説明

燃料電池

【課題】燃料電池セルの積層体を積層方向に強く締め付け得る締め部材を提供し、そうして燃料電池のシール性能の向上を図る。
【解決手段】燃料電池1は燃料電池セル3の積層体8と、これを積層方向に締付ける締め部材9とを備えている。前記締め部材9は、積層体8の周縁部上面に対向する第1対向部91aと、周縁部下面に対向する第2対向部92aと、両対向部を連結し積層体8の側面と平行な方向の横幅がWで厚さがTである連結部93aと、両対向部91a,92aの少なくとも一方に形成される雌貫通ネジ孔95aと、雌貫通ネジ孔95aへの締込みによって積層体8を締付け得るネジ部材90bとを備え、さらに連結部93aは、積層体8の積層方向に直交する方向における断面積A1がネジ部材90bの山径Dを基準にした断面積A2より大きく、厚さTが、A2/Dより大きく且つ横幅Wより小さく設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の燃料電池セルを複数枚積層して構成される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図24に示したように、平板状の燃料電池セル100を複数枚積層してなる積層体101と、該積層体101の周縁部近傍に設けられて該積層体101を積層方向に締め付ける締め部材102と、を備えた燃料電池103が、例えば特許文献1に記載されている。この燃料電池103の締め部材102は、ボルト102aとナット102bの組み合わせであって、前記積層体101の周縁部近傍に設けられた貫通孔104にボルト102aを通してナット102bで締め付け、そうして図24に示したようにボルト102aに引張荷重F1を作用させると共にその反力F2で積層体101を押さえ込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−117208号公報(段落0033 図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池103において燃料電池セル100のシール性能は重要であり、そのシール性能を高めるためには締め部材102のボルト102aに掛かる引張荷重F1を大きくして積層体101をしっかり押さえ込む必要がある。
一方、ボルト102aに掛かる引張荷重F1を大きくすると、山谷形状のボルト102aを発電時の高温環境下で強く引っ張り続けることになるため、クリープ変形やクリープ破断の問題が生じ得る。
したがって、締め部材102の締め付け力をあまり大きくすることができないため、燃料電池セル100のシール性能も頭打ちの状況になっていた。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、燃料電池セルの積層体を積層方向に強く締め付け得る締め部材を提供し、そうして燃料電池のシール性能の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、前記積層体の周縁部近傍に設けられて該積層体を積層方向に締め付ける締め部材と、を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、前記積層体の積層方向の周縁部上面に対向する第1対向部と、前記積層体の積層方向の周縁部下面に対向する第2対向部と、前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向すると共に該積層体の側面と平行な方向の横幅が(W)であり、それと直交する方向の厚さが(T)である連結部と、中心軸が前記積層体の上面又は下面に対して略垂直になるように前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成される雌貫通ネジ孔と、前記雌貫通ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の上面又は下面に先端が当接し、前記雌貫通ネジ孔への締め込みによって前記積層体を積層方向に締め付け得るネジ部材と、を備え、
さらに、前記連結部は、前記積層体の積層方向に直交する方向における断面積(A1)が、前記ネジ部材の山径(D)を基準にした断面積(A2)より大きく設定され、前記連結部の厚さ(T)が、(A2/D)より大きく且つ前記連結部の横幅(W)より小さく設定されている燃料電池を提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、前記第1対向部又は前記第2対向部と前記連結部とで構成される角部の内側が滑らかな曲面で形成されている請求項1記載の燃料電池を提供する。
【0008】
また、請求項3に記載されているように、前記積層体は、積層方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に挿入されたボルトと、を有し、前記ボルトには、前記燃料電池セルに供給される原料ガスまたは前記燃料電池セルから排出される排出ガスを流通させるガス流路が形成されている請求項1又は2に記載の燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池の締め部材は、第1対向部と第2対向部の間に積層体の周縁部近傍を嵌め入れ、第1対向部及び/又は第2対向部に取り付けたネジ部材を締め込むことで積層体を積層方向に締め付けるものであるため、ネジ部材に圧縮応力が作用する。このように山谷形状のネジ部材を圧縮場にすることで、ネジ部材のクリープひずみの軽減とクリープ破断を防止することができる。
一方、ネジ部材に圧縮力が加わる反作用として連結部に従来型のネジ部材と同様の引張り力が加わるが、連結部は積層体の外部にあって設計自由度が高いため、連結部の断面積(A1)をネジ部材の断面積(A2)より大きく設定することができ、そうすることにより従来型のネジ部材が受けていた引張り応力より連結部に加わる引張り応力を小さくすることができる。したがって、連結部のクリープひずみも小さく抑えることができ、総合的に従来型のネジ部材に比べて締め部材のクリープの影響を軽減することができる。
【0010】
また、締め部材の連結部は、厚さ(T)を厚くするほど断面積(A1)が大きくなって締め付け力を大きくすることができるが、反面、連結部が肥大化して熱容量の増大により燃料電池の起動・停止に時間が掛かったり、燃料電池の外寸法が大きくなる、等のマイナス面が顕著になる。
これに対し本発明は、連結部の厚さ(T)の上限を横幅(W)より小さくすることにより連結部の肥大化リスクが回避可能であり、一方、連結部の厚さ(T)の下限を(A2/D)より大きくすることによりネジ部材の締め付けによる第1対向部と第2対向部の開きが抑制される。
なお、連結部の厚さ(T)の下限を(A2/D)より大きくした点は、上記の記載より、
(i)A1>A2
(ii)A1=TW
(iii)W=D ※連結部の横幅Wの理論上の最小値は、ネジ部材の山径Dである。
の関係であるため、(i)と(ii)よりTW>A2であり、これに(iii)を代入するとTD>A2だからT>A2/Dとして求められる。もちろんネジ部材の強度の基準は、最小径である谷径とするのが一般的であるが、ここでは敢えて山径(D)を基準とすることによって、強度上余裕を持たせた安全な設計が行えるようにしている。
【0011】
また、請求項2に記載の燃料電池は、第1対向部又は第2対向部と連結部とで構成される角部の内側を滑らかな曲面で形成したため、発電時の熱によるネジ部材の緩みが軽減される。また、締め部材は、電気的なショートを防止するために連結部と積層体の間に隙間を設けることが好ましいが、前記角部の内側を曲面とすることでそのような隙間を確実に形成することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の燃料電池は、請求項1又は2に記載の締め部材で積層体がしっかり固定されているため、ボルトにガス流路を形成しても積層体全体の締め付け強度に影響しない。したがってガス流路を形成する設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池の斜視図である。
【図2】燃料電池の平面図である。
【図3】一部を断面にして中間を省略した燃料電池の正面図である。
【図4】燃料電池セルの斜視図である。
【図5】燃料電池セルの分解斜視図である。
【図6】分解パーツを絞った燃料電池セルの分解斜視図である。
【図7】燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図8】図7を分解して示す縦断面図である。
【図9】図7のA−A線断面図である。
【図10】図7のB−B線断面図である。
【図11】集電部材の斜視図である。
【図12】(a)はスペーサーの斜視図、(b)は集電部材のスペーサー装着前の斜視図である。
【図13】図12(b)の変形例を示す集電部材の斜視図である。
【図14】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図15】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図16】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図17】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図18】(a)は締め部材の斜視図、(b)は断面積A1、A2を示す締め部材の切断分離斜視図である。
【図19】(a)は締め部材の正面図、(b)は締め部材の平面図である。
【図20】変位量(λ)を示すコ字状主体の正面図である。
【図21】連結部の厚さ(T)と変位量(λ)の関係を示すグラフである。
【図22】曲面の半径(R)とネジ部材の緩みの関係を示すグラフである。
【図23】他の形態を示す燃料電池の斜視図である。
【図24】従来技術を示す燃料電池の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
現在、燃料電池には電解質の材質により大別して、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO系セラミックを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質中を移動できる温度)が異なるのであって、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約700℃〜1000℃である。
【0015】
図1〜図20に示した実施形態の燃料電池1は、例えばZrO系セラミックを電解質2とし、例えば水素(以下、「燃料ガス」という。)と空気を原料ガスとするSOFCである。この燃料電池1は、発電の最小単位である燃料電池セル3と、該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給用のガス流路(以下、「空気供給流路」という。)4と、その空気を外部に排出する空気排気用のガス流路(以下、「空気排気流路」という。)5と、同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給用のガス流路(以下、「燃料供給流路」という。)6と、その燃料ガスを外部に排出する燃料排気用のガス流路(以下、「燃料排気流路」という。)7と、該燃料電池セル3を複数枚積層してなる積層体8と、該積層体8を積層方向に締め付けて固定する締め部材9と、から概略構成される。
【0016】
[燃料電池セル]
燃料電池セル3は平面視正方形の平板状であり、図5に示したように、四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された上(※ここでの「上」又は「下」は図面の記載を基準とするが、これはあくまでも説明の便宜上のものであって絶対的な上下を意味しない。以下同じ。)のインターコネクタ12と、同じく四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された下のインターコネクタ13と、上下のインターコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に電解質2の上のインターコネクタ12の内面(下面)に対向する面に空気極14を形成すると共に下のインターコネクタ13の内面(上面)に対向する面に燃料極15を形成したセル本体20と、上のインターコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のインターコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のインターコネクタ12とを電気的に接続する空気極14側の集電部材18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のインターコネクタ13とを電気的に接続する燃料極15側の集電部材19と、を有する。
【0017】
[電解質]
前記電解質2は、ZrO系セラミックの他、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック、CaZrO系セラミック等で形成される。
【0018】
[燃料極]
前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO系セラミック、CeO系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、燃料極15の材質は、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0019】
[空気極]
前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。前記金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrCoO系複酸化物、La1−XSrFeO系複酸化物、La1−XSrCo1−yFeO系複酸化物、La1−XSrMnO系複酸化物、Pr1−XBaCoO系複酸化物及びSm1−XSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
【0020】
[燃料室]
前記燃料室17は、図5〜図8に示したように、集電部材19の周りを囲う状態にして下のインターコネクタ13の上面に設置された額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、額縁形態であって前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0021】
[燃料室側の集電部材]
燃料室17側の集電部材19は、例えば真空中1000℃で1時間の熱処理をして焼き鈍し(HV硬度で200以下)を行ったNiの板材で形成されており、下のインターコネクタ13に当接するコネクタ当接部19aと、セル本体20の燃料極15に当接するセル本体当接部19bと、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bとをつなぐU字状の連接部19cとが一連に形成され、該連接部19cのU字に曲がった部分の弾性によりコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bがそれぞれインターコネクタ13とセル本体20に向けて付勢され、なおかつ、温度サイクルや燃料圧・空気圧などの変動によるセル本体20の変形に柔軟に追従し得る。
【0022】
なお、燃料室17側の集電部材19は、前記のように板材で形成する場合の他、例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また、燃料室17側の集電部材19は、Niの他、Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成するようにしてもよい。
【0023】
この集電部材19は、燃料室17に数十〜百個程度(もちろん燃料室の大きさにより異なる。)設けられており、それらを個々にインターコネクタ13上に並べて溶接(例えばレーザー溶接や抵抗溶接)するようにしてもよいが、好ましくは図12(b)に示したように前記板材を燃料室17に整合する四角い平板190に加工し、この平板190にセル本体当接部19bと連接部19cに対応する切込線19dを形成し、そうして図11の拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げてセル本体当接部19bがコネクタ当接部19aの上方に間隔s(図7拡大部参照)を空けて被さるようにしてある。したがって、セル本体当接部19bを曲げ起こして残った穴あき状態の平板190がコネクタ当接部19aの集合体であり、実施形態では平板190のコネクタ当接部19aが下のインターコネクタ13にレーザー溶接や抵抗溶接により接合されている。
【0024】
なお、集電部材19の前記切込線19dは、図13に示したように、セル本体当接部19bと連接部19cを列単位で纏めた形にしてもよい。こうすることによりセル本体当接部19bと連接部19cの加工が効率よく行える。
【0025】
[スペーサー]
前記集電部材19には、図7に示したようにスペーサー58が併設されている。該スペーサー58は、セル本体20と下のインターコネクタ13の間の燃料室17内において、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bを隔てるように両者の間に配置され、少なくとも燃料電池作動温度域での該スペーサー58の熱膨張によってセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aをそれぞれの当接方向、すなわちセル本体当接部19bをセル本体20に向けて、一方、コネクタ当接部19aをインターコネクタ13に向けて押圧し得るようにするべく、燃料電池作動温度域である700℃〜1000℃において、熱膨張によって拡大する前記間隔sをさらなる熱膨張によって上回る厚みと材質で形成されている。
【0026】
なお、スペーサー58の厚みは、燃料電池作動温度域での状態でセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sを上回るものであればよいが、好ましくは燃料電池非作動時の常温状態で少なくともセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sとほぼ同じにするかまたは若干大きく設定するのがよい。そうすることにより発電開始から作動温度域に達するまでの間においても、スペーサー58によってコネクタ当接部19aとインターコネクタ13及びセル本体当接部19bとセル本体20の接触を安定的にすることができる。
【0027】
また、スペーサー58は、集電部材19より柔軟な材質、つまり集電部材19より荷重に対する反発力が弱い材質が選定されており、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変化による燃料室17の間隔の変動に対し集電部材19の動きに追従して該集電部材19の機敏な動きを妨げないようにしてある。
【0028】
また、スペーサー58は、燃料電池作動温度域で集電部材19と焼結しない性質を持った材料で形成されており、したがって、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aとが直接触れ合って焼結するおそれがないことはもちろん、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aがスペーサー58を介して焼結するおそれもない。
【0029】
以上の条件を満たすスペーサー58の材質としては、マイカ、アルミナ、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの何れか自体か、或は少なくとも何れか1種を主成分とするものでもよい。また、これらを例えばマイカのような薄い板状体の積層構造にしておけば、積層方向への荷重に対し適度な弾性が付与されるため好ましい。これらの材質の熱膨張率は、前記締め部材9の後述するコ字状主体90aの熱膨張率より高い。
【0030】
なお、実施形態の集電部材19は、前記のようにコネクタ当接部19aの集合体である平板190でつながった一体構造になっており、これに合わせてスペーサー58も図12(a)に示したように、平板190とほぼ同幅で平板190より若干短い(具体的には、1つの(セル本体当接部19b+連接部19c)の長さ相当分短い)四角形にした1枚の材料シートから、セル本体当接部19bと連接部19cに対応する部分を横1列分ずつ纏めて切り抜いて横格子状に形成されている。
そして、このスペーサー58を集電部材19の加工前の図12(b)に示した平板190に重ね、その状態で図11拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げるようにすれば、予めスペーサー58を組み込んだ集電部材19ができる。
ところで、図11拡大部では、セル本体当接部19bが左角部に位置するものから右に向かって段階的に曲げられる状態になっているが、これは専ら加工手順を説明するために描いたものであり、セル本体当接部19bの曲げ加工は全部を一斉に行ってもよいし、加工上都合の良い部分から順に行ってもよい。
【0031】
[空気室]
前記空気室16は、図5〜図7に示したように、四角い額縁形態であって下面に前記電解質2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータ23と、該セパレータ23と上のインターコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0032】
[空気室側の集電部材]
空気室16側の集電部材18は、細長い角材形状で、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、電解質2の上面の空気極14と上のインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を平行に且つ一定の間隔をおいて配設されている。なお、空気室16側の集電部材18は、燃料室17側の集電部材19と同じ構造にしてもよい。
【0033】
以上のように燃料電池セル3は、下のインターコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のインターコネクタ12と、の組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
【0034】
また、燃料電池セル3は、空気室16の内部に空気を供給する空気供給流路4を含む空気供給部25と、空気室16から空気を外部に排出する空気排気流路5を含む空気排気部26と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6を含む燃料供給部27と、燃料室17から燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7を含む燃料排気部28と、を備えている。
【0035】
[空気供給部]
空気供給部25は、四角い燃料電池セル3の一辺側中央に上下方向に開設した空気供給用の貫通孔(以下、「空気供給通孔」という。)29と、該空気供給通孔29に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気供給連絡室30と、該空気供給連絡室30と空気室16の間を仕切る隔壁31の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気供給連絡部32と、前記空気供給通孔29に挿入されたボルト400に形成されて外部から前記空気供給連絡室30に空気を供給する前記空気供給流路4と、を備えている。
【0036】
[空気排気部]
空気排気部26は、燃料電池セル3の空気供給部25の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した空気排気用の貫通孔(以下、「空気排気通孔」という。)33と、該空気排気通孔33に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気排気連絡室34と、該空気排気連絡室34と空気室16の間を仕切る隔壁35の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気排気連絡部36と、前記空気排気通孔33に挿入されたボルト500に形成されて空気排気連絡室34から外部に空気を排出する管状の前記空気排気流路5と、を備えている。
【0037】
[燃料供給部]
燃料供給部27は、四角い燃料電池セル3の残り二辺のうちの一辺側中央に上下方向に開設した燃料供給用の貫通孔(以下、「燃料供給通孔」という。)37と、該燃料供給通孔37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料供給連絡室38と、該燃料供給連絡室38と燃料室17の間を仕切る隔壁39の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、前記燃料供給通孔37に挿入されたボルト600に形成されて外部から前記燃料供給連絡室38に燃料ガスを供給する管状の前記燃料供給流路6と、を備えている。
【0038】
[燃料排気部]
燃料排気部28は、燃料電池セル3の燃料供給部27の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した燃料排気用の貫通孔(以下、「燃料排気通孔」という。)41と、該燃料排気通孔41に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料排気連絡室42と、該燃料排気連絡室42と燃料室17の間を仕切る隔壁43の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、前記燃料排気通孔41に挿入されたボルト700に形成されて燃料排気連絡室42から外部に燃料ガスを排出する管状の燃料排気流路7と、を備えている。
【0039】
[積層体]
積層体8は、前記燃料電池セル3を複数枚積層すると共にその上下を一対のエンドプレート45a,45bで挟んでその周囲を複数(実施形態では各辺に2個ずつで合計8個)の締め部材9,9…で固定したものである。なお、燃料電池セル3を複数枚積層した場合において、下に位置する燃料電池セル3の上のインターコネクタ12と、その上に載る燃料電池セル3の下のインターコネクタ13は、一体にして上下の燃料電池セル3,3同士で共有する。
【0040】
[締め部材]
積層体8を固定する複数の締め部材9は、図18、図19に示したように、コ字状主体90aと、ネジ部材90bで構成される。
【0041】
コ字状主体90aは、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されており、積層体8の積層方向の周縁部上面に対向する第1対向部91aと、積層体8の積層方向の周縁部下面に対向する第2対向部92aと、第1対向部91aの端部と第2対向部92aの端部を一体に連結して積層体8の側面との間に適度な隙間を空けて対向する連結部93aと、を備えており、さらに第1対向部91aと連結部93aとで構成される角部の内側と、第2対向部92aと連結部93aとで構成される角部の内側とが滑らかな曲面94aで形成されている。
また、前記第1対向部91aには、中心軸が積層体8の上面に対して略垂直になる向きにして雌貫通ネジ孔95aが形成されている。
【0042】
一方、ネジ部材90bは、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されており、雄ネジ軸91bの頂部に六角穴付きの円柱頭部92bを一体に有する。このネジ部材90bは、雄ネジ軸91bが前記雌貫通ネジ孔95aに螺合しており、第1対向部91aから出た先端が積層体8の上面(具体的には上のエンドプレート45aの上面)に当接し、雌貫通ネジ孔95aへの締め込み具合を調節することによって、積層体8を第2対向部92aとの間に挟んだ状態で締め付け得る。
【0043】
また、コ字状主体90aの連結部93aは、積層体8の側面と平行な方向の横幅を(W)、それと直交する方向の厚さを(T)とする断面長方形の帯板形状であり、図18(b)に示したように、積層体8の積層方向に直交する方向における断面積(T×W)=(A1)が、前記ネジ部材90bの山径(D)を基準にした断面積(πD/4)=(A2)より大きく設定され、さらに厚さ(T)が、(A2/D)より大きく且つ前記連結部の横幅(W)より小さい範囲の中で適宜に設定されている。なお、締め部材9の具体例は、実施例1〜4として後述する。
【0044】
[原料ガスの供給流路]
以上の積層体8に対し前記空気供給用のボルト400は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記空気供給通孔29を上下に貫く状態にして取り付けられており、管状流路の端部を閉じ前記空気供給連絡室30毎に対応させて図9に示したように空気供給流路4に通じる横孔48を設けることにより、該横孔48を介して空気供給連絡室30に空気が供給されるようになっている。
同様に燃料供給用のボルト600は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記燃料供給通孔37を上下に貫く状態にして取り付けられており、管状流路の端部を閉じ前記燃料供給連絡室38毎に対応させて図10に示したように燃料供給流路6に通じる横孔50を設けることにより、該横孔50を介して燃料供給連絡室38に燃料ガスが供給されるようになっている。
【0045】
[排出ガスの排気流路]
同様に空気排気流路5は図9に示したように空気排気連絡室34毎に対応させたボルト500の横孔49から空気を取り込んで外部に排出し、燃料排気流路7は図10に示したように燃料排気連絡室42毎に対応させたボルト700の横孔51から排出ガスを取り込んで外部に排出する。
【0046】
[発電]
上記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図9の右側から左側に流れ、右側の空気供給流路4と、空気供給連絡室30と、空気供給連絡部32とからなる空気供給部25を通って空気室16に供給され、この空気室16の集電部材18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに空気排気連絡部36と、空気排気連絡室34と、空気排気流路5とからなる空気排気部26を通って外部に排出される。
【0047】
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスは、図10の上側から下側に流れ、上側の燃料供給流路6と、燃料供給連絡室38と、燃料供給連絡部40とからなる燃料供給部27を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の集電部材19,19…の間、厳密にはセル本体当接部19b,19b…同士の間のガス流路57(図10において、燃料室17内の非斜線部参照)を拡散しながら通り抜け、さらに燃料排気連絡部44と、燃料排気連絡室42と、燃料排気流路7とからなる燃料排気部28を通って外部に排気される。
なお、このとき集電部材19が前記のように多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成されていると、ガス流路57の表面が凸凹になるため燃料ガスの拡散性が向上する。
【0048】
このような空気と燃料ガスの供給・排気を行いつつ全燃料電池セル3の温度を700℃〜1000℃にまで上昇させると、空気と燃料ガスが空気極14と電解質2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギが発生する。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
【0049】
前記のように空気極14は、集電部材18を介して上のインターコネクタ12に電気的に接続され、一方、燃料極15は、集電部材19を介して下のインターコネクタ13に電気的に接続されており、また、積層体8は複数の燃料電池セル3を積層して直列に接続された状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になる。
【0050】
なお、締め部材9を介して両エンドプレート45a,45b間で電気的にショートするトラブルを防止するため、図3に破線で示したように一部の締め部材9(例えば、積層体8の隣り合う2辺に取り付けたもの全て。)のネジ部材90bと上のエンドプレート45aの間に絶縁部材11が設けられ、残りの締め部材9の第2対向部92aと下のエンドプレート45bの間に絶縁部材11が設けられている。こうすることにより、複数の締め部材9を正極と負極に分けることができるため、該締め部材9を電気エネルギーの出力端子として利用し得る。
【0051】
以上のように燃料電池は、発電時に温度が上昇し、発電停止により温度が下降する、という温度サイクルを繰り返す。したがって、燃料室17や空気室16を構成する全ての部材や前記締め部材9について熱膨張と収縮が繰り返され、それに伴い燃料室17や空気室16の間隔も拡大と縮小を繰り返す。
また、燃料圧や空気圧も変動する場合があり、その圧力の変動でセル本体20が変形することによっても燃料室17や空気室16の間隔が拡大又は縮小する。
このような燃料室17や空気室16の拡大方向の変化に対して、実施形態では燃料室17側の集電部材19が、連接部19cの弾性と、スペーサー58の積層方向の弾性と熱膨張によってセル本体20を押圧するため電気的接続が安定的に維持される。この集電部材19によるセル本体20の押圧は空気室16側にも影響するため、空気室16の電気的接続も安定的に維持される。
また、燃料室17や空気室16の縮小方向の変化に対して、燃料室17側の集電部材19の連接部19cの弾性と、スペーサー58の収縮によってセル本体20に加わる応力が緩和される。
【0052】
また、燃料極15側の集電部材19がNiか又はNi合金であると、発電時の高温環境下でセル本体当接部19bが燃料極15中のNiと拡散接合して一体になる。したがって集電部材19による電気的接続がより安定的に維持される。
なお、好ましくは燃料極15にNiOペーストを塗布して接合層を形成しておくとよい。そうすることによりH中の通電でNiOがNiになるから集電部材19と燃料極15の接合性がさらに向上する。前記接合層は、燃料極15にPtペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0053】
また、実施形態では下のインターコネクタ13にコネクタ当接部19aの集合体である平板190を溶接して接合するようにしたが、該インターコネクタ13と平板190の材質を発電時の高温環境下で拡散接合し得る組み合わせ(例えばCrofer22HとNi)にするか、或は下のインターコネクタ13の内面側に前記のような接合層を形成するようにしておけば、発電時の高温環境下でインターコネクタ13と集電部材19を接合して一体にすることができる。
【0054】
[変形例]
図14〜図17は集電部材19の変形例を示す燃料電池セル3の中間省略縦断面図である。実施形態の集電部材19は、連接部19cをU字状に曲げてコネクタ当接部19aの上方にセル本体当接部19bを配置すると共にコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間にスペーサー58を介在させるようにしたが、変形例では連接部19cを斜めにして、図14のようにコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの上下位置を完全に異ならせるか又は図15のように集電部材19を断面略Z字状にしてコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの一部が上下位置を違えて重なるように配置し、そうしてコネクタ当接部19aとセル本体20及びセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように前記スペーサー58を配置したものである。また、図16のようにスペーサー58をコネクタ当接部19aとセル本体20を隔てるように介在させるか、或は図17のようにスペーサー58をセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように介在させるようにすることもできる。
前記した実施形態と変形例の構成の相違は以上のとおりであり、それ以外の点については実施形態と同じであるため詳細な説明を省略する。
【実施例1】
【0055】
実施例1は、180mm×180mm×80.5mmの積層体8の各辺に、図1、図2に示したように2個ずつ締め部材9,9…を装着して締め付けるものである。使用する締め部材9は、図19に示したように、コ字状主体90aについて、材質=インコネル、連結部93aの厚さ(T)=8mm、横幅(W)=30mm、断面積(A1)=240mm 、全高(H)=105mm、第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T1,T2)=8mm、曲面94aの半径(R)=5mmであり、ネジ部材90bについて、呼び径M10、材質=インコネル、山径(D)=10mm、断面積(A2)=55mm 、雄ネジ軸91bの長さ(L)=40mmである。
【実施例2】
【0056】
実施例2は、締め部材9のコ字状主体90aについて、連結部93aの厚さ(T)=10mm、横幅(W)=30mm、断面積(A1)=300mm 、第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T1,T2)=10mmであり、それ以外の点については実施例1と同じである。
【実施例3】
【0057】
実施例3は、締め部材9のコ字状主体90aについて、曲面94aの半径(R)=3mmであり、それ以外の点については実施例2と同じである。
【0058】
[積層時のコ字状主体の変位量]
実施例1〜3の締め部材9について、ネジ部材90bを10N・mの締め付けトルクで締め付けて積層体8を固定し、その状態でのコ字状主体90aの開き方向の変位量(λ)(図20参照)を実測した。なお、実測に用いた積層体8は、上下のエンドプレート45a,45bに相当する厚さ10mmのステンレス板の間に、厚さ0.5mmのマイカ板41枚と、厚さ1mmのステンレス板40枚を交互に積層して全高80.5mmとした擬似的なものである。
【0059】
[加熱後のネジ部材の緩み測定]
上記実施例1〜3の締め部材9で固定した上記の擬似的積層体について、800℃の電気炉中に250時間放置し、その後室温にまで冷却した後、ネジ部材90bを緩めてその時のトルク(緩みトルク)を実測した。
【0060】
[比較例]
比較のため、締め部材9のコ字状主体90aを次のように設定した比較例1〜4を作成し、その比較例1〜4についても上記と同様に前記変位量(λ)と緩みトルクを実測した。なお、比較例1〜4のコ字状主体90aの材質と横幅(W)と全高(H)及びネジ部材90bは、実施例1〜3と同一である。
比較例1:連結部93aと第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T,T1,T2)=4mm
:断面積(A1)=120mm
:曲面94aの半径(R)=5mm
比較例2:連結部93aと第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T,T1,T2)=6mm
:断面積(A1)=180mm
:曲面94aの半径(R)=5mm
比較例3:連結部93aと第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T,T1,T2)=30mm
:断面積(A1)=900mm
:曲面94aの半径(R)=5mm
比較例4:連結部93aと第1対向部91aと第2対向部92aの厚さ(T,T1,T2)=10mm
:断面積(A1)=300mm
:曲面94aの半径(R)=0mm
【0061】
以上のようにして実測した実施例1〜3と比較例1〜4の前記変位量(λ)と、実施例1〜3と比較例1〜4のネジ部材90bの締め付けトルクに対する緩みトルクの比を表1と表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1は、曲面94aの半径(R)の大きさが同一で連結部93aの厚さ(T)が相違するグループを纏めて連結部93aの厚さ(T)と変位量(λ)の関係を示したものであり、これをグラフにしたのが図21である。この図21のグラフより明らかなように、(A2/D)=7.85の値を境にしてそれより連結部93aの厚さ(T)を大きくした場合には変位量(λ)が小さいが、それより連結部93aの厚さ(T)を小さくした場合には変位量(λ)が急激に増加していることが判る。この変位量(λ)が大きいと、連結部93aに作用する応力が高くなり、高温でのクリープ変形が起きやすくなる。
一方、比較例3は、変位量(λ)については十分小さいものの、連結部93aの厚さ(T)が大きすぎることより熱容量が大きくなって燃料電池の起動・停止時間が長くなる、というマイナス面が大きい。
【0065】
表2は、曲面94aの半径(R)が相違するグループを纏めて加熱後のネジ部材90bの緩み具合と曲面94aの半径(R)との関係を示したものであり、これをグラフにしたのが図22である。この結果より曲面94aのない比較例4のネジ部材90bが最も緩んでいることが判る。これは角部の曲面94aによってクリープひずみが小さくなるためであると考えられる。
【0066】
以上本発明を実施形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態ではネジ部材90bを第1対向部91aのみに設けたが、第2対向部92aのみに設けてもよいし、第1対向部91aと第2対向部92aの両方に設けてもよい。
また、実施形態では、1つの締め部材9に1本のネジ部材90bを設けたが、図23に示したように、1つの締め部材9に複数本のネジ部材90b,90b…を設けるようにしてもよい。その場合、前記断面積(A2)を1つの締め部材9に対応する全ネジ部材90b,90b…の総和とするだけでよい。
また、実施形態では、コ字状主体90aの角部の曲面94aを第1対向部91aと第2対向部92aのそれぞれに形成したが、何れか一方の角部に曲面94aを設けるだけでもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 …燃料電池
3 …燃料電池セル
4,5,6,7 …ガス流路
8 …積層体
9 …締め部材
91a …第1対向部
92a …第2対向部
93a …連結部
94a …曲面
95a …雌貫通ネジ孔
90b …ネジ部材
29,33,37,41 …貫通孔
400,500,600,700 …ボルト
D …山径
T …連結部の厚さ
W …連結部の横幅
A1 …連結部の断面積
A2 …山径を基準とするネジ部材の断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部近傍に設けられて該積層体を積層方向に締め付ける締め部材と、を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、
前記積層体の積層方向の周縁部上面に対向する第1対向部と、
前記積層体の積層方向の周縁部下面に対向する第2対向部と、
前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向すると共に該積層体の側面と平行な方向の横幅が(W)であり、それと直交する方向の厚さが(T)である連結部と、
中心軸が前記積層体の上面又は下面に対して略垂直になるように前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成される雌貫通ネジ孔と、
前記雌貫通ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の上面又は下面に先端が当接し、前記雌貫通ネジ孔への締め込みによって前記積層体を積層方向に締め付け得るネジ部材と、を備え、
さらに、前記連結部は、
前記積層体の積層方向に直交する方向における断面積(A1)が、前記ネジ部材の山径(D)を基準にした断面積(A2)より大きく設定され、
前記連結部の厚さ(T)が、(A2/D)より大きく且つ前記連結部の横幅(W)より小さく設定されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記第1対向部又は前記第2対向部と前記連結部とで構成される角部の内側が滑らかな曲面で形成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記積層体は、
積層方向に貫通する貫通孔と、
前記貫通孔に挿入されたボルトと、を有し、
前記ボルトには、前記燃料電池セルに供給される原料ガスまたは前記燃料電池セルから排出される排出ガスを流通させるガス流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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