説明

物品管理方法および物品

【課題】ICタグで管理が困難、またはICタグで管理できない物品の管理を行なえるようにすること。
【解決手段】ボルト10(物品)を管理するための物品管理方法であって、ボルト10に電子透かしパターン12を目に見える形で模様的にかつ直接描画し、その電子透かしパターン12に埋め込まれた情報を用いて上記物品を管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理方法および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術は、非接触型のIC(Integrated Circuit)タグを利用した在庫管理に関する技術である。当該技術は、管理すべき物品を梱包する梱包体にICタグを取り付けることによって、ICタグの破損防止や再利用を図った管理方法である。
【0003】
特許文献2に開示される技術は、物品に取り付けられた銘板に金属板を供えたRFID(Radio Frequency Identification)タグを、物品に固定して物品管理を行なう技術である。当該技術は、金属材料に発生する渦電流がリーダとの通信障害を引き起こすという問題を解決し、確実かつ容易に物品管理を行なうことができる管理方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−041485号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2007−199867号公報(段落〔0018〕参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、非接触型のICタグやRFIDタグを用いた物品の管理方法が従来から提案されている。しかし、上述した従来の物品管理方法で用いられる非接触型のICタグ(RFIDタグも含むが、以下、便宜上「ICタグ」で統一する)は、以下の3点の課題がある。
【0006】
第1に、非接触型のICタグを直接物品に装着できない場合(たとえば対象物品が小さくてICタグの取り付けが困難である場合など)、特許文献1に開示されているように当該物品を梱包する箱や収納する容器に装着することになる。このような方法では物品管理をするための手間がかかる上に、当該物品と非接触型のICタグは常に一体化していなければならず柔軟性が損なわれる。また、たとえば医療用器具のレンタル・リースをおこなう場合は、当該医療用器具は梱包体から取り出されて使用されるので、特許文献1に開示されている従来の物品管理方法をそのまま採用することができない。
【0007】
第2に、対象物品が金属材から構成される場合は、特許文献2に開示されているように金属板で非接触型のICタグを挟んで対象物品に装着する等の方法によらなければ対象物品を容易に管理することができない。また、そのような金属板を備えたICタグは可撓性がなく、たとえば自動車のドライブシャフトに用いられる等速ジョイントを製造するための金属製の丸棒や建造物やジェットコースターなどを連結するためのボルトにICタグを直接装着することは困難である。更に、仮にそのような特殊なICタグを製造して対応しようとするとその製造コストが余計に生じ、単価の安い金属材を用いた部品にあっては特許文献2に開示されている従来の物品管理方法を容易に採用することができない。
【0008】
第3に、一つの部品を構成するための複数の構成部品(以下、個品とする)を生産・加工する場合に、上述したICタグを用いて当該部品および個品をそれぞれ管理することは煩雑である。また、個品にICタグを取り付けた場合個品の加工作業時に当該個品に装着されたICタグ自体が作業効率に影響する恐れがある。たとえば、車のドライブシャフトとして用いられる等速ジョイントの原材料である金属の丸棒を生産・加工する場合に、車の製造工程とは別に当該個品の生産・加工工程の管理をICタグで行なうことは非常に煩雑である。また、仮に金属の丸棒にICタグが取り付けられていると、ICタグ自体が加工の邪魔となるための従来のICタグによる管理方法を採用することができない。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的はICタグで管理が困難、またはICタグで管理できない物品の管理を行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述した課題を解決するために、以下のように構成した。
【0011】
すなわち、本発明は、物品を管理するための物品管理方法であって、物品に電子透かしパターンを目に見える形で模様的にかつ直接描画し、その電子透かしパターンに埋め込まれた情報を用いて物品を管理することを特徴とする。
【0012】
このような物品管理方法を採用することで、ICタグで管理が困難、またはICタグで管理できない物品であっても容易に物品の管理をすることが可能となる。
【0013】
他の発明は、上述した発明に加え、電子透かしパターンは、その中に同一情報が繰り返し記録されているものとし、物品の凹凸面、曲面、光沢面のいずれか一つまたは複数に描画してあることを特徴とする。
【0014】
このような物品管理方法を採用することで、管理する対象物品の形状にほとんど依存することがなくなる。また、管理情報がよもやそのような場所に付されているとは思わないので、情報の安全性が高まる。
【0015】
また、電子透かしパターンは繰り返し同一情報が埋め込まれているため、物品の凹凸面、曲面、光沢面に記録されている電子透かしパターンのうちの一部を読み取ることができれば、情報を取得することができる。したがって、電子透かしパターンが描画された面すべてを読み取れる状況になくてもよい。
【0016】
他の発明は、上述した発明に加え、物品は、樹脂材、金属材、セラミック材、木材、紙類、ガラス材、ゴム材のいずれか一つまたはこれらを複数組み合わせて構成される物品であることを特徴とする。
【0017】
このような物品管理方法を採用することで、管理する物品の素材にほとんど依存することがなくなる。また、管理する物品が、樹脂材、金属材、セラミック材、木材、紙類、ガラス材、ゴム材のいずれか一つまたはこれらを複数組み合わせて構成される物品であっても、電子透かしパターンを描画できるため、ICタグで管理が困難または、ICタグで管理できなかった物品の管理を行なうことができる。
【0018】
更に他の発明は、上述した発明に加え、電子透かしパターンとして描画された情報は、物品又は物品に関連したシリアル番号、製造ロット番号、製造日、製造場所、製造機器、製造担当者、真贋判定情報の少なくともいずれか一つまたはこれらと関連付けられた識別情報であることを特徴とする。
【0019】
このような物品管理方法を採用することで、物品管理者が望む管理目的に応じて物品又は物品に関連したシリアル番号、製造ロット番号、製造日、製造場所、製造機器、製造担当者、真贋判定情報の少なくともいずれか一つまたはこれらと関連付けられた識別情報を電子透かしパターンとして埋め込んで、容易に物品の管理を行なうことができる。
【0020】
更に他の発明は、表面に電子透かしパターンを目に見える形で模様的にかつ直接描画した物品であることを特徴とする。
【0021】
このように電子透かしパターンを直接描画することで、電子透かしパターンが物品に半永久的に付される。したがって、従来の物品に取り付けられていたICタグのような精密機器ではないため、物品が管理される外部環境の影響により、ICタグが破損するなどの心配もなく、容易に物品の管理を行なうことができる。
【0022】
更に他の発明は、上述した発明に加え、電子透かしパターンは、その中に同一情報が繰り返し記録されていると共に前記表面に凹凸が生ずる形でマーキングされている物品であることを特徴とする。
【0023】
このように電子透かしパターンをマーキングすることで、年代を経て電子透かしパターンの一部に錆びやキズができ、読み取れないほどに汚れてしまった場合でも、他の部分の電子透かしパターンから埋め込まれた情報を読み取ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ICタグで管理が困難、またはICタグで管理できない物品の管理を行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る物品を示すもので物品となるボルト10の頭部11の上側(図1では下方側)の表面略全体に電子透かしパターン12を描画した図である。この電子透かしパターン12は、頭部11の上側表面にうっすらと目に見える形でかつ模様的にしかも直接描画されている。電子透かしパターン12に埋め込まれている情報は、同じものが数十個繰り返し配置されている。数十個の同じ情報の各々は、非常に小さい領域内に埋め込まれている。
【0027】
このように電子透かしパターン12を頭部11の表面略全体に描画し、電子透かしパターン12の情報を生産管理情報とすることで、従来のICタグやQRコード(登録商標)では管理することが困難であったボルト10の在庫管理が行なうことができる。また、電子透かしパターン12の情報を製造日や使用限度日などの耐久性を示す情報とした場合、ボルト10が使用されている建築物や装置自体の安全品質管理等を行なうことができる。
【0028】
また、YAG(Yttrium Aluminum Garnet 以下、単にYAGとする)レーザーやCO2レーザーを発振するレーザー発振機を有するレーザーマーカ等を使用してボルト10の頭部11に電子透かしパターン12の凹凸を生成する方法で描画している。このため、電子透かしパターン12は、半永久的にボルト10に付されているものとなる。したがって、年代を経てボルト10に多少のキズや汚れ、錆びが生じても、残りの部分は、最初の状態を維持でき、その部分を専用のCCD(Charge Coupled Device 以下単にCCDとする)機能付リーダによって読み取ることが可能である。
【0029】
また、電子透かしパターン12は上述したようにレーザーマーカで凹凸が生じるように刻み込まれている。このため、仮にボルト10を複製するまたは電子透かしパターン12を改竄するためには、電子透かしパターン12が刻印された同一の金型を作成して複製することが求められ、このようなボルト10を複製することまたは電子透かしパターン12に記録されている情報を改竄することはほとんど不可能となる。なお、電子透かしパターン12のマーキング方法は後述する。
【0030】
(実施形態2)
図2は、本発明の第2実施形態に係る物品を示す図で、(A)は、物品(医療用器具)である骨削り用やすり20の凹凸面21の一部に電子透かしパターン22を描画した図で、(B)は、電子透かしパターン22が描画されている凹凸面21の一部を拡大した図である。この電子透かしパターン22も電子透かしパターン12と同様で、骨削り用やすり20の表面にうっすらと目に見える形で、模様的にかつ直接描画されている。また、凹凸によって電子透かしパターン22を形成することや電子透かしパターン22には同一の情報が繰り返し含まれていることは電子透かしパターン12と同様である。
【0031】
このように骨削り用やすり20の凹凸面21の一部に電子透かしパターン22を描画することもできる。これは、電子透かしパターン22には同一情報が繰り返し記録されているため、CCD機能付装置などにより部分読み取りが可能であれば、凹凸面であっても読み取ることができるからである。なお、骨削り用やすり20の柄23の一部分に電子透かしパターン22を描画しても勿論よい。
【0032】
このような管理方法を採用することにより、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、たとえば骨削り用やすり20をレンタル・リースする場合でも、電子透かしパターン22内の情報として、骨削り用やすり20のシリアル番号、製造ロット番号、製造日、製造先、納入先のいずれか一つまたは複数を埋め込むことでレンタル・リースする業者が骨削り用やすり20のトレーサビリティの確保をすることもできる。
【0033】
なお、骨削り用やすり20の柄23の一部分に電子透かしパターン22を描画する場合には、表面の凹凸は0.1ミクロン〜0.5ミクロンまでの深さで描画することが好ましい。骨削り用やすり20は、医者が薄い手袋を装着して使用するため、電子透かしパターン22を描画する深さが上記の範囲内で行なうと手袋を破く恐れがなくなると共に描画の保存性が良くなるからである。
【0034】
(実施形態3)
図3は、本発明の第3実施形態に係る物品を示す図で、(A)は物品(切削工具)であるリーマ30の曲面31の一部に電子透かしパターン32を描画した図で、(B)は、曲面31の一部に電子透かしパターン32が描画されている部分を拡大した図である。なお、リーマ30は、金属板にドリルなどで空けられた穴を拡大したり、形状を整えたりする切削工具(物品)である。また、この電子透かしパターン32も電子透かしパターン12、22と同様で、リーマ30の表面にうっすらと目に見える形で、模様的にかつ直接描画されている。また、凹凸によって電子透かしパターン32を形成することや電子透かしパターン32には同一の情報が繰り返し含まれていることは電子透かしパターン12、22と同様である。
【0035】
リーマ30は、表面が研磨され、チタンコーティング等がなされており光沢のあるものが多いが、このような部分であっても電子透かしパターン32を描画することができる。なお、リーマ30の曲面31以外の部分、例えばリーマ30の刃33に電子透かしパターン32を描画しても勿論よい。
【0036】
このような管理方法を採用することにより、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
(実施形態4)
図4は、本発明の第4実施形態に係る物品を示す図で、(A)は、物品である骨董品40を正面からみた図で、(B)は、裏面41の一部に電子透かしパターン42が描画されている図である。このように一品生産または限定生産されるような物品であっても美観を損ねることなく、電子透かしパターン42を描画することができる。この電子透かしパターン42も電子透かしパターン12、22、32と同様で、骨董品40の表面にうっすらと目に見える形で、模様的にかつ直接描画されている。また、凹凸によって電子透かしパターン42を形成することや電子透かしパターン42には同一の情報が繰り返し含まれていることは電子透かしパターン12、22、32と同様である。
【0038】
このような管理方法を採用することで、第1〜第3実施形態と同様の効果を奏するほか、電子透かしパターン42の情報として、シリアル番号、生産者名、納入者名、製造日などの1つまたは複数を埋め込むことで、専門的な知識を有した人間の判断を仰ぐことなく、本物の骨董品であるか否かの真贋判定を即時かつ簡単に行なうことが可能となる。
【0039】
また、例えば骨董品40を販売した古物商は、生産者、納入者、製造日などが分かることで骨董品の物品管理はもちろん、トレーサビリティを確保することが可能となる。
【0040】
続いて、各実施形態に係る電子透かしパターンを描画する方法について図5〜7を参照しながら説明する。
【0041】
(電子透かしパターン画像生成装置について)
図5は、図1から図4に示す物品にマーキングする電子透かしパターン12、22、32、42の画像を生成するための電子透かしパターン画像生成装置50の機能概念図である。
【0042】
電子透かしパターン画像生成装置50は、ソフトウェアで実現される情報処理機能としては電子透かし情報量制御部51、電子透かし情報取得部52、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号化部53、ECC(Error Check and Correct:誤り訂正検査)符号化部54、繰り返し符号生成部55、電子透かし埋め込み部56などから構成される。
【0043】
また、電子透かしパターン画像生成装置50は、一般的なフォン・ノイマン型コンピュータであり、ハードウェアとしては図示しない制御部、記憶部、出力部、入力部などから構成される。
【0044】
制御部は、たとえばCPU(Central Processing Unit)である。また、記憶部は、たとえばRAM(Randam Access Memory)、ROM(Read On Memory)である。出力部は、たとえばディスプレイである。入力部は、たとえばキーボードやマウスである。これらはバスを介して各々接続されている。
【0045】
電子透かしパターン画像生成装置50は、上述したソフトウェアで実現される情報処理機能をハードウェア資源により協働させて、電子透かし情報列を繰り返して生成される電子透かしパターン列をコンテンツ画像に埋め込む。なお、電子透かしパターン列をコンテンツ画像に繰り返して埋め込むこと、および電子透かし情報に訂正符号データ及び誤り訂正データを付加することで、電子透かし情報の読み取り時における誤検出の防止を図っている。
【0046】
続いて、具体的に電子透かしパターン画像生成装置50を用いて電子透かしパターン12、22、32、42の画像を生成する方法について説明する。
【0047】
図6は、図1から図4に示す物品にマーキングする電子透かしパターン画像12、22、32、42を生成するフローチャートを示した図である。図7は、図5に示す電子透かしパターン生成装置により生成される電子透かし情報のビット列の例を示す図で、(A)は、電子透かし情報列の最小単位のビット列を示した図で、(B)は電子透かしパターン列のビット列を示した図である。
【0048】
はじめに、電子透かし情報として埋め込みたい情報と埋め込むべきコンテンツ画像を決定する(START)。電子透かし情報は、たとえば10桁からなる英数字とすることができる。コンテンツ画像は、たとえば電子透かしパターン画像として生成するための基となる文字画像であったり会社名を含むロゴ画像であったりする。なお、第1実施形態から第4実施形態に係る各物品へ電子透かしパターン12、22、32、42を描画する際にコンテンツ画像は不要としている。コンテンツ画像の代わりに電子透かしパターン12、22、32、42の描画領域の範囲、形状が指示される。
【0049】
このコンテンツ画像は、上述したように従来と異なり特定の形状情報(ダミー画像)のみである。従来の場合は文字やロゴを構成する画像の情報を必要としていたが、この実施形態では、コンテンツ画像内の画素に情報を埋め込むのではなく、電子透かしパターンそのものが模様のごとく表示されるため、そのような情報、すなわちコンテンツ画像の内部の画素データは必要とされない。しかしながら従来のようにコンテンツ画像として外形の他に内部のデータをもつ画像を使用してもよい。なお、上述した電子透かし情報として埋め込みたい情報と埋め込むべきコンテンツ画像は電子透かしパターン画像生成装置50の図示しない記憶部に記録されている。
【0050】
はじめに図6のフローチャートの説明に用いる変数および情報量についての説明をする。
H・・・コンテンツ画像に埋め込み可能な総情報量である。
m・・・電子透かし情報として埋め込む情報の情報量である。
c・・・CRC符号データとして埋め込む情報の情報量である。
p・・・ECC符号データとして埋め込む情報の情報量である。
N・・・電子透かし情報列(N=m+c+p)の情報量を示す変数である。
t・・・電子透かし情報として埋め込む情報の個数を示す変数である。
C・・・コンテンツ画像に電子透かし情報列を埋め込む総個数を示す変数である。
【0051】
電子透かしパターン画像生成装置30は、図7(A)に示すようにmビットの電子透かし情報と、cビットのCRC符号データと、pビットのECC符号データから構成されるNビット(N=m+c+p)の電子透かし情報列を最初に生成する。そして、図7(B)に示すようにNビットの電子透かし情報列を所定回数(C)繰り返して、N*Cビットの電子透かしパターン列を最終的に生成する。なお、mビットの電子透かし情報が複数存在する場合、たとえば埋め込みたい情報A(N1ビット)と情報B(N2ビット)という2個(t=2)の情報がある場合、それぞれ繰り返して埋め込むときは、電子透かしパターン列の総情報量はN*Cビットではなく、N1*C/t+N2*C/tビットとなり、これらを生成することになる。以下に、t=1の場合の電子透かし情報を埋め込むための生成処理方法について具体的に説明する。
【0052】
電子透かし情報量制御部51は、主にコンテンツ画像に埋め込み可能な情報量から電子透かしパターンを埋め込む情報量について制御を行なう。
【0053】
電子透かし情報量制御部51は、まず電子透かし情報取得部52によりm、c、pの情報量を取得して電子透かし情報列の情報量をNに代入する(ステップS100)。また、電子透かし情報量制御部51は、コンテンツ画像から埋め込み可能な情報量Hも取得する。なお、m、c、pに用いられるビット数は予め定められているものとする。
【0054】
次に、電子透かし情報量制御部51は、Nビットの電子透かし情報列の埋め込むべき個数C(Cは正の整数倍)を設定する(ステップS101)。なおCは、電子透かしパターン画像生成装置50の図示しない入力部からの入力により値が指定される場合や埋め込みたい電子透かし情報が複数ある場合に強制的にCの値を設定することができる。
【0055】
続いて電子透かし情報量制御部51は、コンテンツ画像から埋め込み可能な情報量Hと埋め込むべき電子透かし情報の総情報量をC*Nビット比較して電子透かし情報を何回繰り返して埋め込むか判定を行なう(ステップS102)。
【0056】
電子透かし情報量制御部51は、ステップS102の判定においてコンテンツ画像に埋め込み可能な情報量Hより電子透かし情報の総情報量C*Nビットの方が大きいと判定した場合(Yes)は、コンテンツ画像に埋め込み可能な情報量となるようにCから1を減算していき、電子透かし情報の総情報量C*Nビットが埋め込み可能な情報量Hより小さくなるように制御する(ステップS103)。
【0057】
なお、電子透かし情報量制御部51は、複数の電子透かし情報N1、N2、N3・・・Ntがある場合には、コンテンツ画像に埋め込まれる電子透かし情報の総合計数をCとして固定し、各電子透かし情報をC/t個ずつ埋め込むことができる。
【0058】
その場合、電子透かし情報量制御部51は、各電子透かし情報の情報量をもとに、電子透かし情報として埋め込む情報の個数tと、各電子透かし情報の重複回数C/tを求めて以後の処理を行なう。
【0059】
CRC符号化部53は、mビットの電子透かし情報に対して誤りを検出するために生成多項方式に則りCRC符号化をおこなう(ステップS104)。
【0060】
CRC符号化部53は、mビットの電子透かし情報にcビットを付加する度にCから1を減算する処理を行い、1≦Cの条件を満たさなくなるまで符号化処理を続ける。なお、CRC符号化部53は、図5に示すように生成されたCRC符号データとしてcビットをECC符号化部54と繰り返し符号生成部35に渡す。
【0061】
ECC符号化部54は、cビットのCRC符号データに対して誤り訂正符号化をおこなう(ステップS105)。
【0062】
ECC符号化部54は、m+cビットの電子透かし情報にpビットを付加する度にCから1を減算する処理を行い、1≦Cの条件を満たさなくなるまで符号化処理を続ける。なお、ECC符号化部54は、図5に示すように生成されたパリティ検査データとしてpビットを繰り返し符号生成部55に渡す。
【0063】
繰り返し符号生成部55は、上述したmビットの電子透かし情報と、cビットのCRC符号データと、pビットのパリティ検査データの値をそれぞれ受け取り、これらのデータで構成されるNビットの電子透かし情報列をCだけそれぞれ繰り返して連接させて電子透かしパターン列を生成する(ステップS106)。
【0064】
繰り返し符号生成部55は、N*Cビットの電子透かしパターン列を電子透かし埋め込み部56に渡す(ステップS107)。電子透かしパターン列を受け取った電子透かし埋め込み部56は、コンテンツ画像の所定の範囲に電子透かしパターン列を埋め込む(ステップS107)。
【0065】
なお、コンテンツ画像に対する電子透かしパターン列の埋め込み処理について、コンテンツ画像をDCT(Discreate Cosine Transform:離散コサイン変換)、DFT(Discreate Fourier Transform:離散フーリエ変換)、DWT(Discreate wavelet Transform:離散ウェーブレット変換)などにより空間周波数変換した領域において電子透かしパターン列を埋め込んでもよい。
【0066】
なお、CRC符号化部54およびECC符号化部55について、誤り検出や誤り訂正に要求される精度によって、それぞれオプションの構成としてもよい。その場合は誤り検出、誤り訂正用のデータを両方とも生成しない、またはどちらか片方のみを生成して、電子透かし情報列として生成してもよい。
【0067】
なお、上述した電子透かしパターン12、22、32、42の画像の生成方法はあくまでも例示であり、それ以外にも本発明の目的を逸脱しない範囲内で他の電子透かしパターン画像の生成アルゴリズムを採用することができる。
【0068】
(電子透かしパターンをマーキングする手段について)
電子透かしパターン12、22、32、42の画像は、上述した生成方法を経て、マーキング手段により物品にマーキングされる。なお、以下では第1実施形態から第4実施形態の各物品を一般化して「物品X」として示し、電子透かしパターン12、22、32、42の画像を一般化して「電子透かしパターン画像」として示す。
【0069】
マーキング手段の具体例の一つとしてレーザーマーカについて説明をする。なおマーキング手段は、YAGレーザー発振器やCO2レーザー発振器を有するレーザーマーカのほか、UV(UC/tra Violet)印刷が可能な印刷機であってもよい。
【0070】
図8は、電子透かしパターン画像を物品Xにマーキングするためのレーザーマーカ60の概略構成図である。また、図9は、図8に示すレーザーマーカ60のヘッド部61とコントローラ62の内部構成を示すブロック図である。
【0071】
レーザーマーカ60は、ヘッド部61と、コントローラ62とを備えている。ヘッド部61は、図9に示すようにレーザー発振器61A、スキャナ61B、ハーフミラー61Dを内蔵する。ヘッド部61は、マーキングの対象となる物品Xに対向するように設置される。
【0072】
レーザー発振器61Aは、CO2レーザーまたはYAGレーザーで構成され、情報保持具となる物品Xの表面を局所的に加熱または切削してマーキング加工を行なうためのレーザービームLを出力する。
【0073】
スキャナ61Bは、レーザー発振器61Aから出力されハーフミラー61Dを介したレーザービームLを水平方向に偏向させる水平偏向装置61B1と、垂直方向に偏向させる垂直偏向装置61B2とを有する。レーザー発振器61Aから出力されたレーザービームLは、ハーフミラー61D及びスキャナ61Bを通って対象となる物品Xの表面に至る。そして、スキャナ61Bの働きにより、電子透かしパターンのマーキングを行なうべき軌跡に沿ってレーザービームLのスポットが物品Xの表面上を動く。
【0074】
コントローラ62は、レーザー発振器61A及びスキャナ61Bを制御するためのマイクロプロセッサ62Aや、ヘッド部61に対する指令及びデータの授受を行なうための通信ポート(COM)62B、メモリ62Cを備えている。コントローラ62は、メモリ62Cに記録されている電子透かしパターン画像にしたがってレーザービームLの最適な軌跡を演算で求め、軌跡をその結果に基づいてレーザー発振器61A及びスキャナ61Bを制御する。
【0075】
メモリ62Cは、マイクロプロセッサ62Aが実行する処理プログラム及びデータを記憶するためのROM及びRAMを含む。
【0076】
マイクロプロセッサ62Aは、通信ポート62Bを介してコントローラ62から与えられる指令にしたがって、レーザー発振器61Aとスキャナ61Bを制御する。例えば、電子透かしパターン画像に従ってレーザービームLを移動させるようにスキャナ61Bを制御する。また、休止期間はレーザービームLの出力を停止するようにレーザー発振器61Aを制御する。なお、ヘッド部61にマイクロプロセッサ62Aを搭載して、コントローラ62からの信号にしたがってレーザー発振器61Aとスキャナ61Bを駆動する駆動回路を搭載する構成としてもよい。
【0077】
続いて、レーザーマーカ60によるマーキング処理について具体的に説明する。図10は、図8に示したレーザーマーカ60によって電子透かしパターン画像を物品Xにマーキングするフローチャート図である。
【0078】
まず、マイクロプロセッサ62Aは、上述した電子透かしパターン画像のデータをメモリ62Cから読み出す(ステップS200)。
【0079】
そして、マイクロプロセッサ62Aは、電子透かしパターン画像のデータのマーキングコード列(以下、「マーキング内容」とする)のマーキング順序を決定する(ステップS201)。マイクロプロセッサ62Aは、スキャナ61BによるレーザービームLの偏向角(ビームスポットの移動)ができるだけ小さくなるように最適の順序を決定する。
【0080】
そして、マイクロプロセッサ62Aは、レーザービームLのスポット軌跡を決定する(ステップS202)。マイクロプロセッサ62Aは、決定した順序と読み出したマーキング内容にしたがって、できるだけ最短となるようにスポット軌跡を決定する。なお、マイクロプロセッサ62Aは、レーザー出力を停止すべき期間(タイミング)も決定する。
【0081】
そして、マイクロプロセッサ62Aは、決定されたレーザービームLのスポット軌跡を時系列の座標データに変換し、メモリ62Cに含まれたFIFO(First In First Out)メモリに順次格納する(ステップS203)。
【0082】
そして、マイクロプロセッサ62Aは、FIFOメモリから時系列の座標データを順次読み出し、座標データをスキャナ61Bに与えるべき電圧へ変換する(ステップS204)。なお、スキャナ61Bは、前述のように、レーザービームLを水平方向に偏向させる水平偏向装置と垂直方向に偏向させる垂直偏向装置とを有し、いずれの偏向装置も与えられた電圧に比例する偏向角度でレーザービームLを偏向させる機能を有する。
【0083】
そして、マイクロプロセッサ62Aは、スキャナ61B及びレーザー発振器61Aを制御して、物品Xの表面にマーキング内容のマーキング処理を行なう(ステップS205)。
【0084】
(電子透かしパターンに埋め込む情報について)
上述した各実施形態における電子透かしパターンに埋め込まれている情報は、物品X又は物品Xに関連した製造ロット番号、日付、製造場所、製造機器、製造担当者、真贋判定情報またはこれらと関連付けられた識別情報の1つまたは複数とすることができる。なお、ここで関連付けられた識別情報とはたとえば10桁の英数字から構成される情報などとしてもよい。
【0085】
また、上述した各実施形態以外の物品Xとしては、樹脂材、セラミック材、木材、紙類、ガラス材、ゴム材のいずれか一つまたはこれらを複数組み合わせて構成される物品であってもよい。
【0086】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない限り種々変更実施できる。
【0087】
たとえば、物品X複数の箇所に、異なる管理情報が埋め込まれた電子透かしパターン画像をそれぞれ描画することによって管理目的に応じた物品管理方法としてもよい。たとえば、真贋判定を目的として物品Xに刻印されているロゴマークの模様に真贋判定情報が埋め込まれた電子透かしパターンを描画する一方で、物品の底面にトレーサビリティを確保する目的で他の管理情報が埋め込まれた電子透かしパターンを描画するなどである。
【0088】
また、たとえば物品Xがボルト10であり、関連する機器、建物がボルト10を使用している建造物であるとする。ボルト10には個々にシリアル番号が振られ、DBサーバ(DataBase、以下「DBサーバ」とする)にそれぞれの情報が記録されている。また、同時にDBサーバにはボルト10が使用されている建造物の建築年度情報や建築業者情報、その他建造物に関連する情報(以下、建造物関連情報という)が記録されている。そして、これらボルト10のシリアル番号と建造物関連情報がDBサーバ上で一意に識別できるように定義して関連付けて記録する。
【0089】
このような物品管理システムを構築することにより、たとえば第三者がCCD機能付装置を用いて当該建造物に使用されているボルト10から電子透かしパターン12を読み取り、当該建造物が築何年であるのか、建築業者は誰であるのかといったことをDBサーバに照合をかけることで正確に知ることができ、建築業者の偽装や築年数の虚偽表示等を発見することができる。また、このような物品管理システムが知られることで、建築業者の偽装や築年数の虚偽表示等の抑止効果も期待できる。
【0090】
また、たとえば物品Xがボルト10であり、関連する機器、建物がジェットコースターであるとする。ボルト10には個々にシリアル番号が振られ、DBサーバにそれぞれの情報が記録されている。また、同時にDBサーバにはボルト10が使用されているジェットコースターの定期点検を行なった日や点検周期等の点検情報(以下、安全点検関連情報とする)が記録されている。そして、これらボルト10のシリアル番号と安全点検関連情報がDBサーバ上で一意に識別できるように定義して関連付けて記録する。
【0091】
このような物品管理システムを構築することにより、たとえば第三者がCCD機能付装置を用いて当該ジェットコースターに使用されているボルト10から電子透かしパターン12を読み取り、DBサーバに照合をかけることで安全点検関連情報を正確に知ることができ、当該ジェットコースターの管理者が適切に安全管理を行なっているかを確認することもできる。また、このような物品管理システムが知られることで、ジェットコースターの管理者の怠慢やミスによる事故等の抑止効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、物品の管理すべてに適用できる。また、従来のICタグで管理することが煩雑または困難である場合、たとえば管理物品が金属材である場合であっても、物品の管理をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物品を示す図で、物品となるボルトの頭部上側(図1では下側)の表面略全体に電子透かしパターンを描画した図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る物品を示す図で、(A)は、物品(医療用器具)である骨削り用やすりの凹凸面の一部に電子透かしパターンを描画した図で、(B)は、電子透かしパターンが描画されている凹凸面の一部を拡大した図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る物品を示す図で、(A)は、物品(切削工具)であるリーマの曲面の一部に電子透かしパターンを描画した図で、(B)は、曲面の一部に電子透かしパターンが描画されている部分を拡大した図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る物品を示す図で、(A)は、物品である骨董品を正面からみた図で、(B)は、裏面の一部に電子透かしパターンが描画されている図である。
【図5】図1から図4に示す物品にマーキングする電子透かしパターンの画像を生成するための電子透かしパターン画像生成装置の機能概念図である。
【図6】図1から図4に示す物品にマーキングする電子透かしパターンの画像を生成するフローチャートを示した図である。
【図7】図5に示す電子透かしパターン生成装置により生成される電子透かし情報のビット列の例を示す図で、(A)は、電子透かし情報列の最小単位のビット列を示した図で、(B)は電子透かしパターン列のビット列を示した図である。
【図8】図1から図4に示す物品に電子透かしパターンをマーキングするレーザーマーカの概要図である。
【図9】図8に示すレーザーマーカのヘッド部とコントローラの内部構成を示すブロック図である。
【図10】図8に示したレーザーマーカによって電子透かしパターン画像データを物品に描画するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0094】
10 ボルト(物品)
11 頭部
12 電子透かしパターン
20 骨削り用やすり(物品)
21 凹凸面
22 電子透かしパターン
30 リーマ(物品)
31 曲面
32 電子透かしパターン
40 骨董品(物品)
41 裏面
42 電子透かしパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を管理するための物品管理方法であって、上記物品に電子透かしパターンを目に見える形で模様的にかつ直接描画し、その電子透かしパターンに埋め込まれた情報を用いて上記物品を管理することを特徴とする物品管理方法。
【請求項2】
前記電子透かしパターンは、その中に同一情報が繰り返し記録されているものとし、前記物品の凹凸面、曲面、光沢面のいずれか一つまたは複数に描画してあることを特徴とする請求項1に記載の物品管理方法。
【請求項3】
前記物品は、樹脂材、金属材、セラミック材、木材、紙類、ガラス材、ゴム材のいずれか一つまたはこれらを複数組み合わせて構成される物品であることを特徴とする請求項1または2に記載の物品管理方法。
【請求項4】
前記電子透かしパターンとして描画された情報は、前記物品又は前記物品に関連したシリアル番号、製造ロット番号、製造日、製造場所、製造機器、製造担当者、真贋判定情報の少なくともいずれか一つまたはこれらと関連付けられた識別情報であることを特徴とする請求項1から3に記載のいずれか1項に記載の物品管理方法。
【請求項5】
表面に電子透かしパターンを目に見える形で模様的にかつ直接描画したことを特徴とする物品。
【請求項6】
前記電子透かしパターンは、その中に同一情報が繰り返し記録されていると共に前記表面に凹凸が生ずる形でマーキングされていることを特徴とする請求項5に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−129424(P2009−129424A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307300(P2007−307300)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(506118836)デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】