燃料電池
【課題】安定した高出力を得ることが可能な小型の燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜17と、電解質膜17の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノード13と、電解質膜17の他方の面に間隔をおいて配置されアノード13の各々と対向する複数のカソード16と、を有する膜電極接合体10と、二つ折りにされた絶縁フィルム21と、絶縁フィルム21の一方の面に形成されアノード16の各々に積層された複数のアノード導電層ADと、絶縁フィルム21の一方の面に形成されカソード16の各々に積層された複数のカソード導電層CDと、絶縁フィルム21の他方の面に形成された良導体層GDAと、を有する集電体20と、を備えたことを特徴とする燃料電池。
【解決手段】電解質膜17と、電解質膜17の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノード13と、電解質膜17の他方の面に間隔をおいて配置されアノード13の各々と対向する複数のカソード16と、を有する膜電極接合体10と、二つ折りにされた絶縁フィルム21と、絶縁フィルム21の一方の面に形成されアノード16の各々に積層された複数のアノード導電層ADと、絶縁フィルム21の一方の面に形成されカソード16の各々に積層された複数のカソード導電層CDと、絶縁フィルム21の他方の面に形成された良導体層GDAと、を有する集電体20と、を備えたことを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これらの携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされており、一部で市販が始まっている。このような燃料電池は、燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補充・交換すれば連続して長時間発電可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池は、小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムとなりえる。
【0003】
特に、メタノール(メチルアルコール)を燃料として用いる、直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:以下DMFCと称する)は、エネルギー密度の高いメタノールを燃料として用いており、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出せるため、小型化が可能であり、また燃料の取り扱いも水素ガス燃料に比べて容易なことから、小型の携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0004】
このような燃料電池では、単セルから得られる電圧が比較的低電圧であるため、複数の単セルを直列に接続して昇圧して使用する場合が多い。単セルを電気的に接続するための集電体として、種々の構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200064号公報
【特許文献2】特開2009−38009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、安定した高出力を得ることが可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて配置され前記アノードの各々と対向する複数のカソードと、を有する膜電極接合体と、二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された複数のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された複数のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成された良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
アノードとカソードとの間に電解質膜が配置された膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置された燃料供給機構と、前記膜電極接合体の前記カソード側に配置されたカバー部材と、二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードに積層されたアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードに積層されたカソード導電層と、前記アノード導電層と前記燃料供給機構との間及び前記カソード導電層と前記カバー部材との間の少なくとも一方に位置する前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記膜電極接合体の熱を拡散する良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0009】
本実施形態によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置された4個のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置され前記アノードの各々と対向する4個のカソードと、を有する膜電極接合体と、二つ折りにされスルーホールが形成された絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された4個のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された4個のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記スルーホールを介して前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続する良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した燃料電池を構成する膜電極接合体の一例を概略的に示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した燃料電池を構成する集電体の一例を概略的に示す平面図である。
【図4】図4は、図2に示した例の膜電極接合体を、図3に示した例の集電体で挟持した状態を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、図3に示した集電体の裏面の形状の一例を概略的に示す平面図である。
【図6】図6は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図7】図7は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図8】図8は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図9】図9は、本実施形態による燃料電池と、良導体層を配置しなかった比較例の燃料電池との出力及び温度差の比較結果を示す図である。
【図10】図10は、図1に示した燃料電池を構成する膜電極接合体の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図11】図11は、図1に示した燃料電池を構成する集電体の他の例を概略的に示す平面図である。
【図12】図12は、図11に示した例の集電体の良導電層JB1を含む構造を概略的に示す断面図である。
【図13】図13は、図11に示した例の集電体の良導電層JB2を含む構造を概略的に示す断面図である。
【図14】図14は、良導体層を保護する保護膜を備えた構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態による燃料電池1の構成を概略的に示す図である。
【0013】
燃料電池1は、膜電極接合体(MEA)10と、集電体20と、燃料供給機構30と、カバー部材40と、を備えている。
【0014】
膜電極接合体10は、アノード(燃料極)13とカソード(空気極あるいは酸化剤極)16との間に電解質膜17が配置された構成である。アノード13は、電解質膜17の一方の面17Aに複数個配置されている。カソード16は、電解質膜17の他方の面17Cに複数個配置されている。電解質膜17は、プロトン(水素イオン)伝導性を有する材料によって形成されている。
【0015】
アノード13は、電解質膜17の一方の面17Aに配置されたアノード触媒層11を有しており、図示した例では、さらに、アノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12を有している。カソード16は、電解質膜17の他方の面17Cに配置されたカソード触媒層14を有しており、図示した例では、さらに、カソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15を有している。なお、これらのアノードガス拡散層12及びカソードガス拡散層15は、後述する集電体20に含まれていても良い。
【0016】
発電要素である1個の単セルは、電解質膜17を挟んで対向する1個のアノード13と1個のカソード16とによって構成されている。本実施形態の膜電極接合体10は、複数個の単セルが平面的に並んだ構成である。これらの単セルは、膜電極接合体10を挟持する集電体20により、電気的に直列に接続されている。
【0017】
集電体20は、二つ折りにされた絶縁フィルム21、アノード導電層AD、カソード導電層CD、及び、良導体層GDA及びGDCを有している。アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。良導体層GDA及びGDCは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成されている。
【0018】
絶縁フィルム21は、電気的に絶縁性を有するとともに、使用する燃料(例えばメタノール)などに対する耐腐食性を有する材料によって形成され、例えば、ポリイミドなどの各種樹脂フィルムによって形成されている。アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、もしくは、アルミニウム、銀、ニッケル、銅を含む合金などの低抵抗な金属材料によって形成されている。
【0019】
アノード導電層ADは、アノード13に積層されている。図示した例では、アノード導電層ADは、アノードガス拡散層12に積層されている。このアノード導電層ADには、アノード13に向けて発電反応に必要な燃料の供給を可能とする開口部AHが形成されている。
【0020】
カソード導電層CDは、カソード16に積層されている。図示した例では、カソード導電層CDは、カソードガス拡散層15に積層されている。このカソード導電層CDには、カソード16に向けて発電反応に必要な酸素の供給を可能とするとともに発電反応に伴って生成された二酸化炭素や過剰な水蒸気などの気体の外部への排出を可能とする開口部CHが形成されている。
【0021】
良導体層GDAは、アノード導電層ADの背面側に配置されている。つまり、この良導体層GDAは、アノード導電層ADと燃料供給機構30との間に配置されている。良導体層GDCは、カソード導電層CDの背面側に配置されている。つまり、この良導体層GDCは、カソード導電層CDとカバー部材40との間に配置されている。
【0022】
膜電極接合体10は、電解質膜17の一方の面17Aと集電体20との間及び電解質膜17の他方の面17Cと集電体20との間にそれぞれ挟持されたゴム製のOリング等のシール部材18によってシールされている。これにより、膜電極接合体10からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。なお、膜電極接合体10において、電解質膜17には、1個乃至複数個のガス排出孔(図示せず)を設けても良い。このようなガス排出孔は、アノード触媒層11及びカソード触媒層14にともに接しておらず、且つ、シール部材18によって囲まれた内側に相当する位置に形成されている。
【0023】
燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13に向けて燃料を供給するものである。この燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13の側に配置されている。このような燃料供給機構30は、液体燃料Fを収容する燃料収容部5に流路6を介して接続されている。
【0024】
燃料収容部5には、膜電極接合体10に応じた液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料Fであってもよい。いずれにしても、燃料収容部5には、膜電極接合体10に応じた液体燃料Fが収容される。
【0025】
また、図示した例では、燃料収容部5と燃料供給機構30との間の流路6には、ポンプ7が介在している。このポンプ7は、燃料収容部5に収容された液体燃料Fを燃料供給機構30まで強制的に送液するものであり、燃料を循環させる循環ポンプではない。燃料供給機構30に供給された燃料は、膜電極接合体10に向けて供給され、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部5に戻されることはない。ポンプ7の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能なものが好ましい。このようなポンプ7は、図示しない制御基板から送られた信号に基づいて作動し、膜電極接合体10の温度を略一定に保つように制御されている。
【0026】
本実施形態において適用される燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13に対して燃料を供給するように構成されたものであれば、特定の構成に限定されるものではない。以下に、燃料供給機構30の一例について説明する。
【0027】
すなわち、燃料供給機構30は、箱状に形成された容器31、及び、膜電極接合体10のアノード13の面方向(つまり、図中のX−Y平面内の方向)に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料分配板32を備えている。燃料分配板32は、容器31の内側に形成された凹部に配置されている。この燃料分配板32は、平板状に形成されている。このような燃料分配板32には、複数の燃料排出口33が形成されている。このような燃料分配板32は、燃料収容部5から容器31の燃料導入口に供給された液体燃料をアノード13に向けて燃料排出口33から排出する。
【0028】
また、この燃料供給機構30は、燃料分配板32と膜電極接合体10のアノード13との間に、液体燃料とその気化成分とを分離し気化成分を膜電極接合体10に向けて透過させる気液分離膜、液体燃料を面方向に拡散させる拡散板、液体燃料の供給量を制御する絞り板などの各種フィルム部材34が配置されている。
【0029】
カバー部材40は、膜電極接合体10のカソード16の側に配置されている。つまり、膜電極接合体10は、燃料供給機構30とカバー部材40との間に保持されている。このカバー部材40は、例えば、板状に形成されている。カバー部材40には、複数の開口部40Hが形成されている。これらの開口部40Hは、いずれもカソード16の上方に位置しており、カソード16に向けて空気を供給するためのものである。
【0030】
このようなカバー部材40と集電体20との間には、通気性を有する絶縁材料によって形成された板状体19が配置されている。この板状体19は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体19は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カバー部材40の開口部40Hから取り込んだ空気のカソード触媒層14への取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。
【0031】
図2は、図1に示した燃料電池1を構成する膜電極接合体10の一例を概略的に示す斜視図である。
【0032】
膜電極接合体10は、単一の電解質膜17の一方の面17Aに間隔をおいて配置された4個のアノード131乃至134と、電解質膜17の他方の面17Cに間隔をおいて配置された4個のカソード161乃至164と、を備えている。アノード131はカソード161と対向し、アノード132はカソード162と対向し、アノード133はカソード163と対向し、アノード134はカソード164と対向している。
【0033】
これらのアノード131乃至134とカソード161乃至164との各組み合わせは、それぞれ電解質膜17を挟持し、単セルCをなしている。図示した例では、アノード131とカソード161との組み合わせが単セルC1をなし、同様にして、アノード132とカソード162との組み合わせが単セルC2をなし、アノード133とカソード163との組み合わせが単セルC3をなし、アノード134とカソード164との組み合わせが単セルC4をなしている。
【0034】
これらの単セルC1乃至C4は、略同等のサイズであるとともに略同一の形状である。ここでは、単セルC1乃至C4の各々(あるいはアノード131乃至134の各々、あるいはカソード161乃至164の各々)は、第1方向Xに延出した長辺を有するとともに、第1方向Xに直交する第2方向Yに延出した短辺を有する長方形状である。これらの単セルC1乃至C4は、第2方向Yに間隔をおいて並んで配置されている。
【0035】
図3は、図1に示した燃料電池1を構成する集電体20の一例を概略的に示す平面図である。
【0036】
集電体20の絶縁フィルム21は、膜電極接合体10の外形寸法の概ね2倍の面積を有しており、膜電極接合体10における単セルの並び方向(つまり第2方向Y)とは直交する第1方向Xに延出している。この絶縁フィルム21は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って二つ折りに折り曲げられる。
【0037】
アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。アノード導電層ADは、膜電極接合体10のアノード13と同数であり、4個のアノード導電層AD1乃至AD4からなる。また、カソード導電層CDは、膜電極接合体10のカソード16と同数であり、4個のカソード導電層CD1乃至CD4からなる。
【0038】
アノード導電層AD1乃至AD4は、それぞれ第1方向Xに沿って延出し、第2方向Yに所定の間隔をおいて並んで配置されている。アノード導電層AD1乃至AD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部AHが形成されている。カソード導電層CD1乃至CD4は、それぞれ第1方向Xに沿って延出し、第2方向Yに所定の間隔をおいて並んで配置されている。カソード導電層CD1乃至CD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部CHが形成されている。
【0039】
このような集電体20には、アノード端子TA及びカソード端子TCが接続されている。アノード端子TAは、アノード導電層AD1に接続されている。カソード端子TCは、カソード導電層CD4に接続されている。これらのアノード端子TA及びカソード端子TCは、それぞれ集電した電子を外部に取り出す出力端子として機能する。
【0040】
アノード端子TA及びカソード端子TCに接続されていないアノード導電層AD2乃至AD4及びカソード導電層CD1乃至CD3は、それぞれ接続体Jによって電気的に接続されている。図示した例では、アノード導電層AD2及びカソード導電層CD1は、接続体J1によって接続されている。同様に、アノード導電層AD3及びカソード導電層CD2は、接続体J2によって接続され、アノード導電層AD4及びカソード導電層CD3は、接続体J3によって接続されている。これらの接続体J1乃至J3は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。
【0041】
このような集電体20は、二つ折りに折り曲げられ、図2に示したような構成の膜電極接合体10を挟持する。
【0042】
図4は、図2に示した例の膜電極接合体10を、図3に示した例の集電体20で挟持した状態を概略的に示す断面図である。なお、ここでは、説明に必要な構成のみを図示していている。
【0043】
膜電極接合体10の単セルC1は、集電体20のアノード導電層AD1とカソードCD1とで挟持されている。つまり、アノード導電層AD1はアノード131に積層され、また、カソード導電層CD1はカソード161に積層されている。同様に、単セルC2のアノード132にはアノード導電層AD2が積層され、カソード162にはカソード導電層CD2が積層されている。単セルC3のアノード133にはアノード導電層AD3が積層され、カソード163にはカソード導電層CD3が積層されている。単セルC4のアノード134にはアノード導電層AD4が積層され、カソード164にはカソード導電層CD4が積層されている。
【0044】
図5は、図3に示した集電体20の裏面の形状の一例を概略的に示す平面図である。
【0045】
良導体層GDA及びGDCの各々は、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成されている。ここでは、絶縁フィルム21の一方の面側に形成された4個のアノード導電層AD1乃至AD4及び4個のカソード導電層CD1乃至CD4の外形をそれぞれ破線で示している。なお、ここに示した良導体層GDA及びGDCは、いずれもアノード導電層AD1乃至AD4及びカソード導電層CD1乃至CD4とは電気的に絶縁されている。
【0046】
良導体層GDAは、4個のアノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側に配置されている。図示した例では、良導体層GDAは単一であり、アノード導電層AD1乃至AD4に対して共通に配置されている。つまり、良導体層GDAは、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側だけでなく、隣り合うアノード導電層AD1とAD2との間、AD2とAD3との間、及び、AD3とAD4との間の各々の背面側にも配置された一連の層として形成されている。
【0047】
また、この良導体層GDAは、4個のアノード導電層AD1乃至AD4が形成された領域の外形(図中の破線)よりも大きな外形を有しており、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の端部よりも外方に延在している。つまり、良導体層GDAの端部は、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の端部よりも絶縁フィルム21の端部に近接している。図示した例では、良導体層GDAは、開口部AHを除いて絶縁フィルム21の右側半分の略全体に亘って配置されている。
【0048】
良導体層GDCは、4個のカソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側に配置されている。図示した例では、良導体層GDCは単一であり、カソード導電層CD1乃至CD4に対して共通に配置されている。つまり、良導体層GDCは、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側だけでなく、隣り合うカソード導電層CD1とCD2との間、CD2とCD3との間、及び、CD3とCD4との間の各々の背面側にも配置された一連の層として形成されている。
【0049】
また、この良導体層GDCは、4個のカソード導電層CD1乃至CD4が形成された領域の外形(図中の破線)よりも大きな外形を有しており、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の端部よりも外方に延在している。つまり、良導体層GDCの端部は、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の端部よりも絶縁フィルム21の端部に近接している。図示した例では、良導体層GDCは、開口部CHを除いて絶縁フィルム21の左側半分の略全体に亘って配置されている。
【0050】
本実施形態において、膜電極接合体10に向けて燃料及び酸素を供給し発電を開始すると、膜電極接合体10のアノード側においては発電反応に伴って発熱する一方で、膜電極接合体10のカソード側においては燃料がアノード側からカソード側にリークするクロスオーバに起因した燃焼反応に伴って発熱する。
【0051】
膜電極接合体10の面内では、上述した発熱により、その中央部付近が高温となりその周辺部が低温となるといった温度勾配が形成される。このような温度勾配は、膜電極接合体10の中央部と周辺部とで燃料の透過量や触媒活性の差を生み、単セル間の発電量に差を生じさせる原因となりうる。図2に示した例の膜電極接合体10では、中央部に近い単セルC2及びC3では比較的高い発電量が得られるのに対して、周辺部に近い単セルC1及びC4では単セルC2及びC3ほどの発電量が得られない。
【0052】
本実施形態によれば、良導体層GDA及びGDCは、膜電極接合体10の熱を拡散する熱伝導体として機能する。良導体層GDAは、膜電極接合体10のアノード側において、その中央部から周辺部に向けて熱を拡散する。また、良導体層GDCは、膜電極接合体10のカソード側において、その中央部から周辺部に向けて熱を拡散する。膜電極接合体10の周辺部では、燃料電池1を構成する各種部材などを介して放熱される。
【0053】
これにより、膜電極接合体10の面内での温度勾配を緩和し、単セルC1乃至C4のいずれにおいても略同等の発電量を得ることが可能となる。また、放熱が促進され、膜電極接合体10の温度を適温に維持することが可能となる。したがって、安定した高出力を得ることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、4個のアノード導電層AD1乃至AD4に対して、単一の良導体層GDAが配置されている。また、4個のカソード導電層CD1乃至CD4に対して、単一の良導体層GDCが配置されている。これらの良導体層GDA及びGDCは、隣接する単セル間で熱を拡散するための熱伝導パスを形成するため、複数の単セル間に亘って連続的に熱を拡散させ、しかも、膜電極接合体10の中央部から周辺部に向けて放射状に熱を拡散させることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態によれば、良導体層GDAは、アノード導電層AD1乃至AD4が形成された領域の外形よりも大きな外形を有している。また、良導体層GDCは、カソード導電層CD1乃至CD4が形成された領域の外形よりも大きな外形を有している。このため、これらの良導体層GDA及びGDCは、膜電極接合体10の中央部の熱を、より放熱されやすい周辺部に向けて拡散させることが可能となる。
【0056】
本実施形態においては、良導体層GDA及びGDCは、主として熱伝導性の高い材料、例えば、銅もしくは銅を含む合金によって形成されている。
【0057】
なお、上記の例では、良導体層がアノード導電層の背面側及びカソード導電層の背面側のそれぞれに配置されたが、本実施形態で適用した良導体層は、アノード導電層の背面側及びカソード導電層の背面側の少なくとも一方の側に配置されていれば良い。以下に、良導体層の配置のバリエーションについて説明する。以下に示すバリエーションでは、説明に必要な構成のみを図示することとする。
【0058】
図6乃至図8は、本実施形態による燃料電池1のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【0059】
図6に示した例では、集電体20は、アノード導電層ADの背面側に配置された1つの良導体層GDAを有している。つまり、絶縁フィルム21の他方の面21Bには、良導体層GDAが形成されているが、カソード導電層CDの背面側には良導体層は形成されていない。このような良導体層GDAは、膜電極接合体10の少なくともアノード13の側の熱を拡散する。
【0060】
図7に示した例では、集電体20は、カソード導電層CDの背面側に配置された1つの良導体層GDCを有している。つまり、絶縁フィルム21の他方の面21Bには、良導体層GDCが形成されているが、アノード導電層ADの背面側には良導体層は形成されていない。このような良導体層GDCは、膜電極接合体10の少なくともカソード16の側の熱を拡散する。
【0061】
図8に示した例では、集電体20は、アノード導電層ADの背面側及びカソード導電層CDの背面側に配置された1つの良導体層GDを有している。つまり、良導体層GDは、絶縁フィルム21の他方の面21Bの略全面に形成され、二つ折りにされる絶縁フィルム21の折り曲げ部分にも延在している。このような良導体層GDは、膜電極接合体10のアノード13の側及びカソード16の側の熱を拡散する。
【0062】
これらの各種バリエーションによれば、良導体層を配置しなかった場合と比較して、高出力を得ることが可能である。
【0063】
図9は、本実施形態による燃料電池と、良導体層を配置しなかった比較例の燃料電池との出力及び温度差の比較結果を示す図である。
【0064】
燃料電池Aは、比較例の燃料電池に相当する。この燃料電池Aは、良導体層を配置しなかった集電体を適用する以外は本実施形態と同一構成である。燃料電池Bは、図7に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Bは、カソード側のみに良導体層GDCを有する集電体を適用している。燃料電池Cは、図6に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Cは、アノード側のみに良導体層GDAを有する集電体を適用している。燃料電池Dは、図1などに示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Dは、アノード側及びカソード側の双方に良導体層GDA及びGDCを有する集電体を適用している。燃料電池Eは、図8に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Eは、アノード側及びカソード側の双方及び絶縁フィルムの折り曲げ部に亘り良導体層GDを有する集電体を適用している。
【0065】
ここでは、いずれの構成の燃料電池A乃至Eについても同一条件で運転し、所定の運転時間が経過したときに、得られた出力を測定し、また、膜電極接合体のカソード側の中央部及び周辺部でそれぞれ表面温度を測定した。出力の比較結果は、燃料電池Aによって得られた出力を1としたとき、本実施形態による各々の燃料電池B乃至Eによって得られた出力の相対値を示している。また、温度の比較結果は、燃料電池A乃至Eの各々における膜電極接合体の中央部での表面温度と周辺部での表面温度との温度差(℃)を示している。
【0066】
燃料電池Aによれば、相対出力は1であり、温度差は5.4℃であった。
【0067】
燃料電池Bによれば、相対出力は1.065であり、燃料電池Aに対して6.5%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Bによれば、温度差は5.0℃であり、燃料電池Aよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0068】
燃料電池Cによれば、相対出力は1.104であり、燃料電池Aに対して10.4%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Cによれば、温度差は4.5℃であり、燃料電池A及びBよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0069】
燃料電池Dによれば、相対出力は1.117であり、燃料電池Aに対して11.7%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Dによれば、温度差は4.2℃であり、燃料電池A乃至Cよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0070】
燃料電池Eによれば、相対出力は1.054であり、燃料電池Aに対して5.4%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Eによれば、中央部と折り曲げ部側周辺部との温度差は3.6℃であり、また、中央部とカソード端子側周辺部との温度差は4.8℃であり、燃料電池Aよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0071】
次に、他の実施形態について説明する。ここでは、4個の単セルC1乃至C4がマトリクス状に平面配置された構成について説明する。
【0072】
図10は、図1に示した燃料電池1を構成する膜電極接合体10の他の例を概略的に示す斜視図である。
【0073】
膜電極接合体10は、単一の電解質膜17の一方の面17Aに間隔をおいて配置された4個のアノード131乃至134と(アノード134は図示なし)、電解質膜17の他方の面17Cに間隔をおいて配置された4個のカソード161乃至164と、を備えている。
【0074】
特に、ここに示した例では、これらのアノード131乃至134は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ2個ずつ並べた2×2のマトリクス状に配置されており、また、カソード161乃至164は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ2個ずつ並べた2×2のマトリクス状に配置されており、この点で図2に示した例と相違している。
【0075】
アノード131はカソード161と対向し、これらの組み合わせが単セルC1をなしている。アノード132はカソード162と対向し、これらの組み合わせが単セルC2をなしている。アノード133はカソード163と対向し、これらの組み合わせが単セルC3をなしている。アノード134はカソード164と対向し、これらの組み合わせが単セルC4をなしている。
【0076】
図11は、図1に示した燃料電池1を構成する集電体20の他の例を概略的に示す平面図である。
【0077】
集電体20の絶縁フィルム21は、膜電極接合体10の外形寸法の概ね2倍の面積を有している。4個のアノード導電層AD1乃至AD4及び4個のカソード導電層CD1乃至CD4は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。
【0078】
アノード導電層AD1乃至AD4は、所定の間隔をおいて2×2のマトリクス状に並んで配置されている。図示した例では、アノード導電層AD2は、アノード導電層AD1と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。アノード導電層AD3は、アノード導電層AD2と所定の間隔をおいて第2方向Yに並んで配置されている。アノード導電層AD4は、アノード導電層AD1と所定の間隔をおいて第2方向Yに並び、アノード導電層AD3と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。アノード導電層AD1乃至AD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部AHが形成されている。
【0079】
カソード導電層CD1乃至CD4は、所定の間隔をおいて2×2のマトリクス状に並んで配置されている。図示した例では、カソード導電層CD2は、カソード導電層CD1と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。カソード導電層CD3は、カソード導電層CD2と所定の間隔をおいて第2方向Yに並んで配置されている。カソード導電層CD4は、カソード導電層CD1と所定の間隔をおいて第2方向Yに並び、カソード導電層CD3と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。カソード導電層CD1乃至CD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部CHが形成されている。
【0080】
絶縁フィルム21は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って、アノード導電層AD1乃至AD4とカソード導電層CD1乃至CD4とが向かい合うように二つ折りに折り曲げられる。このとき、アノード導電層AD1の上方にはカソード導電層CD1が位置し、アノード導電層AD2の上方にはカソード導電層CD2が位置し、アノード導電層AD3の上方にはカソード導電層CD3が位置し、アノード導電層AD4の上方にはカソード導電層CD4が位置する。
【0081】
アノード端子TAは、アノード導電層AD1に接続されている。カソード端子TCは、カソード導電層CD4に接続されている。カソード導電層CD1とアノード導電層AD2とは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1によって電気的に接続されている。カソード導電層CD2とアノード導電層AD3とは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成された接続体JAによって電気的に接続されている。カソード導電層CD3とアノード導電層AD4とは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB2によって電気的に接続されている。
【0082】
良導体層JB1及びJB2は、離間しており、互いに電気的に絶縁されている。なお、ここでは、これらの良導体層JB1及びJB2については詳述しないが、互いに電気的に絶縁されていれば、どのようなレイアウトであっても良い。例えば、良導体層JB1は、先に説明した例の良導体層GDCのように、4個のカソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側に配置されていてもよい。同様に、良導体層JB2は、先に説明した例の良導体層GDAのように、4個のアノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側に配置されていてもよい。
【0083】
このような集電体20は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って二つ折りに折り曲げられ、図10に示した膜電極接合体10を挟持する。このとき、単セルC1はアノード導電層AD1とカソード導電層CD1との間に挟持され、単セルC2はアノード導電層AD2とカソード導電層CD2との間に挟持され、単セルC3はアノード導電層AD3とカソード導電層CD3との間に挟持され、単セルC4はアノード導電層AD4とカソード導電層CD4との間に挟持される。単セルC1と単セルC2とは良導体層JB1を介して電気的に接続され、単セルC2と単セルC3とは接続体JAを介して電気的に接続され、単セルC3と単セルC4とは良導体層JB2を介して電気的に接続される。
【0084】
このように、ここに示した例では、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1及びJB2は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたアノード導電層の1つとカソード導電層の1つとを電気的に接続する接続体として機能する。
【0085】
図12は、図11に示した例の集電体20の良導体層JB1を含む構造を概略的に示す断面図である。
【0086】
絶縁フィルム21には、一方の面21Aから他方の面21Bまで貫通するスルーホールTH1及びTH2が形成されている。なお、図示した例では、スルーホールTH1及びTH2のそれぞれは単一であるが、微細なスルーホールの集合体であっても良い。
【0087】
絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたカソード導電層CD1はスルーホールTH1に延在し、アノード導電層AD2はスルーホールTH2に延在している。絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1は、カソード導電層CD1の背面側からスルーホールTH1に延在するとともに、カソード導電層CD2の背面側及びアノード導電層AD2の背面側を通り、スルーホールTH2に延在している。これにより、良導体層JB1は、カソード導電層CD1とアノード導電層AD2とを電気的に接続している。
【0088】
図13は、図11に示した例の集電体20の良導体層JB2を含む構造を概略的に示す断面図である。
【0089】
絶縁フィルム21には、一方の面21Aから他方の面21Bまで貫通するスルーホールTH3及びTH4が形成されている。なお、図示した例では、スルーホールTH3及びTH4のそれぞれは単一であるが、微細なスルーホールの集合体であっても良い。
【0090】
絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたカソード導電層CD3はスルーホールTH3に延在し、アノード導電層AD4はスルーホールTH4に延在している。絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB2は、アノード導電層AD4の背面側からスルーホールTH4に延在するとともに、アノード導電層AD3の背面側及びカソード導電層CD3の背面側を通り、スルーホールTH3に延在している。これにより、良導体層JB2は、カソード導電層CD3とアノード導電層AD4とを電気的に接続している。
【0091】
このような実施形態によれば、2×2のマトリクス状に配置された4個の単セルC1乃至C4を備えた構成の膜電極接合体10を適用したことにより、単セル間での温度条件あるいは発熱状態の差異を低減することが可能である。すなわち、膜電極接合体10の面内において、4個の単セルC1乃至C4の熱が集中する中央部付近が高温となり、各単セルの周辺部が低温となるといった温度勾配が形成される。各単セルに形成される温度勾配はいずれも略同等であるため、単セルC1乃至C4のいずれにおいても略同等の発電量を得ることが可能となる。
【0092】
また、この実施形態によれば、集電体20の良導体層JB1及びJB2は、アノード導電層の1つとカソード導電層の1つとを電気的に接続する接続体として機能するとともに、先に説明した例と同様に、膜電極接合体10の熱を拡散する熱伝導体として機能する。これにより、各単セルの面内での温度勾配を緩和し、発電量の向上を図ることが可能となる。したがって、安定した高出力を得ることが可能となる。
【0093】
ここに示した例においては、良導体層JB1及びJB2は、熱伝導性及び導電性が高い材料、例えば銅もしくは銅を含む合金によって形成されている。
【0094】
次に、良導体層GDA及びGDC、あるいは、良導体層JB1及びJB2を保護する保護膜について説明する。ここでは、良導体層GDA及びGDCを保護する保護膜について説明するが、この保護膜は、良導体層JB1及びJB2を保護する保護膜としても適用できることは言うまでもない。
【0095】
図14は、良導体層GDA及びGDCを保護する保護膜PFを備えた構成の一例を示す図である。なお、ここでは、説明に必要な構成のみを図示している。
【0096】
集電体20は、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層GDA及びGDCを覆う保護膜PFを備えている。この保護膜PFは、膜電極接合体10における発電反応で必要な酸素や燃料、あるいは、発電反応で生成された水などの副生成物に対に対して耐腐食性を有する材料によって形成されている。
【0097】
これにより、良導体層GDA及びGDCは、酸素や燃料、水などの副生成物に晒されることがなく、その腐食を抑制することが可能となる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、安定した高出力を得ることが可能な燃料電池を提供することができる。
【0099】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…燃料電池
10…膜電極接合体 13…アノード 16…カソード 17…電解質膜
20…集電体 AD…アノード導電層 CD…カソード導電層
GD…良導体層 JB…良導体層
30…燃料供給機構
40…カバー部材
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これらの携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされており、一部で市販が始まっている。このような燃料電池は、燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補充・交換すれば連続して長時間発電可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池は、小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムとなりえる。
【0003】
特に、メタノール(メチルアルコール)を燃料として用いる、直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:以下DMFCと称する)は、エネルギー密度の高いメタノールを燃料として用いており、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出せるため、小型化が可能であり、また燃料の取り扱いも水素ガス燃料に比べて容易なことから、小型の携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0004】
このような燃料電池では、単セルから得られる電圧が比較的低電圧であるため、複数の単セルを直列に接続して昇圧して使用する場合が多い。単セルを電気的に接続するための集電体として、種々の構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200064号公報
【特許文献2】特開2009−38009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、安定した高出力を得ることが可能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて配置され前記アノードの各々と対向する複数のカソードと、を有する膜電極接合体と、二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された複数のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された複数のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成された良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
アノードとカソードとの間に電解質膜が配置された膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置された燃料供給機構と、前記膜電極接合体の前記カソード側に配置されたカバー部材と、二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードに積層されたアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードに積層されたカソード導電層と、前記アノード導電層と前記燃料供給機構との間及び前記カソード導電層と前記カバー部材との間の少なくとも一方に位置する前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記膜電極接合体の熱を拡散する良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0009】
本実施形態によれば、
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置された4個のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置され前記アノードの各々と対向する4個のカソードと、を有する膜電極接合体と、二つ折りにされスルーホールが形成された絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された4個のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された4個のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記スルーホールを介して前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続する良導体層と、を有する集電体と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態による燃料電池の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した燃料電池を構成する膜電極接合体の一例を概略的に示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した燃料電池を構成する集電体の一例を概略的に示す平面図である。
【図4】図4は、図2に示した例の膜電極接合体を、図3に示した例の集電体で挟持した状態を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、図3に示した集電体の裏面の形状の一例を概略的に示す平面図である。
【図6】図6は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図7】図7は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図8】図8は、本実施形態による燃料電池のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【図9】図9は、本実施形態による燃料電池と、良導体層を配置しなかった比較例の燃料電池との出力及び温度差の比較結果を示す図である。
【図10】図10は、図1に示した燃料電池を構成する膜電極接合体の他の例を概略的に示す斜視図である。
【図11】図11は、図1に示した燃料電池を構成する集電体の他の例を概略的に示す平面図である。
【図12】図12は、図11に示した例の集電体の良導電層JB1を含む構造を概略的に示す断面図である。
【図13】図13は、図11に示した例の集電体の良導電層JB2を含む構造を概略的に示す断面図である。
【図14】図14は、良導体層を保護する保護膜を備えた構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態による燃料電池1の構成を概略的に示す図である。
【0013】
燃料電池1は、膜電極接合体(MEA)10と、集電体20と、燃料供給機構30と、カバー部材40と、を備えている。
【0014】
膜電極接合体10は、アノード(燃料極)13とカソード(空気極あるいは酸化剤極)16との間に電解質膜17が配置された構成である。アノード13は、電解質膜17の一方の面17Aに複数個配置されている。カソード16は、電解質膜17の他方の面17Cに複数個配置されている。電解質膜17は、プロトン(水素イオン)伝導性を有する材料によって形成されている。
【0015】
アノード13は、電解質膜17の一方の面17Aに配置されたアノード触媒層11を有しており、図示した例では、さらに、アノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12を有している。カソード16は、電解質膜17の他方の面17Cに配置されたカソード触媒層14を有しており、図示した例では、さらに、カソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15を有している。なお、これらのアノードガス拡散層12及びカソードガス拡散層15は、後述する集電体20に含まれていても良い。
【0016】
発電要素である1個の単セルは、電解質膜17を挟んで対向する1個のアノード13と1個のカソード16とによって構成されている。本実施形態の膜電極接合体10は、複数個の単セルが平面的に並んだ構成である。これらの単セルは、膜電極接合体10を挟持する集電体20により、電気的に直列に接続されている。
【0017】
集電体20は、二つ折りにされた絶縁フィルム21、アノード導電層AD、カソード導電層CD、及び、良導体層GDA及びGDCを有している。アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。良導体層GDA及びGDCは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成されている。
【0018】
絶縁フィルム21は、電気的に絶縁性を有するとともに、使用する燃料(例えばメタノール)などに対する耐腐食性を有する材料によって形成され、例えば、ポリイミドなどの各種樹脂フィルムによって形成されている。アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、もしくは、アルミニウム、銀、ニッケル、銅を含む合金などの低抵抗な金属材料によって形成されている。
【0019】
アノード導電層ADは、アノード13に積層されている。図示した例では、アノード導電層ADは、アノードガス拡散層12に積層されている。このアノード導電層ADには、アノード13に向けて発電反応に必要な燃料の供給を可能とする開口部AHが形成されている。
【0020】
カソード導電層CDは、カソード16に積層されている。図示した例では、カソード導電層CDは、カソードガス拡散層15に積層されている。このカソード導電層CDには、カソード16に向けて発電反応に必要な酸素の供給を可能とするとともに発電反応に伴って生成された二酸化炭素や過剰な水蒸気などの気体の外部への排出を可能とする開口部CHが形成されている。
【0021】
良導体層GDAは、アノード導電層ADの背面側に配置されている。つまり、この良導体層GDAは、アノード導電層ADと燃料供給機構30との間に配置されている。良導体層GDCは、カソード導電層CDの背面側に配置されている。つまり、この良導体層GDCは、カソード導電層CDとカバー部材40との間に配置されている。
【0022】
膜電極接合体10は、電解質膜17の一方の面17Aと集電体20との間及び電解質膜17の他方の面17Cと集電体20との間にそれぞれ挟持されたゴム製のOリング等のシール部材18によってシールされている。これにより、膜電極接合体10からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。なお、膜電極接合体10において、電解質膜17には、1個乃至複数個のガス排出孔(図示せず)を設けても良い。このようなガス排出孔は、アノード触媒層11及びカソード触媒層14にともに接しておらず、且つ、シール部材18によって囲まれた内側に相当する位置に形成されている。
【0023】
燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13に向けて燃料を供給するものである。この燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13の側に配置されている。このような燃料供給機構30は、液体燃料Fを収容する燃料収容部5に流路6を介して接続されている。
【0024】
燃料収容部5には、膜電極接合体10に応じた液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。なお、液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fは、例えば、エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料Fであってもよい。いずれにしても、燃料収容部5には、膜電極接合体10に応じた液体燃料Fが収容される。
【0025】
また、図示した例では、燃料収容部5と燃料供給機構30との間の流路6には、ポンプ7が介在している。このポンプ7は、燃料収容部5に収容された液体燃料Fを燃料供給機構30まで強制的に送液するものであり、燃料を循環させる循環ポンプではない。燃料供給機構30に供給された燃料は、膜電極接合体10に向けて供給され、発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部5に戻されることはない。ポンプ7の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能なものが好ましい。このようなポンプ7は、図示しない制御基板から送られた信号に基づいて作動し、膜電極接合体10の温度を略一定に保つように制御されている。
【0026】
本実施形態において適用される燃料供給機構30は、膜電極接合体10のアノード13に対して燃料を供給するように構成されたものであれば、特定の構成に限定されるものではない。以下に、燃料供給機構30の一例について説明する。
【0027】
すなわち、燃料供給機構30は、箱状に形成された容器31、及び、膜電極接合体10のアノード13の面方向(つまり、図中のX−Y平面内の方向)に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料分配板32を備えている。燃料分配板32は、容器31の内側に形成された凹部に配置されている。この燃料分配板32は、平板状に形成されている。このような燃料分配板32には、複数の燃料排出口33が形成されている。このような燃料分配板32は、燃料収容部5から容器31の燃料導入口に供給された液体燃料をアノード13に向けて燃料排出口33から排出する。
【0028】
また、この燃料供給機構30は、燃料分配板32と膜電極接合体10のアノード13との間に、液体燃料とその気化成分とを分離し気化成分を膜電極接合体10に向けて透過させる気液分離膜、液体燃料を面方向に拡散させる拡散板、液体燃料の供給量を制御する絞り板などの各種フィルム部材34が配置されている。
【0029】
カバー部材40は、膜電極接合体10のカソード16の側に配置されている。つまり、膜電極接合体10は、燃料供給機構30とカバー部材40との間に保持されている。このカバー部材40は、例えば、板状に形成されている。カバー部材40には、複数の開口部40Hが形成されている。これらの開口部40Hは、いずれもカソード16の上方に位置しており、カソード16に向けて空気を供給するためのものである。
【0030】
このようなカバー部材40と集電体20との間には、通気性を有する絶縁材料によって形成された板状体19が配置されている。この板状体19は、主に保湿層として機能する。すなわち、この板状体19は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制するとともに、カバー部材40の開口部40Hから取り込んだ空気のカソード触媒層14への取入れ量を調整し且つ空気の均一拡散を促進するものである。
【0031】
図2は、図1に示した燃料電池1を構成する膜電極接合体10の一例を概略的に示す斜視図である。
【0032】
膜電極接合体10は、単一の電解質膜17の一方の面17Aに間隔をおいて配置された4個のアノード131乃至134と、電解質膜17の他方の面17Cに間隔をおいて配置された4個のカソード161乃至164と、を備えている。アノード131はカソード161と対向し、アノード132はカソード162と対向し、アノード133はカソード163と対向し、アノード134はカソード164と対向している。
【0033】
これらのアノード131乃至134とカソード161乃至164との各組み合わせは、それぞれ電解質膜17を挟持し、単セルCをなしている。図示した例では、アノード131とカソード161との組み合わせが単セルC1をなし、同様にして、アノード132とカソード162との組み合わせが単セルC2をなし、アノード133とカソード163との組み合わせが単セルC3をなし、アノード134とカソード164との組み合わせが単セルC4をなしている。
【0034】
これらの単セルC1乃至C4は、略同等のサイズであるとともに略同一の形状である。ここでは、単セルC1乃至C4の各々(あるいはアノード131乃至134の各々、あるいはカソード161乃至164の各々)は、第1方向Xに延出した長辺を有するとともに、第1方向Xに直交する第2方向Yに延出した短辺を有する長方形状である。これらの単セルC1乃至C4は、第2方向Yに間隔をおいて並んで配置されている。
【0035】
図3は、図1に示した燃料電池1を構成する集電体20の一例を概略的に示す平面図である。
【0036】
集電体20の絶縁フィルム21は、膜電極接合体10の外形寸法の概ね2倍の面積を有しており、膜電極接合体10における単セルの並び方向(つまり第2方向Y)とは直交する第1方向Xに延出している。この絶縁フィルム21は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って二つ折りに折り曲げられる。
【0037】
アノード導電層AD及びカソード導電層CDは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。アノード導電層ADは、膜電極接合体10のアノード13と同数であり、4個のアノード導電層AD1乃至AD4からなる。また、カソード導電層CDは、膜電極接合体10のカソード16と同数であり、4個のカソード導電層CD1乃至CD4からなる。
【0038】
アノード導電層AD1乃至AD4は、それぞれ第1方向Xに沿って延出し、第2方向Yに所定の間隔をおいて並んで配置されている。アノード導電層AD1乃至AD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部AHが形成されている。カソード導電層CD1乃至CD4は、それぞれ第1方向Xに沿って延出し、第2方向Yに所定の間隔をおいて並んで配置されている。カソード導電層CD1乃至CD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部CHが形成されている。
【0039】
このような集電体20には、アノード端子TA及びカソード端子TCが接続されている。アノード端子TAは、アノード導電層AD1に接続されている。カソード端子TCは、カソード導電層CD4に接続されている。これらのアノード端子TA及びカソード端子TCは、それぞれ集電した電子を外部に取り出す出力端子として機能する。
【0040】
アノード端子TA及びカソード端子TCに接続されていないアノード導電層AD2乃至AD4及びカソード導電層CD1乃至CD3は、それぞれ接続体Jによって電気的に接続されている。図示した例では、アノード導電層AD2及びカソード導電層CD1は、接続体J1によって接続されている。同様に、アノード導電層AD3及びカソード導電層CD2は、接続体J2によって接続され、アノード導電層AD4及びカソード導電層CD3は、接続体J3によって接続されている。これらの接続体J1乃至J3は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。
【0041】
このような集電体20は、二つ折りに折り曲げられ、図2に示したような構成の膜電極接合体10を挟持する。
【0042】
図4は、図2に示した例の膜電極接合体10を、図3に示した例の集電体20で挟持した状態を概略的に示す断面図である。なお、ここでは、説明に必要な構成のみを図示していている。
【0043】
膜電極接合体10の単セルC1は、集電体20のアノード導電層AD1とカソードCD1とで挟持されている。つまり、アノード導電層AD1はアノード131に積層され、また、カソード導電層CD1はカソード161に積層されている。同様に、単セルC2のアノード132にはアノード導電層AD2が積層され、カソード162にはカソード導電層CD2が積層されている。単セルC3のアノード133にはアノード導電層AD3が積層され、カソード163にはカソード導電層CD3が積層されている。単セルC4のアノード134にはアノード導電層AD4が積層され、カソード164にはカソード導電層CD4が積層されている。
【0044】
図5は、図3に示した集電体20の裏面の形状の一例を概略的に示す平面図である。
【0045】
良導体層GDA及びGDCの各々は、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成されている。ここでは、絶縁フィルム21の一方の面側に形成された4個のアノード導電層AD1乃至AD4及び4個のカソード導電層CD1乃至CD4の外形をそれぞれ破線で示している。なお、ここに示した良導体層GDA及びGDCは、いずれもアノード導電層AD1乃至AD4及びカソード導電層CD1乃至CD4とは電気的に絶縁されている。
【0046】
良導体層GDAは、4個のアノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側に配置されている。図示した例では、良導体層GDAは単一であり、アノード導電層AD1乃至AD4に対して共通に配置されている。つまり、良導体層GDAは、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側だけでなく、隣り合うアノード導電層AD1とAD2との間、AD2とAD3との間、及び、AD3とAD4との間の各々の背面側にも配置された一連の層として形成されている。
【0047】
また、この良導体層GDAは、4個のアノード導電層AD1乃至AD4が形成された領域の外形(図中の破線)よりも大きな外形を有しており、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の端部よりも外方に延在している。つまり、良導体層GDAの端部は、アノード導電層AD1乃至AD4の各々の端部よりも絶縁フィルム21の端部に近接している。図示した例では、良導体層GDAは、開口部AHを除いて絶縁フィルム21の右側半分の略全体に亘って配置されている。
【0048】
良導体層GDCは、4個のカソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側に配置されている。図示した例では、良導体層GDCは単一であり、カソード導電層CD1乃至CD4に対して共通に配置されている。つまり、良導体層GDCは、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側だけでなく、隣り合うカソード導電層CD1とCD2との間、CD2とCD3との間、及び、CD3とCD4との間の各々の背面側にも配置された一連の層として形成されている。
【0049】
また、この良導体層GDCは、4個のカソード導電層CD1乃至CD4が形成された領域の外形(図中の破線)よりも大きな外形を有しており、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の端部よりも外方に延在している。つまり、良導体層GDCの端部は、カソード導電層CD1乃至CD4の各々の端部よりも絶縁フィルム21の端部に近接している。図示した例では、良導体層GDCは、開口部CHを除いて絶縁フィルム21の左側半分の略全体に亘って配置されている。
【0050】
本実施形態において、膜電極接合体10に向けて燃料及び酸素を供給し発電を開始すると、膜電極接合体10のアノード側においては発電反応に伴って発熱する一方で、膜電極接合体10のカソード側においては燃料がアノード側からカソード側にリークするクロスオーバに起因した燃焼反応に伴って発熱する。
【0051】
膜電極接合体10の面内では、上述した発熱により、その中央部付近が高温となりその周辺部が低温となるといった温度勾配が形成される。このような温度勾配は、膜電極接合体10の中央部と周辺部とで燃料の透過量や触媒活性の差を生み、単セル間の発電量に差を生じさせる原因となりうる。図2に示した例の膜電極接合体10では、中央部に近い単セルC2及びC3では比較的高い発電量が得られるのに対して、周辺部に近い単セルC1及びC4では単セルC2及びC3ほどの発電量が得られない。
【0052】
本実施形態によれば、良導体層GDA及びGDCは、膜電極接合体10の熱を拡散する熱伝導体として機能する。良導体層GDAは、膜電極接合体10のアノード側において、その中央部から周辺部に向けて熱を拡散する。また、良導体層GDCは、膜電極接合体10のカソード側において、その中央部から周辺部に向けて熱を拡散する。膜電極接合体10の周辺部では、燃料電池1を構成する各種部材などを介して放熱される。
【0053】
これにより、膜電極接合体10の面内での温度勾配を緩和し、単セルC1乃至C4のいずれにおいても略同等の発電量を得ることが可能となる。また、放熱が促進され、膜電極接合体10の温度を適温に維持することが可能となる。したがって、安定した高出力を得ることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、4個のアノード導電層AD1乃至AD4に対して、単一の良導体層GDAが配置されている。また、4個のカソード導電層CD1乃至CD4に対して、単一の良導体層GDCが配置されている。これらの良導体層GDA及びGDCは、隣接する単セル間で熱を拡散するための熱伝導パスを形成するため、複数の単セル間に亘って連続的に熱を拡散させ、しかも、膜電極接合体10の中央部から周辺部に向けて放射状に熱を拡散させることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態によれば、良導体層GDAは、アノード導電層AD1乃至AD4が形成された領域の外形よりも大きな外形を有している。また、良導体層GDCは、カソード導電層CD1乃至CD4が形成された領域の外形よりも大きな外形を有している。このため、これらの良導体層GDA及びGDCは、膜電極接合体10の中央部の熱を、より放熱されやすい周辺部に向けて拡散させることが可能となる。
【0056】
本実施形態においては、良導体層GDA及びGDCは、主として熱伝導性の高い材料、例えば、銅もしくは銅を含む合金によって形成されている。
【0057】
なお、上記の例では、良導体層がアノード導電層の背面側及びカソード導電層の背面側のそれぞれに配置されたが、本実施形態で適用した良導体層は、アノード導電層の背面側及びカソード導電層の背面側の少なくとも一方の側に配置されていれば良い。以下に、良導体層の配置のバリエーションについて説明する。以下に示すバリエーションでは、説明に必要な構成のみを図示することとする。
【0058】
図6乃至図8は、本実施形態による燃料電池1のバリエーションを説明するための概略断面図である。
【0059】
図6に示した例では、集電体20は、アノード導電層ADの背面側に配置された1つの良導体層GDAを有している。つまり、絶縁フィルム21の他方の面21Bには、良導体層GDAが形成されているが、カソード導電層CDの背面側には良導体層は形成されていない。このような良導体層GDAは、膜電極接合体10の少なくともアノード13の側の熱を拡散する。
【0060】
図7に示した例では、集電体20は、カソード導電層CDの背面側に配置された1つの良導体層GDCを有している。つまり、絶縁フィルム21の他方の面21Bには、良導体層GDCが形成されているが、アノード導電層ADの背面側には良導体層は形成されていない。このような良導体層GDCは、膜電極接合体10の少なくともカソード16の側の熱を拡散する。
【0061】
図8に示した例では、集電体20は、アノード導電層ADの背面側及びカソード導電層CDの背面側に配置された1つの良導体層GDを有している。つまり、良導体層GDは、絶縁フィルム21の他方の面21Bの略全面に形成され、二つ折りにされる絶縁フィルム21の折り曲げ部分にも延在している。このような良導体層GDは、膜電極接合体10のアノード13の側及びカソード16の側の熱を拡散する。
【0062】
これらの各種バリエーションによれば、良導体層を配置しなかった場合と比較して、高出力を得ることが可能である。
【0063】
図9は、本実施形態による燃料電池と、良導体層を配置しなかった比較例の燃料電池との出力及び温度差の比較結果を示す図である。
【0064】
燃料電池Aは、比較例の燃料電池に相当する。この燃料電池Aは、良導体層を配置しなかった集電体を適用する以外は本実施形態と同一構成である。燃料電池Bは、図7に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Bは、カソード側のみに良導体層GDCを有する集電体を適用している。燃料電池Cは、図6に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Cは、アノード側のみに良導体層GDAを有する集電体を適用している。燃料電池Dは、図1などに示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Dは、アノード側及びカソード側の双方に良導体層GDA及びGDCを有する集電体を適用している。燃料電池Eは、図8に示した本実施形態のバリエーションに相当する。この燃料電池Eは、アノード側及びカソード側の双方及び絶縁フィルムの折り曲げ部に亘り良導体層GDを有する集電体を適用している。
【0065】
ここでは、いずれの構成の燃料電池A乃至Eについても同一条件で運転し、所定の運転時間が経過したときに、得られた出力を測定し、また、膜電極接合体のカソード側の中央部及び周辺部でそれぞれ表面温度を測定した。出力の比較結果は、燃料電池Aによって得られた出力を1としたとき、本実施形態による各々の燃料電池B乃至Eによって得られた出力の相対値を示している。また、温度の比較結果は、燃料電池A乃至Eの各々における膜電極接合体の中央部での表面温度と周辺部での表面温度との温度差(℃)を示している。
【0066】
燃料電池Aによれば、相対出力は1であり、温度差は5.4℃であった。
【0067】
燃料電池Bによれば、相対出力は1.065であり、燃料電池Aに対して6.5%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Bによれば、温度差は5.0℃であり、燃料電池Aよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0068】
燃料電池Cによれば、相対出力は1.104であり、燃料電池Aに対して10.4%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Cによれば、温度差は4.5℃であり、燃料電池A及びBよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0069】
燃料電池Dによれば、相対出力は1.117であり、燃料電池Aに対して11.7%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Dによれば、温度差は4.2℃であり、燃料電池A乃至Cよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0070】
燃料電池Eによれば、相対出力は1.054であり、燃料電池Aに対して5.4%の出力アップが確認された。また、この燃料電池Eによれば、中央部と折り曲げ部側周辺部との温度差は3.6℃であり、また、中央部とカソード端子側周辺部との温度差は4.8℃であり、燃料電池Aよりも温度勾配が緩和されることが確認された。
【0071】
次に、他の実施形態について説明する。ここでは、4個の単セルC1乃至C4がマトリクス状に平面配置された構成について説明する。
【0072】
図10は、図1に示した燃料電池1を構成する膜電極接合体10の他の例を概略的に示す斜視図である。
【0073】
膜電極接合体10は、単一の電解質膜17の一方の面17Aに間隔をおいて配置された4個のアノード131乃至134と(アノード134は図示なし)、電解質膜17の他方の面17Cに間隔をおいて配置された4個のカソード161乃至164と、を備えている。
【0074】
特に、ここに示した例では、これらのアノード131乃至134は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ2個ずつ並べた2×2のマトリクス状に配置されており、また、カソード161乃至164は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ2個ずつ並べた2×2のマトリクス状に配置されており、この点で図2に示した例と相違している。
【0075】
アノード131はカソード161と対向し、これらの組み合わせが単セルC1をなしている。アノード132はカソード162と対向し、これらの組み合わせが単セルC2をなしている。アノード133はカソード163と対向し、これらの組み合わせが単セルC3をなしている。アノード134はカソード164と対向し、これらの組み合わせが単セルC4をなしている。
【0076】
図11は、図1に示した燃料電池1を構成する集電体20の他の例を概略的に示す平面図である。
【0077】
集電体20の絶縁フィルム21は、膜電極接合体10の外形寸法の概ね2倍の面積を有している。4個のアノード導電層AD1乃至AD4及び4個のカソード導電層CD1乃至CD4は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されている。
【0078】
アノード導電層AD1乃至AD4は、所定の間隔をおいて2×2のマトリクス状に並んで配置されている。図示した例では、アノード導電層AD2は、アノード導電層AD1と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。アノード導電層AD3は、アノード導電層AD2と所定の間隔をおいて第2方向Yに並んで配置されている。アノード導電層AD4は、アノード導電層AD1と所定の間隔をおいて第2方向Yに並び、アノード導電層AD3と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。アノード導電層AD1乃至AD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部AHが形成されている。
【0079】
カソード導電層CD1乃至CD4は、所定の間隔をおいて2×2のマトリクス状に並んで配置されている。図示した例では、カソード導電層CD2は、カソード導電層CD1と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。カソード導電層CD3は、カソード導電層CD2と所定の間隔をおいて第2方向Yに並んで配置されている。カソード導電層CD4は、カソード導電層CD1と所定の間隔をおいて第2方向Yに並び、カソード導電層CD3と所定の間隔をおいて第1方向Xに並んで配置されている。カソード導電層CD1乃至CD4の各々には、絶縁フィルム21を貫通した複数の開口部CHが形成されている。
【0080】
絶縁フィルム21は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って、アノード導電層AD1乃至AD4とカソード導電層CD1乃至CD4とが向かい合うように二つ折りに折り曲げられる。このとき、アノード導電層AD1の上方にはカソード導電層CD1が位置し、アノード導電層AD2の上方にはカソード導電層CD2が位置し、アノード導電層AD3の上方にはカソード導電層CD3が位置し、アノード導電層AD4の上方にはカソード導電層CD4が位置する。
【0081】
アノード端子TAは、アノード導電層AD1に接続されている。カソード端子TCは、カソード導電層CD4に接続されている。カソード導電層CD1とアノード導電層AD2とは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1によって電気的に接続されている。カソード導電層CD2とアノード導電層AD3とは、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成された接続体JAによって電気的に接続されている。カソード導電層CD3とアノード導電層AD4とは、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB2によって電気的に接続されている。
【0082】
良導体層JB1及びJB2は、離間しており、互いに電気的に絶縁されている。なお、ここでは、これらの良導体層JB1及びJB2については詳述しないが、互いに電気的に絶縁されていれば、どのようなレイアウトであっても良い。例えば、良導体層JB1は、先に説明した例の良導体層GDCのように、4個のカソード導電層CD1乃至CD4の各々の背面側に配置されていてもよい。同様に、良導体層JB2は、先に説明した例の良導体層GDAのように、4個のアノード導電層AD1乃至AD4の各々の背面側に配置されていてもよい。
【0083】
このような集電体20は、図中の位置(折り曲げ線)Bに沿って二つ折りに折り曲げられ、図10に示した膜電極接合体10を挟持する。このとき、単セルC1はアノード導電層AD1とカソード導電層CD1との間に挟持され、単セルC2はアノード導電層AD2とカソード導電層CD2との間に挟持され、単セルC3はアノード導電層AD3とカソード導電層CD3との間に挟持され、単セルC4はアノード導電層AD4とカソード導電層CD4との間に挟持される。単セルC1と単セルC2とは良導体層JB1を介して電気的に接続され、単セルC2と単セルC3とは接続体JAを介して電気的に接続され、単セルC3と単セルC4とは良導体層JB2を介して電気的に接続される。
【0084】
このように、ここに示した例では、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1及びJB2は、絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたアノード導電層の1つとカソード導電層の1つとを電気的に接続する接続体として機能する。
【0085】
図12は、図11に示した例の集電体20の良導体層JB1を含む構造を概略的に示す断面図である。
【0086】
絶縁フィルム21には、一方の面21Aから他方の面21Bまで貫通するスルーホールTH1及びTH2が形成されている。なお、図示した例では、スルーホールTH1及びTH2のそれぞれは単一であるが、微細なスルーホールの集合体であっても良い。
【0087】
絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたカソード導電層CD1はスルーホールTH1に延在し、アノード導電層AD2はスルーホールTH2に延在している。絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB1は、カソード導電層CD1の背面側からスルーホールTH1に延在するとともに、カソード導電層CD2の背面側及びアノード導電層AD2の背面側を通り、スルーホールTH2に延在している。これにより、良導体層JB1は、カソード導電層CD1とアノード導電層AD2とを電気的に接続している。
【0088】
図13は、図11に示した例の集電体20の良導体層JB2を含む構造を概略的に示す断面図である。
【0089】
絶縁フィルム21には、一方の面21Aから他方の面21Bまで貫通するスルーホールTH3及びTH4が形成されている。なお、図示した例では、スルーホールTH3及びTH4のそれぞれは単一であるが、微細なスルーホールの集合体であっても良い。
【0090】
絶縁フィルム21の一方の面21Aに形成されたカソード導電層CD3はスルーホールTH3に延在し、アノード導電層AD4はスルーホールTH4に延在している。絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層JB2は、アノード導電層AD4の背面側からスルーホールTH4に延在するとともに、アノード導電層AD3の背面側及びカソード導電層CD3の背面側を通り、スルーホールTH3に延在している。これにより、良導体層JB2は、カソード導電層CD3とアノード導電層AD4とを電気的に接続している。
【0091】
このような実施形態によれば、2×2のマトリクス状に配置された4個の単セルC1乃至C4を備えた構成の膜電極接合体10を適用したことにより、単セル間での温度条件あるいは発熱状態の差異を低減することが可能である。すなわち、膜電極接合体10の面内において、4個の単セルC1乃至C4の熱が集中する中央部付近が高温となり、各単セルの周辺部が低温となるといった温度勾配が形成される。各単セルに形成される温度勾配はいずれも略同等であるため、単セルC1乃至C4のいずれにおいても略同等の発電量を得ることが可能となる。
【0092】
また、この実施形態によれば、集電体20の良導体層JB1及びJB2は、アノード導電層の1つとカソード導電層の1つとを電気的に接続する接続体として機能するとともに、先に説明した例と同様に、膜電極接合体10の熱を拡散する熱伝導体として機能する。これにより、各単セルの面内での温度勾配を緩和し、発電量の向上を図ることが可能となる。したがって、安定した高出力を得ることが可能となる。
【0093】
ここに示した例においては、良導体層JB1及びJB2は、熱伝導性及び導電性が高い材料、例えば銅もしくは銅を含む合金によって形成されている。
【0094】
次に、良導体層GDA及びGDC、あるいは、良導体層JB1及びJB2を保護する保護膜について説明する。ここでは、良導体層GDA及びGDCを保護する保護膜について説明するが、この保護膜は、良導体層JB1及びJB2を保護する保護膜としても適用できることは言うまでもない。
【0095】
図14は、良導体層GDA及びGDCを保護する保護膜PFを備えた構成の一例を示す図である。なお、ここでは、説明に必要な構成のみを図示している。
【0096】
集電体20は、絶縁フィルム21の他方の面21Bに形成された良導体層GDA及びGDCを覆う保護膜PFを備えている。この保護膜PFは、膜電極接合体10における発電反応で必要な酸素や燃料、あるいは、発電反応で生成された水などの副生成物に対に対して耐腐食性を有する材料によって形成されている。
【0097】
これにより、良導体層GDA及びGDCは、酸素や燃料、水などの副生成物に晒されることがなく、その腐食を抑制することが可能となる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、安定した高出力を得ることが可能な燃料電池を提供することができる。
【0099】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…燃料電池
10…膜電極接合体 13…アノード 16…カソード 17…電解質膜
20…集電体 AD…アノード導電層 CD…カソード導電層
GD…良導体層 JB…良導体層
30…燃料供給機構
40…カバー部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて配置され前記アノードの各々と対向する複数のカソードと、を有する膜電極接合体と、
二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された複数のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された複数のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成された良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記良導体層は、前記アノード導電層の背面側、及び、前記カソード導電層の背面側の少なくとも一方の側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記アノード導電層の各々の背面側には、単一の前記良導体層が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記良導体層は、複数の前記アノード導電層が形成された領域の外形よりも大きな外形を有し、前記アノード導電層の端部よりも外方に延在したことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記カソード導電層の各々の背面側には、単一の前記良導体層が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記カソード導電層の背面側に形成された前記良導体層は、前記カソード導電層の外形よりも大きな外形を有し、前記カソード導電層の端部よりも外方に延在したことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノード及び前記カソードは、2×2のマトリクス状に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記良導体層は、前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記良導体層は、銅もしくは銅を含む合金によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記良導体層は、保護膜によって覆われたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項11】
アノードとカソードとの間に電解質膜が配置された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記アノード側に配置された燃料供給機構と、
前記膜電極接合体の前記カソード側に配置されたカバー部材と、
二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードに積層されたアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードに積層されたカソード導電層と、前記アノード導電層と前記燃料供給機構との間及び前記カソード導電層と前記カバー部材との間の少なくとも一方に位置する前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記膜電極接合体の熱を拡散する良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置された4個のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置され前記アノードの各々と対向する4個のカソードと、を有する膜電極接合体と、
二つ折りにされスルーホールが形成された絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された4個のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された4個のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記スルーホールを介して前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続する良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて配置された複数のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて配置され前記アノードの各々と対向する複数のカソードと、を有する膜電極接合体と、
二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された複数のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された複数のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成された良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記良導体層は、前記アノード導電層の背面側、及び、前記カソード導電層の背面側の少なくとも一方の側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記アノード導電層の各々の背面側には、単一の前記良導体層が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記良導体層は、複数の前記アノード導電層が形成された領域の外形よりも大きな外形を有し、前記アノード導電層の端部よりも外方に延在したことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記カソード導電層の各々の背面側には、単一の前記良導体層が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記カソード導電層の背面側に形成された前記良導体層は、前記カソード導電層の外形よりも大きな外形を有し、前記カソード導電層の端部よりも外方に延在したことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノード及び前記カソードは、2×2のマトリクス状に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記良導体層は、前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記良導体層は、銅もしくは銅を含む合金によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記良導体層は、保護膜によって覆われたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項11】
アノードとカソードとの間に電解質膜が配置された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記アノード側に配置された燃料供給機構と、
前記膜電極接合体の前記カソード側に配置されたカバー部材と、
二つ折りにされた絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードに積層されたアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードに積層されたカソード導電層と、前記アノード導電層と前記燃料供給機構との間及び前記カソード導電層と前記カバー部材との間の少なくとも一方に位置する前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記膜電極接合体の熱を拡散する良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置された4個のアノードと、前記電解質膜の他方の面に間隔をおいて2×2のマトリクス状に配置され前記アノードの各々と対向する4個のカソードと、を有する膜電極接合体と、
二つ折りにされスルーホールが形成された絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記アノードの各々に積層された4個のアノード導電層と、前記絶縁フィルムの一方の面に形成され前記カソードの各々に積層された4個のカソード導電層と、前記絶縁フィルムの他方の面に形成され前記スルーホールを介して前記アノード導電層の1つと前記カソード導電層の1つとを電気的に接続する良導体層と、を有する集電体と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−150957(P2012−150957A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8000(P2011−8000)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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