説明

燃料電池

【課題】リサイクル性の向上を図ることができる、燃料電池を提供する。
【解決手段】アノード側GDL一体型ガスケット4において、アノード側ガスケット部22がアノード側拡散層21を面方向から取り囲むように形成されている。アノード側ガスケット部22は、アノード側拡散層21を面方向から取り囲む接合部23を備えている。そして、カソード側ガスケット部26(シール部27)に接合部23が接合されることにより、膜・電極接合体3が、接合部23により封止された封止空間31内に配置される。したがって、燃料電池1の分解時に、膜・電極接合体3に含まれる触媒および電解質などが漏出して、アノード側GDL一体型ガスケット4、カソード側GDL一体型ガスケット6、および膜・電極接合体3以外の部材に、触媒および電解質が付着することを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、詳しくは、固体高分子形の燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形の燃料電池としては、燃料として水素などのガスを使用する燃料電池や、燃料としてメタノール、ジメチルエーテルまたはヒドラジンなどの液体を使用する燃料電池が知られている。
【0003】
固体高分子形の燃料電池は、一般的には、高分子電解質膜からなる電解質層、その電解質層を挟んで対向配置される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体(MEA)と、燃料側電極および酸素側電極の外側にそれぞれ配置されるガス拡散層(GDL)と、燃料側電極にガス拡散層を挟んで対向配置される燃料側セパレータと、酸素側電極にガス拡散層を挟んで対向配置される酸素側セパレータとを備える単位セルを有している。燃料電池では、このような単位セルが複数スタックされている。
【0004】
このような燃料電池において、ガス拡散層の周縁部にガスケットを一体化させたガス拡散層一体型のガスケットを用いることが知られている。
【0005】
ガス拡散層一体型のガスケットが用いられた燃料電池では、たとえば、一方のガスケットにおける他方のガスケットと対向する面に、その対向方向に突出する凸部が形成されるとともに、他方のガスケットにおける一方のガスケットと対向する面に、凸部に対応する凹部が形成される。そして、凸部を凹部に係合させることにより、互いに対向するガス拡散層一体型のガスケットの位置決めを達成している(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3952139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、環境保護の観点から、リサイクル性の高い燃料電池が求められている。たとえば、使用後の燃料電池を分解した後、セパレータなどの部材をリサイクルすることにより、廃棄物の排出量を低減することができ、かつ、リサイクルされる部材に応じて燃料電池の製造コストを低減することができる。
【0008】
しかしながら、上記した構成では、互いに対向するガス拡散層一体型のガスケット同士が、凸部および凹部の係合により位置決めされている。そのため、燃料電池を分解する際、セパレータを取り外してガス拡散層一体型のガスケットが露出すると、凸部および凹部の係合が解除されて、ガス拡散層一体型のガスケット間に配置されている膜・電極接合体が露出するおそれがある。
【0009】
膜・電極接合体には、発電のための触媒および電解質などが含まれているので、膜・電極接合体が露出すると、それらの触媒および電解質が漏出し、作業環境に影響を及ぼすことがある。さらに、それらの触媒および電解質がリサイクルすべき部材(セパレータ)などに付着した場合には、そのリサイクルすべき部材が変質するおそれがあり、リサイクル性の低下を招くおそれもある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、リサイクル性の向上を図ることができる、燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、高分子電解質膜からなる電解質層、前記電解質層を挟むように積層される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体と、前記膜・電極接合体の両側に積層される1対のガス拡散層一体型ガスケットと、1対の前記ガス拡散層一体型ガスケットにそれぞれ組み付けられるセパレータとを備える単位セルが複数スタックされた燃料電池であって、前記ガス拡散層一体型ガスケットは、ガス拡散層と、前記ガス拡散層を前記積層方向と直交する方向から取り囲み、前記ガス拡散層に接合されるガスケット部とを備え、前記単位セルにおいて、一方の前記ガス拡散層一体型ガスケットの前記ガスケット部には、前記ガス拡散層を前記積層方向と直交する方向から取り囲み、他方の前記ガス拡散層一体型ガスケットの前記ガスケット部に接合される接合部が備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池では、ガス拡散層一体型ガスケットにおいて、ガスケット部がガス拡散層を積層方向と直交する方向から取り囲むように形成されている。また、単位セルにおいて、一方のガス拡散層一体型ガスケットのガスケット部には、ガス拡散層を積層方向と直交する方向から取り囲む接合部が備えられている。そして、他方のガス拡散層一体型ガスケットのガスケット部に接合部が接合されることにより、接合部の内側(積層方向と直交する方向の内側)が封止される。
【0013】
互いに対向するガス拡散層一体型ガスケットの間には、膜・電極接合体が挟み込まれる。そのため、膜・電極接合体を、接合部により封止された領域内に配置することができる。したがって、燃料電池の分解時に、膜・電極接合体に含まれる触媒および電解質などが漏出して、ガス拡散層一体型ガスケットおよび膜・電極接合体以外の部材に、触媒および電解質が付着することを確実に防止できる。
【0014】
その結果、燃料電池のリサイクル性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示す燃料電池の単位セルの構成を示す側断面図である。
【図3】図3は、図2に示す燃料電池の製造方法を示す工程図であって、(a)は、膜・電極接合体を用意する工程、(b)は、膜・電極接合体にカソード側GDL一体型ガスケットを積層する工程、(c)は、シール部に接着剤を塗布する工程、(d)は、膜・電極接合体にアノード側GDL一体型ガスケットを積層する工程、を示す。
【図4】図4は、図2に示す燃料電池の分解方法を示す工程図であって、(a)は、単位セルから燃料供給部材および空気供給部材を取り外す工程、(b)は、膜・電極接合体からアノード側GDL一体型ガスケットおよびカソード側GDL一体型ガスケットを取り外す工程、(c)は、膜・電極接合体を、電解質層、燃料側電極および酸素側電極に分解する工程を示す。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池の単位セルの構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.燃料電池
(1−1)燃料電池の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図、図2は、図1に示す燃料電池の単位セルの構成を示す側断面図、図3は、図2に示す燃料電池の製造方法を示す工程図、図4は、図2に示す燃料電池の分解方法を示す工程図である。
【0017】
図1ないし図4において、燃料電池1は、例えば、液体の燃料成分が直接供給される固体高分子形の燃料電池である。燃料電池1には、発電のために燃料成分が供給されるとともに、空気(酸素)が供給される。また、燃料電池1には、燃料成分および空気を冷却するための冷却水が供給される。
【0018】
燃料電池1に供給される燃料成分としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン(水加ヒドラジン、無水ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0019】
燃料電池1は、単位セル2が複数積層された燃料電池スタックとして形成されている。
【0020】
単位セル2は、膜・電極接合体3、膜・電極接合体3の一方側(アノード側)に積層されるガス拡散層一体型ガスケットとしてのアノード側GDL一体型ガスケット4、アノード側GDL一体型ガスケット4における膜・電極接合体3の他方側に積層される燃料供給部材5、膜・電極接合体3の他方側(カソード側)に積層されるガス拡散層一体型ガスケットとしてのカソード側GDL一体型ガスケット6、カソード側GDL一体型ガスケット6における膜・電極接合体3の他方側に積層される空気供給部材7、および、燃料供給部材5と空気供給部材7との間において、膜・電極接合体3、アノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6の周囲に設けられる端部シール15を備えている。
【0021】
また、図1では、複数の単位セル2のうち1つだけを取り出して分解して表し、その他の単位セル2については積層状態を示している。
【0022】
膜・電極接合体3は、図2に示すように、電解質層8、電解質層8の厚み方向一方側の表面(以下、単に一方面と記載する。)に積層される燃料側電極としてのアノード電極9、および、電解質層8の厚み方向他方側の表面(以下、単に他方面と記載する。)に積層される酸素側電極としてのカソード電極10を備えている。
【0023】
電解質層8は、アニオン交換型またはカチオン交換型などの高分子電解質膜から形成されている。
【0024】
また、電解質層8の膜厚は、例えば、10〜100μmである。
【0025】
アノード電極9は、例えば、触媒を担持した触媒担体により形成されている。また、触媒担体を用いずに、触媒を、直接、アノード電極9として形成することもできる。
【0026】
アノード電極9の厚みは、例えば、10〜200μm、好ましくは、20〜100μmである。
【0027】
カソード電極10は、例えば、アノード電極9と同様に、触媒を担持した触媒担体により形成されている。
【0028】
カソード電極10の厚みは、例えば、10〜300μm、好ましくは、20〜150μmである。
【0029】
アノード側GDL一体型ガスケット4は、図3および図4に示すように、ガス拡散層としてのアノード側拡散層21、およびガスケット部としてのアノード側ガスケット部22を一体的に備えている。
【0030】
アノード側拡散層21は、例えば、カーボンペーパーあるいはカーボンクロスなどが、必要によりフッ素処理されている硬質のガス透過性材料から、略矩形平板形状に形成されている。なお、アノード側拡散層21は、集電体としても作用する。
【0031】
アノード側拡散層21の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜300μmである。
【0032】
アノード側ガスケット部22は、アノード側拡散層21の積層方向と直交する方向(以下、「面方向」という。)の周端部に接合され、アノード側拡散層21を取り囲む矩形枠形状に形成されている。
【0033】
アノード側ガスケット部22は、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されている。そして、アノード側ガスケット部22は、アノード側拡散層21にそのゴム成分を含浸させ、その後、圧縮成形することにより、アノード側拡散層21に一体化されている。
【0034】
アノード側ガスケット部22の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜400μmである。
【0035】
アノード側ガスケット部22は、アノード側拡散層21を面方向の外周縁から取り囲む矩形枠形状の接合部23を備えている。
【0036】
接合部23は、アノード側ガスケット部22の接合面(膜・電極接合体3側の面)22aにおいて、その面方向の外周端部に設けられ、接合面22aからカソード側GDL一体型ガスケット6に向けて突出する突条として形成されている。
【0037】
接合部23の突出量は、膜・電極接合体3の厚さとほぼ同じであり、たとえば、200〜800μm、好ましくは、400〜600μmである。
【0038】
また、接合部23の厚さ(面方向の幅)は、たとえば、1000〜3000μm、好ましくは、1500〜2000μmである。
【0039】
燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、アノード側拡散層21を介して、アノード電極9に液体燃料を供給する。また、燃料供給部材5は、セパレータとしても兼用される。燃料供給部材5には、その表面から凹む、複数の流路溝(図示せず)が並列に形成されている。
【0040】
また、図1〜図4では省略しているが、燃料供給部材5には、単位セル2が複数積層された燃料電池スタックを形成する状態で、燃料電池1をその積層方向に貫通する複数の開口部が形成されている。複数の開口部は、燃料電池1で使用される燃料、空気および冷却水の供給口または排出口とされる。
【0041】
カソード側GDL一体型ガスケット6は、図3および図4に示すように、ガス拡散層としてのカソード側拡散層25、およびガスケット部としてのカソード側ガスケット部26を一体的に備えている。
【0042】
カソード側拡散層25は、例えば、アノード側拡散層21として例示した、硬質のガス透過性材料から、略矩形平板形状に形成されている。なお、アノード側拡散層21と同様に、カソード側拡散層25も、集電体としても作用する。
【0043】
カソード側拡散層25の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、150〜350μmである。
【0044】
カソード側ガスケット部26は、カソード側拡散層25の面方向の周端部に接合され、カソード側拡散層25を取り囲む矩形枠形状に形成されている。
【0045】
カソード側ガスケット部26は、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料から形成されている。そして、カソード側ガスケット部26は、カソード側拡散層25にそのゴム成分を含浸させ、その後、圧縮成形することにより、カソード側拡散層25に一体化されている。
【0046】
カソード側ガスケット部26の厚みは、例えば、50〜500μm、好ましくは、100〜400μmである。
【0047】
カソード側ガスケット部26は、カソード側拡散層25を面方向の外周縁から取り囲む矩形枠形状のシール部27を備えている。
【0048】
シール部27は、カソード側ガスケット部26のシール面(膜・電極接合体3側の面)26aにおいて、カソード側ガスケット部26の面方向の外周縁よりも内側部分から、アノード側GDL一体型ガスケット4に向けて突出する突条として形成されている。
【0049】
より具体的には、シール部27は、単位セル2の状態で積層方向に投影したときに、その外周縁がアノード側ガスケット部22の接合部23の内周縁よりも内側に配置されるように形成されている。
【0050】
シール部27の突出量は、膜・電極接合体3の厚さとほぼ同じである。これにより、シール部27の途中部が膜・電極接合体3に対して面方向の外側から対向するとともに、シール部27の先端部がアノード側GDL一体型ガスケット4(アノード側ガスケット部22の)に接触する。その結果、シール部27により、燃料電池1のシール性を確保することができる。
【0051】
また、シール部27の厚さ(面方向の幅)は、たとえば、1000〜3000μm、好ましくは、1500〜2000μmである。
【0052】
また、シール部27の外周面と接合部23の内周面との間には、接着剤30が介在されている。接着剤30としては、たとえば、エポキシ樹脂系接着剤などを使用することができる。
【0053】
シール部27と接合部23とは、接着剤30を介して接着(接合)されている。これにより、アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6との間には、アノード側拡散層21と、カソード側拡散層25と、シール部27および接合部23の接合部分とに取り囲まれた封止空間31が形成されている。
【0054】
空気供給部材7は、ガス不透過性の導電性部材からなり、カソード側拡散層25を介して、カソード電極10に空気を供給する。また、空気供給部材7は、セパレータとしても兼用される。空気供給部材7には、その表面から凹む、複数の流路溝(図示せず)が並列に形成されている。
【0055】
また、図1〜図4では省略しているが、空気供給部材7には、単位セル2が複数積層された燃料電池スタックを形成する状態で、燃料電池1をその積層方向に貫通する複数の開口部が形成されている。複数の開口部は、燃料電池1で使用される燃料、空気および冷却水の供給口または排出口とされる。
(1−2)燃料電池の製造方法
次に、本実施形態の燃料電池の製造方法について説明する。
【0056】
まず、この方法では、図3(a)に示すように、電解質層8と、電解質層8を挟むように積層されるアノード電極9およびカソード電極10とを備える膜・電極接合体3を用意する。
【0057】
次いで、この方法では、図3(b)に示すように、膜・電極接合体3に接触するように、カソード側GDL一体型ガスケット6を積層する。
【0058】
カソード側GDL一体型ガスケット6を膜・電極接合体3に積層するには、膜・電極接合体の一方側に、カソード側GDL一体型ガスケット6がカソード電極10の表面を被覆するように、カソード側GDL一体型ガスケット6を配置する。
【0059】
その後、この方法では、図3(c)に示すように、カソード側ガスケット部26のシール部27の外周面に接着剤30を塗布する。なお、接着剤30の塗布量は、次に述べるアノード側GDL一体型ガスケット4を積層したときに、接着剤30がシール部27の内周面側に回り込まないように適宜設定される。
【0060】
次いで、この方法では、図3(d)に示すように、膜・電極接合体3に接触するように、アノード側GDL一体型ガスケット4を積層する。
【0061】
アノード側GDL一体型ガスケット4の接合部23の内周面が、カソード側GDL一体型ガスケット6のシール部27の外周面よりも面方向の外側に配置されているので、アノード側GDL一体型ガスケット4を積層したときに、接合部23は、シール部27に対して面方向の外側から対向する。
【0062】
そして、シール部27の外周面に塗布された接着剤30により、シール部27の外周面と接合部23の内周面とが接合(接着)される。これにより、アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6との間に、封止空間31が形成される。
【0063】
アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6との間には、膜・電極接合体3が配置されているので、膜・電極接合体3は、封止空間31内に封止される。
【0064】
その後、この方法では、アノード側GDL一体型ガスケット4に燃料供給部材5を組み付けるとともに、カソード側GDL一体型ガスケット6に空気供給部材7を組み付ける。このとき、燃料供給部材5と空気供給部材7との間において、膜・電極接合体3の面方向の外側に端部シール15を配置して、燃料供給部材5と空気供給部材7とにより、端部シール15を挟み込む。
【0065】
これにより、図2に示すように、膜・電極接合体3、アノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6が、燃料供給部材5および空気供給部材7に挟み込まれ、単位セル2の製造が完了する。
【0066】
次いで、単位セル2を複数スタックすることにより、図1に示す燃料電池1を製造することができる。単位セル2をスタックする方法は、特に制限されず、公知の手法に準拠する。
【0067】
なお、このような単位セル2において、複数の単位セル2をそれぞれ区分する1つのセパレータ20が、上記した燃料供給部材5および空気供給部材7を兼ね備えてもよい。この場合には、セパレータ20は、その一方側面において、燃料供給部材5として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材7として作用する。
(1−3)燃料電池の分解方法
次に、本実施形態の燃料電池の分解方法について説明する。
【0068】
まず、この方法では、使用済みの燃料電池1を用意し、それを個々の単位セル2に分解する。具体的には、燃料電池1のスタックを形成している固定具(図示せず)を取り外し、その後、スタック状態が解除された単位セル2を1つずつ取り出す。これにより、図2に示すように、1つの単位セル2が得られる。
【0069】
次いで、この方法では、図4(a)に示すように、単位セル2から燃料供給部材5および空気供給部材7を取り外す。
【0070】
燃料供給部材5および空気供給部材7の取り外しでは、例えば、燃料供給部材5および空気供給部材7が固定具で固定されている場合には、それらの固定具を取り外してから、燃料供給部材5および空気供給部材7を取り外す。そして、燃料供給部材5と空気供給部材7との間に配置されている端部シール15を取り外す。
【0071】
このとき、アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6とは、シール部27と接合部23との間に介在される接着剤30により接合されている。そのため、アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6の間の封止空間31に封止されている膜・電極接合体3が不用意に露出することがない。
【0072】
よって、膜・電極接合体3に含まれる触媒および電解質などが、燃料供給部材5および空気供給部材7などに付着することがない。
【0073】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、燃料供給部材5および空気供給部材7が取り外された単位セル2において、膜・電極接合体3からアノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6を取り外す。
【0074】
膜・電極接合体3からアノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6を取り外すには、例えば、シール部27と接合部23との間に介在された接着剤30(図4(a)参照)を薬剤(例えば、有機溶剤)により溶融させる。これにより、シール部27と接合部23との接合が解除され、アノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6を取り外すことができる。
【0075】
次いで、この方法では、膜・電極接合体3を、剥離液に浸漬させる。剥離液は、アルコール系の有機溶剤であり、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、イソプロピルアルコールが挙げられる。
【0076】
その後、図4(c)に示すように、膜・電極接合体3において、電解質層8から、アノード電極9およびカソード電極10を剥離し、電解質層8、アノード電極9およびカソード電極10に分解する。
【0077】
これにより、燃料電池1の分解が完了する。
2.作用効果
この燃料電池1では、アノード側GDL一体型ガスケット4において、アノード側ガスケット部22がアノード側拡散層21を面方向から取り囲むように形成されている。また、カソード側GDL一体型ガスケット6において、カソード側ガスケット部26がカソード側拡散層25を面方向から取り囲むように形成されている。
【0078】
アノード側ガスケット部22は、アノード側拡散層21を面方向から取り囲む接合部23を備えている。そして、カソード側ガスケット部26(シール部27)に接合部23が接合されることにより、接合部23の内側の領域(封止空間31)が封止される。
【0079】
アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6との間には、膜・電極接合体3が挟み込まれる。そのため、膜・電極接合体3を、接合部23により封止された封止空間31内に配置することができる。したがって、燃料電池1の分解時に、膜・電極接合体3に含まれる触媒および電解質などが漏出して、アノード側GDL一体型ガスケット4、カソード側GDL一体型ガスケット6、および膜・電極接合体3以外の部材に、触媒および電解質が付着することを確実に防止できる。
【0080】
その結果、燃料電池1のリサイクル性の向上を図ることができ、部品コストを低減することができる。
【0081】
また、シール部27の先端部がアノード側GDL一体型ガスケット4に接触しているので、シール部27により、燃料電池1のシール性を確保することができる。
【0082】
さらに、シール部27よりも面方向の外側において、接合部23がカソード側GDL一体型ガスケット6に接合されているので、燃料電池1のシール性を確保しつつ、膜・電極接合体3を封止空間31に確実に封止することができる。
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0083】
図5は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池の単位セルの構成を示す側断面図である。
【0084】
なお、図5では、図2に示す各部に相当する部分に同一の参照符号を付している。そして、以下では、同一の参照符号を付した部分についての説明を省略する。
【0085】
図2に示す単位セル2では、アノード側GDL一体型ガスケット4の接合部23とカソード側GDL一体型ガスケット6のシール部27との間に接着剤30が介在されており、接着剤30により、接合部23とシール部27とが接合(接着)されている。
【0086】
これに対して、図5に示す単位セル51では、接合部23の先端部(カソード側GDL一体型ガスケット6側の端部)とカソード側ガスケット部26との間に、接着剤52が介在されている。接着剤52は、図2に示す接着剤30と同一のものを使用することができる。
【0087】
そして、接着剤52により、接合部23の先端部とカソード側ガスケット部26とが接合(接着)されている。これにより、単位セル51では、アノード側GDL一体型ガスケット4とカソード側GDL一体型ガスケット6との間に、アノード側拡散層21と、カソード側拡散層25と、接合部23とに取り囲まれた封止空間31が形成されている。
【0088】
また、図5に示す単位セル51では、アノード側GDL一体型ガスケット4の接合部23とカソード側GDL一体型ガスケット6のシール部27とが、面方向に互いに間隔を隔てて対向している。これにより、接合部23とシール部27との間には、空隙部52が形成されている。
【0089】
一方、シール部27は、その面方向内側に配置される膜・電極接合体3に対して間隔を隔てて配置されている。
【0090】
そのため、シール部27を面方向に弾性変形させることができるので、シール部27によるシール性をより向上させることができる。
【0091】
このような構成の単位セル52を有する燃料電池においても、図1〜図4に示す燃料電池1と同様の効果を奏することができる。
【0092】
また、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0093】
例えば、上記の実施形態では、アノード側ガスケット部22に接合部23が備えられ、カソード側ガスケット部26にシール部27が備えられる構成を例示したが、アノード側ガスケット部22にシール部27が備えられ、カソード側ガスケット部26に接合部23が備えられる構成が採用されてもよい。
【0094】
このような構成が採用された燃料電池においても、図1〜図4に示す燃料電池1と同様の効果を奏することができる。
【0095】
また、図3に示す燃料電池1の製造方法において、シール部27の外周面に接着剤30を塗布した後に、アノード側GDL一体型ガスケット4を積層して、シール部27と接合部23とを接合する方法を例示した。
【0096】
これに対して、アノード側GDL一体型ガスケット4の接合部23の内周面に接着剤30を予め塗布しておいてもよい。また、アノード側GDL一体型ガスケット4およびカソード側GDL一体型ガスケット6を逆の順番で積層してもよい。
【0097】
このような製造方法においても、図1に示す燃料電池1を製造することができる。
【0098】
また、接合体23は、面方向においてカソード側拡散層25の外側であれば、シール部27に限らず、カソード側ガスケット部26のどの位置に接合されてもよい。
【0099】
また、上記した実施形態では、燃料成分として、ヒドラジンなどの液体燃料を例示したが、本発明は、水素などのガス燃料を使用する燃料電池に適用することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1 燃料電池
2 単位セル
3 膜・電極接合体
4 アノード側GDL一体型ガスケット
5 燃料供給部材
6 カソード側GDL一体型ガスケット
7 空気供給部材
8 電解質層
9 アノード電極
10 カソード電極
21 アノード側拡散層
22 アノード側ガスケット部
23 接合部
25 カソード側拡散層
26 カソード側ガスケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜からなる電解質層、前記電解質層を挟むように積層される燃料側電極および酸素側電極を備える膜・電極接合体と、
前記膜・電極接合体の両側に積層される1対のガス拡散層一体型ガスケットと、
1対の前記ガス拡散層一体型ガスケットにそれぞれ組み付けられるセパレータと、
を備える単位セルが複数スタックされた燃料電池であって、
前記ガス拡散層一体型ガスケットは、
ガス拡散層と、
前記ガス拡散層を前記積層方向と直交する方向から取り囲み、前記ガス拡散層に接合されるガスケット部とを備え、
前記単位セルにおいて、一方の前記ガス拡散層一体型ガスケットの前記ガスケット部には、前記ガス拡散層を前記積層方向と直交する方向から取り囲み、他方の前記ガス拡散層一体型ガスケットの前記ガスケット部に接合される接合部が備えられていることを特徴とする、燃料電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30332(P2013−30332A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165045(P2011−165045)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】