説明

燃焼制御装置

【課題】使用中にバーナの加熱量が変更されたときにも、不完全燃焼による燃焼不良を適切に検出でき、バーナの加熱量の大小による早切れや遅切れのない燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】燃焼炎温度検出手段と、熱交換器の周囲温度を検出して排気ガスの閉塞状態を検出する排気閉塞状態検出手段と、燃焼炎温度検出手段と排気閉塞状態検出手段の検出出力に基づいてバーナの燃焼を制御するコントローラとを備え、燃焼炎温度検出手段により検出される第1検出温度が設定値より低くなったときにバーナの燃焼が停止され、かつ、バーナにより加熱される熱交換器の周囲温度である第2検出温度が高いときにはバーナの加熱量が大きく、また、第2検出温度が低いときにはバーナの加熱量が小さいと判定するように構成されている燃焼制御装置において、第2検出温度の値が大きく、バーナの加熱量が大きいほど、第1検出温度の設定値が大きい値に設定されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給湯装置などに用いられるバーナの燃焼制御装置に関し、詳しくは、燃焼不良を検出することができるように構成された燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給湯装置などに使用される燃焼制御装置においては、熱交換器を加熱するバーナの燃焼状態を検出するための温度検出手段と、バーナの燃焼を制御する制御手段とを設け、バーナの燃焼中に、制御手段が温度検出手段により検出した温度に基づいてバーナの燃焼を制御するとともに、燃焼異常が発生したと判断した場合には、バーナの燃焼を停止することにより安全性を確保するようにしている。
【0003】
このような燃焼制御装置の温度検出手段として、従来は、バーナの燃焼炎に接触するように第1熱電対を配置するとともに、バーナの燃焼室となる筒胴に形成した測温用開口に臨む状態で第2熱電対を配置し、各熱電対に生じる起電力を燃焼異常検出用の情報として共に制御手段に入力するように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、この従来の燃焼制御装置は、バーナの点火中に不完全燃焼が生じた場合、第1熱電対の起電力が予め設定された正常燃焼の基準値よりも低下するので、制御手段は、この第1熱電対からの起電力の低下を検出することにより、燃焼異常が起こったものと判断して燃焼を停止し、安全性を確保する。
【0005】
この従来の燃焼制御装置においては、バーナの加熱量が大きいほど大きい値になるように酸欠燃焼用の判定レベルを変更設定するように構成されている。また、第1熱電対の正常燃焼中の第1熱電対の起電力は、バーナの燃焼量が大きいときに比べて、バーナの燃焼量が小さいときの方が小さい。
【0006】
したがって、バーナの加熱量が大きいときにおける正常燃焼中の第1熱電対の起電力に基いて不完全燃焼判定用の基準値を定めると、バーナの加熱量が小さいときにおいて正常燃焼を行っているにも関わらず、第1熱電対の起電力が不完全燃焼判定用の基準値を下回ることにより、燃焼異常が起こったものと誤判断して燃焼を停止してしまう(早切れとなる)惧れがある。
【0007】
また、バーナの加熱量が小さいときにおける正常燃焼中の第1熱電対の起電力に基いて不完全燃焼判定用の基準値を定めると、バーナの加熱量が大きいときにおいて不完全燃焼となっているにも関わらず第1熱電対の起電力が不完全燃焼判定用の基準値を下回らないことにより、正常燃焼を継続しているものと誤判断して燃焼を継続してしまう(遅切れとなる)惧れがある。
【0008】
そこで、上記従来技術では、バーナの加熱量が大きいほど大きい値になるように酸欠燃焼用の判定レベルを変更設定するように構成されている。
また、上記従来技術においては、バーナの燃焼状態が安定状態に至る前(すなわち、起電力のレベル判別に伴う燃焼動作の異常の判別処理や前記レベル変更制御を実行する前)に、第1熱電対により出力される起電力に基づいて、バーナの加熱量を求めるように構成されている。
【0009】
しかしながら、上記来技術においては、バーナの燃焼状態が安定状態に至る前、すなわち、起電力のレベル判別に伴う燃焼動作の異常の判別処理や前記レベル変更制御を実行する前に、第1熱電対により出力される起電力に基づいて、バーナの加熱量を求めるように構成されていることから、バーナの燃焼状態が安定状態に至った後にバーナの加熱量が変更された場合には、加熱量の変更に伴う酸欠燃焼用の判定レベルの変更を実施することができないという問題点がある。
【0010】
これに対し、バーナの加熱量を検出する別のセンサを設けて、そのセンサの出力に応じて不完全燃焼判定用の基準値を変更することが考えられるが、その場合には、バーナの加熱量を検出するためのセンサの追加によるコストの増大を招くという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−018580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、使用中にバーナの加熱量が変更されたときにも、不完全燃焼による燃焼不良が適切に検出でき、バーナの加熱量の大小による早切れや遅切れがなく、しかも、バーナの加熱量を検出する別のセンサが不要で経済性に優れた燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)の燃焼制御装置は、
バーナの燃焼炎の温度を検出する燃焼炎温度検出手段と、
前記バーナにより加熱される熱交換器の周囲温度を第2検出温度として検出し、前記第2検出温度の値により、前記熱交換器の排気通路が狭くなって排気ガスが流れにくくなる排気閉塞状態の発生の有無を検出する排気閉塞状態検出手段と、
前記燃焼炎温度検出手段と前記排気閉塞状態検出手段の検出出力に基づいて前記バーナの燃焼を制御するコントローラとを備え、
前記燃焼炎温度検出手段により検出される温度である第1検出温度が設定値より低くなったときに前記バーナの燃焼が停止され、かつ、
前記第2検出温度が高いときには前記バーナの加熱量が大きく、また、前記第2検出温度が低いときには前記バーナの加熱量が小さいと判定するように構成されている燃焼制御装置であって、
前記第2検出温度の値が大きく、前記バーナの加熱量が大きいほど、前記バーナの燃焼を停止させる指標となる、前記第1検出温度の前記設定値が大きい値に設定されるように構成されていること
を特徴としている。
【0014】
また、本発明(請求項2)の燃焼制御装置は、前記第1検出温度の前記設定値が、前記バーナの点火開始初期においては、所定の安定時間が経過した時点で、前記設定値が設定されるように構成されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明(請求項3)の燃焼制御装置は、
前記設定値が既に設定されている状態から、前記第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、前記設定値を変更設定するにあたって、
所定の遅延時間が経過した時点で、前記設定値の変更設定が行われるように構成されていること
を特徴としている。
【0016】
さらに、本発明(請求項4)の燃焼制御装置は、
前記設定値が既に設定されている状態から、前記第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、前記設定値を変更設定するにあたって、
所定の過渡時間は、前記設定値が変更設定すべき値よりも所定レベル小さい値に変更設定され、その後に前記設定値が本来変更設定すべき値に設定されるように構成されること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明(請求項1)の燃焼制御装置は、バーナの燃焼炎の温度を検出する燃焼炎温度検出手段と、バーナにより加熱される熱交換器の周囲温度を第2検出温度として検出し、その値により、熱交換器の排気通路が狭くなって排気ガスが流れにくくなる排気閉塞状態の発生の有無を検出する排気閉塞状態検出手段と、燃焼炎温度検出手段と排気閉塞状態検出手段の検出出力に基づいてバーナの燃焼を制御するコントローラとを備え、燃焼炎温度検出手段により検出される温度である第1検出温度が設定値より低くなったときにバーナの燃焼が停止され、かつ、 第2検出温度が高いときにはバーナの加熱量が大きく、また、熱交換器の周囲温度が低いときにはバーナの加熱量が小さいと判定するように構成されている燃焼制御装置において、第2検出温度の値が大きく、バーナの加熱量が大きいほど、バーナの燃焼を停止させる指標となる、第1検出温度の設定値が大きい値に設定されるように構成されているので、バーナの加熱量の大小による早切れや遅切れを防止することが可能になるとともに、使用中にバーナの加熱量が変更されたときにも、不完全燃焼による燃焼不良が適切に検出することができる。また、バーナの加熱量を検出する別のセンサが不要でコストの増大を抑えることができる。
【0018】
すなわち、本発明によれば、バーナの加熱量が大きいほど前記設定値が大きい値に設定されることになるため、バーナの加熱量を検出する別のセンサを必要とすることなく、バーナの加熱量の大小による早切れや遅切れを防止することが可能になる。また、前記設定値が第2検出温度に基いて設定されることから、使用中にバーナの加熱量が変更されたときにも、不完全燃焼による燃焼不良を適切に検出することが可能になる。
【0019】
なお、本発明において、「燃焼炎温度検出手段により検出される温度である第1検出温度が設定値より低くなったとき」という場合の「第1検出温度」、および、「バーナにより加熱される熱交換器の周囲温度を第2検出温度として検出し」という場合の「第2検出温度」は、例えば、第1および第2検出温度が熱電対を用いて検出される場合には起電力として測定される値であってもよく、また、その値を温度に換算した値であってもよい。
すなわち、「第1検出温度」および「第2検出温度」は、温度を検出するための検出手段に応じた起電力などの一次データ、あるいはそれを他の単位に換算した二次データ以降の加工データ、さらには、温度に換算した温度データそのもののいずれであってもよい。
【0020】
また、本発明(請求項2)の燃焼制御装置は、バーナの点火開始初期においては、所定の安定時間が経過した時点で、設定値が設定されるように構成されており、バーナの燃焼が安定した時点で設定値が設定されることから、バーナの加熱量に応じて設定値が適切に設定されることになり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0021】
また、本発明(請求項3)の燃焼制御装置のように、設定値が既に設定されている状態から、第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、設定値を変更設定するにあたって、所定の遅延時間が経過した時点で、設定値の変更設定が行われるように構成することにより、バーナの加熱量が小火力から大火力に変更されてから、燃焼炎温度検出手段の熱容量に起因する燃焼炎温度検出手段の起電力の変化遅れがあった場合においても、早切れが生じないようにすることができる。
【0022】
さらに、本発明(請求項4)の燃焼制御装置のように、設定値が既に設定されている状態から、第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、設定値を変更設定するにあたって、所定の過渡時間は、設定値が変更設定すべき値よりも所定レベル小さい値に変更設定され、その後に設定値が本来変更設定すべき値に設定されるように構成した場合、バーナの加熱量が小火力から大火力に変更されてから、燃焼炎温度検出手段の熱容量に起因する燃焼炎温度検出手段の起電力の変化遅れがあった場合においても、早切れが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例にかかる燃焼制御装置を給湯装置に適用した場合の概略構成図である。
【図2】図1の給湯装置の制御ブロック図である。
【図3A】図1の給湯装置のバーナの加熱量が大火力の場合の第2酸欠基準、および、熱電対の起電力変化の一例を示す特性図である。
【図3B】図1の給湯装置のバーナの加熱量が小火力の場合の第2酸欠基準、および、熱電対の起電力の一例を示す特性図である。
【図4】本発明によらない給湯装置のバーナの加熱量が小火力の場合の第2酸欠基準、および、熱電対の起電力の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を示して、その特徴とするところを詳しく説明する。
【実施例1】
【0025】
[給湯装置の基本構成]
図1は本発明の実施例にかかる燃焼制御装置を組み込んだ燃焼機器としての給湯装置の全体構成図である。
以下、本発明にかかる燃焼制御装置を給湯装置に適用した場合の実施例を示して、その特徴とするところを詳しく説明する。
【0026】
図1は本発明の実施例にかかる燃焼制御装置を組み込んだ燃焼機器としての給湯装置の全体構成図である。
この給湯装置は、燃焼室Rを構成するための筒胴1を備え、この筒胴1の内側上端部には、フィンチューブ型の水加熱用の熱交換器2が設けられている。また、筒胴1の下方には熱交換器2を加熱するバーナ3が設けられている。
【0027】
さらに、熱交換器2への給水路Wiには、止水弁4、水圧変化に応動して給水量を調整する水ガバナ5、および分流弁6が順次配設されている。一方、熱交換器2からの出湯路Woには、フレキシブル管7を介して出湯具8が接続されている。そして、上記の分流弁6と出湯路Woとの間にはバイパス路Wbが設けられ、分流弁6の開度により、給水路Wiから出湯路Woへバイパス路Wbを介して分流供給されるバイパス水量の割合が調整されるように構成されている。
【0028】
また、バーナ3へのガス供給路Gには、遮断弁9、水圧応動弁10、ガスガバナ11、および燃料ガス供給量を調整する調整弁12が順次介装されている。
そして、この給湯装置においては、水圧応動弁10は、連動杆10aを介して水ガバナ5との連動により給水状態でのみ弁が開くように構成されており、また、ガスガバナ11は、燃料ガス供給の元圧変化に応動してバーナ3への燃料ガス供給圧を適正圧に保つように構成されている。
【0029】
さらに、この給湯装置においては、バーナ3に近接して点火プラグ16が設けられ、バーナ3の燃焼炎に接触するように第1熱電対17が配設されている。また、燃焼室Rを構成する筒胴1に形成した測温用開口1aには、感熱部が臨む状態で第2熱電対21が配設されている。そして、上記の第1熱電対17が本発明における燃焼炎温度検出手段に、また、第2熱電対21が本発明における排気閉塞状態検出手段にそれぞれ対応している。
【0030】
第1熱電対17は、金属性の熱電対取付板を用いて感熱部を正常燃焼状態の燃焼炎の内部に位置するように配設されているとともに、そのプラス側が熱電対取付板と電気的に接続して設けられており、バーナ3の燃焼炎の温度に応じた起電力を出力する。
【0031】
また、第2熱電対21は、そのプラス側が内胴1と電気的に接続して設けられており、バーナ3から熱交換器2を通過する筒胴1内の燃焼ガスの排気通路が狭くなって排気閉塞状態が発生したときには、筒胴1の測温用開口1aから高温の燃焼ガスが流出するので、そのときに流出した燃焼ガスの温度に応じた起電力を出力する。
【0032】
そして、図2に示すように、第1熱電対17のマイナス端子を後述するコントローラCの入力端子cに接続し、第1熱電対17のプラス端子をコントローラCの入力端子aに接続している。また、第2熱電対21のマイナス端子をコントローラCの入力端子bに接続し、第2熱電対21のプラス端子をコントローラCの入力端子aに接続している。ここで、コントローラCの入力端子aは接地されている。以上のように、コントローラCの入力端子a−c間にはバーナ3の燃焼炎の温度に応じた起電力が端子a側をプラスとして入力され、コントローラCの入力端子a−b間にはバーナ3から熱交換器2を通過する筒胴1内の燃焼ガスの排気通路が狭くなって排気閉塞状態が発生したときに流出した燃焼ガスの温度に応じた起電力が端子a側をプラスとして入力されるように構成している。
【0033】
さらに、バーナ3に対向するガスノズル18の下方近傍の位置にはノズル近傍用温度ヒューズ19が、また、筒胴1の外周部の背面側(給湯装置を壁面に設置する場合は、壁面側)近傍に筒胴用温度ヒューズ20が、それぞれ配設されている。
【0034】
ノズル近傍用温度ヒューズ19は、ガスノズル18の近傍の温度が異常高温になると溶断するものであり、また、筒胴用温度ヒューズ20は、筒胴1の上部外周近傍の温度が異常高温になると溶断するものであって、両ヒューズ19,20はそれぞれ同様の構成のものである。そして、特に図示しないが、両ヒューズ19,20は、リード線を接続したヒューズ素子が、可撓性および耐熱性を有するチューブ内に直列に挿入され、チューブの外周の2箇所をバインダで束縛することによりチューブ内に固定された構成を有している。
【0035】
また、給湯装置は、制御手段としてのコントローラCを備えている。このコントローラCは、マイクロコンピュータを有し、所定の制御プログラムをインストールすることにより、第1熱電対17、第2熱電対21、操作マイクロスイッチ14,水圧マイクロスイッチ15などからの出力に基づいてバーナ3の燃焼制御や各部の動作を制御するように構成されている。そして、このコントローラCには、図2に示すように、動作電源として乾電池Btから電力が供給され、乾電池Btを取り外さない限り電力供給が継続される。
また、この給湯装置は、後述のように燃焼状態の異常により燃焼禁止状態になっていることを報知するための異常報知ランプ22(図2)を備えている。
【0036】
次に、給湯装置が正常燃焼する場合における給湯時および給湯停止時のコントローラCの制御動作について説明する。
【0037】
給湯を開始する場合には、押しボタン式の出湯操作具13(図1)を押す。出湯操作具13が押されると、これに応じて操作マイクロスイッチ14がオンになり、同時に、出湯操作具13の押し操作に連動して止水弁4が開弁される。止水弁4が開弁されると、水が水ガバナ5に入り、水圧により連動杆10aが水圧応動弁10を開弁する方向に応動して水圧マイクロスイッチ15がオンになる。
【0038】
操作マイクロスイッチ14および水圧マイクロスイッチ15がともにオンになると、これに応じてコントローラCは、点火プラグ16をスパークさせるともに、遮断弁9のコイル9aに吸着電流を流すので、遮断弁9が開弁される。
【0039】
これにより、燃料ガスは、遮断弁9、連動杆10aにより開弁された水圧応動弁10、ガスガバナ11、および調整弁12を順次通過してバーナ3に供給され、点火プラグ16のスパークにより点火されて燃焼する。
【0040】
第1熱電対17は、バーナ3の燃焼炎に接触する状態で配置されているので、バーナ3が正常に燃焼している限り、燃焼炎により加熱された第1熱電対17の起電力に応じた温度がコントローラCに予め設定された着火検出用の基準値以上となるため、コントローラCからは遮断弁9のコイル9aに吸着電流が供給され続ける結果、遮断弁9の開弁状態が継続する。
【0041】
一方、水は、止水弁4、水ガバナ5および分流弁6を通過して熱交換器2に流れると同時に、バイパス路Wbを経由して出湯路Woに流れる。そして、熱交換器2からの湯とバイパス路Wbからの水とが混合されて適温となった湯が出湯具8から出湯される。
【0042】
このような給湯状態において、給湯を停止したい場合には、出湯操作具13を再び押すと、その押し操作に連動して操作マイクロスイッチ14がオフになるとともに、止水弁4が閉弁して給水が停止され、結果的に出湯も停止される。また、止水弁4が閉弁すると、水ガバナ5は水圧差がなくなるので、連動杆10aが水圧応動弁10を閉弁する方向に応動するため、水圧応動弁10が閉弁されるとともに、水圧マイクロスイッチ15がオフになる。そして、コントローラCは、操作マイクロスイッチ14および水圧マイクロスイッチ15がともにオフになると、遮断弁9のコイル9aへの吸着電流の供給を停止するので、遮断弁9が閉弁されてバーナ3への燃料ガスの供給が断たれ、バーナ3の燃焼が停止する。
【0043】
[不完全燃焼の検出]
次に、バーナ3に酸欠による不完全燃焼が発生したり、熱交換器2の排気閉塞などの異常が起こったりした場合のコントローラCにより実行される制御動作について説明する(図3A、図3B参照)。
【0044】
前述の給湯を開始する操作を行い、遮断弁9の開弁、点火プラグ16のスパークなどによるバーナ3への点火動作を開始してから2秒経過した以降に、第1熱電対17の起電力が1.2mV以上になった時点で、バーナ3に着火した(着火検出状態である)とコントローラCが判断し、点火プラグ16のスパークのみを停止し、遮断弁9の開弁を維持して燃焼を継続する。
【0045】
なお、もし、バーナ3への点火動作を開始してから2秒経過した時点で第1熱電対17の起電力が1.2mV未満の場合は、バーナ3に着火しなかった(不着火検出状態である)とコントローラCが判断し、遮断弁9を閉弁して、点火プラグ16のスパークを停止し、点火動作を中断するとともに、異常報知ランプ22を点滅させて、不着火検出状態により点火動作を中断したことを報知するように構成されている(図示せず)。
【0046】
点火動作を開始してから着火検出状態になり、2秒以上経過し10秒経過するまで、第1熱電対17の起電力が2.5mV以上である場合は、コントローラCは着火検出状態が維持されていると判断し、遮断弁9の開弁を維持して燃焼を継続する(ただし、2秒〜3秒の閾値は、1.2mV)。
【0047】
なお、もし、バーナ3への点火動作を開始してから2秒以上経過し、10秒経過するまでの間に第1熱電対17の起電力が2.5mV未満になった場合は、バーナ3に着火しなかった(不着火検出状態である)とコントローラCが判断し(ただし、2秒〜3秒の閾値は、1.2mV)、遮断弁9を閉弁することで点火動作を中断するとともに、異常報知ランプ22を点滅させて、不着火検出状態により点火動作を中断したことを報知するように構成されている(図示せず)。
【0048】
因みに、一旦、第1熱電対17の起電力が1.2mV以上であることを検出した後に、バーナ3に着火しなかったとコントローラCが判断するための起電力の閾値は、1.2mVから所定ヒステリシスを減じた1.2mVより小さい値とすることが一般的であるが、点火動作を開始して最初に着火検出状態になった後しばらくの間は、熱電対の熱容量に起因して第1熱電対17の起電力は上昇し続けることがわかっていることから、一旦第1熱電対17の起電力が1.2mV以上であることを検出した後に、バーナ3に着火しなかったとコントローラCが判断するための起電力の閾値を2.5mVに設定している。
【0049】
このように、点火動作を開始してから最初に着火検出したかどうかの判断を行う閾値を1.2mVと低く設定することで、点火プラグ16のスパークを早く停止することが可能となり、消費電力の低減が図られ、かつ、着火後10秒経過するまで第1熱電対17の起電力が2.5mV以上である場合には、燃焼が維持されていると判断し、遮断弁9の開弁を維持して燃焼を継続することにより、安全性が確保される。
【0050】
バーナ3への点火動作を開始した後、10秒以降40秒が経過するまでの間は、第1熱電対17の起電力が第1酸欠基準(7mv)以上であるかどうかがコントローラCによってチェックされ、第1熱電対17の起電力が第1酸欠基準(7mv)以上である場合は、コントローラCが酸欠燃焼ではない(正常燃焼検出状態である)と判断し、遮断弁9の開弁を維持して燃焼を継続する。
【0051】
なお、もし、バーナ3への点火動作の開始後、10秒以降40秒が経過するまでの間に、第1熱電対17の起電力が第1酸欠基準(7mv)未満になった場合は、コントローラCが酸欠燃焼である(不完全燃焼検出状態)であると判断し、遮断弁9を閉弁することでバーナ3の燃焼を停止し、異常報知ランプ22を点滅させて、不完全燃焼検出状態によりバーナ3の燃焼を停止したことを報知するように構成されている(図示せず)。
【0052】
バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点(正確には40秒経過する時点の直前の時点)において、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降に酸欠燃焼であるかどうかを判断するために、第2熱電対21の起電力(本発明における第2検出温度に相当)に基いて第2酸欠基準が設定される。
なお、上記第2酸欠基準は、本発明における、燃焼炎温度検出手段(第1熱電対)により検出される温度である第1検出温度の設定値であって、第1熱電対により検出される温度が、その値より低くなったときにバーナの燃焼が停止される値(この実施例では、温度に対応する起電力の値)である。
【0053】
バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点(正確には40秒を経過する時点の直前の時点)における第2熱電対21の起電力(本発明における第2検出温度に相当)が5.5mV以上である場合は、バーナ3の加熱量が大火力であるとコントローラCが判断し、第2酸欠基準が15mVに設定される。
【0054】
また、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点(正確には40秒を経過する時点の直前の時点)における第2熱電対21の起電力(本発明における第2検出温度に相当)が5.5mV未満である場合は、バーナ3の加熱量が小火力であるとコントローラCが判断し、第2酸欠基準が13.5mVに設定される。
【0055】
そして、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降においては、第1熱電対17の起電力が第2酸欠基準以上であるかどうかがコントローラCによってチェックされ、第1熱電対17の起電力が第2酸欠基準以上である場合は、コントローラCが酸欠燃焼ではない(正常燃焼検出状態である)と判断し、遮断弁9の開弁を維持して燃焼を継続する。
【0056】
なお、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降において、第1熱電対17の起電力が第2酸欠基準未満になった場合は、酸欠燃焼である(不完全燃焼検出状態である)とコントローラCが判断し、遮断弁9を閉弁することでバーナ3の燃焼を停止し、異常報知ランプ22を点滅させて、不完全燃焼検出状態によりバーナ3の燃焼を停止したことを報知するように構成されている(図示せず)。
【0057】
図3Aは、バーナ3の加熱量(火力)を最大火力に設定した、バーナ3の加熱量が大火力である状態に相当する場合における第1熱電対の起電力と第1酸欠基準や第2酸欠基準との関係、および、第2熱電対の起電力と排気閉塞状態検出との関係を表している。
【0058】
また、図3Bは、バーナ3の加熱量(火力)を最小火力に設定した、バーナ3の加熱量が小火力である状態に相当する場合における第1熱電対の起電力と第1酸欠基準や第2酸欠基準との関係、および、第2熱電対の起電力と排気閉塞状態検出との関係を表している。
【0059】
図3Aに示すように、バーナ3の加熱量が大火力のときには、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点(正確には40秒を経過する時点の直前の時点)における第2熱電対21の起電力が5.5mV以上である場合、バーナ3の加熱量が大火力であるとコントローラCが判断し、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量は大火力のときに適した値である15mVに設定されているが、バーナ3の加熱量が大火力のときの第1熱電対の起電力は第2酸欠基準である15mVを大きく上回っており、燃焼が継続される。
【0060】
また、図3Bに示すように、バーナ3の加熱量が小火力のときには、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点(正確には40秒を経過する時点の直前の時点)における第2熱電対21の起電力が5.5mV未満である場合、バーナ3の加熱量が小火力であるとコントローラCが判断し、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が小火力のときに適した値である13.5mVに設定されているが、バーナ3の加熱量が小火力のときでも第1熱電対の起電力は第2酸欠基準である13.5mVを上回っており、燃焼が継続される。
【0061】
もし仮に、バーナ3の加熱量が小火力のときに、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点において第2酸欠基準が、バーナ3の加熱量が大火力のときと同じ15mVに設定された場合には、図4に示すように、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点で第1熱電対の起電力が15mV以下の値となることにより、酸欠による不完全燃焼が生じていないにもかかわらず、遮断弁9を閉弁してバーナ3の燃焼を停止し、異常報知ランプ22を点滅させて、酸欠燃焼による不完全燃焼検出状態によりバーナ3の燃焼を停止したことを報知する、すなわち、早切れが生じることになってしまうが、本願発明によれば、この、バーナ3の加熱量が小さいことに起因する早切れを防止することが可能になる。
【0062】
また仮に、バーナ3の加熱量が小さいことに起因する早切れを防止するために、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点において第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が小火力のときに適した13.5mVに設定された場合には、バーナ3の加熱量が大火力の場合において酸欠が生じたときに、第1熱電対の起電力がバーナ3の加熱量が大火力の場合に適した15mVより低い13.5mVを下回る酸欠状態になるまで酸欠状態を検出しないことになるから、遅切れが生じることになってしまうが、本願発明によれば、この、バーナ3の加熱量が大きいことに起因する遅切れを防止することが可能になる。
【0063】
なお、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が大火力のときに適した値である15mVに設定されている状態において、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降にバーナ3の加熱量が小さくなるように火力変更された場合、第2熱電対21の起電力が5.5mV未満になった時点で、第2酸欠基準は、バーナ3の加熱量が小火力のときに適した値である13.5mVに設定される。
【0064】
また、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が小火力のときに適した値である13.5mVに設定されている状態において、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降にバーナ3の加熱量が大きくなるように火力変更された場合、第2熱電対21の起電力が5.5mV以上になった時点から所定の遅延時間が経過した時点で、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が大火力のときに適した値である15mVに変更設定される。
【0065】
この場合、第2熱電対21の起電力が5.5mV以上になった時点から所定の遅延時間が経過した時点で15.5mVに変更設定される理由は、バーナ3の加熱量が小火力から大火力に変更されてから、第1熱電対の熱容量に起因する第1熱電対の起電力の変化遅れがあった場合に早切れを生じないようにするためである。
【0066】
因みに、第2熱電対の起電力がバーナ3への点火動作の開始後15秒以上経過した時点において排気閉塞状態検出用基準の18.5mV以上になったときには、遮断弁9を閉弁することでバーナ3の燃焼を停止し、異常報知ランプ22を点滅させて、排気閉塞状態検出による不完全燃焼検出状態によりバーナ3の燃焼を停止したことを報知するように構成されている。
【0067】
これに対し、バーナ3の加熱量が大火力である状態を表す図3A、バーナ3の加熱量が小火力である状態を表す図3Bのいずれの場合においても、第2熱電対の起電力が排気閉塞状態検出用基準の18.5mV以上になっていないことを示している。
【0068】
なお、本願発明においては、筒胴1内の燃焼ガスの排気通路がいくらか狭くなって多少の排気閉塞状態が発生した場合には、第2熱電対の起電力は、上述のような排気閉塞状態が発生していない場合に比べて多少大きくなることから、上記の第2酸欠基準は大きい値に設定されることになり、筒胴1内の燃焼ガスの排気通路がいくらか狭くなって多少の排気閉塞状態が発生した場合にも、第2酸欠基準が誤って小さい値に設定されるという不安全な状態が生じることがなく、安全性が確保されるように構成されている。
【0069】
[別実施例]
上記実施例では、第2酸欠基準を、バーナ3の加熱量が大火力である場合とバーナ3の加熱量が小火力である場合とに応じて15mVと13.5mVの2つの値の内のいずれかが設定されるように構成しているが、バーナ3の加熱量を3段階以上に変化させるとともに、第2酸欠基準を、バーナ3の加熱量の段階数に応じて、3つ以上の値の内のいずれかを設定するように構成することも可能である。
【0070】
また、上記実施例では、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が小火力のときに適した値である13.5mVに設定されている状態において、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降に、バーナ3の加熱量が大きくなるように火力変更された場合に、第2熱電対21の起電力が5.5mV以上になった時点から所定の遅延時間が経過した時点で、第2酸欠基準を、バーナ3の加熱量が大火力のときに適した値である15mVに変更設定するようにしているが、第2酸欠基準がバーナ3の加熱量が小火力のときに適した値である13.5mVに設定されている状態において、バーナ3への点火動作の開始後40秒を経過した時点以降に、バーナ3の加熱量が大きくなるように火力変更された場合に、第2熱電対21の起電力が5.5mV以上になった時点から所定の過渡時間は、第2酸欠基準を、バーナ3の加熱量が大火力のときに適した値である15mVよりも所定レベル小さい値に変更設定するようにしてもよい。このようにした場合、バーナ3の加熱量が小火力から大火力に変更された後に、第1熱電対の熱容量に起因する第1熱電対の起電力の変化遅れがあった場合にも、早切れを生じないようにすることが可能になる。
【0071】
また、上記実施例では、本発明を適用する燃焼制御装置の具体構成が給湯装置である場合について例示したが、本発明の燃焼制御装置を適用することが可能な装置は、給湯器に限らず、例えば、暖房装置であってもよく、さらにその他の装置であってもよい。
【0072】
本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において各種の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 筒胴
1a 測温用開口
2 熱交換器
3 バーナ
4 止水弁
5 水ガバナ
6 分流弁
7 フレキシブル管
8 出湯具
9 遮断弁
9a コイル
10 水圧応動弁
10a 連動杆
11 ガスガバナ
12 調整弁
13 出湯操作具
14 操作マイクロスイッチ
15 水圧マイクロスイッチ
16 点火プラグ
17 第1熱電対(燃焼炎温度検出手段)
18 ガスノズル
19 ノズル近傍用温度ヒューズ
20 筒胴用温度ヒューズ
21 第2熱電対(排気閉塞状態検出手段)
22 異常報知ランプ
C コントローラ
G ガス供給路
R 燃焼室
Wb バイパス路
Wi 給水路
Wo 出湯路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの燃焼炎の温度を検出する燃焼炎温度検出手段と、
前記バーナにより加熱される熱交換器の周囲温度を第2検出温度として検出し、前記第2検出温度の値により、前記熱交換器の排気通路が狭くなって排気ガスが流れにくくなる排気閉塞状態の発生の有無を検出する排気閉塞状態検出手段と、
前記燃焼炎温度検出手段と前記排気閉塞状態検出手段の検出出力に基づいて前記バーナの燃焼を制御するコントローラとを備え、
前記燃焼炎温度検出手段により検出される温度である第1検出温度が設定値より低くなったときに前記バーナの燃焼が停止され、かつ、
前記第2検出温度が高いときには前記バーナの加熱量が大きく、また、前記第2検出温度が低いときには前記バーナの加熱量が小さいと判定するように構成されている燃焼制御装置であって、
前記第2検出温度の値が大きく、前記バーナの加熱量が大きいほど、前記バーナの燃焼を停止させる指標となる、前記第1検出温度の前記設定値が大きい値に設定されるように構成されていること
を特徴とする燃焼制御装置。
【請求項2】
前記第1検出温度の前記設定値が、前記バーナの点火開始初期においては、所定の安定時間が経過した時点で設定されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記設定値が既に設定されている状態から、前記第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、前記設定値を変更設定するにあたって、
所定の遅延時間が経過した時点で、前記設定値の変更設定が行われるように構成されていること
を特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記設定値が既に設定されている状態から、前記第2検出温度の値が大きくなるのに対応して、前記設定値を変更設定するにあたって、
所定の過渡時間は、前記設定値が変更設定すべき値よりも所定レベル小さい値に変更設定され、その後に前記設定値が本来変更設定すべき値に設定されるように構成されること
を特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202651(P2012−202651A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69490(P2011−69490)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】