説明

燃料電池

【課題】燃料電池内部から排出される酸化性ガスの熱を利用して、燃料電池(SOFC)に供給されるガスを効率良く予熱すること。
【解決手段】このSOFCでは、空気供給共通管21から複数の空気供給マニホールド22に供給された空気は、マニホールド22に形成された複数の供給孔22aを介して対応する発電構造体(セル積層体)10に向けて水平にそれぞれ流出し、対応する発電構造体10内の隣り合うセル11,11の間の空間にそれぞれ供給される。この空間内で、空気は、SOFCの発熱反応により加熱されたセル11から熱を受けて高温になる。この高温の空気は、発電構造体10(上記空間)から水平に排出されて、隣の空気供給マニホールド22の外壁における鉛直方向に延在する側面に当たる。前記側面に当たった空気は、前記側面に沿って鉛直上方向に移動・排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と呼ぶ。)などの燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
SOFCは、固体電解質の酸素伝導度を利用して発電する。このことに起因して、一般に、SOFCは、600℃以上、好ましくは700〜1000℃という高温(以下、「SOFCの作動温度」と呼ぶ。)で作動する。従って、SOFCセルに供給される燃料ガス(例えば、水素ガス)、及び酸化性ガス(例えば、空気)は、SOFCセル内部に供給される前に、SOFCの作動温度近傍まで予熱される必要がある。
【0003】
特許文献1では、SOFCセル内部から排出される燃料ガス(燃料ガスの排ガスと呼ぶこともできる)の熱を利用して、SOFCセルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給管、或いはSOFCセルに酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管を加熱する構成が開示されている。これにより、SOFCセルに供給される燃料ガス、或いは酸化性ガスが予熱される。
【0004】
SOFCセル内部で発生する発電反応は発熱反応である。従って、SOFCセル内部から排出される燃料ガスは、この発熱反応により熱を受けて高温になる。従って、SOFCセルに供給される燃料ガス及び酸化性ガスの予熱は、SOFCセル内部から排出される燃料ガスそのものの熱を利用して達成することができる。或いは、この予熱は、SOFCセル内部から排出される燃料ガスを燃焼させ、その燃焼により得られる熱を利用して達成することもできる。
【0005】
ところで、上述のように、SOFCセル内部で発生する発電反応は発熱反応である。従って、SOFCセル内部から排出される酸化性ガスも、この発熱反応により熱を受けて高温になる。特許文献2では、このことに着目して、SOFCセルに供給される酸化性ガスを予熱する構成が開示されている。
【0006】
具体的には、特許文献2に記載のSOFCは、複数の発電構造体を備える。複数の発電構造体のそれぞれは、内部に燃料ガスの内部流路が形成された平板状の複数の燃料電池セルが積み重ねられたセル積層体である。このSOFCは、外部から前記各発電構造体の各セルの前記内部流路に燃料ガスをそれぞれ供給するための燃料ガス供給路形成部材と、前記各発電構造体内の隣り合う前記セルの間の空間に前記セルの平面に沿って酸化性ガスをそれぞれ供給するための酸化性ガス供給路形成部材と、を備える。
【0007】
前記酸化性ガス供給路形成部材は、鉛直方向に整列して配置された複数の酸化性ガスマニホールドを備える。複数の酸化性ガスマニホールドのそれぞれは、水平方向に延設されるとともに、前記複数の発電構造体のうち対応する発電構造体に酸化性ガスを供給する。前記各酸化性ガスマニホールドと隣の前記酸化性ガスマニホールドとの間に前記各酸化性ガスマニホールドに対応する前記発電構造体が配置される。前記各発電構造体(セル積層体)は、それぞれが鉛直方向に延在する前記複数の平板状のセルが水平方向に積み重ねられている。
【0008】
前記複数の酸化性ガスマニホールド及び前記複数の発電構造体は、酸化性ガスが以下のように移動するよう固定配置されている。即ち、酸化性ガスは、前記各酸化性ガスマニホールドから前記対応する発電構造体内の隣り合う前記セルの間の空間に向けて鉛直上方向に流出・供給される。前記空間を通過した酸化性ガスは、前記空間から鉛直上方向に排出されるとともに前記隣の酸化性ガスマニホールドの外壁における水平方向に延在する底面に当たる。前記底面に当たった酸化性ガスは、水平方向に移動・排出される。
【0009】
この構成によれば、各発電構造体内部から排出される酸化性ガスの熱を利用して、隣の発電構造体に酸化性ガスを供給するための酸化性ガスマニホールドが加熱される。換言すれば、各酸化性ガスマニホールドが、隣の発電構造体内部から排出される酸化性ガスの熱を利用してそれぞれ加熱され得る。この結果、複数の発電構造体に供給される酸化性ガスが予熱され得る。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載のSOFCでは、前記隣の酸化性ガスマニホールドの外壁における水平方向に延在する底面に当たった酸化性ガスがその後において水平方向に移動する際、その移動方向が明確に定まり難い。従って、酸化性ガスの流れが安定しないことに起因して、各酸化性ガスマニホールドが効率良く加熱されているとは必ずしもいえない。この点において改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−129712号公報
【特許文献2】特開2006−172925号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者は、各酸化性ガスマニホールドが隣の発電構造体内部から排出される酸化性ガスの熱を利用して効率良くそれぞれ加熱され得る構成を見出した。
【0013】
本発明に係るSOFCでは、前記酸化性ガス供給路形成部材は、(水平方向に整列して配置された)複数の酸化性ガスマニホールドを備える。複数の酸化性ガスマニホールドのそれぞれは、鉛直方向に立設されるとともに、前記複数の発電構造体のうち対応する発電構造体に酸化性ガスを供給する。
【0014】
前記各酸化性ガスマニホールドと隣の前記酸化性ガスマニホールドとの間に前記各酸化性ガスマニホールドに対応する前記発電構造体が配置される。前記各発電構造体(セル積層体)は、それぞれが水平方向に延在する前記複数の平板状のセルが鉛直方向に積み重ねられていても、それぞれが鉛直方向に延在する前記複数の平板状のセルが水平方向に積み重ねられていてもよい。
【0015】
前記複数の酸化性ガスマニホールド及び前記複数の発電構造体は、酸化性ガスが以下のように移動するよう固定配置されている。即ち、酸化性ガスは、前記各酸化性ガスマニホールドから前記対応する発電構造体内の隣り合う前記セルの間の空間に向けて水平方向に流出・供給される。前記空間を通過した酸化性ガスは、前記空間から水平方向に排出されるとともに前記隣の酸化性ガスマニホールドの外壁における鉛直方向に延在する側面(前記対応する発電構造体に面する側面)に当たる。前記側面に当たった酸化性ガスは、前記側面に沿って鉛直上方向に移動・排出される。
【0016】
ここで、鉛直方向に延在する前記側面に当たった酸化性ガスが鉛直上方向に向けて移動するのは、発電構造体内部から排出された酸化性ガスが、SOFCの周囲に存在する酸化性ガスと比べて温度が高く、従って、SOFCの周囲に存在する酸化性ガスと比べて比重が小さいことに基づく。
【0017】
上記構成によれば、上記特許文献2に記載のSOFCと同様、各発電構造体内部から排出される酸化性ガスの熱を利用して、隣の発電構造体に酸化性ガスを供給するための酸化性ガスマニホールドが加熱される。換言すれば、各酸化性ガスマニホールドが、隣の発電構造体内部から排出される酸化性ガスの熱を利用してそれぞれ加熱され得る。この結果、複数の発電構造体に供給される酸化性ガスが予熱され得る。
【0018】
加えて、上述した比重の大小関係に基づいて、前記外壁の側面に当たった酸化性ガスは、前記外壁の側面に沿って安定して上昇していく。従って、前記外壁の側面の或る位置に当たった酸化性ガスは、自身の熱を前記外壁の側面に与えることによって自身の温度が下がった状態でその位置から上昇していく。他方、前記外壁の側面において位置が上側であるほど、前記側面に当たる酸化性ガス内における「その位置より下側で前記外壁の側面に既に当たったことに起因して自身の温度が下がった状態にあるガス」の割合が多くなる。
【0019】
このことは、前記外壁の側面の位置が上側であるほど、前記側面に当たる酸化性ガスの温度が低くなることを意味する。換言すれば、前記外壁の側面において下方から上方に向けて温度が低くなる(上方の温度が低い)温度分布が形成される。従って、酸化性ガスマニホールドの内部空間においても、下方から上方に向けて温度が低くなる(上方の温度が低い)温度分布が形成される。この結果、前記内部空間において下方から上方に向けた対流が顕著に発生し得る。従って、前記内部空間に酸化性ガスが下方向から上方向に向けて供給される構成が採用される場合、特に、前記内部空間内の酸化性ガスの温度を効率良く高めることができる。
【0020】
上記本発明に係るSOFCでは、前記鉛直方向に立設する各酸化性ガスマニホールドの内部空間には、酸化性ガスが鉛直下方向から鉛直上方向に向けて供給され、前記各酸化性ガスマニホールドの壁には、前記対応する発電構造体に面するとともに鉛直方向に延在する平面部が存在し、前記平面部には、前記対応する発電構造体に向けて酸化性ガスを水平方向に供給するための前記内部空間と連通する複数の供給孔が、鉛直方向に分布するように配置されることが好適である。
【0021】
一般に、上記構成が採用される場合、複数の供給孔のうちでその位置がより下側にあるものから、より多くの量(流量)の酸化性ガスが流出する傾向がある。即ち、複数の供給孔から流出する酸化性ガスの量(流量)にばらつきがあった。これに対し、上述のように、上記本発明に係るSOFCでは、酸化性ガスマニホールドの内部空間において、下方から上方に向けて温度が低くなる温度分布が形成される。酸化性ガス(空気等)の粘度は、その温度が高いほど大きくなる。従って、前記内部空間において位置が下側であるほど酸化性ガスの粘度が大きくなる。この結果、複数の供給孔のうちその位置が下側にあるものから流出される酸化性ガスの量(流量)が制限され易くなる。この結果、複数の供給孔から流出する酸化性ガスの量(流量)のばらつきが抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の上面図である。
【図2】図1に示した燃料電池の2−2線に対応する断面図である。
【図3】図1に示した燃料電池の3−3線に対応する断面図である。
【図4】図1に示した燃料電池の4−4線に対応する断面図である。
【図5】図1に示した発電構造体(セル積層体)を構成する複数のセルの1つを示す斜視図である。
【図6】図5に示したセルにインターコネクタと一対の支持部材とを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】図5に示したセルを積層して得られる発電構造体(セル積層体)を示す斜視図である。
【図8】図1に示した燃料電池の作動中におけるガスの流れを示した、図1に対応する上面図である。
【図9】図1に示した燃料電池の作動中における空気の流れを示した、図2に対応する断面図である。
【図10】図1に示した燃料電池の作動中における燃料ガスの流れを示した、図3に対応する断面図である。
【図11】図1に示した燃料電池の作動中における燃料ガスの流れを示した、図4に対応する断面図である。
【図12】図1に示した燃料電池の作動中における空気の流れを示した、図6に対応する斜視図である。
【図13】図1に示した燃料電池の作動中におけるセル内部の燃料ガス流路内の燃料ガスの流れを示した斜視図である。
【図14】本発明の実施形態の変形例に係る固体酸化物形燃料電池の作動中におけるガスの流れを示した、図8に対応する上面図である。
【図15】図14に示した燃料電池の作動中における空気の流れを示した、図9に対応する断面図である。
【図16】図14に示した燃料電池の作動中における燃料ガスの流れを示した、図10に対応する断面図である。
【図17】図14に示した燃料電池の作動中における燃料ガスの流れを示した、図11に対応する断面図である。
【図18】本発明の実施形態の他の変形例に係る固体酸化物形燃料電池の作動中におけるガスの流れを示した、図8に対応する上面図である。
【図19】図18に示した燃料電池の作動中におけるガスの流れを示した、図18に示す燃料電池の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)について説明する。
【0024】
図1〜図4に示すように、このSOFCは、複数(本例では、4つ)の発電構造体10と、各発電構造体10に空気(酸化性ガス)を供給するための空気供給路形成部材20と、各発電構造体10に燃料ガス(例えば、水素ガス)を供給するための燃料ガス供給路形成部材30と、各発電構造体10から外部へ燃料ガスを排出するための燃料ガス排出路形成部材40と、を備える。
【0025】
図2〜図4に示すように、複数の発電構造体10は、所定の間隔をあけて一方向(y軸方向)に整列して互いに固定配置されている。各発電構造体10は、内部に燃料ガスの内部流路が形成された平板状の燃料電池セル11が複数枚(本例では、10枚)所定の間隔をあけて上下方向(z軸方向)に積み重ねられて構成されたセル積層体である。
【0026】
図2に示すように、空気供給路形成部材20は、一方向(y軸方向)に延びるとともに複数の発電構造体10に共通の空気供給共通管21と、空気供給共通管21からそれぞれ上方(z軸正方向)に立設するように分岐する複数(本例では、4つ)の空気供給マニホールド22と、から構成されている。
【0027】
空気供給共通管21は、各発電構造体10の下面における横方向(x軸方向)の中央部を通るように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。複数の空気供給マニホールド22は、複数の空気供給マニホールド22と複数の発電構造体10とが一方向(y軸方向)に整列するように、且つ、各空気供給マニホールド22が対応する(空気の供給対象である)発電構造体10に対して一方向における同じ側(y軸負方向側)に近接してそれぞれ位置するように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。
【0028】
各空気供給マニホールド22は、本例では、空気供給共通管21と接続する内部空間を有する直方体状の筺体である。各空気供給マニホールド22における対応する発電構造体10に面する壁(y軸正方向側の壁、平面部)には、対応する発電構造体10内のそれぞれのセル11に向けて空気を供給するための複数の供給孔(貫通孔)22aが上下方向(z軸方向)に分布するように設けられている。
【0029】
図3に示すように、燃料ガス供給路形成部材30は、一方向(y軸方向)に延びるとともに複数の発電構造体10に共通の燃料ガス供給共通管31と、燃料ガス供給共通管31からそれぞれ上方(z軸正方向)に立設するように分岐する複数(本例では、4つ)の燃料ガス供給マニホールド32と、から構成されている。
【0030】
燃料ガス供給共通管31は、各発電構造体10の下面における横方向の一方向側(x軸負方向側)を通るように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。複数の燃料ガス供給マニホールド32は、各燃料ガス供給マニホールド32が対応する発電構造体10における横方向の一方側(x軸負方向側)に位置するように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。
【0031】
各燃料ガス供給マニホールド32は、本例では、燃料ガス供給共通管31と接続する内部空間を有する円筒状の筺体である。各燃料ガス供給マニホールド32における対応する発電構造体10と接続する側の壁には、対応する発電構造体10内のそれぞれのセル11の内部流路に向けて燃料ガスを供給するための複数の供給孔32aが設けられている。
【0032】
図4に示すように、燃料ガス排出路形成部材40は、一方向(y軸方向)に延びるとともに複数の発電構造体10に共通の燃料ガス排出共通管41と、燃料ガス排出共通管41からそれぞれ上方(z軸正方向)に立設するように分岐する複数(本例では、4つ)の燃料ガス排出マニホールド42と、から構成されている。
【0033】
燃料ガス排出共通管41は、各発電構造体10の下面における横方向の他方向側(x軸正方向側)を通るように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。複数の燃料ガス排出マニホールド42は、各燃料ガス排出マニホールド42が対応する発電構造体10における横方向の他方側(x軸正方向側)に位置するように、複数の発電構造体10に対して固定配置されている。
【0034】
各燃料ガス排出マニホールド42は、本例では、燃料ガス排出共通管41と接続する内部空間を有する円筒状の筺体である。各燃料ガス排出マニホールド42における対応する発電構造体10と接続する側の壁には、対応する発電構造体10内のそれぞれのセル11の内部流路から燃料ガスを排出するための複数の排出孔42aが設けられている。
【0035】
以下、図5〜図7を参照しながら、発電構造体10について付言する。図5に示すように、発電構造体10内に含まれるセル11は、平面形状(z軸正方向からみた形状)が長方形の平板状を呈している。大略的には、セル11は、燃料ガスの内部流路(後述する図13を参照)を備えた平板状の燃料極と、その燃料極の表面全体を覆う固体電解質膜と、その固体電解質膜で覆われた燃料極の上下面に露呈する空気極と、から構成される。燃料ガスは、流入口11aを介して内部流路に供給され、流出口11bを介して内部流路から排出される。
【0036】
図6に示すように、セル11には、セル11の周りを覆うようにインターコネクタIが取り付けられる。また、セル11の流入口11a及び流出口11bに対応する外縁部(x軸方向の両側の端部)には一対の保持部材P,Pが取り付けられる。一対の保持部材P,Pにはそれぞれ、上下方向(z軸方向)に貫通する孔が形成され、且つ、セル11の流入口11a又は流出口11bに接続する孔(上述した供給孔32a又は排出孔42aに相当する孔)が形成されている。
【0037】
図7に示すように、インターコネクタIと一対の保持部材P,Pが取り付けられたセル11が複数枚準備され、一対の保持部材P,Pが上下方向に連続するように複数積み重ねられる。これにより、複数のセル11が所定の間隔をあけて複数枚上下方向(z軸方向)に積み重ねられたセル積層体が構成される。隣り合うセル11,11間は、インターコネクタIを介して電気的に接続される。即ち、発電構造体11に含まれる複数のセル11は電気的に直列に接続されている。また、一対の保持部材P,Pが上下方向に連続するように複数積み重ねられることにより、燃料ガス供給マニホールド32及び燃料ガス排出マニホールド42がそれぞれ形成される。
【0038】
以上の構成を有するSOFCに対して、図8〜図13に示すように、空気供給共通管21に空気が供給されるとともに、燃料ガス供給共通管31に燃料ガスが供給される。以下、図において、黒い矢印は空気の流れを示し、グレーの(微細なドットで示した)矢印は燃料ガスの流れを示す。
【0039】
図9に示すように、空気供給共通管21に供給された空気は、複数の空気ガス供給マニホールド22にそれぞれ移行し、各空気ガス供給マニホールド22の供給孔22aから対応する発電構造体10に向けてそれぞれ流出する。即ち、複数の空気供給マニホールド22から流出する空気の全てが、一方向に沿った同じ向き(y軸正方向)に流れる。
【0040】
各空気供給マニホールド22から流出する空気は、対応する発電構造体10内の各セル11の周りの空間(隣り合うセル11,11の間の空間)にそれぞれ供給される。各セル11の周りの空間に供給された空気は、図12に示すように、同空間を通過し、その後、隣の空気供給マニホールド22の外壁の側面(y軸負方向側の壁)に当たる。
【0041】
前記外壁の側面に当たった空気は、前記側面に沿って上方向(z軸正方向)に移動・排出される。ここで、前記側面に当たった空気が上方向(z軸正方向)に向けて移動するのは、発電構造体10の内部から排出された空気が、SOFCの周囲に存在する空気と比べて温度が高く、従って、SOFCの周囲に存在する空気と比べて比重が小さいことに基づく。
【0042】
図10に示すように、燃料ガス供給共通管31に供給された燃料ガスは、複数の燃料ガス供給マニホールド32にそれぞれ移行し、各燃料ガス供給マニホールド32の供給孔32aを介して対応する発電構造体10に含まれる複数のセル11内の流入口11aにそれぞれ供給される。流入口11aに供給された燃料ガスは、図13に示すように、セル11の内部流路を通過し、その後、流出口11bに到達する。
【0043】
図11に示すように、各流出口11bに到達した燃料ガスは、対応する燃料ガス排出マニホールド42の排出孔42aを介して対応する燃料ガス排出マニホールド42に移行し、その後、燃料ガス排出共通管41に移行する。燃料ガス排出共通管41に移行した燃料ガスは、外部に排出される。
【0044】
このように、各セル11の燃料極内の内部流路に燃料ガスが供給され、且つ、各セル11の周りの空間(即ち、空気極に面する空間)に空気が供給されることで、各セル11では、以下に示す化学反応式(1)及び(2)に基づく発電が行われる。
(1/2)・O+2e→O2− (於:空気極) …(1)
+O2−→HO+2e (於:燃料極) …(2)
【0045】
なお、発電構造体10から排出される空気(即ち、各セル11の周りの空間を通過した後の空気であり、「空気の排ガス」と呼ぶこともできる)には、未反応の酸素分子と窒素分子とが含まれている。また、発電構造体10から排出される燃料ガス(即ち、各セル11の内部流路を通過した後の燃料ガスであり、「燃料ガスの排ガス」と呼ぶこともできる)には、未反応の水素分子と反応により形成された水分子とが含まれている。
【0046】
(作用・効果)
以下、上述した本発明の実施形態に係るSOFCの作用・効果について述べる。SOFCは、固体電解質の酸素伝導度を利用して発電するので、SOFCの作動温度は600℃以上、好ましくは700〜1000℃であることが一般的である。このため、SOFCは、常温からSOFCの作動温度まで外部の加熱機構(例えば、抵抗加熱ヒータ方式の加熱機構等)により昇温された状態で使用される。また、各発電構造体10に供給される燃料ガス及び空気は、発電構造体10内部に供給される前に、SOFCの作動温度近傍まで予熱される必要がある。
【0047】
以下、特に、各発電構造体10に供給される空気に着目する。上述した図9に示すように、このSOFCでは、空気供給共通管21に導入された空気は複数の空気供給マニホールド22にそれぞれ供給される(図9のAを参照)。次いで、各空気供給マニホールド22に供給された空気は、供給孔22aを介して対応する発電構造体10に向けて流出する(図9のBを参照)。
【0048】
次いで、供給孔22aから流出した空気は、対応する発電構造体10内の各セル11の周りの空間にそれぞれ供給される(図9のCを参照)。このように各セル11の周りの空間に供給された空気は、上記(1)式に示す反応に供される。ここで、セル11で発生する上記(1)、(2)式に示す発電反応(特に、(2)式に示す反応)は発熱反応である。従って、各セル11の周りの空間に供給された空気は、この発熱反応により加熱されたセル11から熱を受けて高温になる。
【0049】
このように高温になった空気は、上記空間から排出されて(即ち、発電構造体10から排出されて)、隣の空気供給マニホールド22の外壁(y軸負方向側の壁)に当たる(図9のDを参照)。従って、隣の空気供給マニホールド22が、高温になった空気(空気の排ガス)の熱を利用して加熱される。この結果、隣の空気供給マニホールド22内の空気が予熱される。
【0050】
このように、上述した本発明の実施形態に係るSOFCによれば、各発電構造体10から排出される空気(即ち、発熱反応により熱を受けて高温になっているガス)の熱を利用して、空気の予熱用の装置を新たに設けることなく、空気供給マニホールド22内を流れる空気を予熱することができる。
【0051】
また、上述した「空気の比重の大小関係」に基づいて、空気供給マニホールド22の前記外壁の側面に当たった空気は、前記外壁の側面に沿って安定して上昇していく。従って、前記外壁の側面の或る位置に当たった空気は、自身の熱を前記外壁の側面に与えることによって自身の温度が下がった状態でその位置から上昇していく。他方、前記外壁の側面において位置が上側であるほど、前記側面に当たる空気内における「その位置より下側で前記外壁の側面に既に当たったことに起因して自身の温度が下がった状態にある空気」の割合が多くなる。
【0052】
このことは、前記外壁の側面の位置が上側であるほど、前記側面に当たる空気の温度が低くなることを意味する。換言すれば、前記外壁の側面において下方から上方に向けて温度が低くなる(上方の温度が低い)温度分布が形成される。従って、空気供給マニホールド22の内部空間においても、下方から上方に向けて温度が低くなる(上方の温度が低い)温度分布が形成される。この結果、前記内部空間において下方から上方に向けた空気の対流が顕著に発生し得る。従って、上記実施形態のように、前記内部空間に空気が下方向から上方向に向けて供給される構成が採用される場合、特に、前記内部空間内の空気の温度を効率良く高めることができる。
【0053】
また、上記実施形態のように、前記鉛直方向に立設する各空気供給マニホールド22の内部空間に空気が下方向から上方向に向けて供給され、且つ、各空気供給マニホールド22の複数の供給孔22aが上下方向(z軸方向)に分布するように設けられている場合、一般に、複数の供給孔22aのうちでその位置がより下側にあるものから、より多くの量(流量)の空気が流出する傾向がある。即ち、複数の供給孔22aから流出する空気の量(流量)にばらつきがあった。
【0054】
これに対し、上記実施形態では、空気供給マニホールド22の内部空間において、下方から上方に向けて温度が低くなる温度分布が形成される。ここで、空気の粘度は、その温度が高いほど大きくなる。従って、前記内部空間において位置が下側であるほど空気の粘度が大きくなる。この結果、複数の供給孔22aのうちその位置が下側にあるものから流出される空気の量(流量)が制限され易くなる。この結果、複数の供給孔22aから流出する空気の量(流量)のばらつきが抑制され得る。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態に係る燃料電池は、SOFC(固体酸化物形燃料電池)であるが、その他の形式の燃料電池(例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC))であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、全ての空気供給マニホールド22が、対応する(空気の供給対象である)発電構造体10に対して一方向における同じ側(y軸負方向側)に近接して位置する。この結果、全ての空気供給マニホールド22から流出する空気が、一方向(y軸方向)に沿った同じ向き(y軸正方向)に流れる。
【0057】
これに対し、図8〜図11にそれぞれ対応する図14〜図17に示すように、複数の空気供給マニホールド22の一部(この例では、y軸正方向側に位置する2つ)が対応する(空気の供給対象である)発電構造体10に対して一方向における一方側(y軸負方向側)に配置され、複数の空気供給マニホールド22の残り(この例では、y軸負方向側に位置する2つ)が対応する(空気の供給対象である)発電構造体10に対して一方向における反対側(y軸正方向側)に配置されていてもよい。この場合、複数の空気供給マニホールド22の一部から流出する空気と複数の空気供給マニホールド22の残りから流出する空気とが一方向(y軸方向)に沿った互いに反対の向きに流れる。
【0058】
図14〜図17に示す例では、4つの空気供給マニホールド22のうち、y軸方向中央部に位置する2つの空気供給マニホールド22には、発電構造体10から排出される空気(即ち、発熱反応により熱を受けて高温になっているガス)が当たらない。従って、これら2つの空気供給マニホールド22は、発電構造体10から排出される空気の熱を利用して加熱され得ない。しかしながら、一般に、構造体の中央部には熱が滞留し易いことを考慮すると、これら2つの空気供給マニホールド22は、このように滞留する熱を利用して加熱され得ると考えられる。従って、図14〜図17に示す例において、y軸方向中央部に位置する2つの空気供給マニホールド22内を流れる空気も十分に予熱され得ると考えられる。
【0059】
また、上記実施形態では、各発電構造体10は、それぞれが水平方向に延在する複数の平板状のセル11が鉛直方向(z軸方向)に積み重ねられたセル積層体であるが、図18及び図19に示すように、各発電構造体10が、それぞれが鉛直方向に延在する複数の平板状のセル11が水平方向(x軸方向)に積み重ねられたセル積層体であってもよい。図18及び図19において、上記実施形態の構成と対応する構成には上記実施形態の符号と同じ符号が付されている。
【0060】
図18及び図19に示した構成においても、上記実施形態と同様、空気供給マニホールド22の外壁の側面に当たった空気が、前記側面に沿って上方向(z軸正方向)に移動・排出される。従って、上記実施形態と同じ作用・効果が奏され得る。
【符号の説明】
【0061】
10…発電構造体、11…セル、20…空気供給路形成部材、21…空気供給共通管、22…空気供給マニホールド、22a…供給孔、30…燃料ガス供給路形成部材、31…燃料ガス供給共通管、32…燃料ガス供給マニホールド、32a…供給孔、40…燃料ガス排出路形成部材、41…燃料ガス排出共通管、42…燃料ガス排出マニホールド、42a…排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、内部に燃料ガスの内部流路が形成された平板状の複数の燃料電池セルが積み重ねられたセル積層体である、複数の発電構造体であって、互いに固定配置された複数の発電構造体と、
外部から前記各発電構造体の各セルの前記内部流路に燃料ガスをそれぞれ供給するための燃料ガス供給路形成部材と、
前記各発電構造体内の隣り合う前記セルの間の空間に前記セルの平面に沿って酸化性ガスをそれぞれ供給するための酸化性ガス供給路形成部材と、
を備えた燃料電池において、
前記酸化性ガス供給路形成部材は、それぞれが、鉛直方向に立設されるとともに前記複数の発電構造体のうち対応する発電構造体に酸化性ガスを供給する、複数の酸化性ガスマニホールドを備え、
前記各酸化性ガスマニホールドと隣の前記酸化性ガスマニホールドとの間に前記各酸化性ガスマニホールドに対応する前記発電構造体が配置され、
前記各酸化性ガスマニホールドから前記対応する発電構造体内の隣り合う前記セルの間の空間に向けて酸化性ガスが水平方向に流出・供給され、前記空間を通過した酸化性ガスが前記空間から水平方向に排出されるとともに前記隣の酸化性ガスマニホールドの外壁における鉛直方向に延在する側面に当たり、前記側面に当たった酸化性ガスが前記側面に沿って鉛直上方向に移動・排出されるように、前記複数の酸化性ガスマニホールド及び前記複数の発電構造体が固定配置された、燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記鉛直方向に立設する各酸化性ガスマニホールドの内部空間には、酸化性ガスが鉛直下方向から鉛直上方向に向けて供給され、
前記各酸化性ガスマニホールドの壁には、前記対応する発電構造体に面するとともに鉛直方向に延在する平面部が存在し、前記平面部には、前記対応する発電構造体に向けて酸化性ガスを水平方向に供給するための前記内部空間と連通する複数の供給孔が、鉛直方向に分布するように配置された、燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池において、
前記各発電構造体は、それぞれが水平方向に延在する前記複数の平板状のセルが鉛直方向に積み重ねられたセル積層体である、燃料電池。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池において、
前記各発電構造体は、それぞれが鉛直方向に延在する前記複数の平板状のセルが水平方向に積み重ねられたセル積層体である、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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