説明

物流容器

【課題】スラリー氷の投入充填後に蓋体を被着した状態で容器全体を転倒姿勢にするだけで短時間に液体を排出でき、通常の状態では、密封状態を良好に保持でき、作業場や輸送車両等の床面を濡らす虞のない物流容器を提供する。
【解決手段】蓋体20の天井部23における少なくとも一部の領域内に、別体の蓋板30により閉塞可能な複数の排水用の貫通孔24を間隔をおいて配設し、容器本体10へのスラリー氷の投入充填後に、蓋体20を容器本体10に被着した状態で転倒姿勢にすることにより、スラリー氷の液体を蓋体20の貫通孔24から排出できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にブロッコリー等の野菜その他の農産物や鮮魚類等の輸送、保管等に使用される発泡樹脂製の物流容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロッコリー等の野菜その他の農産物の輸送、保管等の物流において、上方に開口した平面矩形の容器本体と、その開口端部に嵌合被着される蓋体とからなる発泡スチロール等の断熱性のある発泡樹脂製の容器が使用されている。例えば、ブロッコリー等の野菜の場合、収穫された野菜を容器本体に収納し、収納した野菜の上に砕氷を入れて氷詰めにし、この状態で蓋体を被着して、保冷状態で輸送等の物流に供する。
【0003】
近年、前記の氷詰めに用いる氷として、削氷状態の細かな氷片を水と混合させた流動性のある半液体状態をなすいわゆるシャーベット状のスラリー氷が用いられるようになってきている。シャーベット状のスラリー氷は、液体と同様にポンプにより搬送して容器本体内に容易に充填することができ、しかも、開孔を有する容器を使用した場合、充填されたスラリー氷の液体が開孔から短時間に抜け出ることにより、ブロッコリー等の野菜の間に残ったスラリー氷の氷が隙間なく野菜を包み込んだ状態で固まることで、ブロッコリー等の野菜を固定でき、かつ熱交換がよくて野菜等を新鮮に保つことができることから、特に近年において注目され普及し始めている。
【0004】
このような氷詰めのためにスラリー氷を使用する物流容器としては、充填されるスラリー氷の全体を充分に固まらせるために、スラリー氷の充填時には液体を短時間に排出できることが望まれ、しかも輸送時には空気侵入を防止して保冷効果を低下させないように密封状態を良好に保持できること、氷が溶けて生じた水が作業場や輸送車両の床面を濡らして作業環境を損なう虞がないことが望まれる。
【0005】
特許文献1には、鮮魚の輸送に使用する発泡樹脂製の容器において、シャーベット状のスラリー氷を使用する際に、スラリー氷の投入充填時の排水効果を高めるとともに、輸送時の空気侵入を防止するために、容器底面に非貫通の水落とし孔と該水落とし孔から容器外部に通じるトンネル部とを設けておき、海水を含むスラリー氷の投入時には、海水のみが水落とし孔に落とし込まれることで、海水をトンネル部を通じて外部に排出でき、また輸送時には前記トンネル部に溜まる水滴によってトンネル部を遮蔽できて、密封状態を保持できるようにしたものが提案されている。
【0006】
しかしながら、この提案の場合、輸送中は、容器底面の水落とし孔とトンネル部による排水のための通路が水滴のみによって遮蔽されるものであるため、輸送中に水滴が脱落したり蒸発して縮小したりする可能性があって遮蔽状態が不安定になり、密封状態の保持に不安があり、氷が溶けて生じた水が流出し作業場や輸送車両の床面等を濡らす虞が多分にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−264742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、シャーベット状のスラリー氷を使用する主として野菜等の農産物あるいは鮮魚類等の物流容器として、半液体状態のスラリー氷の投入充填後に蓋体を被着した状態で容器全体をひっくり返して転倒姿勢にするだけで短時間に液体を排出でき、しかも元の状態に戻して排水用の貫通孔を蓋板により閉塞することにより、容器内部を密封状態に保持でき、輸送中に氷が溶けて生じた水が容器外部に流出して作業場や輸送車両等の床面を濡らす虞がなく、作業環境を良好に保持できる物流容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の物流容器は、上方に開口する容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる断熱性を有する発泡樹脂製の物流容器であって、蓋体の天井部における少なくとも一部の領域内に、別体の蓋板により閉塞可能な複数の排水用の貫通孔が所要の間隔をおいて配設されてなり、容器本体への氷詰め用のスラリー氷の投入充填後に、蓋体を容器本体に被着した状態で転倒姿勢にすることにより、スラリー氷の液体を蓋体の貫通孔から排出できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
この物流容器によれば、野菜等の内容物を収容した後、蓋体を被着するまでにスラリー氷を投入充填し、この後、蓋板を取り外した状態の蓋体を被着した状態で、容器全体をひっくり返して転倒姿勢にすることにより、容器内部のスラリー氷の液体を蓋体に有する貫通孔から排出する。これにより、容器内部のスラリー氷の氷が容器内部の野菜等を包み込んだ状態で固まった状態になる。この後、容器を元の状態に戻して蓋体の天井部の貫通孔を蓋板により閉塞すればよい。これにより、容器内部を密封状態に保持でき、輸送中に氷が溶けて生じた水が容器外部に流出したり、滲み出したりすることがなく、また作業場や輸送車両の床面を濡らすおそれがない。
【0011】
特に、前記蓋体が容器本体の開口端部に対し係合状態で嵌合被着可能に構成されてなるものが好ましく、これにより、容器全体をひっくり返して転倒姿勢にしても、蓋体が容器本体から外れることがないため、容器全体を転倒姿勢にして液体排出を行うことが問題なく可能になる。
【0012】
前記の物流容器において、蓋体の天井部における一部の領域の上面に、別体の蓋板が嵌着可能な凹設部が設けられ、該凹設部の個所に排水用の貫通孔が設けられてなるものとするのが好ましく、さらには前記凹設部が、蓋体の天井部における中央部領域の上面に設けられてなるものが好ましい。これにより、転倒姿勢での液体排出後に、容器を元の状態に戻して蓋体の天井部上面の前記凹設部に蓋板を嵌着することにより、貫通孔を閉塞できるとともに、輸送中に蓋板が容易に外れるおそれがなく、輸送中の取り扱いにおいても、密封状態を良好に保持できる。また、転倒姿勢での液体排出の際、前記凹設部により床面との間に空間を保有できることで、前記転倒姿勢での液体排出がスムーズに行われる。
【0013】
前記の物流容器において、蓋体の天井部における下面が、凹設部に相当する領域に向かって傾斜面をなしているものとするのが好ましく、これにより、蓋体を被着した状態で転倒姿勢にした場合の底面になる天井部下面が、前記凹設部に相当する領域に向かって傾斜していることで、スラリー氷の液体が前記領域部分に集まり、該領域部分に有する貫通孔を通じて殆ど残らないように排出される。
【0014】
前記の物流容器において、容器本体の縦横一方の相対向する両側壁の外側面下部には、容器本体の高さの1/2高さまでの範囲内に手掛け用切欠部が設けられてなるものが好ましい。すなわち、容器全体を裏返して転倒姿勢にする際、該手掛け用切欠部に手を掛けて容器全体を持ち上げかつ手を掛けた部分を支点にして回転させるようにして、容易に転倒姿勢にすることができる。
【0015】
また、容器本体に被着される蓋体には、容器本体の手掛け用切欠部が存する側面に対し直交する相対向両辺部において、側面から上面に渡って傾斜した面取り部が形成されてなるものが好ましい。この場合、前記手掛け用切欠部に指を掛けて横倒し状態を経て転倒姿勢に回転させる際、及び転倒姿勢から正常姿勢に戻す際に、容器本体に被着された蓋体の側面に作用する力を逃がしながら回転させることができ、蓋体が妄りに外れる虞がない。
【0016】
前記の物流容器において、容器本体の底部上面に、リブ状凸部が設けられ、該リブ状凸部により収納される内容物を受けるように設けられてなるものとするのが好ましい。これにより、氷が溶けて溜まる水を前記リブ状凸部以外の凹部で溜めることができ、リブ状凸部で受ける内容物が早期に水に浸漬した状態になるのを防ぎ、内容物の保護を良好になし得る。
【0017】
前記リブ状凸部が、平面六角形の多数の凹部をハニカム状に画する凸部であるのが好ましい。これにより、氷が溶けて生じる水を溜めるのに必要な容積を確保しながら、凹部の差し渡しを小さくすることで、前記野菜等の内容物を凹部に嵌り込ませないように効果的に受支することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記したように本発明の物流容器によれば、ブロッコリー等の野菜その他の農産物や鮮魚類の輸送、保管等の物流において、内容物を収納した状態で半液体状態のスラリー氷を投入充填した後、蓋板を取り外した状態の蓋体を被着した状態で、容器全体をひっくり返して転倒姿勢にすることにより、容器内部のスラリー氷の液体を蓋体に有する貫通孔から排出でき、これにより、短時間で容器内部のスラリー氷の氷が容器内部の野菜等を包み込んだ状態で固まった状態になる。この後、容器を元の状態に戻して蓋体の天井部の貫通孔を蓋板により閉塞するだけで、容器内部を密封状態に保持でき、輸送中に氷が溶けて生じた水が容器外部に流出したり、滲み出したりすることがなく、作業場や輸送車両の床面を濡らすおそれがなく、作業環境を良好に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の物流容器の実施例を示す蓋体と容器本体及び蓋板を分離して示す斜視図である。
【図2】容器本体の平面図(a)と底面図(b)である。
【図3】容器本体の側面図(a)と半部縦断正面図(b)である。
【図4】蓋体の平面図(a)と底面図(b)である。
【図5】蓋体の側面図(a)と半部縦断正面図である。
【図6】蓋板の平面図(a)と正面図(b)である。
【図7】蓋板を外した状態の蓋体を容器本体に被着して転倒姿勢にした状態の断面図である。
【図8】同上のVIII−VIII線の断面図である。
【図9】蓋板を蓋体の凹設部に嵌着係合した状態の一部の断面図である。
【図10】他の実施例を示す一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0021】
物流容器Aは、主として発泡ポリスチレン等の発泡樹脂を素材として成形された断熱性を有する発泡樹脂製の容器であり、平面が長方形や正方形等の矩形をなして上方に開口する容器本体10と、該容器本体10の開口部に対し被着自在な蓋体20とよりなる。
【0022】
前記容器本体10の開口部に対する前記蓋体20の被着構造として、図示する実施例の場合、容器本体10の四方の側壁10a,10b,10c,10dの上端の開口端部11と蓋体20の周縁部21の下面とに、凹部と凸部による嵌合構造、例えば、図のように全周にわたって連続して互いに嵌合する凸条縁12と凹状溝22等による嵌合構造が設けられている。通常は、図のように、前記容器本体10の開口端部11の外側の約半部が全周にわたって切欠されることにより切欠段部13が形成され、該切欠段部13より内側の約半部が凸条縁12として形成されている。また、前記蓋体20の周縁部21の下面には、蓋体被着状態において前記凸条縁12に嵌合する凹条溝22が周方向に連続して形成されている。
【0023】
前記凸条縁12と凹条溝22による嵌合構造として、例えば、凸条縁12は突出端側(上端側)の少なくとも外側面に凸部12aを形成して拡大した幅を持つ断面キノコ状、これに対応する凹条溝22は外壁側内面を傾斜させて開口側ほどやや狭小幅、内方ほど広幅のアリ溝状をなすものとして、発泡樹脂の弾力性を利用して弾力的にしっかりと係合状態で嵌合することで、後述するように容器全体を転倒姿勢にするひっくり返し作業の際にも容易に抜脱することがないように形成される。
【0024】
本発明の物流容器Aは、氷詰め用としてスラリー氷を使用する場合において、スラリー氷の投入充填後の液体排出のために、前記蓋体20の天井部23における一部の領域、例えば中央部領域23a内に、後述の別体の蓋板30により閉塞可能な複数の排水用の貫通孔24が所要の間隔をおいて配設されており、容器本体10への氷詰め用のスラリー氷の投入充填後に、蓋体20を容器本体10に被着した状態で天地逆の転倒姿勢にすることにより、スラリー氷の液体を蓋体20の貫通孔24から排出できるように設けられている。
【0025】
図示する実施例においては、前記蓋体20の天井部23の一部の領域、例えば図のように中央部領域23aの上面に、例えば天井部23の板厚の1/2〜2/3程度を残すように、別体の蓋板30を嵌着できる凹設部25が設けられ、該凹設部25の個所に排水用の貫通孔24が縦横の並列状あるいはランダムな散在状に設けられている。
【0026】
前記貫通孔24としては、平面円形の孔のほか、平面楕円形や四角形の孔あるいはその他の異形の孔を幅方向に並列あるいは散在させて形成することも、また幅方向や斜め方向の長孔やスリット状の孔を形成することもできる。前記貫通孔24の大きさ(孔径)や間隔、配置数及び開孔率等は、スラリー氷の投入充填後の液体排出の効果、及び液体排出時の氷の入り込み防止の効果等を考慮して適宜設定できる。
【0027】
前記蓋体20の天井部23における下面23bは、前記凹設部25に相当する領域、例えば図のように中央部領域23aに向かって上面側に接近する方向に傾斜した傾斜面をなしており、蓋体20を容器本体10に被着した状態で容器全体をひっくり返して転倒姿勢にした場合に底になる天井部23の下面23bが、転倒姿勢において前記凹設部25に相当する中央部領域23aに向かって低く傾斜していることで、スラリー氷の液体が前記中央部領域23aに集まりやすくなっている。これにより、スラリー氷の液体を容器内に殆ど残さずに排出できることになる。
【0028】
前記蓋板30については、主として蓋体20と同様の発泡樹脂製で主として前記凹設部25の深さに相当する厚みの板体よりなり、その外周面には、前記凹設部25の内周面に形成された周方向の凹条26に対して弾力的に嵌合し係合できる断面円弧状の周方向の凸条31が設けられており、前記蓋板30が前記凹設部25に対し一旦嵌着されると、前記凸条31と凹条26の係合により容易に抜脱することがなく、前記貫通孔24を閉塞状態に良好に保持できるようになっている。
【0029】
前記蓋板30の凹設部25に対する嵌着状態での係合構造としては、前記の周方向に連続した凸条31と凹条26のほか、前記凸条31と凹条26を周方向に間隔をおいて断続状に形成したり、部分的に凸部と凹部を設ける等、他の種々の係合構造を利用することができる。いずれにしても、前記蓋板30を凹設部25に嵌着した状態において、表面が蓋体20の天井部23の上面と同一面をなすように形成しておくのが、容器を段積みするのにも差し支えがなく好ましい。また、前記蓋板30の係脱操作を考慮して、一部にツマミ部としての凸部あるいは指掛け用の凹部や切欠(いずれも図示せず)を設けておくことができる。
【0030】
前記容器本体10の底部14の上面14aは、図のように周縁部を除くほぼ全面にわたって、所定幅、所定高さのリブ状凸部15が、例えば平面六角形の多数の凹部16をハニカム状に画するように配設されており、収納される野菜等の農産物をリブ状凸部15により受けるように設けられ、氷詰め用の氷が溶けて生じる水を前記凹部16に溜めることができるようになっている。
【0031】
前記リブ状凸部15には、各凹部16,16間を連通させる切欠溝17が形成されており、凹部16に溜まる水が前記切欠溝17の底面を超えると、隣接する凹部16に流れ込むことで、各凹部16内に溜まる水量が平均化できるようになっている。これにより、リブ状凸部15で受ける野菜等の農産物や鮮魚類が早期に水に浸漬した状態になるのを防ぎ、包装対象物の保護を良好になすことができる。
【0032】
前記ハニカム状の凹部16の大きさは、農産物等の包装対象物の種類や大きさ、リブ状凸部15の幅によっても異なるが、包装対象物が野菜等の農産物である場合に、この野菜が横倒し状態になっても、凹部16内に入り込まないように設定される。また、前記凹部16の深さ、つまり前記リブ状凸部15の高さは、氷詰め用の氷が溶けて生じる水の量、前記凹部16の前記差し渡しや容積等によって異なるが、氷が溶けて生じる水を前記切欠溝17の底面より下方の容積内に収容できるように設定される。さらに前記リブ状凸部15の幅は、これにより画され前記凹部16の大きさ等によって適宜設定して実施できる。
【0033】
なお、前記底部14の上面14aのリブ状凸部を縦横の格子状に配設しておくこともできる。
【0034】
前記容器本体10の縦横一方の相対向する両側壁、例えば短辺側の側壁10b,10dの外側面下部には、容器本体の高さの1/2高さまでの範囲内に手掛け用切欠部18が設けられており、容器全体10を裏返して転倒姿勢にする際、該手掛け用切欠部18に手を掛けて容器全体を持ち上げかつ手を掛けた部分を支点にして転回させることで、容器全体を容易にひっくり返すことができ、転倒姿勢にすることができるようになっている。
【0035】
また、前記容器本体10に被着される蓋体20には、容器本体10の手掛け用切欠部18が存する側面に対し直交する相対向両辺部において、図10のように、側面27から天井部23の上面に渡って斜面あるいは円弧状の面取り部28を形成しておくと、前記手掛け用切欠部18に手を掛けて横倒し状態を経て転倒姿勢に回転させる際、及び転倒姿勢から正常な姿勢に戻す際に、容器本体10に被着された蓋体20の側面27に作用する力を逃がしながら回転させることができ、蓋体20が妄りに外れたりしないものとなる。
【0036】
なお、図示する実施例の物流容器Aの場合、前記蓋体20の上面周縁部には、容器本体10に蓋体20を被着した状態での容器の積み重ね時に、上段の容器の容器本体10の底部下面の周縁部に有する切欠部19が嵌合する凸縁29が設けられており、前記蓋体20を被着した物流容器Aを安定性よく積み重ねることができるようになっている。
【0037】
前記容器本体10、蓋体20及び蓋板30の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は10〜70倍が好ましい。
【0038】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成形品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成形した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成形品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。
【0039】
上記した実施例の物流容器Aの使用状態について説明する。この物流容器Aは、ブロッコリー等の野菜その他の農産物、鮮魚類等の保冷を要する物品の輸送、保管等の物流に使用する。
【0040】
この使用において、例えば、収穫された野菜等の農産物その他の包装対象物を容器本体10に収納し、必要に応じて収納状態のままで所定の予冷(真空予冷や差圧予冷)を行った後、氷詰め用として、細かな氷片と水を混合した流動性のある半液体状態のスラリー氷を用い、収納された野菜等の農産物その他の包装対象物を埋めるようにスラリー氷を投入し充填する。
【0041】
このスラリー氷の投入充填後、直ちに、蓋板30を取り外した状態の蓋体20を容器本体10の開口端部に嵌合構造により容易に外れないように被着した状態で、例えば容器本体10の一方の相対向する側の外側面下部に有する手掛け用切欠部18に手を掛けて容器全体をひっくり返すように転回させ、容器全体を転倒姿勢にする。これにより、容器本体10に投入充填されたスラリー氷の液体は、転倒姿勢の底になる蓋体20の天井部23に有する貫通孔24から排出される。特に、凹設部25により床面との間に空間を保有できることで、液体排出がスムーズに行われる。この結果、容器内部のスラリー氷の氷が容器内部の野菜等の農産物を包み込んだ状態で固まった状態になる。これにより、農産物や鮮魚類等の包装対象物を、熱交換のよい氷による冷却効果で保冷状態に良好に保持でき、新鮮な状態に保つことができる。この後、物流容器Aを元の状態に戻して、蓋体20の天井部23に有する貫通孔24を、例えば図のように凹設部25に蓋板30を嵌着することにより閉塞すればよい。これにより、容器内部を密封状態に保持できて、容器内を保冷状態に保ち、輸送中に氷が溶けて生じた水が容器外部に流出したり、滲み出したりすることがなく、作業場や輸送車両の床面を濡らすおそれがない。
【0042】
前記蓋体20が容器本体10の開口端部11に対し係合状態で嵌合被着される構造とすることにより、前記のように容器全体をひっくり返して転倒姿勢にする際に、蓋体20外れることがなく、容器全体を転倒姿勢にしての液体排出作業が問題なく行えることになる。
【符号の説明】
【0043】
A…物流容器、10…容器本体、10a,10b,10c,10d…側壁、11…開口端部、12…凸条縁、12a…凸部、13…切欠段部、14…底部、14a…上面、15…リブ状凸部、16…凹部、17…切欠溝、18…手掛け用切欠部、19…切欠部、20…蓋体、21…周縁部、22…凹状溝、23…天井部、23a…中央部領域、23b…下面、24…貫通孔、25…凹設部、26…凹条、27…側面、28…面取り部、29…凸縁、30…蓋板、31…凸条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる断熱性を有する発泡樹脂製の物流容器であって、蓋体の天井部における少なくとも一部の領域内に、別体の蓋板により閉塞可能な複数の排水用の貫通孔が所要の間隔をおいて配設されてなり、容器本体への氷詰め用のスラリー氷の投入充填後に、蓋体を容器本体に被着した状態で転倒姿勢にすることにより、スラリー氷の液体を蓋体の貫通孔から排出できるようにしたことを特徴とする物流容器。
【請求項2】
前記蓋体が容器本体の開口端部に対し係合状態で嵌合被着可能に構成されてなる請求項1に記載の請求項1に記載の物流容器。
【請求項3】
蓋体の天井部における一部の領域の上面に、別体の蓋板が嵌着係合可能な凹設部が設けられ、該凹設部の個所に排水用の貫通孔が設けられてなる請求項1又は2に記載の物流容器。
【請求項4】
前記凹設部が、蓋体の天井部における中央部領域の上面に設けられてなる請求項3に記載の物流容器。
【請求項5】
蓋体の天井部における下面が、凹設部に相当する領域に向かって傾斜面をなしている請求項3又は4に記載の物流容器。
【請求項6】
容器本体の縦横一方の相対向する両側壁の外側面下部には、容器本体の高さの1/2高さまでの範囲内に手掛け用切欠部が設けられてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項7】
容器本体に被着される蓋体には、容器本体の手掛け用切欠部が存する側面に対し直交する相対向両辺部において、側面から上面に渡って傾斜した面取り部が形成されてなる請求項5に記載の物流容器。
【請求項8】
容器本体の底部上面に、リブ状凸部が設けられ、該リブ状凸部により収納される内容物を受けるように設けられてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の物流容器。
【請求項9】
前記リブ状凸部が、平面六角形の多数の凹部をハニカム状に画する凸部である請求項8に記載の物流容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−207497(P2011−207497A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76240(P2010−76240)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】