得られる。
【0050】
また、酸化剤ガス流路24の入口バッファ部26a及び燃料ガス流路30の入口バッファ部32a側においても同様に、電解質膜・電極構造体12には、隔壁層64a、64bが設けられている。このため、接着層58a、58bから発電部領域に接着剤が溶出することを抑制することができ、良好な発電性能を確保することが可能になる。
【0051】
しかも、隔壁層62a、62bは、ガス拡散層48a、50a内に埋設されており、このガス拡散層48a、50aの表面に前記隔壁層62a、62bが設けられていない。これにより、電解質膜・電極構造体の表面状態に影響を与えることがない。
【0052】
その上、電極反応面52と接着面56とは、所定の距離Sだけ離間しており(図7参照)、この距離S内に隔壁層62a、62bが設けられている。従って、接着面56から電極反応面52内のガス拡散層48a、50aに接着剤が溶出することを、確実に阻止することが可能になる。
【0053】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体80の一部断面説明図である。
【0054】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池10を構成する電解質膜・電極構造体12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0055】
この第2の実施形態では、電解質膜・電極構造体80を構成する固体高分子電解質膜46の一方の面には、電極触媒層48bと接着層54aとが互いの端面を密着させて設けられるとともに、前記電極触媒層48bと前記接着層54aとの接合部に跨って隔壁層82aが設けられる。
【0056】
固体高分子電解質膜46の他方の面には、電極触媒層50bと接着層54bとが互いの端面を密着させて設けられるとともに、この接合部位に跨って隔壁層82bが設けられる。隔壁層82a、82bは、ガス拡散層48a、50aの内部に埋設され、このガス拡散層48a、50aの表面に露出することがない。
【0057】
このように構成される第2の実施形態では、隔壁層82a、82bが設けられることにより、接着層54a、54bから発電領部域に接着剤が溶出することを抑制することができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0058】
10…燃料電池 11…燃料電池スタック
12、80…電解質膜・電極構造体 14、16…セパレータ
18a…酸化剤ガス供給連通孔 18b…酸化剤ガス排出連通孔
20a…燃料ガス供給連通孔 20b…燃料ガス排出連通孔
22a…冷却媒体供給連通孔 22b…冷却媒体排出連通孔
24…酸化剤ガス流路 26a、32a、34a…入口バッファ部
26b、32b、34b…出口バッファ部 28…冷却媒体流路 30…燃料ガス流路 36、38…シール部材 46…固体高分子電解質膜 48…カソード側電極 48a、50a…ガス拡散層 48b、50b…電極触媒層 50…アノード側電極 52…電極反応面
54a、54b、58a、58b…接着層 56、60…接着面
62a、62b、64a、64b、82a,82b…隔壁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に、それぞれ触媒層及びガス拡散層が設けられる電解質膜・電極構造体と、セパレータとが積層される燃料電池であって、
前記電解質膜には、前記触媒層が設けられる電極反応面と、
前記電極反応面に隣接し、前記ガス拡散層が接着層により接合される接着面と、
が設けられるとともに、
前記触媒層と前記接着層との間には、前記ガス拡散層内に埋設されて隔壁層が設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記セパレータには、反応ガスを電極面に沿って流通させる反応ガス流路と、
前記反応ガス流路に連通するバッファ部と、
が設けられるとともに、
前記接着層は、前記バッファ部に対向する一方、少なくとも反応ガス流路出口側の前記バッファ部に対向する前記接着層と前記触媒層との間に、前記隔壁層が設けられることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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