説明

燃料電池

【課題】シール部材から溶出する不純物を不純物吸着材により吸着除去することによって、アノード及びカソードへの不純物による被毒や被服を防止し、触媒活性の低下を抑制し、発電性能及び耐久性を向上できる燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜の両面に一対の電極が配置された膜電極接合体と、膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、一対のセパレータ及び膜電極接合体の間にそれぞれ配置されるシール部材とを有するセルを1以上含む燃料電池であって、セパレータの厚み方向から見て、一対のシール部材のうちの少なくとも一方と接触するように、膜電極接合体及びセパレータの間に配置される、不純物吸着部材をさらに有するものである。これにより、シール部材より溶出する不純物を不純物吸着部材によって吸着除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材部から発生する不純物によるアノード及びカソードの触媒活性の低下を抑制し、発電効率及び耐久性を向上できる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な燃料電池は、図6に示すように、電解質膜61を挟んで互いに対向して設けられた燃料ガスが供給されるアノード62aと、酸化剤ガスが供給されるカソード62cからなる燃料電池73を複数積層して構成される。
【0003】
燃料ガス及び酸化剤ガスは、それぞれのガス流路が設けられたセパレータ64a及び64cを通じて、それぞれアノード62a及びカソード62cに供給される。
【0004】
そして、膜電極接合体63とセパレータ64a及び64cの間には、燃料ガス及び酸化剤ガスが外部へ漏れないようにシール部材65a及び65cが配置されている。
【0005】
上記構成の燃料電池に、アノード62aに燃料ガスを、カソード62cに酸化剤ガスを供給することにより、発電が可能となる。このような一般的な燃料電池の構成は、例えば特許文献1に開示されている。
【0006】
一方、従来の燃料電池は、様々な不純物に影響を受け、発電性能の低下が起こる場合があった。
【0007】
不純物には、燃料電池発電システムを構成する樹脂材料や金属材料などの部材から発生する内的不純物と、大気などの外部から混入する外的不純物とがあり、これらの不純物がアノード62aやカソード62cを被毒あるいは被覆して、発電反応を起こりにくくさせ、発電性能を低下させていた。
【0008】
例えば、燃料ガス及び酸化剤ガスをシールするために設けられるシール部材65a及び65cは、電解質61や、アノード62a及びカソード62c、あるいは燃料ガスや酸化剤ガスと、直接接触する機会が多く、発電性能に与える影響が大きい。
【0009】
シール部材65a及び65bには、弾力性などの機能を持たせるために可塑剤などの添加剤や油分が配合されている場合が多い。これらの添加剤が、シール部材65a及び65cが圧縮されたり、高温や水蒸気に曝されたりすることにより、滲み出たり、溶出したりする場合があり、アノード62a及びカソード62cに対して不純物として作用し、電池性能を低下させることが判っている。
【0010】
また、特許文献2では、こうした不純物による影響を取り除くため、発電中に、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの流量を減少させたり、アノード62aあるいはカソード62cを加圧したり、スタックの温度を下げたりして、アノード62aあるいはカソード62cの触媒層中に凝縮水を生成し、内部に蓄積した不純物をこの凝縮水で洗い流して除去していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−155745号公報
【特許文献2】特開2008−218050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来のような、一度アノード62aあるいはカソード62cに被毒や被覆した不純物を取り除く方法では、除去作業により不純物を完全には除去できないため、徐々に不純物が蓄積し、電池性能を低下させる課題があった。また、不純物の濃度によっては、除去作業の頻度を多くする必要があり、発電中に電極面内に余剰水分が残っていると反応ガスが閉塞して、電圧が降下するフラッディング現象を起こすなど、電池運転に影響を与える可能性があった。このため、電極面内の余剰水分を除去するためには、所定の時間、燃料ガスあるいは酸化剤ガスの流量を増加したり、低加湿ガスを供給したりする必要があり、制御が複雑になり、多くの処理時間を費やすだけでなく、発電に寄与しない反応ガスの消費量が増えることになり、効率の面で未だ改善の余地があった。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電解質膜の両面に一対の電極が配置された膜電極接合体と、膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、一対のセパレータ及び膜電極接合体の間にそれぞれ配置されるシール部材とを有するセルを1以上含む燃料電池であって、セパレータの厚み方向から見て、シール部材と接触するように、膜電極接合体及びセパレータの間に配置される、不純物吸着部材を備え、シール部材から溶出する不純物を不純物吸着部材によって吸着し、溶出物が燃料電池内部に侵入することを防止し、発電性能及び耐久性を向上できる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極が配置された膜電極接合体と、膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
一対のセパレータ及び膜電極接合体の間にそれぞれ配置されるシール部材とを有するセルを1以上含む燃料電池であって、セパレータの厚み方向から見て、シール部材と接触するように、膜電極接合体及びセパレータの間に配置される、不純物吸着部材をさらに有するものである。
【0015】
これにより、シール部材より溶出する不純物を不純物吸着部材によって吸着除去することが可能となり、アノード及びカソードへの不純物の被毒や被服を防止でき、触媒活性の低下を抑制するので、発電性能及び耐久性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒活性を低下させる不純物を燃料電池内部に浸入させることなく除去することができるので、複雑なシステム制御を用いることなく発電性能及び耐久性に優れた燃料電池を実現できる。
【0017】
また、不純物を多く含むシール部材を使用することが可能となるので、材料選択の範囲を広げることが可能なり、燃料電池の長寿命化、低コスト化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池の断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1におけるアノードセパレータの燃料ガス流路面の平面図、(b)本発明の実施の形態1におけるカソードセパレータの酸化剤ガス流路面の平面図
【図3】(a)本発明の実施の形態2におけるアノードセパレータの燃料ガス流路面の平面図、(b)本発明の実施の形態2におけるカソードセパレータの酸化剤ガス流路面の平面図
【図4】本発明の実施の形態3における燃料電池の断面図
【図5】本発明の実施の形態4における燃料電池の断面図
【図6】従来の燃料電池の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、電解質膜の両面に一対の電極が配置された膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、前記一対のセパレータ及び前記膜電極接合体の間にそれぞれ配置されるシール部材とを有するセルを1以上含む燃料電池であって、前記セパレータの厚み方向から見て、前記シール部材と接触するように、前記膜電極接合体及び前記セパレータの間に配置される、不純物吸着部材をさらに有する燃料電池である。
【0020】
この構成により、シール部材65a及び65cがスタックの締結圧により、圧縮されたり、高温や水蒸気に曝された時に、滲み出たり、溶出したりする不純物を不純物吸着部材が吸着除去し、燃料電池内部への侵入を防止する。これによって、アノード及びカソードの不純物による被毒や被服を防止することができ、発電性能及び耐久性を向上できる。
【0021】
ここで、不純物吸着材としては、金属イオンや油分などの不純物の吸着性やシール性の観点から、電解質膜を用いることが好ましい。
第2の発明は、第1の発明において、前記電解質膜及び前記シール部材の間の少なくとも一方に、ベース部材が配置されているものである。
【0022】
この構成により、電解質膜とシール部材の接触を確実に防止でき、不純物の膜電極接合体内部への侵入を防止できる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記不純物吸着部材は、前記セパレータと前記シール部材との間に配置されているものである。
【0023】
この構成により、不純物吸着部材とシール部材の接触を確保し、容易にかつ確実にシール部材より溶出する不純物を吸着することができる。
第4の発明は、第2の発明において、前記不純物吸着部材は、前記シール部材と前記ベース部材との間に配置されているものである。
【0024】
この構成により、シール部材の底面において、不純物吸着部材とシール部材の接触を確保できるため、接触面の面積を確保でき、容易にかつ確実にシール部材より溶出する不純物を吸着することができる。
第5の発明は、第1〜4の発明において、前期シール部材は環状の形状であり、前記不純物吸着部材は、前記セパレータの前記シール部材が配置される部分より周縁部側にさらに配置されているものである。
【0025】
この構成により、シール部材より外周に不純物を吸い出すことが可能となり、燃料電池内部への不純物の侵入を防止できる。
第6の発明は、第1〜5の発明において、前記不純物吸着部材が電解質膜であるものである。
【0026】
この構成により、確実にシール部材から溶出する不純物を吸着することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池の断面図である。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施の形態1の燃料電池は、電解質膜1の両面にアノード2a及びカソード2cを対向して形成した膜電極接合体3を備える。
【0030】
ここで、電解質膜1は、例えば水素イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルフォン酸ポリマーからなる固体高分子電解質から構成される。
【0031】
また、アノード2aとカソード2cは、耐酸化性の高い多孔質カーボンに白金などの貴金属を担持した触媒及び水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなる触媒層と、触媒層の上に積層した通気性及び電子伝導性を有するガス拡散層から構成される。
【0032】
このとき、アノード2aの触媒として、一般に、燃料ガス中に含まれる不純物、特に一酸化炭素による被毒を抑制する白金−ルテニウムの合金触媒が用いられる。
【0033】
また、ガス拡散層として、撥水処理を施したカーボンペーパーやカーボンクロス、あるいはカーボン不織布などが用いられる。
【0034】
そして、膜電極接合体3を挟むように、アノードセパレータ4a及びカソードセパレータ4cが互いに対向するように配置されている。
【0035】
ここで、アノードセパレータ4a及びカソードセパレータ4cは、例えばカーボンなどの導電性を有する材料で主に形成される。
【0036】
図2(a)及び(b)にそれぞれアノードセパレータ4a及びカソードセパレータ4cの膜電極接合体3側の反応ガス流路面の平面図を示す。
【0037】
アノードセパレータ4aには、サーペンタイン状の燃料ガス流路41aが形成され、アノード2aに供給される少なくとも水素を含む燃料ガスは、燃料ガス入口マニホールド42aから供給され、燃料ガス流路41aを流通して、燃料ガス出口マニホールド43aへ排出される。
【0038】
そして、燃料ガスを外部及び別流体の流通路にリークさせないために、膜電極接合体3のアノード2aの外側の部分に当接してシールするようにゴム状の弾性体などからなるアノードシール部材5aが配置されている。さらに、アノードシール部材5aに重なるようにして、アノード不純物吸着材6aが配置されている。
【0039】
一方、カソードセパレータ4cには、アノード2aの燃料ガス流路41aに対向するように同様のサーペンタイン状の酸化剤ガス流路41cが形成され、カソード2cに供給される少なくとも酸素を含む酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口マニホールド42cから供給され、酸化剤ガス流路41cを流通して、酸化剤ガス出口マニホールド43cへ排出される。
【0040】
そして、酸化剤ガスを外部及び別流体の流通路にリークさせないために、膜電極接合体3のカソード2cの外側の部分に当接してシールするようにゴム状の弾性体などからなるカソードシール部材5cがアノードシール部材5aに対向するように配置されている。さらに、カソードシール部材5cに重なるようにして、カソード不純物吸着材6cが配置されている。
【0041】
ここで、アノード不純物吸着材6aおよびカソード不純物吸着材6cとしては、例えば水素イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルフォン酸ポリマーからなる固体高分子電解質が使用されている。また、実施の形態1ではアノード側、カソード側の両方に不純物吸着材を挿入する方法を示したが、いずれか一方に挿入してもよい。
【0042】
そして、上記構成の膜電極接合体3と各セパレータ4a及び4bからなるセルを複数積層し、両端に電流を取り出すために集電体及び端板を配置し、締結して燃料電池スタックを構成した。
【0043】
そして、アノード2a側に水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、カソード2c側に大気中の酸素を含む酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段を接続した。
【0044】
ここで、燃料ガス供給手段は、都市ガスを改質して水素を生成する燃料処理器である。
【0045】
次に、酸化剤ガス供給手段について、具体的に説明する。
【0046】
酸化剤ガス供給手段は、酸化剤ガスを取り込んで流量を制御する酸化剤ガス流量制御手段であるブロワと、酸化剤ガス中の不純物を除去する不純物除去手段と、酸化剤ガスを加湿する加湿器で構成される。
【0047】
ここで、酸化剤ガスとは、少なくとも酸素を含む(あるいは酸素を供給することのできる)ガスの総称であり、例えば大気(空気)が利用される。
【0048】
そして、燃料電池スタックに接続する負荷を制御する負荷制御手段を設け、発電量を制御できるようにした。
【0049】
次に、上記構成の燃料電池発電の動作について、具体的に説明する。
【0050】
まず、アノード2aに燃料ガス、カソード2cに酸化剤ガスを供給して、負荷制御手段を制御して燃料電池に負荷を接続すると、燃料ガス中の水素は反応式(化1)で示すようにアノード2aの触媒層と電解質膜1の界面で電子を放出して水素イオンとなる。
【0051】
【化1】

【0052】
そして、放出された水素イオンは、電解質膜1を通ってカソード2cへと移動し、カソード2cの触媒層と電解質膜1の界面で電子を受け取る。このとき、カソード2cに供給された酸化剤ガス中の酸素と反応して、反応式(化2)で示すように水を生成する。
【0053】
【化2】

【0054】
上記反応をまとめると(化3)に示す反応が行われる。
【0055】
【化3】

【0056】
そして、負荷を流れる電子の流れを直流の電気エネルギーとして利用できる。また、上記一連の反応は発熱反応であるため、燃料電池で発生した熱を、燃料電池冷却流体流路から供給される燃料電池冷却流体により熱交換して回収することにより、お湯などの熱エネルギーとして利用することができる。
【0057】
ところで、上記構成の燃料電池発電システムに使用されている部材には、金属材料や樹脂材料といった様々な材料が用いられているが、これらの部材から発生する不純物が燃料電池の発電反応を阻害し、発電性能を低下させる場合がある。
【0058】
特に、燃料ガス及び酸化剤ガスをシールするために設けられるアノードシール部材5a及びカソードシール部材5cは、電解質膜1や、アノード2a及びカソード2c、あるいは燃料ガス及び酸化剤ガスに対して、直接接触する機会が多いので、発電性能に与える影響が大きい。
【0059】
アノードシール部材5a及びカソードシール部材5cには、弾力性などの機能を持たせるために可塑剤などの添加剤が配合されている場合が多く、圧縮されたり、高温や水蒸気に曝されたりすることにより、これらの添加剤が滲み出たり、溶出したりする場合があり、アノード2a及びカソード2cに対して不純物となることがある。ここで、アノードシール部材5aおよびカソードシール部材5cにはフッ素ゴムやEPDMゴム、シリコンゴム、ブチルゴムなどの一般的なゴム材料のほか、熱可塑性エラストマーなどの弾性材料も用いることが出来る。なお、本実施の形態では、アノード側およびカソード側にそれぞれシール部材を配置したパターンを示したが、アノード側またはカソード側のいずれか一方のみにシール部材を配置することも可能であり、電解質膜とシール部材が直接接する構成においても同様の効果が得られるものである。
【0060】
これらのシール部材としては、予め不純物をあまり含まない材料を採用したり、洗浄、エージングなどの工程で不純物を除去したり、不純物の影響を小さくすることは可能であるが、量産性が悪くなったり、コストが上がったり、という課題があった。
【0061】
本発明の実施の形態1の燃料電池発電によれば、アノードシール部材5aおよびカソードシール部材5cには、それぞれアノード不純物吸着材6aおよびカソード不純物吸着材6cが接触しており、アノードシール部材5aおよびカソードシール部材5cより溶出する不純物を吸着除去できる構成となっている。
【0062】
次に、アノードシール部材5a及びカソードシール部材5cから発生する不純物が電池性能に与える影響を確認するため、比較例として、不純物吸着材を挿入しない場合のスタックを作製し、発電試験を行った。
【0063】
ここで、アノード2aに70%の利用率で燃料ガスを供給した。この時の燃料ガスの露点は約55℃であった。また、カソード2cには利用率が50%、露点が65℃となるように酸化剤ガスを供給した。そして、電流が一定に流れるように負荷制御手段を制御し、アノード2a及びカソード2cの電極面積に対し電流密度が0.2A/cm2となるように制御した。また、燃料電池の温度は冷却水の入口を約60℃、出口を約70℃となるように制御した。このときの電池電圧を測定した結果、740mVであった。
【0064】
次に、本発明の実施の形態1の燃料電池スタックを作製し、同様の運転条件で電池電圧を測定した。この結果、比較例に対して電池電圧が10mV上昇し、750mVとなることが確認できた。
【0065】
これによって、複雑なシステム制御を用いることなく、容易にかつ確実に、不純物が膜電極接合体3に侵入することを防止でき、燃料電池の発電性能および耐久性を向上することが可能となる。
【0066】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の燃料電池について図3を用いて説明する。図3(a)及び(b)にそれぞれ実施の形態2におけるアノードセパレータ4a及びカソードセパレータ4cの膜電極接合体3側の反応ガス流路面の平面図を示したものである。図において、アノード不純物吸着材6aおよびカソード不純物吸着材6cが、セパレータ外周だけではなく、全てのシール領域に重なるように配置されている。
【0067】
このような構成によって、全てのシール領域から不純物を吸着除去することが可能となる。また、不純物吸着部材の存在する領域と存在しない領域でのシール部材に発生する段差を解消することが可能となり、よりシール性を向上することが可能となる。
【0068】
上記構成の本実施の形態2の燃料電池スタックを作製し、電池性能を測定したところ、実施の形態1と同様の効果を示した。
【0069】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の燃料電池について図4を用いて説明する。図4は本発明の実施の形態3の燃料電池の断面図を示したものである。本実施の形態では膜電極接合体3の電解質膜1とアノードシール部材5aおよびカソードシール部材5cの間に、アノードベース部材7aおよびカソードベース部材7cが配置されているものである。その他の構成は実施の形態1と同様なので省略する。アノードベース部材7aおよびカソードベース部材7cとしてはPPS、PP、LCPなど耐酸性を有する一般的な樹脂材料を用いることが出来る。
【0070】
この構造によって、電解質膜1とシール部材5aおよび5cの接触を防ぐことが可能となる。これにより、確実に不純物が膜電極接合体内部に侵入することろ防止でき、燃料電池の性能および耐久性を向上できるものである。
【0071】
上記構成の本実施の形態3の燃料電池スタックを作製し、電池性能を測定したところ、実施の形態1と同様の効果を示した。
【0072】
(実施の形態4)
以下に、本発明の実施の形態4における燃料電池発電システムについて、図5を用いて説明する。
【0073】
図5は、本発明の実施の形態4の燃料電池発電システムの断面図を示す。図において、アノードシール部材5aとアノードベース部材7aの間にアノード不純物吸着材6aが、カソードシール部材5cとカソードベース部材7cの間にカソード不純物吸着材6cが配置されている。これにより、実施の形態1と同様に、シール部材より溶出する不純物を不純物吸着材6aおよび6cによって吸着除去することが可能となる。また、シール部材5a及び5cと不純物吸着材6aおよび6cは面で接触しているため、より確実に不純物を吸着することが可能となる。また、本実施例ではシール部材5aおよび5cの底面全面に不純物吸着材6aおよび6cを接触させる構成を示したが、その一部分に接触させること
によっても同様の効果が得られるものである。
【0074】
上記構成の本実施の形態4の燃料電池スタックを作製し、電池性能を測定したところ、実施の形態1と同様の効果を示した。
【0075】
なお、上述の実施の形態1〜4では、不純物吸着材として電解質膜を用いる構成を説明したが、これに限定されず、同様の不純物の吸着性を有する膜であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の燃料電池発電システムは、不純物に影響を受けにくく、発電効率の向上が要望される、高分子型固体電解質を用いた燃料電池、燃料電池デバイス、定置用燃料電池コジェネレーションシステムに有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 電解質膜
2a アノード
2c カソード
3 膜電極接合体
4a アノードセパレータ
4c カソードセパレータ
5a アノードシール部材
5c カソードシール部材
6a アノード不純物吸着材
6c カソード不純物吸着材
7a アノードベース部材
7c カソードベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に一対の電極が配置された膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟むように配置された一対のセパレータと、
前記一対のセパレータ及び前記膜電極接合体の間にそれぞれ配置されるシール部材と、を有するセルを1以上含む燃料電池であって、
前記セパレータの厚み方向から見て、前記シール部材と接触するように、前記膜電極接合体及び前記セパレータの間に配置される、不純物吸着部材をさらに有する、燃料電池。
【請求項2】
前記電解質膜及び前記シール部材の間の少なくとも一方に、ベース部材が配置されている、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記不純物吸着部材は、前記セパレータと前記シール部材との間に配置されている、請求項1〜2のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項4】
前記不純物吸着部材は、前記シール部材と前記ベース部材との間に配置されている、請求項2に記載の燃料電池。
【請求項5】
前期シール部材は環状の形状であり、前記不純物吸着部材は、前記セパレータの前記シール部材が配置される部分より周縁部側にさらに配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記不純物吸着部材が電解質膜である、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−226933(P2012−226933A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92695(P2011−92695)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】