説明

燃料電池

【課題】燃料電池の水分の排出性を向上させる。
【解決手段】ガス流路層40の備える第1流路構成体140は、発電体層35の側に凸な第1凸部141とセパレーター70の側に凸な第2凸部142とを繰り返し有する。第2流路構成体240も同様であり、第1凸部241と第2凸部242とを繰り返し有する。第1流路構成体140は、第1凸部141の側方の第1ガス流路143を発電体層側流路とし、その体積をセパレーター側流路である第2ガス流路144の体積より大きくしている。第2流路構成体240は、第1凸部241の側方の第1ガス流路243を発電体層側流路とし、その体積をセパレーター側流路である第2ガス流路244の体積より小さくしている。その上で、第1流路構成体140と第2流路構成体240は、第2ガス流路144が第2ガス流路244の内側に位置するようにして連設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、特に燃料電池内での水分の排出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば、固体高分子形燃料電池は、電解質膜を挟んで配置される一対の電極(アノードおよびカソード)にそれぞれ反応ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)を供給して電気化学反応を引き起こすことにより、物質の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0003】
従来、燃料電池において、電解質膜と一対の電極とを含む発電体層とセパレーターとの間にメタルラスやエキスパンドメタルを用いて形成されたガス流路層を設けることにより、反応ガスの拡散性を向上させ、燃料電池の発電効率を向上させる技術が知られている(例えば、下記特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−214020号公報
【特許文献2】特開2008−287955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、発電に伴って生成される生成水など、反応ガスに含まれる水分による燃料電池の性能への影響について十分に考慮されておらず、燃料電池の性能に向上の余地があった。かかる問題は、発電体層とセパレーターとの間にガス流路層を備える燃料電池一般に共通する問題であった。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、燃料電池内を流通する反応ガスに含まれる水分の排出性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決することを目的としてなされたものであり、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:燃料電池]
燃料電池であって、
電解質膜を備えた発電体層と、
前記発電体層を間に挟んで配置された一対のセパレーターと、
前記発電体層と前記一対のセパレーターの少なくとも一方との間に配置され、前記発電体層での発電反応に供される反応ガスを前記電解質膜の膜面に沿ったガス流れ方向に流す流路を形成するガス流路層と、を備え
該ガス流路層は、
前記発電体層の側に凸な第1の凸部と前記セパレーターの側に凸な第2の凸部とが流路形成領域において並んだ波形断面の波形要素を前記流路の形成のための要素とし、前記波形要素を繰り返し有する波形要素含有部を、前記ガス流れ方向に沿って複数連設して備え、
前記波形要素含有部のそれぞれは、前記繰り返される前記波形要素における前記第1の凸部の前記波形要素の繰り返しに沿った側方領域を、前記流路を前記発電体層の側でなす発電体層側流路とし、前記波形要素における前記第2の凸部の前記波形要素の繰り返しに沿った側方領域を、前記流路を前記セパレーターの側でなすセパレーター側流路とし、
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部は、一方の前記波形要素含有部が前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より大きくし、他方の前記波形要素含有部が前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より小さくすると共に、前記セパレーター側流路を前記ガス流れ方向に沿って重ねている
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成を備える燃料電池では、発電体層での発電反応に供される反応ガスは、波形要素含有部をガス流れ方向に沿って複数連設したガス流路層の流路を流れる。波形要素含有部は、発電体層の側に凸な第1の凸部とセパレーターの側に凸な第2の凸部とが流路形成領域において並んだ波形断面の波形要素を繰り返し有することから、反応ガスの流路は複数連設された波形要素含有部で次のように形成される。
【0010】
波形要素含有部のそれぞれは、繰り返される波形要素における第1の凸部の繰り返しに沿った側方領域を、発電体層の側の発電体層側流路とし、この波形要素における第2の凸部の繰り返しに沿った側方領域を、セパレーターの側のセパレーター側流路とする。つまり、発電体層側流路は、発電体層の側で反応ガスの流路をなし、セパレーター側流路は、セパレーターの側で反応ガスの流路をなす。そして、繰り返される波形要素における第1の凸部と第2の凸部とは、前者が発電体層の側に凸で後者がセパレーターの側に凸であることから、発電体層側流路とセパレーター側流路とは、第1の凸部から第2の凸部に延びる或いはこの逆に延びる凸部傾斜部により仕切られることになる。
【0011】
このように流路をなす波形要素含有部は、ガス流れ方向に沿って複数連設されていると共に、ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの波形要素含有部は、セパレーター側流路をガス流れ方向に沿って重ねている。このため、セパレーター側流路は、ガスの流れ方向に波形要素含有部の連設範囲、即ちガス流路層の範囲におけるセパレーターの側の反応ガス流路となり、反応ガスは、セパレーター側流路をセパレーターの側においてガスの流れ方向に流れることになる。この場合、セパレーター側流路がガス流れ方向に沿って重なれば、発電体層側流路にあっても、ガス流れ方向に沿って重なることになり、ガスの流れ方向に波形要素含有部の連設範囲(ガス流路層の範囲)における発電体層の側の反応ガス流路となるので、反応ガスは、発電体層側流路を発電体層の側においてガスの流れ方向に流れることになる。
【0012】
このように反応ガスを流すようにした上記構成の燃料電池は、ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの波形要素含有部を、セパレーター側流路がガス流れ方向に沿って重なるように連設しただけではなく、ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの波形要素含有部の一方の波形要素含有部については、これを、発電体層側流路の体積をセパレーター側流路の体積より大きくし、他方の波形要素含有部については、発電体層側流路の体積をセパレーター側流路の体積より小さくした。このため、発電体層側流路の体積がセパレーター側流路の体積より大きい、即ち、セパレーター側流路の体積が発電体層側流路の体積より小さい一方の波形要素含有部と、この逆で、セパレーター側流路の体積が発電体層側流路の体積より大きい他方の波形要素含有部とにおける反応ガスの通過は次のようになる。
【0013】
セパレーター側流路の体積が発電体層側流路の体積より小さい一方の波形要素含有部は、自身のセパレーター側流路を既述したように隣り合う他方の波形要素含有部のセパレーター側流路に重ねる。しかも、この一方の波形要素含有部は、自身のセパレーター側流路と発電体層側流路とを、第1の凸部と第2の凸部との間で延びる凸部傾斜部で仕切っているので、自身の発電体層側流路についても、他方の波形要素含有部のセパレーター側流路に重ねる。よって、一方の波形要素含有部の発電体層側流路を通過する反応ガスは、この発電体層側流路が他方の波形要素含有部のセパレーター側流路に重なる範囲において、他方の波形要素含有部のセパレーター側流路を通過することになる。こうしたことがガス流れ方向に沿って隣り合う二つの波形要素含有部について起こることから、上記構成の燃料電池によれば、発電体層の水、例えば発電反応により生じた生成水や反応ガス自体に含まれていた水は、一方の波形要素含有部の発電体層側流路を経て他方の波形要素含有部のセパレーター側流路に反応ガスによって運ばれるので、水分の排水性を高めることができる。
【0014】
なお、隣り合う二つの波形要素含有部において上記構成となればよいので、例えば隣り合う三つの波形要素含有部では、その内の隣り合う二つの波形要素含有部において上記構成となればよい。隣り合う四つ以上の波形要素含有部においても同じである。
【0015】
上記した燃料電池は、次のような態様とすることができる。例えば、前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部を、前記ガスの流れ方向から見て、前記一方の前記波形要素含有部が有する前記セパレーター側流路が前記他方の前記波形要素含有部が有する前記セパレーター側流路の内側に位置するよう隣り合うように連設するようにできる。こうすれば、隣り合う二つの波形要素含有部のセパレーター側流路を容易且つ確実に重なることができると共に、一方の波形要素含有部の発電体層側流路から他方の波形要素含有部のセパレーター側流路への水分の排水を容易且つ確実に図ることができる。
【0016】
この場合、前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部を連設するに当たり、前記波形要素における前記第1の凸部と前記第2の凸部との間において延びる凸部傾斜部において接合するようにできる。こうすれば、隣り合う二つの波形要素含有部の第1の凸部と第2の凸部を、それぞれの凸部の頂上面が反応ガスの流れ方向に対して水平となるようにできる。よって、隣り合う二つの波形要素含有部の一方の波形要素含有部の第1の凸部と他方の波形要素含有部の第2の凸部とが同じ面となるようにプレスする既存のエキスパンドメタル成型手法に比べ、次の利点がある。
【0017】
既存のエキスパンドメタル成型手法では、一方の波形要素含有部の第1の凸部と他方の波形要素含有部の第2の凸部とが同じ面となるようにプレスすることから、凸部の頂上面および流路は階段状となる。よって、凸部の頂上面を反応ガスの流れ方向に対して水平となるようにするには、上記のプレス後に、階段状の凸部頂上面を改めて水平とするようプレスする必要がある。これに対し、上記の態様の燃料電池では、隣り合う二つの波形要素含有部が凸部傾斜部において接合した上で、それぞれの凸部の頂上面が反応ガスの流れ方向に対して水平であるので、隣り合う二つの波形要素含有部に適合したプレス刃を有するプレス機にて順送りプレスするだけで、或いは、隣り合う二つの波形要素含有部に適合したプレス刃をロール状に有するロールプレス機にて順送りプレスするだけで製造できるので、生産性の向上、延いてはコスト低減を図ることができる。
【0018】
また、前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部のうちの前記一方の前記波形要素含有部については、これを、前記第1の凸部の頂上面を前記ガス流れ方向に沿った幅が広く前記波形要素の繰り返しに沿った幅を狭くした上で、前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より大きくし、前記他方の前記波形要素含有部については、前記第1の凸部の頂上面を前記ガス流れ方向に沿った幅が狭く前記波形要素の繰り返しに沿った幅を広くした上で、前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より小さくすることができる。こうすれば、ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの波形要素含有部における第1の凸部の頂上面の並びを、発電体層の側においてガス流れ方向に沿って幅広の頂上面と波形要素の繰り返しに沿って幅広の頂上面の並びとできる。
【0019】
この場合、前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部を、前記発電体層の表面に前記第1の凸部の頂上面が当接する際の接触幅を予め定めた接触幅以下となるようにすることができる。こうすれば、次の利点がある。第1の凸部は、その頂上面を発電体層に当接させることから、頂上面が発電体層に当接する当接幅(接触幅)が広くなればなるほど、頂上面が当接する範囲の発電体層に当該範囲周囲から反応ガスが拡散し難くなる。このため、水が当該範囲の発電体層に留まり易くなって、水による濃度過電圧が起き易くなり、この濃度過電圧の回避の上からは、頂上面が発電体層に当接する当接幅(接触幅)を狭くしてガス拡散性を高めることが望ましい。こうした事情から、頂上面が当接する範囲の発電体層へのその周囲からのガス拡散を確保できる接触幅を、上記した予め定めた接触幅とすれば、頂上面が当接する範囲の発電体層のガス拡散性を確保できるので、既述した排水性の向上に加え、水による濃度過電圧の増加を抑制して、電池性能の維持、延いては能力向上を図ることができる。
【0020】
また、本発明は、燃料電池の発電反応に供される反応ガスの流路を、発電体層の電解質膜の膜面に沿って形成するガス流路形成部材として適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の燃料電池スタック100の概略構成を燃料電池20の概略構成と合わせて示す説明図である。
【図2】ガス流路層40の概略構造を示す説明図である。
【図3】隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240をガス上流側から見て示す説明図である。
【図4】隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240の連設の様子を示す説明図である。
【図5】発電体層35の表面における凸部頂上面の当接の様子を模式的に示す説明図である。
【図6】プレス加工装置300を用いたガス流路層40の製造の様子を模式的に示す説明図である。
【図7】上下のプレス刃構成を概略的に示す説明図である。
【図8】第1流路構成体140と第2流路構成体240のプレス成型の様子をプレス刃の噛み合わせと共に示す説明図である。
【図9】変形例のガス流路層40Aの概略構造を示す説明図である。
【図10】また別の変形例のガス流路層40Bの概略構造を示す説明図である。
【図11】ガス流路層40Bにおいて隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240をガス上流側から見て示す説明図である。
【図12】多列刃群を有するプレス加工装置300を用いてガス流路層40を多列毎に製造する様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本実施例の燃料電池スタック100の概略構成を燃料電池20の概略構成と合わせて示す説明図である。図示するように、燃料電池スタック100は、固体高分子形の燃料電池20を複数積層し、その両端にターミナルおよびインシュレータ(図示省略)を配置して、これをエンドプレート95,96で挟持して構成される。この燃料電池スタック100では、燃料ガスとしての水素ガスおよび酸化ガスとしての空気が水素供給マニホールド95a、空気供給マニホールド95bから燃料電池20に供給され、その排ガスが水素排出マニホールド95cおよび空気排出マニホールド95dから排出される。また、冷却水が冷却水供給マニホールド95eから燃料電池20に供給され、その排水が冷却水排出マニホールド95fから排出される。
【0023】
燃料電池20は、発電体層35の両面に、ガス流路層40、60、セパレーター70、80を積層して構成される。発電体層35は、電解質膜・電極接合体としてのMEA(Membrane Electrode Assembly)34の両面にガス拡散層33a、33bを接合して構成される。MEA34は、電解質膜31の表面上に、カソード電極32aとアノード電極32bとを備える。電解質膜31は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す固体高分子材料の薄膜である。本実施例では、電解質膜31には、ナフィオン(登録商標)を用いた。カソード電極32aおよびアノード電極32bは、導電性を有する担体上に触媒を担持させた電極であり、本実施例においては、白金触媒を担持したカーボン粒子と、電解質膜31を構成する高分子電解質と同質の電解質とを備えている。
【0024】
ガス拡散層33a,33bは、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス、あるいは金属メッシュや発泡金属によって形成することができる。本実施例においては、ガス拡散層33a,33bは、カーボンペーパを用いた。ガス拡散層33a,33bは、酸化ガスまたは燃料ガスを拡散して、カソード電極32aまたはアノード電極32bの全面に供給する。ガス拡散層33a,33bは、後述するガス流路層40、60と比べて小さい気孔率を有しており、ガス拡散機能の他に、集電機能や、MEA34の保護機能も担っている。なお、このガス拡散層33aおよび33bには、MEA34の水分量を調節する機能などを持たせてもよい。
【0025】
かかる発電体層35は、その外周に配されたシールガスケット36と一体形成される。シールガスケット36には、水素供給マニホールド30a、空気供給マニホールド30b、水素排出マニホールド30c、空気排出マニホールド30d、冷却水供給マニホールド30e、冷却水排出マニホールド30fを備えている。また、シールガスケット36には、厚み方向に、各マニホールドと発電体層35の外周部とをそれぞれ囲む凸状の部位が形成されており、当該部位は、シールガスケット36の両側に積層されるセパレーター70、80と当接し、マニホールド内や発電体層35内からの流体(燃料ガス、酸化ガス、冷却水)の漏れを抑制するシールとして機能する。
【0026】
ガス流路層40、60は、発電体層35にガスを供給するガス流路を形成する。ガス流路層40は、発電体層35のアノード電極32b側とセパレーター70との間(流路形成領域)に配設され、セパレーター70を介して供給された燃料ガス(ここでは水素ガス)を、MEA34の電極面の側方の一方の側から他方の側に向けた流れで流しつつ、燃料ガスを発電体層35のアノード電極32b側に供給する。同様に、ガス流路層60は、酸化ガス(ここでは空気)を発電体層35のカソード電極32a側に供給する。かかるガス流路層40、60は、耐食性と導電性とを有する金属、例えば、ステンレス鋼やチタン、チタン合金などによって形成されるが、本実施例では、ステンレス鋼を用いた。ガス流路層40、60の詳細な構造については後述する。なお、本実施例では、発電体層35の両面にガス流路層40、60を備える構成としたが、発電体層35の片面のみに備える構成としてもよい。
【0027】
セパレーター70、80は、反応ガスの隔壁として機能する部材であり、同一の構成を有している。以下、セパレーター70について説明する。セパレーター70は、ガス不透過な導電性部材、例えば圧縮カーボンやステンレス鋼から成る部材によって形成される。本実施例では、ステンレス鋼を用いた。セパレーター70は、カソード電極32a側に設けられる平坦なカソード側セパレーター71と、アノード電極32b側に設けられる平坦なアノード側セパレーター73と、それらの間に配置される中間セパレーター72とが一体となって構成される。カソード側セパレーター71は、水素供給マニホールド71a、空気供給マニホールド71b、水素排出マニホールド71c、空気排出マニホールド71d、冷却水供給マニホールド71e、冷却水排出マニホールド71f、空気連通孔75,76を備えている。空気供給マニホールド71bに供給された空気は、中間セパレーター72の空気連通孔72bおよび空気連通孔75を介して、カソード側セパレーター71に面して設けられる他の燃料電池20のガス流路層60(図示省略)に導かれる。また、その排ガスは、空気連通孔76および中間セパレーター72の連通孔(図示省略)を介して、空気排出マニホールド71dに排出される。
【0028】
同様に、水素供給マニホールド71aに供給された水素は、中間セパレーター72の水素連通孔72aおよびアノード側セパレーター73の連通孔(図示省略)を介して、ガス流路層40に導かれ、ガス流路層40を流れた後、中間セパレーター72およびアノード側セパレーター73の連通孔(図示せず)を介して、水素排出マニホールド71cに排出される。また、中間セパレーター72には、略長方形外形の長辺方向に沿って複数の切欠が形成され、その切欠の両端はそれぞれ、冷却水排出マニホールド71fおよび冷却水供給マニホールド71eと連通している。なお、セパレーター70は、上述した3層構造のものに限るものではない。例えば、カソード側セパレーター71とアノード側セパレーター73との2層構造とし、中間セパレーター72に形成される連通孔に相当する形状をカソード側セパレーター71および/またはアノード側セパレーター73の内側に形成してもよい。
【0029】
次に、ガス流路層40、60について説明する。本実施例においては、ガス流路層40とガス流路層60とは同一の構造を有しているので、以下では、ガス流路層40の構造として説明する。図2はガス流路層40の概略構造を示す説明図である。図2において、ガス流路層40の上方は、燃料電池20におけるセパレーター70側であり、下方は発電体層35側である。図示するように、ガス流路層40は、ガスの流路形成のための第1流路構成体140と第2流路構成体240を、ガスの流れ方向(図におけるガス流P1、P2)に沿って複数連設して備える。第1流路構成体140は、発電体層35の側に凸な第1凸部141とセパレーター70の側に凸な第2凸部142とがガス流P1、P2の方向と交差する交差方向(以下、この交差方向をガス交差方向と称する)に沿って並んだ波形断面の波形要素WSEを流路形成のための要素とし、この波形要素WSEをガス交差方向に沿って繰り返し有する。この波形要素WSEは、流路形成領域において、第1凸部141と第2凸部142とを並べる。第1流路構成体140は、第1凸部141を発電体層35に当接させ、第2凸部142をセパレーター70に当接させることで、ガス交差方向に沿った第1凸部141の側方領域を、第1ガス流路143とし、ガス交差方向に沿った第2凸部142の側方領域を、第2ガス流路144とする。第1ガス流路143は、発電体層35の側で開口した発電体層側流路となり、第2ガス流路144は、セパレーター70の側で開口したセパレーター側流路となり、これらガス流路は凸部傾斜部145で仕切られる。本実施例において、第1流路構成体140は、第1凸部141と第2凸部142を同一ピッチで繰り返し備える。
【0030】
第2流路構成体240についても同様であり、この第2流路構成体240は、発電体層35の側に凸な第1凸部241とセパレーター70の側に凸な第2凸部242とがガス交差方向に沿って並んだ波形断面の波形要素WSEを流路形成のための要素とし、この波形要素WSEをガス交差方向に沿って繰り返し有する。この第2流路構成体240は、第1凸部241を発電体層35に当接させ、第2凸部242をセパレーター70に当接させることで、ガス交差方向に沿った第1凸部241の側方領域を、第1ガス流路243とし、ガス交差方向に沿った第2凸部242の側方領域を、第2ガス流路244とする。この第2流路構成体240にあっても、第1ガス流路243は、発電体層35の側で開口した発電体層側流路となり、第2ガス流路244は、セパレーター70の側で開口したセパレーター側流路となり、両凸部は同一ピッチで形成されている。
【0031】
図2に示すように、第1流路構成体140は、ガス流P1、P2の方向に幅広とされているので、第1凸部141の頂上面をガス流P1、P2の方向に沿って幅が広くガス交差方向に沿って幅が狭い頂上面とし、発電体層側流路である第1ガス流路143の体積をセパレーター側流路である第2ガス流路144の体積より大きくしている。この第1流路構成体140に連設する第2流路構成体240にあっては、ガス流P1、P2の方向の幅が狭くされているので、第1凸部241の頂上面をガス流P1、P2の方向に沿って幅が狭くガス交差方向に沿って幅が広い頂上面とし、発電体層側流路である第1ガス流路243の体積をセパレーター側流路である第2ガス流路244の体積より小さくしている。
【0032】
隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240は、それぞれの第1凸部と第2凸部との間において延びる凸部傾斜部145、245において接合している。詳しくは、第1流路構成体140の凸部傾斜部145と第2流路構成体240の凸部傾斜部245とは、その軌跡に沿って連設して、ガス流P1、P2の方向に沿って連設する。第1流路構成体140と第2流路構成体240は、ガス流P1、P2の方向に交互に並ぶことから、ある一つの第2流路構成体240は、ガス流P1、P2の上流側と下流側で第1流路構成体140と隣り合い、既述したようにそれぞれの凸部傾斜部145、245でその軌跡において接合する。図3は隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240をガス上流側から見て示す説明図である。図では、上流側の流路構成体を実線で示し、下流側の流路構成体を波線で示している。
【0033】
第1流路構成体140と第2流路構成体240は、図3に示すように、ガス上流側から見て、第2ガス流路144が第2ガス流路244の内側に位置するようにしてガス流れ方向に沿って重なるよう、また、第1ガス流路243が第1ガス流路143の内側に位置するようにしてガス流れ方向に沿って重なるよう、隣り合って連設されている。こうした流路の重なりが繰り返されることから、第2ガス流路144と第2ガス流路244の重なり合った流路(セパレーター側流路)、および第1ガス流路143と第1ガス流路243との重なり合った流路(発電体層側流路)は、ガス流路層40においてガス流P1、P2に沿って繋がることになる。
【0034】
上記したように両流路構成体を連設するに当たり、本実施例では、第2流路構成体240(最上流側の第2流路構成体240_1)は、これより上流側の第1流路構成体140_1の凸部傾斜部145と凸部傾斜部245を接合させ(図3(A))、凸部傾斜部245は、第1凸部241の右方側となる。また、この第2流路構成体240_1は、これより下流側の第1流路構成体140_2の凸部傾斜部145と凸部傾斜部245を接合させ(図3(B))、凸部傾斜部245は、第1凸部241の左方側となる。こうした接合を図2に示すように第2流路構成体240_6まで維持し、第2流路構成体240_7からはその逆とする。こうすることで、第2流路構成体240_7を境にして、隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240の連設の様子が異なるようにした。このため、本実施例では、第2ガス流路144と第2ガス流路244の重なり合った流路(セパレーター側流路)、および第1ガス流路143と第1ガス流路243との重なり合った流路(発電体層側流路)を、図2に示すように屈曲させて繋げる。そして、ガス流路層40は、図2に示すように燃料電池20に組み込まれ、この屈曲した経路のガス流P1、P2として水素ガスを流す。ガス流路層60にあっては、上記したガス流路層40と同様の構成を備え、空気を屈曲した経路のガス流P1、P2として流す。
【0035】
ここで、上記した流路の重なりとガスの流れる様子について説明する。図4は隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240の連設の様子を示す説明図である。図示するように、第1流路構成体140は、発電体層35の側に開口した第1ガス流路143の体積をセパレーター70の側に開口した第2ガス流路144より大きくした上で、第2ガス流路144を第2流路構成体240の第2ガス流路244に重ね、第1ガス流路143については、第2流路構成体240の第1ガス流路243に重ねる。
【0036】
これらガス流路については、既述したようにその体積が調整されていることから、図示するように、第1流路構成体140の第1ガス流路143は、第2流路構成体240の第2ガス流路244とも流路一部において重なる。この第2ガス流路244は、体積が大きいことから上流の第2ガス流路144と重なると共に下流の第1ガス流路143とも重なる。第1流路構成体140の第2ガス流路144は、第1流路構成体140の第1ガス流路143と流路一部で重なる第2流路構成体240の第2ガス流路244に重なる。つまり、ガス流路層40は、第1ガス流路143と第1ガス流路243の繋がりで発電体層側流路を形成し、第2ガス流路144と第2ガス流路244の繋がりでセパレーター側流路を形成し、これら流路にガス流P1、P2に沿ってガスを流す。
【0037】
ガス流路層40は、隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240とで既述したようにガス流路を形成することから、発電体層35の表面に次のように第1凸部141と第1凸部241の頂上面を当接させる。図5は発電体層35の表面における凸部頂上面の当接の様子を模式的に示す説明図である。図示するように、第1流路構成体140は、その第1凸部141をガス流P1、P2の方向に対していわゆる縦長に配置させ、第2流路構成体240は、その第1凸部241をガス流P1、P2の方向に対していわゆる横長に配置させる。よって、発電体層35の表面には、第1凸部141の頂上面が当接した縦長の凸部当接部141TSと、第1凸部241の頂上面が当接した横長の凸部当接部241TSとが、ガス流P1、P2の方向に交差するガス交差方向に並ぶことになる。
【0038】
次に、上記したガス流路層40とガス流路層60の製造手法について、ガス流路層40を例に上げて説明する。図6はプレス加工装置300を用いたガス流路層40の製造の様子を模式的に示す説明図である。
【0039】
図6に示すように、ガス流路層40の製造に当たっては、板状の基材150(例えば、ステンレス鋼板)を用意し、これをプレス加工装置300に送り出す。プレス加工装置300は、従動ローラ310と駆動ローラ320にて基材150をプレス台330に向けて所定ピッチで送りつつ、下刃群と上刃群でプレス加工を行って、ガス流路層40を製造する。
【0040】
既述したように、ガス流路層40は、第1流路構成体140と第2流路構成体240とを連設するに当たり、第1流路構成体140の凸部傾斜部145と第2流路構成体240の凸部傾斜部245を接合させるので、両凸部傾斜部の一方端側の第1凸部141と第1凸部241とを同じ面に位置させ、他方端の第2凸部142と第2凸部242についてもこれを同じ面に位置させる。その上で、板状の基材150から第1流路構成体140と第2流路構成体240とが連設するようこれらをプレス成型するため、プレス加工装置300の次のようなプレス刃構成を備える。図7は上下のプレス刃構成を概略的に示す説明図、図8は第1流路構成体140と第2流路構成体240のプレス成型の様子をプレス刃の噛み合わせと共に示す説明図である。
【0041】
図7に示すように、プレス加工装置300は、第1流路構成体140の成型用の第1下刃340と第1上刃360とを上下に向かい合わせて備え、第2流路構成体240の成型用の第2下刃350と第2上刃370とを上下に向かい合わせて備える。プレス加工装置300は、第1下刃340と第2下刃350を、第1上刃360と第2上刃370を並べて備え、それぞれの上刃・下刃を図示するように機材送り方向に対して左右方向に移動させつつ、上刃についてはこれを上下方向に移動してガス流路層40のプレス成型を行うが、図においては、説明の便宜上、上刃・下刃を分離して示してある。
【0042】
第1下刃340は、基材150の送り方向と交差して、凸部341と凹部342とを所定のピッチで交互に配列して備える。第1上刃360は、基材150の送り方向と交差して、凸部361と凹部362とを所定のピッチで交互に配列して備え、凸部361が凹部342の中央位置となるよう、第1下刃340の上方に位置する。第1下刃340と第1上刃360は、この上下位置関係を維持したまま、図示しないアクチュエータによって、左右方向に往復動可能に構成され、第1上刃360は、図示しないアクチュエータによって上下動される。基材送り方向の第1下刃340と第1上刃360の幅は、ガスの流れ方向に沿った第1流路構成体140の幅とされている。この場合、基材150に、凸部傾斜部145および凸部傾斜部245に相当する部位以外の箇所にスリットが形成されていれば、第1下刃340と第1上刃360には剪断刃は不要となるが、スリット無しの基材150からガス流路層40をプレス成型するのであれば、凸部341および凸部361に剪断刃を備えるようにすればよい。
【0043】
第2下刃350と第2上刃370についても、上記した第1下刃340と第1上刃360と同様の凹凸を備え、基材送り方向の幅については、ガスの流れ方向に沿った第2流路構成体240の幅とされている。剪断刃の有無についても同様である。
【0044】
ガス流路層40のプレス成型に際しては、プレス加工装置300に基材150をセットし、基材150を、その端部が第1下刃340と第1上刃360との間に位置するまで送り出す。次いで、第1上刃360を第2下刃350に向けて、第2上刃370を第1上刃360に向けて降下させることで、第1下刃340と第1上刃360の噛み合わせ、第2下刃350と第2上刃370の噛み合わせにより、基材150にその端部側において上刃・下刃に倣った凹凸形状が形成される。つまり、第1下刃340と第1上刃360の噛み合わせでは、図8(A)に示すように、凹部342に噛み合う凸部361で押されて第1凸部141が形成され、凹部362に噛み合う凸部341で押されて第2凸部142が第1凸部141に並んで形成される。これにより、第1凸部141と第2凸部142とが凹部・凸部のピッチで交互に並んだ波形要素WSEを繰り返し有する第1流路構成体140がプレス成型される。また、第2下刃350と第2上刃370の噛み合わせでは、図8(B)に示すように、凹部352に噛み合う凸部371で押されて第1凸部241が形成され、凹部372に噛み合う凸部351で押されて第2凸部242が第1凸部241に並んで形成される。これにより、第1凸部241と第2凸部242とが凹部・凸部のピッチで交互に並んだ波形要素WSEを繰り返し有する第2流路構成体240が、第1流路構成体140に並んでプレス成型される。
【0045】
次に、上刃・下刃を元の位置に戻し、基材150を所定ピッチ(基材送り方向の第1流路構成体140の幅と第2流路構成体240の幅の和に相当する長さ)だけ基材送り方向に移動させる。これと並行して、上記の各下刃および各上刃を左右方向の一方に波形要素WSEのピッチだけ移動させた後、改めて上記の各下刃および各上刃の噛み合わせ(プレス)を行うことで、新たに第1流路構成体140と第2流路構成体240とが連設してプレス成型される。かかる工程を繰り返せば、図2に示すガス流路層40が形成される。この場合、既述したように隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240の連設の様子が異なるようにするには、連設の様子の切り替えの境となる第2流路構成体240の成型後に、上記の各下刃および各上刃の左右方向の移動の様子を変えればよい。
【0046】
以上説明したように、本実施例の燃料電池20は、発電体層35に水素ガスと空気を供給するに当たり、アノード側ではガス流路層40により、カソード側ではガス流路層60によりガス流路を形成する。ガス流路層40は、発電体層35の側に凸な第1凸部141とセパレーター70の側に凸な第2凸部142とがガス流れ方向と交差する交差方向に沿って並んだ波形断面の波形要素WSEをガス交差方向に沿って繰り返し有する第1流路構成体140と、発電体層35の側に凸な第1凸部241とセパレーター70の側に凸な第2凸部242とがガス交差方向に沿って並んだ波形断面の波形要素WSEをガス交差方向に沿って繰り返し有する第2流路構成体240とをガスの流れ方向に連設して、発電体層35の側のガス流路とセパレーター70の側のガス流路を、図2〜図4に示すように形成する。ガス流路層60にあっても同様である。
【0047】
図4に示すように、第1流路構成体140は、凸部傾斜部145にて第1凸部141から仕切った第1ガス流路143を、発電体層35の側に開口した流路とし、凸部傾斜部145にて第2凸部142から仕切った第2ガス流路144を、セパレーター70の側に開口した流路とする。その上で、第1流路構成体140は、発電体層35の側に開口した第1ガス流路143の体積をセパレーター70の側に開口した第2ガス流路144より大きくする。この第1流路構成体140に隣り合う第2流路構成体240は、凸部傾斜部245にて第1凸部241から仕切った第1ガス流路243を、発電体層35の側に開口した流路とし、凸部傾斜部245にて第2凸部242から仕切った第2ガス流路244を、セパレーター70の側に開口した流路とする。その上で、第2流路構成体240は、第1流路構成体140とは逆に、発電体層35の側に開口した第1ガス流路143の体積をセパレーター70の側に開口した第2ガス流路144より小さくする。
【0048】
本実施例の燃料電池20では、ガス流路形成のために隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240とを連設するに当たり、上記したように流路の体積を調整した上で、図4に示すように、第1流路構成体140の第2ガス流路144を第2流路構成体240の第2ガス流路244に重ねる。また、第1流路構成体140の第1ガス流路143については、これを第2流路構成体240の第1ガス流路243に重ねると共に、第1流路構成体140の第2ガス流路144と重なる第2ガス流路244とも流路一部において重ねる。こうした流路の重ね合わせが、隣り合う流路構成体で繰り返されるので、本実施例の燃料電池20では、反応ガス(水素ガス)は、第1流路構成体140の第1ガス流路143と第2ガス流路144を通過し、第1ガス流路143を通過したガスは、当該流路に続く第2流路構成体240の第1ガス流路243を通過すると共に、第2流路構成体240の第2ガス流路244をも通過する。この第2ガス流路244は、上流の第2ガス流路144と重なると共に下流の第1ガス流路143とも重なる。よって、発電体層側流路である第1ガス流路143において発電体層35の表面を流れたガスは、そのまま下流に発電体層側流路の第1ガス流路143と第1ガス流路243を通過すると共に、セパレーター側流路である第2ガス流路144を流れるガスと合流する。この逆に、セパレーター側流路である第2ガス流路144を流れたガスは、そのまま下流にセパレーター側流路の第2ガス流路144と第2ガス流路244を通過すると共に、発電体層側流路である第1ガス流路143を流れるガスと合流する。つまり、ガス流路層40は、第1ガス流路143と第1ガス流路243の繋がりで形成される発電体層側流路と、第2ガス流路144と第2ガス流路244の繋がりで形成されるセパレーター側流路とにおいてガスを流すに当たり、ガスの合流および分流を起こしつつ、ガス流P1、P2に沿ってガスを流すことになる。ガス流路層60についても同様である。
【0049】
こうしたガスの合流および分流がガス流れ方向に沿って隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240について起こることから、発電体層35の水、例えば発電反応により生じた生成水やガス自体に含まれていた水は、発電体層側流路である第1流路構成体140の第1ガス流路143を経てセパレーター側流路である第2流路構成体240の第2ガス流路244にガスによって運ばれることになる。よって、本実施例の燃料電池20によれば、水分の排水性を高めることができる。なお、発電体層側流路である第2流路構成体240の第1ガス流路243を通過するガスは、そのまま下流の第1流路構成体140の第1ガス流路143を通過するので、発電体層35に運ばれるガスが少なくなるような事態は起きない。
【0050】
また、本実施例の燃料電池20では、第1流路構成体140と第2流路構成体240とを連設するに当たり、ガスの流れ方向から見て、第1流路構成体140が有するセパレーター側流路の第2ガス流路144を、図3に示すように、第2流路構成体240が有するセパレーター側流路の第2ガス流路244の内側に位置するようした。よって、本実施例の燃料電池20によれば、隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240のセパレーター側流路(第2ガス流路144と第2ガス流路244)を容易且つ確実に重なることができる。しかも、第1流路構成体140の発電体層側流路である第1ガス流路143を第2流路構成体240のセパレーター側流路である第2ガス流路244に確実に重ねるので、水分の排水を容易且つ確実に図ることができる。
【0051】
また、本実施例の燃料電池20では、第1流路構成体140と第2流路構成体240とを連設するに当たり、波形要素WSEにおける第1、第2の凸部の間の第1流路構成体140の凸部傾斜部145と第2流路構成体240の凸部傾斜部245が繋がるようにこの凸部傾斜部において接合するようにした。よって、本実施例の燃料電池20によれば、隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240のそれぞれの第1凸部141と第1凸部241を、およびそれぞれの第2凸部142と第2凸部242を、その頂上面が反応ガスの流れ方向に対して水平となるようにできる。この結果、本実施例の燃料電池20によれば、図6〜図8で説明したように、プレス加工装置300を用いた単純な順送りプレス成型だけで容易にガス流路層40やガス流路層60を製造でき、生産性の向上と、コスト低下を図ることができる。
【0052】
また、本実施例の燃料電池20では、図5に示すように、第1流路構成体140については、これをその第1凸部141がガス流P1、P2の方向に対して縦長に配置させ、第2流路構成体240については、これをその第1凸部241がガス流P1、P2の方向に対して横長に配置させた。よって、発電体層35の表面には、第1凸部141の頂上面が当接した縦長矩形形状の凸部当接部141TSと、第1凸部241の頂上面が当接した横長矩形形状の凸部当接部241TSとが、ガス流P1、P2の方向に交差するガス交差方向に並ぶようにできる。
【0053】
そして、本実施例の燃料電池20では、この凸部当接部141TSと凸部当接部241TSとを、これら当接部が発電体層に当接する当接幅(接触幅)が予め定めた接触幅以下となるようにした。よって、次の利点がある。凸部当接部141TSや凸部当接部241TSにおいては、発電体層35に第1凸部141あるいは第1凸部241がその頂上面を当接させる範囲は、上記したような矩形形状範囲であることから、凸部当接部141TSや凸部当接部241TSの当接幅(短寸方向の幅)が広くなればなるほど、凸部当接部141TSや凸部当接部241TSの発電体層にその周囲から反応ガスが拡散し難くなり、水が凸部当接部141TSや凸部当接部241TSの発電体層に留まり易くなって、水による濃度過電圧が起き易くなる。ところが、上記した予め定めた接触幅を、凸部当接部141TSや凸部当接部241TSの上記した当接幅における発電体層へのガス拡散を確保できる接触幅としたので、本実施例の燃料電池20によれば、凸部当接部141TSや凸部当接部241TSの上記した当接幅を狭くして発電体層へのガス拡散を確実に確保できる。このため、本実施例の燃料電池20によれば、既述した排水性の向上に加え、水による濃度過電圧の増加を抑制して、電池性能の維持、延いては能力向上を図ることができる。この場合、ガス拡散を確保できる当接幅は、発電体層35のガス拡散性やガスの供給状況等により実験的に予め定めることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。図9は変形例のガス流路層40Aの概略構造を示す説明図である。この変形例のガス流路層40Aは、第1流路構成体140と第2流路構成体240は、既述した実施例と同じであるものの、第1流路構成体140と第2流路構成体240の接合の様子において相違する。つまり、このガス流路層40Aは、ある第2流路構成体240と、その上流・下流で接合する第1流路構成体140とにおいて、これら流路構成体を同じ側の凸部傾斜部145と凸部傾斜部245で接合させている。このため、第1流路構成体140の第1凸部141と第2凸部142は、各列の第1流路構成体140でガスの流れ方向に並び、第1ガス流路143と第2ガス流路144についても並ぶ。その上で、第2流路構成体240の第1凸部241と第2凸部242、第1ガス流路243および第2ガス流路244についても、各列の第2流路構成体240でガスの流れ方向に並ぶことになる。この変形例のガス流路層40Aであっても、発電体層側流路である第1ガス流路143を通過したガスは、セパレーター側流路である第2ガス流路244と発電体層側流路である第1ガス流路243を通過するので、既述した効果を奏することができる。
【0055】
図10はまた別の変形例のガス流路層40Bの概略構造を示す説明図、図11は隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240をガス上流側から見て示す説明図である。この変形例のガス流路層40Bは、第1流路構成体140と第2流路構成体240は、既述した実施例と同じであるものの、第1流路構成体140と第2流路構成体240の接合の様子が、また相違する。つまり、図11に示すように、第1流路構成体140と第2流路構成体240は、凸部傾斜部145と凸部傾斜部245同士がその軌跡に沿って連設するのではなく、凸部傾斜部145或いは凸部傾斜部245は、図11における左右方向にオフセットするよう、傾斜部の一部が隣の第1流路構成体140或いは第2流路構成体240の部位と交差して接合し、その接合箇所において隣の流路構成体と接合する。この変形例のガス流路層40Bであっても、発電体層側流路である第1ガス流路143を通過したガスは、セパレーター側流路である第2ガス流路244と発電体層側流路である第1ガス流路243を通過し、セパレーター側流路である第1ガス流路143を通過したガスは、セパレーター側流路である第2ガス流路244と発電体層側流路である第1ガス流路243を通過するので、既述した効果を奏することができる。
【0056】
この他、次のように変形することもできる。既述した実施例では、発電体層35の両側(カソード電極32a側とアノード電極32b側)に、本発明の実施形態としての構成を有するガス流路層を備える構成としたが、かかる構成のガス流路層は、カソード電極32a側、アノード電極32b側のいずれか一方のみに用いられてもよい。
【0057】
また、上記の実施例では、上刃・下刃を有するプレス加工装置300を用いてガス流路層40やガス流路層60を製造したが、例えば、図2に示すガス流路層40における第1流路構成体140と第2流路構成体240の並びの順にこれら流路構成体の形成用のプレス刃を上下のロール表面に有するロールプレス装置を用いることもできる。このロールプレス装置であっても、基材150を順送りしてプレスするだけで製造できるので、生産性の向上、延いてはコスト低減を図ることができる。
【0058】
この他、ガス流路層40を多列の第1流路構成体140と第2流路構成体240を単位に多列毎に製造することもできる。図12は多列刃群を有するプレス加工装置300を用いてガス流路層40を多列毎に製造する様子を模式的に示す説明図である。図示するように、プレス台330には、基材150の上方に3列の第1上刃360と第2上刃370が配置され、基材150の下方には3列の第1下刃340と第2下刃350が配置されている。この場合、隣り合う第1上刃360と第2上刃370の関係、および第1下刃340と第2下刃350の関係は記述したとおりであり、3列に並んだ第1上刃360と第2上刃370および第1下刃340と第2下刃350は、図2における第1流路構成体140_1〜140_3と第2流路構成体240_1〜240_3を一度のプレスで成形する。つまり、各列の上刃・下刃は、波形要素WSEのピッチに合わせてずれるように並べられている。図12のプレス加工装置300を用いれば、3列の第1流路構成体140と第2流路構成体240を単位に多列毎にガス流路層40を製造でき、既述したロールプレスと同様に、生産性の向上、延いてはコスト低減を図ることができる。
【0059】
また、隣り合う第1流路構成体140と第2流路構成体240において、上記した流路体積調整を経て第1ガス流路143と第1ガス流路243の重なり、および第2ガス流路144と第2ガス流路244の重なりが確保できればよいので、例えば隣り合う三つの流路構成体では、その内の隣り合う二つの流路構成体において上記構成となればよい。具体的には、第1ガス流路について三つの流路構成体で大中小の関係にありながら、隣り合う二つの流路構成体において上記の体積調整がなされ、その上で、流路が重なるようにすればよい。隣り合う四つ以上の流路構成体においても同じである。
【0060】
この他、第1流路構成体140と第2流路構成体240におけるセパレーター側流路である第2ガス流路144と第2ガス流路244とを、その流路表面において親水性を有するようにすることが好ましい。こうすれば、第1ガス流路143を経てガスが第2ガス流路244に流れるような場合に、流路表面に水膜を形成でき、この水膜が各列の第2ガス流路144や第2ガス流路244に繋がるので、排水性がより高まる。この場合、ガス流路表面に親水性を付与するには、図6のプレス成型に先だって、第2ガス流路144および第2ガス流路244の成型面側に親水処理を施せばよい。
【0061】
また、上記の実施例では固体高分子形燃料電池を例に説明したが、ダイレクトメタノール形燃料電池、リン酸形燃料電池など種々の燃料電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
20…燃料電池
30a…水素供給マニホールド
30b…空気供給マニホールド
30c…水素排出マニホールド
30d…空気排出マニホールド
30e…冷却水供給マニホールド
30f…冷却水排出マニホールド
31…電解質膜
32a…カソード電極
32b…アノード電極
33a…ガス拡散層
34…MEA
35…発電体層
36…シールガスケット
40、40A〜40B…ガス流路層
60…ガス流路層
70…セパレーター
71…カソード側セパレーター
71a…水素供給マニホールド
71b…空気供給マニホールド
71c…水素排出マニホールド
71d…空気排出マニホールド
71e〜71f…冷却水排出マニホールド
72…中間セパレーター
72a…水素連通孔
72b…空気連通孔
73…アノード側セパレーター
75〜76…空気連通孔
95…エンドプレート
95a…水素供給マニホールド
95b…空気供給マニホールド
95c…水素排出マニホールド
95d…空気排出マニホールド
95e〜95f…冷却水排出マニホールド
100…燃料電池スタック
140…第1流路構成体
141…第1凸部
141TS…凸部当接部
142…第2凸部
143…第1ガス流路
144…第2ガス流路
145…凸部傾斜部
150…基材
240…第2流路構成体
241…第1凸部
241TS…凸部当接部
242…第2凸部
243…第1ガス流路
244…第2ガス流路
245…凸部傾斜部
300…プレス加工装置
310…従動ローラ
320…駆動ローラ
330…プレス台
340…第1下刃
341…凸部
342…凹部
350…第2下刃
351…凸部
352…凹部
360…第1上刃
361…凸部
362…凹部
370…第2上刃
371…凸部
372…凹部
WSE…波形要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
電解質膜を備えた発電体層と、
前記発電体層を間に挟んで配置された一対のセパレーターと、
前記発電体層と前記一対のセパレーターの少なくとも一方との間に配置され、前記発電体層での発電反応に供される反応ガスを前記電解質膜の膜面に沿ったガス流れ方向に流す流路を形成するガス流路層と、を備え
該ガス流路層は、
前記発電体層の側に凸な第1の凸部と前記セパレーターの側に凸な第2の凸部とが流路形成領域において並んだ波形断面の波形要素を前記流路の形成のための要素とし、前記波形要素を繰り返し有する波形要素含有部を、前記ガス流れ方向に沿って複数連設して備え、
前記波形要素含有部のそれぞれは、前記繰り返される前記波形要素における前記第1の凸部の前記波形要素の繰り返しに沿った側方領域を、前記流路を前記発電体層の側でなす発電体層側流路とし、前記波形要素における前記第2の凸部の前記波形要素の繰り返しに沿った側方領域を、前記流路を前記セパレーターの側でなすセパレーター側流路とし、
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部は、一方の前記波形要素含有部が前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より大きくし、他方の前記波形要素含有部が前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より小さくすると共に、前記セパレーター側流路を前記ガス流れ方向に沿って重ねている
燃料電池。
【請求項2】
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部は、前記ガスの流れ方向から見て、前記一方の前記波形要素含有部が有する前記セパレーター側流路が前記他方の前記波形要素含有部が有する前記セパレーター側流路の内側に位置するよう隣り合っている請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部は、前記波形要素における前記第1の凸部と前記第2の凸部との間において延びる凸部傾斜部において接合している請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部のうちの前記一方の前記波形要素含有部は、前記第1の凸部の頂上面を前記ガス流れ方向に沿った幅が広く前記波形要素の繰り返しに沿った幅を狭くした上で、前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より大きくし、前記他方の前記波形要素含有部は、前記第1の凸部の頂上面を前記ガス流れ方向に沿った幅が狭く前記波形要素の繰り返しに沿った幅を広くした上で、前記発電体層側流路の体積を前記セパレーター側流路の体積より小さくしている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記ガス流れ方向に沿って隣り合う二つの前記波形要素含有部は、前記発電体層の表面に前記第1の凸部の頂上面が当接する際の接触幅を予め定めた接触幅以下としている請求項4に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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