説明

物体検知装置及び物体検知方法

【課題】検知領域内を移動する検知対象をより正確に検知可能な物体検出技術を提供する。
【解決手段】センサ制御部102は、測距センサ101から送信された検知信号に基づいて、検知人体までの距離を算出する。切替制御部104は、センサ制御部102が算出した検知人体までの距離に基づいて、赤外線を放射させる発光素子を決定し、決定した発光素子に切り替える旨の切替信号を測距センサ101に送信する。警報出力部106は、検知領域内で人体が検知された場合に、警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知領域内にある検知対象を検知する物体検知装置及び物体検知方法に関し、特に、水平方向に移動する検知対象を検知可能な物体検知装置及び物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動する検知対象を検知する技術として、例えば、赤外線を投光する投光器と、投光器から投光された赤外線を受光する受光器とを備えた対向型センサがある。この対向型センサにおいては、投光器から投光される赤外線が検知対象の人体の動線に対し垂直に投光されるよう投光器を設置し、これに対向させて受光器を設置する。そして、投光器から投光された赤外線が人体により遮断され受光器で受光されない場合に、投光器と受光器との間にある人体を検知する。また、この対向型センサを2組設置し、人体を検知した対向型センサの順番により、検知対象の人体(検知人体)の移動方向を検知できる。
【0003】
しかし、このような対向型センサは、投光器と受光器とを対向させて別々に設置しなければならず、且つ投光器と受光器の光軸の調整作業が発生するなど、設置の簡易性において問題点が存在する。また、環境からの振動外乱により光軸がずれることがあり、メンテナンス性においても問題が存在する。
【0004】
近年では、その内部に発光器と受光器との両方を備える測距センサが開発されている。例えば、特許文献1に開示されている測距センサにおいては、測距センサ内部に備わる発信器が基線長の異なる複数の発光素子を有し、この発光素子を選択的に切り替えることにより、複数の発光素子に各々対応する測定距離の換算方法を切り替えて測距する。このような測距センサにより、検知人体を検知すると共に、その物体との距離を測定することができる。
【0005】
また、特許文献2には、1つの発光素子と、複数の受光素子を備えた多点光センサが開示されている。この多点光センサにおいては、マルチビーム光源が出射した光ビームが回折格子により屈折されて扇状に放射され、放射された光によって形成される検知エリア内を移動する検知人体の移動方向及び移動速度が検出される。
【0006】
【特許文献1】特開2004−317253号公報
【特許文献2】特開平9−274839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に示される測距センサにおいては、複数の発光素子を切り替えるので、移動速度の速い検知対象を検知するためには、発光素子の切り替え速度を向上させる必要がある。しかし、切り替え速度を向上させることには限界があるため、ある速度以上の速度で移動する検知対象を検知できない恐れがある。特に、測距センサと検知対象との距離が近いほど、単位時間当たりに1つの発光素子により検知できる範囲は狭くなるため、その恐れは顕著である。
【0008】
一方、特許文献2に示される多点光センサにおいては、1つの発光素子から発光された光を回折格子により屈折させて放射させているため、その光は減衰している。このため、多点光センサが検知できる検知対象との距離はかなり限られたものになり、その距離が遠くなるほど検知対象を検知できなくなる恐れがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検知領域内を移動する検知対象をより正確に検知可能な物体検出装置及び物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明にかかる物体検知装置は、発信波を発信する複数の発信素子と、受信素子とを有し、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信する発信素子を切り替え、切り替えた前記発信素子から発信した発信波が検知対象に反射した反射波を前記受信素子が受信することにより検知領域内の前記検知対象を検知するセンサの有する前記発信素子が発信波を発信してから前記受信素子が前記反射波を受信するまでの時間に基づいて、前記検知対象までの距離を算出する測距手段と、前記測距手段が算出した前記検知対象までの距離に基づいて、前記センサの有する発光素子のうち前記発信波を発信させる発信素子の数を変更する制御を行う変更制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明にかかる物体検知装置は、請求項1に記載の物体検知装置において、前記変更制御手段は、前記検知対象までの距離が所定距離より小さいか否かを判定し、当該判定結果が肯定的である場合、前記発信波を発信させる発信素子の数を減じる制御を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明にかかる物体検知装置は、請求項2に記載の物体検知装置において、前記変更制御手段は、前記判定結果が肯定的である場合、前記複数の発信素子のうち所定の発信素子から発信波を発信させる制御を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明にかかる物体検知装置は、請求項2に記載の物体検知装置において、前記センサは、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信させる発信素子を配置された順番にしたがって切り替え、前記変更制御手段は、前記判定結果が肯定的である場合、次に切り替える発信素子の順番を少なくとも1つ飛ばす制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明にかかる物体検知装置は、請求項1に記載の物体検知装置において、前記複数の発信素子が水平方向に配列された状態に前記センサが設置され、前記発信素子は、前記水平方向に所定の放射角度で放射状に拡散する発信波を発信し、前記検知領域は、前記複数の発信素子が各々発信した発信波が放射状に拡散した各放射領域から構成され、前記センサは、前記放射領域毎に、当該放射領域にある検知対象を検知し、前記測距手段は、前記放射領域毎に、当該放射領域における前記検知対象までの距離を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明にかかる物体検知装置は、請求項3に記載の物体検知装置において、前記所定距離は、前記所定の放射角度と、前記検知対象の前記水平方向における幅とに基づいて設定可能であることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明にかかる物体検知装置は、請求項2に記載の物体検知装置において、前記センサが第1の前記放射領域において前記検知対象を検知したときの第1の検知時間において前記測距手段が算出した前記検知対象までの第1の距離と、前記センサが第2の前記放射領域において前記検知対象を検知したときの第2の検知時間において前記測距手段が算出した前記検知対象までの第2の距離と、前記第1の放射領域から前記第2の放射領域までの領域範囲との角度に基づいて、前記検知対象の移動距離を算出し、算出した移動距離と前記第1の検知時間及び第2の検知時間とを用いて、前記検知対象の移動速度を算出する移動速度算出手段を更に備え、前記変更制御手段は、前記移動速度算出手段が算出した移動速度に基づいて、前記判定に用いる所定距離を変更することを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明にかかる物体検知装置は、請求項7に記載の物体検知装置において、前記変更制御手段は、前記移動速度算出手段が算出した前記移動速度が所定速度より小さい場合、前記所定距離より大きい第2所定距離を用いて、前記検知対象までの距離が当該第2所定距離より小さいか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明にかかる物体検知方法は、発信波を発信する複数の発信素子と、受信素子とを有し、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信する発信素子を切り替え、切り替えた前記発信素子から発信した発信波が検知対象に反射した反射波を前記受信素子が受信することにより検知領域内の前記検知対象を検知するセンサの有する前記発信素子が発信波を発信してから前記受信素子が前記反射波を受信するまでの時間に基づいて、前記検知対象までの距離を算出する測距ステップと、前記測距ステップで算出した前記検知対象までの距離に基づいて、前記センサの有する発光素子のうち前記発信波を発信させる発信素子の数を変更する制御を行う変更制御ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検知対象までの距離に基づいて、センサの有する発光素子のうち発信波を発信させる発信素子の数を変更させることにより、検知領域内を移動する検知対象をより正確に検知することが可能になる。
【0020】
また、本発明によれば、検知対象の移動速度に基づいて、センサの有する発光素子のうち発信波を発信させる発信素子の数を変更するための判定に用いる所定距離を変更することにより、検知領域内を移動する検知対象をより正確に検知することが可能になる。
【0021】
また、複数の放射領域で検知対象を検知することができるため、検知対象が移動する方向を検知可能であり、検知対象をより正確に検知することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる物体検知装置、警備装置、物体検知方法および警備方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明の物体検知装置を、検知領域内で人物を検知した場合に警報を発する警備装置に適用した例を説明しているが、これに限定されるものではなく、物体を検知するものであれば、いずれの装置にも適用することができる。
【0023】
[実施の形態1]
(1)構成
図1は、実施の形態1にかかる警備装置100の機能的構成を示すブロック図である。実施の形態1にかかる警備装置100は、検知領域内で異常を検知した場合に警報を発する装置である。図1に示すように、警備装置100は、単一の測距センサ101と接続され、センサ制御部102と、切替制御部104と、警報出力部106と、一時記憶部103とを主に備えた構成となっている。
【0024】
測距センサ101は、複数の発光素子と単一の受光素子とを有し、検知領域の水平方向に設置される。各発光素子は、水平方向に所定の放射角度で放射状に赤外線を放射し、その反射光を受光素子が受光する。検知領域内に人体が存在する場合、発光素子が放射した赤外線が人体において反射し、人体から拡散反射された赤外線を受光素子が受光することにより、この人体を検知することができる。具体的には、複数の発光素子のうち1つずつ発光素子を電気的に切り替え、切り替えた発光素子から赤外線を放射させる。切り替えた順に各発光素子から放射された赤外線の反射光を受光素子で受光する。尚、検知領域は、各発光素子が放射した赤外線によってこの放射角度で放射状に拡散された各領域(放射領域とする)から構成される。また、ここでは、各発光素子の放射角度は、すべて略同一であるものとする。各発光素子から赤外線を放射する放射時間を一定にし、測距センサ101は、この放射時間毎に赤外線を放射させる発光素子を順次切り替える。複数のうちいずれの発光素子に切り替えるかは、後述する切替制御部104が制御する。また、測距センサ101は、受光素子で受光した反射光の信号(以下、検知信号という)をセンサ制御部102に送信する。
【0025】
センサ制御部102は、測距センサ101から送信された反射光の信号(検知信号)をA/D変換して、発光素子から赤外線が放射されてから反射光が受光されるまでの時間に基づいて、検知人体までの距離を算出し、これを一時記憶部103に記憶させる。一時記憶部103は、RAM等の記憶媒体であり、センサ制御部102が算出した測距センサ101から検知人体までの距離を一時的に記憶する。
【0026】
切替制御部104は、センサ制御部102が算出した検知人体までの距離に応じて、人体の検知に用いる発光素子の数を変更する。具体的には、切替制御部104は、センサ制御部102が算出した検知人体までの距離に基づいて、赤外線を放射させる発光素子を決定し、決定した発光素子に切り替える旨の切替信号を測距センサ101に送信する。
【0027】
センサ情報記憶部105は、メモリ、ハードディスクドライブ装置(HDD)等の記憶媒体である。センサ情報記憶部105は、発光素子が放射する赤外線の放射角度や、水平方向における検知人体の幅や、切替制御部104が発光素子の数を変更する際に用いる閾値等の情報を記憶する。なお、これらの情報の詳細については後述する。
【0028】
警報出力部106は、センサ制御部102の制御の下、検知領域内で人体が検知された場合に、警報を出力する。
【0029】
図2は、検知領域に測距センサ101を設置した状態を上方から見た状態を示す概略図である。ここでは、測距センサ101の発光素子は5個設けられているものとする。図2に示すように、測距センサ101は、水平方向に移動する人体Pを検知すべく、複数の発光素子が水平方向に配列された状態となるように設置される。測距センサ101の有する複数の発光素子は各々放射状に赤外線を放射する。複数の発光素子が各々赤外線を放射する放射領域を各々放射領域AR1〜AR5とする。この放射領域AR1〜AR5を統合した検知領域は、図2に示すように扇状になる。複数の発光素子は、そのうちの1つが所定の時間毎に切替制御部102からの切替信号に応じて選択される。選択された発光素子が赤外線を順次放射することにより、検知に用いられる発光素子が順次切り替わり、検知が行われる放射領域AR1〜AR5が順次切り替わる。
【0030】
次に、切替制御部104が発光素子を切り替える際に用いる閾値(所定距離)について説明する。所定距離は、発光素子が放射する赤外線の放射角度と、水平方向における検知人体Pの幅とに応じて設定される。尚、本実施の形態においては、所定距離は予め設定されているものとする。しかし、例えば、検知人体Pの幅自体が検出可能である場合、検出した当該幅と、上述の放射角度とに応じて検出の都度所定距離を設定するように構成しても良い。図2において、太線で囲まれた領域が検知人体Pの断面積を示す部分である。Wは水平方向における検知人体Pの幅を示す。また、図3は、1つの放射領域AR1を概略的に表した図である。尚、上述したように各発光素子の放射角度はすべて略同一であるため、各放射領域AR1〜AR5は略同一の大きさである。これらの図2,3においては、θは発光素子の放射角度を示し、Lは、放射領域で算出された測距センサ101から検知人体Pまでの距離を示す。このとき、各放射領域の領域幅ARWは、(1)式で表すことができる。
【数1】

【0031】
このような領域幅ARWは、測距センサ101から検知人体Pまでの距離Lが大きいほど大きくなり、当該距離Lが小さいほど小さくなる。従って、各放射領域の水平方向において検知可能な検知人体Pの幅及び検知人体Pが移動したときの移動幅は、距離Lが大きいほど大きくなり、距離Lが小さいほど小さくなる。即ち、放射領域間(AR1〜AR5間)を検知人体Pが移動する場合、距離Lが小さいと、所定の時間毎に切り替えられた発光素子が赤外線を放射する前に当該赤外線によって形成される放射領域を検知人体Pが通過してしまう恐れがある。従って、検知人体Pが当該放射領域に存在していたのにも関わらず、当該検知人体Pを検知できない恐れがある。例えば、図4は、検知人体Pを検知できない恐れがあるときの状態を表している。このような状態は、上述の(1)式で表された放射領域の領域幅ARWと、検知人体Pの幅Wとが例えば(2)式で表される関係であるときに生じうる。
【0032】
【数2】

【0033】
逆に、放射領域の領域幅ARWと、検知人体Pの幅Wとが例えば(3)式で表される関係であるときには、放射領域内で検知人体Pを検知可能である。
【0034】
【数3】

【0035】
以上のことから、放射領域内で検知人体Pを検知可能な距離Lの閾値は、(4)式で表される。このため、本実施の形態においては、(4)式で表される閾値(以下、所定距離という)を用いて、測定センサ101から検知人体Pまでの距離Lとの大小関係を比較する。距離Lが所定距離より小さい場合には、上述したように、放射領域内で検知人体Pを検知できない可能性がある為、赤外線の放射により放射領域を形成させる発光素子の数を減じる。その具体的な処理方法については、以下の動作欄で詳述する。
【0036】
【数4】

【0037】
(2)動作
次に、以上のように構成された実施の形態1にかかる警備装置100による人体検知処理について説明する。図5は、実施の形態1にかかる人体検知処理の手順を示すフローチャートである。尚、赤外線の放射によって上述の放射領域AR1〜AR5を各々形成させる発光素子を各々‘1’〜‘5’の発光素子番号に対応させる。
【0038】
警備装置100の切替制御部104は、まず始めに、測距センサ101の発光素子につき発光素子番号‘1’に対応する発光素子に切り替える旨の切替信号を測距センサ101に送信する(ステップS1)。測距センサ101は、切替制御部104から送信された切替信号を受信すると(ステップS2)、発光素子番号‘1’に対応する発光素子から赤外線を放射させる。測距センサ101は、この発光素子から放射した赤外線が検知人体に反射した反射光を受光素子で受光すると、これを検知信号として警備装置100のセンサ制御部102に送信する(ステップS3)。センサ制御部102は、測距センサ101から送信された検知信号を受信すると(ステップS4)、これを用いて検知人体までの距離Lを求めて一時記憶部103に記憶させる。次いで、切替制御部104は、一時記憶部103に記憶された距離Lと、センサ情報記憶部105に記憶された所定距離とを比較し、距離Lが所定距離より大きいか否かを判定する(ステップS5)。当該判定結果が肯定的である場合(ステップS5:YES)、切替制御部104は、iの値に‘1’を加えた値に発光素子番号iを更新し(ステップS7)、次いで、ステップS10に進む。ステップS5の判定結果が否定的である場合(ステップS5:NO)、次いで、切替制御部104は、発光素子番号iが‘2’又は‘4’であるか否かを判定する(ステップS6)。当該判定結果が肯定的である場合(ステップS6:YES)、切替制御部104は、iの値に‘1’を加えた値に発光素子番号iを更新し(ステップS8)、次いで、ステップS10に進む。ステップS6の判定結果が否定的である場合(ステップS6:NO)、切替制御部104は、iの値に‘2’を加えた値に発光素子番号iを更新し(ステップS9)、次いで、ステップS10に進む。ステップS10では、切替制御部104は、発光素子番号iが‘5’より大きいか否かを判定する。当該判定結果が否定的である場合(ステップS10:NO)、ステップS12に進む。ステップS12では、切替制御部104は、測距センサ101において検知に用いる発光素子を、iの現在の値の発光素子番号に対応するものに切り替える旨の切替信号を測距センサ101に送信する。
【0039】
測距センサ101は、切替制御部104から送信された切替信号を受信した後(ステップS13)、上述の放射時間が経過して、発光素子を切り替えるタイミングがきたとき、当該切替信号によって示される発光素子番号iの発光素子から赤外線を放射させるよう発光素子を切り替えて、上述のステップS3の処理を行う。ステップS3の後、警備装置100は、上述したステップS4の処理を行う。
【0040】
尚、ステップS10の判定結果が肯定的である場合(ステップS10:YES)、切替制御部104は、iの値に‘1’を加えた値に発光素子番号iを更新する(ステップS11)と共に、検知領域内に人体が侵入した旨の異常発生信号をシステム制御部102に供給する。システム制御部102は、切替制御部104から供給された異常発生信号を警報部106に供給する。警報部106は、システム制御部102から供給された異常発生信号に応じて、警報を出力する。
【0041】
以上のようにして、ステップS3〜S13の処理が繰り返される。
【0042】
以上のような構成によって、測距センサ101から検知人体までの距離に応じて、検知に用いる測距センサ101の発光素子の数を変更し、移動する検知人体を検知できない可能性のある放射領域においては検知を行わずに、検知人体を検知可能な放射領域において検知を行う。この結果、移動する検知人体を漏れなく正確に検知することが可能になる。従って、移動する検知人体を検知する精度を向上させ、検知すべき検知人体を検知できないことによる警報の失報を低減させることができる。
【0043】
また、以上のような構成によって、検知人体までの距離に応じて、検知に用いる発光素子の数を減じて、検知を行う放射領域の数を減じることにより、検知可能な検知人体の移動速度の限界を広げることができる。以下では具体的に、全ての放射領域において検知を行う場合と、検知を行わない放射領域がある場合とを比較して説明する。ここでは、放射領域の数をNとし、各放射領域における検知時間をtとし、検知人体の移動速度をνとし、検知人体までの距離がLであるとする。このとき、全ての放射領域において検知可能な検知人体の移動速度は、(5)式を満たすときである。
【0044】
【数5】

【0045】
ここで、例えば、N個の放射領域のうち、1番目の放射領域とN番目の放射領域との間の放射領域については1個おきに検知を行う場合、Nが‘3’以上の奇数である場合に検知可能な検知人体の移動速度は(6)式を満たすときとなり、Nが偶数である場合に検知可能な検知人体の移動速度は(7)式を満たすときとなる。
【0046】
【数6】

【0047】
【数7】

【0048】
(5)式と、(6)式及び(7)式とを比較すると、N個の放射領域のうち、1番目の放射領域とN番目の放射領域との間の放射領域については1個おきに検知を行う場合、全ての放射領域において検知を行う場合よりも、検知可能な検知人体の移動速度の限界速度は大きくなることが分かる。従って、本実施の形態のように、検知人体までの距離に応じて、検知に用いる発光素子の数を減じて、検知を行う放射領域の数を減じることにより、検知可能な検知人体の移動速度の限界を広げることができる。また、N個の放射領域のうち、1番目の放射領域とN番目の放射領域との間の放射領域については1個おきに検知を行う場合には、1番目の放射領域からN番目の放射領域までの全体の検知領域を検知可能にしつつ、検知を行う放射領域の数が減る分、全体の検知領域を検知するために必要な総検知時間を短縮することができる。また、検出時間内に検知人体への赤外線の放射回数も増加する為、検知人体の存在を検知する滞在検知精度も向上することができる。
【0049】
また、本実施の形態の測距センサによれば、1台の測距センサで扇状の検知領域を形成可能であるため、設置性を向上させることができる。また、その内部に投光器と受光器とを両方備えるため、光軸の調整等の作業を行う必要をなくすことができる。
【0050】
[実施の形態2]
次に、この発明にかかる物体検知装置、警備装置、物体検知方法および警備方法の実施の形態2について詳細に説明する。なお、上述の実施の形態1と共通する部分については、同一の符号を使用して説明したり、説明を省略したりする。
【0051】
本実施の形態においては、上述の実施の形態1に加え、検知人体の移動速度に応じて、測距センサ101から検知人体までの距離Lとの比較に用いる所定距離を変更する。なぜなら、上述の実施の形態1において、測距センサ101から検知人体までの距離Lが所定距離よりも小さいと判定した場合であっても、検知人体の移動速度が所定速度よりも遅い場合、放射領域内において検知人体を検知可能であるからである。即ち、水平方向における検知人体の幅Wと放射領域の領域幅ARWとが上述の(2)式で表される場合であっても、検知人体の移動速度が所定速度より遅い場合、領域内で検知人体を検知可能であるからである。
【0052】
(1)構成
本実施の形態にかかる警備装置100の構成は、上述の第1の実施の形態にかかる警備装置100の構成とは以下の点で異なる。図6は、実施の形態2にかかる警備装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0053】
警備装置100は、上述の実施の形態1の構成に加え、更に、移動速度算出部107を備える。センサ制御部102は、測距センサ101により検知人体を検知すると、検知人体が検知された放射領域と、検知人体が検知された検出時間と、上述のように算出した検知人体までの距離Lとを対応付けて一時記憶部103に記憶させる。
【0054】
センサ情報記憶部105は、発光素子が放射する赤外線の放射角度や、水平方向における検知人体の幅に加え、移動速度の閾値(以降、所定速度という)を記憶する。また、センサ情報記憶部105は、切替制御部104が発光素子の数を変更する際に用いる所定距離として、第1の所定距離と第2の所定距離とを記憶する。尚、第1の所定距離より第2の所定距離のほうが大きいものとする。
【0055】
移動速度算出部107は、検知人体が複数回検知されると、一時記憶部103に各々対応付けられて記憶された、n回目に検知人体が検知されたときの放射領域、検出時間及び検知人体までの距離Lと、n+1回目に検知人体が検知されたときの放射領域、検出時間及び検知人体までの距離Lと、センサ情報記憶部105に記憶された放射領域間の角度及び水平方向における検知人体の幅Wとを用いて、検知人体の移動速度を算出する。なお、ここで求める移動速度は、発信波を発信させる発信素子の数を変更するか否かを決定するために用いるものであり、少なくとも移動速度が所定以上か否かを判断できればよい。
【0056】
切替制御部104は、センサ制御部102が算出した検知人体までの距離Lに応じて、検知に用いる発光素子を決定する。更に、検知人体の移動速度に応じて、距離Lとの比較に用いる閾値(所定距離)を第1の所定距離又は第2の所定距離に切り替えて比較を行い、検知に用いる発光素子を決定する。
【0057】
(2)動作
次に、本実施の形態にかかる人体検知処理の流れについて説明する。図7は、実施の形態2にかかる人体検知処理の手順を示すフローチャートである。以下、図7のフローチャートに沿って動作を説明する。
【0058】
ステップS1〜S4までの手順は上述の実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。ステップS20では、切替制御部104は、移動速度算出部107が算出した移動速度と、センサ情報記憶部105に記憶された所定速度とを比較し、移動速度が所定速度より大きいか否かを判定する。当該判定結果が肯定的である場合(ステップS20:YES)、次いで、ステップS21では、切替制御部104は、測距センサ101から検知人体までの距離Lとの比較に用いる所定距離として、センサ情報記憶部105に記憶された第1の所定距離を用いる。ステップS20の判定結果が否定的である場合(ステップS20:NO)、次いで、ステップS22では、切替制御部104は、測距センサ101から検知人体までの距離Lとの比較に用いる所定距離として、センサ情報記憶部105に記憶された第2の所定距離を用いる。以降の処理は、上述の実施の形態1と同様である。
【0059】
以上のような構成によれば、検知人体の移動速度が所定速度より遅い場合、検知人体までの距離Lが第2の所定距離より大きければ、検知人体の検知に用いる発光素子を減じることがなくより正確に検知人体を検知可能である。また、検知人体の移動速度が所定速度より遅い場合であっても、検知人体までの距離Lが第2の所定距離より小さければ、上述の実施の形態1と同様に、検知に用いる発光素子の数を減じることにより、検知人体を正確に検知可能である。
【0060】
[変形例]
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0061】
<変形例1>
上述の各実施の形態におけるステップS6では、発光素子番号iが‘2’の場合、ステップS8に進むように構成した。しかし、発光素子番号iが‘2’の場合も、ステップS9に進むように構成しても良い。即ち、ステップS5の判定結果が肯定的となった場合、発光素子番号iが最後尾の1つ手前のもの(ここでは、発光素子番号iが‘4’)以外、次に検知に用いる発光素子の発光素子番号を必ず1つ飛ばすようにしても良い。更に言い換えると、検知領域の両端の放射領域AR1,AR5の間の放射領域AR2〜AR4においては、次に検知を行う放射領域を必ず1つ空けるように構成しても良い。また、放射領域を空ける個数は、1つに限らず複数であっても良いし、また、発光素子番号iに応じて、その個数を可変させるようにしても良い。また、検知に用いる発光素子の数は、上述のものに限らない。
【0062】
<変形例2>
上述の各実施の形態においては、発光素子番号i毎に、即ち、放射領域毎に、処理距離Lが所定距離より小さいか否かを判定するステップS5の処理を行った。しかし、例えば、発光素子番号iが‘1’のときだけステップS5の処理を行うようにし、ステップS5の判定結果が肯定的である場合には、以降の検知に用いる発光素子番号iを予め設定するように構成しても良い。例えば、次に検知に用いる発光素子番号iを‘3’に設定し、その次に検知に用いる発光素子番号iを‘5’に設定するように構成する。
【0063】
<変形例3>
上述の各実施の形態においては、切替制御部104が、ステップS1,S12で切替信号を測距センサ101に送信するように構成した。しかし、例えば、測距センサ101は、切替制御部104から切替信号を受信しない限り、上述の放射時間毎に発信素子を所定の順番に自身で切り替えるようにし、切替制御部104から切替信号を受信した場合のみその切替信号によって示される発光素子番号に対応する発光素子に切り替えるように構成しても良い。
【0064】
<変形例4>
上述の各実施の形態においては、警備装置100と測距センサ101とは別体で形成するように構成したが、これらを一体的に形成し、例えば、測距センサ101を警備装置100内部に備えるように構成しても良い。また、測距センサ101は、赤外線を放射させる発光素子を備えるように構成したが、赤外線に限らず人体の検知に用いて好適な電磁波を発信する発信素子を備えるように構成しても良い。
【0065】
<変形例5>
上述の実施の形態2においては、警備装置100が複数の測距センサを備え、検知人体の移動速度に応じて、測距センサ間で所定距離の閾値を変更するように構成しても良い。例えば、警備装置100は、2つの測距センサ101A,101Bに接続されるように構成する。図8は、2つの測距センサ101A,101Bを設置した状態を上方から見た状態を示す概略図である。同図に示されるように、測距センサ101A,101Bを水平方向に並列する。測距センサ101A,101Bは、各々の有する発光素子が放射する赤外線により、各々検知領域を形成し、各検知領域内にいる検知人体Pを各々検知する。切替制御部104は、測距センサ101A,101Bの切り替えも制御する。具体的には、切替制御部104は、まず、測距センサ101Aで上述と同様の検知を行わせ、測距センサ101Aでの検知が終了すると、測距センサ101Bで検知を行わせるよう制御する。そして、移動速度算出部107が測距センサ101Aで検知された検知人体Pの移動速度を算出し、切替制御部104は、測距センサ101Bで検知を行わせる際に、当該移動速度に応じて、測距センサ101Bから検知人体Pまでの距離Lとの比較に用いる所定距離を、第1の所定距離にするか又は第2の所定距離にするかを決定する。このような構成によれば、比較的広い範囲の検知領域内を移動する検知人体をより正確に検知可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1にかかる警備装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】同実施の形態にかかる検知領域に測距センサ101を設置した状態を上方から見た状態を示す概略図である。
【図3】同実施の形態にかかる1つの放射領域AR1を概略的に表した図である。
【図4】同実施の形態にかかる検知人体Pを検知できない恐れがあるときの状態を表した図である。
【図5】同実施の形態にかかる人体検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2にかかる警備装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図7】同実施の形態にかかる人体検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】同実施の形態にかかる2つの測距センサ101A,101Bを設置した状態を上方から見た状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
100 警備装置
101 測距センサ
102 センサ制御部
103 一時記憶部
104 切替制御部
105 センサ情報記憶部
106 警報部
107 移動速度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信波を発信する複数の発信素子と、受信素子とを有し、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信する発信素子を切り替え、切り替えた前記発信素子から発信した発信波が検知対象に反射した反射波を前記受信素子が受信することにより検知領域内の前記検知対象を検知するセンサの有する前記発信素子が発信波を発信してから前記受信素子が前記反射波を受信するまでの時間に基づいて、前記検知対象までの距離を算出する測距手段と、
前記測距手段が算出した前記検知対象までの距離に基づいて、前記センサの有する発光素子のうち前記発信波を発信させる発信素子の数を変更する制御を行う変更制御手段とを備える
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記変更制御手段は、前記検知対象までの距離が所定距離より小さいか否かを判定し、当該判定結果が肯定的である場合、前記発信波を発信させる発信素子の数を減じる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記変更制御手段は、前記判定結果が肯定的である場合、前記複数の発信素子のうち所定の発信素子から発信波を発信させる制御を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記センサは、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信させる発信素子を配置された順番にしたがって切り替え、
前記変更制御手段は、前記判定結果が肯定的である場合、次に切り替える発信素子の順番を少なくとも1つ飛ばす制御を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記複数の発信素子が水平方向に配列された状態に前記センサが設置され、
前記発信素子は、前記水平方向に所定の放射角度で放射状に拡散する発信波を発信し、
前記検知領域は、前記複数の発信素子が各々発信した発信波が放射状に拡散した各放射領域から構成され、
前記センサは、前記放射領域毎に、当該放射領域にある検知対象を検知し、
前記測距手段は、前記放射領域毎に、当該放射領域における前記検知対象までの距離を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記所定距離は、前記所定の放射角度と、前記検知対象の前記水平方向における幅とに基づいて設定可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記センサが第1の前記放射領域において前記検知対象を検知したときの第1の検知時間において前記測距手段が算出した前記検知対象までの第1の距離と、前記センサが第2の前記放射領域において前記検知対象を検知したときの第2の検知時間において前記測距手段が算出した前記検知対象までの第2の距離と、前記第1の放射領域から前記第2の放射領域までの領域範囲との角度に基づいて、前記検知対象の移動距離を算出し、算出した移動距離と前記第1の検知時間及び第2の検知時間とを用いて、前記検知対象の移動速度を算出する移動速度算出手段を更に備え、
前記変更制御手段は、前記移動速度算出手段が算出した移動速度に基づいて、前記判定に用いる所定距離を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記変更制御手段は、前記移動速度算出手段が算出した前記移動速度が所定速度より小さい場合、前記所定距離より大きい第2所定距離を用いて、前記検知対象までの距離が当該第2所定距離より小さいか否かを判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の物体検知装置。
【請求項9】
発信波を発信する複数の発信素子と、受信素子とを有し、前記複数の発信素子のうち前記発信波を発信する発信素子を切り替え、切り替えた前記発信素子から発信した発信波が検知対象に反射した反射波を前記受信素子が受信することにより検知領域内の前記検知対象を検知するセンサの有する前記発信素子が発信波を発信してから前記受信素子が前記反射波を受信するまでの時間に基づいて、前記検知対象までの距離を算出する測距ステップと、
前記測距ステップで算出した前記検知対象までの距離に基づいて、前記センサの有する発光素子のうち前記発信波を発信させる発信素子の数を変更する制御を行う変更制御ステップとを備える
ことを特徴とする物体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−64469(P2008−64469A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239396(P2006−239396)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】