説明

燃料電池

【課題】セルスタックのそれぞれの発電素子にほぼ均一にガスを供給できる燃料電池を提供する。
【解決手段】固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子62を複数積層してなり、該複数の発電素子が電気的に接続されたセルスタックと、前記複数の発電素子にガス通路74を介してガスを供給するマニホールド58aと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管80aとを具備し、ガス供給管によりマニホールドに供給されたガスを、ガス通路74を介して発電素子にそれぞれ供給する燃料電池であって、セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路74の断面積が、セルスタックのガス供給管80a側におけるガス通路74の断面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電素子を複数積層してなるセルスタックと、複数の発電素子にガス通路を介してガスを供給するマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代エネルギーとして、近年、固体高分子形、リン酸形、溶融炭酸塩形及び固体電解質形等の種々の形の燃料電池が提案されている。特に、固体電解質形燃料電池は、作動温度が高いが、発電効率が高い、排熱利用が可能である等の利点を有しており、研究開発が推し進められている。
【0003】
燃料電池は、例えば、下記特許文献1に記載されているように、収納容器内に、燃料電池セルを複数積層してなるセルスタックと、該セルスタックが設けられたマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備したものが知られている。このような燃料電池では、ガス供給管によりマニホールドに供給されたガスが、マニホールドに連通するガス通路を介して燃料電池セルの発電部にそれぞれ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−285340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した燃料電池では発電する場合、セルスタックの燃料電池セルの積層方向中央部が、セルスタックの両側部よりも高温となる現象が必然的に発生する。これは、燃料電池セルに電流を流して発電させることにより、燃料電池セルにジュール熱と反応熱が発生し、その熱が燃料電池セルの積層方向中央部に留まることから発生する現象である。従って、燃料電池運転時では、燃料電池セルの積層方向中央部におけるセルスタックの温度が高く、セルスタックの両側部は温度が低いといった温度分布が発生する。
【0006】
このような燃料電池では、積層方向中央部における燃料電池セルではガス通路内のガスが膨張し、これにより、積層方向中央部における燃料電池セルのガス通路における圧力損失が大きくなり、燃料利用率を高くした場合には、積層方向中央部における燃料電池セルにいわゆる燃料枯れが生じる虞があった。
【0007】
燃料枯れが生じないまでも、積層方向中央部における燃料電池セルへのガス供給量が少なくなり、積層方向中央部における燃料電池セルの発電性能が低下し、燃料電池全体としても発電量が低下するという問題があった。
【0008】
このような問題は、10KW以下の燃料電池、特に家庭用として用いられる燃料電池において顕著であった。即ち、家庭用で用いられる燃料電池は小型で高効率化が要求されるため、燃料電池セル間の間隔が短く、燃料電池セルの密集度が高いため、セルスタック内で温度分布が生じやすく、積層方向中央部における燃料電池セルのガス通路における圧力損失が大きくなりやすい。
【0009】
本発明は、セルスタックの発電素子にほぼ均一にガスを供給できる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料電池は、固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子を複数積層してなり、該複数の発電素子が電気的に接続されたセルスタックと、前記複数の発電素子にガス通路を介してガスを供給するマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備するとともに、前記ガス供給管により前記マニホールドに供給されたガスを、前記ガス通路を介して前記発電素子にそれぞれ供給する燃料電池であって、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の断面積が、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
発電素子へガスを供給するガス通路を同一断面積とした場合、発電素子は発電反応熱やジュール熱により、発電素子積層方向中央部における発電素子の温度が、発電素子積層方向両側部の発電素子よりも高くなるため、ガス膨張により発電素子の積層方向中央部におけるガス通路内の圧力損失が大きくなり、マニホールドにガスを供給するガス供給管側の発電素子に比較して発電素子へのガス供給量が少なくなり、積層方向中央部の発電素子に、いわゆる燃料枯れが生じる虞があるが、本発明では、セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の断面積を、セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の断面積よりも大きくしたため、発電素子積層方向中央部における発電素子の温度が高くなったとしても、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子にガスを供給するガス通路の圧力損失差を小さくすることができ、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子に供給されるガス量をほぼ均一とできる。
【0012】
また、本発明の燃料電池は、前記ガス供給管によるガス供給方向端部におけるガス通路の断面積は、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の断面積よりも小さく、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の断面積よりも大きいことを特徴とする。このような燃料電池では、セルスタック全体におけるガス通路の圧力損失差を小さくすることができ、ガスをセルスタックのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することができる。
【0013】
本発明の燃料電池は、固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子を複数積層してなり、該複数の発電素子が電気的に接続されたセルスタックと、前記複数の発電素子にガス通路を介してガスを供給するマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備するとともに、前記ガス供給管により前記マニホールドに供給されたガスを、前記マニホールドに連通するガス通路を介して前記発電素子にそれぞれ供給する燃料電池であって、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の長さが、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の長さよりも短いことを特徴とする。
【0014】
このような燃料電池では、セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路長さが、マニホールドのガス供給管側におけるガス通路の長さよりも短いため、積層方向中央部における発電素子の温度が高くなったとしても、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子にガスを供給するガス通路の圧力損失差を小さくすることができ、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子に供給されるガス量をほぼ均一とできる。
【0015】
また、本発明の燃料電池は、前記ガス供給管によるガス供給方向端部におけるガス通路の長さは、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の長さよりも長く、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の長さよりも短いことを特徴とする。このような燃料電池では、セルスタック全体におけるガス通路の圧力損失差を小さくすることができ、ガスをセルスタックのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することが
できる。
【0016】
本発明の燃料電池は、発電量が10KW以下であることを特徴とする。また、本発明の燃料電池は、家庭用に用いられることを特徴とする。このような燃料電池では、小型で、高い発電量を得るため、多数の発電素子を隙間なく配置する必要があり、特に発電素子の積層方向中央部がその両側よりも高温となりやすくなるため、本発明の燃料電池を有効に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池は、積層方向中央部における発電素子の温度が高くなったとしても、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子にガスを供給するガス通路の圧力損失差を小さくすることができ、発電素子積層方向中央部とガス供給管側の発電素子に供給されるガス量をほぼ均一とできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の燃料電池の好適実施形態を示す断面図。
【図2】空気室内から見た空気供給管の配設パターンを示すもので、(a)は平面図、(b)は分解斜視図。
【図3】図1の燃料電池に使用されている発電ユニット集合体を示す斜視図。
【図4】図3の発電ユニットを示す斜視図。
【図5】図3のセルスタックを示す断面図。
【図6】発電素子積層方向中央部の燃料ガス通路の断面積を、両側部の燃料ガス通路より大きくした形態を示す斜視図。
【図7】発電素子積層方向中央部の燃料ガス通路の長さを、両側部の燃料ガス通路より長くした形態を示す斜視図。
【図8】(a)は燃料電池セルの下端部に燃料ガス供給管を設けた状態を示す斜視図、(b)は燃料ガス供給管の長さを制御した形態を示す断面図。
【図9】燃料ガス供給管の断面積を制御した形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の燃料電池を図1〜3を参照して説明する。図示の燃料電池は略直方体形状のハウジング2を具備している。このハウジング2の6個の壁面の外面には適宜の断熱材から形成された断熱壁(遮熱部材)、即ち上断熱壁4、下断熱壁6、右側断熱壁8、左側断熱壁9、前断熱壁(図示せず)及び後断熱壁(図示せず)が配設されている。ハウジング2内には発電・燃焼室12が規定されている。
【0020】
前断熱壁及び/又は後断熱壁は着脱自在或いは開閉自在に装着されており、前断熱壁及び/又は後断熱壁を離脱或いは開動せしめることによって発電・燃焼室12内にアクセスすることができる。所望ならば、各断熱壁の外面に金属板製でよい外壁を配設することができる。
【0021】
ハウジング2内の上端部には空気室(酸素含有ガス室)16が配設されている。空気室16は上下方向寸法が比較的小さい直方体形状のケース17内に規定されている。空気室16には、発電・燃焼室に向かって空気(酸素含有ガス)を送り込むための多数の空気供給管(酸素含有ガス供給手段)22aの上端が連通している。空気供給管22aaの形状は円筒や中空板構造などが考えられる。図1、2では円筒の空気供給管22aaを記載した。空気供給管22aは後述するセルスタック間に配置されており、セルの下端部において開口し、この開口部から空気が噴出する構造となっている。空気供給管22aaはセラミックスなどの耐熱性の高い材料で作製するのが好適である。
【0022】
ハウジング2の両側部、更に詳しくは右側断熱壁8の内側及び左側断熱壁9の内側には、全体として平板形状である熱交換器24が配設されている。熱交換器24の各々は実質上鉛直に延在する中空平板形態のケース26から構成されている。
【0023】
かかるケース26内にはその横方向中間に位置する仕切板28が配設されており、ケース26内は内側に位置する排出路30と外側に位置する流入路32とに区画されている。排出路30内には上下方向に間隔をおいて3枚の仕切壁34及び36が配置されている。更に詳述すると、排出路30内には、その前縁はケース26の前壁(図示していない)から後方に離隔して位置するがその後縁はケース26の後壁(図示していない)に接続されている形態の仕切壁34と、その前縁はケース26の前壁に接続されているがその後縁はケース26の後壁から前方に離隔して位置せしめられている仕切壁36とが交互に配置されており、かくして燃焼ガス排出路30はジグザグ形態にせしめられている。なお、所望ならばジグザグ形態の流路以外の形態でも良い。
【0024】
同様に、流入路32内にも上下方向に間隔をおいて3枚の仕切壁38及び40、即ちその前縁はケース26の前壁(図示していない)から後方に離隔して位置するがその後縁はケース26の後壁(図示していない)に接続されている形態の仕切壁38と、その前縁はケース26の前壁に接続されているがその後縁はケース26の後壁から前方に離隔して位置せしめられている仕切壁40とが交互に配置されており、かくして流入路32もジグザグ形態にせしめられている。なお、所望ならばジグザグ形態の流路以外の形態でも良い。
【0025】
ケース26の内側壁の上端部には排出開口42が形成されており、排出路30は排出開口42を介して発電・燃焼室12と連通せしめられている。図示の実施形態においては、熱交換器24の各々の発電・燃焼室12側、即ち、燃料電池セル側、及び燃料電池セルの上下には、蓄熱材からなる蓄熱壁(遮熱部材)が配置されている。即ち右側蓄熱壁44a、左側蓄熱壁44b、前蓄熱壁(図示せず)及び後蓄熱壁(図示せず)、下蓄熱壁44e、上断熱壁44fが、セル集合体を取り囲むように配設されている。かかる右側蓄熱壁44a、左側蓄熱壁44bの上部には、排出開口42の下縁と実質上同高に位置して開口する開口部45が形成されており、排出開口42は開口部45を通して発電・燃焼室12に連通せしめられている。
【0026】
ケース26の上壁における外側部には流入開口48が形成されており、流入路32はかかる流入開口48を介して空気室(酸素含有ガス室)16に連通せしめられている。熱交換器24、流入開口48は、ガス供給流路を構成している。流入路32の各々の後方には上下方向に細長く延びる二重筒体50(図1にその上端部のみを図示している)が配設されており、かかる二重筒体50は外側筒部材52と内側筒部材54とから構成されている。排出路30の下端部は外側筒部材52と内側筒部材54との間に規定されている排出路の下端部に接続されており、流入路32の下端部は内側筒部材54内に規定されている流入路に接続されている。
【0027】
上述した発電・燃焼室の下部には4個の発電ユニット56a、56b、56c及び56dが配置されている。発電ユニット56a、56b、56c及び56dは、夫々、上述した空気供給管22a間に位置せしめられている。言い換えれば、発電ユニット56a、56b、56c及び56d間に、空気供給管22aが配設されている。
【0028】
即ち、複数の燃料電池セル62が一列に配設されてセルスタック60a、60b、60c及び60dが構成され、複数のセルスタック60a、60b、60c及び60dが、複数の燃料電池セル62が行列をなすように(燃料電池セルの配列方向と直角をなす方向に)所定間隔を置いて配列されており、セルスタック60a、60b、60c及び60d間に空気供給管22aにより空気が供給されるように構成されている。
【0029】
燃料電池セル62は、燃料ガス通路74が長さ方向に貫通して設けられており、該燃料電池セル62は、後述するように、燃料マニホールド58aの上面上に立設して設けられている。
【0030】
空気供給管22aの接続構造を具体的に説明すると、図2(b)に示すように、空気供給管22aが一列に配設された状態で、その一端部が板状体17aに固定された配管集合体18を複数作製するとともに、空気室16を構成するケース17のセルスタック側の壁17bに、セルスタック間の空間に位置する部分にスリット17cをそれぞれ形成し、該スリット17cに配管集合体18の空気供給管22aをそれぞれ挿入し、配管集合体18の板状体17aをセルスタック壁17bの上面に当接し固定されている。
【0031】
空気供給管22aは断面がリング状をなしており、円筒状とされ、空気供給管22a内部を上から下へと空気を供給し、燃料電池セル62内部を下から上へと燃料ガスが供給される。
【0032】
図1、2と共に、図3、4を参照して説明を続けると、発電ユニット56aは前後方向(図1において紙面に垂直な方向)に細長く延びる直方体形状の燃料マニホールド58aを具備している。
【0033】
燃料ガス室を規定している燃料マニホールド58aの上面上にはセルスタック60aが設けられている。セルスタック60aは上下方向に細長く延びる直立セル62を燃料マニホールド58aの長手方向(即ち前後方向)に複数個縦列配置(一列)して構成されている。図5に明確に図示する如く、中空平板状のセル62の各々は電極支持基板64、内側電極層である燃料極層66、固体電解質層68、外側電極層である酸素極層70、及びインターコネクタ72から構成されている。
【0034】
電極支持基板64は上下方向に細長く延びる柱状の板状片であり、その断面形状は平坦な両面と半円形状の両側面を有する。電極支持基板64にはこれを鉛直方向に貫通する複数個(図示の場合は6個)の燃料ガス通路74が形成されている。燃料電池セル62の各々は燃料マニホールド58aの上壁上に、例えば耐熱性に優れたセラミック接着剤によって接合される。
【0035】
燃料マニホールド58aの上壁には図1において紙面に垂直な方向に間隔をおいて左右方向に延びる複数個のスリット(図示していない)が形成されており、電極支持基板64の各々に形成されている燃料ガス通路74がスリットの各々に従って燃料ガス室に連通せしめられる。
【0036】
インターコネクタ72は電極支持基板64の片面(図5のセルスタック60aにおいて上面)上に配設されている。燃料極層66は電極支持基板64の他面(図5のセルスタック60aにおいて下面)及び両側面に配設されており、その両端はインターコネクタ72の両端に接合せしめられている。固体電解質層68は燃料極層66の全体を覆うように配設され、その両端はインターコネクタ72の両端に接合せしめられている。酸素極層70は、固体電解質層68の主部上、即ち電極支持基板64の他面を覆う部分上に配置され、電極支持基板64を挟んでインターコネクタ72に対向して位置せしめられている。
【0037】
固体電解質層68の一方側には、燃料極層66が形成され、他方側には酸素極層70が形成されており、これにより、電極支持基板64の片面(図5のセルスタック60aにおいて下面)上に、固体電解質層68上に燃料極層66、酸素極層70が重畳した発電素子が配設されている。言い換えれば、発電素子は、電極支持基板64、インターコネクタ7
2、集電部材76を介して複数積層されており、隣設する発電素子同士は、電極支持基板64、インターコネクタ72、集電部材76を介して電気的に直列に接続され、セルスタック60aが構成されている。
【0038】
セルスタック60aにおける隣接するセル62間には集電部材76が配設されており、一方のセル62のインターコネクタ72と他方のセル62の酸素極層70とを接続している。セルスタック60aの両端、即ち図5において上端及び下端に位置するセル62の片面及び他面にも集電部材76が配設されている。セルスタック60aの両端に位置する集電部材76には電力取出手段(図示していない)が接続されており、かかる電力取出手段はハウジング2の前断熱壁、後断熱壁、または下断熱材6を通してハウジング2外に延在せしめられている。所望ならば、セルスタック60a、60b、60c及び60dの各々に電力取出手段を配設することに代えて、適宜の接続手段によってセルスタック60a、60b、60c及び60dを相互に直列接続し、4個のセルスタック60a、60b、60c及び60dに関して共通の電力取出手段を配設することもできる。
【0039】
セル62について更に詳述すると、電極支持基板64は燃料ガスを燃料極層66まで透過させるためにガス透過性であること、そしてまたインターコネクタ72を介して集電するために導電性であることが要求され、かかる要求を満足する多孔質の導電性セラミック(若しくはサーメット)から形成することができる。
【0040】
燃料極層66及び/又は固体電解質層68との同時焼成によりセル62を製造するためには、鉄属金属成分と特定希土類酸化物とから電極支持基板64を形成することが好ましい。所要ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35乃至50%の範囲にあるのが好適であり、そしてまたその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
【0041】
燃料極層66は多孔質の導電性セラミック、例えば希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニアと称されている)とNi及び/又はNiOとから形成することができる。
【0042】
固体電解質層68は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと空気とのリークを防止するためにガス遮断性を有するものであることが必要であり、通常、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrOから形成されている。
【0043】
酸素極層70は所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電セラミックから形成することができる。酸素極層70はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
【0044】
インターコネクタ72は導電性セラミックから形成することができるが、水素ガスでよい燃料ガス及び空気と接触するため、耐還元性及び耐酸化性を有することが必要であり、このためにランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ72は電極支持基板64に形成された燃料ガス通路74を通る燃料ガス及び電極支持基板64の外側を流動する空気のリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが望まれる。
【0045】
集電部材76は弾性を有する金属又は合金から形成された適宜の形状の部材或いは金属繊維又は合金繊維から成るフェルトに所要表面処理を加えた部材から構成することができる。
【0046】
図4を参照して説明を続けると、発電ユニット56aは、セルスタック60aの上方を前後方向に細長く延びる長方体形状(或いは円筒形状)であるのが好都合である改質ケース78aも具備している。改質ケース78aの前面には燃料ガス送給管80aの一端即ち上端が接続されている。
【0047】
燃料ガス送給管80aは下方に延び、次いで湾曲して後方に延び、燃料ガス送給管80aの他端は上記燃料マニホールド58aの前面(一端部)に接続されている。改質ケース78aの後面には被改質ガス供給管82aの一端が接続されている。被改質ガス供給管82aは改質ケースから下方に延び、ハウジング2の下を通ってハウジング2外に延出している。
【0048】
そして、本発明の燃料電池では、図6に示すように、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料電池セル62の燃料ガス通路74の断面積が、セルスタック60aの燃料ガス供給管80a側(図6の右側)における燃料電池セル62の燃料ガス通路74の断面積よりも大きくされている。電極支持基板64にはこれを鉛直方向に貫通する複数個(図示の場合は6個)の燃料ガス通路74が形成されているが、電極支持基板64の6個の燃料ガス通路74は同一断面積とされている。
【0049】
このような燃料電池では、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料ガス通路74の断面積を、セルスタック60aの燃料ガス供給管側における燃料ガス通路74の断面積よりも大きくしたため、発電素子積層方向x中央部における発電素子の温度が高くなったとしても、発電素子積層方向x中央部と燃料ガス供給管80a側の発電素子にガスを供給する燃料ガス通路74の圧力損失差を小さくすることができ、発電素子積層方向x中央部とガス供給管側の発電素子に供給されるガス量をほぼ均一とできる。
【0050】
また、図6に示すように、燃料ガス供給管80aによる燃料ガス供給方向Y端部における燃料ガス通路74の断面積が、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料ガス通路74の断面積よりも小さく、セルスタック60aの燃料ガス供給管側における燃料ガス通路74の断面積よりも大きくされている。これにより、セルスタック60a全体における燃料ガス通路74の圧力損失差を小さくすることができ、燃料ガスをセルスタック60aのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することができる。
【0051】
被改質ガス供給管82aは都市ガス等の炭化水素ガスでよい被改質ガス供給源(図示していない)に接続されており、被改質ガス供給管82aを介して改質ケース78aに被改質ガスが供給される。改質ケース78a内には燃料ガスを水素リッチな燃料ガスに改質するための適宜の改質触媒が収容されている。
【0052】
図示の実施形態においては、改質ケース78aは燃料ガス送給管80aを介して燃料マニホールド58aに接続され、これによって所要位置に保持されているが、所要ならば、図4に二点鎖線で図示する如く、例えば上記被改質ガス供給管82aの下面と燃料マニホールド58aの後端部下面或いは後面との間に適宜の支持部材84aを付設することもできる。
【0053】
図3において説明すると、発電ユニット56cは上述した発電ユニット56aと実質上同一であり、発電ユニット56b及び56dは、発電ユニット56a及び56cに対して前後方向が逆に配置されていること、従って改質ケース78b及び78dと燃料マニホールド58b及び58dとを接続する燃料ガス送給管(図示していない)が後側に配置され、被改質ガス供給管82b及び82dが改質ケースから下方に延び、ハウジング2の下を通ってハウジング2外に延出している。
【0054】
上述したとおりの燃料電池においては、被改質ガスが被改質ガス供給管82a、82b、82c、82dを介して改質ケース78a、78b、78c及び78dに供給され、改質ケース78a、78b、78c及び78d内において水素リッチな燃料ガスに改質された後に、燃料ガス送給管80a、80b、80c、80dを通して燃料マニホールド58a、58b、58c及び58d内に規定されている燃料ガス室に、その長手方向(燃料電池セルの積層方向)に供給され、次いでセルスタック60a、60b、60c及び60dの燃料電池セル62の燃料ガス通路74を介して、燃料電池セル62の発電素子にそれぞれ供給される。
【0055】
セルスタック60a、60b、60c及び60dのセル62各々においては、酸素極において、
1/2O+2e→O2−(固体電解質)
の電極反応が生成され、燃料極において、
2−(固体電解質)+H→HO+2e
の電極反応が生成されて発電される。
【0056】
発電に使用されることなくセルスタック60a、60b、60c及び60dから上方に流動した燃料ガス及び空気は、起動時に発電・燃焼室12内に配設されている点火手段(図示していない)によって点火されて燃焼される。周知の如く、セルスタック60a、60b、60c及び60dにおける発電に起因して、そしてまた燃料ガスと空気との燃焼に起因して発電・燃焼室12内は例えば800℃程度の高温になる。改質ケース78a、78b、78c及び78dは発電・燃焼室12内に配設され、セルスタック60a、60b、60c及び60dの直ぐ上方に位置せしめられており、燃焼炎によって直接的にも加熱され、かくして発電・燃焼室12内に生成される高温が被改質ガスの改質に効果的に利用される。
【0057】
発電・燃焼室12内に生成された燃焼ガスは熱交換器24に形成されている排出開口42から排出路30に流入し、ジグザグ状に延在する排出路30を流動した後に二重筒体50の外側筒部材52と内側筒部材54との間に規定されている排出路を通して排出される。燃焼ガスが二重筒体50における排出路を流動する際には、二重筒体50における流入路を空気が流動し、燃焼ガスと空気との間で熱交換が行われる。
【0058】
そしてまた、燃焼ガスが熱交換器24の排出路30をジグザグ状に流動せしめられる際には、空気が熱交換器24の流入路32をジグザグ状に対向するように流動せしめられる。かくして燃焼ガスと空気との間で効果的に熱交換されて空気が予熱される。
【0059】
長期間に渡って発電を遂行することによってセルスタック60a、60b、60c及び60dの一部或いは全部が劣化した場合には、ハウジング2の前断熱壁或いは後断熱壁を離脱或いは開動せしめ、発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部或いは全部をハウジング2内から取り出す。
【0060】
そして、発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部或いは全部を新しいものに交換して、或いは発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部或いは全部におけるセルスタック60a、60b、60c及び60dのみを新しいものに交換して、再びハウジング2内の所要位置に装着すればよい。発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部あるいは全部における改質ケース78a、78b、78c及び78d内に収容されている改質触媒を交換することが必要な場合にも、発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部或いは全部をハウジング2内から取り出し、発電ユニット56a、56b、56c及び56dの一部或いは全部における改質ケース78a、78b、
78c及び78d自体を新しいものに或いは改質ケース78a、78b、78c及び78d内の改質触媒のみを新しいものに交換すればよい。
【0061】
改質ケース78a、78b、78c及び78d内の改質触媒の交換を充分容易に遂行し得るようになすために、所望ならば改質ケース78a、78b、78c及び78dの一部を開閉自在な扉にせしめることができる。
【0062】
一方、空気は二重筒体50の内側筒部材54内に規定されている流入路を通して熱交換器24の流入路32に供給され、熱交換器24を通過して予熱(加熱)された空気は、空気室16に一旦貯留され、空気供給管22aを通って燃焼・発電室12のセルスタック間に供給される。この際、空気供給管22aはセルスタック60の燃料電池セル62の上端の燃料ガス通路74近傍で燃焼する燃焼ガス雰囲気中を通過する。従って、空気室16の予熱空気はセルスタック60上部の燃焼領域でさらに加熱され、高温に暖められた空気がセルに供給される。
【0063】
特に、本発明では、多数の燃料電池セル62を集電部材76により電気的に接続したが、このような燃料電池では、発電素子積層方向中央部が加熱されやすいため、本発明を好適に用いることができる。
【0064】
以上、添付図面を参照して本発明の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言するまでもない。
【0065】
例えば、セルスタックの上方に特定の改質ケースを備えた燃料電池組立体に関連せしめて本発明を説明したが、改質ケースがセルスタックの上方以外の場合でも、本発明を適用することが出来る。また、改質ケースをハウジング内に設けない場合であっても良い。
【0066】
また、上記形態では、図2に示したように、複数の円筒状の空気供給管22aを一列に配列し、これをセルスタック間等に配置したが、複数の円筒状の空気供給管の代わりに中空板状の空気供給管を用いても良い。
【0067】
さらに、上記形態では、燃料電池セルの上方で燃料ガスと空気が反応して燃焼する場合について説明したが、燃焼しない場合であっても本発明を適用できるが、燃焼させるタイプの場合には、ハウジング内がより高温となりやすいため、本発明を好適に用いることができる。
【0068】
また、上記形態では、円筒状の空気供給管を用いて、最下端の開口から空気を下方に向けて供給する場合について説明したが、側方に配置されている燃料電池セルに空気を噴出するため、円筒状の空気供給管の側面から空気が噴出されるようにしても良い。
【0069】
また、上記形態では、空気を空気供給管を用いて上方から下方に向けて供給する場合について説明したが、本発明では、下方から上方に向けて供給する場合であっても良い。
図7は、本発明の燃料電池の他の形態を示すもので、この形態では、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料ガス通路74の長さが、セルスタック60aの燃料ガス供給管80a側における燃料ガス通路74の長さよりも短くされている。
【0070】
尚、セルスタック60aの発電素子の長さは全て同一長さとされている。即ち、発電素子積層方向xの両端部の燃料電池セル62では、発電素子積層方向x中央部における燃料電池セル62と比較して、酸素極層70の形成位置は同一高さであるが、セル長さが長く形成され、これにより、燃料ガス通路74の長さが長く形成されている。
【0071】
このような燃料電池では、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料ガス通路74の長さは、マニホールド58aの燃料ガス供給管側における燃料ガス通路74の長さよりも短いため、積層方向x中央部における発電素子の温度が高くなったとしても、発電素子積層方向x中央部と燃料ガス供給管80a側の発電素子にガスを供給する燃料ガス通路74の圧力損失差を小さくすることができ、発電素子積層方向x中央部とガス供給管側の発電素子に供給されるガス量をほぼ均一とできる。
【0072】
さらに、燃料ガス供給管80aによる燃料ガス供給方向Y端部における燃料ガス通路74の長さを、セルスタック60aの発電素子積層方向x中央部における燃料ガス通路74の長さよりも長く、セルスタック60aの燃料ガス供給管側における燃料ガス通路74の長さよりも短くすることにより、セルスタック60a全体における燃料ガス通路74の圧力損失差を小さくすることができ、ガスをセルスタック60aのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することができる。
【0073】
図8は、本発明の燃料電池のさらに他の形態を示すもので、この形態では、燃料電池セル62の燃料ガス通路74とは別途に、燃料電池セル62の下端部に燃料ガス通路74への連結管74aを有するセル固定用キャップ90を、予めシール材91にてシール固定し、これらを複数個束ね、一括してマニホールド58aに同じくシール材にてシール固定することでセルスタック60aを構成する。これらの連結管74aを、図8に示すように長さを変更し、もしくは図9に示すように断面積を変更することにより、前記形態と同様な効果が得られ、セルスタック60a全体における燃料ガス通路74の圧力損失差を小さくすることができ、ガスをセルスタック60aのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することができる。
【0074】
さらには、セル固定用キャップに取り付けられた連結管74aを、任意の金属部材から構成することができるため、高温になることが予測される積層方向x中央部の連結管74aを熱膨張係数の大きい金属部材にて構成し、更には燃料ガス供給方向Y端部においては温度が低いことが予測されるものの圧力の低下の懸念があるため、燃料ガス供給方向Y端部の連結管74aの熱膨張係数を、前記積層方向x中央部の連結管74aよりも熱膨張係数が小さく、燃料ガス供給管側における連結管74aの熱膨張係数よりも大きい金属部材にて構成し、発電時の温度分布に応じて連結管74aの断面積を変化させることが可能となり、これにより温度分布の少ない低温での発電時や発電を伴わない起動時においてもガスをセルスタック60aのそれぞれの発電素子にほぼ均一に供給することができる。
【0075】
尚、本発明は、固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子を複数積層した平板形燃料電池にも適用できる。即ち、平板形燃料電池では、平板状の発電素子を複数積層し、発電素子積層方向中央部が高温となりやすいため、本発明を好適に用いることができる。例えば、セパレータと燃料側電極とを連結する燃料極集電部材、もしくはセパレータにガス通路を設け、このガス通路を介して発電素子中央部にガスを供給し、この発電素子中央部から発電素子外周部に向けて流すことが行われるため、本発明を好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
58:マニホールド
60:セルスタック
66:燃料側電極
68:固体電解質
70:酸素側電極
74:ガス通路
80:ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子を複数積層してなり、該複数の発電素子が電気的に接続されたセルスタックと、前記複数の発電素子にガス通路を介してガスを供給するマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備するとともに、前記ガス供給管により前記マニホールドに供給されたガスを、前記ガス通路を介して前記発電素子にそれぞれ供給する燃料電池であって、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の断面積が、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の断面積よりも大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガス供給管によるガス供給方向端部におけるガス通路の断面積は、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の断面積よりも小さく、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
固体電解質の一方側に燃料側電極、他方側に酸素側電極が形成された発電素子を複数積層してなり、該複数の発電素子が電気的に接続されたセルスタックと、前記複数の発電素子にガス通路を介してガスを供給するマニホールドと、該マニホールドの一端部に設けられたガス供給管とを具備するとともに、前記ガス供給管により前記マニホールドに供給されたガスを、前記マニホールドに連通するガス通路を介して前記発電素子にそれぞれ供給する燃料電池であって、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の長さが、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の長さよりも短いことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
前記ガス供給管によるガス供給方向端部におけるガス通路の長さは、前記セルスタックの発電素子積層方向中央部におけるガス通路の長さよりも長く、前記セルスタックのガス供給管側におけるガス通路の長さよりも短いことを特徴とする請求項3記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−164668(P2012−164668A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83900(P2012−83900)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2006−262934(P2006−262934)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】