説明

燃料電池

【課題】燃料電池において、触媒層カーボンの酸化を抑制する。
【解決手段】MEA10、ガス拡散シート12、セパレータ20を備える燃料電池において、ガス拡散シート12内に、MEA10のアノード触媒層のカーボンよりも低結晶化度のカーボンを添加する。低結晶化度のカーボンの添加量は、ガス拡散シート12の厚さ方向に変化し、MEA10側をセパレータ20側よりも相対的に少なくして排水性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に触媒層のカーボンの酸化抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池では、プロトン伝導性を備えた固体高分子電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散層が順に積層された構成を有する。このような固体高分子型燃料電池では、燃料欠乏時にはアノード側においてプロトン生成のために発電生成水の電気分解反応が生じ、この電気分解反応により電解質膜にプロトンを供給することができるが、水の電気分解反応が進行しなくなると燃料極が酸化により劣化するおそれがある。
【0003】
下記の特許文献1には、燃料電池用燃料極が、水素のプロトン化を促進するためのアノード触媒層と、燃料ガスを拡散するためのガス拡散層と、水電解触媒を含有する複数の水電解触媒層とを備え、複数の水電解触媒層をアノード触媒層とガス拡散層との間に積層する構成が開示されている。水電解触媒層により、燃料欠乏時に水の電気分解を促進して触媒層の劣化、具体的には触媒層のカーボンの酸化を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長期間の使用により水電解触媒層が溶出、酸化するおそれがあり、その触媒機能が低下して触媒層のカーボンの酸化が進んでしまうおそれがある。勿論、長時間の使用を前提として、水電解触媒の添加量を増大させることも考えられるが、触媒層に燃料電池反応に寄与しない材料を大量に添加すると、ガス拡散性やプロトン伝導性を阻害するおそれがあるため、そのバランスを調整するのが困難である。
【0006】
本発明の目的は、触媒層カーボンの酸化を抑制することができる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池であって、アノード触媒層と、前記アノード触媒層に隣接形成され、水素含有ガスを拡散させて前記アノード触媒層に供給するガス拡散層と、前記ガス拡散層に隣接形成され、前記ガス拡散層に前記水素含有ガスを供給するセパレータとを備え、前記ガス拡散層の発電面内に、前記アノード触媒層のカーボンよりも相対的に低結晶化度のカーボンが添加されることを特徴とする。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記ガス拡散層の発電面内に、前記低結晶化度のカーボンとともに電解質が前記ガス拡散層のカーボン繊維にコーティングされる。
【0009】
また、本発明の他の実施形態では、さらに、前記ガス拡散層の非発電面内に、電解質が含浸される。
【0010】
また、本発明の他の実施形態では、前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層の厚さ方向に変化する。
【0011】
また、本発明の他の実施形態では、前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、前記アノード触媒層側において前記セパレータ側よりも相対的に少なくなるように設定される。
【0012】
また、本発明の他の実施形態では、前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、中央部において前記アノード触媒層側及び前記セパレータ側よりも相対的に多くなるように設定される。
【0013】
また、本発明の他の実施形態では、前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、中央部において前記セパレータ側よりも相対的に多く、かつ、前記セパレータ側において前記アノード触媒層側よりも相対的に多くなるように設定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アノード触媒層のカーボン酸化を抑制することができる。また、犠牲酸化に伴う排水性の低下等を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】燃料電池セルの断面図である。
【図2】低結晶化度カーボンの添加説明図である。
【図3】低結晶化度カーボン及び電解質の添加説明図である。
【図4】非発電部への電解質含浸説明図である。
【図5】ガス拡散シートの厚さ方向と低結晶化度カーボンの添加量との関係を示すグラフである。
【図6】低結晶化度カーボンの添加量変化の説明図である。
【図7】ガス拡散シートの厚さ方向と撥水性との関係を示すグラフである。
【図8】ガス拡散シートの厚さ方向と接触抵抗との関係を示すグラフである。
【図9】ガス拡散シートの厚さ方向と低結晶化度カーボンの添加量との関係を示す他のグラフである。
【図10】低結晶化度カーボンの他の添加量変化の説明図である。
【図11】添加量変化とバネ性維持率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。但し、以下に示す実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態における「結晶化度」とは、高分子が部分的に結晶化している場合において、結晶化された部分の全体に対する割合を意味するものである。
【0017】
1.第1実施形態
本実施形態における燃料電池のセルの基本構成は、以下の通りである。すなわち、電極としてそれぞれ機能する一対の触媒層(アノード触媒層及びカソード触媒層)で電解質膜を挟んで形成された膜電極接合体(MEA)の両面に、それぞれ炭素繊維からなる層と撥水層とが積層してなるガス拡散層が設けられ、さらに膜電極接合体とそれぞれのガス拡散層を挟むようにそれぞれセパレータが配置されて形成される。炭素繊維からなる層は、炭素繊維の集合体からなり、この炭素繊維の集合体が撥水層に接合されて、ガス拡散層が形成される。燃料ガスとしての水素含有ガスが供給されるガス拡散層はアノード側ガス拡散層として機能し、空気等の酸化剤ガスが供給されるガス拡散層はカソード側ガス拡散層として機能する。
【0018】
水素含有ガスは、燃料ガス流路を通ってアノード側電極に供給され、電極の触媒の作用により電子と水素イオンに分解される。電子は外部回路を通ってカソード側電極に移動する。一方、水素イオンは電解質膜を通過してカソード電極に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合し、反応水になる。カソード電極側の生成水は、カソード側から排出される。
【0019】
次に、本実施形態の構成について、具体的に説明する。
【0020】
図1に、本実施形態における燃料電池の断面構成を示す。燃料電池は、セパレータ20、セパレータ30、多孔質体層34、ガス拡散シート14、MEA10、ガス拡散シート12、セパレータ20、セパレータ30を順次積層して構成される。図において、MEA10を基準としてその下側に位置するガス拡散シート12、セパレータ20、セパレータ30がアノード側、MEA10を基準としてその上側に位置するセパレータ20、セパレータ30、多孔質体層34、ガス拡散シート14がカソード側である。ガス拡散シート14、MEA10、ガス拡散シート12は互いに接合される。
【0021】
セパレータ20及びセパレータ30は、矩形状の外形を有しており、外周側には複数の貫通孔が設けられて各種マニホールドが形成される。セパレータ20は、1枚の金属板をプレス加工することにより形成され、表面と裏面との間で凹凸形状が反転する。セパレータ20は、凹部22aと凹部22bとを有する。セパレータ20を平面視した場合、凹部22aと凹部22bはそれぞれ櫛状のパターンとなっており、2つの櫛状のパターンが互いに噛み合うように配置される。アノード側のセパレータ20の外周側に設けられた貫通孔により形成されるマニホールドを介して凹部22aには高圧の水素ガスが供給される。また、凹部22bは、セパレータ20の外周側に設けられた他の貫通孔により形成されるマニホールドを介してアノードガス排気系に接続される。従って、凹部22aに供給された水素ガスは、セパレータ20に接するガス拡散シート12を経由して隣接する凹部22bに流れ込む。この流れの過程で、ガス拡散シート12からMEA10のアノード側電極触媒層に水素が供給される。また、セパレータ20の凸部24は、セパレータ面内を蛇行して形成され、セパレータ30とともに冷却水等の冷媒を流す冷媒流路として機能する。
【0022】
このような構成において、アノード側のガス拡散層であるガス拡散シート12に、MEA10の触媒層カーボンよりも相対的に結晶化度の低いカーボンを添加し、このガス拡散シート12に添加したカーボンを選択的または優先的に酸化させて(犠牲酸化)、触媒層カーボンの酸化を抑制する。
【0023】
図2に、ガス拡散シート12への低結晶化度カーボンの添加の様子を模式的に示す。ガス拡散シート12は、カーボン繊維12aと、カーボン繊維12aを結着するバインダ12bを備えるが、このバインダ12bに低結晶化度カーボン12cを犠牲剤として添加する。触媒層カーボンとしてVulcan(バルカン)を用いた場合、これよりも相対的に低結晶化度のカーボンとしては、例えばKetjen Black(ケチェンブラック)を用いることができる。
【0024】
本願出願人は、触媒層カーボンの種類とガス拡散シート12に添加する犠牲剤としてのカーボンとの組み合わせを変化させて触媒層カーボンの酸化抑制の効果、言い換えれば触媒活性維持率がどのように変化するかを検討したところ、
触媒層カーボン及び犠牲剤カーボンをともにCNTとした場合:
触媒活性維持率=10%程度、
触媒層カーボンとしてCNT、犠牲剤カーボンとしてVulcanを用いた場合:
触媒活性維持率=50%程度
であるのに対し、
触媒層カーボンとしてVulcan、犠牲剤カーボンとしてKetjen Blackを用いた場合:
触媒活性維持率=90%程度
と極めて高い活性維持率を示すことを確認している。因みに、低結晶化度カーボンの犠牲酸化が進むにつれ、ガス拡散シート12中の低結晶化度カーボンが消失して多孔度が向上するため、ガス拡散性も向上し得る。
【0025】
なお、本実施形態では、ガス拡散シート12に相対的に低結晶化度カーボンを添加しているが、低結晶化度カーボンに加え、ガス拡散シート12に電解質を含有させてもよい。電解質を含有させることで、アノードの水素欠時において、
C+HO→CO+4H+4e
の反応をガス拡散シート12内で促進することができる。
【0026】
図3に、この場合の添加の様子を模式的に示す。ガス拡散シート12は、カーボン繊維12aと、カーボン繊維12aを結着するバインダ12bを備えるが、さらに低結晶化度のカーボン12cと電解質12dを混合したものをカーボン繊維12aにコーティングする。電解質12dとしては、Nafion(登録商標(ナフィオン))等のアイオノマを用いることができる。低結晶化度のカーボン12cと電解質12dを混合したものをカーボン繊維12aにコーティングすることで、添加した低結晶化度カーボン12cが脱落しにくくなり、犠牲酸化の効果をより持続することができる。さらに、バインダ12bのみならず、バインダ12dが存在しない部位においても低結晶化度のカーボン12cが存在するようになるから、犠牲酸化に伴って低結晶化度カーボン12cが消失してもバインダ12bによる結着構造を維持し易くなる。
【0027】
また、電解質は、低結晶化度カーボン12cとともにカーボン繊維12aにコーティングする他に、非発電部である外周部に含浸してもよい。
【0028】
図4に、電解質を非発電部である外周部に含浸させる場合の例を示す。図4(a)は、アノード側のガス拡散シート12のみならず、カソード側のガス拡散シート14の外周にも電解質16を含浸させる場合であり、図4(b)はアノード側のガス拡散シート12の外周のみに電解質16を含浸させる場合である。
【0029】
2.第2実施形態
上記の第1実施形態では、低結晶化度カーボン12cをガス拡散シート12に添加しているが、その添加量は均一とするだけでなく、ガス拡散シート12内で不均一に添加してもよい。例えば、ガス拡散シート12の厚さ方向に添加量の勾配を形成してもよい。
【0030】
図5に、本実施形態における、ガス拡散シート12の厚さ方向と低結晶化度カーボンの添加量との関係を示す。ガス拡散シート12の厚さ方向は、MEA10側(アノード触媒層側)とセパレータ20側(ガス流路側)で示している。図5に示すように、低結晶化度カーボン12cの添加量は、MEA10側で少なく、セパレータ20側に向かう程多くなるように設定される。なお、添加量の勾配は、符号100で示すようにセパレータ20側に向かう程線形に増大してもよく、あるいは符号102で示すように非線形に増大してもよい。また、符号104に示すように、ステップ状あるいは階段状に増大してもよい。図5に示すような勾配を形成するためには、例えば低結晶化度カーボン12cの含有量が異なる2種類以上の溶媒を用意し、ガス拡散シート12の片側あるいは両側から含浸すればよい。
【0031】
図6に、本実施形態における低結晶化度カーボン12cの添加の様子を模式的に示す。低結晶化度カーボン12cは、MEA10側において少なく、セパレータ20側で多くなっている。
【0032】
低結晶化度カーボン12cの添加量をガス拡散シート12の厚さ方向に変化させる理由は以下の通りである。すなわち、低結晶化度カーボン12cは、犠牲酸化により触媒層カーボンの酸化を抑制することができるが、同時に、表面官能基減により親水化するため排水性が低下してしまい、排水性の低下はフラッディングを生じさせ、燃料電池セルの電圧低下を引き起こす。そこで、ガス拡散シート12のうち、MEA10側においては、低結晶化度カーボン12cの添加量を少なくして排水性低下を抑制することで、燃料電池セルの電圧低下を抑制する。
【0033】
図7に、図5に示すように低結晶化度カーボン12cの添加量に勾配を形成した場合の、ガス拡散シート12の厚さ方向と撥水性との関係を示す。低結晶化度カーボン12cの添加量は、MEA10側で少ないため、ガス拡散シート12の撥水性もMEA10側で高くなる。
【0034】
本願出願人は、低結晶化度カーボン12cの勾配を変化させてガス拡散シート12の水との接触角(ガス拡散シート12の表面に水滴をたらしたときの接触角)がどのように変化するかを検討したところ、
勾配がない場合:
接触角=120度程度
であるのに対し、
添加量をMEA10側:中央:セパレータ20側=2.0:0.5:0.5とした場合:接触角=100度程度(MEA10側)
接触角=140度程度(セパレータ20側)
であり、さらに、
添加量をMEA10側:中央:セパレータ20側=0.5:0.5:2.0とした場合:接触角=140度(MEA10側)
接触角=100度程度(セパレータ20側)
となることを確認している。接触角が増大するほど撥水性となり、排水性が向上する。
【0035】
このように、低結晶化度カーボン12cの添加量を、MEA10側で少なく、セパレータ20側で多く設定することで、MEA10側での撥水性、すなわち排水性を確保し、燃料電池セルの出力電圧低下を抑制しつつ、触媒層カーボンの酸化を抑制することができる。
【0036】
なお、低結晶化度カーボン12cの添加量をセパレータ20側で多く設定することで、セパレータ20側におけるガス拡散シート12の接触抵抗を減らすこともできる。
【0037】
図8に、ガス拡散シート12の厚さ方向と接触抵抗との関係を示す。セパレータ20側において低結晶化度カーボン12cの添加量が多くなるため、これに伴って接触抵抗も減少する。接触抵抗が減少することで、燃料電池セルの電流密度が増大し得る。
【0038】
3.第3実施形態
図9に、本実施形態におけるガス拡散シート12の厚さ方向と低結晶化度カーボン12cの添加量との関係を示す。第2実施形態では、セパレータ20側に向かう程、添加量が多くなっているが、本実施形態では、MEA10側からガス拡散シート12の中央に向けて添加量は多くなるが、中央からセパレータ20側に向けて添加量は逆に少なくなる。すなわち、ガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において添加量が最も多く、MEA10側に向かうほど、及びセパレータ20側に向かうほど添加量は少なくなる。符号200に示すように、添加量は中央において最大となるように線形に変化してもよく、あるいは符号202に示すように非線形に変化してもよい。さらに、符号204のように、中央部近傍においてのみ添加されていてもよい。このように、中央部において添加量を多く、MEA10側及びセパレータ20側において添加量を少なくするためには、例えばガス拡散シート12を厚さ方向に2分割し、それぞれ低結晶化度カーボン12cを含む溶媒を片側から含浸させて勾配をつくり、これらを合体させて1つのガス拡散シート12を構成すればよい。
【0039】
図10に、本実施形態における低結晶化度カーボン12cの添加の様子を模式的に示す。低結晶化度カーボン12cは、中央部において最も多く、MEA10側に向かう程少なくなり、かつ、セパレータ20側に向かう程少なくなる。
【0040】
低結晶化度カーボン12cの添加量をガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において最も多くする理由は以下の通りである。すなわち、低結晶化度カーボン12cの犠牲酸化により触媒層カーボンの酸化が抑制されるが、同時に、低結晶化度カーボン12cの犠牲酸化に伴ってカーボン繊維12aの結着点の強度が低下する。したがって、MEA10側ではカーボン繊維12aがガス拡散シート12の膜表面から突き出し、MEA10に突き刺さってクロスリークが生じ得る。また、セパレータ20側では流路を構成する部材のガス拡散シート12表面への食い込みが生じ得る。そこで、ガス拡散シート12のうち、MEA10側及びセパレータ20側では低結晶化度カーボン12cの添加量を少なくして、犠牲酸化に伴う結着点の強度低下を抑制し、カーボン繊維12aの突き出し等を抑制する。
【0041】
なお、本実施形態では、ガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において低結晶化度カーボン12cの添加量が多く、低結晶化度カーボン12cの犠牲酸化によりガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において強度が低下するので、ガス拡散シート12のバネ性が維持ないし向上することになる。このことは、MPL(マイクロポーラス層)を用いた場合の運転時におけるMPLのクリープをガス拡散シート12のバネ性で吸収し、面圧の低下をキャンセルする効果もある。
【0042】
図11に、ガス拡散シート12の厚さ方向における低結晶化度カーボン12cの添加量を変化させた場合の、ガス拡散シート12のバネ性維持率の変化を示す。低結晶化度カーボン12cを厚さ方向に均一に添加した場合、添加量をMEA10側:中央部:セパレータ20側=2.0:0.5:0.5とした場合、及びMEA10側:中央部:セパレータ20側=0.5:0.5:2.0とした場合は、いずれもバネ性維持率が70%程度であるのに対し、添加量をMEA10側:中央部:セパレータ20側=0.5:2.0:0.5とした場合には、90%程度と著しく高い。
【0043】
このように、ガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において添加量を多く設定することで、犠牲酸化に伴って厚さ方向の両端における結着点の強度低下を抑制するとともに、ガス拡散シート12のバネ性を維持して面圧低下を抑制し、面圧低下に伴う出力電流低下を抑制し得る。
【0044】
4.変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず他の変形例も可能である。
【0045】
例えば、第2実施形態では低結晶化度カーボン12cの添加量を、
MEA10側<セパレータ20側
に設定し、第3実施形態では添加量を、
MEA10側、セパレータ20側<中央部
に設定しているが、これらを組み合わせることも可能である。すなわち、添加量を、
MEA10側<セパレータ20側<中央部
に設定することもできる。これにより、MEA10側における排水性を確保するとともに、MEA10側及びセパレータ20側における結着点の強度低下を抑制し、かつ、ガス拡散シート12のバネ性を維持できる。
【0046】
また、第3実施形態では、ガス拡散シート12の厚さ方向の中央部において添加量を多くしているが、「中央部」とは必ずしも物理的な中央を意味するものではなく、添加量最大の位置が物理的な中央からMEA10側、あるいはセパレータ20側に偏っていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 MEA(膜電極接合体)、12,14 ガス拡散シート、20,30 セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
アノード触媒層と、
前記アノード触媒層に隣接形成され、水素含有ガスを拡散させて前記アノード触媒層に供給するガス拡散層と、
前記ガス拡散層に隣接形成され、前記ガス拡散層に前記水素含有ガスを供給するセパレータと、
を備え、
前記ガス拡散層の発電面内に、前記アノード触媒層のカーボンよりも相対的に低結晶化度のカーボンが添加される
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、さらに、
前記ガス拡散層の発電面内に、前記低結晶化度のカーボンとともに電解質が前記ガス拡散層のカーボン繊維にコーティングされる
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池において、さらに、
前記ガス拡散層の非発電面内に、電解質が含浸される
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池において、
前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層の厚さ方向に変化する
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池において、
前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、前記アノード触媒層側において前記セパレータ側よりも相対的に少ない
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項4記載の燃料電池において、
前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、中央部において前記アノード触媒層側及び前記セパレータ側よりも相対的に多い
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項4記載の燃料電池において、
前記低結晶化度のカーボンの添加量は、前記ガス拡散層のうち、中央部において前記セパレータ側よりも相対的に多く、かつ、前記セパレータ側において前記アノード触媒層側よりも相対的に多い
ことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−164479(P2012−164479A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22892(P2011−22892)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】