説明

燃焼炉

【課題】投入される燃料に含まれる塩素化合物をリアルタイムに検出することが可能な燃焼炉を提供する。
【解決手段】燃焼炉は、投入された燃料を内部で燃焼させる火炉3と、火炉3の内部に設置された棒状部材23と、棒状部材23の映像を撮像し分析するための窓29、カメラ31、映像処理部33を備えている。映像処理部33は、棒状部材23において発生するバイルシュタイン反応による所定波長の光を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を内部で燃焼させる火炉を備える燃焼炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼炉においては、火炉に投入された燃料が塩素化合物を含むと、腐食性のガスや腐食性の灰が発生し、燃焼炉の短寿命化を招くことから、燃料に塩素化合物が含まれることは好ましくない。ところが近年、この種の燃焼炉は、例えば、木屑、タイヤ、或いはRPFといったような必ずしも性状が一定しない燃料への対応が求められる場合も多い。このような燃料を用いる場合、燃焼炉の腐食抑制のための適切な対応を行うべく、燃料中に塩素化合物が含まれている場合にはそれを検知することが求められる。
【0003】
従来、燃料に含まれる塩素化合物を検出する方法としては、例えば、下記特許文献1に記載の方法が知られている。この方法は、プラスチック試料の赤外線透過光又は反射光のスペクトルに基づいて当該試料の成分を判別するものである。
【特許文献1】特開2006−84350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法による燃焼炉の燃料の検査を行うとすれば、燃料を定期的にサンプリングする必要があり、火炉に投入される燃料を連続的にリアルタイムに検査することはできない。また、燃料中の塩素化合物を精度良く検出するためには、サンプリングの頻度を多くするしかなく、煩雑な運用が必要になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、投入される燃料に含まれる塩素化合物をリアルタイムで検出することが可能な燃焼炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃焼炉は、投入された燃料を内部で燃焼させる火炉と、火炉の内部に設置された銅製の部材と、銅製の部材を観察する観察手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この燃焼炉において、火炉内の上記銅製の部材に燃料中の塩素化合物が接触した場合、炎色反応により所定の色(緑色)の炎が発生する。そして、銅製の部材を観察する観察手段により上記所定の色の炎を検出することができるので、燃料中の塩素化合物の存在をリアルタイムで検知することができる。
【0008】
また、観察手段は、銅製の部材において発生する光を受光する受光部と、受光部で得られた光を分析し所定の波長の光を検出する光分析部と、を有することとしてもよい。この構成によれば、炎色反応の炎に起因する所定の波長の光を検出することにより、炎色反応の発生を検出することが可能となる。
【0009】
また、銅製の部材は、火炉の内部において、燃料の投入口を通じて投入される燃料が接触する位置に配置されることが好ましい。この構成によれば、投入直後の燃料が銅製の部材に接触するので、確実に燃料中の塩素化合物を検出することができる。
【0010】
具体的には、投入口は、火炉を区画する側壁に形成されており、銅製の部材は、火炉の内部において、投入口の前方斜め下方を横切って延びる棒状部材であることとしてもよい。また、投入口は、火炉を区画する側壁に形成されており、銅製の部材は、火炉の内部において、火炉の側壁に設けられ投入口の周囲に配置されることとしてもよい。これらの構成によれば、より確実に燃料中の塩素化合物を検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃焼炉によれば、投入される燃料に含まれる塩素化合物をリアルタイムで検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る燃焼炉の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示す外部循環型(Circulating FluidizedBed型)の流動層型燃焼炉1は、縦長円筒形状をなす流動層型の火炉3を備えている。火炉3の中間部には燃料を投入する燃料投入口3a、上部には燃焼ガスを排出するガス出口3bが設けられている。燃料投入装置5からこの火炉3に供給される燃料は、燃料投入口3aを通じて火炉3の内部に投入される。
【0014】
火炉3のガス出口3bには固気分離装置として機能するサイクロン7が接続されている。サイクロン7の排出口7aはガスラインを介して後段のガス処理系に接続されている。また、サイクロン7の底部出口からはダウンカマーと称されるリターンライン9が下方に延びており、リターンライン9の下端は火炉3の中間部側面に接続されている。
【0015】
火炉3内では、下部の給気ライン3cから導入される燃焼・流動用の空気により、上記投入口3aから投入された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら約800〜900℃で燃焼する。サイクロン7には、火炉3で発生した燃焼ガスが固体粒子を同伴しながら導入される。サイクロン7は、遠心分離作用により固体粒子と気体とを分離し、分離された固体粒子をリターンライン9を通して火炉3に戻すと共に、固体粒子が除かれた燃焼ガスを排出口7aからガスラインを通じて後段のガス処理系に送出する。
【0016】
この火炉3では「炉内ベット材」と呼ばれる固形物が発生し底部に溜まるが、この炉内ベット材で不純物(低融点物質等)が濃縮されて起こるベット材の焼結及び溶融固化、或いは不燃夾雑物による動作不良を抑制することが必要である。このため、火炉3では、底部の排出口3dから炉内ベット材が定期的に外部に排出されている。排出されたベット材は、循環ライン(図示せず)上で金属などの不適物を取り除いた後、再び火炉3に投入される。
【0017】
上記のガス処理系は、サイクロン7のガス排出口7aにガスラインを介して接続されたガス熱交換装置13と、このガス熱交換装置13の排出口13aにガスラインを介して接続されたバグフィルタ(集塵器)15とを備えている。ガス熱交換装置13には、排ガスの流路を横切るように水を流動させるボイラチューブ13bが設けられている。サイクロン24から送られた高温の排ガスがこのボイラチューブ13bに接触することで、排ガスの熱がチューブ内の水に回収され、発生した高温の水蒸気がボイラチューブ13bを通じて発電用のタービンに送られる。バグフィルタ15は、この可燃性ガスに未だ同伴している飛灰等の微粒子を除去する。バグフィルタ15の排出口15aから排出された清浄なガスはガスライン及びポンプ17を経由して煙突19から外部に排出される。
【0018】

この燃焼炉1は、例えば、木屑、タイヤ、或いはRPF等の性状が一定しない燃料にも対応することが可能である。この種の燃料は塩素化合物を含む場合があり、塩素化合物を含む燃料が火炉3内に投入されると、腐食性の排ガスや灰が発生し、ボイラチューブ13b等を腐食させることが問題となる。従って、燃焼炉1の運転中には、火炉3に投入される燃料の性状をモニタし、燃料が塩素化合物を含むと判断される場合には、燃料供給系を調整する等の措置が必要な場合もある。そこで、この燃焼炉1は、燃料中の塩素化合物を検出する塩素検出部21を備えている。
【0019】
図2に示すように、塩素検出部21は、火炉3の側壁3sに開口する上記燃料投入口3aの近傍に構築されている。この塩素検出部21は、火炉3の内部において、側壁3sに隣接する側壁3tから水平に延びる銅製の棒状(ここでは、丸棒状)の部材23を有している。この棒状部材23は、燃料投入口3aよりも低い位置において、燃料投入口3aの前方斜め下方を横切って延びている。側壁3tには、開閉可能な棒挿入口27が設けられ、この棒挿入口27を通じて棒状部材23を火炉3の外側に抜き出すことが可能であり、棒状部材23のメンテナンスの容易化が図られている。
【0020】
更に、塩素検出部21は、燃料投入口3aの側方に設けられ透明の板材が取り付けられた窓29と、当該窓29を通じて火炉3の外部から棒状部材23を撮像するカメラ(受光部)31と、当該カメラ31により得られた映像を分析する映像処理部(光分析部)33と備えている。カメラ31は撮像で得られる棒状部材23の映像を、映像データとして映像処理部33に送信する。映像処理部33は、カメラ31で得られた映像データの処理を行い、当該映像データ中に基準の強度以上の波長510nm前後の光を検出した場合には、警告を発するように構成されている。
【0021】
このような火炉3に塩素化合物を含む燃料が投入された場合を考えると、投入された燃料は、燃料投入口3aを通過して火炉3の内部に落下する。このとき、燃料投入口3aの前方斜め下方を横切る位置に棒状部材23が延在しているので、落下する燃料は、投入直後ほぼ確実に、最初に棒状部材23に接触する。このとき、火炎が存在する棒状部材23の位置において、燃料中の塩素化合物と銅からなる当該棒状部材23とが接触することにより、バイルシュタイン反応(炎色反応)によって緑色の炎が棒状部材23周囲に発生する。すなわち、ここでは、棒状部材23から、波長510nm前後の光が発せられる。この光は、カメラ31で受光され映像データとして映像処理部33に送信される。そして、映像処理部33は、映像処理を行い、上記映像データ中に基準強度以上の波長510nm前後の光を検出し、警告を発する。
【0022】
以上の塩素検出部21の構成により、燃料中に塩素化合物が含まれる場合には当該塩素化合物をリアルタイムで検出することができ、映像処理部33が警告を発するので、燃焼炉1の運転において、燃料供給系の操作等の必要な措置を取ることが可能となる。
【0023】
(第2実施形態)
図3に示すように、燃焼炉51の塩素検出部61は、燃料投入口3aの周囲に設けられた銅製の樋部53を有している。樋部53は、燃料投入口3aの下縁に沿って側壁3sに固定され、円筒側面の一部の形状をなし、燃料投入口3aから斜め下方に向かって延びている。このような銅製の樋部53には、燃焼投入口3aから投入される燃料が、投入直後最初に確実に接触するので、前述のバイルシュタイン反応を発生させることができる。
【0024】
更に、この塩素検出部61は、燃料投入口3aの上縁に沿って側壁3sに固定され、円筒側面の一部の形状をなし、燃料投入口3aから斜め下方に向かって延びる銅製の上方樋部55を有している。この上方樋部55には、投入直後に上方に舞い上がる燃料が接触しバイルシュタイン反応を発生させる。従って、この上方樋部55によれば、重量が軽く舞い上がり易い燃料が塩素化合物を含む場合にも、バイルシュタイン反応を発生させることができる。また、窓29とカメラ31とは、樋部53及び上方樋部55を一緒に撮像し易い位置として、側壁3tに配置されている。
【0025】
なお、この燃焼炉51において、前述の燃焼炉1と同一又は同等な構成部分には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る燃焼炉の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の燃焼炉の燃料投入口付近を、火炉の内部側から見た形状を示す図である。
【図3】本発明に係る燃焼炉の第2実施形態において、燃焼炉の燃料投入口付近を、火炉の内部側から見た形状を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1…燃焼炉、3…火炉、23…棒状部材(銅製の部材)、29…窓(観察手段)、31…カメラ(観察手段、受光部)、33…映像処理部(観察手段、光分析部)、53,55…樋部(銅製の部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された燃料を内部で燃焼させる火炉と、
前記火炉の内部に設置された銅製の部材と、
前記銅製の部材を観察する観察手段と、
を備えたことを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
前記観察手段は、
前記銅製の部材において発生する光を受光する受光部と、
前記受光部で得られた光を分析し所定の波長の光を検出する光分析部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の燃焼炉。
【請求項3】
前記銅製の部材は、
前記火炉の内部において、前記燃料の投入口を通じて投入される前記燃料が接触する位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼炉。
【請求項4】
前記投入口は、前記火炉を区画する側壁に形成されており、
前記銅製の部材は、
前記火炉の内部において、前記投入口の前方斜め下方を横切って延びる棒状部材であることを特徴とする請求項3に記載の燃焼炉。
【請求項5】
前記投入口は、前記火炉を区画する側壁に形成されており、
前記銅製の部材は、
前記火炉の内部において、前記火炉の側壁に設けられ前記投入口の周囲に配置されることを特徴とする請求項3に記載の燃焼炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−250511(P2009−250511A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98349(P2008−98349)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】