説明

燃焼加熱器

【課題】保炎性を向上し安定した燃焼加熱を実現する。
【解決手段】本発明の燃焼加熱器100は、加熱板118と、加熱板に対向配置された配置板120と、加熱板と配置板の外周に沿って配され、加熱板と配置板とで空間を囲繞する外周壁122と、加熱板と配置板の間に配置された仕切板124と、加熱板、配置板、および外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室126と、配置板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続し燃料ガスを導く導入路128と、加熱板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続し燃焼室から排気ガスを当燃焼加熱器外に導くと共に、仕切板を通じて排気ガスの熱で燃料ガスを予熱する導出路130と、導入路と燃焼室とが連続する位置において、燃料ガスの流路を狭める突起部152と、を備え、突起部は、導入路から燃焼室への燃料ガスの流れ方向に厚みが漸減する漸減部位156を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱する燃焼加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃焼させた燃焼熱で輻射体を加熱し、輻射体の輻射面からの輻射熱で、工業材料や食品等を加熱する燃焼加熱器が広く普及している。このような燃焼加熱器について、例えば、輻射強度を向上させるために輻射面に輻射率の高い材料、形状を適用する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、燃料ガスが流出して燃焼する炎孔の出口近傍に、燃料ガスの流路が拡大するように渦流部を設けて渦流を発生させることで、保炎効果を増大させる技術も提案されている(例えば特許文献2)。
【0004】
さらに、熱効率を向上させた燃焼加熱器が提案されている。この燃焼加熱器は、燃料ガスの導入路から、燃焼室および燃焼後の排気ガスの導出路までを密閉構造とし、導入路と導出路とを隣接させることで、排気ガスの熱で燃焼前の燃料ガスを予熱して熱効率を高めている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−324925号公報
【特許文献2】特開平6−147431号公報
【特許文献3】特開2007−212082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献3のような燃焼加熱器では、燃焼室近傍の燃料ガスの導入路において、複数の突起部が流路を狭めることで、消炎距離を短くして逆火を防止している。そして、燃焼室に流出した燃料ガスは、燃焼室の壁面に衝突して壁面に沿って上方へ流れた後、壁面から離れる向きに折り返す。この折り返しにおいて燃料ガスの流速が低下することで、保炎性を向上させている。
【0007】
しかし、燃料ガスが壁面に衝突するより以前に、複数の突起部の隙間から燃焼室に流入する際、流路が段階的に拡大するため、特許文献2と同様、渦流が形成される。しかし、特許文献3のような燃焼加熱器では、燃焼室に流入するとき発生する渦流は、燃料ガスの壁面への衝突が弱まる要因となる。そのため、本来、保炎すべき壁面近傍において折り返す燃料ガスの流れが安定せず、燃焼加熱器の保炎性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、保炎性を向上し安定した燃焼加熱を実現可能な、燃焼加熱器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の燃焼加熱器は、加熱板と、加熱板に対向配置された配置板と、加熱板と配置板の外周に沿って配され、加熱板と配置板とで空間を囲繞する外周壁と、加熱板と配置板の間に配置された仕切板と、加熱板、配置板、および外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、配置板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、加熱板と仕切板とを側壁とし燃焼室に連続して燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、仕切板を通じて排気ガスの熱で燃料ガスを予熱する導出路と、導入路と燃焼室とが連続する位置において、燃料ガスの流路を狭める突起部と、を備え、突起部は、導入路から燃焼室への燃料ガスの流れ方向に厚みが漸減する漸減部位を有することを特徴とする。
【0010】
突起部は、導入路において仕切板にのみ設けられてもよい。
【0011】
突起部は、導入路において配置板にのみ設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃焼加熱器によれば、保炎性を向上し安定した燃焼加熱を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃焼加熱器の構造を説明するための組立図である。
【図2】図1のAA断面図である。
【図3】複数の突起部を説明するための説明図である。
【図4】渦流を説明するための説明図である。
【図5】CO排出濃度の低下を説明するための説明図である。
【図6】複数の突起部に関する他の例を説明するための説明図である。
【図7】複数の突起部を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
従来の燃焼加熱器では、燃焼を終えた排気ガス(燃焼ガス:燃焼後のガス)を回収せずにそのまま周囲の環境に排気しており、排気ガスの熱を利用できないため熱効率が低く、また、排気ガスの熱によって装置周辺の環境の温度が上昇したり、排気ガスが充満してしまったりして、労働環境の改善を図れない場合があった。これに対して、密閉式の燃焼加熱器は、本体容器内に、燃焼室と、燃料ガス(未燃焼ガス:燃焼前のガス)の導入路と、排気ガスの導出路とが密閉された状態で形成され、導出路を流れる排気ガスの熱で導入路を流れる燃料ガスを予熱することで、燃焼室において超過エンタルピ燃焼を実現する。このような燃焼加熱器は、排気ガスの熱を回収しているので、熱効率が高く、排気ガス自体も回収されるため、労働環境を損なわない。また、炎口が不要なため、輻射面の面積は減少せず輻射強度が高いといった利点も有する。
【0016】
このような密閉式の燃焼加熱器には、スイスロール型やディスク型が提案されている。スイスロール型では、本体容器の中心に燃焼室が形成され、導入路と導出路とが渦巻状に並列して配置される。このスイスロール型の燃焼加熱器は、形状が複雑なため製造コストが高くなってしまうといった難点がある。これに対して、ディスク型の燃焼加熱器は、伝熱を担う仕切板が、本体容器を構成する一対の薄板(加熱板、配置板)よりも小型の薄板からなり、加熱板と配置板の間に空隙を設けて配置するといった簡易な構成で、導入路と導出路とに熱交換をさせている。また、ディスク型の燃焼加熱器は、スイスロール型に比べ、輻射面を有する加熱板の形状の自由度が高く、スイスロール型のように略円形に限られず、用途に応じて、楕円形や矩形に形成することができる。さらに、ディスク型の燃焼加熱器は、燃焼室の配置が本体容器の中央に限られないため、スイスロール型よりも燃焼室自体の体積を大きくでき、燃焼負荷率(燃焼室内の単位体積あたりの発熱)を抑えることができる。
【0017】
ところで、燃焼室近傍の燃料ガスの導入路では、複数の突起部が流路を狭め、代表距離を消炎距離より短くすることで逆火を防止している。しかし、複数の突起部の隙間から燃焼室に流入する際、流路が段階的に拡大するため、渦流が形成される。このような渦流は、本来、保炎すべき外周壁の壁面近傍における燃料ガスの流れを不安定にするため、外周壁の壁面近傍における保炎性が低下してしまう。
【0018】
そこで、本実施形態の燃焼加熱器100では、保炎性を向上し安定した燃焼加熱を目的とする。以下、このような目的を実現可能な燃焼加熱器100の詳細な構成を説明する。
【0019】
(第1の実施形態:燃焼加熱器100)
図1は、燃焼加熱器100の構造を説明するための組立図であり、図2は、図1のAA断面図である。図2(a)に示すように、燃焼加熱器100は、加熱板118と、配置板120と、外周壁122と、仕切板124と、燃焼室126と、導入路128と、導出路130と、第1配管部132と、第2配管部134とを含んで構成される。なお、本実施形態では、燃焼加熱器100は、外形が220mm×140mm程度のものを例に挙げて説明する。ただし、燃焼加熱器100の外形は、かかる大きさに限定されず、任意の大きさに設定することができる。
【0020】
本実施形態における燃焼加熱器100は、本体容器に、都市ガス等と燃焼用酸化剤ガスとしての空気とが予め混合された燃料ガス(予混合ガス)が供給される予混合タイプとするが、かかる場合に限定されず、燃焼室126や燃焼室126の直前の導入路128において両者が混合して拡散燃焼を行う拡散タイプであってもよい。
【0021】
加熱板118および配置板120は、対向して配置され、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅(真鍮)等で形成され、互いに略平行(本実施形態における超過エンタルピ燃焼を起こさせるための実質的な平行)に配置される。また、加熱板118および配置板120は、燃焼室126で生成された燃焼熱で加熱される輻射体としても機能する。ただし、配置板120は、輻射体として機能する構成に限らず、例えば、断熱構造としてもよい。
【0022】
外周壁122は、上面視において、内周がトラック形状(略平行な2つの線分と、その2つの線分をつなぐ2つの円弧(半円)からなる形状)に、外周が矩形に形成され、加熱板118と配置板120の外周に沿って配され、加熱板122と配置板120とで空間を囲繞する。また、外周壁122の外周面を輻射面として用いることもできる。
【0023】
燃焼加熱器100の本体容器は、外周壁122と、外周壁122の上下を加熱板118および配置板120で閉塞してなるもので、外周面(外周壁122の外表面)の面積より上下壁面(加熱板118および配置板120の外表面)の面積の方が大きい。つまり、上下壁面は、本体容器の外表面の大部分を占める。そして、この上下壁面のうち、例えば上側の面が輻射面となり、燃焼室126で燃料ガスが燃焼すると、輻射や空気の対流によって輻射面から熱が伝達して被加熱物が加熱される。本実施形態においては、上下壁面のうち上側の面(加熱板118の上面)を輻射面とするが、かかる場合に限定されず、下側の面(配置板120の下面)を輻射面としたり上下壁面の両面を輻射面としたりしてもよい。
【0024】
仕切板124は、加熱板118および配置板120よりも外形が小さく、外周壁122の内周面に沿った形状に形成され、加熱板118および配置板120の間で、加熱板118および配置板120と略平行に配置される。仕切板124と加熱板118および配置板120との間にはそれぞれ空隙が形成される。また、仕切板124は、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される。かかる仕切板124と加熱板118および配置板120は、間に空隙が形成されれば、傾いて対向配置されてもよい。また、仕切板124、加熱板118および配置板120は、その厚みに制限はなく、平板に限らず凹凸に形成されてもよい。
【0025】
ここで、図1の組立図を用いて、加熱板118、配置板120、外周壁122および仕切板124の位置関係を説明する。配置板120には仕切板124が配置され、外周壁122が仕切板124と重畳しないように配置板120に重ねられる。詳細には、図2(a)に示すように、配置板120が第1配管部132の端部に固定されるのに対し、仕切板124は第1配管部132より突出している第2配管部134の端部に固定され、第1配管部132の端部と第2配管部134の端部の差分だけ、配置板120と仕切板124とが離隔することとなる。このとき、仕切板124の側面と、外周壁122の円筒状の内周面との間には燃焼室126としての空隙が形成される。最後に、外周壁122に、加熱板118が重ねられる。
【0026】
燃焼室126は、外周壁122、加熱板118、および、配置板120で囲繞される空間内に配置される。また、燃焼室126は、仕切板124の外周端部に面しており、外周壁122より内側に外周壁122に沿って形成される。このように外周壁122に沿って燃焼室126を形成する構成により燃焼室126の体積を十分に確保でき、また、スイスロール型に比べ燃焼負荷率を低くできる。燃焼室126の任意の位置には、着火装置(図示せず)が設けられる。
【0027】
図2(a)に示すように、本体容器内では、厚み方向(加熱板118の上面に直交する方向)に、導入路128と導出路130とが重ねて形成される。
【0028】
導入路128は、配置板120と、仕切板124とを側壁とする、配置板120と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室126に連続して配され、本体容器中央に流入した燃料ガスを燃焼室126に放射状に導く。
【0029】
導出路130は、加熱板118と、仕切板124とを側壁とし、燃焼室126に連続して配され、燃焼室126から排気ガスを本体容器の中央に集約して当該燃焼加熱器100外に導く。また、図2(a)に示すように、本体容器内では、厚み方向に、導入路128と導出路130とが重なって形成されているので、仕切板124を通じて排気ガスの熱を伝達し、燃料ガスを予熱することができる。
【0030】
第1配管部132は、導入路128に挿通し、燃料ガスを当該燃焼加熱器100内に導く。具体的に、配置板120の中心部には、第1配管部132の内径と同一径の孔158が設けられており、この孔158の内周部分に第1配管部132が接続されている。
【0031】
第2配管部134は、第1配管部132内部に配される。すなわち、第1配管部132と第2配管部134とで二重管を形成する。また、第2配管部134は、導出路130に挿通し、排気ガスを当該燃焼加熱器100外に導く。具体的に、仕切板124の中心部には、第2配管部134の外径と同一径の孔160が設けられており、この孔160の内周部分に第2配管部134が嵌合される。さらに、第2配管部134は、排気ガスの熱を、第1配管部132を流れる燃料ガスに伝達する役割も担う。
【0032】
本実施形態においては、第1配管部132の内部に第2配管部134が配されるが、かかる場合に限定されず、第1配管部132および第2配管部134を加熱板118側から導入路128および導出路130に挿通させ、第2配管部134の内部に第1配管部132が配されてもよい。
【0033】
ここで、燃料ガスおよび排気ガスの流れを具体的に説明する。図2(a)の円部分を拡大した図2(b)中、白抜き矢印は燃料ガスの流れを、灰色で塗りつぶした矢印は排気ガスの流れを、黒色で塗りつぶした矢印は熱の移動を示す。第1配管部132に燃料ガスを供給すると、燃料ガスは配置板120の中心部から導入路128に流入し、水平方向に放射状に広がりながら燃焼室126に向けて流れる。そして、燃料ガスは、燃焼室126において外周壁122に衝突し、燃焼した後、高温の排気ガスとなり、排気ガスは加熱板118に伝熱した後、燃焼室126から導出路130を通じて第2配管部134に流入する。
【0034】
仕切板124は比較的、熱伝導し易い素材で形成されており、導出路130を通過する排気ガスの熱は、仕切板124を介して導入路128を通過する燃料ガスに伝わる。ここでは、導出路130を流れる排気ガスと導入路128を流れる燃料ガスとが、仕切板124を挟んで対向流(カウンタフロー)となっているため、排気ガスの熱で燃料ガスを効率的に予熱することが可能となり、高い熱効率を得ることができる。このように燃料ガスを予熱してから燃焼する、所謂、超過エンタルピ燃焼によって、燃料ガスの燃焼を安定化し、不完全燃焼によって生じるCO(一酸化炭素)の濃度を極低濃度に抑えることができる。
【0035】
さらに、燃焼室126において安定した燃焼を可能とするために、導入路128と燃焼室126との境界において、排気ガスの流れに垂直な断面形状(以下、流路断面形状と称す)における代表寸法は、火炎を導入路128側に通さない(燃焼反応が導入路128の方に伝播されない)程度の消炎距離(消炎等価径を含む)を考慮し、消炎距離以下とするとよい。ここで、代表寸法は、燃料ガスが燃焼室126に流入する直前の流路の断面形状によって定まる寸法である。例えば、流路断面形状が円形状である場合には、代表寸法は円形断面の直径を指し、流路断面形状が円形状以外である場合には、代表寸法は断面の水力相当直径を指す。水力相当直径Dは、4×流路断面積/ぬれ縁長さで求められる。ぬれ縁長さは、流路断面における、燃料ガスが接触する壁(配置板120、仕切板124)部分の長さを示す。
【0036】
例えば、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離以下とすれば、火炎が導入路128内に侵入することがなくなり、燃焼が安定化される。しかし、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離以下で均一にするためには、配置板120と仕切板124の面精度や取り付け精度を高める必要がある。そこで、本実施形態においては、配置板120と仕切板124との距離を消炎距離よりも大きくしてもよいこととし、仕切板124の下面(配置板120側)の燃焼室126近傍に配置板120と当接する複数の突起部152を所定の間隔Lを空けて配置する。
【0037】
図3は、複数の突起部152を説明するための説明図である。図3(a)は、破線で示す加熱板118を透過した燃焼加熱器100の斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のBB断面を矢印の方向から見た説明図である。図3(b)において、複数の突起部152の構造の理解を容易にするため、突起部152のうち、仕切板124で隠れている部分を破線で示す。また、矢印154は燃料ガスの流れの向きを示す。導入路128は、仕切板124に設けられた複数の突起部152によって、流路断面が狭められている。燃料ガスは、導入路128のうち、図2(b)の部分拡大図および、図3(b)の説明図で示すように、隣接する突起部152の間の空隙を通じて燃焼室126に流入する。このとき、突起部152同士の間隔Lが流路断面形状の代表寸法となる。
【0038】
ここで、燃料ガスの消炎距離dは、管壁モデルの径の大きさで表されるものであり、式(1)により求められる。
d=2λ・Nu1/2/Cp・ρu・Su …式(1)
式(1)において、λは熱伝導率、Nuはヌセルト数、Cpは定圧比熱、ρuは燃料ガスの密度、Suは燃焼速度である。
【0039】
本実施形態の燃焼加熱器100は、上述した代表寸法(突起部152同士の間隔L)が消炎距離d以下となるように設計されているため、燃焼室126において安定した燃焼が可能となる。
【0040】
このような燃焼加熱器100において、本来保炎すべき外周壁122近傍とは異なる箇所における渦流の発生が保炎性を低下させる現象が生じていた。かかる現象を図4を用いて説明する。
【0041】
図4は、渦流を説明するための説明図である。図4(a)では、図2におけるCC断面図のうち、2つの突起部152の近傍部分のみを示す。また、図4(b)では、従来の燃焼加熱器における、図4(a)に対応する断面図を示す。さらに、図4(a)、(b)では燃料ガスの流れを矢印で示す。
【0042】
図4(b)に示すように、従来の突起部10では、燃料ガスが、複数の突起部10の隙間から燃焼室126に流入するとき流路が急峻に拡大するため、渦流が形成されてしまう。そうすると、上述したように、本来、外周壁122に燃料ガスが衝突する前に流れが弱まってしまい、保炎性が低下する。その結果、不完全燃焼のCOの排出濃度が上昇してしまう可能性があった。
【0043】
そこで、本実施形態の燃焼加熱器100は、図4(a)に示すような形状の突起部152を備える。突起部152は、導入路128と燃焼室126とが連続する位置において、燃料ガスの流路128aを狭める。また、突起部152は、突起部152の燃焼室126側において、導入路128から燃焼室126への燃料ガスの流れ方向に厚みが漸減する、図4(a)中破線で示した漸減部位156を有する。突起部152は、燃料ガスの流れ方向に対して流線形状を成している。
【0044】
かかる構成により、燃料ガスは、外周壁122に衝突するまで渦量が生じ難く、外周壁122に衝突後、外周壁122近傍(図4(a)に一点鎖線の楕円158で示す)において折り返す燃料ガスの流れが安定する。そのため、燃焼加熱器100は、外周壁122近傍において高い保炎性を有する。
【0045】
図5は、CO排出濃度の低下を説明するための説明図である。図5では、燃料ガスの当量比が一定の場合における燃料ガスの流速と、排出ガスにおけるCOの排出濃度との大凡の関係を示す。漸減部位156を有さない突起部を設けた場合、凡例170のように、燃料ガスの流速が低い低負荷になると、COの排出濃度は、自主規制値である100ppmに近づく、もしくは超えてしまう。
【0046】
しかし、本実施形態のように漸減部位156を有する突起部152を設けた場合、凡例172に示すように、燃焼加熱器100は、特に低負荷においても安定して燃焼加熱を行うことが可能となり作動可能な負荷範囲を拡大できる。
【0047】
図6は、複数の突起部152に関する他の例を説明するための説明図である。図6(a)に示すように、突起部152は、燃焼室126側が燃焼室126と反対側よりも幅が細く形成されてもよい。また、図6(b)に示すように、燃焼室126と反対側が燃焼室126側よりも幅が細く形成されてもよい。さらに、図6(c)に示すように、突起部152は、コーナにRが設けられているのみでもよい。
【0048】
いずれの場合であっても、突起部152は、突起部152の厚みが外周に垂直な方向に漸減する漸減部位156を有する。そのため、燃料ガスは、外周壁122に衝突するまで渦流が生じ難く、燃料ガスの流れが安定し保炎性が向上する。
【0049】
図7は、複数の突起部152を説明するための説明図である。図7では、突起部152の形状を説明するため、仕切板124の突起部152が配される部位を切り出し、突起部152が上面となる向きの斜視図を示す。
【0050】
突起152の先端部分の漸減部位156は、図7に示すように、複数の突起152の間の隙間が矢印158の方向に向かって漸増すると共に、突起152の高さが漸減するように丸みを帯びている。
【0051】
換言すれば、漸減部位156は、突起部152の幅方向に厚みが漸減する部分に限定されず、突起部152の高さ方向に厚みが漸減する部分であってもよい。また、漸減部位156は、突起部152の孔160側によって絞られた燃料ガスの流路を、当該漸減部位156に沿って燃焼室126側に向かって広げるものであればよい。
【0052】
かかる構成により、燃料ガスの流れが、突起部152からより剥離しにくくなり、燃焼加熱器100は、不要な渦流の発生をさらに抑制し、本来保炎すべき外周壁122近傍における渦流の発生を安定化することが可能となる。
【0053】
また、図4(b)に示す従来の突起部10に比べて、本実施形態における突起部152は角がないため、プレス加工によっても容易に形成可能となり、燃焼加熱器100は製造コストを低減できる。
【0054】
本実施形態において、突起部152は、導入路128において仕切板124にのみ設けられている。そのため、突起部152を形成するための加工は仕切板124にのみ施せばよく、配置板120と仕切板124両方に設けられている場合に比べて、燃焼加熱器100は製造コストを低減できる。
【0055】
また、突起部152は、導入路128において配置板120にのみ設けられてもよい。かかる構成により、仕切板124を薄板として容易に加工することができ、燃焼加熱器100は製造コストを低減することが可能となる。
【0056】
以上、説明した燃焼加熱器100によって、保炎性を向上し安定した燃焼加熱を実現可能となる。
【0057】
また、上述した実施形態では、燃焼室126は、外周壁122に沿って形成されるとしたが、かかる場合に限らず、燃焼室126は、外周壁122、加熱板118、および配置板120で囲繞される空間内であればよい。ただし、排気ガスによる燃料ガスの予熱効果を十分に確保するため、燃焼室126は、例えば、加熱板118と仕切板124との間の空間、または仕切板124と配置板120との間の空間のうち、配置板120に設けられた孔158から外周壁122までの中間位置より外周壁122に近い空間のいずれかの位置に設けられることが望ましい。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、燃料を燃焼させて被加熱物を加熱する燃焼加熱器に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 …燃焼加熱器
118 …加熱板
120 …配置板
122 …外周壁
124 …仕切板
126 …燃焼室
128 …導入路
128a …流路
130 …導出路
152 …突起部
156 …漸減部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱板と、
前記加熱板に対向配置された配置板と、
前記加熱板と前記配置板の外周に沿って配され、該加熱板と該配置板とで空間を囲繞する外周壁と、
前記加熱板と前記配置板の間に配置された仕切板と、
前記加熱板、前記配置板、および前記外周壁で囲繞される空間内に配置された燃焼室と、
前記配置板と前記仕切板とを側壁とし前記燃焼室に連続して燃料ガスを導く導入路と、
前記加熱板と前記仕切板とを側壁とし前記燃焼室に連続して該燃焼室から排気ガスを当該燃焼加熱器外に導くと共に、該仕切板を通じて該排気ガスの熱で該燃料ガスを予熱する導出路と、
前記導入路と前記燃焼室とが連続する位置において、燃料ガスの流路を狭める突起部と、を備え、
前記突起部は、前記導入路から前記燃焼室への燃料ガスの流れ方向に厚みが漸減する漸減部位を有することを特徴とする燃焼加熱器。
【請求項2】
前記突起部は、前記導入路において前記仕切板にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼加熱器。
【請求項3】
前記突起部は、前記導入路において前記配置板にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼加熱器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−15251(P2013−15251A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147897(P2011−147897)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】