説明

燃焼排ガス中のダイオキシンおよび重金属を低減するための固体無機組成物、その製法およびその利用法

【課題】燃焼排ガス中に存在するダイオキシンおよびフランや重金属、特に水銀を低減するための固体無機組成物、該組成物の製法および利用法を提供する。
【解決手段】燃焼排ガス中に存在するダイオキシンおよびフランや重金属、特に水銀を低減するための固体吸収材料を含む組成物であって、無機化合物にハロンゲン化物塩が添加されている固体無機化合物組成物、該組成物の製法および利用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダーナー(Dana)の分類による「パリゴルスカイト−セピオライト(palygorskite−sepiolite)」群のフィロ珪酸塩から選択される最小限の化合物、好適には非官能化物である固体吸収材を含有する、燃焼排ガス中の重金属およびダイオキシンを低減するための組成物に関する。
【0002】
ダイオキシンおよびフランや重金属、特に水銀は燃焼排ガス中に、特にガス状で存在し、且つその放出が通常厳格に規制される化合物である。本発明において、用語の「ダイオキシン」とはダイオキシンおよびフランそして場合により他の類似化合物、特に多環式芳香族炭化水素(PAH)のようなダイオキシンおよびフランの前駆体を含む総称の意味で用いられる。実際、この点において、規格はダイオキシン(75種)およびフラン(135種)の全てを最も強い毒性のダイオキシン分子に対して相対的に表示される単一の「毒素当量」にグループ化している。
【0003】
用語の「重金属」によって、5000kg/mより高い密度を有する金属、特に、通常規制の対象である最も一般的な重金属、すなわち鉛、クロム、銅、マンガン、アンチモン、ヒ素、コバルト、ニッケル、バナジウム、カドミウム、タリウムおよび水銀、その中でも鉛、タリウム、カドミウムおよび水銀、特に水銀を意味する。これらの金属は元素状態あるいはイオン形態で出現する。
【0004】
燃焼排ガス中に存在するダイオキシンおよび重金属の低減は、最先端では通常活性炭および亜炭コークスのような炭素質化合物を用いて行われる。炭素質化合物の種類の選択は、一方ではダイオキシンのあるいは他方では重金属の、低減すべき汚染物質での優越そしてこれら汚染物質の両方の種類に対応したそれぞれの規制に依存している。
【0005】
例えば、国際特許公開2006/099291号公報は、ハロゲン化合物を添加した炭素質化合物の形状での触媒吸着剤を用いることによる燃焼排ガスの水銀の低減を開示している。特に、ハロゲン化物塩は活性炭上に分散していて活性炭の触媒酸化活性はハロゲン化水銀の形成を促進する。酸化剤は水銀を酸化しそして添加する化合物のアニオンが酸化剤によって酸化された水銀イオンに対イオンを提供する。これが観察されるので、酸化剤の存在はこの種の化合物では必須である。
【0006】
多くの場合、特に廃棄物焼却設備の場合、ダイオキシンおよび特定の重金属の初期の放出量が施行されている規則の放出量をはるかに上回ることがあるので、これら2つの種類の両方の汚染物質を大幅に低減することが不可欠な場合がある。同様の炭素質化合物を厳選すれば、重金属の放出量およびダイオキシンの放出量を施行された規則に対して同時に順守するのに適しているかもしれない。それはそれ自体あるいは塩基試薬との混合物として、粒状で固定床内にあるいは粉末状でガス中への噴射により適用され得て、次いで固体粒子は、下流で、例えば粒子の作用が持続される布フィルター内で捕捉される。
【0007】
炭素質化合物の重金属およびダイオキシンを低減するための効率は何の異論もなく認められる。しかしながら、燃焼排ガスでのこれら炭素質化合物の使用は2つの主要な欠点:
・炭素含量が厳重に規制される煙の放出の際に、存在する粉塵中の全有機炭素含量が増加する、
・精製されるガスの温度が高いので、それだけ可燃性リスクが高い
を有している。
【0008】
炭素質化合物の燃焼の問題を解くための当業者により提供された改善は、炭素質化合物を不燃性の物質、例えば石灰との混合物で用いることであった。残念ながら、この改善は炭素質化合物の燃焼のリスクを実際に低減したがそのリスクを完全に抑えることはなかった。実際、低い温度(例えば150℃)でさえ、特に炭素質化合物が集積される領域内で空気の侵入するところではホットスポットがさらに出現し得る。
【0009】
炭素質化合物は通常値段の高い化合物であり、そして前記炭素質化合物に適用する工程は、多くの場合窒素含有汚染物質をも除去しなければならない燃焼排ガスを処理するための完全な方法に統合することが困難である。触媒手段による窒素酸化物の除去は炭素質化合物の使用には適合しない200℃より高いガス温度で通常実施される。炭素質化合物を使用する方法の工程との良好な適合性のため、燃焼排ガスの冷却および燃焼排ガスの加熱を交互に行う必要がある。このことは大きなエネルギー損失と余分なコストを意味する。それゆえ、この化合物により生じる燃焼問題を考えると、炭素質化合物を、煙を処理するための1つの方法に統合することは困難である。
【0010】
スペイン特許8704428号公報あるいはスペイン特許2136496号公報、および「GIL, ISABEL GUIJARRO; ECHEVERRIA, SAGRARIO MENDIOROZ; MARTIN-LAZARO, PEDRO JUAN BERMEJO; ANDRES, VICENTA MUNOZ、気体流からの水銀の除去、「吸着剤の形状の効果」[Revista de la Real Academia de Ciencias Exactas, Fisicasy Naturales (Spain)(1996)、90(3)、pp.197−204]は、重金属、特に水銀の低減のために試薬として硫黄を用いることによって炭素なしで行うことが可能であると述べている。硫黄は鉱物支持物、例えば天然ケイ酸塩に堆積している。それで、そのような剤形は炭素質化合物の前述の欠点を克服している。この場合、ケイ酸塩は低減される汚染物質に対して相対的に不活性な支持物と考えられており、汚染物質は通常硫化物を形成するように硫黄含有化合物との反応により捕捉される。
【0011】
残念なことに、硫黄含有化合物によって官能化されたケイ酸塩は、その使用にとって不利な条件である危険な、厄介な且つコストのかかる製造物の対象である。例えば、スペイン特許8704428号公報は前記ケイ酸塩に元素の硫黄を吸着することを目的とする厳密に定められたモル比の硫化水素の酸化反応によるケイ酸塩の硫化を開示している。毒性が高くそして極度に可燃性である硫化水素の取り扱いは危険であり、そしてその後のどのような酸化反応をも避けるために必要な正確なモル比は非常に限定的である。スペイン特許2136496公報は金属蒸気を保持するための天然ケイ酸塩の硫化法を記載して同様の教示を提供する。
【0012】
上記の炭素質化合物の代用品は重金属の低減に限定されるということが知られている。
最初に述べたような炭素質化合物の代わりの他の組成物がダイオキシンの低減化のため、特に非官能化物である海泡石(セピオライト)型などの鉱物の使用(特に、特開2000−140627号、特開2001−276606号および特開2003−024744号)が記載されている。しかしながら、全てのフィロケイ酸塩がダイオキシンにとって良好な収着固体であるようには思われない。例えば、モンモリロナイト「日本の酸性白土」(JAC)、モンモリロナイトK10および「中国陶土」カオリンは、ダイオキシンとの類似性により用いられるクロロベンゼン又は他の標準分子[Chemosphere、568、745−756(2004)]を全くかほんのわずかしか捕捉しない。
【0013】
また、特に塩酸との高濃度での反応により得られ、ガスあるいは液体の吸収を意図されるケイ質吸収性組成物がフランス特許1481646公報により公知である。この組成物において、初期の化合物は、アモルファス化合物に変えられるために反応し、それゆえ初期の結晶構造を保持しない。さらに、この公報は複合材として得られるか化合物を開示している。さらに、実施例で示される低減結果は全部が水のような液体又は酸素あるいは恐らくブタン等のようなガスに関係するものである。
【0014】
それに関して、ドイツ特許19824237号公報は水銀を捕捉するために加えられる添加剤である無機化合物を開示している。前記の開示された添加剤は通常硫黄含有化合物であり、これと共に上述のスペインの文献と同様の開示を示している。また、記述は塩化物類からの鉱物のフィロケイ酸塩である塩化物類の使用についてなされている。
【0015】
この公報に見られるように、従来技術は燃焼排ガスを精製するための炭素質化合物の代替を提供しているが、提案された解決策はダイオキシンの低減か重金属の低減のいずれか一方に関する。
ヨーロッパ特許1732668B1号は重金属、特に水銀の低減のためにダーナーの分類による「パリゴルスカイト−セピオライト」群からなる非官能化無機化合物の使用を提供している。しかしながら、セピオライトの水銀を低減する効率は活性炭に比べて貧弱であり、推測的過剰投与が必要でありそうである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、最初に述べたように前記無機化合物にハロンゲン化物塩が添加された組成物を提供することによる、従来技術の欠点の解決策を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実際、全く思いがけなくそして予測できない手段で、塩としてのハロゲン化物を添加した無機化合物が、製造および適用が簡単で危険でない同一でただひとつの無機化合物を用いることによって、燃焼排ガス中に存在する特にガス状でのダイオキシンおよび重金属の共に且つ効果的な低減を可能とすることを見出したのである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるこの組成物のダイオキシンと重金属の低減率への効果は、以下の理由により特に予想外である。前記添加された無機化合物に直接行われたBET比表面積およびBJH細孔容積の測定結果は、強いドーパント塩含有量がどんなに少なくても、これら2つの特性の顕著な減少を示すことがある。さらに、多孔質支持体上での塩の結晶化はダイオキシンのような大きいサイズの分子にとって細孔への近づきやすさを変化させると考えられる。最後に、部分的にでも異なる特質の化合物によって多孔質固体の表面を覆うことによって、ダイオキシンのような分子に対する吸着容量を変えることが可能である。これらの成分は、ダイオキシおよび重金属を低減する能力は上述の成分によって直接影響を受けることが知られているので、相対的に非添加無機化合物に対して添加無機化合物を少なくすることには性能の低下のリスクを示唆している。
【0019】
特定の実施態様において、前記無機化合物は、ダーナーの分類によるセピオライト(海泡石)の下位群のフィロケイ酸塩のグループから選択される。
【0020】
本発明により対象としているフィロ珪酸塩は、典型的には液体窒素の温度(77K)で得られる窒素脱着等温線に適用されるBJH法により測定された、0.20〜0.60cm/g、特に0.25〜0.40cm/gの範囲からなる細孔容積の高空隙率を有する。この細孔容積間隔は2〜100nmの範囲からなるサイズを有する細孔にとって有効である。さらに、このフィロ珪酸塩は典型的には100〜200m/g、特に110〜160m/gの比表面積を有している。
【0021】
「ハロゲン化物塩を添加した無機化合物」とは、燃焼排ガスにとって利用しやすい表面が部分的に又は完全にハロゲン化物塩で覆われている上述の無機化合物を意味する。
燃焼排ガスにとって利用しやすい表面は、前記無機化合物を構成している粒子の外部表面を含むだけでなく、この部分的に多孔質な粒子の部分的あるいは全ての内側面を含んでいる。
【0022】
ハロゲン化物塩を添加した無機化合物は、本発明による組成物の質量に基づいて無水ベースで0.5%〜20%、好適には1%〜15%、特に1.5%〜10%のハロゲン化物塩を含有する。前記ハロゲン化物塩はアルカリ又はアルカリ土類のハロゲン化物、特にNaCl、NaBr又はNaI、KCl、KBr又はKI、CaCl、CaBr又はCaI、MgCl、MgBr又はMgI、又はさらにNHCl、NHBrあるいはNHIもしくはこれらの混合物の1つであり得る。
【0023】
本発明による特定の実施態様において、前記ハロゲン化物塩を添加した無機化合物は70〜170m/g、多くの場合80〜140m/gそして特に90〜130m/gの範囲からなるBET比表面積を有する。
好適には、前記ハロゲン化物塩を添加した無機化合物は、2〜100nmの範囲からなるサイズを有する細孔に対して約77Kの液体窒素の温度で得られる窒素脱着等温線に適用されるBJH法により測定された、0.15〜0.32cm/g、好適には0.20〜0.30cm/gそして特に0.22〜0.28cm/gの範囲からなる細孔容積を有する。
【0024】
有利には、本発明による無機化合物は粉末状にある、すなわち粒子のサイズは過半数が(90%より多くが)1mmより小さく且つ基本的に1μmより大きい、すなわち本発明による無機化合物は好適には1mm未満のd90を有する。
90とは、粒子の90%がその値より小さいサイズを有するような、粒子サイズに係る分布曲線の補間値である。
予想外に、ハロゲン化物塩を添加したこれらの無機化合物が、特にガス状で効率よく重金属、特に水銀そして特に燃焼排ガス中の水銀金属Hgを低減させる可能性を与え、一方でこれら無機化合物が添加なしで特に初期の結晶構造を保持して有するダイオキシンを低減させる特性を保持していることを示すことできた。
【0025】
本発明による生成物の他の実施態様は特許請求の範囲に示されている。
また、本発明の目的は、本発明による無機物固体組成物を製造する方法である。本発明の方法は、工程:
ダーナーの分類による「パリゴルスカイト−セピオライト」類のフィロ珪酸塩から選択される無機化合物、好適には非官能化物である固体吸着物質を提供する工程、
ハロゲン化物塩を提供する工程、および
前記無機化合物と前記ハロゲン化物塩とを接触させて、ハロゲン化物を添加した無機化合物を形成する工程
を含む。
【0026】
有利には、前記の無機化合物とハロゲン化物との接触は攪拌によって達成される。
好適には、前記の提供される無機化合物は0.1〜100g/kg、有利には2〜90g/kgの範囲からなる湿度を有する。
有利には、前記の接触は室温で行われる。
本発明による方法の好適な実施態様において、前記ハロゲン化物塩は液状中で、水相中である。
さらに、前記無機化合物とハロゲン化物塩とを接触させるための前記工程は、有利には任意的に攪拌の存在下での、前記無機化合物上への前記ハロゲン化物塩の噴霧である。
【0027】
本発明による方法の別の好適な実施態様において、前記無機化合物とハロゲン化物塩とを接触させるための前記工程は、任意的に攪拌しながらそして任意的に前記無機化合物を乾燥および/又は液相で前記ハロゲン化物塩中にて脱集塊化するための中間工程を有する、1つあるいはいくつかの工程での浸漬処理である。
【0028】
好適には、液相中での前記ハロゲン化物塩は、前記溶液の全質量に基づいて1%から塩で溶液が飽和状態の範囲、特に1%〜30%、特に5%〜27%、好適には10%〜27%の範囲からなるハロゲン化物塩含有量を有する水溶液である。注目すべきは、溶液中の塩濃度が低いと混合物の塗布がより困難になりまた後の乾燥がコスト高になることである。さらに、溶液の濃度は前記塩の溶解度によって制限される。ハロゲン化物塩と無機化合物との接触は無機化合物の外部表面だけでなく内部の到達できる面へのハロゲン化物塩の可能な限り均一な分散を促進するように行われる。
【0029】
有利には、本発明による方法は、さらに、好適には100g/kg未満、有利には50g/kg未満の残存湿度を達成することを目的として、有利には添加無機化合物が60〜200℃、特に75〜170℃の範囲からなる温度に達するように操作条件(周囲温度、滞留時間)による、ハロゲン化物塩を添加した前記無機化合物を乾燥および/又は脱集塊化するための工程を含む。
前述のように、好適には、本発明による方法において、前記ハロゲン化物塩はアルカリハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物など、好適にはNaCl、NaBr、NaI、KCl、KBr、KI、CaCl、CaBr、CaI、MgCl、MgBr、MgI、NHCl又はNHIあるいはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本発明による他の実施態様は特許請求の範囲に示されている。
本発明は、さらに、燃焼排ガスを前述の無機固体組成物と接触させることによる、燃焼排ガス中に存在する、特にガス状態でダイオキシンと重金属、特に水銀、そしてその中でも水銀金属Hgを低減するための前述の無機固体組成物の利用法、および塩基性剤と前記無機固体組成物との混合物の燃焼排ガス処理のための利用法に関する。
【0031】
それゆえ、本発明による前記添加無機化合物は、そのようなものとして、あるいは煙の酸性ガスを低減するために現在用いられる塩基性剤、例えば石灰などと共に、処理される燃焼排ガスと接触される。
それゆえに、本発明による前記無機固体組成物の適用は、好適には使いやすい乾燥生成物を得ることを必要とするのみである。
【0032】
本発明による前記添加無機化合物のダイオキシンおよび重金属の低減のための利用法は、それゆえに、好適には乾燥条件で70〜350℃、好適には110〜300℃そして特に120〜250℃の範囲からなる温度で実施される前記添加無機化合物を接触させる工程を含む。200℃に近いあるいはそれより高い温度で操作する可能性があると、燃焼排ガスを処理するための方法の間ずっと比較的一定した温度を保持し且つダイオキシンおよび重金属の除去そして次いで触媒作用による窒素含有化合物の除去のための連続した冷却および加熱の工程を避けるか制限する可能性がある。
【0033】
有利には、本発明による無機化合物は粉末状で用いられる、すなわち粒子のサイズの過半数が(90%より多くが)1mm未満であり且つ基本的に1μmより大きい。それで、本発明の無機化合物は空気圧手段によってガス脈中に投入される。
【0034】
本発明による添加無機化合物の燃焼排ガス中のダイオキシンおよび重金属を低減させるための利用法は、燃焼排ガスの完全処理に統合されることがしばしばある。そのような処理は前記燃焼排ガスを塩基性剤と接触させることによる主要な酸性汚染物質を除去するための工程を含む。一般的に、燃焼排ガス中の主要な酸性汚染物質は塩酸、フッ化水素酸、硫黄酸化物又はさらなる窒素酸化物を含み、処理前の燃焼排ガスの排出量中のそれらの含有量は大体数10〜数100mg/Nmである。
【0035】
本発明による添加無機化合物の燃焼排ガス中のダイオキシンおよび重金属を低減させるための利用法が燃焼排ガスの完全処理に統合される場合、前記塩基性剤、例えば石灰と前記添加無機化合物とは別々に又は混合物として適用される。後者のケースは、その結果として両方の工程が同時に且つ同じ位置で行われるので投資と使える場所に利益を与える。
【0036】
本発明による他の利用法は特許請求の範囲に記述されている。
他の実施態様、本発明の詳細と利点は非制限的な後述の記載と実施例を参照すると明確になる。
【実施例】
【0037】
本発明は、ここに非制限的な実施例によってより詳細に示される。
実施例1〜7および比較例は以下の実験手段による実験室スケールの試験のものである。約0.1gの無機化合物に相当するロックウール上に均一な床を形成するようにハロゲン化物塩(本発明による実施例1〜5)を添加した無機化合物又は非添加無機化合物(比較例)を、110mmの長さと10mmの内径を有する円筒型反応器の中心に設置した。600μg/Nmの水銀金属(Hg)を含有する窒素流を2.8x10−6Nm/秒の全流量でこの床を通過させる。マーキュリー・インスツルメントからのVM−3000検出器を用いると、反応器の出口での水銀金属濃度を測定することが可能である。検出器に水銀金属が到達する前に、イオン形態で存在する可能性のある水銀部分を水銀金属に変化させるように、ガスをSnClの溶液に通す。この方法では、水銀の全量が測定される。この装置を用いると、漏出曲線の原理を適用することによって、固体による水銀低減能力を評価することが可能である。低減能力は(μgHg)/1gの固体で示される。表1は調製法と実施例1〜5および比較例に対する水銀低減の性能をまとめている。
【0038】
比較例
市販の工業品質のセピオライト(海泡石)を前述の反応器内に設置する。漏出曲線を130℃の設定温度で得る。この非添加セピオライトの前述の装置内での水銀低減能力は9(μgHg)/1gのセピオライトである。
【0039】
実施例1
本発明によって、比較例のセピオライト(海泡石)と類似のセピオライトの浸漬を行う。この浸漬は、水溶液の質量に基づいて10質量%のKBr含有量を有する水溶液中にセピオライトを浸すことにより行う。それにより添加された湿ったセピオライトを、50g/kg未満の残留湿度に達するようにオーブン中、75℃の温度で乾燥しそして脱集塊化する。乾燥後のセピオライトに堆積されたKBrの量は本発明により得られた組成物の質量に基づいて10質量%である。前記の装置内で本発明により且つ比較例と同じ操作条件で操作すると、このKBr添加セピオライトの水銀低減能力は255(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
【0040】
実施例2
本発明によって、比較例のセピオライト(海泡石)と類似のセピオライトの噴霧を行う。噴霧は、水溶液の質量に基づいて27質量%のNaCl含有量を有する水溶液で行う。前記水溶液を、20%の湿度が得られるまで機械攪拌を用いてセピオライト上に噴霧する。それにより添加された湿ったセピオライトを、50g/kg未満の残留湿度に達するようにオーブン中、150℃の温度で乾燥しそして脱集塊化する。乾燥後のセピオライトに堆積されたNaClの量は組成物の質量に基づいて6質量%である。このNaCl添加セピオライトの水銀低減能力は48(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
【0041】
実施例3
水溶液の質量に基づいて27質量%のMgCl水溶液を用いた他は実施例2と同様に実施した。乾燥後のセピオライトに堆積されたMgClの量は組成物の質量に基づいて5質量%である。測定された水銀低減能力は190(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
【0042】
実施例4
水溶液の質量に基づいて27質量%のCaBr水溶液を用いた他は実施例2と同様に実施した。乾燥後のセピオライトに堆積されたCaBrの量は組成物の質量に基づいて6質量%である。測定された水銀低減能力は343(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
【0043】
実施例5
水溶液の質量に基づいて27質量%のMgBr水溶液を用いた他は実施例2と同様に実施した。乾燥後のセピオライトに堆積されたMgBrの量は組成物の質量に基づいて7質量%である。測定された水銀低減能力は1770(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例6:反応器の温度の影響
乾燥後のセピオライトに堆積されたCaBrの量が組成物の質量に基づいて2質量%である他は実施例4と同様に実施する。漏出曲線を設定温度130℃、180℃、200℃、250℃および300℃で得る。測定された水銀低減能力は、試験条件下で各々208、426、582、750および672(μgHg)/1gの添加セピオライトである。これらの結果は本発明による添加組成物の、特に180℃〜300℃での使用が有利であることを示している。
【0046】
実施例7:添加水溶液の濃度の影響
各々1.2%、2.3%および4.6%の添加された添加物の含有量を得る前の各々5%、10%、15%、30%の値の濃度を持つKBr水溶液を用いる噴霧により比較例と同様の4つのセピオライトの試料を含浸させる他は実施例2と同様に実施する。それによる本発明による添加セピオライトを設定温度130℃に保った反応器内に設置する。水銀低減能力は、試験条件下で各々33、44および75(μgHg)/1gの添加セピオライトである。
驚いたことに、本発明による添加が関連ある濃度間隔と添加剤では、非添加の無機化合物の初期の比表面積と細孔容積をほとんど変えていないことが示され、これはダイオキシン低減性能が維持されたことを意味している。他方、添加セピオライト中のハロゲン化物塩の濃度増大に対しては、水銀低減の顕著な増加が見られる。結果を以下の表2にまとめる。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例8:工業規模の例
本発明によって、比較例のものと類似のセピオライトを工業用の混合機中で噴霧によって浸漬する。この目的のために、水溶液の質量に基づいて20質量%のKBr含有量を有する水溶液を噴霧する。17%の湿度を有する添加セピオライトの流速は200kg/hである。添加セピオライトを脱集塊化し、そして、約400〜450℃で加熱ガスにより、そして加熱ガスがケージミル/ドライヤーを約150℃で離れるような滞留時間で乾燥する。本発明による乾燥セピオライトは組成物の質量に基づいて5質量%のKBrを有している。
このようにし添加されたセピオライトを、家庭廃棄物の焼却炉からの7t/hの廃棄物を処理するための約43000Nm/hの処理されるべき煙を生成するラインで用いる。添加セピオライトはスクリュー法により計量され、そして毎時3kgの量にて150℃でガス流中に空気圧で注入され、そして特に燃焼ダストのためにスリーブフィルター内で集められる。
水銀濃度は、原子吸光(Sick−MaihakのMERCEM)によって、添加セピオライトの注入点の上流とスリーブフィルターの下流で測定する。乾燥ガスについて規格化され11%の酸素に参照された測定水銀濃度は、
上流:85μg/Nm
スリーブフィルターの下流:14μg/Nm
である。この結果は、施行されている規則の50μg/Nmより明らかに低く、且つ84%の水銀低減を示している。
水銀含有量の測定と同時に、ダイオキシン含有量を、EN1948(1997)およびISO9096(2003)標準により認可組織によって煙突で測定した。得られた値は乾燥ガスの状態で且つ11%の酸素濃度に言い換えて0.04ngTEQ/Nmである。この結果は、乾燥条件下で11%の酸素濃度に言い換えて0.1ngTEQ/Nmの放出に対する規則を完全に順守している。
【0049】
実施例9:工業規模の例
実施例8と同様の添加セピオライトを、家庭廃棄物の焼却炉からの7t/hの廃棄物を処理するための約43000Nm/hの処理されるべき煙を生成するラインで用いる。添加セピオライトはスクリュー法により計量され、そして毎時8kgの量にて180℃でガス流中に空気圧で注入され、そして特に燃焼ダストのためにスリーブフィルター内で集められる。
水銀濃度は、原子吸光(Sick−MaihakのMERCEM)によって、スリーブフィルターの下流で測定する。乾燥ガスについて規格化され11%の酸素に参照された測定水銀濃度は、0.1μg/Nm〜0.8μg/Nmである。この結果は、施行されている規則の50μg/Nmより明らかに低い。
ダイオキシン含有量を、EN1948(1997)およびISO9096(2003)標準による認可組織によって煙突で測定した。ダイオキシン濃度は乾燥ガスの状態で且つ11%の酸素濃度に言い換えて0.003ngTEQ/Nmであり、乾燥ガスの状態で11%の酸素濃度に言い換えて0.1ngTEQ/Nmの放出規則を完全に順守している。
【0050】
本発明は上記の実施態様によっていささかも制限されないこと、そして多くの変化が特許請求の範囲からはずれることなくもたらされ得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス中の重金属およびダイオキシンを低減させるための、ダーナーの分類による「パリゴルスカイト−セピオライト」群のフィロケイ酸塩から選択される無機化合物、好適には非官能化物である固体吸収材料を含む組成物であって、前記無機化合物にハロンゲン化物塩が添加されていることを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記無機化合物が、ダーナーの分類によるセピオライトの下位群のフィロケイ酸塩のグループから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化物塩が、アルカリハロゲン化物又はアルカリ土類のハロゲン化物などであり、好適にはNaCl、NaBr、NaI、KCl、KBr、KI、CaCl、CaBr、CaI、MgCl、MgBr、NHCl、NHBr又はNHIもしくはこれらの混合物からなる群から選択される請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ハロゲン化物塩が、組成物の質量に基づいて無水ベースで0.5質量%〜20質量%、好適には1質量%〜15質量%、特に1.5質量%〜10質量%のハロゲン化物塩の量で存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ハロゲン化物塩を添加した無機化合物が、70〜170m/g、好適には80〜140m/gそして特に90〜130m/gの範囲からなるBET比表面積を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ハロゲン化物塩を添加した無機化合物が、窒素脱着等温線に適用されたBJH法により測定される0.15〜0.32cm/g、好適には0.20〜0.30cm/gそして特に0.22〜0.28cm/gの範囲からなる細孔容積を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
重金属およびダイオキシンを低減するための組成物を製造する方法であって、工程:
ダーナーの分類による「パリゴルスカイト−セピオライト」群のフィロ珪酸塩から選択される無機化物、好適には非官能化物である固体吸着材を提供する工程、
ハロゲン化物塩を提供する工程、および
前記無機化合物と前記ハロゲン化物塩とを接触させて、ハロゲン化物塩を添加した無機化合物を形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
前記無機化合物と前記ハロゲン化物塩との接触が攪拌によって達成される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記提供される無機化合物が、0.1〜100g/kg、有利には2〜90g/kgの範囲からなる湿度を有する請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記接触が室温で行われる請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化物塩が液状中、水相中にある請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記無機化合物と前記ハロゲン化物塩とを接触させるための前記工程が、任意的に攪拌を用いての前記無機化合物上への前記ハロゲン化物塩の噴霧である請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記無機化合物とハロゲン化物塩とを接触させるための前記工程が、任意的に攪拌しながら液相中、前記ハロゲン化物塩中での前記無機化合物の浸漬である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
液相中での前記ハロゲン化物塩が、前記溶液の全質量に基づいて1%〜30%、特に5%〜27%、好適には10%〜27%の範囲からなるハロゲン化物塩の含有量を有する水溶液であるかそうでない請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
さらに、好適には60〜200℃、特に75〜170℃の範囲からなる温度でハロゲン化物塩を添加した前記無機化合物を乾燥および/又は脱集塊化するための1つ以上の工程を含む請求項7〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン化物塩が、アルカリハロゲン化物又はアルカリ土類ハロゲン化物などであり、好適にはNaCl、NaBr、NaI、KCl、KBr、KI、CaCl、CaBr、CaI、MgCl、MgBr、NHCl、NHBr又はNHIもしくはこれらの混合物からなる群から選択される請求項7〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
燃焼排ガス中の、好適にはガス状態でのダイオキシンと重金属、特に水銀、そしてその中でも水銀金属Hgを低減するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の利用法。
【請求項18】
塩基性剤、例えば石灰と共に混合物としての請求項17に記載の利用法。

【公表番号】特表2012−532754(P2012−532754A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520008(P2012−520008)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060075
【国際公開番号】WO2011/006898
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506218228)ソシエテ アノニム ロワ ルシェルシュ エ ディベロプマン (5)
【出願人】(512010214)ユニベルシテ ドゥ リエージュ (2)
【Fターム(参考)】