説明

燐含有化合物、それらの製造方法及びそのための中間体コポリマー化法におけるそれらの使用、並びにそれにより製造されたコポリマー。

【課題】燐含有化合物、それらの製造方法及びそのための中間体コポリマー化法におけるそれらの使用、並びにそれにより製造されたコポリマーを提供する。
【解決手段】燐含有化合物R2P−X−PR2、R2P−M、R2P−L及びR3P,並びに新規カチオンR2P+(L)−X−(L)P+R2の製造方法であり、式中Rは随意に置換されたヒドロカルビル基、Xは架橋基、Lは残基及びMはアルカリ金属原子を表す。さらに、化合物R2 P−Mを化合物R−Hから製造する方法であり、R−Liを製造する新規方法に続けてその化合物Hal2 P−Lとの反応を介する該方法。R2 P−X−PR2は、一酸化炭素とオレフィン性不飽和化合物とのコポリマー化用触媒作成における好適な配位子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燐含有化合物の製造方法;新規燐含有化合物自体;前述の方法において使用できるリチウム化(lithiated )化合物の作成方法;ポリマー化触媒組成物製造における、前述の方法により製造された燐含有化合物の使用;ポリマーの製造における前記触媒組成物の使用;及びそれにより製造されたポリマーに関する。
【0002】
本発明は特に、全てではないが、一酸化炭素とオレフィン性不飽和化合物とをコポリマー化し、線状交互コポリマーを作成するコポリマー化を促進する触媒組成物の製造において使用できる燐含有化合物の製造方法に関する。
このようなコポリマー及び触媒組成物は、例えばEP−A−121965及びEP−A−248483に記載されている。これらコポリマー、触媒、組成物及び関連する準備工程が作られる状況において、本発明を設定することがここで説明されるが、後で詳細に説明する多くの本発明の化合物及び方法は、他の状況においても役立つことは注目すべきである。
【0003】
概して、このような触媒組成物はVIII族(より最近の命名法では8、9及び10族)金属を含む。このような触媒組成物中で使用する好適なVIII族金属の例は、ニッケル及びコバルトである。しかしVIII族金属は比較的高価なVIII族金属が好ましく、パラジウムが最も好ましい。
このような組成物のVIII族金属は、典型的にはカチオン種として使用される。VIII族金属カチオンの給源として、便利にはVIII族金属の塩が使用される。好適な塩としては、硫酸、硝酸、燐酸、過塩素酸及びスルホン酸のような無機酸の塩と、アセチルアセトナートのような有機塩がある。好ましくは、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、クエン酸のような炭素数8までのカルボン酸のようなカルボン酸の塩が使用される。酢酸パラジウム(II)塩、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)塩が特に好適なパラジウムカチオン給源を示す。他の好適なVIII族金属カチオンの給源は、0価の状態にあるVIII族金属の化合物である。
【0004】
このような触媒組成物は、付加成分として、VIII族金属と錯体を形成する配位子をベースとする。1つの配位子分子中に2つの錯部位が存在することは、触媒活性に非常に寄与することとなる。それゆえVIII族金属とともに錯化することができる少なくとも2座の基を含む配位子を使用することが好ましい。あまり好適ではないが、単座配位子、すなわちVIII族金属とともに錯化することができる単一座の基を含む配位子、特に燐の単座基を使用することもできる。好ましくは2つの燐、窒素又は硫黄含有座基を含む2座配位子が使用される。1−ジフェニルホスフィノ−3−エチルチオプロパンのような混合した2座配位子を使用することもできる。
このような触媒組成物のための好適な2座配位子は、一般式
2 1 −X−M22 (I)
により示される。
式中、M1 及びM2 は独立して燐、窒素、砒素又はアンチモン原子を表し、各R基は独立して随意に置換された、特に炭素数10までのヒドロカルビル基を表し、Xは2価の架橋基を表す。
一般式(I)の配位子において、各R基は随意に置換されたアルキル、アリール、アラルキル又はシクロアルキル基を表す。
アリール基Rはフェニル基が好ましい。
【0005】
通常は、本明細書中に他にことわらない限りは、より大きい基中の任意のアルキル基又はアルキル部分は線状又は分岐鎖であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、好適な例はメチル、エチル及びプロピルである。通常は、本明細書中に他にことわらない限りは、任意のシクロアルキル基は単環又は多環式であり3〜15、好ましくは3〜12、最も好ましくは3〜8の炭素原子を含み、例えばシクロヘキシルである。
通常は、本明細書中に他にことわらない限りは、より大きい基中のアリール基又はアリール部分の好適な置換基はハロゲン、特にフッ素、塩素及び臭素原子、並びにニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシアルキル、アリーロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、モノ−及びジ−アルキルアミノ、アミノアルキル、モノ−及びジ−アルキルアミノアルキル、アミド、並びにモノ−及びジ−アルキルアミド基を含む。
通常は、本明細書中にて他にことわりがない限りは、任意の置換されたアリール基は好ましくは1〜3個の置換基、好ましくは1個の置換基により置換されることができる。
【0006】
通常は、本明細書中にて他にことわりがない限りは、より大きい基中のアルキル又はシクロアルキル基、若しくはアルキル又はシクロアルキル部分の置換基はハロゲン、特にフッ素、塩素及び臭素原子、並びにニトロ、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、並びにアミノ及びモノ−及びジ−アルキルアミノ基を含む。
好ましくは、ヒドロカルビル基Rは極性部位を有する。好適な極性部位はハロゲン原子、特にフッ素及び塩素、ハロアルコキシ基、メトキシ及びエトキシ基のようなアルコキシ基、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、及びジエチルアミノ基のようなモノ−及びジ−アルキルアミノ基、アミノアルキル、モノ−及びジアルキルアミノアルキル基、アミド、モノ−及びジアルキルアミド基、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミドスルホニル、アルキルスルホネート、リチオ(lithio)−オキシ、フェノロキシのようなアリーロキシ及びスルホネート(−SO3 M、MはLi、Na、K又はH)基を含む。
好ましくは、少なくとも1つのR基は芳香族基、特に極性置換された芳香族基を表す。
一般式(I)の配位子における1種又はそれ以上のR基はアリール基、好ましくはM1 及びM2 に関し、オルト位において極性部位が置換したフェニル基、好ましくはアルコキシ基、特にメトキシ基、又はアリーロキシ基、特にフェノロキシ基を表す。
【0007】
M1 原子に結合する少なくとも1つのR基、及びM2 原子に結合する少なくとも1つのR基は、前の3つの節において与えられた任意の定義に関し、上記定義したものである。4つの全てのR基が、前の節において与えられた任意の定義に関し、上記定義したとおりであることが好ましい。
好ましくは、全てのR基が同じである。特に好ましい配位子において、それぞれのR基が2−メトキシフェニル基(以下2−アニシルと呼ぶ)である。他の好ましい配位子において、それぞれのR基は2−フェノキシフェニル基である。
式(I)の配位子において、Xは少なくとも1つの、好ましくは2〜4つの架橋原子を含む2価の架橋基を表す。架橋原子はC、N、O、Si及びS原子から選択される。好ましくは、Xは少なくとも1つの炭素原子を含む有機架橋基である。より好ましくは、Xは2〜4つの架橋原子を含み、その少なくとも2つは炭素原子である有機架橋基である。R基の例としては、−CH2 −CH2 −、−CH2 −CH2 −CH2 、−CH2 −CH(CH3 )−CH2 −、−CH2 −C(CH32 −CH2 −、−CH2 −C(C252 −CH2 −、−CH2 −Si(CH32 −CH2 −、−CH2 −CH2 −CH2 −CH2 −、−CH2 −CH(C25 )−CH2 −、−CH2 −CH(n−Pr)−CH2 及び−CH2 −CH(n−Bu)−CH2 である。
式(I)の配位子において、M1 及びM2 は好ましくは燐原子を表し、そして本発明はある態様では、このような配位子の製造に関する。
供給される前記二座配位子の量は大きく変化させることができる、しかし通常は触媒組成物中に存在するVIII族金属の量に依存する。前記燐含有2座配位子の好適な量は、VIII族金属のグラム原子あたり0.5〜8、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0008】
このようなVIII族金属を含有する触媒組成物は、コポリマー化中に、コポリマー化の条件下で、VIII族金属と配位しないか又は弱く配位するアニオン給源として機能する他の付加成分をベースとしてもよい。典型的には付加成分は、例えばプロトン酸、プロトン酸の塩、ルイス酸、ルイス酸とプロトン酸の組合せにより得られる酸、及びこれらの組み合わせから誘導できる塩である。強いプロトン酸及びそれらの塩が好適であり、その強いプロトン酸は、18℃の水溶液中で測定して6未満、特に4未満、より好ましくは2未満のpKaを有する。好適なプロトン酸の例は、VIII族の塩に関連することもできる上記酸、例えば過塩素酸及びトリフルオロ酢酸である。好適なプロトン酸の塩は、例えばコバルト及びニッケル塩である。他の好適なプロトン酸は、ホウ酸及び1,2−ジオール、カテコール又はサリチル酸の付加物である。これらの付加物の塩も使用することができる。好適なルイス酸は、例えばBF3 、A3 、AsF5 及びSn(CF3 SO32 でありトリフェニルボラン、トリス(ペルフルオロフェニル)ボラン及びトリス〔ビス−3,5−(トリフルオロメチル)フェニル〕ボランのようなヒドロカルビルボランである。ルイス酸と組合せることができるプロトン酸は、例えばスルホン酸又はヒドロハロゲン酸、特にHFである。ルイス酸とプロトン酸との非常に好適な組合せは、テトラフルオロホウ酸(HBF4 )である。コポリマー化中に、VIII族金属と配位しないか又は弱く配位するアニオン給源として機能する他の化合物は、ナトリウムテトラキス〔ビス−3,5−(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、リチウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート及びコバルトカルボレート(CoB11CH122 )のような1種又はそれ以上のヒドロカルビルボレートアニオン又はカルボレートアニオンである。さらにこの文章中で述べることができる他の化合物はアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン及びt−ブチルアルミノキサンである。
【0009】
コポリマー化中に、VIII族金属と配位しないか又は弱く配位するアニオン給源として機能する付加成分の量は、VIII族金属グラム原子あたり0.1〜50、特にVIII族金属グラム原子あたり0.5〜25当量の範囲から選択されることが好ましい。しかしアルミノキサンは、アルミニウム対VIII族金属のモル比が4000:1〜10:1、好ましくは2000:1〜100:1となるような量にて使用される。
本発明の上記コポリマー化において使用されるそのような触媒組成物の量は、広い制限内で変化することができる。触媒組成物の推奨される量は、一酸化炭素とコポリマー化するオレフィン性不飽和化合物のモルあたりの、VIII族金属原子のグラム原子として計算して、10-8〜10-2の範囲である。好ましくは同じ基準において10-7〜10-3である。
前記コポリマー化法においてモノマーとして使用できるオレフィン性不飽和化合物は、不飽和エステル、エーテル、アミドといった、もっぱら炭素と水素から構成される化合物、及び追加としてヘテロ原子から構成される化合物を含む。
不飽和炭化水素が好ましい。好適なオレフィン性モノマーの例は、エテン、プロペン及びブテン−1のような低級オレフィン、シクロペンテンのような環状オレフィン、スチレン及びa−メチルスチレンのような芳香族化合物、並びに酢酸ビニル及びビニルプロピオネートのようなビニルエステルである。最も好適なものはエテン及びエテンと他のオレフィン性不飽和化合物との混合物であり、特にプロペン及びブテン−1のようなα−オレフィンである。有機化合物を特定するために文中で使用される用語「低級」は、6個までの炭素原子を含む化合物という意味を有する。
【0010】
通常、一方の一酸化炭素と他方のモノマーとして使用されるオレフィン性不飽和化合物とのモル比は、1:5〜5:1の範囲から選択される。好適なモル比は1:2〜2:1の範囲であり、実質的に等モル比が最も好ましい。
前述の触媒組成物を使用する上記コポリマー化法は液体希釈剤の存在下で行うことができるが気相法として行うこともできる。液体希釈剤の存在下で行う場合は、好ましくは製造されるコポリマーが分散体を形成し、その場合、希釈剤は、その中でコポリマーが不溶か実質的に不溶である希釈剤が選択される。液体希釈剤の例はケトン(例えばアセトン)、塩素化炭化水素(例えばクロロホルム又はジクロロメタン)、芳香族(例えばトルエン、ベンゼン、クロロベンゼン)、及び好ましくは低級アルコール(例えばメタノール及びエタノール)のようなプロトン希釈剤である。液体希釈剤の混合物も使用することができ、例えばプロトン希釈剤は非プロトン希釈剤を含んでもよい。
前記コポリマー化法が気相法として行われる場合、通常は反応器中の触媒組成物の導入を促進するために、固体キャリアに支持された触媒系を使用することが好ましい。
【0011】
好適なキャリア材料はシリカ、アルミナ又は炭のような無機物、若しくはセルロース又はブドウ糖のような有機物である。さらに、ポリエテン、ポリプロペン又は、特に一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物とのコポリマー、例えば一酸化炭素とエテン又は一酸化炭素とエテン及びプロペン又はブテン−1との線状交互コポリマーのようなポリマー材料をキャリアとして使用してもよい。
便利には、好適な液体中の触媒系の溶液を使用して含浸される。使用される液体の量は比較的少ないと認められるので、それらの過剰なものはコポリマー化法の開始段階の前又はその間に容易に除去される。他方、コポリマー化法の間に少量の液体を加えると触媒の失活速度を遅らせる効果があることが観察され、液体の量が少ないので、重合の間は気相は連続相である。液体の量は重合条件下で気相を飽和するに十分な量の特に20〜80重量%、とりわけ40〜60重量%になるように選択される。極性の液体、例えばメタノール及びエタノールといった低級アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジエチレングリコールのジメチルエーテル(ジグライム)のような低級エーテル、アセトン及びメチルエチルケトンのような低級ケトンが好ましい。
【0012】
前記コポリマー化法におけるそのようなVIII族金属触媒組成物の挙動は、キノン又は芳香族ニトロ化合物のような有機酸化剤を導入することにより改良される。好適な酸化剤はベンゾキノン、ナフトキノン及びアントラキノンからなる群より選択されるキノンである。該方法が気相法として行われる場合は、酸化剤の量は、有利にはVIII族金属グラム原子あたり1〜50、好ましくは1〜20モルの範囲である。
前記コポリマー化法は、通常は20〜200℃、好ましくは30〜150℃の範囲の温度にて、そして通常は0.2〜20MPaの圧力で行われ、1〜10MPaの圧力範囲が好ましい。
該コポリマーは、任意の好適な慣用技術により前記ポリマー化混合物から回収することができる。
このようにして得られたコポリマーは、ヘキサフルオロイソプロパノール中のコポリマーの溶液の35℃における粘度測定を基準として、典型的には0.1〜5dl/g、特に0.5〜3dl/gの限定された粘度数を有する。
このようにして得られたコポリマーは、繊維、フィルム又はシート用、又は射出成形、圧縮成形、吹き込み建築の適用のための熱可塑プラスチックとして好適である。このようなコポリマーは自動車産業への適用、食料及び飲料用の包装材料の製造用、及び家庭内での様々な使用のために使用することができる。
【0013】
上述のように、ある態様では本発明は一般式(I)のビホスフィン(biphosphine )配位子の製造に関する、
21 −X−M22 (I)
式中、M1 及びM2 の両方が燐原子を表し、RとXは上述定義どおりである。
概して、ビホスフィン配位子(I)の製造には2つのルートが提案される。どちらも、例えばリチウム化化合物R−Li(III)と三塩化燐(PCl3 )との反応により製造されるトリホスフィン化合物R3 P(II)を使用して開始する。2つの化合物R3 Pが架橋−X−を介し連結される。明確に、分子R2 P−X−PR2 の作成において、2つの分子R3 Pから2つのR基が除去される。ビホスフィン配位子(I)において表される対応するアニシル基のモル量を超過した、少なくとも50%の化合物R−Liのモル量を使用しなければならないことは、経済的に不利益である。
【0014】
トリホスフィン化合物R3 P(II)を使用して開始するビホスフィン配位子(I)を得る第一の先行技術のルートは、EP−A−286196、EP−A−290075及びEP−A−294000に記載される。トリホスフィン化合物R3 Pは液体アンモニア存在下で金属ナトリウムと反応し、(R基の1つを失って)一般式R2 P−Na+ の化合物を生成し、そしてジハロ化合物Hal−X−Halと反応し、ビホスフィン配位子を生成する。この方法における非効率的なR基の損失以外の主な不利益は、取扱及びリサイクルが困難な液体アンモニアを使用する必要があることから生ずる。
トリホスフィン化合物R3 P(II)を使用して開始するビホスフィン配位子(I)を得る第二の先行技術のルートは、EP−A−364046に記載される。トリホスフィン化合物R3 Pはジハロ化合物Hal−X−Halと反応し、一般式〔R3+ −X−P+3 〕 2〔Hal- 〕のビスホスフィン塩を生成し、アルカリ金属四水素化物又はそれらの誘導体により還元され、ビホスフィン配位子を作成する。この方法における非効率的なR基の損失以外の主な不利益は、−X−基がポリメチレン基であるビホスフィン配位子については非常に効率的ではあるが、置換アルキレン基−X−を有するビホスフィン配位子の製造について効率が悪いという事実を含む。
【0015】
R基の損失無しにビホスフィン配位子(I)を効率的に製造する方法を有することが望ましく、さらに上記2つの先行技術に関連した更なる不利益のいくつかを、全部又は部分的に克服できればより望ましい。
化合物R3 Pの改良された製造法を有することは、そのような中間体をさらに要求するこれらのルートのために望ましい。
一般式R2 P−L (IV)で表され、式中、Lは残基である化合物の利用方法を今般発明した。以下に設定される発明の態様は、ビホスフィン配位子(I)へと導く方法での化合物R2 P−Lの使用に関し;化合物R−Liを経由した化合物R2 P−Lの製造に関し、それ自身は本発明の更なる態様を構成する新規方法により製造することができる。さらに、化合物R3 Pの改良された製造法を発明し、改良された方法は、そのために前記新規な方法により製造された化合物R−Liを経由して有利に進行する。
これらの方法のより詳細な説明において、既に紹介した記号R、X、L及びHal及び以下に説明する記号Q、E1 、E2 、Z、R1 及びR’’が頻繁に使用される。このような記号は、任意の広い定義又は他に明確に示さないかぎり、例えば記載された特別な化合物又は方法のために与えられた定義を述べることにより、ここでいずれかにおいて与えられえるそれらに使用する補助的な定義で定義されるものとすることができる。
【0016】
我々は化合物R12P−L(IV)(R1 は後で定義する)の形成を導く本発明の様々な態様を今般説明する。
そのような第一の態様は化合物R1 −Liの製造に関する。この態様において(及びR1 について言及しRについては言及していない他の態様)R1 はアリール基であり、それはそれらのオルト位においてリチウム化を促進する置換基により置換される。それゆえR1 は好ましくはアリール、特にフェニル基であり、アルコキシ、アリーロキシ、ジアルキルアミノ、ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミド、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル(−SO2 a )、ジアルキルアミドスルホニル(−SO2 NRa 2 )、アルキルスルホネート(−SO2 ORa )、スルホネート(−SO3 M、MはLi、Na、K又はH)又はリチウム化ヒドロキシル基(−OLi)によって置換される。全ての場合において好ましい置換基は特にメトキシであるアルコキシ基、特にフェニロキシであるアニロキシ基である。R1 基は好ましくはモノ置換である。
このような化合物R1 −Liに対する慣用のルートは、R1 −Br及びn−ブチルリチウムを経由する。しかし、出発する化合物が好適な化合物である2−ブロモアニソールである場合は、高価な方法である。
【0017】
所望の化合物R1 −Liは、対応する化合物R1 −Hの直接的なリチウム化により製造することが望ましい。このような方法は公知であり、実験室での工程には適しているが、多くの理由により、より大きな規模の工程にはあまり適さない。第一に、前に提案された炭化水素溶媒、例えばヘキサン中ではリチウム化が遅く、高められた温度においても反応時間は日数を要する。第二に、前に提案されたエーテル溶媒、例えばジエチルエーテル及びテトラドロフラン(THF)中において、反応速度は高い(例えば常温、ジエチルエーテル中で、24時間後に典型的には50%の変換率)、しかしn−ブチルリチウムとエーテルとの反応性及びジエチルエーテルを使用した場合にその低い沸点のために、高い反応温度は通常除外される。さらに、水性の粕(work up)が混じり、THFを使用した任意の場合において、望ましくない副生成物が生じるとして報告される(Methoden der Organischen Chemie (Houben−Weyl),4 Auflage,Band XIII/1,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1970,pp 14−20)。我々が行った試験中で、この見解が正しいことも発見した。第三にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)のような改質剤は、リチウム化速度を増加させるが、それらはn−ブチルリチウムに対し1:1のモル比で使用され、そして最終生成物からそれらを除去するために多量の水及び/又は他の溶剤をしばしば必要とする。
【0018】
本発明の第1の態様に関して、一般式
1 −H (V)
の化合物のリチウム化法であり、式中R1 は上記定義どおりで、一般式
Q−Li (VI)
の化合物を使用し、式中Qはアルキル、シクロアルキル、アラルキル又はアリール基であり、該方法は一般式
1 −O−E2 (VII)
のエーテル化合物を含む溶媒中で行われ、式中、E1 及びE2 は独立して随意に置換されたアルキル基又は随意に置換されたアリール基を表し、大気圧で少なくとも40℃の沸点を有する、該方法を提供する。
好適には、本方法は高められた温度にて行われ、好ましくは40℃〜系の還流温度で行われる。より好ましくは本工程は還流下で行われる。
本特許明細書の文中で、用語「大気圧」とは76cmHgの圧力であると認められる。還流温度は体気圧で測定されたものと認められる。
【0019】
好適には化合物Q−Liにおいて、記号QはC1-8 アルキル基(好ましくは直鎖)又はC3-8 シクロアルキル基、例えばメチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、又は特にn−ブチルを表す。化合物Q−Liは、式E1 −O−E2 のものではないキャリア溶媒中にある状態で供給業者から入手できる。該キャリア溶媒は典型的にはアルカン又はシクロアルカンであり、例えばC4-12アルカン又はC3-8 シクロアルカンであり、ヘキサンが最も一般的である。それゆえリチウム化反応は、化合物E1 −O−E2 と化合物Q−Liが中に供給されているキャリア溶媒を含む共溶媒中で行われることが好ましい。
化合物E1 −O−E2 において好適には、記号E1 は随意に置換されたアルキル又は随意に置換されたアリール基を表し、そしてE2 は随意に置換されたアルキル基を表す。随意に置換されたアリール基としてのE1 は、好適にはRに対して前に与えられた定義に従う基である。
化合物E1 −O−E2 において好適には、随意に置換されたアルキル基はC1-12アルキル基、好ましくは随意に置換されたC1-6 アルキル基であり、そして随意に置換されたアリール基は随意に置換されたフェニル基である。アルキル基の好ましい随意の置換基はアルコキシ基、好適にはC1-4 アルコキシ基であり、それ自体がC1-4 アルコキシ基により置換されていてもよい。しかし特に好ましくは置換されていないアルキル基である。アリール基の好適な置換基は、アルコキシ又はアルキル基であり、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。置換されたアリール基は好ましくは1〜3個の置換基を有する。しかし特に好ましくは、未置換アリール、特にフェニル基である。
【0020】
好適な化合物E1 −O−E2 の例は、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、エチルt−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−メトキシプロパン、ジグライム及びアニソールである。
特に好ましい化合物E1 −O−E2 は大気圧で100℃を超えない沸点を有する。従って前に列挙したもので特に好ましいものは、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、エチルt−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン及び1,2−メトキシプロパンである。
1 及びE2 の両方がC1-2 アルキル基(例えばE1 −O−E2 がジエチルエーテル)とはなることはできないことに注意しなければならない、なぜなら溶媒の沸点は大気圧にて少なくとも40℃であることが要求されるからである。
最も好ましくは、E1 はC3-8 アルキル基又はフェニル基であり、特に分岐鎖C3-6 アルキル基であり、E2 はC1-4 特にC1-2 アルキル基、特にエチル又はメチル基を表す。特に好ましい化合物E1 −O−E2 は、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)である。
【0021】
特に好ましいR1 −Hは、E1 −O−E2 がアニソールであっても、アニソールである。この場合又はE1 が随意に置換されたアリール基又は随意に置換されたC1-12アルキル基であり、E2 が随意に置換されたC1-12アルキル基である他の場合は、化合物R1 −Hに対し、適切な量の調整とともに化合物E1 −O−E2 として機能することが可能であり、式E1 −O−E2 の化合物が化合物R1 −Hと異なる化合物である要求はない。それゆえ、選択された反応条件において、式E1 −O−E2 の化合物はリチウム化化合物Q−Liに対し不活性でなければならず、不活性でない場合は反応体R1 −Hを提供しなければならない。
前者の場合、化合物E1 −O−E2 と前記キャリア溶媒との体積比は、好適には1:10〜10:1であり、好ましくは1:3〜3:1であり、より好ましくは1:2〜2:1である。しかし実際の問題としては、前者の場合は、前記キャリア溶媒の体積は、通常は化合物E1 −O−E2 の体積よりも少なくない。後者の場合は、化合物E1 −O−E2 (反応体R1 −Hを含む)と前記キャリア溶媒との体積比に関し、該比は同様に1:10〜10:1が好ましく、しかし好ましくは1:2〜4:1であり、より好ましくは2:3〜2:1である。
【0022】
化合物E1 −O−E2 が溶媒又は共溶媒として存在する場合は、文献、例えばL.Brandsma et al,Synthetic Communications,20(15),pp.2273−2274,1990中に提示されたようなTMEDAのような促進剤の必要なしに、良好な反応速度が達成できることが見出された。該方法は、促進剤の存在なしに少なくとも8時間、好ましくは少なくとも12時間、しかし好適には30時間未満、好ましくは24時間未満で行われる。しかし促進剤の使用を排除するものではない。促進剤が使用された場合は、該方法は少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、そして好適には12時間未満、好ましくは10時間未満で行われる。我々は、少量のTMEDAを使用してもよく、促進効果を与えることを見出した。TMEDAを使用する場合、化合物Q−Liに対して好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.02〜0.2のモル比で使用することが好ましい。
好ましくは、化合物R1 −Hの化合物Q−Li(反応体R1 −Liが化合物 E1 −O−E2 を提供する方法におけるものを含む)に対するモル比は、0.8〜6:1、好ましくは0.8〜3:1、より好ましくは1〜2:1である。最も好ましくは、1.1〜1.6:1;特に1.1〜1.3:1である。好適な方法において、化合物R1 −Hiは化合物Q−Liよりも過剰のモル数で提供され、そしてこのことは該反応の良好な速度を与え、すべてのリチウム反応体が消費されることができ、きれいな粕(work up)を無くすことを誘導し、及び/又は前に必要であった粕を除き、後に続く方法の段階の実行を促進することができる。反応の良好な速度は驚くべきものである、なぜなら我々が発見した文献(例えばD.W.Slocum et al,Tetarahedron Letters,Vol.35,No.3,pp.385−388,1994中に説明されているアニソールのリチウム化法においては)では、より早い反応速度を達成することにおいて過剰のリチウム化合物を使用する利点について説明しているからである。
【0023】
重要な燐含有化合物中間体は、一般式(II)の化合物である、
13P (II)
式中、R1 は上記に定義どおりである。化合物R13Pは化合物R1 −LiとPCl3 との反応により製造することができる。我々は、第1の態様のリチウム化方法は、得られる化合物R1 −LiとPCl3 との反応を促進することを見出した。第1の態様に関し上記定義されたものと同じ種類の溶媒が好適である。使用されるPCl3 は、E1 −O−E2 と相溶性かつR1 −Liに対し不活性な好適な溶媒中にて供給されるか又は同じ溶媒中で供給されてもよい。PCl3 との反応は第1の態様からの反応混合物の粕なしに実行することができる。好適には、化合物R3 Pを形成する後に続く段階は−10〜50℃、好ましくは0〜40℃、とりわけ10〜30℃の温度範囲で行われる。外部冷却を行うか又は一方の反応体を他方に加える速度を調整することにより、該温度を選択された上限より低く保つ。上記条件は新規であることができ、そうであれば本発明の更なる態様を構成することができる。
【0024】
本発明の第2の態様において、一般式(II)の化合物
13P (II)
の製造法であり、一般式(V)の化合物を使用して、
1 −H (V)
上記2段階法による該方法を提供する、式中、R1 は上記に定義したとおりである。好ましくは第2の態様の方法は、リチウム化中間体R1 −Liの単離なしに行われるワンポット(one−pot)法である。
上記定義した第2の態様の方法により製造される好適な化合物は、トリス(2−アニシル)ホスフィン(TOMPP)であり、そして第2の態様の方法により高収率及び高純度で製造されることを見出した。
他の製造する価値のある燐含有中間体は、一般式
12P−L (IV)
の化合物であり、式中R1 は上記に定義したとおりであり、そしてLは残基である。好適なLはアミン、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ又はホスフィン残基−PR’’2 、式中R’’は以下に定義する。好適な残基Lは式−NR’’2 又はZR’’のものであり、式中R’’は随意に置換されたアルキル、アリール、アラルキル又はシクロアルキル基であり、Zは酸素又は硫黄原子である。アミン残基の場合は、2つの基R’’は異なってもよいが好ましくは同一である。さらに残基−PR’’2 又は−NR’’2 の場合は、一緒になって随意に置換されたアルキレン鎖を形成することができ、好ましくは随意に置換されたC4-8 アルキレン鎖であり、それによりヘテロ原子とともに環状構造を形成する。任意のこれらの残基Lに関して、好適なR’’はC1-6 アルキル基、線状又は分岐鎖の、好ましくはC1-4 アルキル基、より好ましくはC1-2 アルキル基である。エチルが特に好ましいR’’基である。Zは好ましくは酸素原子である。
【0025】
化合物R12P−LはR1 基を含む有機金属化合物と一般式
Hal2 P−L (VIII)
の化合物との反応により製造することが出来る、式中、Halはハロゲン原子、好適には塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素である。該有機金属化合物は(特にLが残基−NR’’2 の場合)好適には式R−Liの化合物であり、そしてそのような場合、第一の態様の方法により製造される。その代わり、(特にLが残基−NR’’2 の場合は)グリニヤール試薬であることが好ましい。
化合物R1 −Liと化合物Hal2 P−Lとの反応に関する方法は公知であるが、目標化合物の高純度で高収率には到達していない。例えばW.E.McEwen 及び B.D.Beaver,Phosphorus and Sulfur,1985,vol.24,pp.259−271による報告において、ヘキサン及びTMEDAを含む溶媒中、室温で行われる方法により製造された化合物N,N−ジエチルアミノ−ビス−(2−アニシル)ホスフィンの収率は50%であった。
【0026】
本発明の第3の態様に関して、一般式
12P−L (IV)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −Li (III)
の化合物と、一般式
Hal2 P−L (VIII)
の化合物とを反応させ、反応は上記定義されたような一般式
1 −O−E2 (VII)
のエーテル化合物を含む溶媒中で行われる該方法を提供する、式中、R、L、Hal、E1 及びE2 は上記定義されたとおりである。
第3の態様の方法が定義されたエーテル化合物VIIを含む溶媒中で行われた場合に収率は高く、そして目標化合物R12P−Lが高純度の形態で得られることが見出された。
【0027】
好適には、第3の態様の方法は、55℃を越えない温度、好ましくは50℃を越えない温度、最も好ましくは40℃を越えない温度、とりわけ30℃を越えない温度で行われる。好適には該方法は少なくとも−50℃で行われる。より詳細には、残基Lが−NR’’2 の場合は、該方法は好適には少なくとも−30℃、好ましくは少なくとも−15℃、最も好ましくは少なくとも0℃の温度で行われる。このような方法においては通常は冷却が必要であり、それにより反応混合物の温度は、好ましくは0〜25℃である。残基Lが−ZR’’の場合、反応混合物は、好ましくは−10℃又はそれ以下、より好ましくは−30℃又はそれ以下に保たれる。
好ましくは、本発明の第3の態様の方法において、Lはアミン残基−NR’’2 を表す。前に示した好適なアミン残基の定義を適用する。
式IVの化合物、式中Lは−ZR’’基を表す、へ到達する好適な方法の1つは、式HZR’’の化合物と反応させた式IVに対応した化合物、式中Lは−NR’’2 を表す、を経由することである。一般に、10〜80℃の範囲の温度が好適であり、追加の溶媒が不要である。
同一の化合物E1 −O−E2 が本発明の第1及び第3の態様で使用されてもよい。第3の態様の方法は第1の態様からの反応混合物の粕なしで実行可能である。
【0028】
本発明の第4の態様においては、一般式
12P−L (IV)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −H (V)
の化合物を用いて開始し、第1の態様の方法に続けて第3の態様の方法による該方法を提供するものであり、R1 及びLは上記の任意の定義で定義されるものである。好ましくは第4の態様の方法は、リチウム化中間体R1 −Liの単離なしで行うワンポット法である。
好ましくは、化合物R12P−Lは第3又は第4の態様の方法の最後で単離される。これは標準のワークアップ法により達成される。
化合物R12P−Lへの代替のルートはグリニヤール試薬R1 −Mg−Halの製造によるものであり、式中、Halはハロゲン原子、例えば塩素、臭素又はヨウ素であり、後に続く前記Hal2 P−Lを用いた反応によるものである。テトラヒドロフランは両方の方法において好適な溶媒である。グリニヤール試薬の形成は、標準の条件下で起こることが好ましい。グリニヤール試薬の反応の第2段階は、下げられた温度、例えば−30℃〜20℃で起こることが好ましい。
上記方法において必要とされる化合物Hal2 P−Lは,市販入手でき及び/又は標準の方法により製造できる。化合物Hal2 P−NR’’2 及びHal2 P−ZR’’2 は、それぞれNHR’’2 及びHZR’’とPHal3 (一般的にはPCl3 )との公知の反応により、例えば−20〜40℃の温度範囲においてジエチルエーテル中で製造できる。Cl2 P−OEt及びOCl2 P−NEt2 が市販入手できる。
【0029】
次に、我々は化合物R2 P−X−PR2 (I)、式中R、L及びXは上記のいずれかにおける定義と同じ、を生ずる化合物R2 P−L(IV)の前反応、及びそれに対する中間体を記載する。化合物R2 P−Lは、上記定義した第3又は第4の態様に従い、必須に製造されるものではないため(式中限定されたR1 の定義が使用される)、R基は最も広義に上記定義されたものとすることができることに注意されたい。さらなる化合物R2 P−Lの製造法は、当業者の知識の範囲内である、しかし好適な方法は以下の例においても記載される。
一つの前反応において、一般式
2 P−M (IX)
の中間体が形成されることが望ましく、式中Rは任意の上記定義における定義であり、そしてMはアルカリ金属原子を表す。
教科書Neuere Methoden der Praparativen Organishen Chemie,Band II,Verlag Cheemie 1960,pp.133,140において、ジアルキルアミノ−ジアルキルホスフィンはナトリウムを使用して開裂することができる。(n−Bu)2 P−NEt2 は、トルエン中でナトリウムを用いて収率53%で開裂することができる。しかし、この反応を繰り返そうとすると、反応は起こらない。
【0030】
Aspect of the Cleavage of Phosphine with Potassium: Synthesis and Reactivity of Lithium and Potassium Bis(p−(dimethyl−amino)phenyl)−phosphide Toth等による、有機金属,1980,pp.675−680の表題の論文において、化合物Et2 NP(p−C64 NMe22 はナトリウム及びカリウムを使用して開裂させることを試みた後に、変化せずに回収される。
埼玉大学による日本国特許出願47−47014において、アルキルジフェニルホスフィナイト、例えばエチルジフェニルホスフィナイト又はメチルジフェニルホスフィナイトを、還流下不活性溶媒中でナトリウム又はカリウムと反応させ、化合物Ph2 P−Na又はPh2 P−Kを生じ、その化合物はジクロロアルカンCl(CH2m Cl(式中、mは1〜5)と反応させ、最終化合物Ph2 P(CH2 )m PPh2 を生じる。実施例において、最終生成物の収率は、ホスフィナイトを基準に計算すると、94%(ナトリウムを使用した実施例1)、30%(カリウムを使用した実施例2)、及び63%(ナトリウムを使用した実施例3)である。最も高い収率を提供する実施例1に関しては、第1段階には35時間かかる。
【0031】
本発明の第5の態様に関しては、一般式
2 P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
2 P−L (IV)
の化合物とアルカリ金属Mとを反応させることによる該方法を提供する、式中R及びLは上記定義のいずれかに定義されたとおりであるが化合物R2 P−Lがアルキルジフェニルホスフィナイトでありかつ化合物R2 P−MがPh2 P−Na又はPh2 P−Kである場合を除く。
本発明の第6の態様に関しては、一般式
2 P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
2 P−L (IV)
の化合物とアルカリ金属Mとを反応させることによる該方法を提供する、式中R及びLは上記定義のいずれかに定義されたとおりであり、温度は60℃を越えない。
本発明の第7の態様に関しては、一般式
2 P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
2 P−L (IV)
の化合物とアルカリ金属Mとを反応させることによる該方法を提供する、式中Rは上記定義のいずれかに定義されたとおりであり、Lは上記に定義されたアミン残基である。
本発明の第8の態様に関しては、一般式
2 P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
2 P−L (IV)
の化合物とアルカリ金属Mとを反応させることによる該方法を提供する、式中R及びLは上記定義のいずれかに定義されたとおりであり、アルカリ金属Mはリチウムである。
【0032】
第5、7又は8の態様は、好ましくは60℃を越えない温度で行われる。第5、6、7又は8の態様は、好ましくは50℃を越えない温度で行われる。第5、6、7又は8の態様は、好適には−20〜40℃、好ましくは−10〜30℃、特に0〜20℃で行われる。
第5、6又は7の態様に関しては、Mはリチウムを表すことが好ましい。ナトリウム及びカリウムも適度な効果を伴い使用することができるが、我々はリチウムが非常に、そして予想外に有利であることを見出した。我々はナトリウムを使用した工程において要求されるよりも短い時間で目的物質を良い収率で与え、ナトリウムを使用した工程において要求されるより低い温度でより効果的であり、要求されるより短い時間及びより低い温度の結果としてできる限り、特に高い純度の生成物を得ることができる。我々は、JP 47−47014により提案されたよりも低い温度で、ナトリウムを使用する場合も含め、行うことが出来ることを見出した。
第5、6又は8の態様に関しては、残基Lは、前記定義されたようにアミン残基−NR’’2 であることが好ましい。
Lがアミン残基である場合は、前記定義されたR1 基が使用されることが好ましい。
第5、6又は8の態様に関しては、他の残基は、前記定義された残基−ZR’’2 であることが好ましく、そしてR基が、前記定義された随意に置換されたアルキル基又は、随意に置換されたアリール基であることが好ましい。しかし後者が最も好ましい。
【0033】
第5、6、7又は8の態様において使用されるアルカリ金属は、好適なキャリア、典型的には鉱油中で分散体の形態であることが好ましい。R2 P−Lと混合する場合は、粉体や粒子の形態でアルカリ金属を使用するよりも、良好な反応速度が与えられることを見出した。
第5、6、7又は8の態様の方法は、使用されるアルカリ金属と反応せずかつR2 P−アニオンをプロトン化しない好適な有機溶剤中で行われることが好ましい。好適な溶剤は芳香族炭化水素溶剤、例えば随意に1〜3個のC1-4 アルキル基が置換したベンゼン、例えばベンゼン及びトルエン;エーテル、例えばジ(C1-4 アルキル)エーテル及びジグライム、並びにテトラヒドロフラン及びジオキサンのといった環状エーテル;及び例えば液体アンモニアのようなアンモニアを含む溶剤中で行われることが好ましい。
我々は所定の反応、特にMがナトリウム、はナフタレンの存在により促進されることを見出した。例えば上記他の溶媒のうち一つである多量の他の溶媒中の少量のナフタレンは、ナトリウム又はカリウムを使用する方法を低い穏やかな温度においてでさえ有用にする程度に、実質的な改善を引き起こすに十分である。アルカリ金属Mのモル比、好適にはカリウム、特にナトリウム対ナフタレン、は3〜30:1、好ましくは5〜20:1である。ナフタレンの存在は、アルカリ金属がリチウムである第5、6、7又は8の態様の方法を助力する、しかし記載された方法においてナトリウムよりリチウムがより効果的に見えるために、アルカリ金属がリチウムである好ましい方法では反応促進剤としてのナフタレンは使用しない。Mがナトリウムの反応においては、ジグライム及びジオキサンが好適な溶剤である。
所望ならば、得られる化合物R2 P−Mは単離される。第5、6、7又は8の態様のいくつかの方法では、化合物R2 P−M及びM−Lの一方又は他方は沈殿するので、これは非常に当たり前のことである。
いくつかの方法において、急冷剤を加えてもよい。我々はアンモニア又はアミンの酸付加塩(例えばNH4 Cl及びジ(C1-4 アルキル)NH.HCl)の様な、アンモニア含有又はアミン急冷剤が好適であることを見出した。
【0034】
本発明の第9の態様に関しては、一般式
12P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −Li (III)
の化合物を用いて開始して、第3の態様の方法により一般式
12P−L (IV)
の中間体を製造し、続いて第5、6、7又は8の態様の方法を行う該方法を提供する、式中R1 、L及びMは任意の上記定義において定義されたものである。
本発明の第10の態様に関しては、一般式
12P−M (IX)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −H (V)
の化合物を用いて開始して、第3の態様の方法により一般式
12P−L (IV)
の中間体を製造し、続いて第5、6、7又は8の態様の方法を行う該方法を提供する、式中R1 、L及びMは任意の上記定義で定義されたものである。
【0035】
我々は、化合物R2 P−M及びHal−X−Halから化合物R2 P−X−PR2 (I)を製造する方法を今般記載する、式中、Halはハロゲン原子であり、R、X及びMは任意の上記定義において定義されたものである。上記のように、JP−A−47−47014は化合物Ph2 P−Na又はPh2 P−KとジクロロアルカンCl(CH2m Cl、式中mは1〜5である、との反応をを開示する。
我々はこの一般的に知られた反応に重要な改良を行い、及び/又はこの公知の反応を以前に適用されていない反応体に対し適用可能であることを見出した。これらの発見を以下に概説する。
我々は式R2 P−Mの化合物に適用できる反応を見出した、式中Rはフェニル以外の基である。特にRは任意の上記定義において定義された置換されたフェニル基、特にアルコキシ置換を有するフェニル基であり、このような置換基の存在は本方法における逆の効果を有することを示さないことを見出した。また、Rは随意に置換されたアルキル基を示すことができることを示した。
他のアルカリ金属を使用することもできるが、リチウム化化合物R2 P−Liを使用することが好ましい。我々は、これが非常に効果的な反応体であるだけでなく、上記のようにその製造の容易さという理由により非常に好ましいことを見出した。
【0036】
JP−A−47−47014と同じではないが、本方法が広範囲の架橋基Xに適用できることを見出した。本方法を実行するにおいて、我々は架橋基Xのいかなる制限をも発見できず、適用できるものとして前に広く定義されたものとする。しかし、この態様に関しては、好適な架橋基を、1〜3個のC1-4 アルキル、好ましくはC1-2 アルキル基を有する2〜4個の架橋炭素原子を含む基:特に2−置換及び2,2’−ジ置換プロパン架橋であり、中間の炭素原子が好適には1つのC1-4 アルキル又は2つのC1-4 アルキル、好ましくはC1-2 アルキル基を有する;最も好ましくは2つの同じ基として定義できる。特に好ましくは2,2−ジメチル、2−メチル、2−n−プロピル、2−n−ブチル及び2−エチル置換基を有するプロパン架橋である。
他のハロゲン原子を使用することもできるが、ジブロモ化合物を使用することが好ましい、なぜなら上記節で定義した様に置換架橋基を有する式(I)の化合物の製造方法において、対応するジクロロ化合物よりも効果があると考えられるからである。
我々は極性の非プロトン性溶媒の存在が、該方法を補助することを見出した。
我々は、JP−A−47−47014における目的物質を最良の収率で製造するには、使用される非常に長い反応時間を避けることが最良であることを見出した。好適には15時間以下、好ましくは6時間以下、最も好ましくは3時間以下の反応は許容する。
極性非プロトン性溶媒が存在し、上記時間より大きくない時間、好ましくは3時間以下で運転される方法は、非常に「きれいな」で、高収率で、所望でないかつ除去困難な副生成物を非常に少量しか伴わないことを見出した。
【0037】
本発明の第11の態様においては、一般式
2 P−X−PR2 (I)
の化合物を、一般式R2 P−M (IX)及びHal−X−Hal (X)の化合物から製造する方法であり、1又はそれ以上の、前の7つの節に記載された態様を含む該方法を提供する、式中R、X、M及びHalは任意の上記定義において定義されたものである。好適には、Hal−X−HalはCl−(CH2m −Cl、式中mは1〜5、であるけれども、化合物R2 P−MはPh2 P−Na又はPh2 P−Kではない。
好適には第11の態様は、60℃を越えない温度、好ましくは−20〜40℃、より好ましくは−10〜30℃、特に0〜20℃で行われる。
好適には第11の態様は、極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で行われる。その代わり、5、6、7、8番目の態様において好適である上記の溶媒が存在してもよい。好適な第11の態様において、このようないずれの定義にも対応する溶媒は、混合物中で共溶媒として使用することができる。
本発明の第12の態様においては、式
2 P−X−PR2 (I)
の化合物を、一般式
2 P−L (IV)
の化合物を使用して開始して製造する該方法を提供する、式中R、X及びLは本発明の第5、6、7、8の態様及び第11の態様による任意の上記定義と同じである。
好ましくは第12の態様の方法は、式R2 P−M中間体化合物の単離なしで実行されるワンポット法である。好ましくは、極性非プロトン性溶媒が反応混合物に、反応の中間段階(すなわち、化合物R2 P−Mと化合物Hal−X−Halの反応が必要とされるとすぐに)において加えられる。
【0038】
本発明の第13の態様においては、式
12P−X−PR12 (I)
の化合物を、一般式
1 −Li (III)
の化合物をを使用して開始して製造する方法であり、第3の態様の方法の後に第12の態様の方法による該方法を提供する、式中、R1 とXは上記任意の定義中で定義されたものである。
本発明の第14の態様においては、式
12P−X−PR12 (I)
の化合物を、一般式
1 −H (V)
の化合物を使用して開始して製造する方法であり、第4の態様の方法後に第12の態様の方法による該方法を提供する、式中、R1 、X及びLは上記任意の定義中で定義されたものである。
他の前の反応において、化合物R2 P−L (IV)は化合物Hal−X−Hal (X)と反応させる、式中R、Hal及びXは上記任意の定義中で定義されたものであり、R’’が上記任意の定義中で定義されたものであり、得られる化合物が還元剤を使用して処理され、化合物R2 P−X−PR2 (I)を生じる場合は、Lはアミン残基−NR’’2 である。化合物(IV)とXとの反応生成物は、一般式
2+ (L)−X−P+ (L)R2 2Hal- (XI)
の燐酸塩であると信じられている。
本発明の第15の態様においては、一般式
2+ (L)−X−P+ (L)R2 2Hal- (XI)
の化合物の製造方法であり、式中、R、X及びHalは上記任意の定義で定義されたものであり、Lは上記定義されたアミン残基−NR’’2 であり、一般式
2 P−L (IV)
の化合物と一般式
Hal−X−Hal (X)
の化合物との反応による該方法を提供する。
【0039】
本工程は、好ましくは極性非プロトン性溶媒を含む、有機溶剤中で行われることが好ましい。例としてはジエチルアセトアミド及びアセトニトリルがある。アセトニトリルが好適な溶剤である。
好適には、本発明の15の態様は高められた温度で行われ、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも60℃の温度で行われる。反応は好ましくは還流下で行われる。
本発明の15の態様で使用される式Xの化合物中の−X−部分は、好ましくは随意に1つのC1-4 アルキルにより置換されたC2-4 アルキレン基である。好ましくは、2−(C1-4 アルキル)プロパン基、又は特にプロパン基である。それぞれの部分Halは、好ましくは臭素原子である。
本発明の15の態様で使用される式IVの化合物中のR部分は、好ましくは上記定義されたように、随意に置換したアルキル基又は随意に置換したアリール基である。
【0040】
本発明の16の態様に関しては、一般式
12+ (L)−X−P+ (L)R12 2Hal- (XI)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −Li (III)
の化合物を使用して開始し、第3の態様の方法の後の15の態様の方法による該方法を提供する、式中、R1 、L,X及びHalは15の態様で述べられたものである。
本発明の17の態様に関しては、一般式
12+ (L)−X−P+ (L)R12 2Hal- (XI)
の化合物の製造方法であり、一般式
1 −H (V)
の化合物を使用して開始し、第4の態様の方法の後に15の態様の方法による該方法を提供する、式中、R1 、X、Hal及びLは15の態様で述べられたものである。
本発明の18の態様に関しては、一般式
2+ (L)−X−P+ (L)R2 (XII)
のカチオンを提供するものであり、部分R、X及びLは15の態様で述べられたものである。
【0041】
我々は式(XII)のカチオンが新規であると信じているので、これらのR2 P−X−PR2 への還元に関する先行技術を発見することが出来ない。しかし、例えばEP−A−364046における、カチオンR3 P+ −X−P+3 の還元に関し提案されたタイプの方法は、式R2+ (L)−X−P+ (L)R2 のようなカチオンの還元、及びR基の変化に関して広範囲のこのような化合物に有効であることを見出した。少なくとも所定のR基が通常良好な残基−例えば好ましい基2−アニシル基−としてみなされると仮定しても、L基がR基に優先して選択的に除去されるのは驚くべきことである。実際、EP−A−364046の方法において、残基はR基、好ましくは2−アニシル基である。これに関連して、少なくとも50%を超過するリチウム化開始化合物、特に2−リチオアニソールが必要であることを考えると、残基R、特に2−アニシル基の損失は高価であるけども、アミン残基Lの損失は高価ではないという基本的な利点を有する。
本発明の19の態様に関しては、一般式
2 P−X−PR2 (I)
の化合物の製造方法であり、一般式
2+ (L)−X−P+ (L)R2 (XII)
のカチオンの還元による該方法を提供する、式中、R、X、L及びHalは15の態様で述べられたものである。
還元は還元剤を使用して行うことが好ましい。好適な還元剤はアルカリ金属アルミニウムテトラハイドライド、又はその水素原子の1、2又は3個を同じ又は異なる基−OR2 に置き換えることによりそれらから誘導されたものとして考えることができる化合物であり、式中R2 はアルキル基、好ましくはC1-4 アルキル基、特にC1-2 アルキル基であり、或いは式中R2 はアルコキシアルキル基、好ましくはC1-4 アルコキシ(C1-4 アルキル)基であり、より好ましくは(C1-2 アルコキシ)(C1-2 アルキル)基であり、特に2−メトキシエチル基である。アルコキシアルキル基は好適な基R2 である。好ましい還元剤はアルカリ金属テトラハイドライド、又はその水素原子の2つを同一の基−OR2 に置き換えることによりそれらから誘導されたものとして考えることができる化合物であり、R2 は好ましくはアルコキシアルキル基である。好ましい還元剤はリチウムアルミニウムテトラハイドライド及び特にナトリウムビス(2−メトキシエチロキシ)アルミニウムジハイドライドである。
【0042】
19の態様の方法は、好適には非プロトン性溶媒中で行われ、それは極性でも無極性でもよい。極性及び無極性溶媒の混合物も使用することができる。好適な極性非プロトン性溶媒の例は、テトラヒドロフラン、エチレングリコールのジメチルエーテル(モノ−グライム)及びジエチレングリコールのジメチルエーテル(ジグライム)である。好適な無極性非プロトン性溶媒の例は、1〜3個のC1-4 アルキル基を有する芳香族化合物であり、例えばベンゼン及びトルエンである。無極性非プロトン性溶媒が好ましい。
19の態様の方法は、好適には120℃を越えない温度、好ましくは60℃を越えない温度、最も好ましくは50℃を越えない温度で行われる。本方法の好ましい温度は10〜40℃の範囲である。
本発明の20の態様に関しては、一般式
12P−X−PR12 (I)
の化合物の製造方法であり、一般式
2 −L (IV)
の化合物を用いて開始し、15の態様の方法に続く19の態様の方法による製造方法を提供する、式中R、X、及びLは15の態様で述べられたものである。
本発明の21の態様に関しては、一般式
2 P−X−PR2 (I)
の製造方法であり、一般式
1 P−Li (III)
の化合物を用いて開始し、第3の態様により一般式
1212P−L (IV)
の中間体を製造し、続いて20の態様の方法を行うことによる該方法を提供する、式中R1 、Z、X及びLは15の態様の方法にて定義されたものである。
【0043】
本発明の22の態様に関しては、一般式
12P−X−PR12 (I)
の製造方法であり、一般式
1 −H (V)
の化合物を用いて開始し、第4の態様により一般式
12P−L (IV)
の中間体を製造し、続いて20の態様の方法を行うことによる該方法を提供する、式中R1 、X及びLは15の態様の方法に定義されたものである。
本発明の23の態様に関しては、本発明の態様として上記に定義された任意の方法により製造される製造物を提供する。
本発明の24の態様に関しては、上記任意の定義において定義された触媒組成物を提供し、ホスフィン配位子は一般式
2 P−X−PR2 又はR12P−X−PR12 (I)
であり、式中R、R1 及びXは上記任意の定義において定義されたとおりであり、22の態様の11、12、13、14、19、20、21の方法により製造される。
本発明の25の態様に関しては、上記任意の定義において定義されたタイプの重合方法を提供する、式中、触媒組成物は24の態様のものである。
本発明の26の態様に関しては、上記任意の定義において定義されたタイプのコポリマーを提供し、25の態様の方法により製造される。
ここで定義された、2又はそれ以上の基R、R1 又はR’’を有する化合物を使用又は製造する任意の工程において、このような基は化合物内で異なってもよいが、同じであることが好ましい。
本発明を以下の実施例の方法により説明する。
他にことわらない限り、すべての反応及び操作は適切な不活性雰囲気内で行った(リチウムを使用する方法ではアルゴン);すべての反応は無水条件下で行った。;すべての溶剤は乾燥しかつ脱気した;すべてのガラス製品は、150℃で一晩乾燥させた。
【0044】
実施例1(2−リチオアニソールさらにトリ(2−アニシル)ホスフィン(TOMPP)の製造)
温度計、攪拌機、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた2l反応器を不活性ガス供給と接続し、113g(1.04mol)のアニソールと250mlのMTBE(メチルt−ブチルエーテル)を充填した。脱気後、還流温度まで温度を徐々に上げながら(約60℃)、440ml(0.70mol)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)を1時間かけて加えた。この温度で16時間保持した後、反応器の内容物は周囲温度まで冷却した(この時点でGC分析はn−ブチルリチウムの99%以上の変換と対応する量の2−リチオアニソールの形成を示した)。次に100mlのMTBEと19.3ml(31.0g、0.225mol)三塩化燐を、反応温度が30℃を超えないような速度で加えた。添加終了後、白/黄色の分散物をさらに4時間攪拌した。続けて30mlの水を加え、白沈殿物を濾過した。次に該白色固体をメタノール(2×200ml)で洗浄し、濾過しそして減圧下(1mbar、60℃)で乾燥した。収率:63.4g(80%)の微細な粒子で、1H NMRと31P NMRによると99%以上の純粋なTOMPPであった。
実施例2(2−リチオアニソールさらにトリ(2−アニシル)ホスフィン(TOMPP)の製造)
温度計、攪拌機、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた2l反応器を不活性ガス供給と接続し、76g(0.84mol)のアニソール、8.1g(0.07mol)のTMEDA及び250mlのMTBE(メチルt−ブチルエーテル)を充填した。脱気後、440ml(0.70mol)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)を1時間かけて加えた。添加完了後、還流温度(約60℃)まで温度を上げた。この温度で8時間保持した後、反応器の内容物は周囲温度まで冷却された(この時点でのGC分析はn−ブチルリチウムの99%以上の変換と対応する量の2−リチオアニソールの形成を示した)。次に100mlのMTBEと19.3ml(31.0g、0.225mol)の三塩化燐を、反応温度が30℃を超えないような速度で加えた。添加終了後、白/黄色の分散物をさらに4時間攪拌した。続けて30mlの水を加え、白色沈殿物を濾過した。次に該白色固体をメタノール(2×200ml)で洗浄し、濾過しそして減圧下(1mbar、60℃)で乾燥した。収率:62g(78%)の微細な粒子で、1H NMRと31P NMRによると99%以上の純粋なTOMPPであった。
【0045】
実施例3(比較:2−リチオアニソールさらにトリ(2−アニシル)ホスフィン(TOMPP)の試験製造)
テトラヒドロフラン(THF)中のリチウム化反応を、WO 97/37765(BP)の実施例12に記載された方法により試みた。
ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液8.1ml(2.5M; 20mmol)を、周囲温度アルゴン雰囲気下に維持された(ナトリウムから蒸留された)THF25ml中の2.16gアニソール(20mmol)の脱気された溶液に加えた。添加完了後(20分)、該混合物を周囲温度で4時間攪拌した。GC分析は、2時間後にアニソールの完全な変換は得られず、約15%のアニソールと約5%のn−ブチルリチウムがなおも変換されなかったことを示した。4時間後、15%のアニソールはなおも変換されず、n−ブチルリチウムは検知されなかった。我々はWO 97/37765(BP)中に述べられた条件下では、完全な変換は達成されず、副反応により望ましくない量のn−ブチルリチウムが消費されると結論付けた。
実施例4(2−リチオアニソールの製造)
実施例1に類似した方法において、TMEDA又は他の促進剤を使用せず、アニソールを溶媒及び反応体として使用し、ここでヘキサン(n−ブチルリチウム用キャリア溶媒)対アニソールの比は1:1であった。42℃で20時間経過後、n−ブチルリチウムの変換は94%であり、2−リチオアニソールに対する変換の選択率は90.5%であった。
実施例5(2−リチオアニソールの製造)
実施例1に類似した方法において、TMEDA又は他の促進剤を使用せず、ヘキサン/MTBE(2:1 v/v)を含む溶媒系中のアニソールのリチウム化速度における温度の影響を評価した。結果を以下の表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜5において、リチウム化反応の進行を制御するために、0.3mlのトリメチルクロロシランを、1mlに等分した粗反応混合物に加えた。混合物をホモゲナイズし、5分間そのままにした。それから2mlの水を加え、MTBEの場合は、反応溶媒として1mlのヘキサンを加え、試料をガスクロマトグラフィーで分析した(CP Sil 5CBカラム、温度プログラム40℃−4分/10℃/分/270℃−3分)。変換率は1−トリメチルシリルブタン、アニソール及びo−トリメチルシリルアニソールのエリアから計算した。
実施例6(2−リチオアニソールさらにN,N−ジエチルアミノ−ビス(2−アニシル)ホスフィンの製造)
温度計、攪拌機、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた2l反応器を不活性ガス供給と接続し、113g(1.04mol)のアニソールと250mlのMTBE(メチルt−ブチルエーテル)を充填した。脱気後、還流温度まで温度を徐々に上げながら(60℃)、440ml(0.70mol)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)を1時間かけて加えた。この温度で16時間保持した後、反応混合物を0℃まで冷却した。次に150mlのMTBEと61.0g(0.35mol)のN,N−ジエチルアミノ−ジクロロホスフィンとの混合物を、温度が25℃未満に保たれるような速度で加えた。添加終了後、白/黄色の分散物を、周囲温度でさらに4時間攪拌した。続けて800mlの水を加えた。100mlのMTBEを用いて水相を抽出し、合した有機相を水(2×100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムを使用して乾燥させ、減圧下(1mbar、100℃)で濃縮した。沸騰ヘキサンから残渣を再結晶させた。所望の生成物は、88%の収率で、1H NMRと31P NMRによると優れた純度の灰色がかった固体として得られた。
【0048】
実施例7(2−ブロモマグネシウムアニソールさらにエチルビス(2−アニシル)ホスフィナイトの製造)
10.9g(0.448mol)のマグネシウム粉と250mlのTHFを1l反応器に充填し、76.1g(0.407mol)の2−ブロモアニソールを反応温度が60℃に達するような速度で加えた。添加が完了したら、反応器を60℃で2時間保ち、続けて−15℃に冷却した。次に29.83g(0.203g)のエチルジクロロホスフィナイトと50mlのTHFとの混合物を3時間かけて添加した。−15℃でさらに30分保持した後、周囲温度で一晩攪拌した。その後、4gのトリエチルアミンを含む44mlの水を加えた。相の分離が観察されるまでさらに水とトルエンを加えた。有機相を分離し、水相をトルエン(2×100ml)を用いて抽出した。合した有機相を100mlの水で洗浄し、乾燥するまで濃縮した。固体残渣を幾分かのヘプタンで洗浄し、そして乾燥した。収率:35.9g(61%)のエチルビス(2−アニシル)ホスフィナイト(An2 P−OEt)、 1H NMRと31P NMRによると純粋であった。
実施例8 (N,N−ジエチルアミノ−ジクロロホスフィンの製造)
攪拌機、500ml添加漏斗及び還流冷却器を備えた1l反応器に、111.7g(0.8mol)のPCl3 及び350mlのヘキサンを充填した。1時間かけて119.0g(1.6mol)のジエチルアミンを、反応器を0℃に保ちながらゆっくりと加えた。添加が完了したら、反応器を周囲温度で2時間攪拌した。次に黄色の反応混合物をP3ガラスフリットで濾過し残渣を100mlヘキサンで3回洗浄した。合した有機相をロータリーエバポレータで濃縮し、減圧下で蒸留した(7mbar、67℃)。収率:120g(87%)のタイトルの化合物が透明な液体として得られた。
【0049】
実施例9(ジ(n−ブチル)N,N−ジエチルアミノホスフィナイト製造)
(H.Noth,H.−J.Vetter,Chem.Ber.96,pp.1109−18,1963参照)
−78℃に冷却された、50mlジエチルエーテル中の19.4g(0.112mol)のCl2 PNEt2 に対し、ヘキサン中のn−ブチルリチウム1.6M溶液の139.5g(0.22mol)をゆっくりと加えた。添加が完了したら、溶液を室温まで温め1時間攪拌した。次に該液体をロータリーエバポレータで濃縮した。結果として得られた分散物を減圧蒸留にかけた、0.5mbarで75−76℃の沸点を有する無色の液体の収率は19.1gであった。1H NMRと31P NMRによると、該液体は純粋なタイトルの化合物であった。
実施例10(ジ(n−ブチル)エチルホスフィナイトの製造)
5.0g(0.023mol)のn−Bu2 PNEt2 と25mlの乾燥、脱気された無水エタノールとの混合物を60℃で24時間加熱した。この時点における粗反応混合物の31P NMRを用いた分析は、開始物質の〜95%がn−Bu2 POEtに選択的に変換したことを示す。揮発成分を30℃、減圧(1mbar)下で除去し、無色の液体としてタイトルの化合物を生じた。
実施例11(ジフェニルN,N−ジエチル−アミノホスフィンの製造)
5〜10℃に冷却された150mlジエチルエーテル中の25.0g(0.107)のPh2 PCl(例えばAldrich,純度95%)の溶液に1時間かけて37.8ml(0.28mol)のジエチルアミンを加えた。添加が完了したら分散物を室温で一晩攪拌した。次に反応混合物をP3ガラスフリットで濾過し、残渣を2×50mlヘキサンで洗浄した。有機相を結合させロータリーエバポレータで濃縮し、減圧下で蒸留し、30gの透明の液体(0.1mbarで沸点146−148℃)を生じた。1H NMRと31P NMRによると、該液体は純粋なタイトルの化合物であった。
実施例12(ジフェニルエチルホスフィナイトの製造)
5.4g(0.020mol)のPh2 PNEt2 と25mlの乾燥、脱気された無水エタノールとの混合物を60℃で48時間加熱した。この時点における、粗反応混合物の31P NMRを用いた分析は、開始物質の全てがPh2 POEtに変換したことを示した。揮発成分を30℃、減圧(1mbar)下で除去し、無色の液体としてタイトルの化合物を得た。
【0050】
実施例13(リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジエチル−1,3−ビス(ビス(3−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた1l反応器に、300mlのジオキサンと16.05gの鉱油中のリチウム分散物(4.81g=0.693molの金属リチウムを含む)を充填した。次に250mlジオキサン中の100.58g(0.346mol)のエチルビス(2−アニシル)−ホスフィナイトの溶液を12℃において、4時間欠けて加えた。混合物を12℃で16時間攪拌すると、沈殿物が形成し、31P NMRは開始ホスフィンの完全な変換とAn2 PLiの定量的な形成を示した。次に100mlのDMSOを加え、続けて12℃で40.22g(0.156mol)の1,3−ジブロモ−2,2−ジエチルプロパンをゆっくり加えた。なおも12℃において反応混合物を一晩攪拌した後、31P NMRはタイトルの化合物の定量的な形成を示した。反応混合物は20mlのメタノールを加えることにより混合され(work up)、続いて50℃の減圧下で300mlの溶媒を除去し、水と200mlのジクロロメタンを添加し、続いて相分離した。水相を2×50mlのジクロロメタンを用いて抽出し、結合された有機相を水(2×50ml)で洗浄し、始めの体積の10%まで濃縮した。メタノール(200ml)の添加は、所望の生成物の沈殿を導く。該生成物を濾過し、少量のメタノールで洗浄し、そして乾燥させた。収率は75g(77%)の白色固体であり、1H NMRと31P NMRによると、>97%の純度であった。
実施例14(リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジエチル−1,3−ビス(ビス(3−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた100ml反応器に、40mlジオキサン中の2.90g(10mol)のエチルビス(2−アニシル)ホスフィナイトの溶液と0.146g(21mmol)のリチウム粉を充填した。混合物を10℃で16時間攪拌すると沈殿物が形成した。31P NMRは62重量%のリチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィナイトと28重量%のテトラアニシルジホスフィンAn2 PPAn2 の存在を示した。次に5mlのDMSOを加え、なおも10℃で、3mlTHF中の0.86g(3.3mmol)の1,3−ジブロモ−2,2−ジエチルプロパンをゆっくり加えた。さらに10℃で20分攪拌した後、31P NMRは49重量%の所望のジホスフィン、30重量%のテトラ−アニシルジホスフィン及び16重量%の1−ブロモ−2,2−ジエチル−3−ビス−(2−アニシル)ホスフィンの存在を示した。
実施例15(リチオ−ジフェニルホスフィンさらに2,2−ジエチル−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機を備えた50ml反応器に、20mlのTHF中の1.15g(5mmol)のエチルジフェニルホスフィナイトと280mg(12.1mmol)の鉱油中30重量%リチウム分散物とを充填した。混合物を2.5時間攪拌し、反応中に深赤色の溶液が形成した。31P NMRは開始ホスフィンの完全な変換を示した。リチオジフェニルホスフィンはほとんど排他的に形成した。次に、2.5mlのDMSOを加え、なおも10℃で、2.5mlTHF中の0.52g(2mmol)の1,3−ジブロモ−2,2−ジエチルプロパンをゆっくり加えた。1時間攪拌した後、31P NMRはほとんど排他的に所望のジホスフィンを示した。全体の工程は10℃で行った。
【0051】
実施例16(ナトリウム−ジフェニルホスフィンの製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた50ml反応器に、20mlのTHF中の1.15g(5mmol)のエチルジフェニルホスフィナイト、0.253g(11mmol)のナトリウム小片及び0.128g(1mmol)のナフタレンを充填した。反応混合物を10℃で20時間攪拌した。31P NMRは開始ホスフィンのナトリウムジフェニルホスフィンの90%の選択率での完全な変換を示した。
実施例17(リチオ−ジ−n−ブチルホスフィンさらに1,3−ビス(ジ−n−ブチルホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた50ml反応器に、20mlのTHF中の0.950g(5mmol)のエチルジ−n−ブチルホスフィナイト及び0.254g(11mmol)の鉱油中30重量%リチウム分散物とを充填した。反応混合物を10℃で24時間攪拌し、31P NMRは開始ホスフィンの完全な変換を示した。次に0.4g(2mmol)の1,3−ジブロモプロパンを加え、反応混合物を10℃で1時間攪拌した。31P NMRは所望のジホスフィンが主生成物であることを示した。
実施例18(ナトリウム−ジ−n−ブチルホスフィンの製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた50ml反応器に、20mlのトルエン中の0.950g(5mmol)のエチルジ−n−ブチルホスフィナイト及び0.253g(11mmol)のナトリウム小片を充填した。反応混合物を110℃で2時間攪拌し、その後、31P NMRはナトリウムジブチルホスフィンの存在を示した。
実施例19(リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに1,3−ビス(ビス(2−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた100ml反応器に、40mlのTHF中の3.17g(10mmol)のビス(2−アニシル)ジエチルアミノホスフィン及び0.146g(21mmol)のリチウム粉を充填した。反応混合物を10℃で16時間攪拌すると、薄い沈殿物が形成した。31P NMRは開始ホスフィンの完全な変換を示した。次に1.01g(5mmol)の1,3−ジブロモプロパンを加えた。2時間後、なおも10℃で20mlのメタノールを加え、溶媒を減圧下で除去し、50mlのジクロロメタンと50mlの水を加えた。有機相を分離し、水相を25mlジクロロメタンを用いて抽出した。結合された有機相を2×25mlの水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次に反応混合物をP3ガラスフリットで濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮し乾燥させた。その後10mlのメタノールで処理し、1.97g(74%)の収率で所望のジホスフィンが白色固体として得られ、1H NMRと31P NMRによると純粋であった。
【0052】
実施例20(リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジメチル−1,3−ビス(ビス(2−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた100ml反応器に、40mlのTHF中の3.17g(10mmol)のビス(2−アニシル)ジエチルアミノホスフィン及び0.146g(21mmol)のリチウム粉を充填した。反応混合物をなおも10℃で16時間攪拌すると、薄い沈殿物が形成した。31P NMRは開始ホスフィンの完全な変換を示した。次に5mlのDMSOを加え、続けて1.15g(5mmol)1,3−ジブロモ−2,2−ジメチルプロパンをゆっくり加えた。2時間後、なおも10℃で20mlのメタノールを加え、溶媒を減圧下で除去し、50mlのジクロロメタンと50mlの水を加えた。有機相を分離し、水相を25mlジクロロメタンを用いて抽出した。合した有機相を2×25mlの水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、次に反応混合物をP3ガラスフリットで濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮し乾燥させた。その後10mlのメタノールで処理し、2.37g(85%)の収率で所望のジホスフィンが白色固体として得られ、1H NMRと31P NMRによると純粋であった。
実施例21(比較:リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジメチル−1,3−ビス(ビス(2−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の試験製造)
実施例20を繰り返したが、第2段階で0.71g(5mmol)の1,3−ジクロロ−2,2−ジメチルプロパンを、ジブロモ化合物の代わりに使用した。4時間後、10℃における粗反応混合物の31P NMR分析は、モノホスフィン化合物2,2−ジメチル−1−(ビス−(2−アニシル)−ホスフィン−3−クロロプロパン)のほとんど排他的な形成を示した;所望のビス−ホスフィンは5%未満の量で存在した。
実施例22(リチオ−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジエチル−1,3−ビス(ビス(2−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
このジホスフィンは実施例20の方法により、69%の収率で製造した。
実施例23(ナトリウム−ビス(2−アニシル)ホスフィンさらに2,2−ジメチル−1,3−ビス(ビス(2−アニシル)ホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた100ml反応器に、40mlのTHF中の3.17g(10mmol)のビス(2−アニシル)ジエチルアミノホスフィン、0.48g(21mmol)のナトリウム小片及び0.27g(2.1mmol)のナフタレンを充填した。反応混合物を6℃で16時間攪拌後、31P NMRは開始ホスフィンの>90℃完全な変換を示した。次に5mlのDMSOを加え、続けて1.0g(4.3mmol)の1,3−ジブロモ−2,2−ジメチルプロパンをゆっくり加えた。2時間後、なおも6℃において、31P NMRは全ての開始ホスフィンが変換し、所望ジホスフィンの定量的な形成を示した。
実施例24(リチオ−ジフェニルホスフィンさらに2,2−ジエチル−1,3−ビス(ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)の製造)
攪拌機と還流冷却機を備えた100ml反応器に、40mlのTHF中の2.57g(10mmol)のジフェニル(ジエチルアミノ)ホスフィンと0.146g(21mmol)のリチウム粉を充填した。反応混合物を10℃で16時間攪拌し、深赤色の溶液が形成した。31P NMRは開始ホスフィンのリチウムジフェニルホスファイドへの十分な変換を示した。共に形成するリチウムジエチルアミドは、0.535g(10mmol)の塩化アンモニウムを加えることにより消滅した。1時間攪拌後、5mlのDMSOを加え、続けて1.29g(5mmol)の1,3−ジブロモ−2,2−ジエチルプロパンをなおも10℃においてゆっくり加えた。慣用の検査後、所望のジホスフィンは1.37g(59%)の収率で所望のジホスフィンが白色固体として得られ、 1H NMRと31P NMRによると純粋であった。
【0053】
実施例25(第四ジホスホニウム塩さらに1,3−ビス(2−アニシルホスフィノ)プロパン)の製造)
5.00g(15.8mmol)のN,N−ジエチルアミノ−ビス(2−アニシル)ホスフィン、1.59g(7.89mmol)の1,3−ジブロモプロパン及び30mlのアセトニトリルの混合物を還流した。18時間後、溶媒を除去し、1H NMRと31P NMRによりジホスホニウム塩XIを確認した。該ジホスホニウム塩は次の工程においてさらに精製されることなく使用した。20mlトルエン中の2.00g(2.4mmol)のジホスホニウム塩分散物を、2.5mlのナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジハイドライド(トルエン中3.4M;8.5mmol)に15分かけて添加した。反応混合物を周囲温度で2時間攪拌し、3mlの水をゆっくり加えた。粗反応混合物の31P NMRスペクトルはジホスホニウム塩の完全な変換と、所望ジホスフィンの高度に選択的な形成を示した。反応混合物を濾過し、固体残渣を20mlのトルエンで抽出した。合した有機相を減圧下で濃縮した。メタノールからの再結晶後、ジホスフィンが白色固体として得られ、1H NMRと31P NMRによると純粋であった。
実施例26(第四ジホスホニウム塩さらに1,3−ビス(ジフェニル)ホスフィノ)プロパンの製造)
2.57g(10mmol)のN,N−ジエチルアミノジフェニルホスフィン、1.01g(5mmol)1,3−ジブロモプロパン及び10mlのアセトニトリルの混合物を還流した。26時間後、溶媒を除去し、31P NMRにより確認されたジホスホニウム塩XIを、殆ど定量的に得た。該ジホスホニウム塩は次の工程においてさらに精製されることなく使用した。20mlトルエン中のジホスホニウム塩分散物に、5mlのナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジハイドライド(トルエン中3.4M;17mmol)を15分かけて添加した。反応混合物を周囲温度で2時間攪拌し、2.5mlの水をゆっくり加えた。粗反応混合物の31P NMRスペクトルは、この時点でのジホスホニウム塩の完全な変換と、所望ジホスフィンのほとんど排他的な形成を示した。反応混合物を濾過し、固体残渣を20mlのトルエンで抽出した。合した有機相を減圧下で濃縮した。20mlのメタノールを用いた処理後、1.25g(60%)の所望ジホスフィンが得られ、31P NMRにより構造を確認した。
【0054】
実施例27(第四ジホスホニウム塩さらに1,3−ビス(ジ(n−ブチル)ホスフィノ)プロパンの製造)
2.17g(10mmol)のN,N−ジエチルアミノジ(n−ブチル)ホスフィン、1.01g(5mmol)1,3−ジブロモプロパン及び10mlのアセトニトリルの混合物を還流した。20時間後、溶媒を除去し31P NMRにより確認されたジホスホニウム塩XIを殆ど定量的に得た。該ジホスホニウム塩は次の工程においてさらに精製されることなく使用した。20mlトルエン中の上記のように製造されたジホスホニウム塩分散物に、50mlのナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジハイドライド(トルエン中3.4M;17mmol)を5分かけて添加した。反応混合物を周囲温度で2時間攪拌し、2.5mlの水をゆっくり加えた。粗反応混合物の31P NMRスペクトルは、この時点でのジホスホニウム塩の完全な変換と所望ジホスフィンの殆ど排他的な形成を示した。反応混合物を濾過し、固体残渣を20mlのトルエンで抽出した。合した有機相を減圧下で濃縮し、1.75gの所望ジホスフィンを得、31P NMRによると約90%の純度であった。メタノールを用いた処理は1H NMRと31P NMRによると純粋なジホスフィンを生じた。
実施例28(第四ジホスホニウム塩さらに1,3−ビス(ジ(n−ブチル)ホスフィノ)プロパンの製造)
1H NMRと31P NMRにより確認されるタイトルの化合物を生ずる製造における実施例27の方法において、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジハイドライドの代わりにリチウムアルミニウムハイドライドを使用した。
実施例29(第四ジホスホニウム塩の製造)
2.5g(7.9mmol)のN,N−ジエチルアミノ−ビス(2−アニシル)ホスフィン、1.48g(3.9mmol)の1,2−ジブロモエタン及び15mlのアセトニトリルの混合物を還流した。20時間後、溶媒を除去し、31P NMRにより確認されるジホスホニウム塩XIを殆ど定量的に得た。
実施例30(第四ジホスホニウム塩の製造)
第四アンモニウム塩を実施例27と同じ手順で製造したが、1,3−ジブロモプロパンを1,3−ジブロモ−2−メチルプロパンに置き換え、第四化を許容する反応時間は90時間であった。ホスホニウム塩XIの形成は31P NMRにより確認した。
その製法が上記のものであるビホスフィン化合物は、オレフィンと一酸化炭素とのコポリマー化用の触媒製造における配位子として使用でき、該コポリマー化及び触媒製造は本明細書の前部に通常記載されたもの、及び多くの先行特許明細書に例証されたもの、例えばEP−A−121965及びEP−A−248483、である。従って詳細な例はここでは必要ない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
2P−L
(式中、Rはヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、Lはアミン、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ又はホスフィン残基である)の化合物の製造方法であり、一般式
RLi
の化合物と、一般式
Hal2 P−L
(式中、Halはハロゲン原子を表す)の化合物との反応によるものであり、該反応は一般式
1 −O−E2
(式中、E1 及びE2 は独立して随意に置換されたアルキル基、又は随意に置換されたアリール基を表し、周囲圧力で少なくとも40℃の沸点を有する)のエーテル化合物を含む溶媒中で行われる該方法。
【請求項2】
一般式
R−H
(式中、Rはヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルである)
の化合物を、一般式
1 −O−E2
(式中、E1 及びE2 は請求項1で定義したとおりである)
のエーテル化合物を含む溶媒中で一般式
Q−Li
(式中Qはアルキル、シクロアルキル、アラルキル又はアリール基である)
の化合物によりリチウム化して、一般式Ri1 ?Liの化合物を製造する工程;及び
前記得られた化合物と、一般式
Hal2 P−L
(式中、Halはハロゲン原子を表し、Lは請求項1で定義した残基である)
の化合物とを一般式
1 −O−E2
(式中、E1 及びE2 は請求項1で定義したとおりである)
のエーテル化合物を含む溶媒中で反応させる工程;
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、極性部位で置換されたヒドロカルビルである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rが、極性部位で置換されたアリールである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Rが、単一極性部位でo?置換されたフェニル基である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記極性部位が、ハロゲン、ハロアルコキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、モノアルキル?アミノアルキル、ジアルキル?アミノアルキル、アミド、モノアルキルアミド、ジアルキルアミド、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミドスルホニル、アルキルスルホネート、リチオ?オキシ、アリーロキシ、スルホニル、及びアルカリ金属スルホネートよりなる群から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記極性部位がアルコキシ又はアリーロキシである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性部位がメトキシ又はフェニロキシである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Lは、−NR’’2 、−PR’’2 又は−ZR’’(式中、R’’はC〜Cアルキルを表すか、或いはLが−NR’’2 又は−PR’’2 の時、2つのR’’基は一緒になって任意に置換されたC〜Cアルキレン鎖を形成し、ZはO又はSを表す)である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
Halがクロロ、ブロモ又はヨードである請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−201918(P2011−201918A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133748(P2011−133748)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【分割の表示】特願2000−563663(P2000−563663)の分割
【原出願日】平成11年8月3日(1999.8.3)
【出願人】(501228071)エスアールアイ インターナショナル (66)
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
【Fターム(参考)】