説明

爪の成長速度を増大するためのキトサンの使用

本発明は、爪の成長速度を増大するためのキトサン、キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩の使用を対象とする。本発明は、爪の疾患、爪のジストロフィー、または他の爪の状態の特定の処置を大幅に短縮するために、前記爪の疾患、爪のジストロフィー、または他の爪の状態の処置の間、爪の成長速度を促進するためのキトサンの使用をさらに対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪の成長速度を増大するためのキトサン、キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩の使用、ならびに爪の成長障害を処置するためのそれらの使用に関する。本発明は、さらに、爪の疾患、爪のジストロフィー、または他の爪の状態の特定処置を大幅に短縮するためのキトサンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
爪は、角質の硬組織、死んだ角質細胞から誘導された材料によって作られ、硫酸化されたアミノ酸およびS−S結合に富むタンパク質であるケラチンによって構成される皮膚の付属器である。爪は、手指および足指の遠位端の背部表面の小皮の直下の、表皮のポケット様陥入内に成長する。爪板のための爪材料の形成は、主に、爪基盤、その近位終端から爪半月の上の爪ポケットの下部分を占める特殊化した組織からの突出として行われる。爪基盤の最も近位の成分は、背部の爪表面の角質細胞を提供する。これらは、通常、光沢のある表面を提供する。爪基盤が疾患によって変えられるか、または爪表面が外傷に曝されると、この光沢が失われる。爪基盤の領域は、爪板が爪下皮上に強力に接着している爪床に近い。この最後が、爪床と指腹の間に位置する表皮の背部領域である。
【0003】
爪板の自由縁を越えた長さの増加などの爪板の成長速度は、爪基盤における爪細胞の再生の程度に依存する。そこで形成された細胞材料は、遠位方向に無抵抗に押出される板様の角質構造に分化する。爪は生物体の全生涯の間、連続的に成長し、成長速度は高年齢と共に、末梢血行の障害、爪感染症、乾癬、および他の疾患などのある種の条件で低減する。老人の手指爪における変化は、ほとんど、組織の修復の低下、および遠位の指節間の関節の炎症性または退行性の変化に関連する。これらの影響は、長さ方向の爪の成長の速度の低下、爪板の非薄化、および長さ方向の隆線の強調に関連する。
【0004】
足指の爪の厚さおよび密度における変動は高齢者に起こり、ほとんど末梢血行の変化に帰することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1303249号明細書
【特許文献2】国際公開第04/112814号パンフレット
【特許文献3】国際公開第06/111426号パンフレット
【特許文献4】国際公開第07/042682号パンフレット
【特許文献5】RU2108114
【特許文献6】EP10679383
【特許文献7】国際公開第03/051376号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5120530号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wenk, Myfungar Nagellak, Haut, Viavital Verlag, Essen, DE, Vol. 15, n. 7, 2004, pages 307-308
【非特許文献2】Monti et al., Drug Development and Industrial Pharmacy, 2005, United States, vol. 31, n. 1, 2005, pages 11-17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
健康な外観の爪は、滑らかで、曲線を描き、いかなる斑点もなく、いかなる凹みや隆線もあってはならない。悪い状態の爪は、個人的印象にとって非常に有害であることがあり、無視しても、長期間継続する機能障害および苦痛に付随した慢性的な感染症を引き起こすことができる。注目すべきことに、これらは社会的問題および/または専門的な疾患とみなされてもよい。特に手指の爪は、また足指の爪も、環境と絶えず接触しているので、これらは小さな、およびときには大きな外傷に大いに曝される。
【0008】
手指の爪の長さの1カ月の平均の増加は1〜3mmの間であり、年齢の他に、血行および特定の疾患、食事、および生理学的ストレスがこの値に影響を及ぼことができる。利き手の爪は、より速く成長すると報告されている。親指の爪が完全に再生するのに6カ月が必要とされる一方、足の親指の爪や他の足指の爪が完全に再生するには少なくとも12カ月が必要とされるように、足指の爪は手指の爪よりも大幅にゆっくりと成長する。
【0009】
健康な爪の完全な再生が各治療学的なプロトコールの主な終着点の部分であるように、爪の成長は、爪真菌症や他の爪の疾患の処置の明白な軸を演じる。このように、爪成長速度を増進し得る要因は、爪疾患の処置を短縮する上で決定的な軸を有するであろう。
【0010】
ヒドロキシアルキルキトサンおよび/またはカルボキシアルキルキトサンのようなキトサン誘導体は、水溶性フィルム形成物質として当技術分野では知られている。これらの使用は、例えば、少なくとも1つの抗真菌薬を含む爪上塗り組成物を開示している特許文献1、およびトクサ属(Equisetum)の植物からの1つの薬草抽出物とフィルム形成剤として用いられるヒドロキシプロピルキトサンとの組み合わせをベースにした爪の再構成組成物を開示する特許文献2に、開示されている。フィルム形成剤としてのキトサンの使用は特許文献3および特許文献4にも開示されている。キトサンの使用は、非特許文献1、特許文献5、特許文献6、非特許文献2、特許文献7にも開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
爪板上への、キトサンまたはキトサン誘導体を、単独で、または1つもしくは複数の有効成分との組み合わせのいずれかで含む製品の適用によって、爪の成長が促進されるであろうことが、今、見出された。
【0012】
(発明の概要)
本発明の目的は、爪の成長を促進するための、キトサン、キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩の使用によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例9で測定された試験製剤の爪の成長速さを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましいキトサン誘導体は水溶性であり、分子量が50000Daを超え、好ましくは100000Daから500000Daまでであるキトサンアミノ多糖類から選択され、その中で、ヒドロキシプロピルキトサンなどのヒドロキシアルキルキトサン、およびカルボキシアルキルキトサンが特に好ましい。
【0015】
より詳しくは、本発明は、爪真菌症、爪乾癬、扁平苔癬、またはアトピー性皮膚炎などの爪の疾患だけではなく、爪のジストロフィー、および様々な起源の爪の成長障害の処置の間、爪の成長を促進するための、キトサン、キトサン誘導体、または生理学的に許容できるそれらの塩の使用によって説明される。
【0016】
0.1重量%から10重量%まで、より好ましくは0.2重量%から5重量%まで、最も好ましくは0.3%から2%までのキトサン含量を有する、ネイルラッカー、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、泡沫の形態の、キトサンまたはキトサン誘導体の液体または半固体の製剤が好適であり爪表面に定期的に適用した場合に爪の成長を促進する。
【0017】
薬剤組成物は、適合性の賦形剤および薬学的に許容できる担体を用いて従来の技術に従って調製され、補足的な、またはいかなる場合においても有用な活性を有する、1つまたは複数の活性成分を組み合わせて含んでもよい。
【0018】
本発明のキトサンと組み合わせて組成物に用いられであろう活性剤は、限定されないが、コルチコステロイド、抗乾癬剤、免疫抑制剤、抗真菌剤、防腐剤、保湿剤、および/または爪強化剤が含まれる。
【0019】
コルチコステロイドの例は、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾンまたはそのジプロピオン酸塩、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾンまたはそのジプロピオン酸塩、ベタメタゾンおよびその塩、例えば、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ナトリウムベタメタゾン、リン酸ナトリウムおよび酢酸塩ベタメタゾン、ならびに吉草酸ベタメタゾン;クロベタゾールまたはそのプロピオン酸塩、ピバル酸クロコルトロン、例えば、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ナトリウムヒドロコルチゾン、コハク酸ナトリウムヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンテブタート、および吉草酸ヒドロコルチゾンを含むヒドロコルチゾンおよびその塩、;酢酸コルチゾン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、およびこれらの塩、例えば、酢酸塩およびリン酸ナトリウム;、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニソロンおよびその塩、例えば、酢酸塩、コハク酸ナトリウム塩;フロ酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニソロンおよびその塩、例えば、酢酸塩、ジエチルアミノアセテート、リン酸ナトリウム塩、コハク酸ナトリウム塩、テブタート、トリメチルアセテート;プレドニソン、トリアムシノロンおよびその誘導体、例えば、アセトニド、ベネトニド、ジアセテート、ヘキサアセトニドを含む。
【0020】
抗乾癬剤の例は、ジスラノールなどのアントラセン誘導体;トリオキサレン、またはメトキサレンなどのようなソラレン;カルシトリオール、カルシポトリオール、またはタカルシトールなどのようなビタミンD3類似体;タザロテン、アシトレチン、またはエトレチナートなどのようなレチノイド;フマル酸およびそのエステル、例えば、モノメチルエステル、ジメチルエステル:を含む。
【0021】
免疫抑制剤の例は、シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス、およびシロリムスを含む。
【0022】
抗真菌剤の例は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン化合物およびその塩、例えば、シクロピロックス、リロピロックス、ピロクトン、シクロピロックスオラミン;、イミダゾール誘導体およびその塩、例えば、クロトリマゾール、エコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、チオコナゾール、ビフォナゾール、フェンチコナゾール、およびオキシコナゾール;ポリエン誘導体およびその塩、例えば、ナイスタチン、ナタマイシン、およびアムホテリシン;アリルアミン誘導体およびその塩、例えば、ナフチフィンおよびテルビナフィン、トリアゾール誘導体およびその塩、例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール、およびボリコナゾール;モルホリン誘導体およびその塩、例えば、アモロルフィン、および特許文献8に開示されたモルホリン類;グリセオフルビンおよび関連化合物、例えば、グリセオフルビン;ウンデシレン酸およびその塩、特に、ウンデシレン酸の亜鉛塩およびカルシウム塩;トルナフテートおよびその塩;ならびにフルシトシンおよびその塩を含む。
【0023】
抗真菌剤はまた天然源、特に植物抽出物から選択されてもよい。これらの抽出物の例は、ティーツリー油(Melaleuca attemifolia)、ラベンダー油(Lavandula officianalis chaix)、およびニームツリー(Azadirachta indica))の葉の抽出物を含む。
【0024】
防腐剤の例は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、クロルヘキシジン、塩化デカリニウム、トリクロカルバン、トリクロサン、サリチル酸、安息香酸およびそれらの塩、p−ヒドロキシ安息香酸およびそのエステルを含む。
【0025】
本発明に従って処方される組成物の例は、自由に、または半密封もしくは密封下に爪表面に適用するための、ネイルラッカー、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、または泡沫を含む。
【0026】
本発明の薬剤組成物および使用を、次に、以下の実施例によってより十分に記載する。しかし、このような実施例は、例示によって示され、限定的なものではないことに留意すべきである。
【実施例1】
【0027】
以下の重量/重量%組成を有する溶液を調製する。
【0028】
1.純水 21.0%
2.エタノール 73.0%
3.酢酸エチル 4.0%
4.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 1.0%
5.セトステアリルアルコール 1.0%
調製
スターラー付きの密封容器を用いて製剤を調製する。この容器に、エタノール、脱イオン水、および酢酸エチルを加えて混合液を形成する。その後、セトステアリルアルコールを加える。最後に、ヒドロキシプロピルキトサンを加え、得られた混合液を24時間または溶解するまで撹拌する。
【0029】
得られた組成物は、長時間貯蔵した後でも澄明で均一な外観を有する。さらに、爪上に適用したとき、液体は、爪表面に強力に接着することができる非粘着性で弾性のフィルムを形成することができる。
【実施例2】
【0030】
健常志願者の爪上で実施例1による溶液の爪成長の促進効率および安全性を評価するために、オープンの比較臨床試験が行なわれた。試験は、処置の4週間、皮膚科的対照の下、単一施設で行なわれた。
【0031】
特に、試験製品が、無作為化リストおよび発明者の指示に従って、1日1回、左手または右手の5本の爪上にを適用され、試験製品適用側は、基準時来診の間に、各々含まれた被験者に、発明者によって指定された。反対側の手の爪が対照領域として用いられた(非処置の爪)。
【0032】
試験の間、以下の来診を行った。
【0033】
・ 基準時−T0a(製品使用前)
・ 基準時延長来診−T0b(T0aの3日後)
・ 最終来診−T4a(処置25日後)
・ 最終延長来診−T4b(4週間の処置の終了時)
18歳〜50歳の年齢範囲の(平均=43歳)、同意書が得られた22人の健常志願者(男性1人および女性21人)に試験が行なわれた。全被験者は、プロトコールの指示通り試験を終えた。
【0034】
試験期間の間、試験結果を妨害し得る重大な事象は生じなかった。
【0035】
データ処理は、記述的および推計学的な分析によって行なわれた。
【0036】
製品の活性は、絶対値および非処置の対照領域に関するる相対的な語で表された。特に、実験データの統計学的分析が以下の通りに行なわれ。
【0037】
・ 処置および非処置の爪対基準条件のT4の結果の比較(研究者のt検定)
・ 時間ごとの処置対非処置の爪の比較(分散分析)
爪の成長スピード(mm/日)は、各被験者に対して、基準時条件(T0a対T0b)および試験終了時(T4a対T4b)に撮影した処置の手および非処置の手の両方の親指の爪のデジタル画像を比較して、決定された。
【0038】
得られた結果は、試験製品は、15%(基準平均値0.071mm/日から最終平均値0.082まで)に相当する爪の成長速さの統計学的に有意な増加(研究者のt検定T0に対してp<0.01)を測定したことを示した。
【0039】
非処置の爪に対して爪の成長速さの変動は強調されず、実際、T0およびT4に得られた平均値は0.075mm/日であった。
【0040】
爪の成長速さの増加の外にも、爪の滑らかさの重要な増加が、有意な、処置の爪対対照の非処置の爪で評価された。
【0041】
さらに、処置は非常に良好な耐容性を示し、副作用は報告されなかった。
【実施例3】
【0042】
以下の重量/重量%組成を有する溶液を調製する。
【0043】
1.純水 13.0%
2.エタノール 73.0%
3.シクロピロックス 8.0%
4.酢酸エチル 4.0%
5.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 1.0%
6.セトステアリルアルコール 1.0%
調製
スターラー付きの密封容器を用いて製剤を調製する。この容器に、エタノール、脱イオン水、および酢酸エチルを加えて混合液を形成する。その後、セトステアリルアルコールおよびシクロピロックスを加える。最後に、ヒドロキシプロピルキトサンを加え、得られた混合液を24時間または溶解するまで撹拌する。
【0044】
得られた組成物は、長時間貯蔵した後でも澄明で均一な外観を有している。さらに、爪に適用すると、液体は、爪表面に強力に接着することができる非粘着性で、弾性のフィルムを形成することができる。
【実施例4】
【0045】
実施例3(P−3051と命名)および1(プラセボとして用いた)による溶液の爪成長の促進効率が、皮膚糸状菌の真菌による爪真菌症を有する患者に対照臨床試験の枠内で測定された。
【0046】
試験は、多施設で、無作為抽出され、長期で、二重ブラインド/ブラインドされた評価で、平行群で、3つのアーム:成分としてヒドロキシプロピルキトサンおよび活性抗真菌薬としてシクロピロックスを含む実施例3におけるP−3051溶液、成分としてヒドロキシプロピルキトサンを含むがいかなる活性抗真菌薬を欠く実施例1におけるプラセボ溶液、ならびに抗真菌薬としてシクロピロックス8%、および他の成分として水、イソプロパノール、モノエステル樹脂を含む、米国市場からの参照ネイルラッカー(Penlac(登録商標))であった。参照溶液は、参照溶液中にキトサンを含まない点で試験のP−3051溶液と異なっていた。全体で467人の患者を、P−3051、参照生成物、およびプラセボ間で2:2:1の比に無作為化抽出した。彼等は、4〜8週間の立ち寄り、48週間の処置、および12週間の追跡調査を受けた。効率エンドポイントの中で、処置および追跡調査の間、真菌培養物の陰性への転換、透明な爪≧90%を有する患者のパーセント値、健康な爪の成長速度が測定された。健康な爪の成長速度はパラメータであり、その中で抗真菌効果および爪の成長の促進効果の両方の寄与が特定の役割を果たす。
【0047】
予想通り、菌類学上の所見に対するP−3051および参照活性処置の効果は、処置の終了時には真菌の繁殖の陰性への約90%の転換を伴って類似していた。菌類学上の繁殖の陰性への転換率は、プラセボのアームにおいて著しく低く(70%)、この結果も予想されていた。
【0048】
爪の成長速度に関する結果を、表1にまとめる。
【0049】
【表1】

【0050】
シクロピロックス8%を含むがキトサンを含まない市販参照は、処置24週、36週、および48週に健康な爪の成長の継続的な増大があった。
【0051】
ヒドロキシプロピルキトサンを含むが活性抗真菌薬を含まないプラセボは、市販参照同様、健康な爪の成長の継続的な増大をやはり示した。認められる通り、キトサンおよびシクロピロックス(活性抗真菌薬)8%の両方を含むP−3051は、健康な爪の成長速度において市販参照Penlac(登録商標)よりも明らかに活性が高かった。
【0052】
実施例3に従って作成したP−3051の組成物における、爪の成長速度に対して直接的な効果を有するキトサンの存在は、健康な爪の成長に関して抗真菌薬の効果を改善したことが結論づけられる。
【実施例5】
【0053】
以下の重量/重量%組成を有する製剤を調製する。
【0054】
1.純水 29.375%
2.エタノール96° 70.0%
3.ブデソニド 0.025%
4.ヒドロキシプロピルキトサン(HPCH) 0.5%
5.Peg−40硬化ヒマシ油 0.1%
調製
最終成分としてヒドロキシプロピルキトサンを加え、24時間または溶解するまで撹拌することによって、実施例1および3の通りに製剤を調製する。
【実施例6】
【0055】
以下の重量/重量%組成を有する製剤を調製する。
【0056】
1.プロピレングリコール 13.0%
2.イソプロパノール 82.497%
3.カルシトリオール 0.003%
4.酢酸エチル 4.0%
5.キトサン 0.5%
調製
キトサンをプロピレングリコールに溶解し、次いでイソプロパノールに予め溶解したカルシトリオールを加える。次いで、酢酸エチルを加え、得られた混合液を溶解するまで撹拌する。
【実施例7】
【0057】
実施例3による溶液の爪の成長の促進効率を評価するために、同意書を得た、年齢21〜40歳(平均31.8±SD4.6歳)の健常男性志願者24人の爪に、オープンの比較臨床試験が行なわれた。この実験では、実施例3による溶液の爪の成長促進効率が、参照として、以下の成分:アモロルフィンHCl5.574%、メタクリル酸共重合体、トリアセチン、酢酸ブチル、酢酸エチル、エタノールを含む市販ネイルラッカー(Loceryl−France)と比較された。試験製品および参照製品が、28日間、どちらかの手の指爪すべてに無作為に自己適用された。試験製品は1日1回ブラシによって適用され、市販参照製品は認可された表示通り、1週間に2回、ヘラを用いることによって適用された。試験製品および参照製品は両方とも夕刻に適用された。各試験の適用前に、被験者は手を水および石鹸で洗浄し、的確に乾燥するよう指示され、各参照の適用前には、被験者は、イソプロピルアルコールのスワブで以前の製品の層を除去しなければならなかった。
【0058】
爪の成長促進活性が、実施例2と同じタイミングおよび同じ方法で評価された。
【0059】
得られた結果は、実施例3による試験溶液は、34%(基準平均値0.094mm/日から最終平均値0.126mm/日まで)に相当する爪の成長速さの、統計的に有意な増大(研究者のt検定T0に対してp<0.01)を測定したことを示した。。
【0060】
これとは対照的に、参照ネイルラッカーを適用した爪の成長は、ベースライン(0.104mm/日)から実験の終了(0.117mm/日、有意ではない)まで、有意に差がなかった。
【実施例8】
【0061】
以下の重量/重量%組成を有する製剤を調製する。
【0062】
1.プロピレングリコール 13.0%
2.イソプロパノール 82.5%
3.酢酸エチル 4.0%
4.キトサン 0.5%
調製
キトサンをプロピレングリコールに溶解し、次いでイソプロパノールおよび酢酸エチルを加え、得られた混合液を溶解するまで撹拌する。
【実施例9】
【0063】
実施例8による溶液の爪の成長の促進効率を評価するために、同意書を得た年齢22〜40歳(平均32.2±SD7.9歳)の、健常男性志願者6人の爪上で、オープンの比較臨床試験が行なわれた。この実験において、実施例8による溶液が(の爪の成長の促進効率が)、28日間の期間、一方の手の指爪すべてに、夕刻、就寝前に、無作為に自己適用された。各試験を適用する前に、被験者は手を水および石鹸で洗浄し、的確に乾燥するよう指示された。
【0064】
爪の成長の促進活性が、実施例2と同じタイミングおよび同じ方法で評価された。非処置の手指爪を参照の爪とした。
【0065】
得られた結果は図1に要約される。実施例8による試験溶液は、約48%(基準平均値0.083mm/日から最終平均値0.123mm/日まで)の爪の成長スピードの統計的に有意な増大(研究者のt検定T0に対してp<0.01)を確定した。
【0066】
これとは対照的に、参照の非処置の爪の成長は、基準時(0.087mm/日)から実験の終了(0.081mm/日)まで、有意に差がなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の成長速度を促進するための、キトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できる塩。
【請求項2】
キトサンアミノ多糖類である請求項1に記載の水溶性キトサン誘導体。
【請求項3】
50000Daを超える分子量を有することを特徴とする請求項2に記載のキトサンアミノ多糖類。
【請求項4】
100000Daから500000Daまでの分子量を有することを特徴とする請求項2に記載のキトサンアミノ多糖類。
【請求項5】
ヒドロキシアルキルキトサンである請求項2に記載のキトサンアミノ多糖類。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルキトサンである請求項5に記載のヒドロキシアルキルキトサン。
【請求項7】
カルボキシアルキルキトサンである請求項2に記載のキトサンアミノ多糖類。
【請求項8】
1つまたは複数の活性成分と組み合わせて投与される前記請求項のいずれかに記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記活性成分が爪の疾患を処置する。
【請求項10】
請求項9に記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記爪の疾患は、爪感染症、爪乾癬、爪の扁平苔癬、爪のアトピー性皮膚炎、爪のジストロフィー、爪の剥離から選択される。
【請求項11】
請求項9に記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記有効成分は、コルチコステロイド、抗乾癬薬、免疫抑制薬、抗真菌薬、防腐薬、保湿薬、および/または爪強化薬から選択される。
【請求項12】
局所投与される、前記請求項のいずれかに記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項13】
自由に、または半密封もしくは密封下に薬物が爪表面に適用される、請求項12に記載のキトサン、キトサンアミノ多糖類、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項14】
局所製剤の手段によって投与される、請求項12に記載のキトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩。
【請求項15】
請求項12に記載の、キトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記製剤は、ネイルラッカー、スプレー、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、または泡沫である。
【請求項16】
請求項12に記載の、キトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記製剤は、製剤の全重量に対して0.1重量%から10重量%までのキトサン、キトサンアミノ多糖類、および/またはそれらの塩の含量を有する。
【請求項17】
請求項12に記載の、キトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記製剤は、製剤の全重量に対して0.2重量%から5重量%までのキトサン、キトサンアミノ多糖類、および/またはそれらの塩の含量を有する。
【請求項18】
請求項12に記載の、キトサン、水溶性キトサン誘導体、および/または生理学的に許容できるそれらの塩において、前記製剤は、製剤の全重量に対して0.3重量%から2重量%までのキトサン、キトサンアミノ多糖類、および/またはそれらの塩中の含量を有する。

【図1】
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【公表番号】特表2010−518138(P2010−518138A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549395(P2009−549395)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051477
【国際公開番号】WO2008/098869
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】