説明

物品のコンベア乗り替え装置及びコンベア乗り替え方法

【課題】
2つのコンベアの一方から他方に缶が乗り替えるとき、缶の衝突を回避し、または衝突速度を緩和することができ、アブレーションやデンティングの発生を防ぐことができる容器のコンベア乗り替え装置を提供する
【解決手段】
容器を一方のコンベアから他方のコンベアに乗り替えらせるコンベア乗り替え装置であって、一方のコンベアと他方のコンベアが並走する乗り替え区間104において、一方のコンベアに沿って容器を風圧によって一方のコンベアから他方のコンベアに向かって押圧する空気流を吹き出すノズルを配置し、ノズルからの空気吹き出しのブロー/オフを制御するロータリーバルブ等を設け、ロータリーバルブ等の回転を一方のコンベアの走行に同調させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は物品を並走する一方のコンベアから他のコンベアに乗り替えさせるコンベア乗り替え装置及びコンベア乗り替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば製缶工程においては缶を並走する一方のコンベアから他方のコンベアに乗り替えさせる必要が生じる場合がある。
【0003】
缶のコータ(塗装装置)の出口側搬送レイアウトは缶がピンチェーンからピンストリッパに乗り移り後、シングルカーブコンベアを経てマスコンベアに合流して次工程に搬送される。ここでシングルカーブコンベアからマスコンベアへの乗り替えが必要である。
【0004】
従来の容器搬送用コンベア乗り替え装置は図3に示すように、一方のシングルカーブコンベア101の終端部にガイドバー103を設けて、シングルカーブコンベア101上の缶をこのガイドバー103に接触させて案内させ、マスコンベア102へ乗り替えさせている。この乗り替えのための缶の動きを一方のコンベアから他方のコンベアに向けてガイドバーによって強制する方式は、例えば特許文献1に示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−72239号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このガイドバー方式の乗り替え装置では缶同士の押し合いによって前の缶の動きを強制するので、缶の移動が必ずしも円滑に行われない場合がある。
【0007】
また、シングルカーブコンベアとマスコンベアのように両コンベア間に大きな速度差があり、しかも搬送される缶が塗装直後の塗装缶であるような場合は、UV照射直後の塗膜の強度不足により、搬送合流時の急減速で缶と缶の衝突があると、擦り傷が生じ、または凹みを生じることもあり、不良品の発生に苦慮することがある。また、一方のコンベアから他方のコンベアに物品を円滑に乗り替えさせる必要性は缶以外の容器その他の物品についても存在する。
【0008】
この発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、2つのコンベアの一方から他方に物品が乗り替えるとき、物品の衝突を回避し、または衝突速度を緩和することができ、擦り傷や凹みの発生を防ぐことができる容器等の物品のコンベア乗り替え装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に対応して、この発明の物品のコンベア乗り替え装置は、容器を前工程から後工程に移すときに前記物品を一方のコンベアから他方のコンベアに乗り替えらせるコンベア乗り替え装置であって、一方のコンベアと他方のコンベアが並走する乗り替え区間において、一方のコンベアに沿って前記物品を風圧によって前記一方のコンベアから前記他方のコンベアに向かって押圧する空気流を吹き出すノズルを配置し、前記ノズルからの空気吹き出しのブロー/オフを前工程の速度に同調させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の物品のコンベア乗り替え装置では一方のコンベアから他方のコンベアに物品が乗り替えるとき、乗り替えの物品の経路を分散させることにより、物品の衝突を回避し、物品同士の衝突速度も緩和することができ、擦り傷や凹みの発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載された発明では、ノズルからの間欠ブローオフの生成を電磁弁制御を使用することなく、ロータリーバルブの回転数の設定で制御することにより、装置の構成及び制御を単純にし、高頻度動作下における装置寿命を永くすることができる。
【0012】
請求項3に記載された発明では、他方のコンベアの速度が一方のコンベアの速度よりも低速の場合は、乗り替わる物品の押し合いや衝突の傾向が大きいので、乗り替え物品の経路を分散させる効果は大きい。
【0013】
請求項4に記載された発明では他方のコンベアが幅の広いマスコンベアである場合は、乗り替え物品の経路をよく分散させることができる。
【0014】
請求項5に記載されたノズルの配置とブローオフの設定によって、物品の乗り替えが良好に行われ、乗り替え物品の経路の分散及び衝突速度の緩和を良好に実現することができる。
【0015】
請求項6に記載されたノズルの吹き出し方向をとることによって一方のコンベアから他方のコンベアへの物品乗り移りを円滑にすることができる。
【0016】
請求項7に記載された物品のコンベア乗り替え方法では、一方のコンベアから他方のコンベアに物品が乗り替わるとき、乗り替えの物品の経路を分散させることにより、物品の衝突を回避し、かつ物品の乗り替え動作を円滑にするこができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の説明は乗り替えの対象を物品のうちの特に、相互に接触することにより、擦り傷や凹みが発生し易い缶について適用した容器乗り替え装置についてなされているが、この発明はコンベア間の乗り替えが必要な缶以外の物品について適用した物品乗り替え装置に適用可能である。
【0018】
以下この発明の詳細を最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2において、1は容器乗り替え装置である。ここで容器とは缶またはボトルをいう。この実施例では容器として缶を対象としている。容器乗り替え装置1はシングルカーブコンベア101とマスコンベア102の乗り替え区間104に対応して設置される。
【0019】
乗り替え区間104では2000個/分の生産速度のラインの場合、シングルカーブコンベア101は例えば速度140m/分(2.33m/秒)で走行し、マスコンベア102は速度40m/分(0.67m/分)で走行する。また乗り替え区間104には缶の倒れ防止用天井板11が設けられている。
【0020】
容器乗り替え装置1はノズル群2とロータリーバルブ装置3を有している。ノズル群2はn個(但しn>1)のノズル4を(n+1)缶ピッチ距離毎に配置する。例えばn=3nの場合には3個のノズル4a、4b、4cをそれぞれ4缶ピッチ距離毎に間隔を置いてシングルカーブコンベア101に沿って配置している。ここで缶ピッチ距離とは一列に等間隔で整列した缶群における隣り合う缶同士の中心間距離を指す。また後述する缶ピッチ時間とは缶を単位缶ピッチ距離だけ送るに要する時間で、シングルカーブコンベア101の速度で、単位缶ピッチ距離を除した値である。この実施例では図2に示すように、単位缶ピッチ距離は70mm、単位缶ピッチ時間では30msである。したがってノズル間の4缶ピッチ距離の間隔の大きさは280mmである。シングルカーブコンベア101の速度及び後述する各ノズルのブローのタイミングは前工程であるコーターの速度に同期している。
【0021】
このノズル4a、4b、4cはシングルカーブコンベア101上の缶5にエアーを吹き付けて缶5に押圧力を作用させ、缶5をシングルカーブコンベア101上からマスコンベア102に押し出して乗り替えさせる作用をする。それぞれのノズル4a、4b、4cのブローオフのタイミングは制御手段、例えばロータリーバルブ装置3によって制御される。
【0022】
ロータリーバルブ装置3はエア取入口6から取り入れた高圧エアーをローター7の回転によって3つに分岐してブローオフエアー取出口8から送り出し、ノズル4a、4b、4cに供給し、ノズル4a、4b、4cからブローオフさせる。ローター7の回転は前工程である塗装工程の速度と同期させ、3缶当たり1缶のタイミングでブローするように速度を選択する。したがって1つのノズル4aについて言えば、90ms毎に1回ブローし、隣りのノズル4bとは30msの時間ずれがある。1回のブローの時間は缶の重量やシングルカーブコンベア101からマスコンベア102へ乗り替えるのに必要な缶5の移動距離などの乗り替えの条件によって調整する必要があるが、ほぼ1缶ピッチの送り時間と等しいか、或いはそれに調整用時間を加減した時間である。この実施例ではブロー時間は37msである。この調整用時間を加えた場合にも隣りの缶に対する乗り替え動作に対する影響が小さい範囲で選択する必要がある。こうしてノズル4aは一列の缶列中の特定順位の缶Cばかりにブローし、ノズル4bは特定の順位の缶Bばかりにブローし、さらにノズル4cは缶Aにばかりブローする。
【0023】
シングルカーブコンベア101の搬送速度はマスコンベア102の搬送速度より大きいけれどもシングルカーブコンベア101からマスコンベア102に缶5が乗り替わる時に缶5の搬送速度が一定で変化しない方が、缶5の乗り替わりを円滑にする。それなのでノズル4a、4b、4cからのエアーの吹き出しの方向は、シングルカーブコンベア101上の缶5にマスコンベア102の速度とほぼ一致するまで減速する方向に缶に吹き付けるための吹き出し角度θはシングルカーブコンベア101の搬送方向の後方に搬送方向に垂直な方向に対して5°〜30°、好ましくは10°〜20°の範囲で選択し、缶の乗り移り角度Xを10°〜60°、好ましくは20°〜40°とする。マスコンベア102の搬送速度の方がシングルカーブコンベア101の搬送速度よりも大きい場合には吹き出し角度θは搬送方向の前方にとる。
【0024】
このように構成されたコンベア乗り替えでは、ロータリーバルブ装置3を動作させてノズル群2の各ノズル4a、4b、4cから隣りのノズルとは順に30msの時間ずれで90ms毎に38msのブローを行わせておく。シングルカーブコンベア101によって送られて来た缶5が乗り替え区間104に達すると、ノズル4aが缶を吹き押してシングルカーブコンベア101からマスコンベア102に乗り替えらせる。このノズル4aで吹き押しされた缶をCとすると、引き続きノズル4aは設定された3缶毎に初めの1缶Cを吹き押し続ける。同様にノズル4bは次の1缶Bを、さらにノズル4cは次の1缶Aを吹き押し続け、結局、全缶がマスコンベア102に乗り替える。
【0025】
このように構成された容器乗り替え装置1では一方のコンベアから他方のコンベアに容器が乗り替えるとき、乗り替えの容器の経路を分散させることにより、缶の衝突を回避し、缶同士の衝突速度も緩和することができ、擦り傷や凹みの発生を防止することができる。ノズルからの間欠ブローオフの生成を電磁弁制御を使用することなく、ロータリーバルブの回転数の設定で制御することにより、装置の構成及び制御を単純にし、高頻度動作下における装置寿命を永くすることができる。
(実験例1)
この容器乗り替え装置1を次の条件で実験したところ、良好な乗り替えが行えた。
算出式(数値は、2000cpmの場合を示す)

コータ生産速度 :Sc [rPm] 2000 rPm
シングルCV.速度 :Vs=Sc×Pc/1000 [m/分] 140m/分
(式1)シングルCV.缶ピッチ : Pc=Vs×1000/Sc [mm] 70 mm
1ピッチ通過時間 : tp=60/Sc [秒] 0.03 秒
(式2)ロータリーバルブ回転数 :Nr=Sc/12 [rpm] 166.7 rpm
(式3)ブローオフタイミング : Tb=60/Nr/4 [秒] 0.09 秒

(注1)4缶ピッチ毎(式1×4)、3箇所にノズルを設置し、3缶に1缶のタイミング(式3)で間欠ブローオフする。これにより、合流経路を分散させ、擦り傷、凹みを防止する。
(注2)間欠ブローオフは、ロータリーバルブ回転数をコータ速度に応じて設定し、発声させる。(式2)(コータ速度に同期させる。または、MAXコータ速度より、モータ選定)
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】容器乗り替え装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】容器乗り替え装置のブローオフタイミングを示す説明図。
【図3】従来の容器乗り替え装置を示す平面構成説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 容器乗り替え装置
2 ノズル群
3 ロータリーバルブ装置
4a、4b、4c ノズル
5 缶
6 エア取入口
7 ローター
8 ブローオフエア取出口
11 倒れ防止用天井板
101 シングルカーブコンベア
102 マスコンベア
103 ガイドバー
104 乗り替え区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を前工程から後工程に移すときに前記物品を一方のコンベアから他方のコンベアに乗り替えらせるコンベア乗り替え装置であって、一方のコンベアと他方のコンベアが並走する乗り替え区間において、一方のコンベアに沿って前記物品を風圧によって前記一方のコンベアから前記他方のコンベアに向かって押圧する空気流を吹き出すノズルを少なくとも1つ配置し、前記ノズルからの空気吹き出しのブロー/オフを前工程の速度に同調させることを特徴とする物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項2】
前記ノズルからの空気吹き出しのブロー/オフを制御するロータリーバルブを設け、前記ロータリーバルブの回転を前記前工程の速度に同調させることを特徴とする物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項3】
前記一方のコンベアよりも前記他方のコンベアの方が低速で走行することを特徴とする物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項4】
前記一方のコンベアは搬送する物品を縦列に配置して移送するシングルカーブコンベアであり、前記他方のコンベアは搬送する物品を複数列に配置して移送するマスコンベアであることを特徴とする物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項5】
前記ノズルを(n+1)缶ピッチ距離毎にn(ただしn>1)個配置し、前記ノズルの吹き出し時間を1缶ピッチ時間又は1缶ピッチ時間に調整時間を付加し若しくは差し引いた時間であることを特徴とする物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項6】
前記一方のコンベアの搬送方向に垂直な方向に対して5°〜30°だけ傾けた方向に前記ノズルの吹き出しの方向を定めることを特徴とする請求項1記載の物品のコンベア乗り替え装置。
【請求項7】
一方のコンベア上に縦列をなして搬送される物品を前記一方のコンベアから他方のコンベアに乗り替えさせるコンベア乗り替え方法であって、一方のコンベアと他方のコンベアが並走する乗り替え区間において、一方のコンベアに沿って前記物品を風圧によって前記一方のコンベアから前記他方のコンベアに向かって押圧する空気流を吹き出す複数のノズルを配置し、前記それぞれのノズルからの空気吹き出しのブロー/オフを前記一方のコンベアの速度に同調させた一定の時期で順次行わせ、それぞれのノズルが前記縦列中の特定の順番の物品だけに対して吹き出しをすることによって、前記複数のノズルの全体として前記乗り替え区間における前記一方のコンベア上の全ての物品に向けて前記吹き出しを行うことを特徴とする物品のコンベア乗り替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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