説明

燃焼遅延性の繊維およびフィラメント並びにその製造方法

(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体からつくられる繊維またはフィラメントが提供される。このポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも50重量%の臭素含量をもっている。このような繊維またはフィラメントの製造法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料がポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、またはアクリルである繊維またはフィラメントであり、臭素化されたスチレン重合体で燃焼遅延性を賦与された熱可塑性の繊維およびフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維材料は多くの優れた物理的および化学的性質をもっているが、共通の欠点は容易に燃焼する傾向をもっていることであり、この理由によって合成繊維材料には伝統的に燃焼遅延性を賦与する仕上げ処理が行われてきた。仕上げ処理を行う方法の例には浸漬被覆法および噴霧被覆法が含まれる。被覆の明白な欠点はそれが時間が経つにつれて摩耗することである。
【0003】
不幸なことに、燃焼遅延剤添加物を使用すると、望ましくない色の発生、即ちブルーミングが生じる可能性がる。換言すれば、このような添加物は合成繊維の色に悪影響を及ぼす。この色の発生の問題は多くの用途において望ましくないか或いは許容できないことである。
【0004】
さらに、合成繊維材料と配合する場合、燃焼遅延剤添加物は混合物の中で不均一に分布する傾向があり、その結果機械的性質が悪い不均一な燃焼遅延性繊維を生じる。不均一性に伴う問題は細い繊維ほど深刻である。特定的に言えば、押出しを行う前に燃焼遅延剤添加物が合成繊維材料と完全には混合していない場合、燃焼遅延性添加物は自分自身の上で凝集を起こし、押出しを行う熔融物の中に塊を生じ、紡糸口金のフィルターまたはオリフィスを詰まらせ、或いは得られるフィラメントに弱い点を生じる傾向がある。またこのように凝集を起こした塊は必然的に他の場所では燃焼遅延剤添加物が存在しない区域を生じ、従って燃焼遅延性を減少させる。
【0005】
特に、臭素化されたポリスチレンはその色特性に欠点をもっていることが多い。一般に燃焼遅延剤を含む製品を製造する業者は、製品に過剰の色を与えない燃焼遅延剤を得ることが有利なことを見出している。そうでない場合、或る与えられた製品に適用できる仕様に合った色の妨げになるからである。従って一般に、色が薄いほど(即ち白に近いほど)、臭素化されたスチレン重合体の品質は良い。しかし、白い高融点の燃焼遅延剤は多くの場合結局は繊維の中で白色の顔料として作用し、燃焼遅延剤の白色に打ち勝たなければならないので繊維の着色が困難になる。
【0006】
これに加えて、少なくとも部分的には高融点であるという理由により、ポリアミド(ナイロン)に対して良好な性能を示す燃焼遅延剤は比較的僅かしかない。180℃において1週間炉の中で老化させると、ポリアミドと燃焼遅延剤との配合物には色がつく。
【0007】
もし、燃焼遅延剤と繊維生成熱可塑性重合体とのもっと均一な混合物を見出だすことができ、もっと均一な繊維をつくることができるとすれば、かなりの利点が得られるであろう。またこのような混合物に使用される燃焼遅延剤が最小限度しか着色せず、同時に白色顔料として作用しなければさらに有利であろう。
【発明の開示】
【0008】
本発明の概要
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は繊維生成熱可塑性重合体と相容性をもち、それに燃焼遅延性を賦与する。このような燃焼遅延剤はポリ臭素化された非アニオン
重合スチレン重合体に比べ粘度が低く、熱安定性が大きく、このことは熔融配合および繊維の紡糸のような工程で有利である。繊維生成熱可塑性重合体と相容性をもっているため、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は繊維およびフィラメントの製造段階において繊維布に対し後で燃焼遅延処理を行う必要がなく、ポリ臭素化されたアニオン重合のスチレン重合体と繊維生成熱可塑性重合体との緊密な混合物によって賦与される燃焼遅延性は、被覆とは異なって比較的永続性をもつことが期待される。
【0009】
さらに、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は比較的均一な混合物をつくり、従って均一性の高い繊維が得られる。均一性が高いため燃焼遅延剤を含む細く(薄く)しかも良好な機械的性質を保持した繊維を得ることも可能である。均一性が高いことの他の利点は紡糸口金のオリフィスを詰まらせることが非常に少なく、製造された繊維またはフィラメントは燃焼遅延剤が存在しない区域を殆どもたないことである。
【0010】
これに加えて、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は最小限度の色しか発色しないことが見出だされた。特に、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体をポリアミドと一緒に使用すると、色の生成を減少させることができる。
【0011】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体のこれらの望ましい性質は、イオン性のスチレン重合体の臭素含量が67重量%以上の場合でも得られる。さらに、これらのポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱処理の条件下において最小限度のハロゲン化水素しか放出せず、従って重合体の加工操作の際に起こる腐蝕の機会が著しく減少する。
【0012】
本発明の一具体化例においては、(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成る成分からつくられた繊維またはフィラメントが提供される。このポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約50重量%の臭素含量をもっている。
【0013】
本発明の他の具体化例においては、(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融紡糸する繊維またはフィラメントの製造方法が提供される。このポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約50重量%の臭素含量をもっている。
【0014】
本発明のさらに他の具体化例においては、担体配合物(carrier blend)である組成物が提供される。この配合物は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を含んで成る成分からつくられる。
【0015】
本発明のさらに他の具体化例においては、担体配合物である組成物の製造方法が提供される。この方法は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を互いに混合して熔融することを含んで成っている。
【0016】
本発明のさらに他の具体化例においては、(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体および(b)本発明の担体配合物を熔融紡糸することを含んで成る繊維またはフィラメントの製造方法が提供される。
【0017】
本発明に使用される燃焼遅延剤、即ちポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたスチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。これらのポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%である。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体に対して参照されるすべての重量%およびppm値は、特記しない限り臭素化されたスチレン重合体の全重量に関する値である。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の具体化例および特徴は以下の説明および添付特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【0019】
本発明のさらに詳細な説明
理論によって拘束されるつもりはないが、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は低分子量であるために繊維生成重合体に対し良好な相容性が得られ、従って良好な配合が行われ、また燃焼遅延剤がいっそう均一に分布していっそう均一な混合物が得られ、その結果いっそう均一な繊維またはフィラメントが得られると考えられる。また理論に拘束されるつもりはないが、低分子量の臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の熔融可能な性質のために、色合わせにおける干渉が最低限度に抑制されると思われる。所望の色を得るために繊維に少量の顔料しか加える必要がない点でこのことは有利である。
【0020】
A.本発明の繊維およびフィラメント
本発明の繊維およびフィラメントにおいては、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は一般に繊維またはフィラメントの少なくとも約2重量%をなしている。典型的にはポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は約5〜約20重量%の範囲にある。ここで該重量%の値は繊維またはフィラメントの全重量に関した値である。繊維またはフィラメントの中には他の成分も存在していることができる。特に燃焼遅延性の相乗剤がしばしば使用される。使用する場合燃焼遅延性相乗剤の量は仕上げられた繊維またはフィラメントの全量に関して最高約12重量%の範囲にある。現在考えられている特定の状況下において必要と思われる場合、これらの割合が上記範囲から逸脱することも許され、このような逸脱は本発明の範囲および意図の中に包含される。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の最適の量は特定の繊維生成重合体、製造される繊維布の重量、他の任意の成分、および合格しなければならない燃焼性試験によって変化することを認識すべきである。
【0021】
本発明の好適な繊維またはフィラメントは約93〜97重量%の繊維生成重合体、約2〜5重量%のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および約1〜2重量%の他の成分、特に相乗剤を含んでいる。他の好適な繊維またはフィラメントは約96〜98重量%の繊維生成重合体、および約2〜4重量%のポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを含んでいる。
【0022】
本発明によって臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを含むナイロン繊維がつくられ、本発明の繊維またはフィラメントに賦与された有利な性質が例証された。本発明のナイロン繊維はほぼ純粋な(ニート)ナイロン繊維(吸水量が高いことで当業界に知られている)に比べ吸水量が減少している。吸水量が減少した結果、繊維のかたさが増加し、寸度安定性が改善された。さらに或る種のナイロン中における臭素化されたアニオン重合ポリスチレンの走査電子顕微鏡(SEM)で測定されたドメインの大きさは非常に小さい。
【0023】
1.繊維生成熱可塑性重合体
本発明の組成物中における繊維生成重合体は熱可塑性であり、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィン、アクリレート、およびこれらの熱可塑性材料の混合物を含んでいる。ポリエステルおよびポリアミドが繊維生成熱可塑性重合体の好適な種類である。
【0024】
熱可塑性ポリエステルはしばしばポリアルキレンテレフタレートと呼ばれ、ジカルボン酸とジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸との反応生成物;ヒドロキシカルボン酸の自己縮合生成物;またはこのような反応生成物の混合物である。ジカルボン酸の反応性誘導体、例えばメチルエステルまたは無水物も使用できる。1種またはそれ以上の熱可塑性ポリエステルと1種またはそれ以上の他の熱可塑性重合体、例えばポリカーボネートとの配合物を含む関連したポリエステル共重合体も本発明の組成物に使用できる繊維生成重合体として含まれる。
【0025】
ポリエステルの製造に使用できるジカルボン酸には炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、例えばアゼライン酸、アジピン酸、セバチン酸、およびドデカンジカルボン酸;脂環式ジカルボン酸、例えばシクロペンタンジカルボン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸;および芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、およびオルトフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトン酸、ジフェニレンヒドロキシカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等が含まれる。これらの酸のアルキルおよび/またはアルコキシ誘導体も使用できる。これらのジカルボン酸はそれぞれ例えばジメチルエステルのようなエステル型の誘導体の形で使用することができる。上記ジカルボン酸(および/またはそのエステル型の誘導体)のような2種またはそれ以上の混合物も使用できる。
【0026】
ポリエステルを製造するのに使用できるジオールは、これだけには限らないが、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびジエトキシル化されたビスフェノールAが含まれる。これらのジオールのアルキルおよび/またはアルコキシ誘導体も使用できる。また上記ジオールの2種またはそれ以上の混合物も使用するに適していることができる。
【0027】
また本発明に使用すべきポリエステルは、上記成分の他に、少量の三官能性の単量体を使用してつくられた分岐したまたは交叉結合した構造をもつポリエステルであることができる。好適な三官能性の単量体にはトリメリチン酸、トリメシン酸およびピロメリチン酸、ペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンが含まれる。2種またはそれ以上のポリエステルの混合物も使用できる。本発明の好適なポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートである。ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートがさらに好適である。
【0028】
ポリアルキレンテレフタレートは公知方法によって製造することができる。例えばEncyclopedia of Polymer Science and Technology,第11巻、62〜128頁,John Wiley & Sons,Inc.,1969年発行;およびKirk−OthmerのEncyclopedia of Chemical Technology,第4版,第19巻,609〜653頁,John Wiley & Sons,Inc.,1996年発行を参照されたい。
【0029】
ポリアミドの熱可塑性繊維生成重合体は無定形および/または結晶性であり、主として脂肪族/脂環式であるか、または部分的に芳香族の基を含んだ熱可塑性ポリアミドであることができる。典型的にはこれらの材料は、主としてまたは完全に脂肪族または脂環式の、或いは部分的にまたは完全に芳香族のジアミンと、主としてまたは完全に脂肪族または脂環式の、或いは部分的にまたは完全に芳香族のジカルボン酸またはラクタムから縮重合法および/または重合法によってつくられる。ポリアミドをつくるのに使用される典型的なアミンには、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノブタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、およびイソフォロンジアミン、並びにキシリレンジアミンが含まれる。環の中に少なくとも6個の炭素原子をもったラクタムを使用することができる。このようなラクタムにはカプロラクタム、4−t−ブチルカプロラクタム、2−アザシクロオクタノン(エナントラクタム)、2−アザシクロノナノン、およびラウリルラクタム(ドデカノラクタム)が含まれる。アミノカルボン酸、例えばε−アミノカプロン酸、またはω−アミノカルボン酸、例えばω−アミノラウリン酸およびω−アミノウンデカン酸も原料として使用される。典型的には使用されるカルボン酸は脂肪族ジカルボン酸または芳香族成分が50重量%よりも少ない混合脂肪芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれる。これらの公知の単量体の大部分から得られる共重合体も使用できる。
【0030】
本発明を実施するのに使用できる例示的なポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から得られる)、ナイロン−6,9、ナイロン6.10(ヘキサメチレンジアミンとセバチン酸から得られる)、ナイロン6,12、ナイロン−11(ポリウンデカノラクタム)、ナイロン−12(ポリラウリルラクタム)、ナイロン−12,12、ナイロン−6/66(ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−co−カプロラクタム))、および高温ナイロン、特に芳香族ポリアミドおよび部分的に芳香族のポリアミドのようなポリアミドである。高温ナイロンの例にはナイロン−4,6(ジアミノブタンおよびアジピン酸から得られる)、および部分的な芳香族性ををもったナイロン(例えばSolvay社製のIxef ポリアリールアミド PA MXD6、DuPont社製のZytel HTN、およびBP−Amoco社製のAmodel ポリアミド、またはEms−Chemie製のGrivory HT 、またはHT1またはHT2、或いはMitsui製のArlen ポリアリールアミド、またはKuraray製のGenestar 9T)が含まれる。使用できる他のポリアミドにはDSM製のStanyl ポリアミド46、Dow/Solutia製のVydyne ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド612(Creanova製のVestamid D)、および同様なポリアミドが含まれる。
【0031】
また本発明は1種またはそれ以上のポリアミドと1種またはそれ以上の他の熱可塑性重合体との配合物またはアロイ、例えばポリアミド−ポリオレフィン配合物またはアロイに適用することができる。2種またはそれ以上のポリアミドの混合物も使用することができる。
【0032】
ポリアミド重合体を製造する方法は公知であり、文献に記載されている。例えばEncyclopedia of Polymer Science and Technology,第10版,460〜482頁,John Wiley & Sons,Inc.,1969年発行;およびKirk−OthmerのEncyclopedia of Chemical Technology,第4版,第19版,559〜584頁,John Wiley & Sons,Inc.,1996年発行を参照のこと。
【0033】
熱可塑性の繊維生成ポリオレフィンはオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の単独重合体および共重合体を含んでいる。このようなポリオレフィンには,これだけには限定されないが、低分子量ポリエチレンを含むポリエチレン、低分子量ポリプロピレンを含むポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、およびエチレン−1−オクテン共重合体が含まれる。
【0034】
少なくとも50重量%がプロピレンからつくられる種々のポリオレフィンも本発明に使用するのに適していると思われる。使用できるプロピレンの共重合体には1種またはそれ以上のα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、および同様なα−オレフィンが含まれる。適当なポリオレフィン共重合体にはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、および同様なエチレン共重合体等が含まれる。
【0035】
2種またはそれ以上の上記オレフィン重合体および/または共重合体の混合物も使用することができる。1種またはそれ以上のポリオレフィンおよび/または1種またはそれ以上のポリエステルの混合物も本発明の組成物に使用することができる。
【0036】
本発明の繊維生成熱可塑性重合体にはアクリル類が含まれ、これは不飽和カルボン酸およびそのアルキル誘導体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート等、並びに飽和カルボン酸のビニルエーテル、例えば酢酸ビニルの単独重合体および共重合体が含まれる。上記単量体からつくられた2種またはそれ以上の単独重合体および共重合体の混合物も使用することができる。
【0037】
1種またはそれ以上のアクリル類と1種またはそれ以上の他の種類の繊維生成熱可塑性重合体、例えばポリエステル、ポリアミド、および/またはポリオレフィンとの配合物またはアロイも使用することができる。
【0038】
2.ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は、重合体中の臭素含量が重合体の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%になるように臭素化されたアニオン重合スチレン重合体である。このポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は本発明の繊維およびフィラメント組成物の中で燃焼遅延剤として作用する。さらに本発明に使用される臭素化されたスチレン重合体(好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレン)はさらに他の重要な性質または特性をもっている。これらの性質または特性は熱安定性、クロロベンゼンの10%溶液を使用して測定された非常に低いΔE色値、望ましいメルトフローインデックス、望ましいGPC重量平均分子量、および全塩素含量(もし存在すれば)に関わるものである。
【0039】
本発明に使用される上記のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。特に好適なポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンは、アニオン重合ポリスチレンからつくられた典型的な臭素含量が約68
重量%のポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。この製品はAlbemarle CorporationからSAYTEX HP−3010の登録商品名で市販されている。ポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンおよびその製造法は例えば2003年2月18日公告の米国特許第6,521,714号明細書、2002年9月19日公告の国際公開第02/072645号パンフレット、および2002年8月1日出願の米国特許出願第10/211,648号明細書に記載されている。
【0040】
3.スチレン重合体反応原料
臭素化して本発明のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体をつくるスチレン重合体はビニル芳香族単量体の単独重合体または共重合体である。好適なビニル芳香族単量体は式
C=CR−Ar
を有している。ここでRは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、Arは炭素数が6〜10の芳香族の基(環にアルキルが置換された芳香族の基を含む)である。このような単量体の例にはα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ジメチルスチレン類、エチル−αーメチルスチレン、プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、数種のブロモスチレン類(例えばモノブロモ−、ジブロモ−、およびトリブロモスチレン類)がある。この単量体の芳香族構造部分はアルキルで置換されていることができるが、大部分の場合このような置換基はもっていないであろう。スチレン重合体には例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリビニルトルエン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体等が含まれる。ポリスチレンが好適なアニオン重合スチレン重合体である。2種またはそれ以上のビニル芳香族化合物の共重合体を臭素化することによりポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体をつくる場合には、単量体の一つがスチレンであり、スチレンが共重合可能なビニル芳香族単量体の少なくとも50重量%をなしていることが好適である。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体をつくるためにブロモスチレン重合体を選んだ場合には、原料のブロモスチレン重合体の臭素含量は本発明の臭素化されたスチレン重合体の中に存在する臭素含量よりも低くなければならない。この点に関連して本明細書および特許請求の範囲に使用される「臭素化されたスチレン重合体」、「臭素化されたポリスチレン」、および「臭素化されたアニオン重合ポリスチレン」と言う言葉は、予め存在したスチレン重合体、例えばポリスチレン、またはスチレンと少なくとも1種のビニル芳香族単量体との共重合体を臭素化することによってつくられた臭素化された重合体を意味するものとし、1種またはそれ以上の臭素化されたスチレン単量体のオリゴマー化または重合によってつくられたものとは区別される。後者のオリゴマーまたは重合体の性質はいくつかの点でポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとはかなり異なっているからである。
【0041】
本発明の燃焼遅延剤として使用される臭素化されたスチレン重合体の製造に用いられるスチレン重合体は陰イオン(アニオン)により開始される重合によって製造される。ビニル芳香族単量体のアニオン重合の方法については米国特許第5,902,865号明細書、同第5,717,040号明細書、同第4,883,846号明細書、および同第4,442,273号明細書参照のこと。当業界において公知のように、スチレン単量体のアニオン重合における単量体変化率は非常に高く、単分散性の重合体を生じる。本発明の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを製造するのに使用されるポリスチレンは、典型的には約500〜約500,000の範囲のMを有し、多分散度は少なくとも約1〜約4の範囲である。例えばGPCによる重量平均分子量が約500〜約15,000の範囲、好ましくは約1000〜約10,000、さらに好ましくは約2000〜約8000の範囲のアニオン重合ポリスチレンのようなアニオン重合ポリスチレン重合体を使用してスチレン重合体の臭素化を行うことが好適である。
【0042】
アニオン重合スチレン重合体を製造する特に好適な方法は2002年8月1日出願の米国特許出願第10/,211,648号明細書にもっと詳細に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。この方法は次の段階を含んで成っている:
(A)反応器の中に液体の飽和炭化水素の希釈剤およびエーテル促進剤を装入する。
(B)(1)(i)加えられるスチレン単量体の全重量に関して有機リチウム重合開始剤が約1〜約10モル%になるような量で有機リチウム重合開始剤の飽和炭化水素溶液を反応器に装入し、(ii)次いで得られる反応混合物の温度を約55℃またはそれ以下に保つようにスチレン単量体を制御しながら加えるか、或いは
(2)加えられるスチレン単量体の全重量に関し約1〜約10重量%の量の有機リチウム重合開始剤が与えられるような供給速度を保ちながら(i)スチレン単量体および(ii)有機リチウム重合開始剤の飽和炭化水素溶液を別々にして反応器に同時に供給し、この供給を行って得られる反応混合物の温度が約55℃またはそれ以下に保たれるようにし、この場合(ii)の供給は(i)の供給よりも短い間行う。
好適な方法はバッチ法であり、この場合シクロヘキサンおよびエーテル促進剤を反応器に装入し、次にスチレン単量体の全重量の約1%を反応器に予め供給し、次いで(i)スチレン単量体および(ii)有機リチウム重合開始剤の飽和炭化水素溶液を別々にして同時に反応器に供給する。このバッチ法は多分散度インデックスが約1.2以下のアニオン重合スチレン重合体が生じるように行われる。この方法においてスチレン単量体はアニオン重合し得る上記の任意のスチレン単量体であることができる。好ましくはスチレン単量体は実質的にスチレンから成っている。
【0043】
アニオン重合スチレン重合体をつくるこの特に好適な方法における液体飽和炭化水素希釈剤は、反応条件下において液体である任意の脂肪族または脂環式炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物であることができる。この飽和炭化水素は好ましくは分子中に約4〜12個の炭素原子を含み、脂肪族炭化水素は直鎖または分岐していることができる。適当な脂肪族炭化水素の本発明を限定しない例には、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン等が含まれる。さらに好ましくは液体の飽和炭化水素は1種またはそれ以上の飽和した脂環式炭化水素である。本発明を限定しないこのような脂環式炭化水素の適当な例には、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン等が含まれる。液体の飽和炭化水素希釈剤としてはシクロヘキサンが特に好適である。
【0044】
アニオン重合スチレン重合体を製造するこの特に好適な方法におけるエーテル促進剤は飽和の脂肪族または脂環式モノエーテル、飽和の脂肪族または脂環式ジエーテル、または芳香族のエーテルであることができる。従って本発明を限定しない適当なエーテル促進剤の例としてはテトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、メトキシベンゼン等が含まれる。エーテル促進剤は好ましくは分子中に4〜約8個の炭素原子を含む環式または非環式のモノエーテルである。特に好ましくはモノエーテルはテトラヒドロフラン(本明細書においてはしばしば「THF」と記される)、メチルテトラヒドロフランまたはジメチルテトラヒドロフラン、或いはこれらの2種またはそれ以上の混合物である。テトラヒドロフランが特に好適である。本発明の他の特に好適な具体化例においては、モノエーテルは実質的にアルキルt−ブチルエーテルから成っている。適当なアルキルt−ブチルエーテルは例えば直鎖および分岐したアルキルt−ブチルエーテル、例えばメチルt−ブチルエーテル(本明細書ではしばしば「MTBE」と記される)およびエチルt−ブチルエーテルが含まれ、メチルt−ブチルエーテルが特に好適である。使用される反応条件下において液体であるエーテルを使用することが望ましい。
【0045】
有機リチウム重合開始剤は多くのリチウム含有炭化水素の一つである。本発明を限定しない適当な例にはメチルリチウム、エチルリチウム、またはsec−ブチルリチウム、イソプロピルリチウム、シクロヘキシルリチウム、またはフェニルリチウム、並びにこれらの混合物が含まれる。n−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムが好適であり、n−ブチルリチウムが特に好適である。有機リチウム重合開始剤は飽和炭化水素の溶液中で使用される。この飽和炭化水素は液体の飽和炭化水素希釈剤と同じであるかまたは異なることができ、同じであることが好適である。
【0046】
アニオン重合スチレン重合体をつくるこの特に好適な方法の変形法のすべてにおいて、スチレン単量体の一部を予め供給する必要はない。しかし、これによってエーテル促進剤と有機リチウム重合開始剤との間で反応が起こるのが減少すると思われるのでこのことは好適である。スチレン単量体の予め供給される部分の量は変えることができるが、典型的には反応を行うのに使用されるスチレン単量体の全量の約1重量%である。この供給量はスチレン単量体の全量に関し有機リチウム重合開始剤を好ましくは約1〜約10モル%、さらに好ましくは約2〜約5モル%、最も好ましくは約2.5〜約3.5モル%の範囲で与える量である。
【0047】
アニオン重合スチレン重合体をつくるこの特に好適な方法において反応原料を一緒にする場合、供給時間を最低にして同時に反応混合物の温度を約55℃以下に保つようにしなければならない。例えばスチレンの供給量が約4,000ポンドの規模において、有機リチウムの供給速度は好ましくは約2〜約10分、もっと好ましくは約5分であり、同時に供給するスチレンは同時に供給を開始した時から測定して約2時間以内、さらに好ましくは約90分以内で供給しなければならない。しかし、上記の規模においてモノエーテルがメチルt−ブチルエーテルの場合、一緒に供給を開始した時から測定してスチレン単量体の同時供給は好ましくは約5時間を越えない期間継続することが好ましい。
【0048】
アニオン重合スチレン重合体をつくるこの特に好適な方法に使用される反応器は、典型的にはオーバーヘッド熱交換器を備えている。この方法は大気圧以下、大気圧、または大気圧以上の圧力で行うことができる。しかし、減圧、例えば約0.1〜約0.7気圧で反応を行い、溶媒を還流させ、逐次蒸発させることによって高度に発熱的な反応を冷却することが好適である。この方法は好ましくは酸素を存在させずに行われる。即ちこの方法は不活性雰囲気、例えば窒素またはアルゴンの中で行わなければならない。反応系は実質的に無水でなければならない。このことは有機リチウム触媒を破壊するには不十分な少量の水は許容できることを意味するが、実際的な見地からすれば、反応装置および反応混合物は可能な限り乾燥状態に保たなければならない。
【0049】
アニオン重合スチレン重合体を製造するこの特に好適な方法において得られる反応混合物の温度は公知方法で約55℃の規定温度またはそれ以下に保たれる。例えば反応を行う反応器にポンプアラウンド・ループ(pump−around loop)のついた外付けの間接的な熱交換器を取り付けることができる。熱交換器自身には適当な冷却剤、例えばグリコール冷却剤を備えることができる。好ましくは反応混合物は約25〜約50℃の範囲の温度に保たれる。供給が終了した後、例えば3000〜6000ポンドの規模を用いる場合、典型的には反応混合物を約5〜10分間反応温度に保ち、次いで反応混合物を、最初装入された有機リチウム1モル当たり約1.25〜約10モル、好ましくは約1.25〜約5モルの量の水と接触させ、反応を凍結させ触媒の活性を失わせる。アニオン重合スチレン重合体を製造するこの特に好適な方法を使用することにより、得られる重合体の実質的に全部は1個のプロトン(即ち水素原子)で終る末端基をもつことによって特徴付けられる。好ましくは有機相対水性相(以前に加えられた水によるもの)の重量比を7:1にし、反応混合物を水で洗滌することにより得られる水酸化リチウム塩の水和物を重合体溶液から分離する。得られた水性層を分離し、重合体を含む有機相からエーテル促進剤および飽和炭化水素を蒸発させて除去する。蒸発による揮発分の分離は種々の方法で行うことができ、この中には例えば熱交換機の中で混合物を予熱し、残留した溶媒および促進剤がカラムの底部から出る分離された重合体の0.5重量%より少なくなる条件下において該混合物を高温(200℃)のカラムに供給する方法が含まれる。次に、残った重合体を貯蔵するために適当な溶媒、例えばブロモクロロメタンに溶解する。反応を終結させる他の方法では、炭素数1〜約8の低級ハロゲン化アルキル、典型的には塩化アルキルまたは臭化アルキルを使用する。ハロゲン化アルキルを使用すると、実質的にすべての重合体において末端基の一つはがプロトンではなくアルキル基で終るスチレン重合体が生じる。反応を終結するためにハロゲン化アルキルを使用する場合、有機リチウムに関し化学量論的な量を使用しなければならない。この終結方法の特徴は、製造中に水を加えないから、反応生成物が実質的に無水の状態に保たれることである。
【0050】
アニオン重合スチレン重合体を製造するこの特に好適な方法に使用される飽和炭化水素希釈剤およびエーテル促進剤の量は変更することができるが、その量は全体として好ましくはスチレンの供給を止めた場合得られる反応混合物がスチレン重合体の約5〜約70重量%、さらに好ましくは40〜約60重量%を含むのに十分な量である。
【0051】
アニオン重合スチレン重合体を製造するこの特に好適な方法に従ってつくられたアニオン重合スチレン重合体生成物の数平均分子量は変化することができるが、好ましくはMが1000〜約10,000の範囲である。この特に好適な方法でつくられたアニオン重合スチレン重合体生成物は約1.5またはそれ以下、好ましくは約1.2以下の多分散度をもっているであろう。
【0052】
4.アニオン重合スチレン重合体の臭素化
一般にスチレン単量体を臭素化する適当な方法は、臭素、ブロモクロロメタンの溶液、およびポリスチレンの混合物(ポリスチレン中の重合したスチレン1モル当たり臭素2.5〜5モル)をさらに他の量のブロモクロロメタンおよび触媒量のAlClを含む反応器に供給する段階を含んで成っている。ポリスチレン、ブロモクロロメタンおよび臭素の混合物は実質的に臭素化触媒を含んでいない。「臭素化触媒を含んでいない」という語句は触媒がその触媒としての効果的を及ぼす量よりも少ないことを意味する。触媒をこのような少量しか含んでいない場合、触媒による臭素化または交叉結合は殆どまたは全く起こらない。一般にこのような量は存在するポリスチレン反応原料の重量に関して500ppmよりも少ないであろう。反応温度は約−10〜約15℃の範囲内である。好ましくは反応は約−10〜約10℃の範囲の一つまたはそれ以上の温度で行なわれる。何故ならこれによって最高品質の生成物が迅速に得られ、驚くべきことには反応自身がこのような低温で適切な迅速な速度で進行し、このような方法が工業的な生産の要請に合致しているからである。反応混合物がつくられた後、通常は約5分〜約2時間の間、好ましくは約5分〜約60分の間反応温度に保つ。この期間の後に水を加えて沈降させて酸性の相を除去することにより反応生成物を回収する。必要に応じ多数回水で洗滌することができる。次いで反応混合物を塩基、例えば水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム、および/または硼水素化ナトリウムで通常は水溶液として処理し、塩基度を適切なレベルに調節し、残留する臭素化剤を除去する。これらの処理を行った後、反応混合物を沈降させて溶質として臭素化されたスチレン重合体生成物を含む有機相と水性相とから成る二相の反応混合物を得る。水性相をデカンテーションし、残った有機相を溶媒成分から抜き取る。この抜き取りは有機相を沸騰している水の中に圧入することによって行うことが最も便利である。溶媒がフラッシュ蒸発するにつれて、臭素化されたスチレン重合体生成物は沈澱を生じる。この沈澱は液−固分離技術、例えば濾過、遠心分離等によって回収することができる。次いで回収された沈澱を乾燥する。必要に応じ、特にフリーラジカル・ポリスチレンの場合には、仕上げられたアニオン重合ポリスチレン組成物の中に熱安定性を与える量の塩基を混入することができる。
【0053】
好適な方法に使用される触媒はアルミニウムをベースにした触媒、例えばAlCl、AlBrおよびAlである。アルミニウム触媒の混合物も使用できる。一旦反応系に触媒が加えられたら、触媒はその触媒活性を著しくは失うことなく何らかの反応をすることができる。例えばAlClは或る程度AlBrに変わる可能性がある。AlClは入手のし易さおよび価格のために触媒として選ばれ、分散し易いために粉末級のAlClが最も好適で合ある。
【0054】
触媒は必要とされる触媒効果が得られるのに十分な量で使用される。これらの触媒の量は触媒の活性に依存すると思われるが、一般に臭素化されるスチレン重合体の重量に関し約0.2〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約5重量%の範囲に入る。最も活性が大きい触媒は少量で使用され、活性の少ない触媒は多量に使用される。AlClが触媒の場合、その量は約0.5〜3重量%の中に範囲が好適である。
【0055】
臭素化剤は好ましくは臭素である。臭素は二原子分子の形で購入することができるか、或いはHBrを酸化して発生させることができる。Brは液体またはガスとして供給することができる。本方法に使用される臭素化剤の量は、スチレン単量体単位1個当たり約1〜3個の臭素が置換するように、重合体中においてスチレン重合体の全体に対し臭素化剤全体のモル比を与えるような量でなければならない。臭素化されたアニオン重合ポリスチレンは好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、最も好ましくは少なくとも約68重量%の臭素を含んでいる。特定のスチレン重合体に対してこの方法に使用される臭素化剤の量は、選ばれた工程パラメータを用いて最高の臭素含量が得られるように考慮したて望ましいと思われる臭素含量により決定される。臭素化が過剰に行われる段階に近づくにつれて、最後の臭素を置換することが次第に困難になることを指摘しておく。さらに多量の臭素化剤を加えても必ずしもこの困難を和らげることにはならない。求められる置換を一つ行う毎に1モルのBrが必要であるから、化学量論的な関係は容易に決定される。実際には実験者は求める臭素含量を重量基準で決定し、次いで理想化された基準において求める臭素含量を得るために必要なモル数を計算することになるであろう。例えばスチレン重合体がポリスチレンであり、求める臭素含量が68重量%の場合、望ましいと思われる過剰な化学量論的な量を含めないで、スチレン単量体単位1個当たり少なくとも2.7モルの臭素が必要である。
【0056】
上記の説明は臭素化剤とスチレン重合体との間の全体としての量の関係についての説明であるが、供給混合物中のこれら二つの反応原料の間の量的な関係はまだ完全には説明されていない。一般に、供給すべき混合物は供給期間の任意の時点においてスチレン単量体単位1モル当たり約1〜約8モルの割合でつくられる。供給を行う間、この量的な関係は一定であるか、或いは上記範囲内で変えることができる。(工程の効率または製品の品質に対して著しく有害でない限りこの範囲から或る程度逸脱することは許される。)好適な範囲は供給混合物をつくるスチレン単量体単位1モル当たり臭素化剤約2.5〜約5モルの範囲である。察知できるように、臭素化剤対スチレン単量体単位の選ばれた全体的なモル比よりも供給混合物中における臭素化剤対スチレン単量体単位のモル比が小さいかまたは大きくなるような割合の量で臭素化剤を使用すると、混合物の成分としての臭素化剤またはスチレン重合体のいずれか一方が他の成分が消費される前に消費されてしまう。一般に全体的な割合と供給混合物中の割合は或る程度同じような値であることが好ましい。しかしすべての場合において、好ましくは最初の供給混合物は臭素対スチレン単量体単位の比が1:1でなければならない。
【0057】
この方法に使用される臭素は実質的に無水であり、即ち水を100ppm(重量基準)より少なくしか含まず、また有機性の不純物、例えばオイル、グリース、カルボニル含有炭化水素、鉄等を10ppmより少量しか含んでいないことが好適である。
【0058】
臭素化に好適な有機溶媒、即ちブロモクロロメタンは無水であって水を100ppm(重量基準)より少量しか含んでいないことが好ましい。この溶媒は水を実際に可能な程度の少量、例えば0〜30ppm(重量基準)しか含んでいないことが最も好適である。
【0059】
臭素化反応は約−20〜約60℃の温度で行うことができる。望ましくは臭素化の温度は約−10〜約15℃の範囲に保たれる。最も好適な温度は約−10〜約0℃である。この最後に挙げた温度範囲では最高の品質の製品が得られ、驚くべきことにはこのような低温において反応自身も適切に迅速な速度で進行し、この工程は工業的な要求に合致した工程である。圧力は大気圧以下、大気圧、または大気圧以上であることができる。
【0060】
スチレン重合体を臭素化すると、主な副成物としてHBrが生じる。この工程で生じたHBrは先ず溶媒を飽和させ、次いでHBrは反応器の内容物の上部空間から逃げ出す。HBrは取り出して水洗浄器に通すか、または乾燥したHBrとして貯蔵することが好ましい。乾燥した不活性ガス、例えば窒素を反応器の内容物のパッドとして使用し、その中に水が入るのを最低限度に抑制することができる。
【0061】
本発明の或る具体化例においては、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%(好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%)であり、(ii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下の臭素化されたスチレン重合体である。このようなポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は、燃焼遅延性を与える量で熱可塑性重合体と配合した場合、燃焼遅延剤として特に適している。この具体化例において特に好適なものは、配合する前に塩素がもし存在するならその含量が約700ppm以下、さらに好ましくは約500ppm以下、もっと好ましくは約100ppm以下であることをさらに特徴とした臭素化されたスチレン重合体である。
【0062】
他の具体化例においては、ポリ臭素化されたアニオン重合ポリスチレン重合体は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%(好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%)であり、(ii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上、好ましくは約340〜約380℃の範囲、さらに好ましくは約345〜約380℃の範囲にあり、(iii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下の臭素化されたスチレン重合体である。このようなポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は、燃焼遅延性を与える量で熱可塑性重合体と配合した場合、燃焼遅延剤として特に適している。この具体化例において特に好適なものは、配合する前に塩素がもし存在するならその含量が約700ppm以下、さらに好ましくは約500ppm以下、もっと好ましくは約100ppm以下であることをさらに特徴とした臭素化されたスチレン重合体である。
【0063】
本発明の好適な具体化例に従えば、燃焼遅延剤は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であり、(ii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下であり、(iii)クロロベンゼンの10%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下、好ましくは約7以下、さらに好ましくは約5以下の臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。この具体化例のもっと好適な臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはGCPによる重量平
均分子量が約5000〜約30,000、好ましくは約7000〜約25,000,さらに好ましくは約8000〜約20,000の範囲にある。
【0064】
本発明の他の好適具体化例においては、臭素化されたアニオン重合ポリスチレンは(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であり、(ii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下であり、(iii)下記に説明するメルトフローインデックス試験で得られるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分、好ましくは少なくとも約25g/10分、さらに好ましくは少なくとも約30g/分の臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。この具体化例のもっと好適な臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはGCPによる重量平均分子量が約5000〜約30,000、好ましくは約7000〜約25,000,さらに好ましくは約8000〜約20,000の範囲にある。
【0065】
本発明のさらに他の具体化例においては、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であり、(ii)下記に説明するメルトフローインデックス試験で得られるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分、好ましくは少なくとも約25g/10分、さらに好ましくは少なくとも約30g/分の臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。この好適具体化例においてはこれらの臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンは(I)クロロベンゼンの10%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下、好ましくは約7以下、さらに好ましくは約5以下であるか、或いは(II)窒素下での1%重量減におけるTGA温度が340℃以上、好ましくは約340〜約380℃の範囲、さらに好ましくは約345〜約380℃の範囲にあるか、或いはまた(III)GCPによる重量平均分子量が約5000〜約30,000、好ましくは約7000〜約25,000,さらに好ましくは約8000〜約20,000の範囲にある。この具体化例の方法のさらに好適な組成物は(I)、(II)、および(III)の内の少なくとも任意の二つ、例えば(I)および(II);(I)および(III);または(II)および(III)をもっている。さらに好適なこの具体化例の組成物は(I)、(II)、および(III)のすべての三つをもっている。
【0066】
本発明のさらに他の好適な具体化例は燃焼遅延剤として(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であり、(ii)クロロベンゼンの10%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下、好ましくは約7以下、さらに好ましくは約5以下であり、(iii)GCPによる重量平均分子量が約5000〜約30,000、好ましくは約7000〜約25,000,さらに好ましくは約8000〜約20,000の範囲にある臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。もっと好適なこの具体化例においては、これらの臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンは窒素下での1%重量減におけるTGA温度が少なくとも約340℃、好ましくは約350℃である。
【0067】
本発明のさらに他の好適具体化例におけるポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であ
り、(ii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下であり、(iii)下記に説明するメルトフローインデックス試験で得られるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分、好ましくは少なくとも約25g/10分、さらに好ましくは少なくとも約30g/分であり、(iv)クロロベンゼンの10%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下、好ましくは約7以下、さらに好ましくは約5以下の臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである。さらに好適な具体化例においては、この節に記載された臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはGCPによる重量平均分子量が約5000〜約30,000、好ましくは約7000〜約25,000,さらに好ましくは約8000〜約20,000の範囲にあるか;および/または窒素下での1%重量減におけるTGA温度が少なくとも約340℃、好ましくは少なくとも約350℃である。
【0068】
本発明のさらに好適な具体化例は、臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとして、(i)臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%、もっと好ましくは少なくとも約68重量%であり、(ii)下記に説明する熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下、好ましくはHBrとして150ppm以下、さらに好ましくはHBrとして100ppm以下であり;また(I)(a)塩化メチレン、(b)二塩化エチレン、および特に(c)ブロモジクロロエタン、(d)ジブロモクロロエタン、(e)ジブロモジクロロエタン、(f)トリブロモクロロエタン、および(g)これらの2種またはそれ以上の混合物、特に(c)〜(f)の少なくとも1種を含む混合物から選ばれる不純物を実質的に含まず;(II)イオン性の臭素の含量が2000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、もっと好ましくは500ppm以下であり;塩素がもし存在するならその含量が約700ppm以下、さらに好ましくは約500ppm以下、もっと好ましくは約100ppm以下である臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、好ましくは臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを有している。この具体化例のさらに好適な組成物は(I)、(II)、および(III)の内の少なくとも任意の二つ、例えば(I)および(II);(I)および(III);または(II)および(III)をもっている。さらに好適なものは(I)、(II)、および(III)のすべての三つをもったポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体である。
【0069】
特に好適なポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は、アニオン重合スチレン重合体を製造する上記の好適な方法でつくられた後に臭素化された、最も好ましくはこの項目に記載された方法で臭素化されたアニオン重合スチレン重合体である。この項目に記載されたそれぞれの特許は引用により本明細書に包含される。このようなアニオン重合スチレン重合体はこれを臭素化剤の混合物の中に加えることにより臭素化することができる。このような混合物は実質的に臭素化の触媒を含まず、触媒的な量の臭素化剤に供給される。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,677,390号明細書を参照されたい。臭素化を行う他の方法はアニオン重合スチレン重合体を溶液にし臭素化剤と混合する方法である。このような混合物は実質的に臭素化触媒を含まず、臭素化の触媒およびそれに伴う液体を含む反応器に供給される。この場合ポリスチレン溶液をつくるのに使用される溶媒および触媒に伴う液体はそれら二つの間で水を200ppmより少量しか含まず、臭素化剤は水を約100ppm以下しか含んでいない。このようなポリスチレンの臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,852,132号明細書を参照されたい。さらに他の臭素化を行う方法はルイス酸触媒および溶媒としての量のブロモクロロメタンの存在下においてアニオン重合スチレン重合体を臭素化剤と接触させる方法である。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,767,203号明細書を参照されたい。アニオン重合スチレン重合体を臭素化するさらに他の方法ではブロモクロロメタン溶媒およびルイス酸触媒を反応容器の中に入れ、この容器に臭素化剤を加える。別法として最初はポリスチレンを反応容器の中に入れず、その代わり予めブロモクロロメタンおよびルイス酸触媒を装入した反応容器の中にポリスチレンを供給して臭素化剤と混合する。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,916,978号明細書を参照されたい。臭素化を行うさらに他の方法では、臭素化剤を含んで成る第1の供給流、上記のようにしてつくったアニオン重合スチレン重合体を含んで成る第2の供給流、および臭素化の触媒を含んで成る第3の供給流を混合機に供給してこれらの供給流を緊密に混合する。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,686,538号明細書を参照されたい。他の臭素化の方法では、反応器の中に臭素化の触媒およびそれに伴う液体を入れ、臭素化触媒およびそれに伴う液体の一部を反応器の外側にある混合機に供給する。臭素化剤および上記の方法でつくったアニオン重合ポリスチレンの溶液を別の供給流として混合機に供給する。この場合該別の供給流は外側の混合機に供給する前では実質的に臭素化触媒を含まず、またポリスチレン溶液をつくるための溶媒およびそれに伴う液体はそれら二つの間で水を200ppmより少量しか含んでいず、臭素化剤は水を約100ppm以下しか含んでいない。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第5,852,131号明細書を参照されたい。また、アニオン重合スチレン重合体を臭素化剤と混合し、供給混合物中の臭素化剤対ポリスチレンの比を約1:1〜約8:1にして予めブロモクロロメタンおよびルイス酸触媒が加えられていた反応容器に供給することにより臭素化を行うことができる。このようなスチレン重合体の臭素化を行う方法の詳細については、例えば米国特許第6,207,765 B1号明細書を参照されたい。
【0070】
B.臭素化されたアニオン重合ポリスチレンに対する分析方法
臭素含量 臭素化されたスチレン重合体は例えばテトラヒドロフラン(THF)のような溶媒に対し良好な或いは少なくとも満足できる溶解度をもっているから、臭素化されたスチレン重合体に対する臭素含量の決定は蛍光X線(XRF)法によって容易に行うことができる。分析試料は希薄な試料であり、例えば60mLのTHF中に0.1±0.05gの臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを含んでいる。XRF分光計はPhillips PW1480分光計であることができる。THF中にブロモベンゼンを含む標準溶液を較正用の標準として使用する。本明細書に記載された臭素含量の値はすべてXRF法による値である。
【0071】
ΔE色値 本発明に使用される臭素化されたスチレン重合体の色の寄与を決定するためには、この場合も例えばクロロベンゼンのような容易に得られる溶媒に臭素化されたスチレン重合体が溶解する能力を利用する。5±0.1gの臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを秤量して50mLの遠心分離用の管の中に入れる。この管に45±0.1gのクロロベンゼンを加える。管を閉じ、手首関節式の振盪機の上で1時間振盪する。1時間の振盪期間の後に、溶液について溶解しない固体があるかどうかをを検査する。もし曇りがあったら、溶液を4000rpmで遠心分離にかける。それでも溶液が透明にならなかったら、さらに10分間遠心分離を行う。それでも溶液が曇っている場合には、正確な測定ができないものとして廃棄しなければならない。しかしもし透明な溶液が得られたら、HunterLab ColorQuest Sphere Spectrocolorimeterで試験を行う。透過長20mmの透過セルを使用する。色をΔEとして報告するために測色系を「Delta E−lab」に設定し、「L」、「a」、および「b」の色値を得る。製品の色は、クロロベンゼン中に10重量%の製品を含む溶液をクロロベンゼンと比較して下記式に従いHunterのL、a、およびbのスケールを用いて全体の色の差(ΔE)として決定される。
ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
【0072】
熱安定性試験 熱安定性を決定し、試料がもつ腐蝕の潜在的能力を評価するために、熱安定性試験を使用する。米国特許第5,637,650号明細書に記載された方法を次のようにして用いた。各試料について二回実験を行った。2.00±0.01gの試料を新しいきれいな20×150mmの試験管の中に入れる。ネオプレンの栓とViton(R)フルオロエラストマーの配管を用いて試験管を窒素吹き込みラインに連結し、それぞれ0.1規定のNaOHを200mL、フェノールフタレインを5滴含む3個の250mLの枝付きフラスコの中の液面下にあるガス分散用フリットに試験管から出るガスを順次通す。0.5SCFHの一定速度で窒素を通し、溶融塩浴(51.3% KNO/48.7% NaNO)の中で15分間300℃に加熱した後、周囲温度で5分間保つ。次に試料を含む試験管をきれいな乾燥した試験管と取り替え、空の試験管を300℃の溶融塩浴に入れさらに10分間装置に窒素を通す。試験管、配管、およびガス分散用の管をすべて脱イオン水で洗滌し、洗液を3個の捕集用のフラスコの中の溶液と定量的に一緒にする。一緒にした溶液を1:1のHNOで酸性にし、自動電位滴定装置(Metrohm 670、716、736または同等品)を用い0.01NのAgNOで滴定する。結果はppm単位のHBr、ppm単位のHCl、およびppm単位のHBr等価値として次のように計算される。
【0073】
HBr(ppm)=(EP1)(N)(80912)/(試料の重量)
HCl(ppm)=(EP2−EP1)(N)(36461)/(試料の重量)
HBr等価値(ppm)=(EP2)(N)(80912)/(試料の重量)
【0074】
ここでEP(x)は終点xに到達するために使用されるAgNOのmLの値;NはAgNOの規定度である。次の分析を行う前に配管を窒素で完全に乾燥する。系の中に残留したハロゲン化水素が存在しないことを確かめるために、それぞれの日に最初の試料の分析を行う前にブランクとして3個のきれいな試験管を用いて実験を行う。
【0075】
GCPによる重量平均分子量の値はGPCによりWaters社のmodel 510 HPLCポンプを用い、検出器としてWaters社のRefractive Index Detector、Model 410、およびPrecision Detector社のLight Scattering Detector,Model PD2000を使用して得た。カラムはWaters社のμStyragel、500Å、10,000Å、および100,000Åであった。オートサンプラーはShimadzu社のModel Sil 9Aであった。ポリスチレンの標準(M=185,000)をおきまりの手順で使用して光散乱データの精度を検証した。使用した溶媒はHPCL級のテトラヒドロフランであった。 使用した試験法では10mLのTHFに試料0.015〜0.020gを溶解する。この溶液の一部を濾過し、50μLをカラムに注入する。Precision Detectors社から提供されたPD 2000 Light Scattering Detector用のソフトを使用して間隔を解析した。Mの値は式
理論的なMBrPS = MPs/[(1−(Brの重量%)(0.01)]
に従って得られる。
【0076】
C.他の成分
本発明の好適な繊維組成物は少なくとも1種の燃焼遅延性相乗剤を含んでいる。このような相乗剤は典型的には燃焼遅延剤対相乗剤の比が約2〜約4になる範囲の量で使用される。燃焼遅延性相乗剤の例には、これだけには限定されないが、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム、酸化鉄、および硼酸亜鉛が含まれる。
【0077】
最終製品に所望の性質を賦与するために、しばしば通常の他の添加物が燃焼遅延性繊維に加えられる。このような1種またはそれ以上の添加物は本発明の燃焼遅延性繊維組成物
の一部をなしている。これらの添加物は該組成物の燃焼遅延性および他の所望の性質に悪影響を与えないように選ばなければならない。このような添加物の例には着色剤、例えば染料および顔料、熱安定剤および光安定剤を含む安定剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、フォッギング防止剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、酸化防止剤、分散剤、発泡剤、型抜き剤、加工助剤、造核剤、補強剤、可塑剤、および他の重合体材料、例えばエラストマーまたはゴムが含まれる。
【0078】
随時加えられる上記の他の成分の全部が使用可能な熱可塑性の繊維生成重合体またはその混合物の全部と相容性をもっているとは限らないことに注意すべきである。例えば相乗剤の1種である三酸化アンチモンは一般にポリエチレンテレフタレートと相容性をもっていない。
【0079】
本発明の組成物はまた随時ポリテトラフルオロエチレン樹脂を含んでいることができる。使用できるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は公知方法、例えば乳化重合または懸濁重合によってつくることができ、いくつかの市販品として容易に入手できる。ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、PTFE樹脂の所望の分散特性、その加工性、並びに必要とされる他の物理的性質に依存して種々の重合度(粘度)をもつ樹脂の中から選ぶことができる。
【0080】
D.本発明の担体配合物
担体配合物は(i)臭素含量が少なくとも約50重量%の少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を含んで成る成分からつくられる。成分(ii)は他の燃焼遅延剤および相乗剤の両方を含んでいることができる。組成物に対して記載したように、担体配合物もこれだけには限定されないが、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、および他の重合体材料、例えばエラストマーまたはゴムを含む通常の添加物を随時含んでいることができる。上記のように、このような添加剤は燃焼遅延剤および組成物の他の望ましい性質に悪影響を及ぼさないように選ばなければならない。このような担体配合物の利点は、高融点の成分が燃焼遅延性繊維組成物の一部になり、同時に高融点成分が繊維の性質に与える悪い影響を最低限度に抑制できる点である。
【0081】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は本発明の組成物に対して上記に説明したものであり、好適なポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体も上記に説明したものである。相乗剤および/または燃焼遅延剤が配合物の配合温度より高い融点または軟化点をもっている場合(即ちそれが高融点であるかまたは熔融しない場合)、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は一般に担体配合物の少なくとも約40重量%をなしている。さらに好ましくはポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は担体配合物の少なくとも約50重量%をなしている。相乗剤は本発明の組成物に対して上記に説明したものである。高融点の任意の相乗剤または燃焼遅延剤をポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体と配合して担体配合物をつくることができる。相乗剤および/または燃焼遅延剤が配合物の配合温度よりも低い融点または軟化点をもっている場合には、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は担体配合物の40重量%よりも少ない割合をなしている。
【0082】
好適な担体配合物は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと三酸化アンチモンを含むもの;臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと五酸化アンチモンを含むもの;臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとアンチモン酸ナトリウムを含むもの;および臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)を含むものを含んでいる。臭素化されたアニオン重合ポリスチレンがアニオン重合ポリスチレン由来する約60重量%の典型的な臭素含量をもっている場合、これらの配合物はさらに好適であ
る。特に好適な担体配合物は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンがアニオン重合ポリスチレンに由来する約68重量%の典型的な臭素含量をもっているものである。
【0083】
担体配合物はポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体および相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、および使用するなら他の随時加える成分を一緒に混合し熔融してつくることができる。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、および使用するなら他の成分を、それらを熔融する装置または区域に加え、ここでこれらを同時に混合し熔融する(好適な方法)か、または一緒に混合した後熔融することができる。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体と相乗剤および/または他の燃焼遅延剤とを配合する他の方法は、それらの一つ、通常はポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融し、次いで通常は混合し熔融しながら他の一つを加える方法である。
【0084】
別法として、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、および他の随時加える成分を(予め)混合した後、一緒に熔融する方法である。乾燥した成分を予め混合することは通常必要ではなく、また好適ではない。ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、および必要に応じ他の成分を熔融する前に予め混合する場合には、このような予備混合は混合機、例えばHenschel混合機、振盪混合機等で行うことができる。任意のまたはすべての成分の一部または全部を粉末にし、混合物中における分散を容易にすることができるが、一般にその必要はない。
【0085】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体および相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、およびもし存在するならば他の成分から成る配合物の配合は配合装置、例えば二重スクリュー押出し機またはBuss捏和機で行うことができる。
【0086】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、相乗剤および/または他の燃焼遅延剤、および随時加えられる他の成分を予備混合することなく熔融し混合する場合には、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体が軟化または熔融するまでこれらを加熱し、次いですべての成分を十分に混合した後、混合物の押出しを行う。熔融および混合は例えば二重スクリュー押出し機のような単一または多重スクリュー押出し機、Buss捏和機のような装置を用いて行うことができる。
【0087】
配合された押出し物が配合機から出てくる際、押出し機のダイス型を出る押出されたストランドは混合物が冷却すると同時に型当たり面でペレット化される(die−face
pelletized)。水冷または空冷を使用することができる。水冷を用いる場合、水の温度は好ましくは少なくとも約60℃、さらに好ましくは水の温度は約60〜70℃の範囲にある。さらに好ましくは水の噴霧を使用する。特に好適な方法は空冷(押出している担体配合物に空気流を吹き付ける)であり、相乗剤および/または他の燃焼遅延剤が高融点の場合特にそうである。高融点の成分の割合が十分高い場合、例えば臭素化されたアニオン重合ポリスチレンが担体配合物の約50%以下の場合、つくられた粒状物は水冷を行った際砕ける傾向があることが観察された。このようなことが起こる場合の正確な割合は(理論に拘束されるつもりはないが)担体配合物に使用されるポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体と共に変化する傾向があると思われる。
【0088】
E.燃焼遅延性組成物の製造方法
上記のように、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の粘度が低く熱安定性が高いことにより燃焼遅延性の繊維およびフィラメントのつくり易さが増加すると考えられる。このような繊維またはフィラメントをつくる一つの方法は、(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合
スチレン重合体を熔融紡糸する方法である。このポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約50重量%の臭素含量をもっている。
【0089】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、繊維生成熱可塑性重合体、およびもし使用するなら他の成分をそれらを熔融して紡糸する装置または区域に加え、ここで同時にこれらを混合し熔融させる(好適な方法)か、或いは一緒に熔融した後混合し、次いで押し出しを行う。燃焼遅延剤および繊維生成重合体の一つの成分、通常は繊維生成重合体を熔融し、次いで他の成分を通常は混合および熔融させながら加えることにより配合を行うことができる。別法として、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、繊維生成熱可塑性重合体および他の成分を(予め)混合した後一緒に熔融し、次いで押し出しを行うことができる。通常乾燥した成分を予め混合する必要はなく、好ましくない。
【0090】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、繊維生成熱可塑性重合体、および必要に応じ他の成分を熔融する前に予め混合する場合、このような予備的な混合は混合機、例えばHenschel混合機、振盪混合機等で行うことができる。任意のまたはすべての成分の一部または全部を粉末にし、混合物中における分散を容易にすることができるが、一般にその必要はない。
【0091】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、繊維生成熱可塑性重合体、および随時加えられる他の成分を予備混合することなく熔融し混合する場合には、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体が軟化または熔融するまでこれらを加熱し、次いですべての成分を十分に混合した後、混合物の押出しを行う。熔融および混合は例えばBanbury混合機、開放式ローラ、捏和機、単一または多重スクリュー押出し機等のような装置を用いて行うことができる。
【0092】
ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体および熱可塑性繊維生成重合体を含んで成る組成物をつくる他の方法は、マスターバッチ、即ち通常は高濃度の燃焼遅延剤(ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体)を含む混合物をつくる方法である。マスターバッチ中の典型的な割合としてはポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体対繊維生成熱可塑性重合体の割合が90:10であり、他の典型的な割合はポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体対繊維生成熱可塑性重合体の割合が80:20、および70:30である(すべての割合は重量による)。しかしアニオン重合スチレン重合体対繊維生成熱可塑性重合体の割合は99:1〜1:99の間で任意に変えることができる。マスターバッチに相乗剤を含ませた場合には、この割合、即ちポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体:繊維生成熱可塑性重合体:相乗剤の割合は例えば30:60:10(すべて重量による)であることができるが、この割合は広い範囲で変えることができ、相乗剤の存在によって制限を受けることはない。マスターバッチは後で繊維生成熱可塑性重合体をさらに加えて再熔融し、燃焼遅延剤と繊維生成熱可塑性重合体との所望の割合をもった最終製品にすることができる。この方法は、本発明において上記混合方法のいずれと共に使用することができる。もし使用するならば他の所望の成分を濃縮した配合物に加えるか、または濃縮した配合物を繊維生成熱可塑性重合体に加える際に加えることができる。配合された押出し物が配合機を出る際に、押出し機のダイス型を出る押出されたストランドは、混合物が冷却されると同時にダイス型の面でペレット化される。高温または低温の水による冷却或いは空気による冷却を用いることができる。
【0093】
繊維またはフィラメントを担体配合物からつくる場合には、繊維生成熱可塑性重合体を本発明の担体配合物と共に熔融紡糸する。必要に応じ担体配合物の一部としてではなく、随時使用する成分をこの時点で加えることができる。繊維およびフィラメントを担体配合物からつくる方法はポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体および繊維生成熱可塑性重合体を熔融紡糸する方法と同様である。
【0094】
当業界に公知のように、不織布、織物および編物繊維布に対しては、繊維およびフィラメントは種々の線密度のものをつくることができる。典型的には約2〜約25デニール(約0.22〜0.27tex)の線密度をもった繊維およびフィラメントがつくられる。本発明によりこのような線密度をもつ繊維およびフィラメントを得ることができる。さらに、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体と繊維生成熱可塑性重合体との配合物の均一性のためにマイクロ繊維の大きさをもった繊維およびフィラメント(約1デニール以下)をつくることができる。勿論約25デニール以上の線密度をもった繊維およびフィラメントも、用途が必要とすればつくることができる。
【0095】
本発明の好適な繊維およびフィラメントは約2〜約25デニールの範囲の線密度をもっている。もっと好適なものはポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体が臭素化されたアニオン重合ポリスチレンである線密度が約2〜約25デニールの繊維およびフィラメントである。極めて好適な繊維およびフィラメントは線密度が約2〜約25デニールの範囲であり、ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体が少なくとも約60重量%の臭素含量をもつ臭素化されたアニオン重合ポリスチレンの繊維およびフィラメントである。さらに極めて好適なものは臭素含量が少なくとも約68重量%の上記のフィラメントまたは繊維である。
【0096】
また当業界においては、熔融紡糸は単一軸方向の伸長過程であり、単一軸方向の伸長において応力−歪みの関係をもつ伸長粘度の挙動は剪断粘度の挙動よりも重要であることが知られている。熔融紡糸においては、分子量分布が狭いと部分的に細くなる(thinning)傾向が少なく、伸長速度が高い場合伸長粘度が増加する。これによって熔融物の配向が高くなり、それは紡糸された繊維またはフィラメントの高い配向度、高い強度、および低い伸長度に反映される。これとは対照的に、分子量分布が広いと、部分的に細くなる傾向が大きく、従って紡糸速度が高い場合くびれおよび割れ目が生じやすい。従ってポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の分子量分布が狭いことは、熔融紡糸を行う場合本発明の燃焼遅延性繊維およびフィラメントの加工に著しい利点をもたらす。
【0097】
本発明の繊維およびフィラメントは、一旦つくられると、通常の織物工程により織物または編物の繊維布をつくるための糸にすることができる。押出し工程でつくられた繊維およびフィラメントはまた不織布の製造に使用することができる。別法として、この繊維およびフィラメントを他の繊維との配合物、例えばポリエステル/綿の配合物の成分として使用し、次にこれを不織布、織物または編物繊維布にすることができる。本発明の繊維およびフィラメントからつくられた繊維布または織物は絨毯(特に高パイル絨毯)、カーテン、掛布、ブラインド、内装品(例えば家具、航空機のシート)、テーブルクロス、ベッド用繊維布、壁カバー等に使用することができる。
【0098】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0099】
熔融紡糸装置において、乾燥したポリエチレンテレフタレートを所望の量のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体と280〜300℃において混合し、熔融物を水浴の中にストランドとして押出す。得られた繊維を織って繊維布をつくる。燃焼遅延性を評価するために、National Fire Protection Associationsによって制定された標準試験法である小規模NFPA−701試験(1989年)を行う。NFPA−701試験では、2×10インチの布片を枠の上に延ばしてピンと張り、垂直に吊り下げる。この繊維布片の3/4インチの部分を1.5インチの焔の中に12秒間入れる。繊維布の焦げた長さ、焼け落ちる時間、および重量減を測定する。NFPA−701試験に合格するには焼け落ちる時間は0秒である。
【実施例2】
【0100】
熔融紡糸装置において、所望の量のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融したナイロン(ポリアミド)に加え、熔融物を押出して繊維またはフィラメントにする。この繊維またはフィラメントを編んで繊維布にする。この繊維布に対し実施例1と同様にしてNFPA−701試験を行い燃焼遅延性を評価する。
【実施例3】
【0101】
熔融紡糸装置において、所望の量のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融したポリプロピレンに加え、熔融物を押出して繊維またはフィラメントにする。この繊維またはフィラメントを織って繊維布にする。この繊維布に対し実施例1と同様にしてNFPA−701試験を行い燃焼遅延性を評価する。
【実施例4】
【0102】
下記の試料に対する実験には二重スクリュー押出し機を使用した。スクリューは同時回転式であった。型当たり面でのペレット化を使用した。冷却には水、水の噴霧、または空気流(空冷)を用いた。押出し機は11個の分離した区域を有し、それぞれの区域を加熱した。或る試料に対しては二重スクリュー押出し機と組み合わせて側方供給機を使用した。特記しない限り各試料を水で冷却した。試料に対する実験の種々のパラメータを表1にまとめる。すべての実験に使用した臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはAlbemarle Corporation製の製品SAYTEX HP−3010であった。これらの試料には2個の臭素化されたアニオン重合ポリスチレン100%に対する実験(実験1および2)が含まれており、これは本発明の目的に対する対照実験試料である。実験2は実験1よりもわずかに高い温度で行った。臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと三酸化アンチモン(White Star N, Campine N.V.製,Beerse,ベルギー)との担体配合物は臭素化されたアニオン重合ポリスチレン77.5重量%対三酸化アンチモンと22.5重量%の重量比でつくった。この配合物に対して二つの実験を行った。その一つ、実験3は水で冷却を行ったが、他の実験、実験4は空気で冷却を行った。表1に記載されたその他の条件は両方の実験について同じである。
【0103】
臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとエチレンビス(テトラブロモフタルアミド)(SAYTEX BT−93W、Albemarle Corporation製)とのいくつかの担体配合物をつくった。50%の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと50%のエチレンビス(テトラブロモフタルアミド)との配合物(実験5)をつくり水で冷却した。45%の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと55%のエチレンビス(テトラブロモフタルアミド)との配合物(実験6)の試料も水で冷却した。40%の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンと60%のエチレンビス(テトラブロモフタルアミド)との配合物の試料に対しては表1に示すように二組の条件を使用した(実験7〜10)。実験8は水で冷却した。実験9では水の噴霧を用いて冷却した。実験10は空冷であった。40%/60%の臭素化されたアニオン重合ポリスチレン/エチレンビス(テトラブロモフタルアミド)の配合物では粒状物は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンを高い割合で含むものに比べて光沢が少なかった。このことは40%/60%の配合物の中では材料があまり良く配合されていないことを示している。実験3〜4および8〜10においては、水で冷却すると粒状物が砕けるが、空冷の場合には光沢のある粒状物が得られることが観測された。恐らく実験3、8、および9から得られる粒状物も空冷を行えば砕けないであろう。
【0104】
表1の「性質」の最初の数字は担体配合物中の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンの相対的な量であり、2番目の数字は担体配合物中に存在する他の成分の相対的な量であ
る。
【0105】
【表1】

【実施例5】
【0106】
下記の試料に対する実験には二重スクリュー押出し機を使用した。スクリューは同時回転式であった。型当たり面でのペレット化を使用した。冷却には低温の水の噴霧を用いた。押出し機は11個の分離した区域を有し、それぞれの区域を加熱した。或る試料に対しては二重スクリュー押出し機と組み合わせて側方供給機を使用した。特記しない限り各試料を水で冷却した。試料に対する実験の種々のパラメータを表2にまとめる。すべての実験に使用した臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはAlbemarle Corporation製の製品SAYTEX HP−3010であった。実験1〜3においてはポリブチレンテレフタレートはCrastin(DuPontshano製品)であったが、実験4ではポリブチレンテレフタレートはArnite(DSM社の製品)であった。臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとポリブチレンテレフタレートとのいくつかのマスターバッチをつくった。表2の「割合」の行の最初の数字はマスターバッチ中の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンの相対的な量であり、2番目の数字はマスターバッチ中に存在するポリブチレンテレフタレートの相対的な量である。
【0107】
【表2】

【実施例6】
【0108】
下記の試料に対する実験には二重スクリュー押出し機を使用した。スクリューは同時回転式であった。ストランドによる粒状化を使用した。冷却は冷水浴中で水で行った。押出し機は9個の分離した区域を有し、それぞれの区域を加熱した。或る試料に対しては二重スクリュー押出し機と組み合わせて側方供給機を使用した。特記しない限り各試料を水で冷却した。試料に対する実験の種々のパラメータを表3にまとめる。すべての実験に使用した臭素化されたアニオン重合ポリスチレンはAlbemarle Corporation製の製品SAYTEX HP−3010であった。
【0109】
臭素化されたアニオン重合ポリスチレンとポリブチレンテレフタレートとのいくつかのマスターバッチをつくった。これらのマスターバッチの若干は相乗剤も含んでいた。表3の「割合」の行の最初の数字はマスターバッチ中の臭素化されたアニオン重合ポリスチレンの相対的な量であり、2番目の数字はマスターバッチ中に存在するポリブチレンテレフタレートの相対的な量であり、第3番目の数字がある場合にはそれはマスターバッチ中に存在する相乗剤の量である。
【0110】
【表3】

【0111】
本発明のさらに他の具体化例には本発明を限定しない次の具体化例が含まれる。
【0112】
aa)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成り、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約67重量%である繊維またはフィラメント。
【0113】
ab)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであるaa)記載の繊維またはフィラメント。
【0114】
ac)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであるaa)記載の繊維またはフィラメント。
【0115】
ad)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであるaa)記載の繊維またはフィラメント。
【0116】
ae)該繊維生成熱可塑性重合体はアクリルであるaa)記載の繊維またはフィラメン
ト。
【0117】
af)該繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールであるaa)〜ae)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0118】
ag)aa)〜af)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメントからつくられた糸または撚糸。
【0119】
ah)aa)〜af)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメントが配合物の一成分である繊維またはフィラメントの配合物。
【0120】
ai)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約60重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融紡糸することを含んで成る方法。
【0121】
aj)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるai)記載の方法。
【0122】
ak)該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであるai)またはaj)記載の方法。
【0123】
al)該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであるai)またはaj)記載の方法。
【0124】
am)該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであるai)またはaj)記載の方法。
【0125】
an)該繊維生成熱可塑性重合体はアクリルであるai)またはaj)記載の方法。
【0126】
ao)該繊維生成熱可塑性重合体および該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を同時に混合し熔融するai)〜an)のいずれか一つに記載された方法。
【0127】
ap)つくられた繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールであるai)〜ao)のいずれか一つに記載された方法。
【0128】
aq)(i)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を一緒に熔融する方法でつくられた担体配合物を、少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体と一緒に熔融紡糸することを含んで成る繊維またはフィラメントを製造する方法。
【0129】
ar)該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであるaq)記載の方法。
【0130】
as)該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(
ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであるaq)記載の方法。
【0131】
at)該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであるaq)記載の方法。
【0132】
au)該繊維生成熱可塑性重合体はアクリルであるaq)記載の方法。
【0133】
av)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるaq)〜au)のいずれか一つに記載された方法。
【0134】
aw)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも67重量%であるaq)〜au)のいずれか一つに記載された方法。
【0135】
ax)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるaw)記載の方法。
【0136】
ay)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成る繊維またはフィラメントであって、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該繊維またはフィラメントの少なくとも約2重量%をなしている繊維またはフィラメント。
【0137】
az)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は繊維またはフィラメントの約5〜約20重量%の範囲をなしているay)記載の繊維またはフィラメント。
【0138】
ba)燃焼遅延性の相乗剤は繊維またはフィラメントの最高約12重量%であるay)記載の繊維またはフィラメント。
【0139】
bb)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であるay)〜ba)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0140】
bc)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約67重量%であるay)〜ba)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0141】
bd)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるay)〜bc)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0142】
be)担体配合物である組成物であって、該組成物は(i)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を含んで成る成分からつくられた担体配合物であり、(ii)は高融点であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該担体配合物の少なくとも40重量%をなしている担体配合物。
【0143】
bf)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該担体配合物の少なくとも約50重量%をなしているbe)記載の組成物。
【0144】
bg)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化され
たアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成るマスターバッチであって、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも約80重量%をなしているマスターバッチ。
【0145】
bh)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも約80重量%をなしているbg)記載のマスターバッチ。
【0146】
bi)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも約90重量%をなしているbg)記載のマスターバッチ。
【0147】
bj)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも70重量%をなしており、相乗剤が存在し、該相乗剤は該マスターバッチの少なくとも約2重量%であるbg)記載のマスターバッチ。
【0148】
bk)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも約80重量%をなしているbj)記載のマスターバッチ。
【0149】
bl)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約60重量%の臭素含量をもっているbg)〜bk)のいずれか一つに記載されたマスターバッチ。
【0150】
bm)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約67重量%の臭素含量をもっているbg)〜bk)のいずれか一つに記載されたマスターバッチ。
【0151】
bn)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるbg)〜bm)のいずれか一つに記載されたマスターバッチ。
【0152】
bo)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体対相乗剤の重量比は約1:約5の範囲内にあるaa)〜ah)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0153】
bp)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体対相乗剤の重量比は約2:約4の範囲内にあるaa)〜ah)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0154】
bq)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっているaa)〜af)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0155】
br)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして150ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約7以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも
約25g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっているaa)〜af)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0156】
bs)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして100ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約5以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも約30g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっているaa)〜af)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0157】
bt)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるbq)〜bs)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0158】
bu)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体はアニオン重合スチレン重合体の臭素化によってつくられ、該アニオン重合のスチレン重合体は、液体の炭化水素希釈剤およびエーテル促進剤を反応器に装入し;次いで(i)加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の有機リチウム重合開始剤を与えるような量で有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液を反応器に装入し、次いで(ii)得られる反応混合物の温度が約55℃以下に保たれるようにスチレン単量体を制御して加えるバッチ法によってつくられるaa)記載の繊維またはフィラメント。
【0159】
bv)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体はアニオン重合スチレン重合体の臭素化によってつくられ、該アニオン重合のスチレン重合体は、液体の炭化水素希釈剤およびエーテル促進剤を反応器に装入し;次いで加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の量の有機リチウム重合開始剤を与えるような速度を保ちながら(i)スチレン単量体および(ii)有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液を別々の供給流として同時に反応器に供給し、この際得られる反応混合物の温度を約55℃以下に保ち、且つ(ii)は(i)よりも短い時間の間供給を行うバッチ法によってつくられるaa)記載の繊維またはフィラメント。
【0160】
bw)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるbu)〜bv)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0161】
bx)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験で熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、1重量%重量減におけるTGA温度が340℃以上であるbu)〜bv)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0162】
by)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験で熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下であり、メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも20g/10分であるbu)〜bv)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメント。
【0163】
bz)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化され
たアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成り、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、1%重量減におけるTGA温度が340℃以上である繊維またはフィラメント。
【0164】
ca)(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成り、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験で熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下であり、メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分である繊維またはフィラメント。
【0165】
cb)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるca)記載の繊維またはフィラメント。
【0166】
cc)bq)〜cb)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメントからつくられた糸または撚糸。
【0167】
cd)bq)〜cb)のいずれか一つに記載された繊維またはフィラメントが配合物の一成分である繊維またはフィラメントの配合物。
【0168】
ce)繊維またはフィラメントを製造する方法であって、該方法は(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融紡糸することを含んで成り、ここで該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、1%重量減におけるTGA温度が340℃以上である方法。
【0169】
cf)繊維またはフィラメントを製造する方法であって、該方法は(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融紡糸することを含んで成り、ここで該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下であり、クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下であり、メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも約20g/10分である方法。
【0170】
cg)該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであるce)〜cf)のいずれか一つに記載された方法。
【0171】
本明細書において化学名または化学式で参照した反応原料および成分は、それが単数または複数で参照されていることには無関係に、化学名または化学種で参照された他の物質と最初に接触する前に存在したもの(例えば他の反応原料、溶媒等)であるとして同定されることを理解されたい。得られる混合物または溶液或いは反応媒質の中で化学的な変化、変換および/または反応がその前に起こっていたとしてもそれは問題にならない。何故ならこのような変化、変換および/または反応は上記説明に従って求められる条件下において特定の反応物質および/または成分を一緒にした当然の結果だからである。従ってこれらの反応物質および成分は、所望の化学操作または反応を行うことに関連して、或いは所望の操作または反応を行う際に使用される混合物をつくる場合に一緒にすべき成分として同定される。また或る具体化例においては物質、成分および/または構成要素が現在形(「含んで成る」、「或る」など)で参照されているが、この参照は本明細書の説明に従ってそれが最初に1種またはそれ以上の他の物質、成分および/または構成要素と接触、配合または混合された直前に存在した物質、成分および/または構成要素に対するものとする。
【0172】
また添付特許請求の範囲においては、物質は現在形(「含んで成る」、「ある」等)で記述されているが、これらの物質はすべてそれが本明細書の説明に従って最初に接触、配合または混合されたた直前に存在した物質を参照するものとする。
【0173】
明白にそうでないことが示された場合を除き、本明細書に使用された場合冠詞「a」または「an」(一つ)は該冠詞が参照する単一の要素に対し上記説明および特許請求の範囲を限定するつもりはなく、また限定すると考えるべきではない。むしろ冠詞「a」または「an」は、それが使用された場合、明白にそうでないことが示された場合を除き一つまたはそれ以上のこのような要素を含むものとする。
【0174】
本明細書の任意の部分において参照された各特許はそれぞれ引用によりその全文が本明細書に包含される。
【0175】
本発明は添付特許請求の範囲の精神および範囲内においてかなりの変形を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成る成分からつくられ、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約50重量%であることを特徴とする繊維またはフィラメント。
【請求項2】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項3】
該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項2記載の繊維またはフィラメント。
【請求項4】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項5】
該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項4記載の繊維またはフィラメント。
【請求項6】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項7】
該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項6記載の繊維またはフィラメント。
【請求項8】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項9】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項10】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項2記載の繊維またはフィラメント。
【請求項11】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約67重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項2記載の繊維またはフィラメント。
【請求項12】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項4記載の繊維またはフィラメント。
【請求項13】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約67重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項4記載の繊維またはフィラメント。
【請求項14】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項6記載の繊維またはフィラメント。
【請求項15】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約67重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項6記載の繊維またはフィラメント。
【請求項16】
該繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールの範囲であることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項17】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールの範囲であることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項18】
請求項1記載の繊維またはフィラメントからつくられた糸または撚糸。
【請求項19】
請求項1記載の繊維またはフィラメントが配合物の一つの成分であることを特徴とする繊維またはフィラメントの配合物。
【請求項20】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも20g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっていることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項21】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項20記載の繊維またはフィラメント。
【請求項22】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項20記載の繊維またはフィラメント。
【請求項23】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項22記載の繊維またはフィラメント。
【請求項24】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項20記載の繊維またはフィラメント。
【請求項25】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項24記載の繊維またはフィラメント。
【請求項26】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項20記載の繊維またはフィラメント。
【請求項27】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項26記載の繊維またはフィラメント。
【請求項28】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体はアニオン重合スチレン重合体を臭素化してつくられ、該アニオン重合スチレン重合体は、液体の飽和炭化水素希釈剤およびエーテル促進剤を反応器に装入し;次いで(A)(i)加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の有機リチウム重合開始剤を与えるような量で有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液を反応器に装入し、次いで(ii)得られた反応混合物の温度が約55℃以下に保たれるようにスチレン単量体を制御して加えるか、または(B)加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の量の有機リチウム重合開始剤を与える速度を保ちながら(i)スチレン単量体および(ii)有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液の別々の供給流を同時に反応器に供給し、この際得られる反応混合物の温度を約55℃以下に保ち、且つ(ii)の供給は(i)の供給よりも短い時間の間行われるバッチ法によってつくられることを特徴とする請求項1記載の繊維またはフィラメント。
【請求項29】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項28記載の繊維またはフィラメント。
【請求項30】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項28記載の繊維またはフィラメント。
【請求項31】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項30記載の繊維またはフィラメント。
【請求項32】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項28記載の繊維またはフィラメント。
【請求項33】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項32記載の繊維またはフィラメント。
【請求項34】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項28記載の繊維またはフィラメント。
【請求項35】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項34記載の繊維またはフィラメント。
【請求項36】
(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を含んで成るマスターバッチであって、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は少なくとも約50重量%の臭素含量を有し、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は該マスターバッチの少なくとも約70重量%をなしていることを特徴とするマスターバッチ。
【請求項37】
(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を熔融紡糸することを特徴とする繊維またはフィラメントの製造法。
【請求項38】
該繊維生成熱可塑性重合体および該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体を同時に混合し熔融することを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項40】
該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項42】
該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項44】
該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項46】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項47】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項48】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項49】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項50】
製造される繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールの範囲であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項51】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体範囲で臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであり、製造される繊維またはフィラメントの線密度は約2〜約25デニールの範囲であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項52】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体がマスターバッチの一つの成分であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項53】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも20g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっていることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項54】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項55】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項56】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項55記載の方法。
【請求項57】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項58】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項59】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項60】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項61】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体はアニオン重合スチレン重合体を臭素化してつくられ、該アニオン重合のスチレン重合体は、液体の飽和炭化水素希釈剤およびエーテル促進剤を反応器に装入し;次いで(A)(i)加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の有機リチウム重合開始剤を与えるような量で有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液を反応器に装入し、次いで(ii)得られる反応混合物の温度が約55℃以下に保たれるようにスチレン単量体を制御して加えるか、または(B)加えるべきスチレン単量体の全重量に関して約1〜約10モル%の範囲の有機リチウム重合開始剤を与える速度で(i)スチレン単量体および(ii)有機リチウム化合物重合開始剤の飽和炭化水素溶液の別々の供給流を同時に反応器に供給し、この際得られる反応混合物の温度が約55℃以下に保たれるように供給の速度を保持し、且つ(ii)の供給は(i)の供給よりも短い時間の間行われるバッチ法によってつくられることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項62】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項63】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリエステルであり、該ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項64】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項63記載の方法。
【請求項65】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリアミドであり、該ポリアミドはナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12(ポリラウリロラクタム)、または高温ナイロンであることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項66】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項65記載の方法。
【請求項67】
該繊維生成熱可塑性重合体はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンはポリプロピレンであることを特徴とする請求項61記載の方法。
【請求項68】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
(i)少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を含んで成り、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量は少なくとも約50重量%である成分からつくられる担体配合物であることを特徴とする組成物。
【請求項70】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項69記載の組成物。
【請求項71】
(i)ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の臭素含量が少なくとも約50重量%である少なくとも1種のポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体、および(ii)少なくとも1種の相乗剤または少なくとも1種の他の燃焼遅延剤を一緒に混合し熔融することを特徴とする担体配合物の製造方法。
【請求項72】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
(a)少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体、および(b)請求項69記載の担体配合物を熔融紡糸することを特徴とする繊維またはフィラメントを製造する方法。
【請求項74】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
さらに該担体配合物を少なくとも1種の繊維生成熱可塑性重合体と一緒に熔融紡糸して繊維またはフィラメントをつくることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項76】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体の該臭素含量は少なくとも約60重量%であり、該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は臭素化されたアニオン重合ポリスチレンであることを特徴とする請求項75記載の方法。
【請求項77】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも20g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっていることを特徴とする請求項69記載の担体配合物。
【請求項78】
該ポリ臭素化されたアニオン重合スチレン重合体は次の特性、即ち
(i)熱安定性試験における熱安定性がHBrとして200ppm以下;
(ii)もし存在すれば、塩素含量がClとして約700ppm以下;
(iii)1%重量減におけるTGA温度が340℃以上;
(iv)クロロベンゼンの10重量%溶液中で測定されたΔE色値が約10以下;
(v)メルトフローインデックス試験におけるメルトフローインデックスが少なくとも20g/10分;および/または
(vi)GCPによる重量平均分子量が約8000〜約20,000の範囲にある;
の少なくとも一つをもっていることを特徴とする請求項71記載の方法。

【公表番号】特表2007−518895(P2007−518895A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551045(P2006−551045)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033756
【国際公開番号】WO2005/095685
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】