説明

爬虫類・両生類の固形飼料

【課題】 爬虫類や両生類に与えるのに適した固形飼料を提供する。
【解決手段】10重量部〜30重量部の飼料原料を、0.5重量部〜15重量部のゲル化剤及び残部の水分によって、爬虫類・両生類が摂餌できかつ爬虫類・両生類の重さで壊れない硬さに固形化する。飼料原料には、野菜の粉末、穀物の粉末、動物質原料、果実の粉末、酵母、水溶性食物繊維、及び不溶性食物繊維の1又は複数を主成分として用いるのがよい。また、ゲル化剤は、寒天、ゼラチン、カラギーナン、あるいはキサンタンガムとローカストビーンズの混合物を用いることができる。また、ゲル化剤の重量部は、1重量部〜15重量部の範囲内から爬虫類の大きさに応じて選ばれる値とするのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は爬虫類・両生類の固形飼料に関し、例えばリクガメ、トカゲ、蛙、イモリやサンショウウオなどに与えるのに適した飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、趣味が多様化し、爬虫類や両生類を飼育する人が増える傾向にある。例えば、ケヅメリクガメ、ヒョウモンリクガメ、ソリガメなどのリクガメは動きが緩慢であり、しかも草食性で、キャベツ、レタス、小松菜、ノゲシ、タンポポなど、入手しやすい野菜や野草を餌として与えることができ、飼育しやすい。
【0003】
また、とうもろこし粉、大豆皮、荒挽き大豆、グルテン、小麦胚芽などを主成分とし、水でふやかせて与えるようにしたリクガメ用の人工飼料なども提供されている。
【0004】
なお、飼料原料に、ゼラチン、ペクチン、アラビアガム、マンナン、寒天、デンプン、卵白などのゲル化剤と水を混合し、ゲル化するようにした子牛や子豚などに適した配合飼料(特許文献1)、グルコマンナンの水和物のゲルをドッグフードやキャットフードに混和し、加熱して不可逆ゲル化するようにした飼育動物用飼料(特許文献2)、などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−8640号公報
【特許文献2】特開2000−316485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、野菜や野草などの天然飼料はリクガメが足で踏みつけて傷みやすい。また、リクガメを飼育する場合には飼育環境を例えば25°C〜37°Cの温度に保持する必要があり、天然飼料を与えてから2時間も経過すると、飼料が乾燥してしまい、リクガメがもはや摂餌しなくなり、廃棄しなければならなかった。さらに、天然飼料は踏みつけられて潰れると、リクガメの甲羅、口まわり、足などに付着し、特に口まわりは踏みつけられた天然飼料が付着して汚れやすく、そのまま放置すると病気の原因になるおそれがあり、飼料を与えるたびにリクガメを洗う必要があり、煩雑であった。
【0007】
他方、リクガメ用の人工飼料では水でふやかして与えるようにしているので、軟らかくなった飼料がリクガメの甲羅、口まわりや足に付着するという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、踏まれても傷み難く、又過酷な飼育環境においても乾燥し難く、さらには汚れの原因にならないようにした爬虫類・両生類の固形飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る爬虫類・両生類の固形飼料は、爬虫類・両生類が摂餌するのに適した固形飼料であって、10重量部〜30重量部の飼料原料が、0.5重量部〜15重量部のゲル化剤及び残部の水分によって、爬虫類・両生類が摂餌できかつ爬虫類・両生類の重さで壊れない硬さに固形化されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つは飼料原料を0.5重量部〜15重量部のゲル化剤で固形化するようにした点にある。これにより、得られた固形飼料は子獣から成獣までの爬虫類や両生類が摂餌し得る軟らかさにでき、しかもゲルの特性上、爬虫類や両生類の過酷な飼育環境に長時間放置しても、飼料表面があまり乾燥せず、爬虫類や両生類が無理なく摂餌することができる。
【0011】
また、0.5重量部〜15重量部の範囲から爬虫類や両生類の大きさに応じた重量部のゲル化剤を用いると、得られた固形飼料は爬虫類や両生類が摂餌し得る軟らかさでありながら、爬虫類や両生類が踏みつけても壊れない程度の硬さになるので、野菜や野草などの天然飼料のように爬虫類や両生類が踏みつけてもそれほど傷むことはない。
【0012】
本発明の更に他の特徴は飼料原料をゲル化剤によって固形化するようにした点にある。これにより、得られた固形飼料は水で軟らかくした人工飼料あるいは踏みつぶされた野菜や野草に比して爬虫類や両生類の甲羅、胴、口まわり、足などに付着し難く、爬虫類や両生類を清潔に保つことができる。
【0013】
本発明の固形飼料はリクガメだけでなく、グリーンイグアナなどのトカゲ、その他の爬虫類、あるいは蛙、イモリやサンショウウオなどの両生類に与える飼料としても用いることができる。
【0014】
固形化する飼料原料は、例えばリクガメやトカゲなどの爬虫類、蛙、イモリやサンショウウオなどの両生類が摂餌しえるもの、具体的には野菜の粉末、穀物の粉末、動物質原料、果実の粉末、酵母、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維から選ばれる1又は複数を主成分とするのがよい。
【0015】
例えば、野菜にはモロヘイヤ、チンゲン菜、小松菜、カボチャ、トマト、人参、キャベツ、レタス、アルファルファ、マリーゴールドなどを挙げることができる。また、果実にはバナナなどを挙げることができる。穀物(その副産物も含む)には小麦、大麦、米、とうもろこし、大豆、澱粉、グルテンなどを挙げることができる。また、動物質原料にはいか、アミエビ、サナギ、魚粉、貝などを挙げることができる。さらに、食物繊維にはチコリファイバー、イヌリン、コーンファイバー、アップルファイバー、発酵大豆ファイバー、えんどうファイバーを挙げることができる。
【0016】
さらに、固形化する飼料原料には必要に応じて栄養補助成分や摂餌促進成分、例えば海苔や海草などの海産物、水産物由来の油脂、あるいは菓子屑、キトサン、ココアパウダー、CMC、乳化剤、アミノ酸、アルギン酸Na、色素、消化酵素、βカロチン、水溶性大豆多糖類、食塩、リン酸塩、カルシウム、ポリデキストロース、ガーリックなどを添加することができる。
【0017】
また、ゲル化剤は水分によってゲル化でき、かつ爬虫類・両生類が摂餌し得るものであればよい。例えば、寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガムとローカストビーンズの混合物、グルコマンナン、アラビアガムなどを挙げることができる。
【0018】
ゲル化剤の使用量は得られた固形飼料の0.5重量部〜15重量部の範囲から選択される量とする。ゲル化剤が得られた固形飼料の0.5重量部未満では軟らかくなりすぎ、爬虫類や両生類が踏みつけると、簡単に潰れておそれがある一方、15重量部を越えると、硬くなりすぎて、爬虫類や両生類が食いちぎることができなくなるおそれがあるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
〔飼料原料例A〕
【0020】
カボチャ乾燥粉末40重量部、バナナ乾燥粉末10重量部、水溶性食物繊維20重量部、不溶性食物繊維20重量部、炭酸カルシウム5重量部及びビタミン類5重量部を混合して飼料原料Aを製造した。
〔飼料原料例B〕
【0021】
モロヘイヤ乾燥粉末40重量部、コーングルテン乾燥粉末10重量部、不溶性食物繊維20重量部、炭酸カルシウム、5重量%及びビタミン類5重量%を混合して飼料原料Bを製造した。
〔飼料原料例C〕
【0022】
トマト乾燥粉末40重量%、人参乾燥粉末5重量%、コーングルテン乾燥粉末5重量%、不溶性食物繊維20重量部、水溶性食物繊維20重量%、炭酸カルシウム、5重量%及びビタミン類5重量%を混合して飼料原料Cを製造した。
〔実施例1〕
【0023】
10重量部の飼料原料Aに1重量部の寒天粉末を加えて混合し、89重量部の水を加えて加熱しながら、寒天が十分に溶解するまで攪拌した後、室温で放置して冷却し、固形飼料1を得た。
〔実施例2、3〕
【0024】
10重量部の飼料原料B、Cを用い、固形飼料1と同様にして固形飼料2、3を得た。 〔実施例4〕
【0025】
10重量部の飼料原料Aに5重量部の寒天粉末を加えて混合し、85重量部の水を加えて加熱しながら、寒天が十分に溶解するまで攪拌した後、室温で放置して冷却し、固形飼料4を製造した。
〔実施例5、6〕
【0026】
10重量部の飼料原料B、Cを用い、固形飼料4と同様にして固形飼料5、6を得た。 〔実施例7〕
【0027】
10重量部の飼料原料Aに10重量部の寒天粉末を加えて混合し、80重量部の水を加えて加熱しながら、寒天が十分に溶解するまで攪拌した後、室温で放置して冷却し、固形飼料7を製造した。
〔実施例8、9〕
【0028】
10重量部の飼料原料B、Cを用い、固形飼料7と同様にして固形飼料8、9を得た。 〔実施例10〕
【0029】
10重量部の飼料原料Aに15重量部の寒天粉末を加えて混合し、75重量部の水を加えて加熱しながら、寒天が十分に溶解するまで攪拌した後、室温で放置して冷却し、固形飼料10を得た。
〔実施例11、12〕
【0030】
10重量部の飼料原料B、Cを用い、固形飼料10と同様にして固形飼料11、12を製造した。
〔実施例13〜25〕
【0031】
15重量部の飼料原料A、B、Cと、1重量部、5重量部、10重量部及び15重量部の寒天及び残部の水を用い、固形飼料1〜12と同様にして固形飼料13〜25を製造した。
〔実施例26〜38〕
【0032】
25重量部の飼料原料A、B、Cと、1重量部、5重量部、10重量部及び15重量部の寒天及び残部の水を用い、固形飼料1〜12と同様にして固形飼料26〜38を製造した。
〔実施例39〜51〕
【0033】
30重量部の飼料原料A、B、Cと、1重量部、5重量部、10重量部及び15重量部の寒天及び残部の水を用い、固形飼料1〜12と同様にして固形飼料26〜38を製造した。
〔実施例52〜103〕
【0034】
寒天に代え、ゼラチンを用いた以外、固形飼料1〜51と同様にして固形飼料52〜103を製造した。
〔実施例104〜155〕
【0035】
寒天に代え、カラギーナンを用いた以外、固形飼料1〜51と同様にして固形飼料104〜155を製造した。
〔実施例156〜207〕
【0036】
寒天に代え、キサンタンガムとローカストビーンズの混合物を用いた以外、固形飼料1〜51と同様にして固形飼料156〜207を製造した。
〔比較例208〜220〕
【0037】
10重量部の飼料原料A、B、Cと、0.3重量部の寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガムとローカストビーンズの混合物と残部の水を添加して固形飼料208〜220を製造した。
〔比較例221〜233〕
【0038】
10重量部の飼料原料A、B、Cと、20重量部の寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガムとローカストビーンズの混合物と残部の水を添加して固形飼料221〜233を製造した。
【0039】
製造した固形飼料1〜233を甲長25cmのケヅメリクガメに与えた。固形飼料(実施例)1〜207及び固形飼料(比較例)208〜220はケヅメリクガメが喰いちぎることができ、摂餌することが確認されたが、固形飼料(比較例)221〜233はケヅメリクガメが喰いちぎって摂餌することができなかった。
【0040】
また、固形飼料(実施例)1〜207、固形飼料(比較例)208〜220及び固形飼料(比較例)221〜233のいずれもケヅメリクガメの飼育環境下に放置した時に、4時間が経過すると、表面が乾燥し始めたが、ケヅメリクガメが喰いちぎって摂餌していた。しかし、5時間後には表面が固くなってケヅメリクガメが摂餌しなくなった。
【0041】
固形飼料(実施例)1〜207及び固形飼料(比較例)221〜233はケヅメリクガメが踏みつけても潰れなかったが、固形飼料(比較例)208〜220はケヅメリクガメが踏みつけると、潰れてしまった。
【0042】
固形飼料(実施例)1〜207、固形飼料(比較例)208〜220及び固形飼料(比較例)221〜233のいずれもケヅメリクガメの甲羅などに付着しなかった。
【0043】
甲長の異なる他のケヅメリクガメ、他のリクガメ、グリーンイグアナなどのトカゲ、その他の爬虫類、蛙、イモリやサンショウウオなどの両生類についても摂餌性及び耐潰れ性について確認したところ、甲長25cmのケヅメリクガメと同様の結果が確認された。
【0044】
但し、爬虫類及び両生類のいずれであっても体長が大きいほど固形飼料を踏みつける荷重が大きくなるので、ゲル化剤の量を体長に応じて多くする方が望ましいことが確認された。
【0045】
また、家庭で飼育できる体長のリクガメやグリーンイグアナなどの場合には寒天で1.5重量部〜3重量部、ゼラチンで2重量〜4重量部、カラギーナンで1.5重量部〜3重量部、キサンカンガム及びローカストビーンズで2重量部〜4重量部に調製するのがよいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爬虫類・両生類が摂餌するのに適した固形飼料であって、
10重量部〜30重量部の飼料原料が、0.5重量部〜15重量部のゲル化剤及び残部の水分によって、爬虫類・両生類が摂餌できかつ爬虫類・両生類の重さで壊れない硬さに固形化されていることを特徴とする爬虫類・両生類の固形飼料。
【請求項2】
上記飼料原料は、野菜の粉末、穀物の粉末、動物質原料、果実の粉末、酵母、水溶性食物繊維、及び不溶性食物繊維の1又は複数を主成分としている請求項1記載の爬虫類・両生類の固形飼料。
【請求項3】
上記ゲル化剤は、寒天、ゼラチン、カラギーナン、あるいはキサンタンガムとローカストビーンズの混合物である請求項1記載の爬虫類・両生類の固形飼料。
【請求項4】
上記ゲル化剤の重量部は、0.5重量部〜15重量部の範囲内から爬虫類・両生類の大きさに応じて選ばれる値である請求項1記載の爬虫類・両生類の固形飼料。