説明

物品移送ケース、物品移送状況管理方法及び管理サーバ

【課題】所定の場所に保管されている物品を必要に応じて現場に移送して使用する場合において、物品移送ケースに収容された物品の個別管理も確実に行う。
【解決手段】物品を収容して移送する物品移送ケース10が、非接触型IDタグ3aを付設した複数の物品を個別に収容する個別収容部を備えると共に、各物品に付設された非接触型IDタグ3aと通信を行うリーダライタ14を備えている。物品が個別収容部に収容されているか否かの存否情報はリーダライタによって認識することができる。リーダライタにより認識された存否情報は物品移送ケース10に設けた無線通信端末により、管理サーバ30に送信される。管理サーバ30は、物品がどの個別収容部に収容されているか、あるいは、収容されるべき個別収容部から取り出されているかの情報を受信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種物品を移送するにあたって、その移送状況を管理可能な物品移送ケース、物品の移送状況管理方法及び管理サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
貴重品などの物品を移送する際に、遠隔地の管理センタに設置した管理サーバにより移送状況を一元管理することが行われている。例えば、特許文献1では、貴重品を収容した貴重品箱と輸送者の携帯端末との間、輸送車両と貴重品箱との間でそれぞれ近距離通信を行うことができるようにし、それぞれの近距離通信の確立の状況を携帯端末から管理サーバに送信し、管理サーバにより、輸送車両の現在位置、貴重品箱が輸送車両に積載されたか否か、貴重品箱の施錠状況等を一元管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、警備会社、有料駐車場管理会社、マンション管理会社等においては、ビル出入口の鍵、駐車場精算機の鍵、マンションの各部屋の鍵など、多数の鍵の管理を委託されている。警備員や管理人等は、これらの鍵を所定の鍵保管場所から持ち出し、ビル出入口、駐車場精算機等の施錠、解錠など必要な作業を行う。現場において複数の部屋や精算機等を開け閉めする必要がある場合には、複数の鍵を一度に持ち出すのが通常である。また、警備員等が管理対象の鍵を常に携行し、その中から必要な鍵のみを使用する場合もある。いずれにしても、従来、このような鍵は、実質的には使用者自らの注意のみによって管理されていることが多く、その使用状況・履歴を客観的に監視することはほとんど行われていない。このため、鍵の紛失、盗難、置き忘れ、不正持ち出しなどの懸念がつきまとう。
【0005】
特許文献1の技術は、貴重品箱の施錠、解錠管理までを行うことができるものの、あくまで箱単位での管理を行っているのみである。所定権限を有する輸送作業員が貴重品箱の施錠、解錠を確実に行ってさえいれば、適切な輸送が行われていると判断されることになる。このため、この貴重品箱に収容されている中身のみが不正に持ち出されたり、盗難等された場合にはそのことを発見することは困難である。従って、特許文献1の技術では、多数の鍵を個別かつ確実に管理するのには適さない。このことは、鍵と同様に、個別管理の要請の高い、宝石、高級時計等の高価な貴重品を移送する場合においても同様である。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、所定の場所に保管されている物品を必要に応じて現場に移送して使用する場合において、各物品を複数個まとめて移送する物品移送ケース単位で移送管理できることはもちろんのこと、物品移送ケースに収容された物品の個別管理も確実に行うことができ、宝石等の貴重品、特に、鍵の移送状況の管理に好適な物品移送ケース、物品の移送状況管理方法及び管理サーバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、物品を収容して移送可能な物品移送ケースであって、非接触型IDタグが付設された複数の物品を個別に収容する個別収容部と、前記個別収容部に収容される各物品に付設された非接触型IDタグと通信を行うリーダライタと、管理サーバとの間で無線通信を行う無線通信端末と、前記各物品が前記個別収容部に収容されているか否かの存否情報を前記リーダライタから前記無線通信端末を介して管理サーバに送信させる制御を行う制御部とを備えることを特徴とする物品移送ケースを提供する。
【0008】
前記物品に付設される非接触型IDタグは、該物品に連結部材を介して付設されており、前記個別収容部は、それぞれ、棚部と、該棚部に隣接する溝部とを備えて構成され、前記非接触型IDタグを棚部に配置し、前記物品を溝部に配置して収容する構成とすることが好ましい。前記リーダライタは、前記各物品に付設された複数の非接触型IDタグの周囲を取り囲んで配置され、それらの全てと通信可能である構成とすることが好ましい。前記無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記管理サーバが、前記GPS受信機により測位された位置情報を受信して現在位置を特定可能であることが好ましい。
【0009】
さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、前記制御部は、該ケース用近距離通信端末と、外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を前記無線通信端末を介して管理サーバに送信させる制御を行う機能を備えることが好ましい。前記物品が鍵であり、前記溝部内に該鍵を配置することにより、該鍵が前記非接触型IDタグとリーダライタとの間の通信の妨げとなることを抑制した構成であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、複数の物品を物品移送ケースに収容して移送する際の移送状況を管理サーバにて管理する物品移送状況管理方法であって、前記物品移送ケースとして、個別収容部と、リーダライタと、無線通信端末と、制御部とを備えたものを用い、前記各物品を、前記リーダライタと通信可能な非接触型IDタグを付設して前記個別収容部に収容し、前記非接触型IDタグとリーダライタとの間の通信状況により、前記物品が個別収容部に収容されているか否かの存否情報を検出し、前記制御部が該存否情報を前記無線通信端末を介して前記管理サーバに送信することにより、前記管理サーバにおいて物品移送ケース内に収容された各物品の移送状況を個別に管理することを特徴とする物品移送状況管理方法を提供する。
【0011】
前記物品移送ケースの無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記管理サーバが、前記GPS受信機で測位された位置情報を受信して前記物品移送ケースの現在位置を特定することが好ましい。前記物品移送ケースには、さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、前記制御部が、外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を前記無線通信端末を介して管理サーバに送信することにより、前記管理サーバにおいて物品移送ケースの他の近距離通信端末に対する相対位置情報も管理することが好ましい。前記他の近距離通信端末は、前記物品移送ケースを移送する移送体が保持し、該移送体が保持している他の近距離通信端末と前記ケース用近距離通信端末との間で通信を行う設定であることが好ましい。前記物品移送ケースに収容される物品が鍵であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、個別収容部と、リーダライタと、無線通信端末と、制御部とを備えた物品移送ケースに、非接触型IDタグが付設された複数の物品を個別に収容して移送する際の移送状況を管理する管理サーバであって、前記物品移送ケース自体の識別情報と共に、前記各物品が前記個別収容部に収容されているか否かの存否情報を前記リーダライタから前記無線通信端末を介して受信する情報受信手段と、前記情報受信手段により受信した存否情報から、前記物品移送ケースの個別収容部に収容された各物品の存否を個別に特定する物品存否情報特定手段とを有することを特徴とする管理サーバを提供する。
【0013】
前記物品移送ケースの無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記情報受信手段により前記GPS受信機で測位された位置情報を受信すると前記物品移送ケースの現在位置を特定する現在位置特定手段を有することが好ましい。前記物品移送ケースには、さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、前記情報受信手段は、前記物品移送ケースの無線通信端末を介して送信される、前記ケース用近距離通信端末と外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を受信可能であり、前記情報受信手段により受信した前記通信状況から、前記物品移送ケースの他の近距離通信端末に対する相対位置情報を求める相対位置判断手段を備えることが好ましい。前記物品存否情報特定手段は、前記情報受信手段により、前記各物品の存否情報を受信した場合に、前記物品移送ケース内における各個別収容部の位置を示す個別収容部イメージを表示させると共に、前記個別収容部イメージ毎に各物品の存否情報をディスプレイに表示させる個別収容部イメージ表示手段を有することが好ましい。前記物品移送ケースの予定移送ルート及び前記各物品の予定使用場所を含むスケジュールを管理するスケジュール管理手段と、前記情報受信手段により受信した各物品の存否情報、物品移送ケースの現在位置情報、物品移送ケースの相対位置情報のいずれか少なくとも一つの情報が前記スケジュール管理手段により管理されたスケジュールと相違するか否かを判別するスケジュール判別手段とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、物品を収容して移送する物品移送ケースが、非接触型IDタグを付設した複数の物品を個別に収容する個別収容部を備えると共に、各物品に付設された非接触型IDタグと通信を行うリーダライタを備えている。従って、物品が個別収容部に収容されているか否かの存否情報はリーダライタによって認識することができる。そして、このリーダライタにより認識された存否情報は物品移送ケースに設けた無線通信端末(なお、本明細書中、単に「無線通信端末」と述べた場合には、近距離通信より通信距離の長い無線通信端末を指す)により、管理サーバに送信される。これにより、管理サーバでは、所定の物品移送ケースにおいて、物品がどの個別収容部に収容されているか、あるいは、収容されるべき個別収容部から取り出されているかの情報を受信することができる。例えば、ある物品が所定の個別収容部から取り出されたことを示す情報が送信されたものの、その後、当該個別収容部に返却されたという情報が所定時間以上受信されなかった場合には、その物品が不正に持ち出されたものと判定する。判定後、例えば、管理サーバが、管理センタにおいて音や光等のアラームを動作させ、管理者に注意を促したり、あるいは、管理サーバから物品移送ケースに対して指令を送信し、物品移送ケースに内蔵したアラームや移送車両に備え付けのアラームを動作させたりすることで、物品移送ケースの近くにいる現場の作業員にそのことを迅速に把握させることもできる。
【0015】
本発明は、このように、物品移送ケース単位での管理に限らず、物品移送ケースに収容した移送対象の各物品の個別の移送状況、使用状況をリアルタイムで管理できる。このため、貴重品、中でも、多数の鍵を一度に現場に持ち運んで物品収容ケースから取り出して作業しなければならないような状況での各物品の厳密な個別管理に適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る物品移送状況管理方法の全体構成を説明するための図である。
【図2】図2は、管理センタの構成を詳細に示した図である。
【図3】図3は、本発明の一の実施形態に係る物品移送ケースを示した図である。
【図4】図4は、物品移送ケースの詳細な構造を示した図であり、(a)は開蓋状態の平面のイメージを示した図であり、(b)は、鍵の収容状態のイメージを示した図である。
【図5】図5は、物品移送ケースの鍵の収容状態を説明するための図である。
【図6】図6は、物品移送ケースの回路構成を示したブロック図である。
【図7】図7は、本発明の一の実施形態に係る管理サーバの構成を示した図である。
【図8】図8は、管理サーバのディスプレイの表示画面の一例を示した図である。
【図9】図9は、管理サーバのディスプレイの表示画面の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて更に詳しく説明する。図1及び図2は、本発明の一の実施形態に係る物品移送状況管理方法の全体構成を説明するための図である。これらの図に示したように、管理センタには、ケース保管室20と管理サーバ30とが設置されており、ケース保管室20には、物品移送ケース10が複数保管されている。本実施形態では、管理センタは、例えば、警備会社の本社や支社等に設置され、当該警備会社等が管理するビルや駐車場精算機等に用いる鍵1を複数管理している。
【0018】
本実施形態の物品移送ケース10は、図3に示したように、本体箱部11と、該本体箱部11の上面開口部を開閉する蓋部12とを備えている。本体箱部11と蓋部12とは背面側において蝶番で連結されており、該背面側を基端部として蓋部12の前面側が上下に回動する。前面側にはダイヤル式ロック機構11aが設けられており、ダイヤル操作により蓋部12のロック、ロック解除がなされる。
【0019】
本体箱部11には、鍵1を収容するための個別収容部13が設けられている。具体的には、図4(a),(b)及び図5に示したように、本体箱部11の底面11bから所定の高さの位置に、本体箱部11の幅方向に沿って長く、かつ、幅方向に直交する方向に所定間隔をおいて例えば3列の棚部131が設けられている。各棚部131は本体箱部11の幅方向に沿って複数の区画131aに区分されている。また、隣接する棚部131間には、溝部132が設けられている。そして、各区画131aと、各区画131aに隣接した溝部132の一部とを合わせて鍵1を収容する個別収容部13を構成している。
【0020】
ここで、鍵1には、リング部材(連結部材)2を介して保持体3が連結されており、該保持体3にRFID等の非接触型IDタグ3aが付設される。上記した棚部131に形成された各区画131aには、保持体3が非接触型IDタグ3aと共に配置され、鍵1は、保持体3を配置した区画131aに隣接する溝部132内に配置される。これにより、本体箱部11において、鍵1の位置よりも上部寄りに非接触型IDタグ3aが配置されることになる。なお、鍵1が溝部132内で不安定にならないようにスポンジ等のスペーサ133を鍵1の回りに配置しておくことが好ましい。
【0021】
物品移送ケース10はまた、リーダライタ14、無線通信端末15、制御部16を有している。リーダライタ14は、図4及び図6に示したように、個別収容部13を構成する棚部131の各区画131aに配置された複数の非接触型IDタグ3aの全てを取り囲むループアンテナ141と、リーダライタ本体部142とを有する。非接触型IDタグ3aとリーダライタ14(ループアンテナ141)との間では、定期的に又は常に通信を行っており、各非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間で通信が確立されるか否かにより、鍵1の確認が可能となっている。また、ループアンテナ141は、複数の非接触型IDタグ3aの全てを取り囲んでいるため、いずれの非接触型IDタグ3aとも通信可能となっている。例えば、No.1の個別収容部13に収容された鍵1が取り出されたりあるいは返却された場合、No.60の個別収容部13に収容された鍵1が取り出されたりあるいは返却された場合等、いずれの鍵1が取り出されたりあるいは返却されても、全ての非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間で通信が可能になっている。なお、個別収容部13に収容した状態では、非接触型IDタグ3aは棚部131の所定の区画131a上に位置し、鍵1は溝部132内に位置しており、鍵1の方が非接触型IDタグ3aよりも低い位置にある。このため、本実施形態では、ループアンテナ141を本体箱部11の上方寄りに配置することにより、金属製の鍵1が、非接触型IDタグ3a及びループアンテナ141間の通信の妨げとなることは抑制される構造となっている。
【0022】
無線通信端末15は、上記したように、近距離通信より通信距離の長い無線通信端末である。近距離通信端末は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)の場合で、数十m〜100m程度であり、それよりも通信距離の長い端末を指す。本実施形態では、携帯電話で採用されている無線通信モジュールを用いている。この無線通信モジュールは、GPS(Global Positioning System) 受信機を備えることが好ましい。GPS受信機によって、当該無線通信端末15の現在位置、すなわち、物品移送ケース10の現在位置を測位できる。
【0023】
無線通信端末15は、インターネット等の通信回線と接続可能になっており、該通信回線を介して管理サーバ30に情報を送信する。この情報には、リーダライタ14により検出される、各非接触型IDタグ3a(鍵1)が個別収容部13に収容されているか否かの存否情報、GPS受信機により測位された物品移送ケース10の現在位置情報等が含まれる。
【0024】
制御部16は、リーダライタ14及び無線通信端末15と接続され、リーダライタ14からの読み取り情報を受け取り、その情報を、無線通信端末15を介して管理サーバ30に送信させる制御を行う。また、管理サーバ30から無線通信端末15に情報が送信された場合には、その情報を制御部16に接続された記憶部16aに書き込む制御等も行う。
【0025】
物品移送ケース10は、さらに、ケース用近距離通信端末17を備えることが好ましい。ケース用近距離通信端末17は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band(超広帯域無線))等が用いられ、制御部16により制御される。ケース用近距離通信端末17は、物品移送ケース10の外部に配置された他の近距離通信端末40との間で定期的に又は常に通信を行っている。制御部16は、両者間の通信が確立されるか否かの通信状況を把握し、無線通信端末15を介して管理サーバ30に情報として送信する。他の近距離通信端末40は、物品移送ケース10を移送している移送体、例えば、人(作業員)、移送車両あるいは両者に備え付けることができる。例えば、作業員が所持していれば、当該作業員と物品移送ケース10との間の相対位置が所定以上の距離となった場合には通信できなくなり、何らかの事情(例えば盗難)により、当該物品移送ケース10がそれを取り扱うべき適切な作業員から離れたことを意味する。移送車両に備え付けた場合も、その近距離通信端末40との間での通信が確立できなくなった場合には、物品移送ケース10が移送車両から離れ、何らかの事情が生じたことを意味する。
【0026】
管理センタに設置されるケース保管室20は、図2に示したように、物品移送ケース10を複数保管可能であると共に、非接触型充電ステーション21を有する。物品移送ケース10には、非接触型充電(受電部)ユニット18を付設しておく。これにより、物品移送ケース10をケース保管室20内の非接触型充電ステーション21に接近させるだけで、非接触型充電(受電部)ユニット18への充電がなされる。非接触型充電にすれば、充電作業が容易であるが、接触型とすることももちろん可能である。
【0027】
ケース保管室20には、近距離無線通信用の中継装置22が配置されている。管理サーバ30を操作して、所定の情報を送信すれば、この中継装置22を通じてケース用近距離通信端末17によって受信され、所定の情報を制御部16の記憶部16aに書き込むことができる。所定の情報には、例えば、後述のスケジュール管理手段35から送信される移送予定に関するスケジュール情報等がある。
【0028】
次に、管理サーバ30の構成について説明する。管理サーバ30の記憶部には、図7に示したように、コンピュータプログラムである情報受信手段31、物品存否情報特定手段32、現在位置特定手段33、相対位置判断手段34、スケジュール管理手段35、スケジュール判別手段36等が設定されている。なお、これらのコンピュータプログラムは、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROMなどの記録媒体へ記憶させて提供することもできるし、通信回線を通じて伝送することも可能である。
【0029】
情報受信手段31は、インターネット等の通信回線を介して、物品移送ケース10の無線通信端末15から送信される各種情報を受信する。受信する情報には、物品移送ケース10自体の識別番号(識別情報)、鍵1の個別収容部13における存否情報、物品移送ケース10の現在位置情報、物品移送ケース10と他の近距離通信端末40との相対位置情報等が含まれる。
【0030】
物品存否情報特定手段32は、情報受信手段31が、物品移送ケース10自体の識別番号と共に、各鍵1の個別収容部13における存否情報を受信すると、その物品移送ケース10の中で、取り出されている鍵1と収容されたままの状態の鍵1とを特定する。
【0031】
物品存否情報特定手段32は、個別収容部イメージ表示手段32aを有することが好ましい。個別収容部イメージ表示手段32aは、図8に示したように、物品移送ケース10の蓋部12を開放した際に視認できる個別収容部13のイメージ(個別収容部イメージ)をディスプレイ30aに表示し、各個別収容部13の中で鍵1が収容されているもの(保管中)、取り出されているもの(貸出中)を区別して表示する。これにより、管理サーバ30を操作している管理者は視覚的に容易に鍵1の現在の存否の状況を把握することができる。個別収容部イメージ表示手段32aによって、各鍵1の収容位置を特定するため、ある鍵1が収容されるべき個別収容部13が特定されるようにしておくことが好ましい。これは、例えば、ある識別番号の鍵1が所定番号の個別収容部13に収容されるように予め決めておき、作業員はそれらの番号を目印に所定の個別収容部に収容するようにしたり、あるいは、個別収容部13の形状を加工するなどして、所定の鍵1が対応する個別収容部13にしか収容できないようにしたりすることで、個別収容部13の位置が特定されるようにしてもよい。
【0032】
現在位置特定手段33は、情報受信手段31が、無線通信端末15のGPS受信機で測位された位置情報を受信すると、物品移送ケース10の現在位置を特定する。特定された物品移送ケース10の現在位置は、地図上にプロットし、例えば、図9に示したように、ディスプレイ30a上に表示させる。これにより、物品移送ケース10のうちいずれの識別番号のものが、現在どの位置に所在しているのか、移送車両に積載されて移動中なのか、予定の顧客先に到着した状態なのか等、物品移送ケース10の現在位置が明確になる。
【0033】
相対位置判断手段34は、情報受信手段31が受信した物品移送ケース10のケース用近距離通信端末17と、作業員等が保持している他の近距離通信端末40との通信状況から、両者間の相対位置情報を求める。例えば、ケース用近距離通信端末17及び他の近距離通信端末40間の通信可能距離が50mであるとすると、両者間の距離が50m以内の場合には両者間で通信が確立されていることの情報が無線通信端末15を介して送信されるが、50mより離れると両者間の通信が確立されなくなり、両者間で通信を確立されていることを示す情報が送信されなくなる。
【0034】
相対位置判断手段34は、このように両者間で通信が確立されていることの情報が送信されている間は、物品移送ケース10の近辺に移送作業を行うのに適切な近距離通信端末40を所持した作業員がいると判断するが、両者間の通信が確立されていることの情報が送信されなくなった場合には、物品移送ケース10が適切な作業員から50mを超えて離れたと判断する。作業員から50mを超えて離れたような場合には、盗難等された可能性があることから、相対位置判断手段34は、そのような判断をした時点で警告用のアラーム(音、光等)を動作させる。警告用のアラームは、管理サーバ30に接続された管理センタ内のアラームを動作させることもできるし、管理サーバ30から無線通信端末15を介して物品移送ケース10側にアラーム発生指令を送信し、例えば、物品移送ケース10や移送車両に付設した警報器から大音量を発生させるようにすることができる。これにより、作業員が気づかない間に物品移送ケース10が盗難されたり、置き忘れたりすることを防止できる。
【0035】
スケジュール管理手段35は、物品移送ケース10を移送する際の予定移送ルートを含むスケジュールを管理する。例えば、図1の例では、物品移送ケース10を移動拠点Aに11:00に移送し、他の物品移送ケースを移動拠点Bに12:00に移送するといった予定を管理する。また、スケジュール管理手段35は、物品移送ケース10に収容した各鍵1の予定使用場所も管理する。例えば、ある物品移送ケース10の個別収容部13のNo.1に収容された鍵1が図1の移動拠点Aにおける店舗入口用として使用され、他の物品移送ケース10の個別収容部13のNo.20,NO.30の2つの鍵1が図1の移動拠点Bの駐車場精算機に使用される予定であることを管理する。
【0036】
スケジュール判別手段36は、現在位置特定手段33により特定される物品移送ケース10の現在位置とスケジュール管理手段35により管理されている予定移送ルートを比較することで、物品移送ケース10が正しく移送されているか否かを判断する。スケジュール判別手段36は、物品移送ケース10が正しいルートで移送されてないと判定した場合には、管理サーバ30に音、光等によるアラームを発生させ、管理者に警告を促す。また、物品移送ケース10や移送車両にアラームを発する旨の指令を送信し、物品移送ケース10等においてアラームを発生させる。
【0037】
スケジュール判別手段36はまた、例えば、物品移送ケース10に収容されたNo.1の鍵1が、ある場所に到着したならば、個別収容部13から取り出されて使用されるはずであるにも拘わらず、当該物品移送ケース10が他の場所に到着したことを現在位置特定手段33により特定された時点で、物品存否情報特定手段32によりこのNo.1の鍵1が取り出されたこと(物品移送ケース10内に存在しないこと)を受信したならば、不正な使用と判別し、上記と同様に管理サーバ30や物品移送ケース10においてアラームを発するようにすることもできる。
【0038】
本実施形態によれば、管理サーバ30のスケジュール管理手段35は、例えば、ある日において移送する物品移送ケース10の識別情報を特定し、移送スケジュールを記憶する。例えば、識別番号「0123〜0125」の3個の物品移送ケース10について、識別番号「0123」の物品移送ケース10は、11:00に移動拠点Aで個別収容部13のうちのNo.1の鍵1を取り出して店舗入口を解錠し、識別番号「0124」及び識別番号「0125」の物品移送ケース10は、12:00に移動拠点Bに到着したならば、識別番号「0124」のNo.20の鍵1及び識別番号「0125」のNo.30の鍵1を取り出して、駐車場精算機を解錠するというスケジュールを記憶する。次いで、スケジュール管理手段35は、移送対象の物品移送ケース10の識別番号を中継装置22を介して送信し、各物品移送ケース10をケース保管室20内から所定の作業員が運び出すことができる設定に切り換える。
【0039】
作業員は、ケース保管室20の出入口を例えば電子認証等を経て開け、上記の識別番号「0123〜0125」の3個の物品移送ケース10を運び出し、移送車両に積載し、まず、移動拠点Aに移送する。物品移送ケース10には、GPS受信機を備えた無線通信端末15が設けられているため、物品移送ケース10の現在位置情報は逐次管理サーバ30に送信され、図9に示したように、その現在位置がディスプレイ30aに表示される。そして、スケジュール判別手段36が、予定移送ルートに沿って物品移送ケース10が移送されているか否かを判断する。移送車両に積載された物品移送ケース10が移動拠点Aに到着すると、その現在位置情報がスケジュール判別手段36により確認される。次いで、作業員は、識別番号「0123」の物品移送ケース10を移送車両から持ち出し、物品移送ケース10の蓋部12を開け、No.1の鍵1を取り出す。この際、鍵1の非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間での通信状況が検出され、当該鍵1が個別収容部13から取り出されたことが判別され、その情報は無線通信端末15を介して管理サーバ30に送信される。管理サーバ30では、情報受信手段31によりその情報を受信し、物品存否情報特定手段32がその鍵1の場所を特定し、個別収容部イメージ表示手段32aが、図8に示したように、取り出された鍵1の位置の色表示を変化させるなどして「貸出中」である旨をディスプレイ30aに表示させる。
【0040】
所定の作業が終了すると、当該鍵1が返却される。確実に返却された場合には、非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間での通信が確立されるため、その通信確立の情報が管理サーバ30に送信されて情報受信手段31により受信される。鍵1が予定通りの時間内に返却された場合には、No.1の鍵1の色表示が「保管中」を示す色表示に戻される。なお、鍵1が予定時間を過ぎても返却されたことが検知されない場合、すなわち、非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間で通信が確立されない場合には上記したように所定のアラームが発せられる。
【0041】
次に、移送車両は、移動拠点Bに向かう。移動拠点Bでは識別番号「0124」「0125」の物品移送ケース10を使用する。所定時間に移動拠点Bに向かったか否かは、上記と同様に、管理サーバ30は、各無線通信端末15からの現在位置情報を受信し、スケジュール判別手段36により確認する。移動拠点Bに到着したならば、作業員は、識別番号「0124」のNo.20の鍵1及び識別番号「0125」のNo.30の鍵1を取り出し、スケジュール通り、駐車場精算機を解錠する。この際も上記と同様に、各非接触型IDタグ3aとリーダライタ14との間で通信がなされ、鍵1が取り出されたか否かの情報が管理サーバ30に送信され、予定時間内に返却されるか否かも確認される。
【0042】
本実施形態によれば、各鍵1を個別収容部13から出し入れした状況を個別に管理できると共に、鍵1を収容する物品移送ケース10の現在位置情報、物品移送ケース10と作業員等が保持する他の近距離通信端末40との間の相対位置情報を管理可能である。このため、物品移送ケース10単位でのリアルタイムでの状況管理はもちろんのこと、その内部に収容された各鍵1の個別の管理もリアルタイムで確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、鍵の個別かつ確実な管理が可能であり、警備会社、有料駐車場管理会社、マンション管理会社等において多数の鍵を管理するのに適している。また、物品を個別かつ確実に管理できるため、鍵に限らず、宝石、高級時計等の貴重品の個別管理にも適している。
【符号の説明】
【0044】
1 鍵
2 連結部材
3 保持体
3a 非接触型IDタグ
10 物品移送ケース
13 個別収容部
131 棚部
131a 区画
132 溝部
14 リーダライタ
141 ループアンテナ
142 リーダライタ本体
15 無線通信端末
16 制御部
16a 記憶部
17 ケース用近距離通信端末
20 ケース保管室
30 管理サーバ
30a ディスプレイ
31 情報受信手段
32 物品存否情報特定手段
32a 個別収容部イメージ表示手段
33 現在位置特定手段
34 相対位置判断手段
35 スケジュール管理手段
36 スケジュール判別手段
40 他の近距離通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容して移送可能な物品移送ケースであって、
非接触型IDタグが付設された複数の物品を個別に収容する個別収容部と、
前記個別収容部に収容される各物品に付設された非接触型IDタグと通信を行うリーダライタと、
管理サーバとの間で無線通信を行う無線通信端末と、
前記各物品が前記個別収容部に収容されているか否かの存否情報を前記リーダライタから前記無線通信端末を介して管理サーバに送信させる制御を行う制御部と
を備えることを特徴とする物品移送ケース。
【請求項2】
前記物品に付設される非接触型IDタグは、該物品に連結部材を介して付設されており、前記個別収容部は、それぞれ、棚部と、該棚部に隣接する溝部とを備えて構成され、前記非接触型IDタグを棚部に配置し、前記物品を溝部に配置して収容する請求項1記載の物品移送ケース。
【請求項3】
前記リーダライタは、前記各物品に付設された複数の非接触型IDタグの周囲を取り囲んで配置され、それらの全てと通信可能である請求項1又は2記載の物品移送ケース。
【請求項4】
前記無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記管理サーバが、前記GPS受信機により測位された位置情報を受信して現在位置を特定可能である請求項1〜3のいずれか1に記載の物品移送ケース。
【請求項5】
さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、
前記制御部は、該ケース用近距離通信端末と、外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を前記無線通信端末を介して管理サーバに送信させる制御を行う機能を備える請求項1〜4のいずれか1に記載の物品移送ケース。
【請求項6】
前記物品が鍵であり、前記溝部内に該鍵を配置することにより、該鍵が前記非接触型IDタグとリーダライタとの間の通信の妨げとなることを抑制した構成である請求項1記載の物品移送ケース。
【請求項7】
複数の物品を物品移送ケースに収容して移送する際の移送状況を管理サーバにて管理する物品移送状況管理方法であって、
前記物品移送ケースとして、個別収容部と、リーダライタと、無線通信端末と、制御部とを備えたものを用い、
前記各物品を、前記リーダライタと通信可能な非接触型IDタグを付設して前記個別収容部に収容し、
前記非接触型IDタグとリーダライタとの間の通信状況により、前記物品が個別収容部に収容されているか否かの存否情報を検出し、前記制御部が該存否情報を前記無線通信端末を介して前記管理サーバに送信することにより、前記管理サーバにおいて物品移送ケース内に収容された各物品の移送状況を個別に管理することを特徴とする物品移送状況管理方法。
【請求項8】
前記物品移送ケースの無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記管理サーバが、前記GPS受信機で測位された位置情報を受信して前記物品移送ケースの現在位置を特定する請求項8記載の物品移送状況管理方法。
【請求項9】
前記物品移送ケースには、さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、前記制御部が、外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を前記無線通信端末を介して管理サーバに送信することにより、前記管理サーバにおいて物品移送ケースの他の近距離通信端末に対する相対位置情報も管理する請求項7又は8記載の物品移送状況管理方法。
【請求項10】
前記他の近距離通信端末は、前記物品移送ケースを移送する移送体が保持し、該移送体が保持している他の近距離通信端末と前記ケース用近距離通信端末との間で通信を行う設定である請求項9記載の物品移送状況管理方法。
【請求項11】
前記物品移送ケースに収容される物品が鍵である請求項7〜10のいずれか1に記載の物品移送状況管理方法。
【請求項12】
個別収容部と、リーダライタと、無線通信端末と、制御部とを備えた物品移送ケースに、非接触型IDタグが付設された複数の物品を個別に収容して移送する際の移送状況を管理する管理サーバであって、
前記物品移送ケース自体の識別情報と共に、前記各物品が前記個別収容部に収容されているか否かの存否情報を前記リーダライタから前記無線通信端末を介して受信する情報受信手段と、
前記情報受信手段により受信した存否情報から、前記物品移送ケースの個別収容部に収容された各物品の存否を個別に特定する物品存否情報特定手段と
を有することを特徴とする管理サーバ。
【請求項13】
前記物品移送ケースの無線通信端末がGPS受信機を備えており、前記情報受信手段により前記GPS受信機で測位された位置情報を受信すると前記物品移送ケースの現在位置を特定する現在位置特定手段を有する請求項12記載の管理サーバ。
【請求項14】
前記物品移送ケースには、さらに、ケース用近距離通信端末が設けられており、
前記情報受信手段は、前記物品移送ケースの無線通信端末を介して送信される、前記ケース用近距離通信端末と外部に配置された他の近距離通信端末との間での通信状況を受信可能であり、
前記情報受信手段により受信した前記通信状況から、前記物品移送ケースの他の近距離通信端末に対する相対位置情報を求める相対位置判断手段を備える請求項12又は13記載の管理サーバ。
【請求項15】
前記物品存否情報特定手段は、前記情報受信手段により、前記各物品の存否情報を受信した場合に、前記物品移送ケース内における各個別収容部の位置を示す個別収容部イメージを表示させると共に、前記個別収容部イメージ毎に各物品の存否情報をディスプレイに表示させる個別収容部イメージ表示手段を有する請求項12〜14のいずれか1に記載の管理サーバ。
【請求項16】
前記物品移送ケースの予定移送ルート及び前記各物品の予定使用場所を含むスケジュールを管理するスケジュール管理手段と、
前記情報受信手段により受信した各物品の存否情報、物品移送ケースの現在位置情報、物品移送ケースの相対位置情報のいずれか少なくとも一つの情報が前記スケジュール管理手段により管理されたスケジュールと相違するか否かを判別するスケジュール判別手段と
を備えることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1に記載の管理サーバ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−260700(P2010−260700A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113957(P2009−113957)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(508376188)日昭電器株式会社 (4)
【Fターム(参考)】