説明

燃焼器ライナパネルの補修及び交換方法

【課題】 本発明は、高バイパスターボファンエンジンの燃焼器内側ライナパネルの補修に関する。
【解決手段】
本方法は、内側ライナ組立体(48、80)の部分に亀裂が存在するか否かを確定するために燃焼器(45)を検査した後、亀裂のある内側ライナ組立体(48、80)を燃焼器(45)から取り外す。次に、多孔パネル領域(84)、後方リップ領域(86)、後方シールフランジ領域(87)、及び後方パネル支持レッグ(88)から構成される内側ライナ組立体(48、80)の一部分が、該内側ライナ組立体(48、80)から分離される。後方シールフランジ領域(87)と共に多孔パネル領域(84)及び後方リップ領域(86)は廃棄されて、新しい後方リップ領域/後方シールフランジ領域及び多孔パネル領域が提供される。新しい部品は、これらの部品が改修された後に、後方パネル支持レッグ(88)と前方ボルトフランジ領域(81)の後方にある内側ライナ組立体に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器ライナパネルを補修するための方法に関し、より具体的には、大型高バイパスターボファンエンジンの燃焼器内側ライナパネルの補修に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に動力を与えるのに使用されるタービンエンジンは通常、空気を圧縮するための圧縮機セクション、加圧空気を燃料と混合しこれを燃焼させて高温ガスを生成するための燃焼器セクション、圧縮機及び他の航空機備品を作動させるために高温燃焼ガスからエネルギーが取り出されるタービンセクション、及び航空機を推進させる推力を与えるために低エネルギー残留高温燃焼ガスが通る吐出セクションを含む。ターボファンタービンエンジンは更に、通常圧縮機の前に配置される大型ファンを含む。前方ファンの場合では、ファンは、エンジンのタービンセクションにおいて高圧タービンの後方に配置される第2のタービン(通常低圧タービン)によって駆動される。通常は超音速飛行で使用される低バイパスターボファンエンジンでは、ファンを通過する空気の大部分は圧縮機に流入し、推力を補うためにオーグメンタが付加される。通常亜音速飛行で使用される高バイパスターボファンエンジンでは、より多くの空気はエンジンの周囲を流れて(バイパスして)、推力に寄与すると同時に特定の燃料消費量を低減させる。本発明は、タービンエンジンの燃焼器セクションに関する。本発明は、具体的には現在ゼネラル・エレクトリック社によって製造されているGE−90、高バイパスターボファンタービンエンジンで直ちに使用されるが、他の高バイパスタービンエンジン及び低バイパスタービンエンジンを含む他のタービンエンジンに対しても適用可能である。
【0003】
上述のように、燃焼器において、燃料は加圧空気と混合されて燃焼される。燃焼器は、エンジン内で圧縮機の後方に配置される。圧縮機を出た加圧空気は、燃焼器内へ入る。加圧空気は、低静圧高速度で圧縮機を出る。圧縮機の後端に位置するディフューザは、空気速度を低下させて空気の静圧を増大させる。燃焼器入口における高静圧及び低速度によって、燃焼室内での混合が改善される。燃料は、燃焼室に入る前にスワールカップに流入して計量される。
【0004】
燃焼器は、通常幾つかの個々の要素からなる組立体である。ドーム組立体は、火炎を安定させるブラフボディを定める。内側及び外側カウル、及び内側及び外側ライナは通常、その内径及び外径においてドームにボルトで固定される。ボルト及び固定ナットは、これらが分離しないように仮付け溶接される。ドーム構造は、単一のスペクタクルプレート、すなわち金型成形されたシートメタル部品からなる。複数のスワールカップが、燃料が空気と混合される時に燃料を旋回させるためにドーム組立体内に含まれる。点火装置は、燃料−空気混合体を点火してこれを燃焼させるために備えられる。内側及び外側燃焼器ライナは通常、個別に機械加工された鍛造品又は鋳造品から製作されて、一体的に溶接又はボルト固定される。
【0005】
燃焼器ライナは、高温燃焼ガスを高圧タービンに導く、通常は環状のほぼ閉じたダクトを形成する。これらの燃焼器ライナは、3000°F又はそれ以上となり得る燃焼温度に耐える必要がある。これらの条件を克服するために、特殊な高温合金が利用される。各燃焼器は、内部及び外部構造 内に配置される。冷却空気は、内側ライナ及び内部構造と外側ライナ及び外部構造との間の環状領域内を燃焼器の外面に沿って流れる。燃焼器構造の耐久性を更に助けるために、冷却空気は、燃焼器ライナの複数の冷却孔を通過して導入される。加えて、希釈空気が、反応気体を更に混合させるためにライナ内の幾つかの列の孔を通過して導入される。付加的に、ライナ内面、即ち高温燃焼ガスに近接する表面は、断熱皮膜系で被覆される。多くの断熱皮膜系が存在するが、これらのいずれかを使用することができる。断熱皮膜系は通常、ライナの表面を高温燃焼ガスから断熱するために、金属ボンドコート及びセラミックトップコートを含む。
【0006】
燃焼器ライナは、単一パネル又は一体的に溶接された複数の燃焼器ライナパネルから形成される。ライナは、前方ボルトフランジによってドーム組立体に取り付けられる。最近、エンジンで使用した後の内側ライナは、後方パネル組立体及び多孔冷却区域からなるライナの2つの領域で亀裂が生じている。多孔冷却区域の亀裂は、ドーム内に配置された燃料カップに沿って存在し、通常燃焼高温ストリークに関連する。後方パネルフランジ領域の亀裂は、高圧タービン第1段ノズルに一致する高圧ノズルに近接したライナ部分に位置する、ライナの後方リップ区域に存在する。亀裂は、その領域でライナの低サイクル疲労寿命を低下させる円周方向の大きな温度勾配によって引き起こされる低サイクル疲労に起因する場合がある。従来、これらの亀裂は、溶接又は他の合金補修プロセスによって補修されてきた。溶接補修は、寸法上及び作業上の要件を取り戻すために追加の処理を必要とし、これは一定水準の亀裂においてコスト的に過大となる。加えて、多孔冷却区域での孔の修復は広範囲に及ぶので、亀裂の数及び位置により、溶接補修が実現不可能になる。後方パネルフランジ領域においては、亀裂の補修は、後方リップの変形及び収縮を生じる。ライナの出口スロート直径は重要な寸法であるので、この補修方法は容認できない。従来、他の代替策は、亀裂のあるライナを廃棄して、新しいライナと交換することであった。通常、ライナは、GTD−222から作られ、これは重量%で、約22.5%のクロム、約14.0%のコバルト、約2.3%のチタン、約1.2%のアルミニウム、約2.0%のタングステン、約0.8%のコロンビウム、及び約1.0%のタンタル、及び残余のニッケル及び付随的不純物を持つ公称組成を有するが、ライナはこれに限定されず、他の耐酸化性高温合金もまた使用することができる。GTD−222は、この用途に使用することができる他の耐酸化性高温合金と同様に高価な合金であり、その製造に含まれる処理が、ライナの価格を高めている。従って、高価なライナを可能な限り多く回収して交換材料を可能な限り制限するように、これらのライナを補修する方法を開発することが望ましい。
【0007】
ライナの補修方法は、Farmer他への特許文献1で説明される。この特許は、燃焼器内で損傷したパネルを交換するための容認できる方法を説明している。
【特許文献1】米国特許6,568,079号公報
【特許文献2】米国特許6,581,285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この補修方法は、後方パネル組立体の一部の補修には対応できず、廃棄されて交換される。後方パネル組立体は、後方パネル、後方リップ、シールフランジ区域、及び後方パネル支持レッグを含む。支持レッグは、内側ライナと構造体との間の環状領域にわたりエンジン内で半径方向内側に延びて、内部構造にボルトで固定される。後方パネル組立体の一部分が亀裂損傷を受けても、通常後方パネル支持レッグには影響がない。必要とされるものは、後方パネル支持レッグをスクラップにする必要が無く、後方パネル組立体の損傷部分だけを交換することによって内側ライナの後方パネルを補修する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガスタービンエンジン燃焼器の燃焼器ライナの後方パネル組立体の損傷した多孔領域を交換すると同時に、燃焼器の前方ボルトフランジ及び後方パネル支持レッグを再使用する方法を提供する。燃焼器は、ナゲットによって接続されてライナ組立体を形成する少なくとも2つのパネルを含む。一対のパネルの分離を意味するのに使用される用語であるナゲットが少なくとも1つ存在する。内側及び外側ライナは、ドーム組立体によって接合されて環状領域を形成し、その一部が燃焼器の燃焼域を定め、更に燃焼域から高圧タービンノズルまでの高温燃焼ガスの流路を形成する。燃焼器内側ライナの後方パネル組立体は、後方リップから内側ケースへ向けて半径方向に延びる後方パネル支持レッグを含む。後方パネル支持レッグは、燃焼器をボルト締結手段により内部構造に固定する。後方パネル支持レッグは、高温ガス流路内には存在しないので、高温ガス流路に沿って存在し流体境界の一部を形成する多孔パネル及び後方リップが受けるような、熱誘起亀裂を生じない。
【0010】
本発明の補修は、多孔パネル及び後方リップの損傷領域の少なくともほぼ全てを含む燃焼器ライナの後方セクションから材料の360°ストリップを切り取る段階を伴う。この除去は、後方パネルのすぐ前方にあるナゲットの後方で行われる。エンジン設計に依存するが、この領域はまた、多孔パネル領域を含む場合がある。ライナ組立体はまた、後方パネル支持レッグがケースに向かって半径方向に延びるシールフランジ区域に近接した位置で切断される。この切断は、内側ライナ組立体の後方パネル及び後方リップ区域の除去を達成する。次いで、後方パネル支持レッグが、除去された後方パネル組立体から再使用のために切断され、除去された後方パネル組立体の残りは廃棄される。
【0011】
次に、除去された後方パネルと同一の幾何学構成を有する新しい後方パネルが準備される。新し後方リップ及びシール面は、後方パネルの後端に接合される。次いで、後方パネル組立体から事前に取り外されていた後方パネル支持レッグは、新しい後方リップ及びシール面に接合されて、交換後方パネル組立体を形成する。次に、新しい後方パネル組立体は、後方パネル組立体の軸方向ですぐ前方のナゲット位置において内側ライナ組立体の前方部分に接合することができ、後方パネル組立体の後方部分は、燃焼器リーフシールと後方パネル組立体の後方部分との間で切断が行われた燃焼器後部に接合することができる。
【0012】
本発明の利点は、後方パネル組立体の損傷部分を内側ライナ組立体から除去することができると共に、後方パネル組立体及び前方パネル並びに前方ボルトフランジの非損傷部分を再使用することができることである。これにより有意なコスト削減がもたらされる。
【0013】
本発明の別の利点は、本方法が、除去されたものと同じ材料の後方パネル、後方リップ及び後方シールの交換を可能とし、或いは、後方パネル、後方リップ及び後方シールの内のいずれか1つ又は全てを、ナゲット材料及び後方パネル支持レッグ材料に接合できる異種材料と交換できることである。交換材料は、除去された材料よりも、より安価な材料で、及び/又はより耐久性があり、しかも適切な特性を備えたものとすることができ、或いは交換材料は、除去された材料よりも優れた材料特性を有することができる。
【0014】
本発明の他の利点は、本方法が、内側ライナリーフシール接触面において磨耗した後方パネル組立体材料を交換できることである。
【0015】
本発明の更に別の利点は、本発明が、以前は補修することはコスト的に有利ではなく廃棄されていた内側ライナ組立体の部分を回収できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例証として示された添付図面を参照しながら、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
図1は、代表的な高バイパスタービンエンジン10の概略図である。エンジンの中心線を参照符号11で示し、エンジンシャフト26がこれに沿って位置付けられる。空気はエンジン10に流入し、前方ファン12を通過する。空気の一部はエンジンコア14に流入し、該空気が圧縮される圧縮機セクションに配向され、残りの空気はエンジンコアをバイパスする。加圧空気は、30A及び30Bで示す燃焼室に流入し、そこで加圧空気は、燃料噴射器18のスワールカップからの計量された燃料と混合されて点火される。高温燃焼ガスは燃焼室後部に向かって進み、タービンベーン又はノズル34を通過し、タービンロータ20内に流入する。タービンロータ20では、高圧燃焼ガスの経路内でタービンブレード32がタービンホイール又はディスク31上に取り付けられる。高圧ガスがタービンブレード32を推し進め、エンジンシャフト26を回転させるホイール31を回す。高温ガスは、タービンセクション20を通過した後、参照符号21でタービンセクションから出て、温度及び圧力が低下して吐出管に流入する。エンジンの前部は前端と呼ばれ、エンジンの吐出部は後端と呼ばれる。
【0018】
図2は、CFM−56エンジンで見られる代表的な燃焼室30(A又はB)の断面図である。この環状の燃焼室30は、全てのガスタービンエンジンで見られる燃焼室の典型的なものであり、説明のために上記で説明された高バイパスタービンエンジン10に限定されるものではない。燃焼室30は、ドーム組立体46にボルトで固定された、内側カウル42及び外側カウル44を含む。内側ライナ組立体48は、複数のパネル、パネル52、54、56、58、及び後方パネル組立体60から構成される。パネル52、54、56、58は、ナゲット62と呼ばれる継手の位置で一体的に接合されて示されている。後方パネル組立体60は同様に、ナゲット64においてその前方のパネルに接合されている。後方パネル組立体60は、燃焼器シール支持体36において高圧タービンセクション20と接触する。パネル51、54、56、58、59及び61は同様に、一体的に接合されて外側ライナ50を形成する。外側ライナ50及び内側ライナ44は、一体的に接合されて燃焼器45を形成する。燃焼器45は、74及び76の位置において内側ケーシング70と外側ケーシング72に取り付けられ、燃焼器45の内側ライナ48は、74の位置において内側ケーシング70にボルトで固定され、外側ライナ50は、図示のように任意の良都合な手段によって外側ケーシング72に取り付けられて燃焼室30を形成する。
【0019】
図3は、GE90エンジンの燃焼室の内側ライナ組立体80の断面図であり、該内側ライナ組立体は本発明を代表するものである。GE90の内側ライナ組立体80は、内側ライナ組立体80が複数のパネル及び後方パネル組立体から構成されていない点で、CFM56の内側ライナ組立体とは異なる。むしろGE90の内側ライナ組立体80は、CFM56エンジンの後方パネル組立体60に類似した構成を有し、GE90の内側ライナ組立体は、他の設計の内側ライナ組立体で見られるような複数のパネルがない。この差異にもかかわらず、本明細書で検討する補修技術は、GE90の内側ライナ組立体80、及びCFM56エンジンの後方パネル組立体60、並びに同一の形式の構成を有する他の設計の後方パネル組立体に適用可能である。内側ライナ組立体80は、前方ボルトフランジ81、ナゲット82、通常はドリル穿孔された複数の開口を有し、多孔パネル領域84と呼ばれる部分、多孔パネル領域の後方に取り付けられた後方リップ領域86と呼ばれる部分、後方リップ領域86から下方へ延びる後方シールフランジ領域87、及び後方シールフランジ領域87に取り付けられた後方パネル支持レッグ88を備え、後方パネル支持レッグ88は更に後方シールフランジ領域への取り付け部の遠位端を含み、この遠位端90は、内側ケーシングとの取付手段を含む。図3に示すように、取付手段は、開口/ボルト構成であり、遠位端のネジ開口は、内側ケーシング70を貫通して延びるボルトを受け入れる。多孔パネル領域84は、内側ライナ組立体にわたって高温燃焼ガス流に対してほぼ直角に延びる。後方パネル支持レッグ88は、図示のように後方シールフランジ領域87から下方に延びる。
【0020】
前述の説明のように、GE90の内側ライナ組立体80内、及び他のエンジン設計の同様な構成の後方パネル組立体内で亀裂が観察されている。これらの亀裂は、多孔パネル領域84及び後方シールフランジ領域87で最も多く観察され、場合によっては後方リップ領域86で観察される。現在の説明はGE90の内側ライナ組立体の特定区域を明らかにしているが、対応する区域が上記に説明したCFM56の後方パネル組立体60などの他のエンジン設計の後方パネル組立体内に存在し、これに対しても本検討が適用可能であることを当業者であれば理解するであろう。従来技術の実施は、後方パネル組立体の除去、及び組立体全体の交換、除去された部分の廃棄を必要としていた。このことは、2003年5月27日に公布され、本発明の譲受人に譲渡されたFarmer他への米国特許6,568,079号、及び2003年6月24日に公布され、同様に本発明の譲受人に譲渡されたEmilianowiczに付与された米国特許6,581,285号を用いて達成された。本発明は、後述のように、パネルを回収して、再使用の目的で内側ライナ組立体の一部、特に後方パネル支持レッグ88及び前方フランジ81を回収するのにこれらの特許の一部を利用するので、これらの特許の教示は引用により本明細書に組み込まれる。
【0021】
内側ライナ組立体80は、例えばGTD−222のような高価な材料から通常作られる複雑な部品である。これまでは、内側ライナ組立体80の効果的な補修に使用できる技術が無かったために、内側ライナ組立体全体の除去及び交換によって補修が行われた。本発明は、多孔パネル領域84、後方リップ領域86及び後方シールフランジ領域87を交換することによって、燃焼室から除去した後に内側ライナ組立体80を補修することを企図している。このことは、図3の接合部1において燃焼器から多孔パネル領域84を切り取って最初に除去することにより行われる。接合部1は、多孔パネル領域内の孔より前方で前方ボルトフランジ81までの任意の好都合の位置において切断することができ、且つナゲット82において形成することができる。しかしながら、再取り付けのための機械加工前処理は、この比較的薄い均一な厚さの金属においてより容易に形成されるので、通常、接合部1は、ナゲット82の後方で薄い均一な厚さの金属に沿って形成される。この除去は、従来技術で説明したように、任意の好都合な切断手段の使用によって実行される。しかしながら、多孔パネル領域84、後方リップ領域86、後方シールフランジ領域87、及び後方パネル支持レッグ88を含む接合部1の後方の内側ライナ組立体の部分を廃棄する代わりに、後方パネル支持レッグ88は、接合部3において円周方向に360度にわたり後方パネル組立体から切り取られる。接合部1と接合部3との間の内側ライナ組立体80の部分は、廃棄することができる。この部分は、多孔パネル領域84を含むだけではなく、後方リップ領域86と後方シールフランジ領域87も含む。
【0022】
後方パネル支持レッグ88は、再使用することができるが、後方シールフランジ領域87、後方リップ領域86、及び多孔パネル領域84は交換する必要がある。これらの品目は、交換部品として提供される。後方リップ領域86と後方シールフランジ領域87は、単一部品として形成され提供される。後方リップ領域86と後方シールフランジ領域87は、最初は単一部品として機械加工又は成形することができる。しかしながら、これらの品目は、現在では、個別に成形又は機械加工され、次いで、溶接又は蝋付けなどによって一体的に接合されて単一部品を形成する。この部品の製造方法は本発明の重要な特徴ではない。しかしながら、後方シールフランジ領域は、溶接継手3となるであろう接合部3において溶接準備を備える。同様に、後方パネル支持レッグ88は、接合部3において突き合わせ溶接準備を備え、後方パネル支持レッグ88及び後方シールフランジ領域87の接合を可能にし、接合されると溶接継手3を形成する。同様に、多孔パネル領域84の交換は、接合部1において内部パネル組立体への接合を可能にする前端において溶接準備を備える。もちろん内部パネル組立体もまた、上記の切断が行われた後に、接合部1において形成される溶接準備を有する。多孔パネル領域84が、内部パネル組立体に溶接されるときに、溶接継手は接合部1において形成される。多孔パネル領域84はまた、後方リップ領域86の前端内に成型又は機械加工される溶接準備に対応する後端において形成された溶接準備を有し、多孔パネル領域が、溶接が形成された後に溶接継手2となる接合部2において、後方リップ領域86への接合を可能にする。補修済み内側ライナ組立体を形成するためにこれらの構成要素を一体的に接合する順序は重要ではない。例えば、及び好ましくは、多孔パネル領域84は、内側ライナ組立体の前方部分に接合されて、溶接継手1を形成する。後方パネル支持レッグ88は、後方リップ領域86/後方シールフランジ領域87に接合されて溶接継手1を形成する。次に、溶接継手2を形成すると、内側ライナ組立体80が完成する。しかしながら、これらの要素を接合するための他の手順を用いて、内側ライナ組立体80を形成することができる。重要な検討事項は、補修済み内側ライナ組立体80の外形形状、全長、及び直径が、主要な寸法上の特徴の範囲内に入ること、或いは、さもなければ、燃焼室30(A又はB)を形成するための補修後の内側ライナ組立体80の燃焼器45への取り付け及び補修済み燃焼器の配置を達成することができないことである。
【0023】
新型の燃焼器ライナは通常、1つの材料から製造される。一例として、GE90用の燃焼器ライナは、GTD−222から製造される。燃焼器は通常、高温用ニッケル基超合金から製造される。改修プロセスの際には、後方パネル支持レッグ88及び前方ボルトフランジ81は再使用される。従って、GE90で使用されるような内側ライナ組立体80では、交換多孔パネル領域84、後方リップ領域86、及び後方シールフランジ領域87はまた、同一の材料から製造することができる。しかしながら、これらの交換部品用に使用される材料は、このように制限されない。交換多孔パネル領域84、及び後方リップ領域86/後方シールフランジ領域87は、それぞれ前方ボルトフランジ81(又は接合部1の前方の内側ライナ組立体80の部分)及び後方パネル支持レッグ88の材料に適合して接合することができ、且つ燃焼室30の厳しい環境及び温度に耐える好適な材料特性を有する任意の材料から製造することができる。従って、GE90では、交換多孔パネル領域84及び交換後方リップ組立体86は、GTD−222、又は例えばHS−188のような任意の適合性のある材料から製造することができ、HS−188は、重量%で、約22%のクロム、約22%のニッケル、約15.5%のタングステン、約3.5%の鉄、約2%のマンガン、約0.4%のケイ素、約0.1%の炭素、約0.9%のランタン、及び残余のコバルト及び付随的不純物からなる公称組成を有するコバルト基超合金である。HS−188プレートに対する仕様は、ASM−5608で示されている。運転条件に応じて、原材料の代わりに異種材料に置き換えることには、幾つかの利点がある。交換材料は、原材料よりも容易に利用可能とすることができる。交換材料は原材料よりもより優れた高温特性を有することができる。交換材料は原材料よりもより安価とすることができ、或いは、より優れた加工性を有すことができる。本実施形態での最終的な内側ライナ組立体80は、異種金属から構成される。
【0024】
改修は、内側ライナ組立体80から、前方ボルトフランジ81及び後方パネル支持レッグ88を取り外すことによって開始される。図3を参照すると、最初に、取り外された前方ボルトフランジ81及び後方パネル支持レッグ88は、清掃され検査される。
【0025】
推奨された補修方法が溶接によるものであるときには、溶接準備が後方パネル支持レッグ88並びに後方リップ領域86の予備部品に提供される。後方リップ領域86がその前端において多孔パネル領域84に溶接されて加工された交換予備部品を製造するときには、その前端に溶接準備を与える必要がある。任意の許容可能な方法によって溶接を実施することができるが、電子ビーム溶接は、許容可能な方法の1つであり、GE90後方パネル組立体に対するプレート組立体の電子ビーム溶接における許容可能な溶接準備を図4に示す。
【0026】
交換多孔パネル領域84及び後方リップ領域86/後方シールフランジ領域87が提供される。多孔パネル領域84の後端は、図4に示すような溶接継手を備え、好ましい溶接作業は電子ビーム溶接であるが、例えば、TIG溶接、レーザ溶接、又は他の許容可能な溶接プロセス並びに蝋付けといった他の接合プロセスを使用してもよい。多孔パネル領域の前端は、接合部1において溶接され、従来技術特許の米国特許6,568,079号及び米国特許6,581,285号で説明される方法で溶接できるように溶接準備が備えられる。溶接継手1を形成するための多孔パネル領域84の前端のこの溶接は通常、必須ではないが、最後に実施される溶接であり、内側ライナ組立体80の修復を完成する。図4は、本発明の交換後方リップ領域86/後方シールフランジ領域87を示し、該後方シールフランジ領域87は参照符号96において後方支持レッグに接合される。このことは図3に示され、ここでは、後方支持レッグ88が溶接継手3において後方リップ領域86/後方シールフランジ領域87に接合される。
【0027】
交換多孔パネル領域84は、成形プレート、鋳造品、鍛造品、シートメタルパネル又は加工(溶接)リングとすることができる。典型的には、多孔パネル領域84は、これらの形態のいずれか1つである。しかしながら、後方リップ領域86は通常、成形プレートからは製造されない。
【0028】
多孔パネル領域84は、通常は完了済みの最初の溶接の後方リップ領域86である所定位置に溶接される前又は後に、孔又は開口を作製することができる。開口は通常、EDM(放電加工)機械加工、又はレーザドリルによって形成されるが、一般的な機械加工法を用いてもよい。溶接作業に起因して完成した開口に変形が懸念される場合には、溶接後に任意の好都合な方法によって開口を形成してもよい。
【0029】
構成要素を接合して修復後方パネル組立体を形成するための好ましい方法は、電子ビーム溶接による図3の溶接部1、2、及び3の形成によるものであるが、レーザ溶接、タングステン不活性ガス溶接(TIG)、及び他のガス金属アーク溶接(GMAW)技術のような他の溶接方法も使用することができる。溶接に対して制限される接合方法はない。例えば、十分な継手を達成する蝋付けによる結合はまた、許容可能な技術である。内側ライナ組立体80の限界寸法を燃焼室30との取り付けに対して保持することができるように、任意の接合技術を使用して変形を制御することができる。
【0030】
高温燃焼ガスに曝される内側ライナ組立体80の表面は、断熱皮膜系を備えなければならない。断熱皮膜系は、常にこうした高温ガスに曝される内側ライナ組立体80を構成する個々の各構成要素84、86に適用することができるが、断熱皮膜系は、溶接作業が完了した後に内側ライナ組立体80に適用されるのが好ましい。このように、断熱皮膜系は、個々の各構成要素に対し1つずつ複数の工程ではなく、単一の工程の形態で適用することができ、各溶接部は、高温燃焼ガスに曝される表面に対して必要とされる保護を与えるために同時に断熱皮膜系で覆われることになる。
【0031】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、その要素を等価物で置き換えることができることを当業者であれば理解されるであろう。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】代表的な高バイパスガスタービンエンジンの概略図。
【図2】多フィルム冷却ナゲットを備えたライナを有する代表的な燃焼室の断面図。
【図3】単一フィルム冷却ナゲット及び多孔冷却パネルを有する本発明の内側ライナ組立体の断面図。
【図4】後方パネル、後方パネルリップ及びシールフランジ区域を含む、本発明の後方パネル、後方リップ及びシールフランジ区域を含む後方パネルフランジ領域の断面図。
【符号の説明】
【0033】
80 内側ライナ組立体
81 前方ボルトフランジ
84 多孔パネル領域
86 後方リップ領域
87 後方シールフランジ領域
88 後方パネル支持レッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(10)の燃焼室(30)を改修する方法であって、
前記エンジン(10)の燃焼室(30)から燃焼器(45)を取り外す段階と、
前方ボルトフランジ(81)から後方にある内側ライナ組立体(48、80)であって、近位端で前記前方ボルトフランジ(81)に近接する多孔パネル領域(84)と、更に遠位端で、該多孔パネル領域(84)の後方にある後方リップ領域(86)と、該後方リップ領域(86)から延びる後方シールフランジ領域(87)と、該後方シールフランジ領域(87)から延びる後方パネル支持レッグ(88)とから構成される前記内側ライナ組立体を取り外す段階と、
前記多孔パネル領域(84)を前記前方ボルトフランジ(81)の後方にある前記内側ライナ組立体(48、80)から分離する段階と、
前記後方パネル支持レッグ(88)を前記後方シールフランジ領域(87)から分離する段階と、
前記分離された多孔パネル領域(84)、前記後方リップ領域(86)、及び前記後方シールフランジ領域(87)を廃棄する段階と、
交換多孔パネル領域(84)及び後方リップ領域/後方シールフランジ領域を準備する段階と、
前記後方パネル支持レッグ(88)及び前記前方ボルトフランジ(81)を検査し改修する段階と、
交換多孔パネル領域(84)を交換後方リップ領域/後方シールフランジ領域に後方リップ領域接合準備において接合する段階と、
前記改修された後方パネル支持レッグ(88)を前記後方シールフランジ領域(87)に接合する段階と、
前記交換多孔パネル領域(84)を前記改修された前方ボルトフランジ(81)の後方にある前記内側ライナ組立体に接合して、内側ライナ組立体を再形成する段階と、
前記再形成された内側ライナ組立体(48、80)の露出金属表面を断熱皮膜系で被覆する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
露出金属表面を被覆する前記段階が、前記交換多孔パネル領域(84)及び前記交換後方リップ領域(86)を被覆する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側ライナ組立体(48、80)が前記多孔パネル領域(84)から分離される前記前方ボルトフランジ(81)の後方にある前記内側ライナ組立体(48、80)に溶接準備を設けることによって、前記前方ボルトフランジ(81)の後方にある前記内側ライナ組立体(48、80)を改修する段階を更に含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記後方パネル支持レッグ(88)及び前記前方ボルトフランジ領域(81)を検査し改修する前記段階が、少なくとも前記前方ボルトフランジ領域に施工される断熱皮膜系を検査し改修する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記後方パネル支持レッグ(88)及び前記前方ボルトフランジ領域(81)を検査し改修する前記段階は、前記後方パネル支持レッグ(88)が前記後方シールフランジ領域(87)から分離される前記後方リップ領域(86)に溶接準備を設ける段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記交換多孔パネル領域(84)を前記前方ボルトフランジ(81)の後方にある前記内側ライナ組立体に接合する前記段階が、第1の接合部(1)を形成する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
交換多孔パネル領域(84)及び交換後方リップ領域/後方シールフランジ領域を準備する前記段階が、単一形成部品として前記後方リップ領域(86)及び後方シールフランジ領域(87)を準備する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
交換多孔パネル領域(84)及び交換後方リップ領域/後方シールフランジ領域を準備する段階が、引き続いて溶接によって一体的に接合される個別部品として前記後方リップ領域(86)及び後方シールフランジ領域(87)を準備する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
交換多孔パネル領域(84)及び交換後方リップ領域/後方シールフランジ領域を準備する前記段階が、引き続いて蝋付けによって一体的に接合される個別部品として、前記後方リップ領域(86)及び後方シールフランジ領域(87)を準備する段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記再形成された内側ライナ組立体(48、80)を燃焼器(45)に取り付ける段階と、前記エンジン(10)内に前記燃焼室を組み付ける段階とを更に含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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