説明

版貼装置及び版貼装置の版貼方法

【課題】刷版のトンボ等の見当標を版胴ローラの位置合わせ線に正確に合わせたうえで刷版を版胴ローラの外周面に貼着する。
【解決手段】刷版Pの一方向の一端側部を載置する第1載置台20と、第1載置台20と同一平面上に配置されて水平方向に移動可能に支持された第2載置台30と、第1載置台20上に上下方向に移動可能に設けられて載置した刷版が移動しないように仮止めする仮止め部材41と、第1載置台20と載置位置にある第2載置台30との間でこれらに載置した刷版Pの下面と近接する位置にて回転可能に支持された版胴ローラ50と、版胴ローラ50の上側に設けられて第1及び第2載置台20,30に載置した刷版Pの見当標P3と版胴ローラ50の位置合わせ線50aとを写すカメラ61,61と、版胴ローラ50の上側にて版胴ローラ50の軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラ71とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刷版を版胴ローラに貼着する版貼装置及び版貼装置の版貼方法に関し、特に刷版のトンボ等の見当標を版胴ローラの位置合わせ線に正確に合わせたうえで刷版を版胴ローラの外周面に貼着する版貼装置及び版貼装置の版貼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輪転機のような印刷機に用いる円筒形状の版胴ローラにおいては、印刷物に対応した刷版に形成されたトンボ等の見当標を版胴ローラの円周方向及び軸線方向に形成した位置合わせ線に合わせた状態にして、刷版を版胴ローラに貼着する必要がある。特に、複数の色を重ねて印刷する多色刷りの場合には、各色に対応した各刷版を各版胴ローラに正確に貼着しなければならなく、各刷版のうち1枚でも版胴ローラに正確な位置で貼着できていなければ所望の色とならなかった。
【0003】
このような刷版を版胴ローラに貼着させる作業は一般的には手作業で行われることが多いが、特許文献1には、刷版を版胴ローラに正確に貼着することを目的とした版貼装置が開示されている。この版貼装置は、刷版を保持可能な刷版設置部と、刷版が貼合される版胴ローラを回転可能に保持する版胴ローラ保持部とを備え、版胴ローラの外周面に刷版を接触させながら版胴ローラを回転することにより、版胴ローラの外周面に刷版を貼り合わせるものである。
【0004】
この版貼装置においては、刷版の未印刷領域に位置決めのための突部(見当標)が設けられ、刷版設置部は印刷面領域を吸着する吸着面と、この吸着面の外側位置で所定方向に沿って設けられるとともに、刷版を一定位置で保持したときに突部に当接可能となる位置決め部材とを備え、この位置決め部材には、所定方向における刷版の位置ずれを目視確認可能な目盛が形成されている。
【0005】
この版貼装置では、刷版設置部に刷版をセットする際に、刷版の突部を位置決め部材に当接させることで、所定方向に直交する方向に対する刷版の位置決めを簡単に行うことができ、位置決め部材の目盛を用いることで、所定方向に対する刷版の位置決めを行うことができるものである。これにより、刷版を面方向における位置ずれのない状態で刷版設置部に確実に保持させることができ、この状態を維持したままで刷版を版胴ローラの外周面に接触させて版胴ローラを回転することにより、刷版を版胴ローラの外周面に貼り合わせることが可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−136680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、刷版を版胴ローラに貼着させる貼着作業は、一般的に手作業で行われることが多いが、慣れた作業者でないと正確に貼着することができなかった。特に、この貼着作業においては、刷版の見当標を版胴ローラの位置合わせ線に合わせるときに、作業者の視点が各色に対応した各刷版によって異なると、刷版が版胴ローラの位置合わせ線から僅かにずれて貼着されることになっていた。また、刷版を版胴ローラに貼着させるときに、刷版を版胴ローラの軸方向に均等な圧力で押圧しないと、刷版が版胴ローラの軸線方向に傾いて貼着されることになっていた。
【0008】
また、上記の特許文献1の版貼装置を用いても、刷版を位置決め部材の目盛に合わせるときに、作業者の視点を常に同じ位置とすることができるわけでなく、また、刷版を版胴ローラに貼着させるときに、刷版を版胴ローラの軸方向に均等な圧力で押圧されないので、刷版が版胴ローラの軸線方向に傾いて貼着されることがあった。本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、凸版印刷用の透視可能な刷版の一方向の略中央部に形成されたトンボ等の見当標を版胴ローラの外周面の少なくとも円周方向または軸線方向に形成した位置合わせ線に合うようにして刷版を版胴ローラの外周面に貼着する版貼装置であって、刷版の一方向の一端側部を載置する第1載置台と、第1載置台と同一平面上に配置されて第1載置台と所定間隔を空けた状態で刷版の一方向の他端側部を載置する載置位置と刷版を載置しない非載置位置との間で水平方向に移動可能に支持された第2載置台と、第1載置台上に上下方向に移動可能に設けられて載置した刷版が移動しないように仮止めする仮止め部材と、第1載置台と載置位置にある第2載置台との間でこれらに載置した刷版の下面と近接する位置にて回転可能に支持された版胴ローラと、版胴ローラの上側に設けられて第1及び第2載置台に載置した刷版の見当標と版胴ローラの位置合わせ線とを写すカメラと、版胴ローラの上側にて版胴ローラを押圧する押圧位置と版胴ローラから離間する非押圧位置との間で上下方向に移動可能に支持されて押圧位置にあるときに版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラとを備えたことを特徴とする版貼装置を提供するものである。
【0010】
上記のように構成した版貼装置においては、刷版をその一方向の一端側部を第1載置台とその一方向の他端側部を載置位置にある第2載置台とに載置し、版胴ローラの上側に設けられたカメラにより第1及び第2載置台に載置した刷版の中央部に形成された見当標と版胴ローラの位置合わせ線とを常に同じ視点から映すようにしているので、作業者の視点の位置の違いによって刷版の見当標が版胴ローラの位置合わせ線に対してずれることがない。また、刷版を版胴ローラに押圧する押圧ローラは、刷版の一端側部と他端側部とを載置する第1載置台及び載置位置にある第2載置台間の上側に設けられているので、刷版を版胴ローラに貼着する際に刷版の中央部を先ず版胴ローラに貼着させることになり、刷版を一端側から位置合わせをして版胴ローラに貼着させたものと比較して、刷版が版胴ローラの軸線方向にずれにくくなる。また、押圧ローラは、版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにしているので刷版を版胴ローラに対して押圧して貼着させるときに刷版が軸線方向にずれにくくなる。さらに、刷版を版胴ローラに押圧する押圧ローラは、柔軟弾性体よりなるので、凹凸がある刷版に対しても版胴ローラの軸線方向に対して均等に押圧することができる。
【0011】
上記のように構成した版貼装置においては、カメラにより映された映像により刷版の見当標が版胴の位置合わせ線に合うようにして刷版を第1載置台及び載置位置にある第2載置台に載置した状態にして、仮止め部材により刷版を第1載置台に仮止めさせ、第2載置台を非載置位置に移動させ、押圧ローラを押圧位置に移動させて刷版の一方向の略中央部を版胴ローラに押圧して貼着させ、仮止め部材による刷版の仮止めを解除させ、版胴ローラを刷版の一端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間停止させ、版胴ローラを他方向に回転させて刷版の他端側を貼着させるように制御する制御装置を備えるようにするのが好ましく、押圧ローラにより刷版の中央部を版胴ローラに貼着させてから、版胴ローラを刷版の一端側が貼着されるように一方向にのみ回転させると、押圧ローラが版胴ローラに貼着されていない刷版の他端に引っかかって、刷版の他端側が折れ曲がるおそれがあるが、版胴ローラを一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間制止させてから、版胴ローラを他方向に回転させることで、押圧ローラが刷版の他端部に引っかかって、刷版の他端部が折れ曲がることがない。
【0012】
また、本発明は上記課題を解決するため、凸版印刷用の透視可能な刷版の一方向の略中央部に形成されたトンボ等の見当標を版胴ローラの少なくとも円周方向または軸線方向に形成した位置合わせ線に合うようにして刷版を版胴ローラの外周面に貼着する版貼方法であって、刷版の一方向の一端側部を載置する第1載置台と、第1載置台と同一平面上に配置されて第1載置台と所定間隔を空けた状態で刷版の一方向の他端側部を載置する載置位置と刷版を載置しない非載置位置との間で水平方向に移動可能に支持された第2載置台と、第1載置台上に上下方向に移動可能に設けられて載置した刷版が移動しないように仮止めする仮止め部材と、第1載置台と載置位置にある第2載置台との間でこれらに載置した刷版の下面と近接する位置にて回転可能に支持された版胴ローラと、版胴ローラの上側に設けられて第1及び第2載置台に載置した刷版の見当標と版胴ローラの位置合わせ線とを写すカメラと、版胴ローラの上側にて版胴ローラを押圧する押圧位置と版胴ローラから離間する非押圧位置との間で上下方向に移動可能に支持されて押圧位置にあるときに版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラとを備えた版貼装置の版貼方法であって、カメラにより映された映像により刷版の見当標を版胴の位置合わせ線に合うようにして刷版を第1載置台及び載置位置にある第2載置台に載置するステップと、仮止め部材により刷版を第1載置台に仮止めするステップと、第2載置台を非載置位置に移動させるステップと、押圧ローラを押圧位置に移動させて刷版の一方向の略中央部を版胴ローラを押圧するステップと、仮止め部材による刷版の仮止めを解除するステップと、版胴ローラを刷版の他端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間制止させるステップと、版胴ローラを他方向に回転させて刷版の他端側を貼着するステップとからなることを特徴とする版貼装置の版貼方法を提供するものである。
【0013】
上記のように構成した版貼装置においては、刷版をその一方向の一端側部を第1載置台とその一方向の他端側部を載置位置にある第2載置台とに載置し、版胴ローラの上側に設けられたカメラにより第1及び第2載置台に載置した刷版の中央部に形成された見当標と版胴ローラの位置合わせ線とを常に同じ視点から映すようにしているので、作業者の視点の位置の違いによって刷版の見当標が版胴ローラの位置合わせ線に対してずれることがない。また、刷版を版胴ローラに押圧する押圧ローラは、刷版の一端側部と他端側部とを載置する第1及び第2載置台間の上側に設けられているので、刷版を版胴ローラに貼着する際に刷版の中央部を先ず版胴ローラに貼着させることになり、刷版を一端側から位置合わせをして版胴ローラに貼着させたものと比較して、刷版が版胴ローラの軸線方向にずれにくくなる。また、押圧ローラは、版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにされるので版胴ローラに対して貼着させる刷版が軸線方向にずれにくくなる。さらに、刷版を版胴ローラに押圧する押圧ローラは、柔軟弾性体よりなるので、凹凸がある刷版に対しても版胴ローラの軸線方向に対して均等に押圧することができる。また、カメラにより映された映像により刷版の見当標を版胴の位置合わせ線に合うようにして刷版を第1載置台及び載置位置にある第2載置台に載置するステップと、仮止め部材により刷版を第1載置台に仮止めするステップと、第2載置台を非載置位置に移動させるステップと、押圧ローラを押圧位置に移動させて刷版の一方向の略中央部を版胴ローラを押圧するステップと、仮止め部材による刷版の仮止めを解除するステップと、版胴ローラを刷版の他端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間制止させるステップと、版胴ローラを他方向に回転させて刷版の他端側を貼着するステップとからなる貼着方法であるので、押圧ローラにより刷版の中央部を版胴ローラに貼着させてから、版胴ローラを刷版の一端側が貼着されるように一方向にのみ回転させる貼着方法となると、押圧ローラが版胴ローラに貼着されていない刷版の他端に引っかかって、刷版の他端側が折れ曲がるおそれがあるが、版胴ローラを一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間制止させてから、版胴ローラを他方向に回転させることで、押圧ローラが刷版の他端部に引っかかって、刷版の他端部が折れ曲がることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】刷版を示す斜視図である。
【図2】版胴ローラを示す斜視図である。
【図3】版貼装置の平面図である。
【図4】版貼装置の一部破断正面図である。
【図5】版貼装置の作動状態を示す図である(1)。
【図6】版貼装置の作動状態を示す図である(2)。
【図7】版貼装置の作動状態を示す図である(3)。
【図8】版貼装置の作動状態を示す図である(4)。
【図9】版貼装置の制御装置のブロック図である。
【図10】版貼装置の制御装置のプログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明による版貼装置の一実施形態を図面を参照して説明する。図1に示すように、刷版Pは例えばポリアミド系、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂によって透視可能な略長方形のシート状をしている。刷版Pは、周縁部を除く領域に凹凸形状が形成された印刷領域P1と、周縁部に非印刷領域P2とを備えている。刷版Pの非印刷領域P2には、刷版Pの位置決めのためのトンボと呼ばれる見当標P3が付されている。一般的に、刷版Pには、その天地方向(一方向)の両端側で左右方向(一方向と直交する他方向)の中心位置と、左右方向の両端側で天地方向の中心位置とにセンター用の見当標P3が付されており、刷版Pの各角部には、印刷物の仕上がりサイズ用の見当標P4が付されている。なお、以下の説明においては、刷版Pは、版貼装置10の各載置台20,30に載置した方向に関わらず、その方向を印刷物に対する刷版Pの天地方向及び左右方向により説明する。図2に示すように、版胴ローラ50は円筒形状をしており、版胴ローラ50の外周面には、刷版Pを正確に貼着させるために円周方向と軸線方向とに位置合わせ線50aが形成されている。
【0016】
本発明に係る版貼装置10は、刷版Pの左右方法の両端側で天地方向の中心位置の見当標P3を版胴ローラ50の位置合わせ線50aに合わせた状態にして刷版Pを版胴ローラ50の外周面に正確に貼着するためのものである。しかして、この版貼装置10は、刷版Pの一方向(天地方向)の一端側部を載置する第1載置台20と、第1載置台20と同一平面上に配置されて第1載置台20と所定間隔を空けた状態で刷版Pの一方向の他端側部を載置する載置位置と刷版Pを載置しない非載置位置との間で水平方向に移動可能に支持された第2載置台30と、第1載置台20の上側に上下方向に移動可能に設けられて載置した刷版Pが移動しないように仮止めする仮止め部材41と、第1載置台20と載置位置にある第2載置台30との間でこれらに載置した刷版Pの下面と近接する位置にて回転可能に支持された版胴ローラ50と、版胴ローラ50の上側に設けられて第1及び第2載置台20,30に載置した刷版Pの見当標P3と版胴ローラ50の位置合わせ線50aとを写すカメラ61と、版胴ローラ50の上側にて版胴ローラ50を押圧する押圧位置と版胴ローラ50から離間する非押圧位置との間で上下方向に移動可能に支持されて押圧位置にあるときに版胴ローラ50の軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラ71とを備えたことを特徴とする。以下に、この版貼装置10について詳述する。
【0017】
図3及び図4に示すように、この版貼装置10は、ケーシング11と、第1載置台20と、第2載置台30と、第1載置台20上で刷版Pを仮止めする仮止め装置40と、版胴ローラ50と、映像装置60と、押圧装置70とを備えている。
【0018】
版貼装置10のケーシング11の上部には、刷版Pの天地方向(一方向)の一端側部を載置する第1載置台20が設けられている。第1載置台20には、載置した刷版Pの位置調整をする版送り駒21,22が回転可能に設けられている。これら版送り駒21,22は、第1載置台20の前後方向に並んで配置されており、これら版送り駒21,22はケーシング11の正面パネルに設けられた各操作ハンドル23,24の操作により回転して、載置した刷版Pの細かな位置調整を可能とする。
【0019】
ケーシング11の上部には、第1載置台20の同一平面上に刷版Pの天地方向(一方向)の他端側を載置する第2載置台30が水平方向に移動可能に設けられている。この第2載置台30は、第1載置台20と所定間隔を空けた状態で刷版Pの天地方向の他端側を載置する載置位置(図3及び図4の実線により示す)と、刷版Pを載置しない非載置位置(図3及び図4の2点差線により示す)との間で水平方向に移動可能となっている。第2載置台30には載置台用モータ31が設けられており、この載置台用モータ31は第2載置台30を載置位置と非載置位置との間を移動させるものである。
【0020】
ケーシング11の上部には、第1載置台20上に載置した刷版Pを仮止めする仮止め装置40が設けられている。仮止め装置40は、第1載置台20の上側で上下方向に移動可能にケーシング11に支持された仮止め板(仮止め部材)41と、この仮止め板41を上側に付勢するばね部材と、仮止め板41の前後方向の両端を下方に押圧するエアシリンダ42,42とを備えている。仮止め板41は、第1載置台20の第2載置台30側となる端部にて前後方向に延出して配置されており、その前後方向の両端部が上記のばね部材により上方に付勢されている。エアシリンダ42,42は、仮止め板41の前後方向の両端部の上側となる位置でケーシング11に固定されており、エアシリンダ42,42は、その作動によりばね部材の付勢力に抗して仮止め板41を第1載置台20に押さえつけるものである。
【0021】
版胴ローラ50は、第1載置台20と載置位置にある第2載置台30との間でこれらの下側にて版胴ローラホルダ51に回転可能に支持されている。版胴ローラ50は、その軸線方向が第1及び第2載置台20,30を結ぶ線と交差する向きに版胴ローラホルダ51に着脱可能かつ回転可能に取り付けられている。版胴ローラホルダ51には、版胴ローラ回転用モータ52が設けられており、版胴ローラ回転用モータ52は版胴ローラ50を時計回り(一方向)及び反時計回り(他方向)に回転させるものである。
【0022】
また、版胴ローラホルダ51には、版胴ローラ移動用モータ53が設けられており、この版胴ローラ移動用モータ53は、これにより回転するピニオンギアによりケーシング11内に立設されたラックギア54と噛合して版胴ローラ50を第1及び第2載置台20,30上に載置された刷版Pの下面と近接する貼着位置と、この貼着位置より下側の非貼着位置との間で上下方向に移動させる。また、版胴ローラ50が非貼着位置の高さ位置にあるときに、版胴ローラホルダ51は水平方向に移動可能となっており、版胴ローラホルダ51をケーシング11の右側部位置に引き出して版胴ローラ50を着脱させることができる。なお、版胴ローラ50が貼着位置にあるときには、版胴ローラ50の円周面の上側の頂部が刷版Pの下面から5mm低い位置となっているが、本発明はこれに限られるものでない。
【0023】
映像装置60は、2つカメラ61,61と、これらのカメラ61,61の映像を表示するモニタ64とからなり、2つのカメラ61,61により第1及び第2載置台20,30上に載置した刷版Pの左右両端側で天地方向の中心部に付した見当標P3と刷版Pを透視して映し出される貼着位置にある版胴ローラ50の位置合わせ線50aとを映し、これらカメラ61,61の映像をモニタ65に表示させるものである。ケーシング11の上部には、第1及び第2載置台20,30の上側に一対の第1レール62,62が設けられており、これら第1レール62,62には、映像装置用モータ63により移動するベース体64が水平方向に移動可能に取り付けられている。ベース体64には、2つのカメラ61,61が固定されており、ベース体64がレール62,62に沿って移動することで、2つのカメラ61,61は、第1及び第2載置台20,30の上側を水平方向に移動可能となっている。各カメラ61,61は、刷版Pの左右両端側に付された各々の見当標P3を映すためのものである。なお、各カメラ61,61は、刷版Pの大きさに応じて前後位置(刷版Pの左右の幅方向)に位置調整可能にベース体64に固定されている。また、ケーシング11の上部には、これらカメラ61,61の映像を表示するモニタ65が設けられている。
【0024】
押圧装置70は、刷版Pを版胴ローラ50に押圧する押圧ローラ71と、押圧ローラ71を下側に移動させて版胴ローラ50に押圧させるエアシリンダ72とを備えている。ケーシング11の上部には、第1レール62,62の内側に第2レール73,73が設けられており、これら第2レール73,73には、押圧ローラ71を支持する支持部材74,74が水平方向に移動可能に取り付けられている。なお、支持部材74,74には、これを第2レール73,73に沿って移動させる押圧装置用モータ75が設けられている。押圧ローラ71は、シリコン樹脂等の柔軟弾性体よりなり、軸線方向の両端を各支持部材74,74に回転可能かつ上下方向に移動可能に支持されている。また、押圧ローラ71は、外力が付与されていない状態では、軸線方向の両端部に設けられたばね部材により上方に付勢されている。支持部材74,74には、押圧ローラ71を下方に移動させて版胴ローラ50に押圧させるエアシリンダ72,72が設けられている。押圧ローラ71が貼着位置にある版胴ローラ50の上側に位置するときに、押圧ローラ71はエアシリンダ72,72の作動時に下方に移動して版胴ローラ50を押圧する押圧位置と、エアシリンダ72,72の非作動時にばね部材による付勢により版胴ローラ50から離間する非押圧位置との間で移動可能である。
【0025】
版貼装置10は、載置台用モータ31、エアシリンダ42,42、版胴ローラ回転用モータ52、版胴ローラ移動用モータ53、カメラ61,61、映像装置用モータ63、モニタ65、エアシリンダ72,72,押圧装置用モータ75に接続された制御装置80を備えており、この制御装置80は、内蔵するマイクロコンピュータが図10に示すプログラムを実行して各機器の作動を制御するものである。
【0026】
上記のように構成した版貼装置10による刷版Pを版胴ローラ50に貼着する版貼方法について説明する。版貼装置10の版貼前における初期状態では、第2載置台30は載置位置にあり、版胴ローラ50は貼着位置にあり、映像装置60のカメラ61,61は貼着位置にある版胴ローラ50の円周面の上側の頂部の上方の位置にある。このような状態で、刷版Pの左右両側で天地方向の中心に付された見当標P3が第1及び第2載置台20,30との間となるようにして、刷版Pを第1及び第2載置台20,30上に載置する。
【0027】
モニタ65には、カメラ61,61により映される刷版Pの左右両側の見当標P3と、刷版Pの下側に透視される版胴ローラ50の位置合わせ線50aとが表示され、モニタ65により確認しながら各操作ハンドル23,24を操作して各版送り駒21,22を回転させて、刷版Pの見当標P3を版胴ローラ50の位置合わせ線50aに合わせる。
【0028】
次ぎに、図示しないスイッチをオンさせると、制御装置80は、図10に示す以下のステップにより刷版Pを版胴ローラ50に貼着させる。制御装置80は、ステップ101において、エアシリンダ42,42を作動させて仮止め板41を下方に移動させて刷版Pの一端側を第1載置台20上に仮止めする。制御装置80は、ステップ102において、載置台用モータ31を作動させて、図5に示すように第2載置台30を非載置位置まで移動させる。制御装置80は、ステップ103において、映像装置用モータ63を作動させて映像装置60を第1レール62,62に沿って左側に移動させて、映像装置60が貼着位置にある版胴ローラ50の上側にない位置に退避させる。
【0029】
制御装置80は、ステップ104において、押圧装置用モータ75を作動させて、押圧ローラ71が貼着位置にある版胴ローラ50の円周面の上側の頂部の上方に移動させる。制御装置80は、ステップ105において、図6に示すように両エアシリンダ72,72を作動させて押圧ローラ71を版胴ローラ50に押圧させ、刷版Pの天地方向の略中央部を版胴ローラ50に貼着させる。制御装置80は、ステップ106において、エアシリンダ42,42の作動を解除して刷版Pを第1載置台20上にて移動可能にする。
【0030】
制御装置80は、ステップ107において、図7に示すように版胴ローラ回転用モータ52を作動させて版胴ローラ50を時計回りに所定角度回転させて3秒間(所定時間)停止させる。なお、版胴ローラ50の回転角度は、刷版Pの一方向の半分の長さが貼着されるのに対応した角度となっており、刷版Pの一方向の長さによって変更可能なものである。版胴ローラ50が所定角度回転すると刷版Pの一端側が版胴ローラ50に貼着され、版胴ローラ50が回転後に3秒間停止すると刷版Pの一端が版胴ローラ50に3秒間押圧されて確実に貼着される。制御装置80は、ステップ108において、図8に示すように版胴ローラ回転用モータ52を作動させて版胴ローラ50を反時計回りに3回転させると、刷版Pの他端側が押圧ローラ71により版胴ローラ50に押圧されて貼着された後で、刷版Pは押圧ローラ71により一端側から他端側へと繰り返し押圧されて版胴ローラ50に確実に貼着される。制御装置80は、ステップ110において、版胴ローラ移動用モータ53を作動させて版胴ローラ50を貼着位置から非貼着位置に移動させて終了する。
【0031】
また、版貼装置10においては、刷版Pが版胴ローラ50の軸線方向に曲がって貼着されたか否かを次の手順で確認することができる。版貼装置10においては、刷版Pを貼着した版胴ローラ50が貼着位置にあり、映像装置60のカメラ61,61が版胴ローラ50の円周面の上側の頂部の上方位置にあるようにし、各カメラ61,61を刷版Pの左右方向の両端を映すことが可能な位置に移動させる。モニタ65には、版胴ローラ50の軸線方向に直交する方向の線を基準線として表示させて、図示しない操作ボタンによりこの基準線を刷版Pの左右方向の両端に合うように平行移動させる。このような状態で版胴ローラ回転用モータ52を作動させると、モニタ65には、基準線65aと、回転しながら表示される刷版Pの左右方向の両端が表示され、回転しながら表示される刷版Pの左右方向の両端が基準線65aと合致していれば、刷版Pは軸線方向に正確に貼着されていることになる。
【0032】
上記のように構成した版貼装置10においては、刷版Pをその一方向の一端側部を第1載置台20とその一方向の他端側部を載置位置にある第2載置台30とに載置し、版胴ローラ50の上側に設けられたカメラ61,61により第1及び第2載置台20,30に載置した刷版Pの中央部に形成された見当標P3と版胴ローラ50の位置合わせ線50aとを常に同じ視点から映すようにしているので、作業者の視点の位置の違いによって刷版Pの見当標P3が版胴ローラ50の位置合わせ線50aに対してずれることがない。また、刷版Pを版胴ローラ50に押圧する押圧ローラ71は、刷版Pの一端側部と他端側部とを載置する第1及び第2載置台20,30間の上側に設けられているので、刷版Pを版胴ローラ50に貼着する際に刷版Pの中央部を先ず版胴ローラ50に貼着させることになり、刷版Pを一端側から位置合わせをして版胴ローラ50に貼着させたものと比較して、刷版Pが版胴ローラ50の軸線方向にずれにくくなる。また、押圧ローラ71は、版胴ローラ50の軸線方向に均等に押圧するようにされるので版胴ローラ50に対して貼着させる刷版Pが軸線方向にずれにくくなる。さらに、刷版Pを版胴ローラ50に押圧する押圧ローラ71は、柔軟弾性体よりなるので、凹凸の形成された刷版Pに対しても版胴ローラ50の軸線方向に対して均等に押圧することができる。
【0033】
上記のように構成した版貼装置10においては、カメラ61,61により映された映像により刷版Pの見当標P3が版胴ローラ50の位置合わせ線50aに合わせて刷版Pを第1及び第2載置台20,30に載置した状態にして、版胴ローラ50が貼着位置にある状態で押圧ローラ71を下側に移動させて刷版Pの天地方向(一方向)の略中央部を版胴ローラ50に押圧して貼着させ、版胴ローラ50を刷版Pの他端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて刷版の一端を押圧した状態で所定時間として3秒間停止させ、版胴ローラ71を他方向に回転させて刷版Pの他端側を貼着するように制御する制御装置80を備えているので、押圧ローラ71により刷版Pの中央部を版胴ローラ50に貼着させてから、版胴ローラ50を刷版Pの一端側が貼着されるように一方向にのみ回転させると、押圧ローラ71が版胴ローラ50に貼着されていない刷版の他端に引っかかって、刷版Pの他端側が折れ曲がるおそれがあるが、版胴ローラ50を一方向に所定角度回転させて刷版Pの一端を押圧した状態で所定時間制止させてから、版胴ローラ50を他方向に回転させることで、押圧ローラ71が刷版Pの他端部に引っかかって、刷版Pの他端部が折れ曲がることがない。
【0034】
上記の刷版装置10においては、刷版Pの一方向を天地方向として説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、刷版Pの一方向を刷版Pの左右方向にして各載置台20,30に載置して版胴ローラ50に貼着させるものでも同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
10…版貼装置、20…第1載置台、30…第2載置台、41…仮止め部材、50…版胴ローラ、61…カメラ、71…押圧ローラ、80…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸版印刷用の透視可能な刷版の一方向の略中央部に形成されたトンボ等の見当標を版胴ローラの外周面の少なくとも円周方向または軸線方向に形成した位置合わせ線に合うようにして前記刷版を前記版胴ローラの外周面に貼着する版貼装置であって、
前記刷版の前記一方向の一端側部を載置する第1載置台と、
前記第1載置台と同一平面上に配置されて前記第1載置台と所定間隔を空けた状態で前記刷版の前記一方向の他端側部を載置する載置位置と前記刷版を載置しない非載置位置との間で水平方向に移動可能に支持された第2載置台と、
前記第1載置台上に上下方向に移動可能に設けられて載置した前記刷版が移動しないように仮止めする仮止め部材と、
前記第1載置台と前記載置位置にある第2載置台との間でこれらに載置した前記刷版の下面と近接する位置にて回転可能に支持された前記版胴ローラと、
前記版胴ローラの上側に設けられて前記第1及び第2載置台に載置した前記刷版の見当標と前記版胴ローラの位置合わせ線とを写すカメラと、
前記版胴ローラの上側にて前記版胴ローラを押圧する押圧位置と前記版胴ローラから離間する非押圧位置との間で上下方向に移動可能に支持されて前記押圧位置にあるときに前記版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラとを備えたことを特徴とする版貼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の版貼装置において、
前記カメラにより映された映像により前記刷版の見当標が前記版胴の位置合わせ線に合うようにして前記刷版を前記第1載置台及び前記載置位置にある第2載置台に載置した状態にして、
前記仮止め部材により前記刷版を前記第1載置台に仮止めさせ、
前記第2載置台を前記非載置位置に移動させ、
前記押圧ローラを前記押圧位置に移動させて前記刷版の前記一方向の略中央部を前記版胴ローラに押圧して貼着させ、
前記仮止め部材による前記刷版の仮止めを解除させ、
前記版胴ローラを前記刷版の一端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて前記刷版の一端を押圧した状態で所定時間停止させ、
前記版胴ローラを他方向に回転させて前記刷版の他端側を貼着させるように制御する制御装置を備えたことを特徴とする版貼装置。
【請求項3】
凸版印刷用の透視可能な刷版の一方向の略中央部に形成されたトンボ等の見当標を版胴ローラの少なくとも円周方向または軸線方向に形成した位置合わせ線に合うようにして前記刷版を前記版胴ローラの外周面に貼着する版貼方法であって、
前記刷版の一方向の一端側部を載置する第1載置台と、
前記第1載置台と同一平面上に配置されて前記第1載置台と所定間隔を空けた状態で前記刷版の前記一方向の他端側部を載置する載置位置と前記刷版を載置しない非載置位置との間で水平方向に移動可能に支持された第2載置台と、
前記第1載置台上に上下方向に移動可能に設けられて載置した前記刷版が移動しないように仮止めする仮止め部材と、
前記第1載置台と前記載置位置にある第2載置台との間でこれらに載置した前記刷版の下面と近接する位置にて回転可能に支持された版胴ローラと、
前記版胴ローラの上側に設けられて前記第1及び第2載置台に載置した前記刷版の見当標と前記版胴ローラの位置合わせ線とを写すカメラと、
前記版胴ローラの上側にて前記版胴ローラを押圧する押圧位置と前記版胴ローラから離間する非押圧位置との間で上下方向に移動可能に支持されて前記押圧位置にあるときに前記版胴ローラの軸線方向に均等に押圧するようにした柔軟弾性体よりなる押圧ローラとを備えた版貼装置の版貼方法であって、
前記カメラにより映された映像により前記刷版の見当標を前記版胴の位置合わせ線に合うようにして前記刷版を前記第1載置台及び前記載置位置にある第2載置台に載置するステップと、
前記仮止め部材により前記刷版を前記第1載置台に仮止めするステップと、
前記第2載置台を前記非載置位置に移動させるステップと、
前記押圧ローラを前記押圧位置に移動させて前記刷版の前記一方向の略中央部を前記版胴ローラを押圧するステップと、
前記仮止め部材による前記刷版の仮止めを解除するステップと、
前記版胴ローラを前記刷版の他端側が貼着されるように一方向に所定角度回転させて前記刷版の前記一端を押圧した状態で所定時間制止させるステップと、
前記版胴ローラを他方向に回転させて前記刷版の他端側を貼着するステップとからなることを特徴とする版貼装置の版貼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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