説明

物品押出装置

【課題】信頼性の高い過負荷防止機能を担保しつつ、剛性の低い物品をプッシャで高速処理できるようにする。
【解決手段】後退位置から進出位置へ移動する牽引体44と、前記進出位置へ移動する牽引体44に、磁気吸着力で連結されて牽引されるプッシャ4を具備し、前記牽引されるプッシャ4によって、該プッシャ4の移動方向に物品1を押し出す物品押出装置に於いて、牽引により移動し始めるプッシャ4に対し、移動方向へ力を作用させる補助加速手段6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンボール箱で包装された包装済製品等を、包装完了位置から外部へ排出する場合等に使用される物品押出装置に関するもの、特に、マグネットクラッチ式の物品押出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の缶飲料をダンボール箱で包装する包装装置では、包装済製品を包装完了位置から外部に押し出す物品押出装置を具備しているものが多い。
図3は前記包装済製品等の物品(1)を、包装完了位置たる固定テーブル(2)から外部に搬出するコンベヤ(3)へ押し出す為の物品押出装置の要部の図面である。
【0003】
図示しない包装装置から順次供給される物品(1)が載置される固定テーブル(2)の横には、該固定テーブル(2)の上方を水平方向に往復運動するプッシャ(4)が配設されている。
プッシャ(4)の基端部の上面に突設された係合突起(40)には、その上方に配設されたソレノイド(5)で昇降されるストッパ軸(50)の先端が係脱されるようになっている。
【0004】
プッシャ(4)の基端部から垂下する脚体(41)には前方に突出する磁石ホルダ(42)が連設されていると共に、該磁石ホルダ(42)の先端部には磁石(43)が固定されている。
磁石(43)の前方には、これに接離する方向に駆動源(図示せず)で往復運動される牽引体(44)が配設されていると共に、該牽引体(44)は磁石(43)に吸着可能な磁性材料で形成されている。
【0005】
又、固定テーブル(2)を隔ててプッシャ(4)の反対側には、物品(1)を外部へ搬送するコンベヤ(3)が配設されている。
このものでは、牽引体(44)は駆動源(図示せず)で常に往復運動されていると共に、ソレノイド(5)のストッパ軸(50)は、固定テーブル(2)上に載置された物品(1)を押し出すときにのみ上昇し、これにより、ストッパ軸(50)と係合突起(40)の係合が解除されるようになっている。
【0006】
従って、ソレノイド(5)のストッパ軸(50)とプッシャ(4)の係合突起(40)が係合している図3の状態では、牽引体(44)は、磁石(43)に当接した後退位置(図3の実線で示す位置)と、固定テーブル(2)側の進出位置(図3の想像線で示す位置)との間を、継続的に往復運動している。
このものでは、図示しない包装装置から供給される物品(1)が固定テーブル(2)上に載置されると、ソレノイド(5)でストッパ軸(50)が上昇され、これにより、ストッパ軸(50)と係合突起(40)の係合が解除されてプッシャ(4)が進出可能状態になる。
【0007】
すると、往復運動する牽引体(44)が磁石(43)との吸着によってプッシャ(4)に連結され、これにより、プッシャ(4)が牽引体(44)で牽引されて固定テーブル(2)側に移動し、固定テーブル(2)上の物品(1)をコンベヤ(3)側へ押し出す。
【0008】
この場合、例えば、図4に示すように、先行する物品(1)(1)がコンベヤ(3)上に滞留していると、後続の物品(1)が、先行する物品(1)に当接して最終まで押し出せないことがある。かかる場合は、コンベヤ(3)上に「押せ押せ状態」で滞留している全物品(1)(1)の荷重がプッシャ(4)に作用するから、牽引体(44)と磁石(43)の吸着力を超えた過剰な力学的負荷がプッシャ(4)に働く。すると、牽引体(44)と磁石(43)の結合が強制的に解除され、プッシャ(4)から物品(1)に押圧力が作用しなくなる。これにより、物品(1)がプッシャ(4)で過剰に圧縮されず、該物品(1)が変形・破損する不都合が防止できる。尚、過剰な力学的負荷がプッシャ(4)に作用したときに牽引体(44)と磁石(43)の結合が強制的に解除されて物品(1)の変形等が防止される機能を、以下、「過負荷防止機能」という。
【特許文献1】特開2004−51156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のものでは、牽引体(44)と磁石(43)の吸着力は、プッシャ(4)を牽引体(44)で牽引し得る範囲で可能な限り弱い値に設定されている。信頼性の高い過負荷防止機能を担保するためである。具体的には、牽引体(44)が後退位置(図3の実線の位置)から固定テーブル(2)側の進出位置へ向けて動き始めた直後の加速時に、牽引体(44)と磁石(43)が外れない程度の弱い値に、これら両者の磁気吸着力が設定されている。
【0010】
しかし、牽引体(44)と磁石(43)の磁気吸着力を弱い値に設定すると、過負荷防止機能の信頼性は高くなるものの、牽引体(44)を高速で往復運動させて処理速度を大きくすると、動き始めのプッシャ(4)を固定テーブル(2)側へ向けて大きく加速する必要があり、該加速に必要な力(プッシャ(4)の質量と加速度の積)も大きくなるから、牽引体(44)と磁石(43)の吸着が外れ易くなる。
【0011】
従って、上記従来のものでは、信頼性の高い過負荷防止機能を担保しつつ、処理速度の向上を図ることができない。このことから、剛性の低い物品(1)をプッシャ(4)で高速処理できるようにすることができない、という問題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みて成されたもので、
『後退位置から進出位置へ移動する牽引体(44)と、
前記進出位置へ移動する牽引体(44)に、磁気吸着により連結されて牽引されるプッシャ(4)を具備し、
前記牽引されるプッシャ(4)によって、該プッシャ(4)の移動方向に物品(1)が押し出される物品押出装置』に於いて、信頼性の高い過負荷防止機能を担保しつつ、処理速度を大きくできるようにし、これにより、剛性の低い物品(1)でも高速処理できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[請求項1に係る発明]
前記課題を解決する為の請求項1に係る発明の解決手段は、
『前記牽引により移動し始める前記プッシャ(4)に対し、前記移動方向へ力を作用させる補助加速手段を有する』ことである。
上記解決手段によれば、物品(1)側に移動し始めるプッシャ(4)に、補助加速手段から移動方向の力が作用する。従って、前記移動し始める際のプッシャ(4)の加速度は、前記補助加速手段から作用する力と、牽引体(44)及びプッシャ(4)の磁気吸着力の、両力に基づいて発生する。即ち、プッシャ(4)に加速度を生じさせる力の一部が、補助加速手段からの力で負担される。従って、前記補助加速手段で負担される力に相当する分だけ、牽引体(44)とプッシャ(4)の磁気吸着力を弱い値に設定しても、移動し始めるとき(加速時)のプッシャ(4)を牽引体(44)で最終速度まで加速することができる。
【0014】
よって、前記最終速度まで加速された後には、前記磁気吸着力(弱い値に設定されている)に相当する力学的負荷がプッシャ(4)に作用した時点で、牽引体(44)とプッシャ(4)の結合が解除される。即ち、補助加速手段を具備しない既述従来のものに比べて、小さな力で、牽引体(44)とプッシャ(4)の磁気吸着が解除されるのである。これにより、信頼性の高い過負荷防止機能を担保しつつ、処理速度を大きくすることができる。従って、処理対象たる物品(1)の剛性が低くても、これが変形や破損する心配が少なくなる。
【0015】
[請求項2に係る発明]
請求項1に係る発明に於いて、『前記補助加速手段は、前記プッシャ(4)を前記移動方向に押し出すバネである』ものとすることができる。
このものでは、物品(1)を押し出す方向へ移動し始めるプッシャ(4)がバネで押し出されるから、プッシャ(4)をエアシリンダ等で押し出す場合に比べ、構造の簡略化が図れる。
又、物品(1)を押し出した後に初期位置に復帰移動したプッシャ(4)は、前記バネで受け止められて減速するから、該プッシャ(4)がスムースに停止する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は次の特有の効果を有する。
請求項1に係る発明によれば、プッシャ(4)に対し移動方向へ力を作用させる補助加速手段を設けたから、既述したように、処理対象たる物品(1)の剛性が低くても、これが変形や破損する心配が少なくなる。
【0017】
又、牽引体(44)とプッシャ(4)の磁気吸着力が弱い力で解除されるから、処理対象たる物品(1)に向けて進出するプッシャ(4)が障害物に衝突しても、プッシャ(4)に過剰な力学的負荷が作用せず、該プッシャ(4)の破損を防止できる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、前述のように、プッシャ(4)をエアシリンダ等で押し出す場合に比べ、構造の簡略化が図れる。又、プッシャ(4)は、前記バネで受け止められて減速するから、該プッシャ(4)がスムースに停止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る物品押出装置は、プッシャ(4)が圧縮バネ(6)で固定壁(7)から前方に押し出される点を除いて既述従来のものと同様に構成されている。そして、前記圧縮バネ(6)が既述発明特定事項たる「補助加速手段」に対応している。
【0020】
即ち、本実施の形態のものでは、既述従来のものと同様に、プッシャ(4)の基端部から垂下する脚体(41)には前方に突出する磁石ホルダ(42)が連設されており、該磁石ホルダ(42)の先端部には磁石(43)(本実施の形態では永久磁石)が固定されている。又、磁石(43)の前方には、後退位置(A)と進出位置(B)との間を駆動源(図示せず)で往復運動される牽引体(44)が配設されていると共に、該牽引体(44)は磁石(43)に吸着可能な鉄等の磁性材料で形成されている。尚、磁石(43)に代えて鉄等の磁性体を配設する一方、牽引体(44)を永久磁石で構成してもよい。
【0021】
プッシャ(4)の基端部から垂下する脚体(41)は、牽引体(44)が後退位置(A)にあるときに圧縮バネ(6)で前方に押し出されるようになっている。このため、前記圧縮バネ(6)は、固定壁(7)から突出するバネ保持筒(71)に保持されている。
【0022】
又、既述のものと同様、プッシャ(4)の上面の基端部に突設された係合突起(40)には、その上方に配設されたソレノイド(5)で昇降されるストッパ軸(50)の先端が係脱されるようになっている。
【0023】
このものでは、既述従来のものと同様に、牽引体(44)は駆動源(図示せず)で常に往復運動されていると共に、ソレノイド(5)のストッパ軸(50)は、固定テーブル(2)上に載置された物品(1)を押し出すときにのみ上昇し、これにより、係合突起(40)との係合が解除されるようになっている。従って、ソレノイド(5)のストッパ軸(50)とプッシャ(4)の係合突起(40)が係合している図1の状態では、牽引体(44)は、磁石(43)に当接した後退位置(図1の実線で示す位置)と、固定テーブル(2)側の進出位置(図1の想像線で示す位置)との間を、継続的に往復運動している。
【0024】
そして、本実施の形態に係る物品押出装置では、図1に示すように、牽引体(44)が後退位置(A)にあるときには、プッシャ(4)は圧縮バネ(6)の弾発力で前方に押された状態に維持されている。
【0025】
従って、固定テーブル(2)上に物品(1)が供給されると、ソレノイド(5)のストッパ軸(50)が同図の想像線の位置まで上昇され、これにより、進出位置(B)側に駆動される牽引体(44)と磁石(43)の吸着力と圧縮バネ(6)の付勢力の合力によって、プッシャ(4)が物品(1)側に加速される。これにより、プッシャ(4)に加速度を生じさせる力の一部が、補助加速手段たる圧縮バネ(6)の弾発力で負担される。従って、前記補助加速手段で負担される力に相当する分だけ、牽引体(44)とプッシャ(4)の磁気吸着力を弱い値に設定しても、移動し始めるとき(加速時)のプッシャ(4)を牽引体(44)で最終速度まで加速することができる。
【0026】
よって、前記最終速度まで加速された後には、前記磁気吸着力(弱い値に設定されている)に相当する力学的負荷がプッシャ(4)に作用した時点で、牽引体(44)とプッシャ(4)の結合が解除される。即ち、圧縮バネ(6)を具備しない既述従来のものに比べて、小さな力で、牽引体(44)とプッシャ(4)の磁気吸着が解除されるのである。従って、微弱な磁石(43)を使用することにより、信頼性の高い過負荷防止機能を実現することができる。よって、処理対象たる物品(1)の剛性が低くても、これが変形や破損する心配が少なくなる。
そして、プッシャ(4)が進出位置(B)に到達すると、物品(1)がコンベヤ(3)に押し出される(図2参照)。
【0027】
[その他]
1.上記実施の形態では、圧縮バネ(6)の一端を固定壁(7)のバネ保持筒(71)に保持させたが、圧縮バネ(6)の一端をプッシャ(4)の脚体(41)に固定し、圧縮バネ(6)を固定壁(7)に結合しない構成にしてもよい。
【0028】
2.上記実施の形態では、補助加速手段として圧縮バネ(6)を採用したが、後退位置(A)から動き始めるプッシャ(4)を、エアシリンダで押し出す構成を採用してもよい。
3.磁石(43)を電磁石にすると共に、プッシャ(4)を往復運動させるときにのみ該電磁石に通電させるようにしてもよい。このようにすると、ストッパ軸(50)やソレノイド(5)は不要になる。
【0029】
4.圧縮バネ(6)に代えて、始動時にのみ(4)を移動方向へ引っ張る引っ張りバネを設けてもよい。
5.上記実施の形態では、牽引体(44)の移動方向の後方から磁石(43)が吸着する構成にしたが、磁石(43)をプッシャ(4)の水平アーム部の下面に配設・固定し、該磁石(43)が牽引体(44)の上面に吸着する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の物品押出装置に於いて、物品(1)の押し出し前の状態を示す図。
【図2】本発明の物品押出装置に於いて、物品(1)の押し出し後の状態を示す図。
【図3】従来例の説明図
【図4】従来例の説明図
【符号の説明】
【0031】
(1)・・・物品
(4)・・・プッシャ
(6)・・・圧縮バネ
(44)・・・牽引体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後退位置から進出位置へ移動する牽引体(44)と、
前記進出位置へ移動する牽引体(44)に、磁気吸着により連結されて牽引されるプッシャ(4)を具備し、
前記牽引されるプッシャ(4)によって、該プッシャ(4)の移動方向に物品(1)が押し出される物品押出装置に於いて、
前記牽引により移動し始める前記プッシャ(4)に対し、前記移動方向へ力を作用させる補助加速手段を有する、物品押出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物品押出装置に於いて、
前記補助加速手段は、前記プッシャ(4)を前記移動方向に押し出すバネである、物品押出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−44726(P2008−44726A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222201(P2006−222201)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】