説明

燃焼方法

燃焼装置に、燃焼用剤、燃料および以下の成分を供給し、燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法:
i) 成分B)中に存在する硫黄の全量 + 燃料中に含まれる硫黄(成分BII))の全量との合計モルBIと、燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の全量(成分CII))と、成分B)中に含まれる塩および/または酸化物の形態にあるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属(成分C))の量の合計モルCIとの間のモル比BI/CIが0.5以上となる量の硫黄または硫黄含有化合物である、成分B)、
ii) 低溶融の塩および/または酸化物またはそれらの混合物を含み、1,450K未満の溶融温度を有する成分A)であって、成分A)中の低溶融の塩および/または酸化物またはそれらの低溶融の混合物の形態にある金属と、燃料中に含まれる低溶融の塩および/または酸化物の金属の量との合計モルA'と、燃料中に含まれる全金属の量と成分A中に含まれる全金属の量との合計A"との間のモル比、A'/(A"-A')が1:100以上である、成分A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼装置から出てくる燃焼ガス(fumes)中の微細な粉塵を実質的に低減し、環境ならびにヒトおよび動物への影響を実質的に低減する燃焼方法に関する。
この燃焼方法では、通常の燃料およびバイオマスまたは廃棄物のような低ランクの燃料がともに用いられる。この燃焼方法は同時に、燃料、特に低ランクの燃料中に含まれる塩基性の灰(アルカリ灰)を、燃焼装置および該燃焼装置下流の熱回収プラントの材料に対して、燃焼温度で腐食性がない化合物に変換する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、本発明の方法によれば、環境ならびにヒトおよび動物の健康の両方に対して影響が小さく、バイオマスや廃棄物のような低ランクの燃料も、高い熱回収率、および熱エネルギーから電気エネルギーへの高い変換効率を有し、通常の材料(高合金でない)で作られたプラント内で用いることができる。
【0003】
燃焼プラントからの粉塵の放出は、規制の対象となっている。欧州において、今日までで最も厳しいのは、CE 2000/76規制である。しかしながら、この規制では、粉塵は一様な方法(総重量)で特徴づけられてきた。
この規制は、10μmより小さい粒子サイズ、すなわちPM10についての制限、および重金属の濃度についての制限を定めている。さらに、煙道ガスの定速サンプリングによって得られる重金属の濃度は、(除湿された)乾燥ガスの容量に対するものである。
この規制において、該濃度は空気で燃焼させたときの乾燥した煙道ガスに関連しており、煙道ガス中の酸素濃度を11容量%と定めることによって、排気についての質量収支と一義的に関連づけられる。
この規制はさらに、空気とは異なる燃焼用剤、例えば濃縮空気または酸素で酸化燃焼させた場合に、質量収支の基準に基づいて、補正係数が適用されることを明記している。
例えば酸素が全変換されたときの酸素での燃焼の場合、その補正係数(規格化因子)は燃料のタイプによって変動し、0.085まで低くなり得る。この質量収支の基準は広く受け入れられている。例えば、排気についてのBAT(Best Available Technology)の分類は、質量収支を用いている。
【0004】
現在、燃焼装置から出る煙道ガスについて、粒子サイズに基づいて粉塵の危険性を分類する規制は存在しておらず、それゆえに粒子サイズについて制限値がない。近い将来、2.5μmより小さい粒子径(PM 2.5)を有する粉塵の含量にいくつかの制限を定めることによって、制限値が定められる可能性がある。
この目的のため、例えば世界中の都市において、大気中への粉塵についてますます制限された規制は十分に予見される。例えば、PM 10の量を40μg/Nm3より低く制限するだけの96-62-CE規則を超えるために、欧州指令の新提案が審議中である。この新指令は、大気中のPM 2.5について20μg/Nm3までの新たな制限を導入するものである。
【0005】
さらに、EPA(National Air Quality Standard)によるPM 2.5の制限が15μg/Nm3であり、世界保健機関(World Health Organization)により提案された値がさらに低い、すなわち10μg/Nm3であるということが、考慮されなければならない。このため、粉塵についてのPM 2.5の値は、技術的に検討されるだろう。
【0006】
微細な粉塵が全産業分野で採用されている燃焼方法の煙道ガス中に含まれているということは、従来技術で知られている。微細な粉塵は、2.5μmより小さい粒子径(PM 2.5)〜数ナノメートルのオーダーのサイズを有する固体粒子から形成されている。それらは有機分子の凝集体、例えば様々な含量の水素と酸素を有する炭素質の分解物(煤またはディーゼル粒子として知られている)の凝集体、および無機分子の凝集体、例えば供給される燃料中に含まれる不燃性の灰から生じるアルカリ、アルカリ土類および重金属の塩および/または酸化物の凝集体から形成されている。
【0007】
有機物由来の微細な粉塵は、その形状によって、セノスフィア(cenosphere)およびプレロスフィア(plerosphere)に分類される。
【0008】
よく知られているように、微細な粉塵は火炎帯を作るどんな燃焼中にも常に存在する。実際、計器や肉眼によって感知されるような可視領域中の炎の発光は、炎中の固体の存在に起因する。なぜなら、可視領域では固体のみが炎の最大温度(3,000K)まで輻射を放出することができるからである。
【0009】
これらの微細な粉塵は、スリーブフィルタ(インパクト濾過)、静電フィルタ(静電場中の泳動)またはpHの異なる水溶液もしくは有機溶液を用いる洗浄集塵装置のような、公知の煙道ガスの工業的後処理方法によっては除去できないことも知られている。
【0010】
上記の公知の方法は、比較的粗い(平均粒径が2.5μmより大きい)粒子の除去には有効であるが、微細な粒子、特に2.5μmより小さい、殊に1μmより小さい粒子サイズを有する微粒子画分の除去には、全く効果がない。後者の粒子サイズは、ヒトや動物の健康にとって最も危険な微粒子画分を表している。実際、これらの微粒子画分は肺胞に残り、重篤な病気を引き起こす。
【0011】
不燃性の灰の存在、すなわち、重い(不揮発性の)灰およびフライアッシュのいずれの存在も、長い間、燃焼プラントにおける技術的な問題となっていた。実際それらは、天然ガスから石油、石炭への化石燃料の歴史的/経済的な分類の要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術において、不燃性の灰を溶融し、燃焼ガス中のフライアッシュを低減するための高温の火炎帯で操作する燃焼装置(スラグ燃焼装置)も知られている。このように、熱い煙道ガスによって運ばれる粉塵の、エネルギー回収プラントの効率に対する悪影響が減少している。これらの燃焼装置の難点は、灰の溶融が定量的でないため、フライアッシュが除去されず、燃料中に含まれるフライアッシュのせいぜい70〜80%が除去されるにすぎないということである。
【0013】
この問題を克服するため、低い灰分含量を有する燃料が用いられる。しかしながら、これらの燃料は大量に入手することができない。よく知られているように、燃料精製方法は極めて高価である。
【0014】
灰を大量に含む燃料は、自然界に極めて豊富にある。その上、世界中の燃料消費量の途方もない増大と、環境およびヒトの健康への影響を制御することへの要求の高まりが、通常の燃料を用いることができて、その上たとえ極めて大量の灰を含んでいても燃焼装置から出てくる燃焼ガス中の微細な粉塵の放出が低減される、利用可能な燃焼方法を求めている。
【0015】
燃焼装置および燃焼装置の下流設備に対する塩基性の灰の腐食作用について、以下のように観察されている。
【0016】
塩基性の灰は、通常、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属の酸化物および/またはそれらの塩から形成されており、不燃性灰の類に含まれる(ISO 1171)。
【0017】
塩基性の灰としても知られている灰の塩基性の部分、特に化石燃料、バイオマスおよび廃棄物の灰に見られる、ナトリウムおよびカリウム化合物に由来する塩基性の部分は、燃焼の火炎中において、時には部分的に溶融し、燃焼装置および熱回収プラントの壁の材質に対して、高い燃焼温度で特に腐食性がある酸化物と塩の形成の原因となっている。
【0018】
上記の壁は、通常、クロムおよびジルコニウム、あるいは例えば鋼、合金のような他の金属素材を任意に含むアルミニウム化合物および/またはケイ素-アルミニウム化合物でできた耐火性物質で被覆されている。鋼と合金は特に熱回収プラントにおいて使用される。
前記のように、塩基性の灰は、耐火性素材を融かすことにより、腐食することができる。従来技術では、そのような腐食剤に対する耐火性を増すため、耐火用に薄層状の99.8%Al2O3を用いてシリカの含量を極めて低い値まで低下させるか、または耐火性の組成物に酸化ジルコニウムを添加することが提案されてきた。しかしながら、これらの改質された耐火性物質も、塩基性の灰による燃焼装置の壁の腐食問題を解決することはできない。
【0019】
従来技術では、クロム合金鋼の熱回収プラントの壁を製造するのに、クロム-ニッケル合金鋼、例えばAISI 304Hから、Inconel(商標)のような高合金のニッケル-クロムまで用いることも知られている。後者は、塩基性の灰による腐食性に対してより耐性がある。しかしながら、Inconel材料の使用は、プラントの建設費を著しく増大させるという欠点がある。
【0020】
さらに、塩基性の灰を形成する化合物のいくつかは、燃焼温度で蒸気を生成し、燃焼ガスの冷却時に該蒸気が固化する。このことが、熱回収プラント壁の腐食の原因となる。その上、凝固物/沈着物がパイプ内およびプラント内に形成され、それが前記の設備を詰まらせる。例えば塩基性の灰が塩化物の塩の形態でナトリウムまたはカリウムを含むとき、それらは比較的低い温度(<1,100°K)で溶融し、燃焼装置の壁を腐食する。それらはかなりの分圧のため、比較的低い温度(<1,300K)で蒸発し、燃焼装置の下流に位置する表面で再結晶化する。このため、設備は取り返しのつかないほどの損傷を受ける。このことは、産業的観点から著しい欠点となっている。
【0021】
従来技術において、大量の塩基性の灰を含む燃料、例えば低ランクの石炭、重質留分、および原油由来のピッチ、ビチューメンがよく知られている。しかしながら、通常、燃料は全て何らかの量の塩基性の灰を含んでいる。
【0022】
塩基性の灰の腐食作用を低減させるため、従来技術において、燃焼装置内での低い燃焼温度、通常650℃〜800℃の採用が提案されてきた。その利点は、燃焼ガス中の塩基性の灰の減少にある。このことは上記の欠点を克服する。しかしながら、このような条件下では、ダイオキシン、フラン、多環性芳香族物質などのような有毒の未燃焼化合物が燃焼装置内で大量に生成する。
【0023】
産業界では、燃焼装置内の塩基性の灰による不都合を減らすため、固形燃料、ビチューメンおよび/または炭質頁岩を低温で気化することが提案されている。しかしながら、これらの方法では、気化のための追加プラントが必要となる欠点がある。いずれにしても、塩基性の灰は、気化装置で得られる合成ガス中に含まれる。それゆえ、上記の問題は解決されないで、下流のプラントに移行するだけである。
ホットガスクリーニング法によって、上記の合成ガスを精製できることも知られている。しかしながら、この方法は高価で特殊な設備を必要とする上、耐用年数を極めて短くする。合成ガスを用いるプラント内で採用されている、より低い温度で該クリーニング処理が行われる場合、熱効率が低下するという欠点がある。
【0024】
従来技術では、固体または液体の燃料から塩基性の灰の前駆物質を燃焼前に除去することがさらに提案されている。このことは、著しい数の化合物が燃料中に存在するので、産業的観点から実現可能ではない。
しかしながら、このような除去が可能だとしても、極めて高価で多段階のクリーニング方法が必要となる。そのため、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属を低含量で含む化石燃料を火力発電所に供給することが常套手段となっているが、それゆえに極めて貴重で高価な石炭を用いることになる。しかしながら、これらの燃料は大量に入手できない。
【0025】
燃焼装置の壁および燃焼装置下流の熱回収プラントの表面に対する塩基性の灰の腐食作用を低下および/または実質的に除去し、同時に使用される燃料がどのようなものであっても、燃焼装置から放出される微細な粉塵(PM 2.5)の環境やヒトの健康に対する影響を低減させるための産業的な方法を利用可能にする必要性が感じられていた。
【0026】
上記の技術的な問題を解決する方法が、本出願人によって、意外にも驚くべきことに見出された。
【0027】
燃焼用剤、燃料および以下の成分を燃焼装置に供給し、燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法が、本発明の目的の一つである。
i) 成分B):成分B)中に存在する硫黄の量 + 燃料中に含まれる硫黄(成分BII))の量の合計モルBIと、
供給燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の量(成分CII)) + 成分B)中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の量(成分C))の合計モルCI
との間のモル比BI/CIが0.5以上となる、硫黄または硫黄含有化合物。
ii) 成分A):低溶融の塩および/または酸化物またはそれらの混合物を含み、1,450K以下の溶融温度を有する成分A)であって、
− 成分A)中の低溶融の塩および/または酸化物またはそれらの混合物の形態にある金属の量と、燃料中に含まれる低溶融の塩および/または酸化物の形態にある金属の量との合計モルA'と、
− 燃料中に含まれる全金属の量と、成分A中に含まれる全金属の量との合計モルA"
との間のモル比、A'/(A"-A')が0.01以上である、成分A)。
【0028】
好ましくは、燃焼装置の温度は、1,500K(1,223℃)〜2,100K(1,827℃)の間に含まれる。
本発明の方法において、燃焼装置の圧力は、好ましくは101.3kPa以上で、約2000kPaまでである。
【0029】
本発明の方法における燃焼用剤としては、好ましくは酸素である。例えば高純度の酸素(98.5容量%)が用いられ得る。一般に、タイター88〜92%VSA(vacuum swing absorption)および88〜92%VPSA(vacuum pressure swing absorption)を有する酸素が用いられ得る。好ましくは、酸素タイターの下限は70容量%であり、100%までの残りは、不活性ガスおよび/または窒素で形成される。
本発明の方法における燃焼用剤は、好ましくは燃料との反応に必要な化学量論量に対して過剰モルで使用される。しかしながら、化学量論量に対して、不足して用いることもできる。
【0030】
本発明の方法において、燃焼装置内の燃料の滞留時間は、0.5秒〜30分以上、好ましくは2秒〜10秒の範囲である。より長い滞留時間も採用できるが、結果に実質的な変化は得られない。
【0031】
燃焼装置の出口における燃焼ガスは、好ましくは1,100K以下の温度、そしていずれにしても、溶融した灰の濃縮蒸気の凝固温度より低い温度で冷却される。このことは、通常の材料で作られた熱回収プラントを使用できるため、有利である。
【0032】
燃料としては、例えば砂糖、動物の飼料、炭素由来のバイオマス、中和反応、高沸点精製留分、ビチューメンおよびオイルシェールからの産業廃棄物、タールサンド、泥炭、使用済み溶剤、ピッチの工程廃棄物、任意にCDR(廃棄物からの燃料)を含んでいてもよい都市廃棄物からの残留物を含む、一般の産業プロセスの廃棄物が挙げられる。石油由来の液状の水-ピッチエマルジョンも用いられ得る。前記のように、これらの燃料はいずれも、塩基性の灰を通常、酸化物および/または塩の形態で含む。
【0033】
前記のように、本発明の方法で使われる燃焼装置は、好ましくは1,700Kより高い温度で、かつ好ましくは200kPaより高い圧力、より好ましくは600kPa〜2,026kPaの圧力で操作されるから、定温型でかつ無炎である。
【0034】
本発明の方法で用いられる定温型の燃焼装置は、本出願人の特許出願WO2004/094, 904に記載されており、この出願は参照としてここに組み込まれる。
燃料が水および/または水蒸気と混合して定温型の燃焼装置中に導入されるとき、該燃焼装置は特許出願WO2005/108, 867に記載されているように作動する。
【0035】
好ましくは、供給される燃焼用剤はリサイクルされる燃焼ガスと予め混合される。該燃焼ガスの量は一般的に10容量%より多く、好ましくは50容量%より多い。リサイクルされる燃焼ガスは、リサイクルされる燃焼ガスの全容量に対して計算して、10容量%より多く、好ましくは20容量%より多く、より好ましくは30容量%より多い量の水蒸気の形態にある水をも含む。
【0036】
供給される燃焼用剤は水蒸気と混合することもでき、該水蒸気は部分的にまたは全体的にリサイクルされる燃焼ガスに置き換え得る。
供給される燃料は、用いられる燃料のタイプに応じた量の水/水蒸気をも含み得る。供給される混合物の低発熱量(lower heating power)(LHV)の値が6,500kJ/kgより大きいという条件で、燃料中の水の割合は、重量%で表して、80%以上であることもできる。
【0037】
燃焼装置の出口におけるガスは、1,100Kより低い最終温度に達するまで、リサイクルされるガスと混合器内で混合することによって冷却される。該燃焼ガスは、水蒸気を生成させるための水が供給される熱交換器に運ばれ得る。熱交換段階に補充された燃焼ガスは、燃焼装置と燃焼装置の出口にある混合器との両方へリサイクルするために、再び幾分か圧縮される。
該燃焼ガスの一部は、燃焼ガスを後処理するため、大気圧にてラミネートされる。好ましくは、燃焼ガスの最終的な生産量に相当する燃焼ガスの部分は、機械的作用を得るために大気圧まで膨張された後、燃焼ガスの後処理部に送られる。膨張されるべき燃焼ガスは、混合器の出口に通じている。
燃焼ガスには、実質的にフライアッシュを含んでいないので、膨張は膨張タービンを用いて行うことができる。
【0038】
燃焼装置の下部には、溶融した灰のための収集容器が設けられている。集められた灰は、次いで例えば水槽内で冷却され、固体ガラス状態で静置沈殿器内に移される。
【0039】
成分i)について、以下のことが観測されている。
燃料中の硫黄成分BII)は、元素の硫黄の形態または硫黄含有有機および無機化合物の形態で存在し得る。
燃料中において、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属の成分CIIは、通常、塩、塩の混合物、酸化物または酸化物の混合物の形態で存在する。
【0040】
好ましくは、モル比BI/CIは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも1、さらに好ましくは少なくとも2である。
燃料中の塩基性の灰に存在する金属が1価の金属のみであるとき、好ましくは、前記の比BI/CIは0.5より大きく、存在する金属が2価の金属のみであるとき、前記のモル比BI/CIは少なくとも1であるのが好ましい。
【0041】
上限はいかなる値をとってもよく、例えばモル比10または100もとり得る。しかしながら、硫黄が大量に含まれる場合、過剰の硫黄を除去するためのプラントが燃焼装置の下流で必要となるため、大量の硫黄を用いない方が好ましいことに気づくべきである。
【0042】
燃焼装置への成分B)の添加は、燃料とは別に、好ましくは燃料と混合して、成分B)を供給することにより行うことができる。
成分B)が元素の硫黄であるとき、それは界面活性剤を含む水性分散液として供給され得る。好適な界面活性剤は、アリールアルキル-またはアルキルアリールスルホネート、ポリエトキシレートなどである。
【0043】
用いられる成分B)の量は、燃焼ガス中で生成するSO2の分圧が0.0004 bar(40 Pa)より高く、好ましくは0.003 bar(300 Pa)までとなるような量であるのが好ましい。例えば、硫黄のような成分B)は、燃焼ガス中にSO2として含まれる。
方法の制御は、好ましくは約10秒の特徴的なレスポンス時間を要するコード(制御ソフトウェア)を用いて行われる。この目的のため、燃焼装置の出口における燃焼ガスは、1.5秒のT95レスポンス時間を与えるように改変されたマルチプルガス分析器、NDIR型(Non Dispersive InfraRed)/NDUV(Non Dispersive Ultra Visible)によってモニターされる。
【0044】
成分B)として、硫黄の代わりに、硫黄含有有機および無機化合物を用いることができる。例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硫化水素、硫酸塩、メルカプタンなどを用いることができる。
【0045】
さらに、極めて高いBI/CI比、したがって極めて高い量の硫黄を用いたときでも、燃焼装置の壁および燃焼装置の下流の熱回収プラントの壁の腐食が見られないことが、本出願人により意外にも驚くべきことに見出された。
【0046】
前記の条件下で操作することによって、燃焼装置から出てくる燃焼ガスが腐食性の塩基性の灰を実質的に含んでおらず、構成材料に対して腐食性の化合物でないことが、本出願人は驚くべきことに意外にも見出した。燃焼装置および熱回収プラントの壁はともに、実質的に影響を受けていないことが分かった。それらは、塩基性の灰によっても、塩基性の灰と燃料中に存在する、例えばバナジウムのような他の成分との組合せによっても腐食していない。
実際、本発明の方法によって、塩基性の灰が不活性な化合物、主に硫酸塩に変換され、それらの化合物が燃焼装置の壁の耐火性物質も、燃焼装置の下流のプラントの壁を形成する金属素材、特に鋼鉄や合金も腐食しないことが、驚くべきことに意外にも見出された。
本出願人は、従来技術ではInconelやHastelloyのような高合金が用いられてきた燃焼装置の下流のプラント、例えばより高温で作動する熱回収プラントの部分において、例えばAISI 304H鋼のような合金も用い得ることを、驚くべきことに意外にも見出した。このことは、経費を節減できるので有利である。
【0047】
燃料中の金属の測定は、プラズマ技術、例えばICP-OESにより燃料の灰について行われる。燃料の灰は、例えばISO 1171試験に従って、または600℃の温度での熱分解後の残渣として得られる。
【0048】
成分ii)について、以下のことが観測されている。
低溶融画分を測定するため、燃料の灰を1,450Kの温度まで上げて溶融し、回収された溶融部分について、金属を測定する。
灰の溶融温度を測定するために、さまざまな方法、例えばASTM D 1857-87試験が用いられ得る。燃料の灰の低溶融画分を、例えば底に直径5mmの孔を有するるつぼを用い、1,450Kで少なくとも2時間加熱することにより分離する。
【0049】
前記のように、モル比、A'/(A"-A')は、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは0.2である。その上限は極めて高くなり得る。上限は例えば1,000,000まで高くなり、通常は100までである。また、(A"-A')=0のとき、上限は無限の値もとり得る。このことは、燃料中に存在する金属の化合物が全て低溶融の化合物であるとき、すなわち、それらが1,450Kより低い温度で溶融するときに起こる。言い換えれば、この場合、上に示したより高い温度で溶融する化合物または混合物を与える金属は存在しない。
【0050】
本発明の方法において、(A"-A')≠0の場合、または(A"-A')=0の場合があり得る。後者の場合、(A"-A')=0の場合でも、燃焼装置の出口における燃焼ガス中の微細な粉塵(PM 2.5)が劇的に低減することが、驚くべきことに意外にも、本出願人により見出された。燃焼装置の下流にある装置の内壁上に、固化した灰の著しい沈着が形成されていないことも見出された。
【0051】
成分A)として、1つ以上の化合物A)と1,450Kより高い溶融温度を有する高溶融の塩および/または高溶融の酸化物との混合物であって、1,450K以下の溶融温度を有する混合物も用いることができる。1つ以上の化合物A)は、好ましくは5重量%より多くの量、より好ましくは30重量%までの量で用いられる。高溶融の化合物の一例はベントナイトである。
【0052】
それゆえ、本発明では、1,450Kより低い溶融温度を有するという条件で、共晶組成物または共晶様組成物を用いることができる。
【0053】
成分A)の低溶融の塩および/または酸化物として、ナトリウムおよび/またはカリウムの酸化物および/または塩、例えば硫酸塩、リン酸塩および塩化物、アルカリおよびアルカリ土類金属のアルミノシリケートなどが用いられ得る。上記の低溶融混合物は当業者により容易に得られる。例えば、「CRC Handbook of Chemistry and Physics」 1996-1887年版または「American Ceramics Society, www.ceramics.org/phase」を参照。
【0054】
その他の任意成分、クレイ、シリカ、アルミナなどを、燃焼装置に加えることもできる。
成分A)は、燃料とは別に、好ましくは燃料と混合して燃焼装置に加えることができる。成分A)が燃料とは別に供給される場合、それは例えば水溶液または水性懸濁液の形態であり得る。成分A)および成分B)を混合して、燃料とは別に供給することも可能である。
【0055】
本出願人は驚くべきことに意外にも、本発明の方法に従って操作される燃焼装置から出てくる燃焼ガス中では、粉塵の量が劇的に減少し、特に2.5μm以下の粒子サイズ、より具体的には1μmより小さい粒子サイズ、さらに具体的には0.4μmより小さい粒子サイズを有する灰画分の量が、劇的に低減することを見出した。
【0056】
本発明の方法において、成分A)中に存在する金属および燃料中に存在する金属のいずれもが燃焼装置内に液状で残り、次いで前記のように燃焼装置の底から除去されることが、意外にも驚くべきことに、本出願人により見出された。
さらに、EC 2000/76基準によるPM 2.5の排出値は、50μg/Nm3より低い値に減少している。
【0057】
2.5μmより小さい粒子径を有する粒子を制御する方法は、燃焼装置の出口における燃焼ガス内に置かれたセンサーを用いて行われる。例えばオパシメーターを用いることができる。具体的には、器具ELPI(Electrical Low Pressure Impactor)を用いることができる。これは、一般的に2.5〜0.01μmの粒子サイズを有するPUF(Ultra Fine Particulate)を10分間隔で連続的にスキャンすることにより作動する。これは、上記の濃度より十分に低い総PUF含量、従来技術で例えばBATで報告されているものより数桁低い総PUF含量を維持するために、燃焼装置内の化合物A)の含量についての必要な情報を提供する。
【0058】
前記のように、本発明の方法は、通常、燃焼ガス中に微細な粉塵の形態で相当量存在する重金属も燃焼装置内で溶融状態に保持する場合に、特に有効であるということが、驚くべきことに意外にも、本出願人により見出された。
例えば、従来技術の燃焼方法では、CdO酸化物の形態にあるカドミウムが揮発し、その全てが燃焼ガス中で超微細の粒子として存在し、燃焼ガスの後処理プラントを事実上そのまま通り抜けているということがよく知られている。それとは逆に、本発明の方法で採用される条件下では、酸化カドミウムは大気中に放出される燃焼ガスからほとんど完全に除去されている。
【0059】
本発明の方法によれば、その他の重金属、例えばマンガン、銅、クロム、バナジウム、鉛もほとんど定量的に除去することができる。
【0060】
マンガンおよび銅は、燃焼条件によっては、高溶融酸化物であるMn2O3およびCuOの形態でそれぞれ見出される。本発明の方法によれば、微細な粉塵PM 2.5中のこれらの酸化物の総定常濃度を、10μg/Nm3より低く、したがって、上記の基準および従来技術、例えばBATの制限より十分に低い濃度に維持することが可能である。
【0061】
クロムは、クロム鉄鉱、すなわちクロム(III)(3価クロム)の形態で灰の中に見出されるが、これには毒性がある。クロムは、クロム酸塩、重クロム酸塩、すなわちクロム(VI)(6価クロム)の形態でも見出されるが、これには強い毒性がある。クロム(III)は、塩基および酸の存在下で、またはアルカリクロマイトの形態で、比較的低い温度(700K)で1時間より長い時間加熱することによって、その大部分がクロム(VI)に変換されることが知られている。上記の温度条件と時間は、例えば従来技術の気化方法において採用されている。
クロム鉄鉱は、強アルカリの存在下で1,450Kより高い温度で、燃焼装置内の滞留時間を短くすることによって、クロム(VI)に変換され得ることも知られている。クロム(VI)は、化石燃料や廃棄物に見られるあらゆる燃焼方法のフライアッシュ中に様々な量で見出されている。
【0062】
本発明の方法によれば、クロムは、溶融した灰の中にほとんど定量的に保持されていることが、驚くべきことに意外にも見出された。微細な粉塵中に見出されるクロム(VI)は、採用される分析法の感度限界(0.01μg/Nm3 - NIOSH 7600)より低い。
したがって、本発明の方法は、燃焼ガスからこの金属を除去するのに有効である。そのため、極めて高いクロム含量を有する燃料に対しても、本発明の方法を採用することができる。例えば40,000 ppmのオーダーの量のクロム(III)を含むなめしスラリーも、本発明の方法に用いることができ、エネルギーを生み出す。なめし用スラリーは、ヒトの健康にとって危険な塩基性のクロム鉄鋼の形態にあるクロム(III)を含む。本発明による燃焼方法を用いることにより、燃焼ガス中の微細な粉塵中のクロム(VI)の量を0.1μg/Nm3より低くできることが見出された。
【0063】
バナジウムは原油中に存在し、特に重質原油中、ビチューメン中、シェールおよびタールサンド中、ならびに原油処理の廃棄重質留分中にも、高濃度で存在する。バナジウムは毒性のある重金属である。
【0064】
本発明の燃焼方法で採用される温度では、バナジウムはV2O5酸化物の形態にあり、これは高融点の固体である。1,670Kより高い温度で、V2O5は揮発性のVO2に変化する。さらに、V2O5はSO2からSO3への変化の触媒となる。この化合物は硫酸を形成するため、特に腐食性のガスであり、熱回収プラントが操作される温度で、燃焼装置の下流のプラントの壁に沈着する。
【0065】
本発明の方法では、1,500K〜1,670Kの燃焼温度で操作することにより、燃焼ガス中のバナジウムの量を著しく低減できることが、驚くべきことに見出された。
本発明の方法では、特別な材料で作られたプラントを除き、前記のような著しい不便はあるが、従来技術の燃焼装置では用いることができなかった低ランクの燃料の使用もそれゆえ可能である。
【0066】
さらに、ジュール-ブリトン(Joule-Bryton)サイクルを本発明の燃焼装置と結合させることが可能である。例えば1,000kPaに加圧し、続いて最終的な燃焼ガスの生成をターボ膨張させ、高温ガスを燃焼装置または混合冷却器へリサイクルする前に、高温ガスから回収された熱に対してランキン(Rankine)サイクルする。このようにして、熱エネルギーから電気エネルギーへの57%より高い変換効率が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下の実施例は、本発明を非限定的に説明するものである。
【実施例】
【0068】
実施例1
粉塵の特徴づけ
14リットル/分のサンプル流量、および空気動力学的直径が10〜9μm; 9〜5.8μm; 5.8〜4.7μm; 4.7〜3.3μm; 3.3〜2.1μm; 2.1〜1.1μm; 1.1〜0.7μm; 0.7〜0.4μmの範囲の粒度分布分画用フィルタを用いることによって空気動力学的直径が10μmより大きい粒子を除去し、PM 10を分離できるプレセパレータを備えたAndersen Mark III型インパクタにより、燃焼ガス中に含まれる微粒子を集める。
【0069】
サンプリング終了後に、集めた微粒子画分を走査型電子顕微鏡法(SEM)およびX線解析による物理化学的分析に付した。
【0070】
エネルギー分散型分光法による微量分析のためのシン・ウィンドウEDXシステムを備えたSEM Philips XL30顕微鏡により、予め定められた閾値を超えたときに、粒子を自動的に検出できる自動システムを用いて粒子の化学的分析を行った。
【0071】
X線スペクトルの特性を示す線の強度を測定することにより特定された粒子のそれぞれについて形態学的パラメータとその構成を測定し、次いで対応する原子の濃度に換算した。
【0072】
Andersenインパクタの最終段階から抜け出す0.4μmより小さいサイズの微粒子を、十分でかつ統計的に有意な数の粒子を熱泳動効果によって集めることができる空気圧式アクチュエータを用いた原子間力顕微鏡による分析のために、マイカ(雲母)支持体上に集めた。インパクタから出てくるガスの流れを、次いで燃焼蒸気の凝縮システムに送る。凝縮相をナノメートル微粒子(< 0.4μm)の濃度を測定するための分光分析に付した。
【0073】
金属の分析をThermo Electron CorporationのICP-OES装置による誘導プラズマ分光により行う。
硫黄および硫酸塩を化学的分析により測定する。
燃料中の灰をISO 1171試験により測定する。
灰の溶融温度をASTM D 1857-87試験により測定する。
【0074】
底に直径5mmの孔を有するるつぼを用い、るつぼ内の灰の試料を1,450Kに加熱し、少なくとも2時間この温度を維持することにより、燃料の灰の低溶融画分を測定する。るつぼの底から流れ出る溶融画分の重量を測定する。その中に含まれる金属を上記で報告された方法により測定する。
水分は、慣用の分析手順、例えばカール・フィッシャー器具を用いて測定した。
【0075】
実施例2
定温型でかつ無炎の5MWの燃焼装置を、1,750Kおよび400kPaで操作する。
燃焼用剤は、タイター92容量%を有する酸素からなり、化学量論量に対して過剰に供給される。
【0076】
7.3 リットル/分の割合で供給される燃料は、以下の分析特性(重量%)を有する市販の重油である。
アスファルテンおよび炭素質材料の含量 16%
硫黄 0.9%
灰 0.2%
【0077】
灰は、1,450K以下の温度で溶融するいかなる画分も含まない。ICP-OESによって測定される油中の金属の全量は、0.08重量%に等しい。
金属量の大部分は、カルシウムである(油の0.014重量%)。アルミニウムおよびシリコンも検出された。
【0078】
硫酸カリウム(溶融温度1340K)の6% w/w水溶液を0.1リットル/分の割合で、燃焼装置に分けて供給する。
【0079】
燃料および硫酸カリウムの両方に対して行われた任意の金属の光学的ICP分析により、モル比、A'/(A"-A')は0.3であることが見出されている。
モル比、BI/CIは約10であることも見出されている。
【0080】
Andersenインパクタにより行われた分析は、以下の結果を与えた。
煤とも呼ばれる有機物由来(炭素、水素および酸素を含むセノスフィアおよびプレロスフィア)を有する微細な粉塵の不存在(すなわち、分析法の感度限界以下)。
1mg/Nm3(定常値)より低い量の無機粉塵。
燃焼ガスの濾過後、PM 2.5が3μg/Nm3(定常値)である。
【0081】
煙塵中に存在する金属は、主にカリウムおよびカルシウムであり、微量成分としてアルミニウム、鉄および亜鉛である。
燃焼装置および熱回収プラントの壁を、方法の終了後に検査した。腐食は見られなかった。
【0082】
実施例3(比較)
予熱空気(1,300K、大気圧)を用いる従来技術の加熱無炎の6MWの燃焼装置に、実施例2の重油を7.3 リットル/分の割合で供給する。硫酸カリウム水溶液は供給しない。
酸素を実施例2のように供給する。
【0083】
燃焼ガス中の粉塵の分析を、スリーブフィルタで燃焼ガスを濾過した後に行った。濾過された燃焼ガスは、多量の有機粒子(セノスフィアおよびプレロスフィア)を含むことが分かった。
その上、PM 10(有機および無機粒子を含む)は6mg/Nm3であり、PM 2.5は4mg/Nm3であることが分かった。それゆえ、PM 2.5はPM 10の大部分を占める。
【0084】
実施例2で得られた結果を比較実施例3で得られた結果と比較することにより、本発明の燃焼方法からの燃焼ガス中のPM 2.5は、比較実施例3の燃焼装置のものより約3桁低いことが分かった。
【0085】
実施例4
定温型でかつ無炎の5 MW燃焼装置を、1,650Kおよび500kPaで操作する。
燃焼用剤はタイター92容量%を有する酸素であり、化学量論量に対して過剰に供給する。
【0086】
本発明の方法の性能を調べるために、供給物がクロムのような有毒の金属を多量に含むとき、市販のなめし塩(クロム鉄鉱の形態にある)の水溶液を、市販の石灰Ca(OH)2で沈殿させることにより、水性スラリーを調製する。
【0087】
このスラリー中に含まれる固形物の分析(重量%)は、以下の結果を与えた:
CaSO4 70%
Cr(OH)3 26%
ICP-OES分析によると、100%との差は主にナトリウムおよび亜鉛のようなその他の金属である。
【0088】
水性スラリーのタイターを、固形物の45重量%になるように水で調整する。
次いで、硫黄(25 g/リットルスラリー)および非イオン性界面活性剤(ポリエトキシレート)(3 g/リットルスラリー)をスラリーに加える。
【0089】
軽油(ディーゼル油)を5リットル/分の割合で燃焼装置に供給する。
ディーゼル油とは別に、0.5リットル/分の割合でスラリーを供給する。これは、約2kg/時間のCr(III)の供給割合に相当する。
【0090】
また、懸濁状態の25重量%の市販のベントナイト(Al2O3・4SiO2、溶融温度1,590K)および4重量%のピロリン酸カリウム(溶融温度1,363K)を含む硫酸カリウム(溶融温度1,340K)の9重量%水溶液を、0.3リットル/時間の割合で燃焼装置に供給する。
【0091】
スラリー、油、ベントナイト、硫酸カリウムおよびピロリン酸カリウムについて行ったICP-OES分析に基づいて、モル比、A'/(A"-A')が0.13であることが分かった。
モル比BI/CIが1.1であることも分かっている。
【0092】
燃焼装置の出口でサンプリングされた燃焼ガスについて分析を行う。
燃焼ガス中の無機粉塵の全量は約4mg/Nm3である。この粉塵について行われた金属分析は、次の金属:Na、Ca、K、S、Feが主成分であることを示す。
特に、クロム(III)の量が0.1mg/Nm3より少ないことが分かった。その代わり、クロム(VI)は存在しない(NIOSH法)。
大気中に放出される燃焼ガス中で、PM 2.5(定常値)は19μg/Nm3である。クロム(III)は1μg/Nm3より少なく、クロム(VI)は存在しない。
【0093】
燃焼装置および熱回収プラントの壁を、方法の終了後検査する。腐食は見られなかった。
【0094】
沈殿器(settler)から排出されたガラス化スラグを、有機物および重金属の浸出試験に付す。スラグは不活性として分類される範囲内にある。UNI EN12457規格の1〜4部を参照。
スラグの分析は、それらが水性スラリーCaSO4/Cr(OH)3で供給されたものに相当する量のクロムを含むことを示している。
【0095】
実施例5(比較)
硫黄ならびに懸濁状態のベントナイトおよびピロリン酸塩を含む硫酸カリウムの溶液を供給しないことを除いて、実施例4の条件下に燃焼装置を操作する。
【0096】
燃焼装置の出口での燃焼ガス中の粉塵は1g/Nm3より多い量である。該粉塵の金属分析は、それらがかなりの量のクロム(III)を含むことを示す。
燃焼装置の出口、Andersenインパクタの上流に位置する分離用サイクロンの壁を視覚的に検査する。厚い、黄緑色の塵の層が、上記の壁を覆っていることが分かった。比色試験(EPA7196)により、この層はかなりの量のクロム(VI)を含むことが分かった。
【0097】
実施例4で得られた結果では、比較実施例5のものと比較すると、本発明の方法における燃焼装置の出口では、クロム(III)の量が極めて少なく、クロム(VI)が存在しないのに対して、比較実施例5の方法では、クロム(III)とクロム(VI)の両方が存在しており、前者がかなりの量であるという結果が得られた。
【0098】
実施例6
定温型でかつ無炎の5MWの燃焼装置内に、燃料として塩基性の灰を含むオリーブの外皮を、乾燥物に対して水62重量%の水中スラリーの形態で供給する。燃焼用剤は、タイター92容量%を有する酸素であり、燃焼装置から出てくる燃焼ガス中の酸素濃度を1〜3容量%になるように、化学量論量に対して過剰量で燃焼装置に供給した。
【0099】
オリーブの外皮は、以下の含量(重量%)の硫黄、灰全体および水分を含有する:
硫黄 0.1
灰全体(600℃での残滓) 7
水分 9
【0100】
灰中に存在する金属をICP-OES分析により測定する。最も多い量の金属は、重量%として、Ca 13.0%、およびK 18.0%である。
この灰は、1,450Kより低い溶融温度を示す。
【0101】
オリーブの外皮のスラリーは、乾燥物に対して計算して62重量%の水となるように、固形物をタンク中で攪拌しながら水と混合することにより調製する。
仕込みバッチ3m3を毎回調製する。
【0102】
粉末形態の硫黄およびアルキルアリールスルホン酸ナトリウム界面活性剤を上記のスラリーに攪拌下に加えて、以下の濃度を得る。
硫黄:9 kg/3 m3スラリー
界面活性剤:60 g/3 m3スラリー
【0103】
オリーブの外皮の水性スラリーを、乾燥オリーブの外皮に対して計算して1,200 kg/時間の割合で、燃焼装置に供給する。
モル比BI/CIが0.9であることが分かった。
燃焼装置は計120時間操作される。
燃焼装置の出口における燃焼ガスは、600 ppvの濃度のSO2および65 ppvの濃度の塩酸を含む。
大気中に放出される燃焼ガスの分析は、有機粉塵の不存在を示した。PM 2.5は25μg/Nm3である。
【0104】
8時間ごとに、約700 kgの湿ったガラス化スラグを沈殿器から排出する。
ガラス化スラグを、有機化合物と重金属の測定のための浸出試験に付す。このスラグは、不活性として分類される範囲内にある。UNI EN 12457規格の1〜4部を参照。
【0105】
方法の終了後、燃焼装置および熱回収プラントの壁を検査する。腐食は見出されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用剤、燃料および以下の成分を燃焼装置に供給し、燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法:
i) 成分B)中に存在する硫黄の全量 + 燃料中に含まれる硫黄の全量との合計モルBIと、
燃料中に含まれるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の全量 + 成分B)中に含まれる塩および/または酸化物の形態にあるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の量との合計モルCIとの間のモル比BI/CIが0.5以上となる量の硫黄または硫黄含有化合物である、成分B)、
ii)低溶融の塩および/または酸化物を含み、1,450K以下の溶融温度を有する成分A)であって、成分A)中の低溶融の塩および/または酸化物の形態にある金属と、燃料中に含まれる低溶融の塩および/または酸化物の形態にある金属の量との合計モルA'と、
燃料中に含まれる全金属の量と、成分A中に含まれる全金属の量との合計A"との間のモル比、A'/(A"-A')が0.01以上である、成分A)。
【請求項2】
燃焼装置内の圧力が101.3kPa以上〜約2,000kPaの値に含まれ、その温度が1,500K〜2,100Kの間に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃焼用剤が酸素であり、燃料に対して過剰に用いられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
燃焼装置の出口における燃焼ガスが1,100K以下の温度で冷却される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
燃料の燃焼装置内の滞留時間が0.5秒〜30分の範囲にある、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
燃焼用剤が、リサイクルされる燃焼ガスと予め混合され、該燃焼ガスの量が10容量%より多い、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
リサイクルされる燃焼ガスが、リサイクルされる燃焼ガスの総容量に対して計算して、10容量%より多い量の水蒸気の形態にある水を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
重量%で表して80%までの量の水が供給燃料に含まれるか、または付加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
モル比、BI/CIが少なくとも0.7、好ましくは1、より好ましくは2である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
燃焼装置への成分B)の添加が、燃料とは別に、または燃料と混合して成分B)を供給することにより行われる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
成分B)が硫黄であるとき、界面活性剤を含む水性分散液として供給される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
成分B)の供給量が、燃焼ガス中のSO2の分圧が40 Paより高くなるような量である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
モル比A'/(A"-A')が、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは0.2、さらに好ましくは100であり、1,000,000までである、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
燃焼装置への成分A)の添加が、燃料とは別に、または燃料と混合して成分A)を供給することにより行われる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
成分A)が、水溶液または水性懸濁液の形態で、燃料とは別に供給される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
成分A)およびB)が混合物として、燃料とは別に加えられる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法により得られる燃焼ガス。

【公表番号】特表2011−505541(P2011−505541A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536363(P2010−536363)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010095
【国際公開番号】WO2009/071238
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505394220)
【氏名又は名称原語表記】ITEA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pollastri,6,I−40138 Bologna,ITALIA
【Fターム(参考)】