説明

物理特性が改良されたポリウレタンエラストマーおよびその製造方法

【課題】 大量の低コスト、低モノオールポリオキシプロピレンポリオールを含有する、優れた加工性および物理特性を有するポリウレタンエラストマーを製造するために有用なポリオール成分を提供する。
【解決手段】 約1,000〜約3,000Daの数平均分子量を有するポリオール組成物が、(1)少なくとも60重量%の、約2,000〜12,000Daの数平均分子量、および0.02meq/g以下の不飽和度を有する低モノオールポリオキシプロピレンポリオールと、(2) 40重量%以下の、約400〜約1,000Daの数平均分子量および1.1より高い多分散度を有するポリオールとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、物理特性が改良されたポリウレタンエラストマー、かかるエラストマーの製造に使用するポリオール成分およびイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマー、ならびにこれらの物質からポリウレタンエラストマーを製造するためのワンショット法に関する。好ましくは、これらのエラストマーは約1000〜約3000Daの数平均分子量を有するポリオール成分から製造したイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマーを鎖延長させることにより製造される。このポリオール成分としては、高多分散度を有する低分子量ポリオールおよび低モノオール(monol)ポリプロピレングリコールが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーは、いくつか例を挙げれば、ガスケットおよびシール材料、医療装置、スキー靴、緩衝材、ならびにコンベヤーローラーのような幅広い用途に広く用いられる。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリカプロラクトンおよびポリエステルポリオールを混ぜたイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマーから製造したエラストマーは、その強度、硬度およびその他の特性から、要求の厳しい用途への使用にも有利である。
しかし、PTMEG、ポリカプロラクトンおよびポリエステルポリオールは高コストになりがちな出発原料であるため、これらのポリオール成分から製造したポリウレタンエラストマーは比較的高価な製品となる。
【0003】
ポリオキシプロピレンジオールはエラストマープレポリマー配合物におけるPTMEGの有力な代替物と考えられてきたが、これを用いて製造したエラストマーの特性はPTMEGを用いて得られたものに匹敵するようなものではない。
特許文献では、低不飽和ポリオキシプロピレンジオールを使用することについての利点を教示しているだけではなく、かかるポリオールを用いたエラストマーの製造において低モジュラス値、低硬度値、低圧縮撓みおよび耐磨耗性を示し、加工上の問題を抱える製品が生産されることも示している。
【0004】
これらの物理特性を改良し、かつ、かかる低飽和ポリオールで起こりうる加工上の問題を少なくするまたは排除するために採られた1つのアプローチがポリオールブレンドの使用である。例えば、米国特許第5,648,447号では、PTMEGと5〜35当量パーセントの、脂肪族ジオールまたは芳香族アミンを用いて鎖延長される低モノオールポリオキシプロピレンポリオールの両方を含有するポリオール成分を用いて製造したプレポリマーから製造したポリウレタンエラストマーが開示されている。しかし、この特許では35当量パーセントより大きい低モノオールポリオキシプロピレンジオールを使用すると、エラストマーの引張強さが急激に低下し、低モノオールポリオキシプロピレンジオール単独で製造したエラストマーの伸び値よりも劣ることが示されている。そのため、引張強さおよび伸び値を維持する場合にはかかるジオールの使用を35当量パーセント未満にするという必要条件によって低モノオールポリオキシプロピレンジオールの使用に関する経済的な利点は充分には得られない。
【0005】
また、米国特許第5,648,447号で開示されたものなどの系において、比較できるPTMEG系を用いて得られる硬度と同程度のものを獲得するには約20%多いイソシアネート(特に、MDI)が必要であることも分かった。さらに、プレポリマーの鎖延長が充分な触媒作用を受ける系の有効なポットライフが約2分以内である場合にのみ最適な機械特性が得られる。よって、2分を超える加工時間を要するエラストマーは、このような系では、生成物エラストマーの機械特性の犠牲なしには製造できない。
【0006】
ポリウレタンエラストマーの製造に使用される既知の方法のうち、ワンショット法が特に有利と考えられる。例えば、米国特許第5,668,239号および同第5,739,253号では、イソシアネート末端プレポリマー、ポリエーテルポリオールおよび鎖延長剤からのポリウレタン/尿素エラストマーの製造に関するワンショット法が開示されている。
【0007】
よって、使用するポリオール成分の顕著な量が、従来の高機能ポリオール単独で現在製造されているエラストマーの硬度、モジュラス、圧縮撓み、耐磨耗性および加工性に匹敵するものを有するエラストマーを製造する低モノオールポリオキシプロピレンジオールであるエラストマー形成組成物を開発することが有利である。
【特許文献1】米国特許第5,648,447号
【特許文献2】米国特許第5,668,239号
【特許文献3】米国特許第5,739,253号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、顕著な量の低コスト、低モノオールポリオキシプロピレンポリオールを含有する、加工時間が2分を超える場合でも優れた加工性および物理特性を有するポリウレタンエラストマーを製造するために有用なポリオール成分を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、PTMEGなどの高機能ポリオール、ポリカプロラクトンおよびポリエステル単独で製造されるエラストマーの特性に匹敵するものを有するポリウレタンエラストマーの製造に有用なNCO末端プレポリマーまたは準プレポリマーを提供することである。
本発明のさらなる目的は、優れた硬度、モジュラス、伸び、耐磨耗性および圧縮特性を特徴とするポリウレタンエラストマーを提供することである。
本発明の追加的な目的は、エラストマー形成物質の加工に許容できないほどの短い反応時間を必要としない、優れた機械特性を有するポリウレタンエラストマーの経済的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業者が理解できるこれらおよびその他の目的は、約1000〜約3000ダルトン(Da)の数平均分子量を有する混合物またはブレンドであるポリオール成分を使用することにより達成される。このポリオール成分は: (1)顕著な量(すなわち、ポリオール成分全重量に対して60重量%以上)の、約2000〜12,000Daの数平均分子量および0.02meq/g以下の不飽和度を有する低モノオールポリオキシプロピレンポリオールと(2)少量(すなわち、全ポリオール成分に対して40重量%以下)の、高い多分散度(すなわち、多分散度が1.1より高い)を有する低分子量ポリオールを含有していなければならない。このポリオール成分をイソシアネート、イソシアネート末端プレポリマーまたはイソシアネート末端準プレポリマーと反応させる。本発明に従って製造されるエラストマーは、最も好ましくは、化学量論的過剰の1種以上のジイソシアネートまたはポリイソシアネートをポリオール成分の少なくとも一部分またはポリオール成分のうち1種のポリオールと反応させることにより製造されたイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマーの鎖延長により合成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に従って製造されるポリウレタンエラストマーは、1種以上の従来の鎖延長剤を用いたイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマーの鎖延長により製造されることが好ましい。イソシアネート末端プレポリマーは1種以上のジイソシアネートまたはポリイソシアネートを約1000〜約3000ダルトンの数平均分子量を有するポリオール成分と反応させることにより製造することができる。このポリオール成分は(1)低モノオール含量ポリオキシプロピレンポリオール、と(2)1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールとを含有するものである。イソシアネートと全ポリオール成分の少量(例えば、10当量パーセント)とをまず反応させることにより形成した準プレポリマーをポリオール成分の残りおよび鎖延長剤を含有するエラストマー配合樹脂側(B側)と反応させて本発明のエラストマーを製造する。本発明のエラストマーはワンショット法をはじめとする当業者には既知のいずれの方法でも製造できる。
【0012】
本発明のエラストマーの製造のためのイソシアネート末端プレポリマーおよびイソシアネート末端準プレポリマーの合成のために有用なイソシアネートとしては、既知の芳香族、脂肪族、および脂環式ジイソシアネートまたはポリイソシアネートのいずれもが挙げられる。好適なイソシアネートの例としては、2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート、ならびにその異性体混合物、特に2,4-および2,6-異性体の80:20混合物; 2,2'-、2,4'-および特に4,4'-メチレンジフェニレンジイソシアネート、ならびにその異性体混合物; ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(poly-MDI、PMDI); 2,4-および2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネートならびに2,2'-、2,4'-および4,4'-メチレンジシクロへキシレンジイソシアネートなどの飽和の脂環式PMDI類似体、ならびにその他の異性体; イソホロンジイソシアネート; 1,4-ジイソシアナトブタン; 1,5-ジイソシアナトペンタン; 1,6-ジイソシアナトヘキサン; 1,4-シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0013】
本発明の実施において変性ジ-およびポリイソシアネートを使用してもよい。好適な変性イソシアネートとしては、尿素変性イソシアネート; ビウレット変性イソシアネート; ウレタン変性イソシアネート; イソシアヌレート変性イソシアネート; アロファネート変性イソシアネート; カルボジイミド変性イソシアネート; ウレトジオン変性イソシアネート; ウレトンイミン変性イソシアネートなどが挙げられる。かかる変性イソシアネートは市販されており、イソシアネートを化学量論的量より少ないイソシアネート反応性化合物と、または単独で反応させることによって合成される。例えば、尿素変性イソシアネートおよびウレタン変性イソシアネートは各々、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを少量の水もしくはジアミン、またはグリコールと反応させることにより合成することができる。カルボジイミド-、ウレトンイミン、およびイソシアヌレート変性イソシアネートは好適な触媒の存在下でのイソシアネート間の相互反応により合成される。
【0014】
上記のイソシアネートのうち、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニレンジイソシアネート(好ましくは、4,4'-MDI)、カルボジイミド変性MDI、ならびに脂肪族および脂環式イソシアネート(特に、1,6-ジイソシアナトヘキサンおよびイソホロンジイソシアネート; 種々のメチルシクロへキシレンジイソシアネート: ならびに種々のメチレンジシクロへキシレンジイソシアネート)が特に好ましい。イソシアネート混合物、特に、TDIとMDIとの混合物、およびMDIとカルボジイミド変性MDIとの混合物もまた好適である。
【0015】
本発明において有用な1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールとしては、以下の基準: (1)数平均分子量が約400〜約1000ダルトンであること; および(2)重量平均分子量と数平均分子量との比(多分散度)が1.1より高い、好ましくは1.2より高い、最も好ましくは1.3より高いこと、を満たすいずれもの既知のポリオールが挙げられる。好適なポリオールとしては、上記の基準を満たすポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールが挙げられる。これらの低分子量の高分散度ポリオールは、典型的には二官能価である。上記の基準を満たす少量(例えば、1.1より高い多分散度を有する全ポリオールに対して約20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満)のより多官能価(例えば、三官能価以上)のポリオールが含まれていてもよい。
【0016】
1.1より高い多分散度を有するポリオールの数平均分子量は約400〜約1000Da、好ましくは約500〜約1000Da、最も好ましくは約600〜約1000Daであってよい。本明細書においてDa(ダルトン)で示す分子量および当量は、特に断りのない限り、数平均分子量および数平均当量である。
本発明のポリオール成分には、一般に、高多分散度を有する低分子量ポリオールが5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは15〜25重量%の量で含まれる。
【0017】
本発明の実施において有用である好適な低分子量の高多分散度ポリオールの具体例としては、上記の基準を満たすポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリエステルポリオールが挙げられる。約400〜約1000Daの分子量および少なくとも1.3の多分散度を有するポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
上記の基準を満たすポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)は市販されている。PTMEGは、典型的には、テトラヒドロフランの開環重合により、一般的にはルイス酸触媒の存在下で合成される。PTMEGポリオールは比較的高いメチレン対酸素比を有し、低吸水度および優れた加水分解安定性を提供するものである。約400〜1000Da、好ましくは約500〜約1000Daの分子量および1.3以上の多分散度を有するPTMEGが特に有用である。
【0018】
ポリエステルポリオールもまた市販されている。かかるポリエステルポリオールは広く単独重合物ならびに共重合物および三元共重合物に分類されるが、これらの用語は互換的に用いられる場合もある。単独重合ポリエステルは、ヒドロキシルおよびカルボン酸官能価の両方、またはそれらの化学的等価物を有するモノマーを重合することにより合成される。最も一般的な単独重合ポリエステルは、ε-カプロラクトンのエステル交換開環重合により合成されるポリカプロラクトンである。ポリカプロラクトンポリエステルは、結晶度を高める一定のヘッド/テール構造を有している。その他のラクトンおよびヒドロキシルおよびカルボキシル化合物官能価の両方を有する分子は、ポリカプロラクトンポリオールの合成に好適である。その他の二官能価以上のヒドロキシル官能またはカルボン酸官能分子を加えることでポリカプロラクトンポリオールの官能価または構造を変えることができる。
【0019】
コポリエステルポリオールおよびターポリエステルポリオールもまた市販されており、これは化学量論的過剰量のジオールとジカルボン酸またはそのエステル化可能な誘導体との反応により合成される。単一のジオールと単一のジカルボン酸とを反応させる場合に得られる生成物はコポリエステルであり、一般には単に「ポリエステル」という。かかるコポリエステルの例は、ポリエチレンアジペート、エチレングリコールとアジピン酸から合成されるポリエステル; ポリブチレンアジペート、1,4-ブタンジオールとアジピン酸から合成されるポリエステル; ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコールとテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルなどのエステル化可能もしくはエステル交換可能な誘導体から合成されるポリエステルなどである。2種以上のグリコールおよび/または2種以上のジカルボン酸をポリエステル化反応に使用する場合、ターポリエステルが生成する。かかるターポリエステルの例は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびアジピン酸の混合物から合成されるポリエチレンブチレンアジペートである。二官能価より多い平均官能価を有するポリエステルポリオールを合成するために、三官能価以上のポリオールおよび三官能価以上のカルボン酸を、一般には少量加えてもよい。
【0020】
ポリカプロラクトンなどの単独重合ポリエステルポリオール、および1種のみのジオールと1種のジカルボン酸から合成されるコポリエステルポリオールもまた本発明の実施において有用である。
低モノオールポリオキシプロピレンポリオールを、1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールと組み合わせて使用することが本発明のポリオール成分組成物の重要な特徴である。従来、ポリオキシプロピレンポリオールは、水酸化ナトリウムまたはカリウムもしくは対応するアルコキシドなどの塩基性オキシプロピル化触媒の存在下で適当な水素を含む、オキシアルキル化可能な開始剤分子の塩基触媒オキシプロピル化により合成されてきた。塩基性オキシアルキル化条件下では、導入されたプロピレンオキシドの一部が転位してアリルアルコール、不飽和一水酸基化合物が形成する。その後これ自体がさらなるオキシアルキル化可能な開始剤分子として作用する。この転位はオキシアルキル化が進行している間続くため、生成物の測定官能価および分子量分布の両方が変化する。
【0021】
一官能価種の連続導入によって全体的な官能価は低くなり、このような2000Da当量のジオール開始剤ポリオールは40〜50mol%またはそれ以上の一官能価種を含有することになる。結果として、ジオール開始剤の二官能価に原因して、「公称」または「理論」官能価2が約1.6〜1.7以下にまで低下し得る。一般に、存在するモノオール相対量はポリオール1グラム当たりの不飽和のミリグラム当量(meq)、以下「meq/g」、として表されるポリオールの不飽和を測定することにより決定される。不飽和はASTMD-2849-69“Testing Urethane Foam Polyol Raw Matherials”に従って測定される。2000Da当量の従来の塩基触媒ポリオキシプロピレンジオールは、一般に0.07〜0.12meq/gの範囲の測定不飽和を有する。高度の不飽和および不飽和がもたらす多量の一官能価種に原因して、従来の塩基触媒による方法で合成されるポリオキシプロピレンジオールの実際当量は約2000Daに限定される。
【0022】
一官能価種の不飽和および量を低減させるいくつかの方法が提案されてきた。不飽和の低下には、より費用のかからない水酸化ナトリウムおよびカリウムではなく水酸化セシウムおよびルビジウムが使用されてきた(例えば、米国特許第3,393,243号参照)。また、水酸化バリウムおよびストロンチウムも使用されてきた(例えば、米国特許第5,010,187号および同第5,114,619号参照)。ナフテン酸カルシウムなどの金属カルボキシレート触媒の、助触媒として第三級アミンの有無での使用が米国特許第4,282,387号に開示されている。かかる触媒はポリオール不飽和を0.04meq/gに低下させることを目的に用いられる。しかしながら、かかる触媒のコストとそれらの使用によって可能な不飽和レベルの改善の限界からこれらの触媒の商業上の使用が魅力のないものとなるに至っている。
【0023】
米国特許第5,158,922号に開示されるものなどの複金属シアニド錯体触媒によって0.015〜0.018meq/gの範囲の不飽和度を有するポリエーテルポリオールの合成が可能となった。これらのDMC触媒は特別低い程度の、例えば、0.002〜0.007meq/gの範囲の不飽和を有するポリオールが得られる程度に改良されてきた(例えば、米国特許第5,470,813号および同第5,482,908号参照)。少なくとも幾らかのモノオール含量である場合を測定可能な不飽和とするならば、生成すると考えられる低分子量種は従来のゲル浸透クロマトグラフィーで検出することが難しい。さらに、生成物の多分散性が特別低いため、ポリオールは事実上単分散であると考えられる。
【0024】
本発明において有用なポリオキシプロピレンポリオールは低モノオール含量を有するものに限定される。特に、ポリオールの不飽和に関して低モノオール含量は約0.02meq/g未満、好ましくは0.010meq/g未満、最も好ましくは約0.007meq/g以下である。少量の多官能価ポリオールも同時に使用してよいが、ポリオキシアルキレンポリオールは、好ましくは二官能価である。本明細書において「ポリオキシプロピレンポリオール」としては、約20重量%までの三官能価以上のポリオキシプロピレン種を含有するポリオキシプロピレンジオールも包含される。ポリオキシプロピレンジオールは、好ましくはホモポリオキシプロピレンジオールである。しかしながら、30重量%までのオキシエチレン部分、好ましくは20重量%以下のオキシエチレン部分を含有するランダム、ブロック、またはブロック/ランダムコポリマージオールもまた使用できる。少量の高級アルキレンオキシド由来の部分、特に1,2-および2,3-ブチレンオキシド由来のものを含有するポリオキシプロピレンポリオールもまた少量(すなわち、10重量%未満)で存在してもよい。「ポリオキシプロピレンポリオール」には、かかる有利なプロピレンオキシド由来ポリオキシアルキレンコポリマーもまた包含される。好ましくは、ポリオキシプロピレンポリオールは実質的に全てがプロピレンオキシド由来、最も好ましくは実質的に二官能価である。低モノオールポリオキシプロピレンポリオールの分子量は約2000Da〜約12,000Da、好ましくは約3000〜約8000Da、最も好ましくは約3000〜約4500Daの範囲であってよい。
【0025】
本発明の実施において使用するポリオール成分は約1000〜約3000Da、好ましくは約1000〜約2500Da、最も好ましくは約1000〜約2000Daの平均分子量を有する。ポリオール成分の平均不飽和度は、一般に0.02meq/g未満、好ましくは0.01meq/g未満、最も好ましくは0.007meq/g未満である。ポリオール成分に存在する1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールおよび低モノオールポリオキシプロピレンポリオール、ならびに他のいずれかのイソシアネート反応性物質の量は、全ポリオール成分がこれらの明記した範囲の平均分子量および平均不飽和度を有するような量である。しかしながら、低モノオールポリオキシプロピレンポリオールは全ポリオール成分の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%でなければならない。
【0026】
本発明のイソシアネート末端プレポリマーまたは準プレポリマーは一般に、3〜20%NCO、好ましくは4〜14%NCO、最も好ましくは4〜10%NCOのイソシアネート基含量(%NCO)(重量%で表す)を有する。このプレポリマーは従来のいずれの方法によって製造してもよい。例えば、好適なイソシアネート末端プレポリマーは、1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールと低モノオールポリオキシプロピレンポリオールの混合物を所望のイソシアネート基含量を得るのに充分な化学量論的過剰のイソシアネートと反応させることにより得られる。例えば、イソシアネートを化学量論的過剰の1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールのみと反応させて第1のプレポリマーを形成し、過剰のイソシアネートを低モノオールポリオキシプロピレンポリオールと反応させて第2のプレポリマーを形成し、さらにこれらの2つのプレポリマーを混合することにより形成するプレポリマー混合物を用いることもまた可能である。このプレポリマー反応性成分は、好ましくは窒素ブランケット下、室温〜約100℃の範囲、好ましくは40℃〜80℃の範囲の温度でこれらだけで反応させる。通常必要なものではないが、要すれば、錫触媒などのウレタン基促進触媒を添加してもよい。プレポリマー製造方法は既知のものであり、例えば、Polyurethane Handbook, G. Oertel, Ed., Hanser Publications, Munich, 1985、またはJ. H. SaundersおよびK. C. Frischによる専門書、Polyurethanes: Chemistry and Technology, Interscience Publishers, New York, 1963でも記されている。
【0027】
本発明のエラストマーを製造するのに有用な鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、O,O'-ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンなどの一般的なジオール鎖延長剤が挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールが好ましい。1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0028】
好ましいとは言えないが、少量の、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの架橋剤をジオール鎖延長剤と併用してもよい。
芳香族アミン鎖延長剤もまた本発明の実施において有用である。好ましいアミン鎖延長剤は、種々のトルエンジアミンおよびメチレンジアニリンなどの芳香族アミン、特にMOCA(4,4'-メチレン-ビス-o-クロロアニリン)、M-CDEA(4,4'-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)ならびに種々のアラルキル化トルエンジアミンおよびメチレンジアニリンなどの電子または立体効果により反応を遅延する置換芳香族アミンである。種々の鎖延長剤の混合物を使用してもよい。
【0029】
イソシアネート末端プレポリマーを鎖延長剤、および所望により架橋剤と70〜130、好ましくは90〜110、最も好ましくは95〜105のイソシアネート指数で反応させる。この反応により形成されるエラストマーの硬度は、好ましくはショアーA 50〜ショアーD 60、好ましくはショアーA 60〜ショアーA 95の範囲である。また、硬質および軟質エラストマーの両方が製造される。プレポリマーを熱により、ジブチル錫ジアセテート、錫オクトエート、またはジブチル錫ジラウレート、アミン触媒などの触媒の助けを借りて、またはその組み合わせによって硬化させてもよい。微孔質エラストマーが望まれる場合には、少量の物理または化学発泡剤、特に水、を加えてもよく、または硬化エラストマーを空気、窒素、またはCO2と充分に混合することにより発泡させてもよく、あるいは液体CO2を硬化性エラストマー反応性混合物に混ぜてもよい。水が好ましい発泡剤であり、0.15〜0.8g/cm3、好ましくは0.2〜0.5g/cm3の範囲の密度を有する微孔質エラストマーが得られる量で使用することが好ましい。
【0030】
イソシアネート末端プレポリマー、鎖延長剤、所望により、発泡剤、顔料、熱およびUV安定剤、充填剤、補強剤、架橋剤、ならびに他の添加剤の反応性混合物ならびに助剤を充分に混合し、好適な型に射出する、押出成形する、または移動ベルトに滞積させてもよい。実質的に全ての反応性成分が二官能価であるならば、押出成形したまたはベルトに滞積させたエラストマーをその後に粗砕し、再溶融することが可能である(すなわち、かかるエラストマーは熱可塑性ポリウレタン(TPU)である)。TPUは押出機またはその他の装置に注入し、再融解し、さらに射出成形、吹込成形などを行うことで広く多様な製品を製造することが可能である。
【0031】
準プレポリマー法では、準プレポリマーは上記のイソシアネート末端プレポリマーと同様に、過剰のイソシアネートとごく少量のポリオール成分またはポリオール成分における少なくとも1種の少量のポリオールから製造される。しかしながら、イソシアネートと反応するポリオール成分がより少ない量であることから、準プレポリマーの%NCO含量はプレポリマーの%NCOより高い。イソシアネート基含量14〜20%NCOはかかる準プレポリマーに典型的な値である。準プレポリマーを使用する場合、残りのポリオール成分をジオール鎖延長剤とともに、ブレンドとして、または独立した流れとしてミックスヘッドへ導入する。
【0032】
特に有用な準プレポリマー法では、準プレポリマー製造中に全てのまたは実質的に全ての低モノオールポリオキシアルキレンジオールを使用するが1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールを全くまたは実質的には全く使用しない。このようにして製造した準プレポリマーをその後、1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールおよび鎖延長剤を用いてこれらの両成分を配合物のB側に供給することにより鎖延長する。1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールと低モノオールポリオキシアルキレンジオールとの相対量は、エラストマー生成物が約5〜約40重量%の1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールに対し、60〜95重量%の低モノオールポリオキシアルキレンポリオールを含有するように準プレポリマーとB側の含有量間で調整される。
【0033】
ワンショット法もまた本発明の実施において有用である。ワンショット法ではイソシアネート成分をポリオール成分の実質的な部分とは全く予備反応させず、全てまたは実質的に全てのポリオール成分を鎖延長剤とともにイソシアネート成分とは別の流れのミックスヘッドに供給する。ワンショット法を使用する場合、ポリオール成分の一部分が低モノオールポリオキシエチレンキャップしたポリオキシプロピレンジオールであること、または成形品の取り出しおよび硬化時間の長さが許容される限り、少量の第一水酸基量の多い従来のポリオキシプロピレンジオールを配合物に含めることが望ましい。
【実施例】
【0034】
以上、本発明を概説してきたが、具体的な実施例を挙げることでさらに理解が深まるであろう。これらの実施例は特に断りのない限り、本発明の例示を目的として示すものであって、本発明を限定するものではない。
【0035】
実施例で使用した物質は以下の通りである:
ポリオールA 数平均分子量2,000を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール。
ポリオールB 数平均分子量4,000および不飽和度0.005meq/gを有するプロピレンオキシドを主成分とするジオール。
ポリオールC 数平均分子量4,000および不飽和度0.005meq/gを有する、15%内部エチレンオキシド含有、プロピレンオキシドを主成分とするジオール。
ポリオールD 数平均分子量4,000および不飽和度0.005meq/gを有する、30%内部エチレンオキシド含有、プロピレンオキシドを主成分とするジオール。
ポリオールE 数平均分子量4,000および不飽和度0.005meq/gを有する、40%内部エチレンオキシド含有、プロピレンオキシドを主成分とするジオール。
【0036】
ポリオールF 数平均分子量3,000および不飽和度0.005meq/gを有する、10%ランダム内部エチレンオキシド含有、プロピレンオキシドを主成分とするジオール。
ポリオールG 数平均分子量8,000および不飽和度0.005meq/gを有するポリプロピレンオキシドを主成分とするジオール。
ポリオールH 数平均分子量600および多分散度1.01を有するポリエチレングリコール。
ポリオールI 数平均分子量650および多分散度1.6を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール。
ポリオールJ 21.6重量%の分子量425を有するポリプロピレングリコールと74.8重量%の分子量760を有するポリプロピレングリコールとのブレンドにより調製される数平均分子量650および多分散度1.1を有するポリプロピレングリコール。
【0037】
ポリオールK 5重量%の分子量4000を有する低不飽和ポリプロピレングリコール(Bayer Corporationより市販、製品名Acclaim 4200)、15重量%の分子量2000を有する低不飽和ポリプロピレングリコール(Bayer Corporationより市販、製品名Acclaim 2200)、30重量%の分子量1000を有する低不飽和ポリプロピレングリコール(Bayer Corporationより市販、製品名PPG-1000)、25重量%の分子量760を有する低不飽和ポリプロピレングリコール(Bayer Corporationより市販、製品名PPG-725)、17重量%の分子量425を有する低不飽和ポリプロピレングリコール(Bayer Corporationより市販、製品名PPG-425)、および8重量%のトリプロピレングリコールのブレンドにより調製される数平均分子量650および多分散度1.65を有するポリプロピレングリコール。
【0038】
ポリオールL 数平均分子量250および多分散度1.1を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール。
ポリオールM 平均分子量4000および不飽和度0.005meq/gを有する、20%ランダム内部オキシエチレン部分含有、プロピレンオキシドを主成分とするジオール。
BDO 1,4-ブタンジオール。
イソシアネート 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート。
【0039】
実施例1〜5および比較例C1〜C7
NCO含量6%を有するNCO末端プレポリマーを1,4-ブタンジオールを用いて105のイソシアネート指数で鎖延長することによりポリウレタンエラストマーを製造した。種々の配合物の比較を容易にしするため、イソシアネート指数を一定とした。試験する各プレポリマーについては、ポリオール成分が平均当量1000Daを有するように化学量論的過剰の4,4'-MDIを1種以上のポリエーテルジオールと反応させることにより製造した。1つの比較例で、4,4'-MDIをポリオキシプロピレンジオールのみと反応させる(すなわち、PTMEGは使用しない)ことによりプレポリマーを製造した。これらのプレポリマーおよびエラストマーの製造に使用した具体的なポリオール成分を表1Aに示す。次いで、反応混合物を型に導入し、ここでそれを105℃で16時間硬化させた。その後、エラストマーを取り出し、4週間状態調整した。その後、生成物ポリウレタンエラストマーの物理特性を測定した。その結果を表1Bに示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1Aおよび1Bから分かるように、比較例C-2では分子量4000を有する低モノオールポリオキシプロピレンジオールを唯一のポリオールとして使用した場合の生成物エラストマーがPTMEG-2000だけで製造したもの(比較例C-1)よりも軟質であったことが分かる。C-2のエラストマーはまた低モジュラス、低耐磨耗性および低圧縮撓み(耐力)特性を示した。鎖延長処理中に、比較例C-2の組成物から製造したエラストマーの生強度が不充分なものであることも分かった。
【0043】
低モノオールポリオキシアルキレンジオールを用いて製造したエラストマーの品質を向上させるために、比較例C-3では分子量4000を有する低モノオールジオールとPTMEG-2000とのブレンドを使用した。このブレンドを用いて製造したエラストマーのショアーA硬度は高まったが、耐磨耗性はまだ許容されるものではなかった。この配合において高価なPTMEGを大量に使用することから、このブレンド使用が商業上魅力のないものとなってしまう。
【0044】
低モノオールポリオキシアルキレングリコールと低分子量ポリオールとのブレンドをも試験し、低分子量ポリオールを含めることによりこれらのブレンドを用いて製造したエラストマーの物理特性が改善されるかどうかを評価した。
使用した低分子量ポリオールの多分散度が1.1未満の場合(ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)(比較例C-5、C-6およびC-7参照)、得られるエラストマーの引張強さおよび耐磨耗性は低かった。さらに、これらのエラストマー(比較例C-5およびC-6)のうちいくつかのものは引裂強さが非常に弱いものであった。
【0045】
広い分子量分布(すなわち、1.1より高い多分散度)を有する低分子量ポリオールを低モノオールポリオキシアルキレングリコールと併用した場合(実施例1〜5参照)、得られるエラストマーの硬度、モジュラス、圧縮撓み、引張強さ、および耐磨耗性の改善が示された。生強度によって決まるこれらの加工性もまた大いに向上した。
【0046】
実施例1〜3および比較例C-4では、分子量4000を有する低モノオールジオールを高分子量ポリオールとして使用した。この高分子量ポリオールに存在するランダム内部オキシエチレン部分の割合を、0%(実施例1)〜15%(実施例2)〜30%(実施例3)および40%(比較例C-4)と変化させた。また、実施例1、2、3および比較例C-4では、ポリオールI(多分散度約1.6を有する)を低分子量ポリオールとして使用した。表1Bで示されるこれらのエラストマー特性から、40%ランダム内部オキシエチレン部分を含有する高分子量ポリオールを使用すると、得られるエラストマーの、引張強さ、伸び、モジュラス、および圧縮永久歪などの機械特性が低下することが分かる。
【0047】
実施例4では、分子量3000を有するランダム内部オキシエチレン部分10%を含有する低モノオールジオールを、ブレンドの平均分子量2000Daを得るのに充分なポリオールIの量と組み合わせて使用した。実施例5では、分子量3000を有するランダム内部オキシエチレン部分10%を含有する低モノオールジオールと分子量8000Daを有する低モノオールポリオキシプロピレングリコールの50/50混合物をポリオール成分の高分子量分として使用した。かかる高分子量低モノオールポリオールと1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールから製造したエラストマーは優れた特性と加工性を示した。実施例4および5で製造したエラストマーの耐磨耗性が特に優れていた。
【0048】
実施例6〜9および比較例C-8〜C-13
イソシアネート末端プレポリマーを実施例1〜5および比較例C-1〜C-7と同じ方法で製造し、次いで鎖延長してエラストマーを製造した。しかしながら、これらの実施例6〜9および比較例C-8〜C-13で使用したプレポリマーのNCO含量は8%であった。これらのエラストマーの製造に使用した特定の物質の各量を表2Aに示す。これらの実施例および比較例で製造されたエラストマーの特性を表2Bに示す。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
一般に、高NCO含量プレポリマーからは硬質エラストマーが製造される。ポリオールAを用いて製造したプレポリマーから製造したエラストマー(比較例C-8)はショアーA硬度90を有するものであった。ポリオールBを単独で用いて製造したプレポリマーから製造したエラストマー(すなわち、PTMEGを使用しない)(比較例C-9)は、比較例C-8で製造したものよりも軟質であり、かつ低モジュラス、低耐磨耗性および低圧縮撓み(耐力)特性を示した。ポリオールAのような高分子量ポリオールのみを使用する場合の不都合な点については、比較例C-8で製造したエラストマーを高NCO含量を有するプレポリマーから製造したとしても、そのエラストマーの引張強さは比較例C-2で製造したエラストマーのものよりもまだ7%低いという事実により明らかである。
【0052】
これに対し、高分子量の低モノオールポリオキシアルキレングリコールと1.1より高い多分散度を有する低分子量ポリオールとの両方を含有するポリオール成分を用いて製造したエラストマーでは機械特性および加工性が著しく改善された。
【0053】
実施例6、7および比較例C-10では、分子量4000および内部オキシエチレン部分含量0%(実施例6)、20%(実施例7)または40%(比較例C-10)を有する低モノオールジオールを高分子量ポリオールとして使用した。これらの実施例では、ポリオールIを低分子量ポリオールとして使用した。表2Bから分かるように、実施例6および7で製造したエラストマーの硬度、引張強さ、モジュラス、耐磨耗性および圧縮撓み特性は比較例C-10で製造したエラストマーのものよりも優れていた。内部オキシエチレン部分含量が30%を超える高分子量ポリオールを用いた比較例C-10で製造したエラストマーの機械特性、特に、引張強さ、伸び、モジュラス、引裂強さおよび圧縮撓みは、実施例6および7で製造したエラストマーよりも劣るものであった。
【0054】
実施例8で使用した高分子量ポリオール成分は10%ランダムな内部オキシエチレン部分および分子量3000を有する低モノオールジオールであった。充分なポリオールIをこの高分子量ポリオール(ポリオールF)とブレンドして全平均分子量を2000Daとした。ブレンドにより分子量を3000から2000Daへと小さくした結果、わずかに軟質のエラストマーが生成したが、このブレンドを使用することで優れた引張強さ、引裂強さ、および耐磨耗性を有するエラストマーが製造できるポリオール成分が得られた。
【0055】
比較例C-11、C-12およびC-13から、低分散度(すなわち多分散度が1.1以下)を有する低分子量ポリオールを使用する場合には、許容される特性および加工性を有するエラストマーを製造することができないことが分かる。比較例C-11、C-12およびC-13で製造したエラストマーは低引張強さおよび低耐磨耗性を示した。
実施例9では、ポリオール成分が、多分散度1.65を有する低分子量ポリプロピレングリコール(ポリオールK)と低不飽和の高分子量ポリオール(ポリオールF)とを含有するものであった。このポリオール成分から製造したエラストマーは優れた引張強さ、耐磨耗性およびその他の特性を示した。
【0056】
以上、本発明を例示のために詳細に説明したが、かかる詳細は単に例示のためのものであり、当業者ならば、請求の範囲によって限定されない限り、本発明の精神および範囲を逸脱することなく改変が可能であると理解すべきである。
【0057】
本発明における好ましい態様は次のとおりである。
A1. ポリオール(2)が1.3以上の多分散度を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A2. ポリオール(2)が1.6以上の多分散度を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A3. ポリオール(1)が70〜85重量%の量で存在する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A4. 約2,000Daの平均分子量を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
【0058】
A5. ポリオール(1)が約3,000〜約8,000Daの数平均分子量を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A6. ポリオール(1)が約3,000〜約6,000Daの数平均分子量を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A7. ポリオール(1)が0.010meq/g未満の不飽和度を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
A8. ポリオール(1)が0.007meq/g未満の不飽和度を有する、請求項1に記載のポリオール組成物。
【0059】
A9. 全ポリオールに対して20重量%までの、約250〜約7,000Daの数平均分子量を有するトリオールをさらに含む、請求項1に記載のポリオール組成物。
A10. トリオールがグリセリンおよびトリメチロールプロパンのプロポキシレート、ならびにグリセリンおよびトリメチロールプロパンのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーからなる群から選択される、
上記A9のポリオール組成物。
B1-1. a)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと
b)1,000〜3,000Daの数平均分子量を有するポリオール組成物であって、
(1)少なくとも60重量%の、2,000〜12,000Daの分子量、30%以下の内部またはブロックもしくはブロック/ランダムオキシエチレン部分含量、および0.02meq/g以下の不飽和度を有するポリオキシプロピレンポリオールと
(2)5〜40重量%の、400〜1,000Daの分子量および1.1より高い多分散度を有するポリオール
とを含んでなる、ポリオール組成物と
の反応生成物である、3〜20%のNCO含量を有する、NCO末端プレポリマーまたは準プレポリマー。
B1. ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその異性体混合物である、上記B1-1のプレポリマー。
【0060】
B2. ジイソシアネートまたはポリイソシアネートがトルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、または1,4-シクロヘキサンジイソシアネートである、上記B1-1のプレポリマー。
B3. ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが尿素変性イソシアネート、ウレタン変性イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、アロファネート変性イソシアネート、ビウレット変性イソシアネートまたはウレトンイミン変性イソシアネートである、上記B1-1のプレポリマー。
B4. ポリオール(1)が約3,000〜約8,000Daの数平均分子量を有する、上記B1-1のプレポリマー。
【0061】
B5. ポリオール(1)が約3,000〜約6,000Daの数平均分子量を有する、上記B1-1のプレポリマー。
B6. ポリオール(1)が0.010meq/g未満の不飽和度を有する、上記B1-1のプレポリマー。
B7. ポリオール(1)が0.007meq/g未満の不飽和度を有する、上記B1-1のプレポリマー。
【0062】
B8. ポリオール成分がポリオール成分全重量に対して20重量%までの、約250〜約7,000Daの数平均分子量を有するトリオールをさらに含む、上記B1-1のプレポリマー。
B9. ポリオール成分がポリオール成分全重量に対して20重量%までの、グリセリンおよびトリメチロールプロパンのプロポキシレート、ならびにグリセリンおよびトリメチロールプロパンのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーから選択される約7,000Daまでの数平均分子量を有するトリオールをさらに含む、上記B1-1のプレポリマー。
【0063】
B10. ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートであり、かつポリオール成分が60〜95重量%のポリオキシプロピレンポリオールおよび5〜40重量%のポリテトラメチレンエーテルグリコールを含んでなる、上記B1-1のプレポリマー。
B11. ポリオール成分の20重量%までが約250〜約7,000Daの分子量を有するトリオールである、上記B1-1のプレポリマー。
【0064】
C1-1. 上記B1-1に記載のプレポリマーと鎖延長剤または架橋剤との反応生成物を含んでなる、ポリウレタン。
C1-2. ジイソシアネートまたはポリイソシアネートが4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートであり、かつポリオール成分が60〜95重量%のポリオキシプロピレンポリオールおよび5〜40重量%のポリテトラメチレンエーテルグリコールを含んでなる上記B1-1に記載のプレポリマーと、鎖延長剤または架橋剤との反応生成物を含んでなる、ポリウレタン。
C1. 上記B1-1に記載のプレポリマーとジオール鎖延長剤との反応生成物を含んでなる、ポリウレタン。
C2. 上記B10に記載のプレポリマーとブタンジオールとの反応生成物を含んでなる、ポリウレタン。
C3. 上記B1-1に記載のプレポリマーとブタンジオールとの反応生成物を含んでなる、ポリウレタン。
【0065】
D1-1. (a)以下の:
(1)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと
(2)2,000〜12,000Daの分子量、30%以下の内部またはブロックもしくはブロック/ランダムオキシエチレン部分含量、および0.02meq/g以下の不飽和度を有するポリオキシプロピレンポリオール
との反応生成物であるNCO末端プレポリマーまたは準プレポリマー、
(b)400〜1,000Daの分子量および1.1より高い多分散度を有するポリオール、および
(c)鎖延長剤
を、該エラストマーが60〜95重量%のポリオール(2)および5〜40重量%のポリオール(b)を含有する量で反応させることにより製造される、エラストマー。
D1. (a)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを
(b)請求項1に記載のポリオール組成物
と、70〜130のイソシアネート指数においてワンショット法で反応させることにより製造される、ポリウレタンエラストマー。
D2. (a)請求項1に記載のポリオール組成物の一部から製造されたイソシアネート末端準プレポリマーを
(b)請求項1に記載のポリオール組成物の残部
と、70〜130のイソシアネート指数においてワンショット法で反応させることにより製造される、ポリウレタンエラストマー。
D3. ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
(1)以下の:
(a)1,000〜3,000Daの数平均分子量を有するポリオール組成物であって、
(1)少なくとも60重量%の、2,000〜12,000Daの分子量、30%以下の内部またはブロックもしくはブロック/ランダムオキシエチレン部分含量、および0.02meq/g以下の不飽和度を有するポリオキシプロピレンポリオールと
(2)5〜40重量%の、400〜1,000Daの分子量および1.1より高い多分散度を有するポリオールとを含んでなる、ポリオール組成物と鎖延長剤とを含む第1の流れ
および
(b)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを含む第2の流れ
を容器に導き、さらに
(2)前記容器の内容物を反応させる
ことを含んでなる、ワンショット法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,000〜3,000Daの数平均分子量を有するポリオール組成物であって、
(1)少なくとも60重量%の、2,000〜12,000Daの分子量、30%以下の内部またはブロックもしくはブロック/ランダムオキシエチレン部分含量、および0.02meq/g以下の不飽和度を有するポリオキシプロピレンポリオールと
(2)5〜40重量%の、400〜1,000Daの分子量および1.1より高い多分散度を有するポリオール
とを含んでなる、ポリオール組成物。

【公開番号】特開2008−208386(P2008−208386A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151981(P2008−151981)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【分割の表示】特願2003−59845(P2003−59845)の分割
【原出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【出願人】(392010599)バイエル・コーポレーシヨン (12)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
【復代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
【Fターム(参考)】