説明

燃料電池

【課題】本発明の目的は、ガス拡散層一体型シールを高精度に位置決めすることができながら、発電効率の向上を図ることができる、燃料電池を提供する。
【解決手段】アノード側拡散層21とアノード側シール部22との接合部分に設けられるアノード側含浸部23は、燃料供給部材3の第1凹部31に受け入れられる。また、カソード側拡散層25とカソード側シール部26との接合部分に設けられるカソード側含浸部27は、空気供給部材4の第3凹部33に受け入れられる。そして、アノード側含浸部23とカソード側含浸部27とは、積層方向に対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、詳しくは、固体高分子形の燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形の燃料電池としては、燃料として水素などのガスを使用する燃料電池や、燃料としてメタノール、ジメチルエーテルまたはヒドラジンなどの液体を使用する燃料電池が知られている。
【0003】
固体高分子形の燃料電池は、一般的には、高分子電解質膜からなる電解質層、その電解質層を挟んで対向配置される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体(MEA)と、燃料側電極および酸素側電極の外側にそれぞれ配置されるガス拡散層(GDL)と、燃料側電極にガス拡散層を挟んで対向配置される燃料側セパレータと、酸素側電極にガス拡散層を挟んで対向配置される酸素側セパレータとを備える単位セルを有している。燃料電池では、このような単位セルが複数スタックされている。
【0004】
このような燃料電池には、ガス拡散層の周縁部にシール部材を設け、ガス拡散層とシール部材とを含浸部により一体化したGDL一体型シールを用いることが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
図4は、GDL一体型シールが採用された燃料電池の単位セルを示す概略構成図である。
【0006】
図4に示されるように、燃料電池の単位セル51は、膜・電極接合体52、膜・電極接合体52の一方側(アノード側)に積層されたアノード側GDL一体型シール53、膜・電極接合体52の他方側(カソード側)に積層されたカソード側GDL一体型シール54、アノード側GDL一体型シール53における膜・電極接合体52の他方側に積層された燃料供給部材55、およびカソード側GDL一体型シール54における膜・電極接合体52の他方側に積層された空気供給部材56を備えている。
【0007】
アノード側GDL一体型シール53は、アノード側ガス拡散層59、アノード側シール部材57およびアノード側含浸部58を備えている。
【0008】
アノード側シール部材57は、アノード側ガス拡散層59の周端部に接合されている。
【0009】
アノード側含浸部58は、アノード側ガス拡散層59とアノード側シール部材57との接合部分に設けられ、アノード側ガス拡散層59よりも積層方向に厚くなるように、燃料供給部材55に向けて膨出している。
【0010】
一方、カソード側GDL一体型シール54は、カソード側ガス拡散層62、カソード側シール部材60およびカソード側含浸部61を備えている。
【0011】
カソード側シール部材60は、カソード側ガス拡散層62の周端部に接合されている。
【0012】
カソード側含浸部61は、カソード側ガス拡散層62とカソード側シール部材60との接合部分に設けられ、カソード側ガス拡散層62よりも積層方向に厚くなるように、空気供給部材56に向けて膨出している。
【0013】
そして、アノード側含浸部58と、カソード側含浸部61とは、積層方向に対向しないように、互いに位置をずらして配置されている。
【0014】
この燃料電池の単位セル51では、膜・電極接合体52において、アノード側ガス拡散層59およびカソード側ガス拡散層62の両方に接触する部分が、発電に寄与する発電領域とされている。
【0015】
また、燃料供給部材55と空気供給部材56との間において、膜・電極接合体52、アノード側GDL一体型シール53およびカソード側GDL一体型シール54の周囲には、ガスケット65が設けられている。そして、ガスケット65が燃料供給部材55および空気供給部材56の間に固定されることにより、これらの膜・電極接合体52、アノード側GDL一体型シール53およびカソード側GDL一体型シール54の位置決めを達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−7328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、ガスケット65は、一般的にはゴムなどの弾性を有する柔軟な材料で形成されている。そのため、ガスケット65による位置決め精度が低いという不具合がある。
【0018】
また、アノード側含浸部58とカソード側含浸部61とが互いに積層方向に対向しないように配置されているので、膜・電極接合体52において、アノード側ガス拡散層59およびカソード側ガス拡散層62の両方に接触する部分の面積が小さくなり、発電効率の向上を阻害する要因となっている。
【0019】
そこで、アノード側含浸部58とカソード側含浸部61とを積層方向に対向させるように配置すれば、発電領域を拡大し、発電効率を向上させることができる。
【0020】
しかしながら、アノード側含浸部58およびカソード側含浸部61は、アノード側ガス拡散層59およびカソード側ガス拡散層62よりも積層方向に大きな厚みを有しており、しかも、アノード側シール部材57およびカソード側シール部材60が含浸されることにより設けられているため、アノード側ガス拡散層59およびカソード側ガス拡散層62よりも硬質である。
【0021】
そのため、アノード側含浸部58とカソード側含浸部61とが積層方向に対向していると、これら膜・電極接合体52、アノード側GDL一体型シール53およびカソード側GDL一体型シール54を、燃料供給部材55および空気供給部材56で挟み込んだときに、燃料供給部材55および空気供給部材56によってアノード側ガス拡散層59およびカソード側ガス拡散層62に適切な荷重を加えることができず、発電効率が低下する。
【0022】
そこで、本発明の目的は、ガス拡散層一体型シールを高精度に位置決めすることができながら、発電効率の向上を図ることができる、燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、高分子電解質膜からなる電解質層、前記電解質層を挟むように積層される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体と、前記膜・電極接合体の両側に積層される1対のガス拡散層一体型シールと、1対の前記ガス拡散層一体型シールにそれぞれ組み付けられるセパレータと、を備える単位セルが複数スタックされた燃料電池であって、各前記ガス拡散層一体型シールは、ガス拡散層と、前記ガス拡散層の前記積層方向と直交する方向の端部に接合されるシール部と、前記ガス拡散層と前記シール部との接合部分に設けられ、前記ガス拡散層よりも前記積層方向に厚くなるように、前記セパレータに向けて膨出する含浸部とを備え、一方側の前記ガス拡散層一体型シールの前記含浸部と、他方側の前記ガス拡散層一体型シールの前記含浸部とは、前記積層方向に対向し、各前記セパレータには、前記含浸部と対向する位置に、前記含浸部を受け入れる凹部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の燃料電池では、各セパレータにおける含浸部と対向する位置に、含浸部を受け入れる凹部が形成されている。また、含浸部は、ガス拡散層とシール部との接合部分において、含浸により設けられているので、硬質である。そのため、硬質の含浸部が凹部に受け入れられることにより、ガス拡散層一体型シールを高精度に位置決めすることができる。
【0025】
さらに、含浸部が凹部に受け入れられるので、各セパレータの組み付け時に、ガス拡散層一体型シールのガス拡散層に対して、適切な荷重を加えることができる。これにより、一方のガス拡散層一体型シールの含浸部と、他方のガス拡散層一体型シールの含浸部とが積層方向に対向していても、発電効率が低下することを確実に防止できる。
【0026】
また、一方のガス拡散層一体型シールの含浸部と、他方のガス拡散層一体型シールの含浸部とが積層方向に対向しているので、膜・電極接合体と両方のガス拡散層一体型シールとの接触面積を増加させることができる。そのため、膜・電極接合体において、発電に寄与する領域の面積が増加し、発電効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示す燃料電池のアノード側ガス拡散層一体型シールに燃料供給部材が組み付けられた状態を示す平面図である。
【図3】図3は、単位セルを組み付けた状態の図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、従来の燃料電池の単位セルを説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.燃料電池
(1−1)燃料電池の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図、図2は、図1に示す燃料電池のアノード側ガス拡散層一体型シールに空気供給部材が組み付けられた状態を示す平面図、図3は、単位セルを組み付けた状態の図2のA−A線断面図である。
【0029】
図1ないし図3において、燃料電池1は、例えば、液体の燃料成分が直接供給される固体高分子形の燃料電池である。燃料電池1には、発電のために燃料成分が供給されるとともに、空気(酸素)が供給される。また、燃料電池1には、燃料成分および空気を冷却するための冷却水が供給される。
【0030】
燃料電池1に供給される燃料成分としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン(水加ヒドラジン、無水ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0031】
燃料電池1は、単位セル16が複数積層された燃料電池スタックとして形成されている。
【0032】
単位セル16は、膜・電極接合体2、膜・電極接合体2の一方側(アノード側)に積層されるガス拡散層一体型シールとしてのアノード側GDL一体型シール8、アノード側GDL一体型シール8における膜・電極接合体2の他方側に積層される燃料供給部材3、膜・電極接合体2の他方側(カソード側)に積層されるガス拡散層一体型シールとしてのカソード側GDL一体型シール9、カソード側GDL一体型シール9における膜・電極接合体2の他方側に積層される空気供給部材4、および、燃料供給部材3と空気供給部材4との間において、膜・電極接合体2、アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9の周囲に設けられるガスケット15を備えている。
【0033】
また、図1では、複数の単位セル16のうち1つだけを取り出して分解して表し、その他の単位セル16については積層状態を示している。
【0034】
膜・電極接合体2は、図3に示すように、電解質層5、電解質層5の厚み方向一方側の表面(以下、単に一方面と記載する。)に積層される燃料側電極としてのアノード電極6、および、電解質層5の厚み方向他方側の表面(以下、単に他方面と記載する。)に積層される酸素側電極としてのカソード電極7を備えている。
【0035】
電解質層5は、アニオン交換型またはカチオン交換型などの高分子電解質膜から形成されている。
【0036】
また、電解質層5の膜厚は、例えば、10〜100μmである。
【0037】
アノード電極6は、例えば、触媒を担持した触媒担体により形成されている。また、触媒担体を用いずに、触媒を、直接、アノード電極6として形成することもできる。
【0038】
アノード電極6の厚みは、例えば、10〜200μm、好ましくは、20〜100μmである。
【0039】
カソード電極7は、例えば、アノード電極6と同様に、触媒を担持した触媒担体により形成されている。
【0040】
カソード電極7の厚みは、例えば、10〜300μm、好ましくは、20〜150μmである。
【0041】
アノード側GDL一体型シール8は、図2および図3に示すように、ガス拡散層としてのアノード側拡散層21、シール部としてのアノード側シール部22、および、含浸部としてのアノード側含浸部23を一体的に備えている。
【0042】
アノード側拡散層21は、例えば、カーボンペーパーあるいはカーボンクロスなどが、必要によりフッ素処理されている硬質のガス透過性材料から、略矩形平板形状に形成されている。なお、アノード側拡散層21は、集電体としても作用する。
【0043】
アノード側拡散層21の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜300μmである。
【0044】
アノード側シール部22は、アノード側拡散層21の積層方向と直交する方向の周端部に接合される矩形枠形状の第1シール部22aと、第1シール部22aを挟んで互いに対向するように設けられ、後述する燃料供給部材3に形成された6つの開口部30をそれぞれ取り囲む格子形状の第2シール部22bとを一体的に備えている。
【0045】
アノード側シール部22は、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されている。
【0046】
アノード側シール部22の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜400μmである。
【0047】
アノード側含浸部23は、アノード側拡散層21とアノード側シール部22の第1シール部22aとの接合部分に設けられ、矩形枠形状に形成されている。
【0048】
アノード側含浸部23は、アノード側拡散層21にアノード側シール部22のゴム成分を含浸させ、その後、圧縮成形することにより形成されている。これにより、アノード側含浸部23は、アノード側拡散層21よりも積層方向に厚くなるように、燃料供給部材3に向けて膨出している。
【0049】
アノード側含浸部23の厚みは、例えば、アノード側拡散層21の1.5倍から2.0倍の厚みであり、100〜1000μm、好ましくは、200〜700μmである。
【0050】
また、アノード側含浸部23の幅(アノード側拡散層21とアノード側シール部22との対向方向の幅)は、例えば、1000〜10000μm、好ましくは、2000〜5000μmである。
【0051】
燃料供給部材3は、ガス不透過性の導電性部材からなり、アノード側拡散層21を介して、アノード電極6に液体燃料を供給する。また、燃料供給部材3は、セパレータとしても兼用される。燃料供給部材3には、その表面から凹む、複数の流路溝29が並列に形成されている(図1の破線参照)。
【0052】
また、燃料供給部材3には、アノード側GDL一体型シール8と対向する内側面から掘り下がる凹部としての第1凹溝31および第2凹溝32が形成されている。
【0053】
なお、図1および図2においては、第1凹溝31および第2凹溝32の図示を省略している。
【0054】
第1凹溝31は、アノード側含浸部23と対向する位置において、アノード側含浸部23を受け入れ可能な溝幅および深さを有する矩形枠形状に形成されている。
【0055】
また、第2凹溝32は、ガスケット15と対向する位置において、ガスケット15を受け入れ可能な溝幅および深さを有する矩形枠形状に形成されている。
【0056】
なお、第1凹溝31および第2凹溝32は、別々に形成されていてもよいし、アノード側含浸部23およびガスケット15の両方を受け入れ可能な溝幅および深さを有する1つの凹溝として形成されていてもよい。
【0057】
また、図1に示すように、燃料供給部材3には、単位セル16が複数積層された燃料電池スタックを形成する状態で、燃料電池1をその積層方向に貫通する6つの開口部30が形成されている。6つの開口部30は、後述する燃料供給路10への燃料の供給または排出、後述する空気供給路13への空気の供給または排出、および図示しない水供給路への冷却水の供給または排出のためにそれぞれ使用される。
【0058】
図2および図3に示すように、カソード側GDL一体型シール9は、ガス拡散層としてのカソード側拡散層25、シール部としてのカソード側シール部26、および、含浸部としてのカソード側含浸部27を一体的に備えている。
【0059】
カソード側拡散層25は、例えば、アノード側拡散層21として例示した、硬質のガス透過性材料から、略矩形平板形状に形成されている。なお、アノード側拡散層21と同様に、カソード側拡散層25も、集電体としても作用する。
【0060】
カソード側拡散層25の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、150〜350μmである。
【0061】
カソード側シール部26は、カソード側拡散層25の積層方向と直交する方向の周端部に接合される矩形枠形状の第3シール部26a(図1参照)と、第3シール部26aを挟んで互いに対向するように設けられ、後述する空気供給部材4に形成された6つの開口部30をそれぞれ取り囲む格子形状の第4シール部26b(図1参照)とを一体的に備えている。
【0062】
カソード側シール部26は、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されている。
【0063】
カソード側シール部26の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜400μmである。
【0064】
カソード側含浸部27は、カソード側拡散層25とカソード側シール部26の第3シール部26aとの接合部分に設けられ、矩形枠形状に形成されている。また、カソード側含浸部27は、単位セル16に組み付けられた状態で、アノード側含浸部23に対して膜・電極接合体2を挟んで対向している。
【0065】
カソード側含浸部27は、カソード側拡散層25にカソード側シール部26のゴム成分を含浸させ、その後、圧縮成形することにより形成されている。これにより、カソード側含浸部27は、カソード側拡散層25よりも積層方向に厚くなるように、空気供給部材4に向けて膨出している。
【0066】
カソード側含浸部27の厚みは、例えば、カソード側拡散層25の1.5倍から2.0倍の厚みであり、100〜1000μm、好ましくは、250〜750μmである。
【0067】
また、カソード側含浸部27の幅(カソード側拡散層25とカソード側シール部26との対向方向の幅)は、例えば、1000〜10000μm、好ましくは、2000〜5000μmである。
【0068】
空気供給部材4は、ガス不透過性の導電性部材からなり、カソード側拡散層25を介して、カソード電極7に空気を供給する。また、空気供給部材4は、セパレータとしても兼用される。空気供給部材4には、その表面から凹む、複数の流路溝29が並列に形成されている(図1参照)。
【0069】
また、図3に示されるように、空気供給部材4には、カソード側GDL一体型シール9と対向する内側面から掘り下がる凹部としての第3凹溝33および第4凹溝34が形成されている。
【0070】
なお、図1および図2においては、第3凹溝33および第4凹溝34の図示を省略している。
【0071】
第3凹溝33は、カソード側含浸部27と対向する位置において、カソード側含浸部27を受け入れ可能な溝幅および深さを有する矩形枠形状に形成されている。
【0072】
また、第4凹溝34は、ガスケット15と対向する位置において、ガスケット15を受け入れ可能な溝幅および深さを有する矩形枠形状に形成されている。
【0073】
なお、第3凹溝33および第4凹溝34は、別々に形成されていてもよいし、カソード側含浸部27およびガスケット15の両方を受け入れ可能な溝幅および深さを有する1つの凹溝として形成されていてもよい。
【0074】
また、図1に示すように、空気供給部材4には、単位セル16が複数積層された燃料電池スタックを形成する状態で、燃料電池1をその積層方向に貫通する6つの開口部30が形成されている。6つの開口部30は、後述する燃料供給路10への燃料の供給または排出、後述する空気供給路13への空気の供給または排出、および図示しない水供給路への冷却水の供給または排出のためにそれぞれ使用される。
(1−2)燃料電池の製造方法
次に、本実施形態の燃料電池の製造方法について説明する。
【0075】
まず、電解質層5と、電解質層5を挟むように積層されるアノード電極6およびカソード電極7とを備える膜・電極接合体2を用意する。
【0076】
次いで、膜・電極接合体2に接触するように、アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9を積層する。
【0077】
アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9を膜・電極接合体2に積層するには、膜・電極接合体2の両側に、アノード側GDL一体型シール8がアノード電極6の表面を被覆し、カソード側GDL一体型シール9がカソード電極7の表面を被覆するように、アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9を配置する。
【0078】
その後、膜・電極接合体2、アノード側GDL一体型シール8におけるアノード側シール部22、および、カソード側GDL一体型シール9におけるカソード側シール部26の各周縁部に接触するように、ガスケット15を配置する。
【0079】
次いで、アノード側GDL一体型シール8に燃料供給部材3を組み付けるとともに、カソード側GDL一体型シール9に空気供給部材4を組み付ける。
【0080】
燃料供給部材3の組み付けでは、第1凹溝31がアノード側含浸部23に対向し、第2凹溝32がガスケット15に対向するように、燃料供給部材3を配置する。
【0081】
一方、空気供給部材4の組み付けでは、第3凹溝33がカソード側含浸部27に対向し、第4凹溝34がガスケット15に対向するように、空気供給部材4を配置する。
【0082】
そして、燃料供給部材3および空気供給部材4によって、膜・電極接合体2、アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9を挟み込む。
【0083】
これにより、第1凹溝31内にアノード側含浸部23が受け入れられるとともに、第2凹溝32内にガスケット15が受け入れられる。また、燃料供給部材3における第1凹溝31よりも内側部分において、アノード側拡散層21と対向する部分は、アノード側拡散層21に接触する。
【0084】
上記したように、燃料供給部材3の内側面には、その表面から凹む複数の流路溝29が形成されているので、燃料供給部材3とアノード側拡散層21との接触により、流路溝29とアノード側拡散層21の表面との間に、アノード電極6全体に燃料成分を接触させるための燃料供給路10が形成される。
【0085】
また、第3凹溝33内にカソード側含浸部27が受け入れられるとともに、第4凹溝34内にガスケット15が受け入れられる。また、空気供給部材4における第3凹溝33よりも内側部分において、カソード側拡散層25と対向する部分は、カソード側拡散層25に接触する。
【0086】
上記したように、空気供給部材4の内側面には、その表面から凹む複数の流路溝29が形成されているので、空気供給部材4とカソード側拡散層25との接触により、流路溝29とカソード側拡散層25の表面との間に、カソード電極7全体に空気を接触させるための空気供給路13が形成される。
【0087】
これにより、膜・電極接合体2、アノード側GDL一体型シール8およびカソード側GDL一体型シール9が、燃料供給部材3および空気供給部材4に挟み込まれ、単位セル16の製造が完了する。
【0088】
次いで、単位セル16を複数スタックすることにより、図1に示す燃料電池1を製造することができる。単位セル16をスタックする方法は、特に制限されず、公知の手法に準拠する。
【0089】
なお、このような単位セル16において、複数の単位セル16をそれぞれ区分する1つのセパレータ20が、上記した燃料供給部材3および空気供給部材4を兼ね備えてもよい。この場合には、セパレータ20は、その一方側面において、燃料供給部材3として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材4として作用する。
2.作用効果
この燃料電池1では、燃料供給部材3におけるアノード側含浸部23と対向する位置に、アノード側含浸部23を受け入れる第1凹部31が形成されている。また、アノード側含浸部は、アノード側拡散層21とアノード側シール部22との接合部分において、含浸により設けられているので、硬質である。そのため、硬質のアノード側含浸部23が第1凹部31に受け入れられることにより、アノード側GDL一体型シール8を高精度に位置決めすることができる。
【0090】
また、燃料電池1では、空気供給部材4におけるカソード側含浸部27と対向する位置に、カソード側含浸部27を受け入れる第3凹部33が形成されている。また、カソード側含浸部27は、カソード側拡散層25とカソード側シール部26との接合部分において、含浸により設けられているので、硬質である。そのため、硬質のカソード側含浸部27が第3凹部33に受け入れられることにより、カソード側GDL一体型シール9を高精度に位置決めすることができる。
【0091】
さらに、アノード側含浸部23が第1凹部31に受け入れられるとともに、カソード側含浸部27が第3凹部33に受け入れられるので、燃料供給部材3および空気供給部材4の組み付け時に、アノード側拡散層21およびカソード側拡散層25に対して、燃料供給部材3および空気供給部材4から適切な荷重を加えることができる。これにより、アノード側含浸部23とカソード側含浸部27とが積層方向に対向していても、発電効率が低下することを確実に防止できる。
【0092】
また、アノード側含浸部23とカソード側含浸部27とが積層方向に対向しているので、膜・電極接合体2とアノード側拡散層21およびカソード側拡散層25との接触面積を増加させることができる。そのため、膜・電極接合体2において、発電に寄与する領域の面積が増加し、発電効率の向上を図ることができる。
【0093】
また、上記した実施形態では、燃料成分として、ヒドラジンなどの液体燃料を例示したが、本発明は、水素などのガス燃料を使用する燃料電池に適用することもできる。
【符号の説明】
【0094】
1 燃料電池
2 膜・電極接合体
3 燃料供給部材
4 空気供給部材
5 電解質層
6 アノード電極
7 カソード電極
8 アノード側GDL一体型シール
9 カソード側GDL一体型シール
16 単位セル
21 アノード側拡散層
22 アノード側シール部
23 アノード側含浸部
25 カソード側拡散層
26 カソード側シール部
27 カソード側含浸部
31 第1凹部
33 第3凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜からなる電解質層、前記電解質層を挟むように積層される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体と、
前記膜・電極接合体の両側に積層される1対のガス拡散層一体型シールと、
1対の前記ガス拡散層一体型シールにそれぞれ組み付けられるセパレータと、
を備える単位セルが複数スタックされた燃料電池であって、
各前記ガス拡散層一体型シールは、
ガス拡散層と、
前記ガス拡散層の前記積層方向と直交する方向の端部に接合されるシール部と、
前記ガス拡散層と前記シール部との接合部分に設けられ、前記ガス拡散層よりも前記積層方向に厚くなるように、前記セパレータに向けて膨出する含浸部とを備え、
一方側の前記ガス拡散層一体型シールの前記含浸部と、他方側の前記ガス拡散層一体型シールの前記含浸部とは、前記積層方向に対向し、
各前記セパレータには、前記含浸部と対向する位置に、前記含浸部を受け入れる凹部が形成されていることを特徴とする、燃料電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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