説明

物品収納ケース

【課題】先入れ先出しの原則を遵守できる物品収納ケースを得る。
【解決手段】直方体である物品収納ケース10の前板15に、収納する物品aの横幅よりも僅かに広い横幅でありかつ下端縁21が底板14よりも上位に位置している物品入口20を形成する。物品入口20側の側板11には板バネ17を取り付ける。前板15の物品入口20から離れた位置に、やはり収納する物品aの横幅よりも僅かに広い横幅の物品取り出し口25を形成する。底板14、前板15、側板12には突条26、27、28を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
収納した物品を収納ケースから1個ずつ取り出すことができるようにした物品収納ケースは知られている。また、そのような物品収納ケースにおいて、物品の収納と取り出しを容易にするために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1は、図4に示すような物品収納ケースが開示されている。
【0003】
この物品収納ケース1は、一方の側板(後方側の側板)2側に、収納する物品aからの押圧力により屈曲する板バネ3が取り付けてあり、図4aに示すように、上方の開放した部分から物品aを挿入すると、該物品aは、板バネ3を屈曲させながらケース1内に容易に収納される。収納された物品aは、前記板バネ3の付勢力により他方の側板4側に押し付けられるので、安定した姿勢となる。物品aを収納した後、図4bに示すように、ケース1には上蓋5が取り付けられる。収納した物品aは、前記他方の側板4に沿って上方に引き抜くことにより、前記他方の側板4と上蓋5との間に形成される取り出し口6から1個ずつ容易に取り出することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−137082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような物品収納ケースは、種々の物品を整頓した状態で収納しかつ保管するのに好適に用いられる。ところで、物品の中には許容保管日数が限られているものがあり、そのような物品を物品収納ケースに収納して保管する場合には、許容保管日数を超えない状態で物品の管理を容易に行えること、また、物品を収納する者と、そこから取り出して使用する者とが異なっている場合でも、容易かつ確実に当該物品の許容保管日数を厳守できること、等が物品収納ケースに求められる。そのような物品としては、例えば、医療用カテーテルの収容箱などが挙げられる。
【0006】
その要請に答えるために、物品収納ケースには、先入れ先出しの原則(すなわち、収納された物品を収納した順番通りに取り出すこと)が遵守されやすい構成を備えること、また、物品入口を通して一旦収納した物品を本来の物品取り出し口以外の箇所からは取り出すことができない構成を備えること、等が望まれる。しかし、上記した従来の物品収納ケースは、上蓋5を取り外した状態で複数個の物品を同時に挿入できるようになっており、十分な注意を払わないと、保管期限の日時順に物品がケース内に並ばないことが起こり得る。
【0007】
また、物品収納後に上蓋5を取り外すことにより、収納した複数個の物品のいずれをも取り出すことが可能であり、例えば物品を収納した者でないものが、物品を取り出そうとするときに、最前に位置する本来取り出すべき物品以外の物品を取り出してしまうことも起こり得る。収納空間に余裕ができて新たに物品を補充するときには、上蓋5を取り外すこととなるが、そのときにも、上記の不都合が生じる可能性がある。
【0008】
そのようなことから、従来の物品収納ケースは、先入れ先出しの原則が遵守されない可能性を内在しており、許容保管日数を厳守しなければならない、例えば医療用カテーテル収容箱のような物品の収納ケースとしては、充分満足するものではなかった。
【0009】
本発明は、上記の不都合を解消した改良された物品収納ケースを開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による物品収納ケースは、収納した物品を一方の側板に取り付けた板バネの付勢力により他方の側板に押し付けた姿勢とし、かつ該他方の側板に押し付けられた状態の物品を側板に沿って引き抜くことにより物品の取り出しが可能となっている物品収納ケースであって、該物品収納ケースは、全体が左右の側板と上板と底板と前板と後板とを備えた直方体であり、前記前板の板バネを取り付けた側の側板側には収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅でありかつ下端縁が前記底板よりも上位に位置している物品入口が形成されており、前記前板の前記他方の側板側には収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅の物品取り出し口が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記の物品収納ケースは、物品を収納できる入口は前板に備えた1箇所のみであり、さらにその物品入口は収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅であるので、複数個の物品が同時にケース内に入り込むことはない。そのために、所要の順番で、例えば保管期限日の順番で、物品をケース内に確実に収納できる。また、前記物品入口の下端縁は前記底板よりも上位に位置しているので、入り込んだ物品は、その底面が物品入口を通過した直後に底板まで落下するようになり、単に引き出すだけでは、その物品を物品入口からは取り出すことができない。
【0012】
収納された物品は、板バネの作用により物品取り出し口側に送られるが、物品取り出し口と物品入口との間は前板により実質的に閉鎖された状態にあり、また上板と下板にも開放部はないので、収納された物品は物品取り出し口以外からは取り出すことができず、かつ、収納した順番を変更することもできない。さらに、物品取り出し口の横幅は、収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅であり、2つの物品を同時に取り出すこともできない。そのために、収納した物品に対する先入れ先出しの原則は確実に守られる。
【0013】
本発明による物品収納ケースにおいて、好ましくは、少なくとも前記底板の内側面には前板と平行方向の1条または1条以上の突条が形成され、前記他方の側板には水平方向の1条または1条以上の突条が形成される。必要な場合には、前板の内側面にも水平方向の突条が形成される。この態様では、収納された物品は前記突条に接した状態でケース内を移動することができるので、収納物品とケース本体との間の摩擦抵抗が底減する。それにより、板バネの付勢力により他方の側板に向けて移動することが容易となり、また、物品取り出し口から物品を取り出すことも容易となる。
【0014】
本発明による物品収納ケースにおいて、好ましくは、前記物品取り出し口は前記上板および他方の側板側に連続した解放領域を持つ。この態様では、収納物品を取り出す者が収納された物品へアクセスできる領域が広くなり、取り出しが容易となる。
【0015】
本発明による物品収納ケースにおいて、隣接する物品収納ケースを連接するための係止体を前記左右の側板に備えるようにしてもよい。この態様では、必要なときに2個以上の物品収納ケースを安定した状態で横方向は連続配置することができる。係止体の具体例としては、フック、面テープあるいは磁石プレート等が挙げられる。
【0016】
本発明による物品収納ケースにおいて、好ましくは、収納ケースにおける収納した物品に付されている表記の少なくとも一部に対応する部位が透明な樹脂材料により形成される。全体が透明な樹脂材料により形成されていてもよい。透明な樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。この態様では、収納した物品の必要箇所または全体を外から見ることができるので、その表記の一つであるラベル等を外から観察することにより、保管期限を見落とすような事態が生じるのを確実に回避することができる。
【0017】
本発明による物品収納ケースに収納する物品として、上記では保管期限を厳守すべき物品を例として説明したが、それに限らず、書籍、CD、DVDのような扁平な物品一般のための収納ケースとして使用できることも当然である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による物品収納ケースを用いることにより、保管期限が定められている物品を先入れ先出しの原則を確実に遵守ながら保管することが可能となる。もちろん、他の物品の物品収納ケースとしても効果的に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明による物品収納ケースの一実施の形態を説明する。図1aは物品収納ケースの一例を斜視図で示し、図1bは図1aのb−b線による断面を示す。図2は物品収納ケースに物品を収納してから取り出すまでの状態を段階的に示している。図3aは隣接する2つの物品収納ケースを連接する前の状態を、図3bは連接後の状態を示している。
【0020】
図に示すように、本発明による物品収納ケース10は全体として直方体形状であり、この例ではアクリルのような透明な樹脂材料で全体が作られている。前記したように、収納ケース10に収納した物品に付されている表記(例えばラベル等)の少なくとも一部に対応する部位のみを透明な樹脂材料により形成するようにしてもよい。物品収納ケース10は、左右の側板11、12と、上板13と、底板14と、前板15と、後板16とを有する。一方の側板11の内側面には、上板13および下板14と平行方向に延在する板バネ17が取り付けられている。
【0021】
板バネ17は、取り付け基部17aと、基部17aから他方の側板12側に向けて延びる第1傾斜部17bと、第1傾斜部17bの頂部17cから前記側板11側に向けて延びる第2傾斜部17dを備える(図1b参照)。無負荷状態で板バネ17の前記頂部17cは他方の側板12に近接した位置にある。板バネ17の長さは、前記頂部17cが一方の側板11に近接するまで押し付けられた状態で、その端部が後板16に当接しない長さとされている。なお、図では、1本の板バネ17を示したが、2本以上の板バネ17・・を平行して取り付けるようにしてもよい。
【0022】
前記前板15には、物品入口20および物品取り出し口25が形成される。物品入口20は、前板15の、前記板バネ17を取り付けた側板11側に形成され、図2aに示すように、その横幅Wは収納しようとする物品aの横幅Waよりも僅かに広い。ただし、横幅Wは物品aの横幅Waの2倍よりは大きくない。また、物品入口20の下端縁21は前記底板14よりも上位に位置しており、それにより、物品入口20の下端には前板15による堰が形成される。
【0023】
物品取り出し口25は、前板15の前記他方の側板12側に形成されており、物品入口20と物品取り出し口25とは前板15の一部15aにより、全体が離れた状態、すなわち連続しない状態とされている。図示しないが、一部が連続していても差し支えない。物品取り出し口25は、物品入口20と同様に、その横幅は収納しようとする物品aの横幅Waよりも僅かに広くされるが、物品aの横幅Waの2倍よりは大きくない。
【0024】
物品取り出し口25は前板15の領域にのみ形成されていてもよい。しかし、図示の例では、前板15の物品取り出し口25に相当する部分に連続する上板13および他方の側板12の一部が後板16側に向けて切り欠かれており、それにより、物品取り出し口25は上板13および他方の側板12側に連続した解放領域を有している。それにより、物品aの取り出しを容易化している。
【0025】
底板14の内側面には、前板15に平行な方向に走る突条26が形成されている。前板15の前記物品入口20の下端縁21よりも下位の領域の内側面にも水平方向に走る突条27が形成されている。さらに、前記他方の側板12の内側面にも水平方向に走る2本の突条28が形成されている。これらの突条26、27、28の本数は任意であり、制限はない。また、これらの突条26、27、28のすべてまたはいずれかを省略することもできる。
【0026】
必須のものではないが、一方の側板11には開口30が形成されており、他方の側板12には、隣接する物品収納ケース10に形成した前記開口30に係脱自在に係合することができる下方に向けて屈曲したフック31が形成されている。
【0027】
次に、図2を参照して、上記物品収納ケース10の使用態様を説明する。図2aに示すように、空の状態の物品収納ケース10に対して、物品入口20から最初の物品a1を挿入する。物品は扁平かつ矩形状のものであり、前記したようにその横幅はWaである。物品入口20の横幅Wは、2×Waよりも狭いので、2つの物品aを同時に入れることはできない。物品1aを挿入すると、その前方側端面は板バネ17の前記第1傾斜部1bに衝接する。さらに挿入すると、板バネ17を一方の側板11側に次第に押し付けながら、物品a1は物品収納ケース10内に入っていく(図2b)。
【0028】
物品a1の後方側端面が物品入口20を超えたときに、物品a1の後方側端面は底板14に向けて落下する。物品入口20の下端には前記したように前板15による堰が形成されているので、一旦物品収納ケース10内に収納された物品a1は、そのままでは引き出すことができない。物品収納ケース10内に入り込んだ物品a1は、直ちに板バネ17の付勢力により他方の側板12側に向けて移動する。そして、側板12に押し付けられた姿勢となり安定する。その状態が図2cに示される。底板14と前板15の内側面には突条26、27が形成されており、板バネ17の付勢力による物品a1の移動は円滑に進行する。
【0029】
次に、図2cに示すように、2枚目の物品a2を同様にして物品入口20から挿入し、以下、それを繰り返す。図2dには3枚の物品a1、a2、a3が収納された状態が示される。物品収納ケース10は物品入口20と物品取り出し口25を除いて閉じられており、また物品入口20と物品取り出し口25の間は不連続であり、前板15の一部15aにより閉じられているので、物品収納ケース10内に収納された複数個の物品a1〜an(図示のものではa1〜a3)の順番を人為的に入れ替えることはできず、入れた順番をそのまま維持して保管される。
【0030】
図2eは、物品収納ケース10の物品取り出し口25から物品a1を取り出す状態を示している。取り出す順番は、側板12に最も近接している物品a1から取り出すことになるが、前記したように物品取り出し口25の横幅は、2×Waよりも狭いので、2つの物品a1、a2を同時に取り出すことはできない。また、2番目の物品a2のみを取り出すこともできない。従って、本発明による物品収納ケース10では、入れた順番にのみ物品a1〜anを取り出すことができ、先入れ先出しの原則が遵守される。物品a1を取り出す際に、物品a1と側板12とは、側板12の内側面に形成した突条28とのみ接しているので、取り出しは容易である。
【0031】
1番目あるいは1番目と2番目の物品を取り出した後、空いたスペースに物品入口20から新たな物品aを補充することとなるが、それ以降も、先入れ先出しの原則が崩れることはない。
【0032】
2つ以上の物品収納ケース10を使用する場合には、図3aに示すように、2つの物品収納ケース10を隣接させ、一方の側板11に形成した開口30内に、隣接する物品収納ケース10の他方の側壁12に形成した下方に向けて屈曲したフック31を係止させる。それにより、図3bに示すように、2個以上の物品収納ケースを安定した状態で横方向に連続配置することができる。開口30およびフック31に替え、面テープや磁石プレートを側板11,12に取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による物品収納ケースの一例を示しており、図1aは斜視図を、図1bは図1aのb−b線による断面を示す。
【図2】図1に示す物品収納ケースに物品を収納してから取り出すまでの状態を段階的に示している。
【図3】図3aは隣接する2つの物品収納ケースを連接する前の状態を、図3bは連接後の状態を示している。
【図4】従来の物品収納ケースの一例を説明するための図であり、図4aは物品を収納する途中の状態を、図4bは物品収納後の状態を示している。
【符号の説明】
【0034】
10…物品収納ケース、11、12…左右の側板、13…上板、14…底板、15…前板、16…後板、17…板バネ、17a…取り付け基部、17b…第1傾斜部、17c…頂部、17d…第2傾斜部、20…物品入口、21…物品入口の下端縁、25…物品取り出し口、26、27、28…突条、30…開口、31…フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納した物品を一方の側板に取り付けた板バネの付勢力により他方の側板に押し付けた姿勢とし、かつ該他方の側板に押し付けられた状態の物品を側板に沿って引き抜くことにより物品の取り出しが可能となっている物品収納ケースであって、
前記物品収納ケースは、全体が左右の側板と上板と底板と前板と後板とを備えた直方体であり、
前記前板の板バネを取り付けた側の側板側には収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅でありかつ下端縁が前記底板よりも上位に位置している物品入口が形成されており、
前記前板の前記他方の側板側には収納する物品の横幅よりも僅かに広い横幅の物品取り出し口が形成されている、
ことを特徴とする物品収納ケース。
【請求項2】
少なくとも前記底板の内側面には前記前板と平行方向の1条または1条以上の突条が形成されており、前記他方の側板には水平方向の1条または1条以上の突条が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物品収納ケース。
【請求項3】
前記物品取り出し口は前記上板および他方の側板側に連続した解放領域を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の物品収納ケース。
【請求項4】
前記左右の側板は隣接する物品収納ケースを連接するための係止体を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の物品収納ケース。
【請求項5】
前記収納ケースにおける収納した物品に付されている表記の少なくとも一部に対応する部位が透明な樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物品収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−194233(P2008−194233A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32467(P2007−32467)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】