説明

燃料電池

【課題】燃料電池において、電解質膜の薄膜化を抑制する。
【解決手段】燃料電池100は、膜電極接合体10と、膜電極接合体10のアノード側の表面に接合されたアノード側ガス拡散層20aと、膜電極接合体10のカソード側の表面において、膜電極接合体10を挟んでアノード側ガス拡散層20aと対向する領域であって、アノード側ガス拡散層20aが接合された領域よりも内側の領域に接合されたカソード側ガス拡散層20cと、膜電極接合体10とアノード側ガス拡散層20aとカソード側ガス拡散層20cとの積層体の外周部に形成されたガスケット30と、アノード側セパレータプレート40aと、カソード側セパレータプレート40cと、を備える。カソード側セパレータプレート40cは、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に凹部42を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、詳しくは、固体高分子型燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。そして、この燃料電池には、電解質膜として固体高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池がある。固体高分子型燃料電池では、一般に、電解質膜の両面にそれぞれ触媒電極層(アノード、カソード)を接合してなる膜電極接合体の各表面に、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等からなり、導電性およびガス拡散性を有するガス拡散層が接合される。そして、膜電極接合体とガス拡散層との積層体の外周部には、燃料電池の内部からのガスの漏洩を防止するためのガスケットが設けられ、これらは、一対のセパレータによって挟持されて、上記各層の積層方向に押圧力が加えられる。
【0003】
ところで、固体高分子型燃料電池では、電解質膜を介して、アノードとカソードとの間において、いわゆるクロスリークが生じることが知られている。そして、このクロスリークが生じると、水素と酸素とが反応して過酸化水素が生成され、この過酸化水素や、過酸化水素が分解するときに生じるヒドロキシルラジカルは、電解質膜を劣化させる。なお、固体高分子型燃料電池における、この過酸化水素等による電解質膜の劣化は、電解質膜とカソードとの界面における酸素濃度が発電時よりも高くなり、クロスリークが生じやすくなる開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)保持時に特に顕著である。
【0004】
そこで、固体高分子型燃料電池について、上述した開回路電圧保持時の過酸化水素等による電解質膜の劣化を抑制するための種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、膜電極接合体(電解質膜−電極接合体)において、アノードの面積をカソードの面積よりも大きくし、アノード側のガス拡散層とカソード側のガス拡散層との形成位置をずらすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−214101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、固体高分子型燃料電池の長期使用による電解質膜の薄膜化については考慮されていなかった。すなわち、上述した固体高分子型燃料電池では、長期間使用すると、アノードとカソードとの間でのガス差圧や電解質膜の膨潤・乾燥(収縮)等によって、電解質膜がクリープ変形して、電解質膜の膜厚が薄くなることが知られている。特に、電解質膜の外周部は、応力が加わりやすく、クリープ変形しやすい。また、上記積層体をセパレータによって挟持したときに、セパレータからガス拡散層を介して電解質膜に加わる押圧力と、セパレータからガスケットを介して電解質膜に加わる押圧力とを等しくすることは困難であるため、電解質膜の外周部は、ガス拡散層のエッジ部によって加わるせん断応力により、クリープ変形しやすい。これらのことから、電解質膜の外周部では、他の部位よりも電解質膜の膜厚が薄くなりやすい。そして、電解質膜の膜厚が薄くなると、上記クロスリークがより生じやすくなり、上述した過酸化水素等による電解質膜の劣化を加速させることとなる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池において、電解質膜の薄膜化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
燃料電池であって、
電解質膜の両面にそれぞれ触媒電極層を接合してなる膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の第1の表面に接合された第1のガス拡散層と、
前記膜電極接合体の前記第1の表面と反対側の第2の表面において、前記膜電極接合体を挟んで前記第1のガス拡散層と対向する領域であって、前記第1のガス拡散層が接合された領域よりも内側の領域に接合された第2のガス拡散層と、
前記膜電極接合体と前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との積層体の外周部に形成されたガスケットと、
前記積層体および前記ガスケットの前記第1のガス拡散層側に積層された第1のセパレータプレートと、
前記積層体および前記ガスケットの前記第2のガス拡散層側に積層された第2のセパレータプレートと、を備え、
前記第2のセパレータプレートは、前記第2のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備える、
燃料電池。
【0010】
適用例1の燃料電池では、上記第2のセパレータプレートが、上記第2のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備えるので、上記第2のセパレータプレートから上記第2のガス拡散層のエッジ部に加わる押圧力を緩和することができる。したがって、上記第2のガス拡散層のエッジ部によって電解質膜に加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜のクリープ変形を抑制し、電解質膜の薄膜化を抑制することができる。そして、燃料電池の長寿命化を図ることができる。
【0011】
なお、複数の膜電極接合体を積層して、燃料電池スタックを構成する場合には、第1のセパレータプレートと、第2のセパレータプレートとを一体化して、1つのセパレータとしてもよい。
【0012】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池であって、
前記第2のセパレータプレートにおける前記凹部は、前記燃料電池の外部から供給された反応ガスが流れる反応ガス流路と分離して形成されている、
燃料電池。
【0013】
適用例2の燃料電池では、燃料電池の外部から供給された反応ガスが、上記第2のセパレータプレートにおける凹部に直接的に流入することがないので、膜電極接合体において、上記第2のセパレータプレートにおける凹部と対向する部位での発電を抑制し、生成水の生成を抑制することができる。したがって、この部位において、生成水による電解質膜の膨潤(変形)を抑制することができる。この結果、電解質膜の薄膜化を抑制することができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または2記載の燃料電池であって、さらに、
前記第1のセパレータプレートは、前記第1のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備える、
燃料電池。
【0015】
適用例3の燃料電池では、上記第1のセパレータプレートが、上記第1のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備えるので、上記第1のセパレータプレートから上記第1のガス拡散層のエッジ部に加わる押圧力を緩和することができる。したがって、上記第1のガス拡散層のエッジ部によって電解質膜に加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜のクリープ変形を抑制し、電解質膜の薄膜化を抑制することができる。
【0016】
[適用例4]
請求項3記載の燃料電池であって、
前記第1のセパレータプレートにおける前記凹部は、前記燃料電池の外部から供給された反応ガスが流れる反応ガス流路と分離して形成されている、
燃料電池。
【0017】
適用例4の燃料電池では、燃料電池の外部から供給された反応ガスが、上記第1のセパレータプレートにおける凹部に直接的に流入することがないので、膜電極接合体において、上記第1のセパレータプレートにおける凹部と対向する部位での発電を抑制し、生成水の生成を抑制することができる。したがって、この部位において、生成水による電解質膜の膨潤(変形)を抑制することができる。この結果、電解質膜の薄膜化を抑制することができる。
【0018】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記電解質膜は、前記第1または第2の表面に沿った第1の方向についての膨張率が、前記第1または第2の表面に沿った方向であって、前記第1の方向と直交する第2の方向についての膨張率よりも大きい特性を有する材料からなり、
前記電解質膜は、矩形形状を有するとともに、前記矩形形状における短辺方向が、前記第1の方向となり、前記矩形形状における長辺方向が、前記第2の方向となるように作製されている、
燃料電池。
【0019】
適用例5の燃料電池では、上記特性を有する材料からなる電解質膜を用いた場合に、電解質膜の膨潤・乾燥(収縮)時の上記第1または第2の表面に沿った方向についての寸法の変化量を抑制することができる。したがって、電解質膜に加わる応力を抑制し、触媒電極層の破壊等、膜電極接合体のダメージを抑制することができる。
【0020】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記膜電極接合体の第1の表面は、アノード側の表面であり、
前記膜電極接合体の第2の表面は、カソード側の表面である、
燃料電池。
【0021】
適用例5の燃料電池では、カソードからアノードへの酸素のクロスリークを抑制して、アノードでの過酸化水素の生成を抑制することができる。また、カソード側の触媒電極層に含まれるカーボン微粒子の腐食を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池100の概略構成を示す説明図である。
【図2】比較例の燃料電池100Rの概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての燃料電池100Aの概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第3実施例としての燃料電池100Bの概略構成を示す説明図である。
【図5】第1実施例の変形例としての燃料電池100Cの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池100の概略構成を示す説明図である。図1(a)に、燃料電池100の要部断面図を示した。また、図1(b)に、カソード側セパレータプレート40cの要部平面図を示した。また、図1(c)に、電解質膜10mの平面図を示した。
【0024】
図1(a)に示したように、燃料電池100は、膜電極接合体10と、アノード側ガス拡散層20aと、カソード側ガス拡散層20cと、ガスケット30と、アノード側セパレータプレート40aと、カソード側セパレータプレート40cと、を備えている。なお、図示は省略しているが、膜電極接合体10は、電解質膜10mの両面にそれぞれ触媒電極層(アノード、カソード)を接合することによって形成されている。各触媒電極層には、白金等の触媒を担持したカーボン微粒子や、アイオノマが含まれる。
【0025】
そして、膜電極接合体10のアノード側の表面には、アノード側ガス拡散層20aが接合されている。また、膜電極接合体10のカソード側の表面において、膜電極接合体10を挟んでアノード側ガス拡散層20aと対向する領域であって、アノード側ガス拡散層20aが接合された領域よりも内側の領域に、カソード側ガス拡散層20cが接合されている。また、ガスケット30は、膜電極接合体10とアノード側ガス拡散層20aとカソード側ガス拡散層20cとの積層体の外周部に形成されている。
【0026】
また、上記積層体およびガスケット30のアノード側ガス拡散層20a側には、アノード側セパレータプレート40aが積層されている。また、上記積層体およびガスケット30のカソード側ガス拡散層20c側には、カソード側セパレータプレート40cが積層されている。そして、これらには、積層方向に押圧力が加えられている。なお、図1(a),(b)に示したように、カソード側セパレータプレート40cにおいて、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位には、凹部42が形成されている。そして、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42は、燃料電池100の外部から供給された空気が流れるガス流路(図示省略)と分離して形成されている。
【0027】
また、本実施例の燃料電池100では、電解質膜10mは、電解質膜10mの表面に沿った第1の方向についての膨張率、すなわち、膨潤時の寸法変化率が、電解質膜10mの表面に沿った方向であって、第1の方向と直交する第2の方向についての膨張率よりも大きい性質を有する材料からなるものとした。本実施例では、膜電極接合体10の第1の方向についての膨張率がほぼ10(%)であり、第2の方向についての膨張率がほぼ0(%)であるものとした。これらの各膨張率の値は、適宜、変更可能である。そして、図1(c)に示したように、本実施例の燃料電池100において、電解質膜10mは、矩形形状を有するとともに、矩形形状における短辺方向が、上記第1の方向となり、矩形形状における長辺方向が上記第2の方向となるように作製されている。
【0028】
以下、比較例の燃料電池100Rの構成と第1実施例の燃料電池100の構成とを比較して、第1実施例の燃料電池100による効果について説明する。
【0029】
図2は、比較例の燃料電池100Rの概略構成を示す説明図である。燃料電池100Rの要部断面図を示した。比較例の燃料電池100Rは、第1実施例の燃料電池100におけるカソード側セパレータプレート40cの代わりに、カソード側セパレータプレート40Rcを備えている。そして、カソード側セパレータプレート40Rcには、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42が形成されていない。その他の燃料電池100Rの構成は、燃料電池100の構成と同じである。
【0030】
比較例の燃料電池100Rでは、例えば、製造上の誤差により、ガスケット30の厚さが所望の厚さよりも薄い場合や、ガスケット30の圧縮弾性率が所望の値よりも低い場合には、ガスケット30を介して膜電極接合体10(電解質膜10m)に加わる押圧力よりも、カソード側ガス拡散層20cを介して膜電極接合体10(電解質膜10m)に加わる押圧力の方が大きくなる。このため、膜電極接合体10(電解質膜10m)において、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと当接する、破線円で示した部位Pには、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgによってせん断応力が加わる。したがって、電解質膜10mにおける部位Pは、上記せん断応力によってクリープ変形しやすい。そして、電解質膜10mがクリープ変形すると、電解質膜10mの膜厚が薄くなる。そして、電解質膜10mの膜厚が薄くなると、クロスリークがより生じやすくなり、クロスリークに伴って生成される過酸化水素等による電解質膜10mの劣化を加速させることとなる。
【0031】
これに対して、第1実施例の燃料電池100では、カソード側セパレータプレート40cが、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に凹部42を備えるので、カソード側セパレータプレート40cからカソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgに加わる押圧力を緩和することができる。したがって、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgによって電解質膜10mに加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜10mのクリープ変形を抑制し、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。そして、燃料電池100の長寿命化を図ることができる。
【0032】
また、燃料電池100では、カソード側セパレータプレート40cにおいて、凹部42は、燃料電池100の外部から供給された空気が流れるガス流路と分離して形成されているので、この凹部42には、燃料電池100の外部から供給された空気が直接的に流入することがない。したがって、膜電極接合体10において、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42と対向する部位での発電を抑制し、生成水の生成を抑制することができる。この結果、この部位において、生成水による電解質膜10mの膨潤(変形)を抑制することができる。そして、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。
【0033】
また、燃料電池100では、電解質膜10mが、矩形形状を有するとともに、矩形形状における短辺方向の膨張率が、長辺方向の膨張率よりも大きくなるように作製されているので、電解質膜10mの膨潤・乾燥(収縮)時の変形量を抑制することができる。したがって、電解質膜10mに加わる応力を抑制し、触媒電極層の破壊等、膜電極接合体10のダメージを抑制することができる。
【0034】
また、燃料電池100では、膜電極接合体10のカソード側の表面において、膜電極接合体10を挟んでアノード側ガス拡散層20aと対向する領域であって、アノード側ガス拡散層20aが接合された領域よりも内側の領域に、カソード側ガス拡散層20cが接合されている。こうすることによって、カソードからアノードへの酸素のクロスリークを抑制して、アノードでの過酸化水素の生成を抑制することができる。また、カソード側の触媒電極層に含まれるカーボン微粒子の腐食を抑制することもできる。
【0035】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての燃料電池100Aの概略構成を示す説明図である。図3(a)に、燃料電池100Aの要部断面図を示した。また、図3(b)に、カソード側セパレータプレート40Acの要部平面図を示した。
【0036】
図3(a)に示したように、第2実施例の燃料電池100Aは、第1実施例の燃料電池100におけるカソード側セパレータプレート40cの代わりに、カソード側セパレータプレート40Acを備えている。そして、図3(a),(b)に示したように、カソード側セパレータプレート40Acには、2つのL字型の凹部42Aと、空気およびカソードオフガスが流れるガス流路を構成する溝部44とが形成されている。2つの凹部42Aと溝部44とは、分離して形成されている。その他の燃料電池100Aの構成は、燃料電池100の構成と同じである。なお、カソード側セパレータプレート40Acにおける2つの凹部42Aは、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42と同様に、それぞれ、カソード側セパレータプレート40Acにおいて、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に形成されている。
【0037】
以上説明した第2実施例の燃料電池100Aによれば、第1実施例の燃料電池100と同様に、カソード側セパレータプレート40Acが、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に凹部42Aを備えるので、カソード側セパレータプレート40Acからカソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgに加わる押圧力を緩和することができる。したがって、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgによって電解質膜10mに加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜10mのクリープ変形を抑制し、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。そして、燃料電池100Aの長寿命化を図ることができる。
【0038】
C.第3実施例:
図4は、本発明の第3実施例としての燃料電池100Bの概略構成を示す説明図である。燃料電池100Bの要部断面図を示した。図示するように、第3実施例の燃料電池100Bは、第1実施例の燃料電池100におけるアノード側セパレータプレート40aの代わりに、アノード側セパレータプレート40Baを備えている。そして、アノード側セパレータプレート40Baにおいて、アノード側ガス拡散層20aのエッジ部20aedgと対向する部位には、凹部42が形成されている。なお、アノード側セパレータプレート40Baにおける凹部42も、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42と同様に、燃料電池100の外部から供給された水素が流れるガス流路(図示省略)と分離して形成されている。これ以外の燃料電池100Bの構成は、燃料電池100の構成と同じである。
【0039】
以上説明した第3実施例の燃料電池100Bによれば、第1実施例の燃料電池100と同様に、カソード側セパレータプレート40cが、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に凹部42を備えるので、カソード側セパレータプレート40cからカソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgに加わる押圧力を緩和することができる。したがって、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgによって電解質膜10mに加わるせん断応力を緩和することができる。さらに、燃料電池100Bでは、アノード側セパレータプレート40Baが、アノード側ガス拡散層20aのエッジ部20aedgと対向する部位に凹部42を備えるので、アノード側セパレータプレート40aからアノード側ガス拡散層20aのエッジ部20aedgに加わる押圧力を緩和することができる。したがって、アノード側ガス拡散層20aのエッジ部20aedgによって電解質膜10mに加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜10mのクリープ変形を抑制し、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。そして、燃料電池100Bの長寿命化を図ることができる。
【0040】
また、燃料電池100Bでは、アノード側セパレータプレート40aにおける凹部42は、燃料電池100の外部から供給された水素が流れるガス流路と分離して形成されているので、この凹部42には、燃料電池100の外部から供給された水素が直接的に流入することがない。したがって、膜電極接合体10において、アノード側セパレータプレート40aにおける凹部42と対向する部位での発電を抑制し、生成水の生成を抑制することができる。この結果、この部位において、生成水による電解質膜10mの膨潤(変形)を抑制することができる。そして、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。
【0041】
D.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0042】
D1.変形例1:
図5は、第1実施例の変形例としての燃料電池100Cの概略構成を示す説明図である。燃料電池100Cの要部断面図を示した。図示するように、燃料電池100Cは、第1実施例の燃料電池100におけるカソード側セパレータプレート40cの代わりに、カソード側セパレータプレート40Ccを備えている。そして、膜電極接合体10とカソード側セパレータプレート40Ccとの間には、導電性を有する多孔質部材50cが挟持されており、この多孔質部材50cは、空気およびカソードオフガスが流れるカソード側ガス流路を構成している。また、膜電極接合体10とアノード側セパレータプレート40aとの間には、導電性を有する多孔質部材50aが挟持されており、この多孔質部材50aは、水素およびアノードオフガスが流れるアノード側ガス流路を構成している。
【0043】
なお、カソード側セパレータプレート40Ccには、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42と同様に、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に、凹部42Cが形成されている。ただし、カソード側セパレータプレート40Ccにおける凹部42Cの幅Wは、カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42の幅よりも広い。こうすることによって、カソード側セパレータプレート40Ccにおける凹部42Cの幅Wが比較的狭い場合よりも、カソード側セパレータプレート40Ccにおける凹部42Cとカソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgとの間において、多孔質部材50cがたわみやすくし、カソード側セパレータプレート40Ccから多孔質部材50cを介してカソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgに加わる押圧力を緩和することができる。
【0044】
以上説明した変形例の燃料電池100Cによっても、第1実施例の燃料電池100と同様に、カソード側セパレータプレート40Ccが、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgと対向する部位に凹部42Cを備えるので、カソード側ガス拡散層20cのエッジ部20cedgによって電解質膜10mに加わるせん断応力を緩和することができる。この結果、電解質膜10mのクリープ変形を抑制し、電解質膜10mの薄膜化を抑制することができる。そして、燃料電池100Cの長寿命化を図ることができる。
【0045】
D2.変形例2:
例えば、上記第1実施例の燃料電池100では、カソード側セパレータプレート40cにおいて、凹部42は、燃料電池100の外部から供給された空気が直接的に流入しないように、空気が流れるガス流路と分離して形成されるものとしたが、本発明は、これに限られない。カソード側セパレータプレート40cにおける凹部42に、空気が流入するものとしてもよい。
【0046】
D3.変形例3:
上記実施例では、電解質膜10mが、矩形形状を有するとともに、矩形形状における短辺方向の膨張率が、長辺方向の膨張率よりも大きくなるように作製されているものとしたが、本発明は、これに限られない。電解質膜10mにおいて、例えば、矩形形状における短辺方向の膨張率と、長辺方向の膨張率とが等しいものとしてもよい。
【0047】
D4.変形例4:
上記実施例では、膜電極接合体10のカソード側の表面において、膜電極接合体10を挟んでアノード側ガス拡散層20aと対向する領域であって、アノード側ガス拡散層20aが接合された領域よりも内側の領域に、カソード側ガス拡散層20cが接合されるものとしたが、本発明は、これに限られない。膜電極接合体10のアノード側の表面において、膜電極接合体10を挟んでカソード側ガス拡散層20cと対向する領域であって、カソード側ガス拡散層20cが接合された領域よりも内側の領域に、アノード側ガス拡散層20aが接合されるものとしてもよい。
【0048】
D5.変形例5:
上記実施例では、アノード側セパレータプレートと、カソード側セパレータプレートと、を別々に記載したが、本発明は、これに限られない。複数の膜電極接合体10を積層して、燃料電池スタックを構成する場合には、アノード側セパレータプレートと、カソード側セパレータプレートとを一体化して、1つのセパレータとしてもよい。
【0049】
D6.変形例6:
上記燃料電池100,100A,100B,100Cの構成の一部を、適宜、組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
100,100A,100B,100C,100R…燃料電池
10…膜電極接合体
10m…電解質膜
20a…アノード側ガス拡散層
20aedg…エッジ部
20c…カソード側ガス拡散層
20cedg…エッジ部
30…ガスケット
40a,40Ba…アノード側セパレータプレート
40c,40Ac,40Cc,40Rc…カソード側セパレータプレート
42,42A,42C…凹部
44…溝部
50a,50c…多孔質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
電解質膜の両面にそれぞれ触媒電極層を接合してなる膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の第1の表面に接合された第1のガス拡散層と、
前記膜電極接合体の前記第1の表面と反対側の第2の表面において、前記膜電極接合体を挟んで前記第1のガス拡散層と対向する領域であって、前記第1のガス拡散層が接合された領域よりも内側の領域に接合された第2のガス拡散層と、
前記膜電極接合体と前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との積層体の外周部に形成されたガスケットと、
前記積層体および前記ガスケットの前記第1のガス拡散層側に積層された第1のセパレータプレートと、
前記積層体および前記ガスケットの前記第2のガス拡散層側に積層された第2のセパレータプレートと、を備え、
前記第2のセパレータプレートは、前記第2のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備える、
燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池であって、
前記第2のセパレータプレートにおける前記凹部は、前記燃料電池の外部から供給された反応ガスが流れる反応ガス流路と分離して形成されている、
燃料電池。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池であって、さらに、
前記第1のセパレータプレートは、前記第1のガス拡散層のエッジ部と対向する部位に凹部を備える、
燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池であって、
前記第1のセパレータプレートにおける前記凹部は、前記燃料電池の外部から供給された反応ガスが流れる反応ガス流路と分離して形成されている、
燃料電池。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記電解質膜は、前記第1または第2の表面に沿った第1の方向についての膨張率が、前記第1または第2の表面に沿った方向であって、前記第1の方向と直交する第2の方向についての膨張率よりも大きい特性を有する材料からなり、
前記電解質膜は、矩形形状を有するとともに、前記矩形形状における短辺方向が、前記第1の方向となり、前記矩形形状における長辺方向が、前記第2の方向となるように作製されている、
燃料電池。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記膜電極接合体の第1の表面は、アノード側の表面であり、
前記膜電極接合体の第2の表面は、カソード側の表面である、
燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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