説明

燃焼方法、ボイラ燃焼方法、火力発電方法、流動床式燃焼装置、ボイラ及び火力発電システム

【課題】 石灰石の代替品となる流動媒体を用いて、石灰石の消費量、灰発生量を減少させ、ランニングコストを従来に比べて低減する。
【解決手段】 燃料タンク4に貯留されている石炭粒、石灰石粒、水の混合物であるCWPは、流動床燃焼装置である各ボイラ2内の流動床中に流路5を介してボイラ2の流動床内に投入される。CWP中の石灰石粒は流動媒体となり、火炉内で脱硫を行なう。石灰石粒は流動燃焼により磨耗して排ガスとともに徐々に火炉内から流出していくため、BMタンク13中のアルミナ(γ―アルミナなど)を石灰石粒の不足分の補充として補助的に流動床中に投入し、アルミナを流動媒体とし、脱硫もアルミナで行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床を用いた燃焼方法、ボイラ燃焼方法、火力発電方法、流動床式燃焼装置、ボイラ、及び火力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラントでタービン駆動用の蒸気を発生するボイラに流動床式燃焼装置を用いるものが知られている。このようなボイラにおいては脱硫装置を設ける必要があるが、流動床に用いる流動媒体として石灰石を用いれば火炉内で脱硫も行なうことができ、別途、火炉に脱硫装置を設ける必要がなくなり、そのため、脱硫装置の設置スペース分だけ火力発電プラントの設置面積を縮小することができる。
【0003】
この場合、流動媒体はボイラの運転中に粉化・飛散し、火炉内の量が徐々に減少するため、その減少分に見合うだけの石灰石の流動媒体をボイラ内に補充する必要がある。流動床燃焼装置については、近年、様々な技術が考えられ、運用されている。例えば特許文献1の「流動床燃焼装置」には、燃焼炉を具備し、燃焼炉が、高さが異なる4箇所以上の酸化剤を供給する空気供給口とを具備する発明が記載されている。
【特許文献1】特開2003−329214公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、減少分に見合うだけの石灰石のボイラ内への供給は、石灰石の消費量、灰発生量を増大させ、ランニングコストの増大原因になってしまうという問題を有していた。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、石灰石の代替品となる流動媒体を用いて、石灰石の消費量、灰発生量を減少させ、ランニングコストを従来に比べて低減することできる燃焼方法、ボイラ燃焼方法、火力発電方法、流動床式燃焼装置、ボイラ及び火力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、流動床式燃焼装置(2)で燃焼を行なう燃焼方法において、流動燃焼に使用する流動媒体の少なくとも一部としてアルミナを用いることを特徴とする燃焼方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の燃焼方法において、燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を前記流動床式燃焼装置内(2)に供給して前記流動床式燃焼装置を燃焼させ、前記アルミナは前記流動床式燃焼装置内の前記流動媒体の不足分の補充として供給することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、流動床式燃焼装置を火炉に用いたボイラ(2)で蒸気を発生するボイラ燃焼方法において、流動燃焼に使用する流動媒体の少なくとも一部としてアルミナを用いることを特徴とするボイラ燃焼方法である。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のボイラ燃焼方法において、燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を前記流動床式燃焼装置(2)内に供給して前記流動床式燃焼装置を燃焼させ、前記アルミナは前記流動床式燃焼装置内の前記流動媒体の不足分の補充として供給することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)で発生させた蒸気でタービン(3)を回転して発電する火力発電方法において、前記ボイラの燃焼に請求項3又は4に記載のボイラ燃焼方法を用いることを特徴とする火力発電方法である。
【0011】
請求項6記載の発明は、流動床式燃焼装置(2)において、少なくとも一部はアルミナである流動媒体を貯留する第1容器(13)と、前記タンク内の流動媒体を流動床に供給する第1流路(14)と、を備えていることを特徴とする流動床式燃焼装置である。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の流動床式燃焼装置において、燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を貯留する第2容器(4)と、前記混合物を流動床に供給する第2流路(5)と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)において、少なくとも一部はアルミナである流動媒体を貯留する第1容器(13)と、前記タンク内の流動媒体を流動床に供給する第1流路(14)と、を備えていることを特徴とするボイラである。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載のボイラ(2)において、燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を貯留する第2容器(4)と、前記混合物を流動床に供給する第2流路(5)と、をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)で発生させた蒸気でタービン(3)を回転して発電する火力発電システムにおいて、前記ボイラとして請求項8又は9に記載のボイラを用いることを特徴とする火力発電システムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,3,6,8記載の発明によれば、流動床式燃焼装置(2)の流動媒体に耐熱性、耐摩耗性に優れ、化学的にも安定した物質であるアルミナを石灰石に代替して用いることができ、脱硫を行いつつ流動燃焼を行うことができるので、石灰石の消費量、灰発生量を減少させ、燃焼のランニングコストを従来に比べて低減することができる。
【0017】
請求項2,4,7,9記載の発明によれば、石炭粒と石灰粒との混合物を流動床に投入して流動燃焼を行ない、石灰粒の減少による不足分をアルミナで代替することができるので、石灰石の消費量、灰発生量を減少させ、燃焼のランニングコストを従来に比べて低減することができる。
【0018】
請求項5,10記載の発明によれば、請求項1〜4,6〜9に記載の発明と同様の作用、効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の燃焼方法は、流動燃焼に使用する流動媒体の少なくとも一部としてアルミナを用いた流動床式燃焼装置で燃焼を行なう燃焼方法である。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1と図2は、実施例1の火力発電システムの系統図である。図1と図2は、火力発電システムを便宜上2図に分割して図示しており、図1のマル付数字1〜6と、図2のマル付数字1〜6の同じ数字同士の水・水蒸気流路1は接続されていることを示す。
【0021】
本発明の火力発電システムは、1次、2次の2塔のボイラ2を備えた2缶式ボイラの燃焼により、水・水蒸気流路1に接続されたボイラ2の伝熱管1a中の水を加熱して水蒸気に変え、この水蒸気で蒸気タービン3を駆動して発電機4で発電を行う。また、ボイラ2内の排ガスを、排ガス流路9を介してガスタービン10に供給してガスタービン10を駆動し、発電機11で発電を行なう。このように、本火力発電システムは複合発電設備である。
【0022】
蒸気タービン3通過後の水蒸気は復水ポンプで復水器に送られ冷却水により冷却されて水に戻され、排熱回収熱交換器19,20でボイラ2の排ガスの排熱を回収して、再びボイラ2に戻される。
【0023】
復水器で冷却された水は、給水ポンプにより排熱回収熱交換器19,20に供給される。この水は、第1〜第6給水加熱器を介して排熱回収熱交換器20に供給され、排ガスの排熱を回収する。さらに、排熱回収熱交換器19でも排熱を回収する。
【0024】
1次、2次の各ボイラ2は、圧力容器内に収納され、流動床式燃焼装置2を火炉としている。ボイラ2内の流動床中には、第2容器である燃料タンク4に貯留されている石炭粒と石灰石粒と水との混合物であるCWP(Coal Water Paste)が、第2流路である流路5を介して燃料ポンプ23で投入される。
【0025】
CWPの石炭粒は原炭バンカ15中の石炭が粗粉砕機16で粉砕され、分級機17で所望の細かさに粉砕された石炭粒と、粗いままの石炭とが分級され、中継ホッパ24を介して所望の細かさに粉砕された石炭粒は混練機6に供給され、粗いままの石炭は微粉砕機18で所望の細かさに粉砕されてから混練機6に供給される。
【0026】
混練機6では、ボイラ2の燃料となる石炭粒と、石灰石ホッパ7に貯留されボイラ2の流動媒体となる石灰石と、水とが混練されてCWPが生成され、燃料タンク4に供給される。
【0027】
コンプレッサ8は、空気流路25を介してボイラ2内に燃焼用空気を供給し、ボイラ2内を加圧状態に保つ。
【0028】
ボイラ2内の排ガスは、1次サイクロン21、2次サイクロン22、排ガス流路9を介してガスタービン10に供給され、ガスタービン10を駆動して発電機11で発電を行なう。この後の排ガスは、排熱回収熱交換器19,20に送られ、復水器で冷却水により冷却された水・水蒸気流路1の水を加熱して排熱回収がなされ、バグフィルタで煤塵が除去されて、煙突から外気に排出される。また、排熱回収熱交換器19,20間の経路には脱硝装置が設けられ、排ガスを脱硝する。
【0029】
1次サイクロン21、2次サイクロン22で底部に滞留した排ガス中の灰は灰クーラで冷却されて、所定の灰処理装置に送られる。また、排ガス流路9中の、1次サイクロン21、2次サイクロン22より上流側に設けられた無触媒脱硝装置により、排ガスは脱硝される。
【0030】
ボイラ2の燃焼灰は、ボイラ2の底部に連結されたクリンカ排出経路12により、所定の灰処理装置に送られる。この際、燃焼灰は灰クーラにより冷却される。
【0031】
第1容器となるBMタンク13中には、流動媒体となるアルミナが貯留されている。このアルミナは、第1流路となるアルミナ供給路14を介してボイラ2内に供給される。
【0032】
以上のような構成の火力発電システムにおいて、燃料タンク4に貯留されているCWPはボイラ2内の流動床中に第2流路5を介して燃料ポンプ23でボイラ2の流動床内に投入される。CWP中の石灰石粒は流動媒体となり、火炉内で脱硫を行なって硫黄酸化物(SOx)の発生を低減させる。
【0033】
このように、火炉内で流動媒体である石灰石粒が脱硫を行なうので、本火力発電システムにおいては、別途、火炉に脱硫装置を設ける必要がなくなり、そのため、脱硫装置の設置スペース分だけ火力発電プラントの設置面積を縮小することができる。
【0034】
しかし、石灰石粒は流動燃焼により磨耗して排ガスとともに徐々に火炉内から流出していくため、その不足分を石灰石粒で補充すると、石灰石の消費量、灰発生量を増大させ、ランニングコストの増大原因になってしまう。
【0035】
そこで、本発明の火力発電システムにおいては、BMタンク13中のアルミナ(γ―アルミナなど)を石灰石粒の不足分の補充として補助的に流動床中に投入し、アルミナを流動媒体とし、脱硫もアルミナで行なう。
【0036】
アルミナは、耐熱性、耐摩耗性に優れ、化学的にも安定した物質であるため、流動媒体として適する。
【0037】
また、アルミナは化学工場などで触媒として利用されており、一般に市場で入手できるものは、粒径も多様で所望の粒径分布に調整するのが容易であり、形状も球状であるため流動床内で伝熱管1aの磨耗に及ぼす影響も小さいといえる。
【0038】
このようなアルミナを石灰石粒の不足分の補充として流動媒体に使用することで、石灰石の消費量、灰発生量を低減し、ランニングコストを減らすことができる。
【0039】
なお、本発明は、石灰石の代替品となる流動媒体を用いて、石灰石の消費量、灰発生量を減少させ、ランニングコストを従来に比べて低減することできれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の燃料方法は、上述した火力発電などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1の火力発電システムの系統図である。
【図2】本発明の実施例1の火力発電システムの系統図である。
【符号の説明】
【0042】
2 流動床式燃焼装置、ボイラ
3 蒸気タービン
4 第2容器
5 第2流路
13 第1容器
14 第1流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床式燃焼装置(2)で燃焼を行なう燃焼方法において、
流動燃焼に使用する流動媒体の少なくとも一部としてアルミナを用いることを特徴とする燃焼方法。
【請求項2】
燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を前記流動床式燃焼装置内(2)に供給して前記流動床式燃焼装置を燃焼させ、前記アルミナは前記流動床式燃焼装置内の前記流動媒体の不足分の補充として供給する、ことを特徴とする請求項1の燃焼方法。
【請求項3】
流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)で蒸気を発生するボイラ燃焼方法において、
流動燃焼に使用する流動媒体の少なくとも一部としてアルミナを用いる、ことを特徴とするボイラ燃焼方法。
【請求項4】
燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を前記流動床式燃焼装置(2)内に供給して前記流動床式燃焼装置を燃焼させ、前記アルミナは前記流動床式燃焼装置内の前記流動媒体の不足分の補充として供給する、ことを特徴とする請求項3のボイラ燃焼方法。
【請求項5】
前記流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)で発生させた蒸気でタービン(3)を回転して発電する火力発電方法において、
前記ボイラの燃焼に請求項3又は4に記載のボイラ燃焼方法を用いる、ことを特徴とする火力発電方法。
【請求項6】
流動床式燃焼装置(2)において、
少なくとも一部はアルミナである流動媒体を貯留する第1容器(13)と、
前記タンク内の流動媒体を流動床に供給する第1流路(14)と、
を備えた、ことを特徴とする流動床式燃焼装置。
【請求項7】
燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を貯留する第2容器(4)と、
前記混合物を流動床に供給する第2流路(5)と、
をさらに備えた、ことを特徴とする請求項6の流動床式燃焼装置。
【請求項8】
流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)において、
少なくとも一部はアルミナである流動媒体を貯留する第1容器(13)と、
前記タンク内の流動媒体を流動床に供給する第1流路(14)と、
を備えた、ことを特徴とするボイラ。
【請求項9】
燃料となる石炭粒と前記流動媒体となる石灰粒との混合物を貯留する第2容器(4)と、
前記混合物を流動床に供給する第2流路(5)と、
をさらに備えた、ことを特徴とする請求項8に記載のボイラ。
【請求項10】
前記流動床式燃焼装置(2)を火炉に用いたボイラ(2)で発生させた蒸気でタービン(3)を回転して発電する火力発電システムにおいて、
前記ボイラとして請求項8又は9のボイラを用いた、ことを特徴とする火力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−255822(P2007−255822A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82705(P2006−82705)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】