説明

燃焼装置

【課題】安定した低燃焼工程を実現できる燃焼装置の提供。
【解決手段】ファンの回転速度を、少なくとも高燃焼用回転速度、着火用回転速度、または高燃焼用回転速度および着火用回転速度より低い回転速度の低燃焼用回転速度に制御することにより風量調整を行う送風装置と、少なくとも高燃焼用風量位置、高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置、または低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置とに配置されることにより、送風装置からの風量を制御するダンパとを備え、着火工程においては、ファンの回転速度を着火用回転速度、ダンパを着火用風量位置とし、低燃焼工程においては、ファンの回転速度を低燃焼用回転速度、ダンパを低燃焼用風量位置とし、高燃焼工程においては、ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、ダンパを高燃焼用風量位置として、燃焼を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファンの回転速度を制御することにより風量調整を行う送風装置を備えた燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼状態を高燃焼、低燃焼、停止の三位置など設定された複数の燃焼状態で燃焼制御を行う、ボイラなどの燃焼装置においては、各燃焼状態に応じて必要とされる空気量がそれぞれ異なる。そこで、送風装置を構成するファンを備えた電動機にインバータを接続し、ファン回転速度を増減することにより、各燃焼状態において必要とされる量の燃焼用空気を供給することが行われている。
【0003】
しかしながら、このような燃焼装置においては、送風装置がファン回転速度の変更を開始してから必要な風量に達するまでにある程度の時間を要するのに対し、燃料供給量の変更は弁の切替えにより瞬時に行われるため、燃料と空気量との比率(以下、「空燃比」と言う。)が崩れ、燃焼不良が発生するという問題があった。
【0004】
そこで、下記特許文献1に開示される燃焼装置が提案されている。特許文献1に記載の燃焼装置は、送風装置と燃焼装置とを結ぶ風道にダンパを設け、ダンパの開度として全開、着火時用開度、全閉の3つの開度を設定しており、図5に示すように、ファン回転速度をパージ用回転速度とし、ダンパを着火用開度とした状態で着火工程を行い、着火工程終了後において低燃焼工程へ移行する際、まずファン回転速度の低燃焼用回転速度への移行を開始し、前記回転速度の変更開始時点から所定時間経過後にダンパを全開とすることにより、空燃比の崩れを抑えようとするものである。
【0005】
また、特許文献1に記載の発明は、低燃焼工程においては常にダンパ開度を全開としてダンパによる風量の制御を行わず、ファン回転速度の変更のみで低燃焼工程に必要な風量とするものである。
【特許文献1】特開平9−210349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の燃焼装置は、低燃焼工程において、ダンパを全開位置とした状態でファン回転速度を低燃焼工程に必要な風量となるまで落とすために、送風装置から供給される燃焼用空気の吐出圧が弱く、火炎により生ずる風圧の影響を強く受けることになるため、送風装置から供給される風量が安定せず空燃比が崩れ易い状態となり、燃焼が不安定になるという問題点があった。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、低燃焼工程においても安定した燃焼を行うことのできる燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ファンの回転速度を、少なくとも高燃焼用回転速度、着火用回転速度、または前記高燃焼用回転速度および前記着火用回転速度より低い回転速度の低燃焼用回転速度に制御することにより風量調整を行う送風装置と、少なくとも高燃焼用風量位置、前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置、または前記低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置とに配置されることにより、前記送風装置からの風量を制御するダンパとを備えており、着火工程においては、前記ファンの回転速度を着火用回転速度、前記ダンパを着火用風量位置とし、低燃焼工程においては、前記ファンの回転速度を低燃焼用回転速度、前記ダンパを低燃焼用風量位置とし、高燃焼工程においては、前記ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、前記ダンパを高燃焼用風量位置とすることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、各燃焼状態においてそれぞれ必要な風量を供給できるとともに、送風装置側の吐出圧が火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けないようにすることができ、低燃焼工程においても安定した燃焼を行うことができる。その結果、風量の減少を前記ファンの回転速度のみで調整するものと比較して、風量および燃料供給量を低くした状態で安定した燃焼を行うことができるため、低燃焼工程における燃焼量を低減することが可能となり、ターンダウン比(低燃焼量に対する高燃焼量の比率)を大きくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記ファンの回転速度を着火用回転速度とし、前記ダンパを着火用風量位置とした状態で着火工程を行い、前記着火工程終了後、前記送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始し、前記ファンの回転速度の変更開始時点から所定時間経過後、前記ダンパを低燃焼用風量位置まで開くようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、着火工程に続く低燃焼工程において適切な風量とするとともに、送風装置側の吐出圧が火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けないようにすることができ、着火工程から低燃焼工程への移行を安定して行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2の構成要件に加え、着火工程およびその後の低燃焼工程の燃料供給量を同じとしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、着火工程においても燃焼量を低減することが可能となり、着火衝撃をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、各燃焼状態においてそれぞれ必要な風量を供給できるとともに、送風装置側の吐出圧が火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けないようにすることができ、低燃焼工程においても安定した燃焼を実現できる。さらに、低燃焼工程における燃焼量を低減することが可能となり、ターンダウン比を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。本発明は、高燃焼、低燃焼および停止の三段階で燃焼量を調整する三位置式燃焼制御などの多位置式燃焼制御を行う燃焼装置に用いられる。本発明の燃焼装置は、燃焼室へ燃焼用空気を供給する送風装置を備えている。この送風装置は、ファンを備えた電動機と、電動機に接続されファンの回転速度を制御する風量制御装置とを備えている。この風量制御装置としては、特に限定されないがインバータが好適に用いられる。前記送風装置は、ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、着火用回転速度および低燃焼用回転速度に増減することにより、三段階の風量を供給する。この高燃焼用回転速度および着火用回転速度は、低燃焼用回転速度よりも速い回転速度に設定されている。この着火用回転速度は、簡単化のため高燃焼用回転速度と同一の回転速度として兼用させることもできる。ところで、三位置式燃焼制御以外の多位置式燃焼制御を採用する場合は、これらの回転速度に加えて他の回転速度を設定することもできる。
【0016】
また、本発明の燃焼装置は、設定された開度に位置することにより風量を制御するダンパを備える。このダンパの開度としては、少なくとも、高燃焼用風量位置、前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置、および前記低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置が設定されている。これらのダンパ開度は、ファンの回転速度との関係において、望ましい空燃比とするために必要な風量を考慮して設定される。
【0017】
本発明の第一の実施形態は、着火工程においては、ファンの回転速度を着火用回転速度、ダンパを着火用風量位置とし、低燃焼工程においては、ファンの回転速度を低燃焼用回転速度、ダンパを低燃焼用風量位置とし、高燃焼工程においては、ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、ダンパを高燃焼用風量位置とするものである。ここで、低燃焼工程および高燃焼工程は、それぞれ低燃焼状態の工程,高燃焼状態の工程を意味する。また、ガス焚きの燃焼装置においては、パイロットバーナを着火するパイロット着火工程と、パイロットバーナからメインバーナへ火移りにより着火するメイン着火工程とを含むが、この実施の形態における着火工程とは、メイン着火工程を意味するものとする。
【0018】
前記低燃焼用回転速度は、ダンパを低燃焼用風量位置とした場合に、低燃焼工程に必要とされる量の燃焼用空気が供給されるように設定されたファンの回転速度であり、ダンパを全開位置とした状態で、低燃焼工程に必要な風量となるファンの回転速度よりも高速度とされる。また、前記ダンパの低燃焼用風量位置とは、低燃焼工程において、火炎により生ずる風圧がファンの方向へ伝播することを防止できる程度にまで閉じられた状態の開度であって、ファンの回転速度を低燃焼用回転速度とした場合に、低燃焼工程に必要とされる燃焼用空気が供給されるようなダンパ開度である。このように、低燃焼工程においてファンの回転速度を低燃焼用回転速度、ダンパを低燃焼用風量位置としたことにより、送風装置側の吐出圧は火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けることなく、安定した風量の燃焼用空気を供給することができ、低燃焼工程においても安定した燃焼が実現される。
【0019】
次に、本発明の第二の実施形態は、ファンの回転速度を着火用回転速度とし、ダンパを着火用風量位置とした状態で着火工程を行い、前記着火工程終了後、送風装置が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始し、前記ファンの回転速度の変更開始時点から所定時間経過後、前記ダンパを低燃焼用風量位置まで開くようにしたものである。
【0020】
前記ファンの回転速度の変更開始時点から所定時間経過後に前記ダンパを低燃焼用風量位置まで開く手段としては、時間計測手段により時間を計測し、経過時間が設定値に達した時点でダンパを低燃焼用風量位置まで開く手段のほか、送風装置により供給された燃焼用空気の風量、ファンの回転数、インバータから電動機へ出力される周波数信号などを各種センサにより検出し、これらの検出値が設定値に達した時点でダンパ開度を切り替えるようにすることにより、所定時間経過後にダンパを開く手段も含まれる。
【0021】
さらに、第一の実施形態または第二の実施形態において、送風装置のファンの回転速度について前記高燃焼用回転速度と前記着火用回転速度とを同一の回転速度とすることができる。この実施の形態によれば、さらに装置の簡単化が可能となる。
【実施例1】
【0022】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、第一実施例の燃焼装置の概略構成図、図2は、第一実施例の燃焼装置における燃料供給装置の概略構成図であり、図3は、第一実施例の燃焼装置が実行する制御のタイムチャートである。
【0023】
本実施例の燃焼装置1は、図1に示すように、ファンの回転速度を制御することにより風量調整を行う送風装置2と、前記送風装置2により供給された燃焼用空気の風量を制御するダンパ3と、燃料供給量を無段階的に変化させる燃料供給装置4とを備え、燃焼室5内で燃焼を行う。前記送風装置2、ダンパ3、および燃料供給装置4は、制御部6からの制御信号に基づき制御されている。本発明において、燃料の種類は限定されないが、本実施例の燃焼装置1は油焚きボイラである。
【0024】
前記送風装置2は、ファン(図示せず)を備えた電動機7と、電動機7に接続されファン回転速度を制御するインバータ8とを備えており、制御部6からの制御信号に基づきインバータ8から出力される周波数信号を変化させることによりファン回転速度を制御する。本実施例では、この周波数信号として、高いほうから高燃焼用周波数、着火用周波数、および低燃焼用周波数が設定されており、各周波数により運転されるときのファン回転速度が、それぞれ高燃焼用回転速度、着火用回転速度、低燃焼用回転速度となる。ところで、高燃焼用周波数より着火用周波数を高い数値に設定してもよい。また、この実施例においては、パージ用の周波数は着火用周波数と同じに設定している。
【0025】
また、前記ダンパ3は、送風装置2により供給される燃焼用空気の流路となるダクト9内に設けられ、ダクト9の断面を一部閉じることにより前記燃焼用空気の風量を制御する。このダンパ開度として、高燃焼用風量位置(ダクト9の中心軸方向,すなわち空気の流れ方向に垂直の方向に対して90°)、前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置(ダクト9の中心軸方向に垂直の方向に対して25°)、および前記低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置(ダクト9の中心軸方向に垂直の方向に対して20°)の3位置が設定されている。
【0026】
次に、図2を参照しながら、本実施例の燃料供給装置4について説明する。燃料供給装置4は、燃料ポンプ(図示せず)、燃料タンク(図示せず)、第一燃料弁10、第二燃料弁11、流量調整弁12、移行弁13、低燃焼用ノズル14および高燃焼用ノズル15を備え、これらは各燃料流路16,17,18により連結して設けられている。第一燃料流路16は、燃料ポンプ、燃料タンクと接続されており、燃料は、第一燃料流路16を矢印の方向へ流れる。第一燃料流路16には第一燃料弁10が設けられており、第一燃料弁10の下流側末端では低燃焼用ノズル14に繋がっている。燃料流路は、第一燃料弁10の上流側において、第一燃料流路16から第二燃料流路17と第三燃料流路18に分岐している。第二燃料流路17には第二燃料弁11が設けられており、第三燃料流路18には上流側から流量調整弁12と移行弁13が設けられ、流量調整弁12の上流側には、高燃焼用ノズル15への燃料供給量を調整するためオリフィス19が設けられている。第二燃料流路17と第三燃料流路18とは、第二燃料弁11および移行弁13の下流側で合流して1つとなり、末端で高燃焼用ノズル15に繋がっている。ところで、本実施例では、第三燃料流路18において移行弁13を流量調整弁12の下流側に配置しているが、移行弁13を流量調整弁12の上流側に配することもできる。
【0027】
前記第一燃料弁10、第二燃料弁11および移行弁13には、開閉の二動作で制御される電磁弁が用いられている。そして、前記流量調整弁12は、第三燃料流路18の流路断面積の大きさを無段階的に変化させることのできる弁装置であって、流量調整弁12を通過し高燃焼用ノズル15へ供給される燃料の量を無段階的に変化させることができる。もっとも、この流量調整弁12は、通過する燃料の量を無段階的に変化させることが可能なものであれば、種類は問わず適用可能である。また、前記移行弁13は、前記流量調整弁12を通過する燃料供給の有無を切り替えるものである。
【0028】
次に、図3を参照しつつ、制御部6により実行される本実施例における制御方法を説明する。本実施例の燃焼装置1が起動されると、送風装置2が運転を開始し、ファン回転速度が着火用回転速度まで上げられ、プレパージが行われる。プレパージの間、ダンパ開度は高燃焼用風量位置とされる。
【0029】
プレパージが所定時間行われた後、送風装置2はファン回転速度を着火用回転速度に維持したまま、ダンパ3は着火用風量位置まで閉じられ、着火工程に移行する。着火工程においては、まず、着火装置が起動され、着火装置が起動されてから所定時間経過後に第一燃料弁10が開かれ、燃料の供給が開始される。この間、前記着火装置は継続して起動しており、燃料の供給が開始されてから所定時間経過後に停止される。ところで、着火装置が起動されてから燃料供給が開始されるまでの期間はプレイグニッション、燃料供給が開始されてから着火装置が停止されるまでの期間は着火トライと呼ばれ、これら2つの工程により着火工程が構成される。
【0030】
着火工程が終了した後、ファン回転速度を着火用回転速度、ダンパ開度を着火用風量位置とした状態が所定時間継続される。その後、低燃焼工程へと移行する。まず、送風装置2がファン回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始する。そして、ファン回転速度の変更開始時点からの経過時間を時間計測手段により計測し、その経過時間が設定時間T1に達したらダンパ3は低燃焼用風量位置まで開かれる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T1で着火用風量位置から低燃焼用風量位置まで変化するように構成されている。しかしながら、ダンパ3の開閉速度が速い場合は、ファン回転速度の変更途中で、ダンパ3を開くように構成することもできる。
【0031】
低燃焼工程においては、ファン回転速度は低燃焼用回転速度とされ、ダンパ開度は低燃焼用風量位置とされる。これにより、低燃焼工程に必要な風量の燃焼用空気が供給されるとともに、送風装置2側の吐出圧が火炎により生ずる風圧の影響をほとんど受けないようにすることができ、低燃焼工程においても安定した燃焼を行うことができる。また、低燃焼工程においては、第一燃料弁10を通じて、低燃焼に必要な量の燃料が低燃焼用ノズル14へ供給される。
【0032】
低燃焼工程から高燃焼工程ヘ移行する場合は、まず流量調整弁12および移行弁13が開かれ、時間計測手段が前記移行弁13が開かれた時点からの経過時間を計測し、設定時間T2に達したら送風装置2がファン回転速度の低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度への変更を開始する。この設定時間T2は、流量調整弁12の開弁動作開始時点から実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでに要する時間と同程度の時間に設定されている。ところで、前記流量調整弁12の開弁動作開始時点から実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでの時間差を無視できる場合は、この設定時間T2は設けなくてもよい。
【0033】
本実施例においては、風量制御装置としてインバータ8が使用されており、前記ファン回転速度は経過時間に比例して増加するように制御されている。前記流量調整弁12は、前記ファン回転速度の増加に対応して、望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に増加させる。そして、流量調整弁12を通過して高燃焼用ノズル15に供給される燃料は、ファン回転速度が高燃焼用回転速度に達した時点で、第一燃料弁10を通過して低燃焼用ノズル14に供給される燃料供給量と合計して高燃焼工程に必要な量となるように設定されている。
【0034】
また、時間計測手段により移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T3に達すると移行弁13が閉じられる。前記設定時間T3は、前記設定時間T2とファン回転速度が低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度に達するまでに要する時間T4とを合計した時間と同程度の時間に設定されている。ところで、前記時間計測手段に代えて、燃焼用空気の風量、ファンの回転数、インバータ8から電動機7へ出力される周波数信号などを各種センサにより検出し、これらの検出値が設定値に達した時点で移行弁13を閉じるようにしてもよい。
【0035】
一方、前記流量調整弁12は、移行弁13が閉じられた後の高燃焼工程の間も開弁状態が維持される。また、本実施例では、前記移行弁13が閉じられると同時に、第一燃料弁10も閉じられ、第二燃料弁11が開かれる。すなわち、高燃焼工程においては、第二燃料流路17のみを通じて高燃焼工程に必要な量の燃料が高燃焼用ノズル15に供給されることになり、低燃焼用ノズル14への燃料の供給は行われない。このように、高燃焼工程において、高燃焼用ノズル15のみから燃焼室5内へ燃料が噴霧されるため、両ノズル14,15から噴霧される燃料が互いに干渉して燃焼不良を起こすことがなく、より良好な燃焼を行うことができる。また、このように、前記流量調整弁12をファン回転速度の移行時においてのみ使用するようにしたことにより、流量調整弁12に起因する流路の詰まりなどを効果的に防ぐことができ、故障の少ない安定した運転が実現できる。
【0036】
併せて、ファン回転速度の低燃焼用回転速度から高燃焼用回転速度への変更開始と同時に、ダンパ3は高燃焼用風量位置へ開かれる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T4で低燃焼用風量位置から高燃焼用風量位置まで開くように構成されている。このダンパ開度の変化とファン回転速度の変化により生ずる風量の漸増,すなわち滑らかに増加することに対応して、流量調整弁12により高燃焼用ノズル15への燃料供給量が漸増されるため、空燃比を崩すことなく安定した燃焼を行うことができる。この実施例では、ダンパ3を時間T4で低燃焼用風量位置から高燃焼用風量位置まで変化するように構成しているが、ダンパ3の開閉速度が速い場合には、ファン回転速度の変更の途中でダンパ3を開き始めるように構成することもできる。
【0037】
高燃焼工程においては、ダンパ開度は高燃焼用風量位置とされた状態で、送風装置2のファン回転速度は高燃焼用回転速度に継続される。
【0038】
高燃焼工程から低燃焼工程ヘ移行する場合は、まず閉弁状態であった第一燃料弁10および移行弁13が開かれると同時に、第二燃料弁11が閉じられる。これにより、第二燃料流路17に代わって第一燃料流路16および第三燃料流路18を通じて燃料が各ノズル14,15へ供給されるようになる。そして、時間計測手段により前記移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T5に達したら、送風装置2のファン回転速度の、高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度への移行が開始される。この設定時間T5は、前記移行弁13が開かれてから実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでに要する時間と同程度の時間とされる。ところで、前記移行弁13が開かれてから実際に高燃焼用ノズル15に燃料が供給されるまでの時間差が無視できる場合は、この設定時間T5は設けなくてもよい。
【0039】
前記ファン回転速度の変更は、インバータ8により経過時間に比例して減少するように制御される。そして、前記流量調整弁12は、前記ファン回転速度の減少に対応して、望ましい空燃比を維持するように燃料供給量を無段階的に減少させる。
【0040】
また、時間計測手段により移行弁13が開かれた時点からの経過時間が計測され、その経過時間が設定時間T6に達すると流量調整弁12および移行弁13は閉じられる。前記設定時間T6は、前記設定時間T5とファン回転速度が高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度に達するまでに要する時間T7とを合計した時間と同程度の時間に設定されている。ところで、前記時間計測手段に代えて、燃焼用空気の風量、ファンの回転数、インバータ8から電動機7へ出力される周波数信号などを各種センサにより検出し、これらの検出値が設定値に達した時点で流量調整弁12および移行弁13を閉じるようにしてもよい。
【0041】
併せて、前記ファン回転速度の高燃焼用回転速度から低燃焼用回転速度への変更開始と同時に、ダンパ3は低燃焼用風量位置まで閉じられる。この実施例においては、ダンパ3の開閉速度が遅く、図3に示すように時間T7で高燃焼用風量位置から低燃焼用風量位置まで閉じるように構成されている。このダンパ開度の変化とファン回転速度の変化により生ずる風量の漸減,すなわち滑らかに減少することに対応して、流量調整弁12により高燃焼用ノズル15への燃料供給量が漸減されるため、空燃比が崩れることなく安定した燃焼を行うことができる。この実施例では、ダンパ3を時間T7で高燃焼用風量位置から低燃焼用風量位置まで変化するように構成しているが、ダンパ3の開閉速度が速い場合には、ファン回転速度の変更の途中でダンパ3が閉じ始めるように構成することもできる。
【0042】
燃焼の終了は、低燃焼工程に続いて行われ、第一燃料弁10が閉じられるとともに、送風装置2のファン回転速度が低燃焼用回転速度から着火用回転速度へ移行し、併せてダンパ開度が高燃焼用風量位置とされ、そのまま着火用回転速度とした状態を所定時間継続してポストパージを行う。その後、送風装置2が停止される。このようにして、燃焼装置1は運転を停止する。前記ポストパージは、必要に応じて省略できる。
【0043】
前記の実施例1によれば、着火工程から低燃焼工程への移行時および低燃焼工程において安定燃焼を実現でき、燃焼性に優れた燃焼装置を提供できる。また、低燃焼工程における燃焼用空気の風量および燃料供給量を低減しても安定な燃焼が可能となり、ターンダウン比を大きくすることができる。さらに、着火工程とこれに続く低燃焼工程において、共通して第一燃料弁10を通じて燃料供給を行うことによって燃料供給量を同じとしているため、低燃焼工程の燃料供給量を低減すれば着火工程の燃料供給量をも同時に低減することができ、着火衝撃をより抑えることができる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の第二実施例について説明する。図4は、第二実施例の燃焼装置が実行する制御のタイムチャートである。第二実施例において、図1に示す燃焼装置1の構成、図2に示す燃料供給装置4の構成については第一実施例の燃焼装置1と共通している。
【0045】
第二実施例においては、燃焼を行っている間、継続して第一燃料弁10が開弁状態とされる点で第一実施例と異なっている。したがって、高燃焼工程においては、第一実施例の燃焼装置1と異なり、第一燃料弁10は閉じられることはなく、第一燃料弁10を通過して低燃焼用ノズル14へ供給される燃料の量と第二燃料弁11を通過して高燃焼用ノズル15へ供給される燃料の量との合計が、高燃焼工程に必要とされる燃料供給量となる。この場合、低燃焼用ノズル14および高燃焼用ノズル15の双方から同時に燃焼室5内へ燃料が噴霧されることになるが、良好な燃焼を行うために、各ノズル14,15から噴霧される燃料が互いに干渉しないような方策をとることが望ましい。
【0046】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。特に、上記2つの実施例においては、ファン回転速度の移行時において燃料供給量を無段階的に変化させる燃焼装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、高燃焼工程と低燃焼工程の2段階で燃料供給量を変化させる燃焼装置にも適用可能である。さらに、燃焼停止時においてダンパ3を全閉するように構成し、ボイラの缶体(図示省略)からの放熱を防止するように構成してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例における燃焼装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例における燃料供給装置の概略構成図である。
【図3】本発明における第一実施例の制御チャートを示す図である。
【図4】本発明における第二実施例の制御チャートを示す図である。
【図5】従来の燃焼装置における制御チャートを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 燃焼装置
2 送風装置
3 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの回転速度を、少なくとも高燃焼用回転速度、着火用回転速度、または前記高燃焼用回転速度および前記着火用回転速度より低い回転速度の低燃焼用回転速度に制御することにより風量調整を行う送風装置(2)と、
少なくとも高燃焼用風量位置、前記高燃焼用風量位置より開度の小さい低燃焼用風量位置、または前記低燃焼用風量位置より更に開度の小さい着火用風量位置とに配置されることにより、前記送風装置(2)からの風量を制御するダンパ(3)と
を備えており、
着火工程においては、前記ファンの回転速度を着火用回転速度、前記ダンパ(3)を着火用風量位置とし、
低燃焼工程においては、前記ファンの回転速度を低燃焼用回転速度、前記ダンパ(3)を低燃焼用風量位置とし、
高燃焼工程においては、前記ファンの回転速度を高燃焼用回転速度、前記ダンパ(3)を高燃焼用風量位置とする
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記ファンの回転速度を着火用回転速度とし、前記ダンパ(3)を着火用風量位置とした状態で着火工程を行い、前記着火工程終了後、前記送風装置(2)が前記ファンの回転速度の低燃焼用回転速度への変更を開始し、前記ファンの回転速度の変更開始時点から所定時間経過後、前記ダンパ(3)を低燃焼用風量位置まで開くようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
着火工程およびその後の低燃焼工程の燃料供給量を同じとした
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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