物理現象表現装置及び物理現象表現システム
【課題】ユーザの動作に応じて変化する物理現象を視覚的に表現することを可能とすること。
【解決手段】ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、を備える。
【解決手段】ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象を表す映像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子、陽子、光子、分子などに関わる物理現象を学ぶための道具として、本、アニメーション、ゲームなどがあった。また、古典物理学(万有引力、遠心力、振り子など)に関する物理現象について、ユーザがその現象を体験するための体験装置も提案されている。
また、上述した体験装置とはまた異なる技術分野であるが、遊園地などにおいて監視対象者の現在位置を検出し、監視対象者を確実に表示装置に表示できるようにする技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−115099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
古典物理学が扱う領域と異なり、近代物理学(現代物理学ともいう:相対性理論、量子力学など)は、視覚的に現象を確認することが難しい。そのため、近代物理学の現象を視覚的に表現することは難しく、ユーザに対してその現象を体験させることは困難であるという問題があった。また、ユーザに対して現象を体験させることの困難さは、古典物理学においても同様に課題となっていた。
上記事情に鑑み、本発明は、ユーザの動作に応じて変化する物理現象を視覚的に表現することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、を備える物理現象表現装置である。
【0006】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記現象演算部は、前記仮想空間において働く力としてユーザによって指定された力のみが働くものとして前記物理現象を演算する。
【0007】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記現象演算部は、ユーザによって物理定数の変更が指定された場合、変更後の前記物理定数を用いて前記物理現象を演算する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記映像生成部は、ユーザによって選択された可視化対象のみを可視化するように映像を生成する。
【0009】
本発明の一態様は、複数の異なる場所毎に設置された実位置検出部、映像生成部及び映像表示部と、仮想位置取得部及び現象演算部と、を備える物理現象表現システムであって、前記実位置検出部は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出し、前記仮想位置取得部は、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、実空間の位置毎に取得し、前記現象演算部は、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算し、前記映像生成部は、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成し、前記映像表示部は、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する。
【0010】
本発明の一態様は、異なる場所毎に設置された複数の物理現象表現装置を備える物理現象表現システムであって、前記物理現象表現装置は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、前記実位置検出部の検出結果を、他の物理現象装置に対して遅延を与えて送信する遅延部と、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、他の物理現象装置から受信した前記検出結果及び自装置における検出結果のそれぞれの実空間の位置毎に取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成する映像生成部と、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する映像表示部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現システムであって、前記遅延部は、自身が設置された場所と、送信先の前記物理現象表現装置が設置された場所とに応じて決定される遅延を与えて前記検出結果を送信する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現システムであって、一の物理現象表現装置が他の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延は、前記他の物理現象装置が前記一の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延と等しい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ユーザの動作に応じて変化する物理現象を視覚的に表現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】物理現象表現システムの第一実施形態(物理現象表現システム100)の構成を表す構成図である。
【図2】物理現象表現システム100の動作を表すフローチャートである。
【図3】物理現象表現システム100の第一実施例を表す図である。
【図4】物理現象表現システム100の第一実施例の動作を表すフローチャートである。
【図5】ユーザが移動した場合の映像の変化の例を表す図である。
【図6】物理現象表現システム100の第二実施例を表す図である。
【図7】第二実施例における電子の動きの特徴を表す図である。
【図8】物理現象表現システム100の第二実施例の動作のうち、太陽風に関する動作を表すフローチャートである。
【図9】物理現象表現システム100によって表示される映像の例を表す図である。
【図10】物理現象表現システムの第二実施形態(物理現象表現システム200)の構成を表す構成図である。
【図11】物理現象表現システム200の実施例を表す図である。
【図12】図11とは異なる場所に設置された映像表示部205−nによって表示される映像の具体例を表す図である。
【図13】物理現象表現システム200の変形例における実施例を表す図である。
【図14】物理現象表現システムの第三実施形態(物理現象表現システム300)の構成を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[概略]
物理現象表現システムでは、予め条件が設定された仮想の空間(以下、「仮想空間」という。)における物理現象が演算され、演算結果に基づいて仮想空間の状態を表す映像が表示される。仮想空間には、ユーザの位置に対応してその位置が変化する移動体が存在する。移動体とは、物理現象を引き起こす要因となる物体や粒子を表す。物体とは、例えば地球、月、太陽、磁石などである。粒子とは、例えば分子、原子、原子核、中性子、陽子、電子などである。
【0016】
仮想空間における物理法則は、実世界における物理法則と同じである。そのため、仮想空間で生じる物理現象を演算するための数式は、実世界で生じる物理現象を表した数式と同じである。一方、仮想空間では、例えば地球が太陽に近付いたり、月が地球から離れたり、月が複数存在したりするように、実世界では起こりえない状況が作り出されても良い。この場合、作り出された状況に基づいて物理現象が演算され、その演算結果が映像として表示されても良い。また、仮想空間では、各種の物理定数(光の速度、ボルツマン係数、電子半径、陽子半径、万有引力定数など)の値をユーザが自由に変更できても良い。また、仮想空間における時間の流れの速さと、実世界における時間の流れの速さとは同じであっても良いし異なっても良い。また、実世界において生じる複数の力(分子間力、クーロン力、万有引力、ローレンツ力等)のうち、仮想空間において生じる力を選択できても良い。
仮想空間には、移動体以外の物体や粒子が存在しても良い。仮想空間には、物体や粒子によって生じる場(例えば、磁場、電場、重力場など)が予め設定されていても良い。
【0017】
物理現象表現システムでは、仮想空間における移動体の位置(以下、「仮想位置」という。)は、ユーザによって指示された実際の空間座標系の位置(以下、「実位置」という。)に基づいて決定される。すなわち、物理現象表現システムは、実位置を検出し、仮想位置を決定する。そして、物理現象表現システムは、仮想位置に基づいて仮想空間における物理現象を演算し、演算結果に基づいて仮想空間の状況を表す映像を表示する。
【0018】
[第一実施形態]
図1は、物理現象表現システムの第一実施形態(物理現象表現システム100)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム100は、物理現象表現装置110及び映像表示部106を備える。物理現象表現装置110は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置110は、物理現象表現プログラムの実行により、実位置検出部101、仮想位置取得部102、現象演算部103、映像生成部104、入力部105を備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置110の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。物理現象表現プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。物理現象表現プログラムは、電気通信回線を介して提供されても良い。
【0019】
実位置検出部101は、実際の空間座標系におけるユーザの位置(実位置)を検出する。すなわち、ユーザは自身が移動することによって実空間における位置を指示する。実位置検出部101が実位置を検出するための具体的な方法には、既存のどのような方法が適用されても良い。例えば、実位置検出部101は撮像装置を備え、撮像装置によって撮影されたユーザの画像に基づいてユーザの実位置が検出されても良い。例えば、実位置検出部101は距離センサを備え、距離センサによってユーザの実位置を検出しても良い。例えば、実位置検出部101は、ユーザが携帯するGPS(Global Positioning System)端末から、GPS端末によって算出されたユーザの実位置の座標を無線通信によって受信しても良い。例えば、実位置検出部101は1又は複数のRFID(Radio Frequency Identification)リーダを備え、ユーザが携帯するRFIDタグから受信した信号に基づいてユーザの実位置を検出しても良い。実位置検出部101には、上述した方法以外の方法が適用されても良い。
【0020】
仮想位置取得部102は、ユーザの位置に対応してその位置が変化する移動体の位置(仮想位置)を取得する。仮想位置は、実際の空間座標系とは異なる仮想空間における座標系(以下、「仮想座標系」という。)における位置を表す。仮想座標系は、移動体の種類や、物理現象表現システム100で表現する物理現象の内容などに応じて、予め設計者によって設定される。例えば、複数の電子によって生じる物理現象を表す場合には、実際の空間座標系における1メートルが仮想座標系における1ピコメートル(10の−15乗)に相当する座標系として定義されても良い。また、地球の地磁気が電子に与える物理現象を表す場合には、実際の空間座標系における1メートルが仮想座標系における1万メートルに相当する座標系として定義されても良い。
【0021】
仮想位置取得部102が、ユーザの実位置に基づいて仮想位置を取得する具体的な方法には、どのような方法が適用されても良い。例えば、仮想位置取得部102は、実位置と仮想位置とを対応付けた変換テーブルを予め記憶し、この変換テーブルに基づいて実位置に応じた仮想位置を取得しても良い。例えば、仮想位置取得部102は、実際の空間座標系の座標を仮想座標系の座標に変換するための変換式を予め記憶し、実位置の座標に基づいて仮想位置の座標を算出しても良い。仮想位置取得部102には、上述した方法以外の方法が適用されても良い。変換式の例については後述する。
【0022】
現象演算部103は、仮想位置取得部102によって取得された各移動体の位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算する。現象演算部103は、例えば各移動体の位置に応じて各移動体に対して生じる力に基づいて、各移動体の動きを演算する。例えば、移動体が電子である場合には、現象演算部103は、仮想空間に存在する他の物体や粒子や場から電子(移動体)が受ける力を演算し、その力に基づいて電子(移動体)の動きを演算する。移動体が複数存在する場合には、移動体同士に働く力、すなわち一の移動体が他の移動体から受ける力も現象演算部103は演算する。
【0023】
このとき、予め仮想空間において働かない力として設定されている力がある場合には、その力が働かないものとして現象演算部103は演算を行う。逆に、予め仮想空間において働く力が設定されている場合には、設定された力のみが働くものとして現象演算部103は演算を行う。また、予め仮想空間において各種の物理定数の値がユーザによって変更されている場合には、演算部103は変更後の値を用いて演算を行う。
【0024】
映像生成部104は、現象演算部103の演算結果に基づいて、演算された物理現象を表す映像を生成する。例えば、上述したように移動体が電子である場合には、各電子の動きを表す動画像を生成する。映像生成部104は、生成した映像の信号を映像表示部106へ出力する。
【0025】
入力部105は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部105は、種々の指示を物理現象表現装置110に入力する際に操作者によって操作される。例えば、何を移動体とするか選択した結果を表す指示や、何を映像表示部106に表示するかの指示(磁力線、重力場、光、電磁波、プラズマ、個体などの表示)や、各種の物理定数を変更する指示や、仮想空間に存在する物体や粒子に関する情報などが入力部105を介して物理現象表現装置110に入力される。
【0026】
映像表示部106は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プロジェクター等の画像表示装置を用いて構成される。映像表示部106は、物理現象表現装置110の映像生成部104から出力された映像の信号に基づいて、物理現象を表す映像を表示する。
【0027】
実位置と仮想位置の変換については、以下のように行う。以下の例では、実位置検出部101は実位置を二次元空間上の位置(x,y)として行う。すなわち、実位置検出部101は、ユーザ、または対象となる物体の位置を二次元空間座標(x,y)で認識する。次に、仮想位置取得部102が、ユーザの実位置に対応する仮想空間における位置の座標(仮想空間座標)を取得する。仮想空間座標を(a,b,c)と表現すると、変換行列Gにより仮想空間座標と実位置との関係は以下の式1のように表される。
【0028】
【数1】
【0029】
仮想位置取得部102は、式1によって仮想空間座標を取得する。
【0030】
次に、現象演算部103の処理について説明する。現象演算部103は、仮想位置取得部102によって得られた仮想空間座標に基づいて、移動体に作用する力を演算し、映像生成部104に出力するための座標や、表示座標などを計算する。ここで、ユーザ1とユーザ2がそれぞれ仮想空間座標(a1,b1,c1)、(a2,b2,c2)に位置する時の、ユーザ1に対応する移動体1とユーザ2に対応する移動体2の表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)の算出の例を示す。まず、各移動体には、ユーザの位置に対応する仮想空間座標にとどまろうとする力Fが定義される。これは、各移動体に定義したり、任意に変更したりすることもできるし、共通パラメータとすることもできる。ここでは、移動体1と移動体2がそれぞれユーザ1とユーザ2の仮想空間座標にとどまろうとする力(以下残留力)をFとする。残留力は、表示座標から、仮想空間座標へのベクトル方向に対し作用している。よって表示座標が、仮想空間座標から離れれば、表示上の移動体(電子)は、ユーザの仮想空間座標に戻ろうと動作する。移動体1と移動体2がいずれも電子であると仮定し、クーロン力が作用していることを考えると、以下の式2で表される力を、互いの座標に対する斥力として受けることになる。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、kはボルツマン係数であり、q1とq2は荷電粒子の電荷量である。式2から分かるように、個の力は、ユーザ1とユーザ2の仮想空間座標が同じであれば無限大に発散してしまう。そこで、表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)は、残留力Fとクーロン力Fが釣り合う位置として、以下の式3のように算出できる。
【0033】
【数3】
【0034】
式3を満たし、且つ仮想空間座標からの距離が最小となる、表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)に移動体(電子)の映像を生成することになる。また、その他の力が移動体(電子)に働いたり、ユーザが何らかの動作により運動エネルギーを生じさせた場合などには、それらの力とクーロン力、残留力を考慮して表示座標が決定される。また、予め定められた残留力Fを上回る力でユーザから遠ざかる力を作用させると、移動体の表示座標とユーザの仮想空間座標とは永遠に遠ざかることとなる。このような状態を移動体の制御不能状態と定義する。ユーザに対応する移動体が制御不能状態となると、ユーザの位置情報を考慮した動作は不可能となるため、このような移動体はユーザから切り離され、最後の状態情報(位置や、速度、加速度の情報)を初期値として、仮想空間のパラメータに従い一定時間T0だけ運動を続けた後、現象演算部103の処理の対象から排除しても良い。このように制御することで、無用な移動体の運動について演算を続けることを防ぐことができる。また、移動体が制御不能状態になると、ユーザが操作可能な移動体が消失するため、時間Tr後にユーザの仮想空間座標に、新たな移動体を再生成しても良い。このように設定することで、ユーザは移動体が制御不能状態に陥ることを気にする必要がなく、様々な動きを試みることができる。また、式1はユーザの位置を二次元空間で把握した例であるが、無線による位置検出により三次元空間でユーザ位置(x,y,z)を検出しても良い。この場合には、以下の式4のように仮想空間座標への変換を行っても良い。
【0035】
【数4】
【0036】
また、映像として表示するために、この表示座標を映像を表示する画面上の座標に映像平面座標として更に変換することができる。映像平面座標(α,β)は、以下の式5のように変換行列Qを用いて表される。
【0037】
【数5】
【0038】
図2は、物理現象表現システム100の動作を表すフローチャートである。まず、実位置検出部101が、実位置を検出する(ステップS101)。次に、仮想位置取得部102が、実位置検出部101によって検出された実位置に基づいて仮想位置を取得する(ステップS102)。次に、現象演算部103が、仮想位置取得部102によって取得された仮想位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算で求める(ステップS103)。次に、映像生成部104が、現象演算部103の演算結果に基づいて、演算された物理現象を表す映像を生成する(ステップS104)。そして、映像表示部106が、映像生成部104によって生成された映像を表示する(ステップS105)。図2に示される動作は、所定の間隔で繰り返し実行される。また、図2に示される処理は、パイプライン処理のように複数のステップが同時に並行して実行されても良い。
【0039】
<第一実施例>
図3は、物理現象表現システム100の第一実施例を表す図である。図3に示される物理現象表現システム100は、ユーザの位置(実位置)に対応付けて電子(移動体)の位置(仮想位置)を取得し、位置に応じた電子の挙動を演算し表示する。図3には、天井から吊されたプロジェクター106−1と、プロジェクター106−1から投影される映像を映し出すスクリーン106−2が示されている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は映像表示部106の具体例である。スクリーン106−2の前には、二人のユーザ601−1及び601−2が立っている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、ユーザ601−1及び601−2のそれぞれの位置に対応付けて、電子501−1及び501−2を表示する。なお、説明の便宜のため、以下の説明において用いる図面では、プロジェクター106−1の図及び符号と、スクリーン106−2の符号とを省略する。
【0040】
図4は、図3に示された物理現象表現システム100の第一実施例の動作を表すフローチャートである。まず、実位置検出部101が、ユーザ601−1の位置と、ユーザ601−2の位置とを検出する(ステップS201)。次に、仮想位置取得部102が、実位置検出部101によって検出された各実位置に基づいて、各ユーザに対応する仮想位置を取得する(ステップS202)。図3の場合は、ユーザが二人存在しているため、二つの仮想位置が取得される。
【0041】
現象演算部103は、まず、制御不能状態になって時間Trが経過していないユーザの位置情報についてはこれを用いない(ステップS203)。現象演算部103が、仮想位置取得部102によって取得された実空間における座標から、制御不能状態でない、または制御不能状態後Tr経過したユーザの各仮想空間座標を計算し、設定する(ステップS204)。次に、制御不能状態になってT0経過した移動体を仮想空間から消去する(ステップS205)。次に、現象演算部103が、各ユーザに対応する電子の仮想空間座標と動きに基づいて、表示座標における電子の位置と動きを演算する(ステップS206)。このとき、例えばユーザ601−1に対応する電子501−1と、ユーザ601−2に対応する電子501−2との間に生じる力や、予め仮想空間に設定されている場によって生じる力などを現象演算部103が演算する。
【0042】
また、制御不能状態になってT0以内の移動体についても、ユーザに対応する移動体と同様に演算される。次に、新規に制御不能状態になった移動体が検出される。移動体は、表示座標がユーザの仮想空間座標から距離R0以内の領域まで戻ってこられなくなったり、仮想空間座標から距離R0以内の領域から離れて一定時間が経過したり、ある表示座標の条件を満たした場合に制御不能状態と認定される。制御不能状態と認定されると、移動体にはユーザの仮想空間座標にむけた残留力が働かなくなり、移動体は自由運動を行う。このとき、制御不能状態になった移動体の表示を条件によって消去することができる。消去する場合の例は後述するが、特定の座標に入った場合に指定できる。そして、現象演算部103は、演算結果として得られた力に基づいてユーザに対応する移動体(電子)、および制御不能状態の移動体(電子)の動きを演算し、表示座標を出力する。次に、映像生成部104が、現象演算部103の演算結果に基づいて、各ユーザに対応する電子の動きを表す映像を生成する(ステップS208)。そして、映像表示部106が、映像生成部104によって生成された映像を表示する(ステップS209)。
【0043】
図5は、ユーザが移動した場合の映像の変化の例を表す図である。図3に示される位置から、ユーザ601−1及びユーザ601−2が互いに近付いた場合、各ユーザの位置の変化に応じて仮想位置も変化する。その結果、各ユーザに対応する電子の位置も一度は近付く。しかしながら、電子501−1及び電子501−2は同じ負の電荷を有しているため、式2で示される反発する力が生じる。そのため、ユーザ601−1及びユーザ601−2の実位置の距離に比べて、スクリーン106−2に映し出された電子501−1及び電子501−2の距離は離れている。このとき、スクリーン106−2には、ユーザ601−1及びユーザ601−2の移動につられて、一度は電子501−1及び電子501−2の距離が図5に示されるよりも近付く状態が映し出される。しかし、上述したような力が生じるため、その後に映し出される映像(例えば図5に示される映像)では、段階的に電子501−1及び電子501−2が互いに離れる方向に移動する。
【0044】
運動エネルギーを考慮することで、初めに近づく際に生じた互いに近づこうとする運動エネルギーが存在するため、ユーザ位置に厳密に従おうとする残留力と運動エネルギーにより、クーロン力により表せる反発力との釣り合う点が、残留力との釣り合いの距離より小さくなり、一度大きく近づいた後、運動エネルギーが無くなり、クーロン力による反発力が大きくなり、跳ね返り、再び残留力によりユーザの仮想空間位置に近づこうと運動を開始することを繰り返し、収束するまで振り子のような運動をさせることもできる。
【0045】
また、図5において、501−3は電磁波を表す波の表示である。電子やイオン、プラズマなど荷電子が運動をする場合、その周囲にはマクスウェルの方程式で示される電磁界の変化が生じる。この電磁界の変化は波として周囲の空間に伝搬する。図5は電子が左右方向に動作しているため、左右方向と直角の方向に電磁波が放射されていることを表している。電子が動作する周期により放射される電波の周波数が異なる。このため、電磁波の周波数により、表示される電磁波の色を変化させることもできる。例えば、周波数が高いほど青くし、低いほど赤くすることができる。ユーザ、もしくはユーザが持つ位置検出される物体を周期運動(上下に振ったり、左右に動いたり)させることにより、対応する電磁波を放射する表示を出すことができる。
【0046】
<第二実施例>
図6は、物理現象表現システム100の第二実施例を表す図である。図6に示される物理現象表現システム100は、ユーザの実位置に対応付けて電子の仮想位置を取得し、仮想位置に基づいて電子の挙動を演算し表示する。第二実施例の仮想空間には、地球502及び太陽504が存在する。地球502は、北極と南極とを結ぶ磁力線503を有する。第二実施例の仮想空間では、各ユーザに対応する電子501(501−1及び501−2)には、地球502の磁力線503や、地球502の万有引力などが作用する。
【0047】
図6に示される第二実施例では、スクリーン106−2の前には、二人のユーザ601−1及び601−2が立っている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、ユーザ601−1及び601−2のそれぞれの位置に対応付けて、電子501−1及び電子501−2を表示する。また、プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、仮想空間に配置されている地球502、地球502の磁力線503、太陽504を表示する。
【0048】
第二実施例では、図6に示されるように仮想空間に磁力線503が生じており、各電子は一定速度v0で動き続けるように設定されている。そのため、電子501−1及び電子501−2は磁力線503にフレミングの右手の法則による力を受け、その動きは磁力線503の回りを回転する動きに限定されてしまう。磁力線に沿った動きに運動エネルギーを持っていても、地球に近づくほど磁力が大きくなるように設定されており、磁力線に対し垂直方向の運動エネルギーが磁力の増大により大きくなるため、ある程度地球に近づいても、磁力線に水平方向の運動エネルギーはいずれ0になり、跳ね返ってもどってくる。図7は、第二実施例における電子の動きの特徴を表す図である。図7は、図6に示される位置からユーザ601−1及びユーザ601−2が矢印の方向に移動した場合の映像の例を表す図である。
【0049】
ユーザ601−1が磁力線503に沿わない動きをした場合、電子501−1の動きは以下のようになる。ユーザ601−1の位置(実位置)に応じて電子501−1の位置(仮想位置)が取得される。仮想位置は、ユーザ601−1の移動に伴って図6の電子501−1の位置から右方向に移動した位置となる。しかし、現象演算部103による演算の結果、電子501−1は磁力線503から離れようとしても、フレミングの右手の法則により、磁力線503の回りを回転する力に変換されてしまうため、仮想位置には移動することが出来ず磁力線503の回りを回転し続ける。もしユーザ601−1の移動に伴って電子501−1が磁力線503を離れたとしても、電子501−1はすぐに磁力線503上に戻る。この電子501−1はこの時点でユーザの制御を離れてしまうため制御不能状態となる。よって、時間Tr後にユーザ601−1に対応する位置で電子が再生成され、電子501−1は時間T0だけ運動を続けた後、消去される。
【0050】
ユーザ601−2が磁力線503に沿った動きをした場合、電子501−2の動きは以下のようになる。ユーザ601−2の位置(実位置)に応じて電子501−2の位置(仮想位置)が取得される。仮想位置は、ユーザ601−2の移動(ジャンプ)に伴って図6の電子501−2の位置から上方向に移動した位置となる。現象演算部103による演算の結果、電子501−2は磁力線503による力を受けるものの、ユーザ601−2の移動が磁力線503に沿った移動であったため、仮想位置に移動する。その後、ユーザ601−2が着地するのに伴って電子501−2は図6に示される位置に戻る。
【0051】
図8は、ユーザが磁力線503に沿った方向に大きく動くことで、磁力線503方向に運動エネルギーFmを与えた場合の電子の動きを示している。電子は磁力線503の回りを回転しながら、磁力線503沿いに運動を行うが、地球502に近づくと磁力が増大することで、近づくことができず、跳ね返ってくる様子が示されている。
【0052】
図9は太陽風505が地球502に到来し、磁気圏が擾乱を受けていることが映像表示されている状態を示している。太陽504から、太陽風505が放射され、高エネルギーのプラズマが地球502に到来していることが表示される。この太陽風505の影響により、磁力線503は縮こまるなどの変化をし、電子が地球502により近づくことができるようになる。このような状態で図8と同様に磁力線503方向に電子を投下すると、今度は跳ね返らずに地球502にぶつかることとなる。現象演算部103は、電子の表示位置(u,v,w)が地球502の大気座標の条件を表す存在位置に侵入したことを検出すると、電子の表示を消去し、代わりに地球502にオーロラ506を発生させるように映像生成部104に指定する。この場合も、電子は制御不能状態になったものとして、映像生成部104はユーザの仮想空間座標に一定時間後に電子を再生させる。このようにしてユーザは再生成された電子を次々に地球502に向けて投下することができ、オーロラ発生のメカニズムについて体験することができる。
【0053】
図4におけるフローチャートでは、ステップS307において電子の位置が、地球大気座標の条件に電子の表示座標が含まれることを検出し、電子の表示を消去し、制御不能状態とし、地球上でオーロラを光らせる映像を作成し(S208)、映像を表示させる(S209)。
【0054】
このように構成された第一実施形態では、ユーザの位置に基づいて物体や粒子などの移動体の位置が特定され、移動体の位置に応じて他の物体や粒子との相互作用が演算される。そして、その演算結果に基づいて、物理現象を表す映像が生成され表示される。そのため、ユーザは、自身が移動することによって、物体や粒子などの移動体の位置を変化させ、その変化によって生じる物理現象を視覚的に確認することが可能となる。したがって、ユーザは、物理現象をより感覚的に把握することが可能となる。
【0055】
また、各種の物理定数の値をユーザが自由に変更できるように構成された場合、ユーザが物理定数を変化させることによって、各物理定数によってどのように物理現象に変化が生じるか実感することが可能となる。そのため、それぞれの物理定数についての理解を深めることが可能となる。
さらに、光の速度を20km/hのように現実よりも小さく設定した場合に、現象演算部103は、電子を動かしたときのそれぞれの電子から見た経過時間の違いを演算しても良い。この場合、映像生成部104は、演算結果の経過時間を映像に表示しても良い。また、電子半径や光子半径が現実よりも大きく設定された場合、現象演算部103は電子の存在確率のもやを演算しても良い。この場合、映像生成部104は、演算結果のもやを視覚的に映像として表現しても良い。この場合、下記のようにクーロン力が働かないように設定されることによって、二つの電子の存在確率を近づけることで、干渉縞が生じる様子を観察できる。
【0056】
実世界において生じる複数の力のうち、仮想空間において生じる力を選択できるように構成された場合、クーロン力だけが働くように選択することや、ローレンツ力だけが働くように選択すること等によって、それぞれの力が物理現象に与える影響について視覚的に理解を深めることが可能となる。
また、ユーザは物理現象表現システム100の入力部105を操作し太陽風の発生を指示することによって、オーロラという神秘的な物理現象が発生する過程を視覚的に確認することが可能となる。
【0057】
<変形例>
実位置検出部101は、実位置としてユーザの位置を検出するのではなく、予め設定された物体の位置を検出しても良い。物体の例としては、例えばユーザが身につける物(例えばリストバンド、帽子、モーションキャプチャー用のマーカー等)や、ユーザが携帯する物(携帯電話機、カバンなど)や、ユーザがその位置を操作できる物(ラジオコントロールカー、ラジオコントロールヘリコプター、移動型ロボット等)等がある。
【0058】
物理現象表現システム100は、携帯装置を備える様に構成されても良い。この場合、物理現象表現装置110は、携帯装置に対して所定の信号を送信する送信部を備える。送信部は、現象演算部103における演算結果が所定の条件を満たした場合、満たされた条件に応じた信号を携帯装置に対して送信する。携帯装置は、ユーザに携帯される装置である。携帯装置は、物理現象表現装置110から信号を受信すると、受信した信号に応じて動作する。例えば、携帯装置はジャイロを備えており、所定の信号を受信するとジャイロを動作させることによってユーザに対して体が引っ張られる感覚を体感させる。より具体的には、現象演算部103が移動体に対して生じる力が所定以上であると演算した場合に、送信部は力が生じる方向を表す信号を送信する。携帯装置は、信号が表す方向に力が生じるようにジャイロを制御しても良い。
【0059】
映像生成部104は、物理現象、物体、粒子、力、場のうち、ユーザによって指定されたもののみを可視化するように映像を生成しても良い。可視化の指定は、入力部105を介して行われる。例えば、磁場の動きだけを可視化したり、電磁波のみを可視化したりしても良い。このように構成されることによって、見たい現象のみに着目することが可能となる。また、電磁波のうち、可視化される周波数帯域を指定出来るように構成されても良い。このように構成されることによって、電磁波の伝搬の様子を容易に確認することが可能となる。
【0060】
[第二実施形態]
図10は、物理現象表現システムの第二実施形態(物理現象表現システム200)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム200は、複数の実位置検出部201−1〜201−N、物理現象表現装置210、複数の映像生成部204−1〜201−N、複数の映像表示部205−1〜205−Nを備える。実位置検出部201−n、映像生成部204−n、映像表示部205−n(nは1〜Nの整数)は、同じ場所に設置されている。すなわち、実位置検出部201−nが位置を検出するユーザは、映像生成部204−nによって生成された映像を、映像表示部205−n上で見ることが可能である。同じ場所に設置された実位置検出部201−n、映像生成部204−n、映像表示部205−nには同一の識別情報が割り当てられる。
【0061】
実位置検出部201−n及び映像生成部204−nは、有線又は無線の通信で物理現象表現装置210に接続される。
実位置検出部201−nは、それぞれが設置された付近を移動するユーザの位置を検出する。実位置検出部201−nは、検出した実位置を、自身に割り当てられた識別情報とともに物理現象表現装置210へ送信する。各実位置検出部201−nの構成は、物理現象表現装置210への送信処理を除けば、第一実施形態における実位置検出部101と同じである。
【0062】
物理現象表示装置210は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置210は、物理現象表現プログラムの実行により、仮想位置取得部202、現象演算部203を備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置210の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。
【0063】
仮想位置取得部202は、物理現象表示装置210に接続された複数の実位置検出部201−nによって検出された各実位置について仮想位置を取得する。仮想位置取得部202には、全ての実位置検出部201−nに共通した仮想座標系が設定されていても良いし、実位置検出部201−n毎に異なる仮想座標系が設定されていても良い。仮想位置取得部202は、各位置検出部201−nから受信した識別情報と仮想位置とを対応付けて現象演算部203に出力する。仮想位置取得部202が仮想位置を取得する処理は、第一実施形態における仮想位置取得部102と同じである。
【0064】
現象演算部203は、仮想位置取得部202から出力された各仮想位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算する。現象演算部203が行う演算は、第一実施形態における現象演算部103と同じである。現象演算部203は、演算の結果を各映像生成部204−nに送信する。送信される演算の結果には、各移動体の動きと、その移動体に対応する識別情報との組み合わせが含まれる。
【0065】
映像生成部204−nは、物理現象表示装置210から演算結果を受信する。映像生成部204−nは、演算結果に基づいて映像を生成する。映像生成部204−nには固有の座標系が予め設定されている。この座標系は、仮想位置取得部202において用いられる仮想座標系に対応する座標系である。映像生成部204−nは、受信した演算結果が表す仮想空間の映像を、予め設定された座標系に従って映像にする。このように予め設定された座標系で映像が生成されることによって、実位置検出部201−nによって検出されたユーザの位置に対応した位置に、正確に移動体を表示することが可能となる。
【0066】
映像生成部204−nは、自身の識別情報に対応する移動体を、他の移動体とは異なる態様で表示しても良い。例えば映像生成部204−nは、自身の識別情報に対応する移動体を、他の移動体よりも大きく表示しても良いし、他の移動体と異なる色で表示しても良いし、他の移動体と異なるパターンで点滅するように表示しても良い。
映像表示部205−nは、映像生成部204−nによって生成された映像を表示する。
【0067】
図11は、物理現象表現システム200の実施例を表す図である。図11では、二人のユーザ601−1及び601−2の位置に応じて、電子501−1及び電子501−2が表示されている。ユーザ601−1及びユーザ601−2とは異なる場所に設置された実位置検出部201−nも、他のユーザの位置を検出している。そのため、他のユーザに対応する移動体として、電子501−3、電子501−4、電子501−5が表示される。電子501−3、電子501−4、電子501−5は、それぞれに対応するユーザの位置に応じてその位置が変化する。
【0068】
図12は、図11とは異なる場所に設置された映像表示部205−nによって表示される映像の具体例を表す図である。図12には、図11に示されたユーザとは異なるユーザ601−3と、ユーザ601−3に対応する電子(移動体)501−5の映像が図示されている。図11の映像を生成する映像生成部204−nと、図12に映像を生成する映像生成部204−n’(n’は1〜Nの整数、nとn’とは異なる値)とには、異なる座標系が設定されている。そのため、生成される映像において、地球や磁力線などが表示される位置が、図11と図12とで異なる。したがって、図11の場合は、ユーザ601−1及びユーザ601−2の側に、電子501−1及び電子501−2を表示することが可能となる。同様に、図12の場合は、ユーザ601−3の側に、電子501−5を表示することが可能となる。なお、図11及び図12の例では、座標系の原点の位置が異なるのみであるが、各座標系において尺度(倍率)が異なっても良いし、回転しても良い。
【0069】
第二実施形態では、多地点に設置された位置検出部201−nが物理現象表現装置210に通信可能に接続され、多地点で検出された実位置に基づいて仮想空間における物理現象が演算される。そのため、ユーザは仮想空間における世界の広がりを体験することが可能となる。また、異なる地点から異なる仮想空間上の位置を体験することが可能となり、物理現象への理解をより一層深めることが可能となる。例えば、各ユーザの場所における座標系を変えることによって、各ユーザの仮想空間における場所を、地球の夜明け側、日没側、磁気圏尾部などのように様々な固有の場所に設定することができる。そのため、様々な固有の場所とのつながりを作成することが可能となる。すなわち、様々な固有の場所における物理現象を体験でき、ユーザの理解を深めることが可能となる。
また、第二実施形態では、第一実施形態と同様の効果を得ることも可能である。
【0070】
<変形例>
図13は、物理現象表現システム200の変形例における実施例を表す図である。物理現象表現システム200の変形例では、実位置検出部201−nが位置検出の対象としているユーザの画像を撮像する撮像装置が備えられる。各撮像装置は、撮像した映像を物理現象表現装置210に対して送信する。物理現象表現装置210は、現象演算部203による演算結果とともに、各撮像装置から受信した映像を各映像生成部104−nに送信する。映像生成部204−nは、他の場所のユーザに対応する移動体の映像とともに、そのユーザの映像(以下、「サブ映像」という。)を重ね合わせる。図13では、他の場所のユーザに対応する映像として、サブ映像602−1と、サブ映像602−2が表示されている。また、サブ映像のみを表示し、移動体の映像を表示しなくとも良い。
また、物理現象表現システム200は、第一実施形態における物理現象表現システム100と同様に変形して構成されても良い。
【0071】
[第三実施形態]
図14は、物理現象表現システムの第三実施形態(物理現象表現システム300)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム300は、複数の物理現象表現装置310−1〜310−Nと、映像表示部305−1〜305−Nを備える。物理現象表現装置310−n及び映像表示部305−n(nは1〜Nの整数)は、同じ場所に設置されている。各物理現象表現装置310−1〜310−Nは、それぞれ異なる場所に設置されており、互いに通信可能に接続されている。
【0072】
物理現象表示装置310−n(nは1〜Nの整数)は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置310−nは、物理現象表現プログラムの実行により、実位置検出部301−n、遅延部306−n、仮想位置取得部302−n、現象演算部303−n、映像生成部304−nを備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置310−nの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。
【0073】
実位置検出部301−n、現象演算部303−n、映像生成部304−n、映像表示部305−nは、それぞれ第一実施形態における実位置検出部101、現象演算部103、映像生成部104、映像表示部106と同じ構成である。
【0074】
遅延部306−nは、実位置検出部301−nから出力された実位置の情報に遅延を付与して各物理現象表現装置310−nへ送信する。例えば、遅延部306−i(iは1〜Nの整数)が物理現象表現装置310−j(jは1〜Nの整数)へ実位置の情報を送信する場合、予め設定された遅延時間Tijを付与して送信する。具体的には、遅延部306−iは、実位置検出部301−iから出力された実位置の情報を一時的に記憶し、遅延時間Tijの時間が経過してから物理現象表現装置310−jへ実位置の情報を送信する。遅延時間Tijは、物理現象表現装置310−iが設置された場所と、物理現象表現装置310−jが設置された場所との実際の距離に応じて設定されても良い。すなわち、この距離が短いほど小さい遅延時間Tijが設定され、この距離が大きいほど大きい遅延時間Tijが設定されても良い。また、TijとTjiとは同じ値が設定されても良いし、異なる値が設定されても良い。また、全ての遅延時間に同じ値が設定されても良い。
【0075】
仮想位置取得部302−nは、各遅延部306−1〜306−Nから実位置の情報を受信し、各時点において受信している実位置に対応する仮想位置を取得する。仮想位置取得部302−nが実位置に対応する仮想位置を取得する処理は、第一実施形態における仮想位置取得部102と同じである。
【0076】
このように構成された第三実施形態では、各地点におけるユーザの移動は、所定の遅延時間が経過した後に、他の地点に設置された物理現象表現装置310に入力される。そのため、映像表示部305によって表示される映像では、他の地点におけるユーザの移動が所定の遅延時間経過後に反映される。したがって、仮想空間上での距離感をユーザが体感することが可能となる。例えば、地点iと地点jとの間の遅延時間Tijとして24時間が設定されると、地点iのユーザは1日前の地点jの情報を見ることとなる。このようにして、仮想空間内での地点jから地点iまでの光の伝搬距離を模擬することが可能であり、広大な仮想空間をユーザが体感することが可能となる。このとき、遅延時間の設定を、光の速度の設定値と連動させることで、光の速度が遅いほど、仮想空間中で遠くに設定した映像が昔の映像になることを確認することも可能となる。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
100,200,300…物理現象表現システム, 110,210,310…物理現象表現装置, 101,201−1〜201−N,301−1〜301−N…実位置検出部, 102,202,302−1〜302−N…仮想位置取得部, 103,203,303−1〜303−N…現象演算部, 104,204−1〜204−N,304−1〜304−N…映像生成部, 105…入力部, 106,205−1〜205−N,305−1〜305−N…映像表示部, 106−1…プロジェクター, 106−2…スクリーン, 501−1〜501−5…電子, 502…地球, 503…磁力線, 504…太陽, 505…太陽風, 506…オーロラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理現象を表す映像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子、陽子、光子、分子などに関わる物理現象を学ぶための道具として、本、アニメーション、ゲームなどがあった。また、古典物理学(万有引力、遠心力、振り子など)に関する物理現象について、ユーザがその現象を体験するための体験装置も提案されている。
また、上述した体験装置とはまた異なる技術分野であるが、遊園地などにおいて監視対象者の現在位置を検出し、監視対象者を確実に表示装置に表示できるようにする技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−115099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
古典物理学が扱う領域と異なり、近代物理学(現代物理学ともいう:相対性理論、量子力学など)は、視覚的に現象を確認することが難しい。そのため、近代物理学の現象を視覚的に表現することは難しく、ユーザに対してその現象を体験させることは困難であるという問題があった。また、ユーザに対して現象を体験させることの困難さは、古典物理学においても同様に課題となっていた。
上記事情に鑑み、本発明は、ユーザの動作に応じて変化する物理現象を視覚的に表現することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、を備える物理現象表現装置である。
【0006】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記現象演算部は、前記仮想空間において働く力としてユーザによって指定された力のみが働くものとして前記物理現象を演算する。
【0007】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記現象演算部は、ユーザによって物理定数の変更が指定された場合、変更後の前記物理定数を用いて前記物理現象を演算する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現装置であって、前記映像生成部は、ユーザによって選択された可視化対象のみを可視化するように映像を生成する。
【0009】
本発明の一態様は、複数の異なる場所毎に設置された実位置検出部、映像生成部及び映像表示部と、仮想位置取得部及び現象演算部と、を備える物理現象表現システムであって、前記実位置検出部は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出し、前記仮想位置取得部は、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、実空間の位置毎に取得し、前記現象演算部は、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算し、前記映像生成部は、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成し、前記映像表示部は、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する。
【0010】
本発明の一態様は、異なる場所毎に設置された複数の物理現象表現装置を備える物理現象表現システムであって、前記物理現象表現装置は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、前記実位置検出部の検出結果を、他の物理現象装置に対して遅延を与えて送信する遅延部と、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、他の物理現象装置から受信した前記検出結果及び自装置における検出結果のそれぞれの実空間の位置毎に取得する仮想位置取得部と、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成する映像生成部と、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する映像表示部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現システムであって、前記遅延部は、自身が設置された場所と、送信先の前記物理現象表現装置が設置された場所とに応じて決定される遅延を与えて前記検出結果を送信する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の物理現象表現システムであって、一の物理現象表現装置が他の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延は、前記他の物理現象装置が前記一の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延と等しい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ユーザの動作に応じて変化する物理現象を視覚的に表現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】物理現象表現システムの第一実施形態(物理現象表現システム100)の構成を表す構成図である。
【図2】物理現象表現システム100の動作を表すフローチャートである。
【図3】物理現象表現システム100の第一実施例を表す図である。
【図4】物理現象表現システム100の第一実施例の動作を表すフローチャートである。
【図5】ユーザが移動した場合の映像の変化の例を表す図である。
【図6】物理現象表現システム100の第二実施例を表す図である。
【図7】第二実施例における電子の動きの特徴を表す図である。
【図8】物理現象表現システム100の第二実施例の動作のうち、太陽風に関する動作を表すフローチャートである。
【図9】物理現象表現システム100によって表示される映像の例を表す図である。
【図10】物理現象表現システムの第二実施形態(物理現象表現システム200)の構成を表す構成図である。
【図11】物理現象表現システム200の実施例を表す図である。
【図12】図11とは異なる場所に設置された映像表示部205−nによって表示される映像の具体例を表す図である。
【図13】物理現象表現システム200の変形例における実施例を表す図である。
【図14】物理現象表現システムの第三実施形態(物理現象表現システム300)の構成を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[概略]
物理現象表現システムでは、予め条件が設定された仮想の空間(以下、「仮想空間」という。)における物理現象が演算され、演算結果に基づいて仮想空間の状態を表す映像が表示される。仮想空間には、ユーザの位置に対応してその位置が変化する移動体が存在する。移動体とは、物理現象を引き起こす要因となる物体や粒子を表す。物体とは、例えば地球、月、太陽、磁石などである。粒子とは、例えば分子、原子、原子核、中性子、陽子、電子などである。
【0016】
仮想空間における物理法則は、実世界における物理法則と同じである。そのため、仮想空間で生じる物理現象を演算するための数式は、実世界で生じる物理現象を表した数式と同じである。一方、仮想空間では、例えば地球が太陽に近付いたり、月が地球から離れたり、月が複数存在したりするように、実世界では起こりえない状況が作り出されても良い。この場合、作り出された状況に基づいて物理現象が演算され、その演算結果が映像として表示されても良い。また、仮想空間では、各種の物理定数(光の速度、ボルツマン係数、電子半径、陽子半径、万有引力定数など)の値をユーザが自由に変更できても良い。また、仮想空間における時間の流れの速さと、実世界における時間の流れの速さとは同じであっても良いし異なっても良い。また、実世界において生じる複数の力(分子間力、クーロン力、万有引力、ローレンツ力等)のうち、仮想空間において生じる力を選択できても良い。
仮想空間には、移動体以外の物体や粒子が存在しても良い。仮想空間には、物体や粒子によって生じる場(例えば、磁場、電場、重力場など)が予め設定されていても良い。
【0017】
物理現象表現システムでは、仮想空間における移動体の位置(以下、「仮想位置」という。)は、ユーザによって指示された実際の空間座標系の位置(以下、「実位置」という。)に基づいて決定される。すなわち、物理現象表現システムは、実位置を検出し、仮想位置を決定する。そして、物理現象表現システムは、仮想位置に基づいて仮想空間における物理現象を演算し、演算結果に基づいて仮想空間の状況を表す映像を表示する。
【0018】
[第一実施形態]
図1は、物理現象表現システムの第一実施形態(物理現象表現システム100)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム100は、物理現象表現装置110及び映像表示部106を備える。物理現象表現装置110は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置110は、物理現象表現プログラムの実行により、実位置検出部101、仮想位置取得部102、現象演算部103、映像生成部104、入力部105を備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置110の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。物理現象表現プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。物理現象表現プログラムは、電気通信回線を介して提供されても良い。
【0019】
実位置検出部101は、実際の空間座標系におけるユーザの位置(実位置)を検出する。すなわち、ユーザは自身が移動することによって実空間における位置を指示する。実位置検出部101が実位置を検出するための具体的な方法には、既存のどのような方法が適用されても良い。例えば、実位置検出部101は撮像装置を備え、撮像装置によって撮影されたユーザの画像に基づいてユーザの実位置が検出されても良い。例えば、実位置検出部101は距離センサを備え、距離センサによってユーザの実位置を検出しても良い。例えば、実位置検出部101は、ユーザが携帯するGPS(Global Positioning System)端末から、GPS端末によって算出されたユーザの実位置の座標を無線通信によって受信しても良い。例えば、実位置検出部101は1又は複数のRFID(Radio Frequency Identification)リーダを備え、ユーザが携帯するRFIDタグから受信した信号に基づいてユーザの実位置を検出しても良い。実位置検出部101には、上述した方法以外の方法が適用されても良い。
【0020】
仮想位置取得部102は、ユーザの位置に対応してその位置が変化する移動体の位置(仮想位置)を取得する。仮想位置は、実際の空間座標系とは異なる仮想空間における座標系(以下、「仮想座標系」という。)における位置を表す。仮想座標系は、移動体の種類や、物理現象表現システム100で表現する物理現象の内容などに応じて、予め設計者によって設定される。例えば、複数の電子によって生じる物理現象を表す場合には、実際の空間座標系における1メートルが仮想座標系における1ピコメートル(10の−15乗)に相当する座標系として定義されても良い。また、地球の地磁気が電子に与える物理現象を表す場合には、実際の空間座標系における1メートルが仮想座標系における1万メートルに相当する座標系として定義されても良い。
【0021】
仮想位置取得部102が、ユーザの実位置に基づいて仮想位置を取得する具体的な方法には、どのような方法が適用されても良い。例えば、仮想位置取得部102は、実位置と仮想位置とを対応付けた変換テーブルを予め記憶し、この変換テーブルに基づいて実位置に応じた仮想位置を取得しても良い。例えば、仮想位置取得部102は、実際の空間座標系の座標を仮想座標系の座標に変換するための変換式を予め記憶し、実位置の座標に基づいて仮想位置の座標を算出しても良い。仮想位置取得部102には、上述した方法以外の方法が適用されても良い。変換式の例については後述する。
【0022】
現象演算部103は、仮想位置取得部102によって取得された各移動体の位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算する。現象演算部103は、例えば各移動体の位置に応じて各移動体に対して生じる力に基づいて、各移動体の動きを演算する。例えば、移動体が電子である場合には、現象演算部103は、仮想空間に存在する他の物体や粒子や場から電子(移動体)が受ける力を演算し、その力に基づいて電子(移動体)の動きを演算する。移動体が複数存在する場合には、移動体同士に働く力、すなわち一の移動体が他の移動体から受ける力も現象演算部103は演算する。
【0023】
このとき、予め仮想空間において働かない力として設定されている力がある場合には、その力が働かないものとして現象演算部103は演算を行う。逆に、予め仮想空間において働く力が設定されている場合には、設定された力のみが働くものとして現象演算部103は演算を行う。また、予め仮想空間において各種の物理定数の値がユーザによって変更されている場合には、演算部103は変更後の値を用いて演算を行う。
【0024】
映像生成部104は、現象演算部103の演算結果に基づいて、演算された物理現象を表す映像を生成する。例えば、上述したように移動体が電子である場合には、各電子の動きを表す動画像を生成する。映像生成部104は、生成した映像の信号を映像表示部106へ出力する。
【0025】
入力部105は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部105は、種々の指示を物理現象表現装置110に入力する際に操作者によって操作される。例えば、何を移動体とするか選択した結果を表す指示や、何を映像表示部106に表示するかの指示(磁力線、重力場、光、電磁波、プラズマ、個体などの表示)や、各種の物理定数を変更する指示や、仮想空間に存在する物体や粒子に関する情報などが入力部105を介して物理現象表現装置110に入力される。
【0026】
映像表示部106は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プロジェクター等の画像表示装置を用いて構成される。映像表示部106は、物理現象表現装置110の映像生成部104から出力された映像の信号に基づいて、物理現象を表す映像を表示する。
【0027】
実位置と仮想位置の変換については、以下のように行う。以下の例では、実位置検出部101は実位置を二次元空間上の位置(x,y)として行う。すなわち、実位置検出部101は、ユーザ、または対象となる物体の位置を二次元空間座標(x,y)で認識する。次に、仮想位置取得部102が、ユーザの実位置に対応する仮想空間における位置の座標(仮想空間座標)を取得する。仮想空間座標を(a,b,c)と表現すると、変換行列Gにより仮想空間座標と実位置との関係は以下の式1のように表される。
【0028】
【数1】
【0029】
仮想位置取得部102は、式1によって仮想空間座標を取得する。
【0030】
次に、現象演算部103の処理について説明する。現象演算部103は、仮想位置取得部102によって得られた仮想空間座標に基づいて、移動体に作用する力を演算し、映像生成部104に出力するための座標や、表示座標などを計算する。ここで、ユーザ1とユーザ2がそれぞれ仮想空間座標(a1,b1,c1)、(a2,b2,c2)に位置する時の、ユーザ1に対応する移動体1とユーザ2に対応する移動体2の表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)の算出の例を示す。まず、各移動体には、ユーザの位置に対応する仮想空間座標にとどまろうとする力Fが定義される。これは、各移動体に定義したり、任意に変更したりすることもできるし、共通パラメータとすることもできる。ここでは、移動体1と移動体2がそれぞれユーザ1とユーザ2の仮想空間座標にとどまろうとする力(以下残留力)をFとする。残留力は、表示座標から、仮想空間座標へのベクトル方向に対し作用している。よって表示座標が、仮想空間座標から離れれば、表示上の移動体(電子)は、ユーザの仮想空間座標に戻ろうと動作する。移動体1と移動体2がいずれも電子であると仮定し、クーロン力が作用していることを考えると、以下の式2で表される力を、互いの座標に対する斥力として受けることになる。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、kはボルツマン係数であり、q1とq2は荷電粒子の電荷量である。式2から分かるように、個の力は、ユーザ1とユーザ2の仮想空間座標が同じであれば無限大に発散してしまう。そこで、表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)は、残留力Fとクーロン力Fが釣り合う位置として、以下の式3のように算出できる。
【0033】
【数3】
【0034】
式3を満たし、且つ仮想空間座標からの距離が最小となる、表示座標(u1,v1,w1)、(u2,v2,w2)に移動体(電子)の映像を生成することになる。また、その他の力が移動体(電子)に働いたり、ユーザが何らかの動作により運動エネルギーを生じさせた場合などには、それらの力とクーロン力、残留力を考慮して表示座標が決定される。また、予め定められた残留力Fを上回る力でユーザから遠ざかる力を作用させると、移動体の表示座標とユーザの仮想空間座標とは永遠に遠ざかることとなる。このような状態を移動体の制御不能状態と定義する。ユーザに対応する移動体が制御不能状態となると、ユーザの位置情報を考慮した動作は不可能となるため、このような移動体はユーザから切り離され、最後の状態情報(位置や、速度、加速度の情報)を初期値として、仮想空間のパラメータに従い一定時間T0だけ運動を続けた後、現象演算部103の処理の対象から排除しても良い。このように制御することで、無用な移動体の運動について演算を続けることを防ぐことができる。また、移動体が制御不能状態になると、ユーザが操作可能な移動体が消失するため、時間Tr後にユーザの仮想空間座標に、新たな移動体を再生成しても良い。このように設定することで、ユーザは移動体が制御不能状態に陥ることを気にする必要がなく、様々な動きを試みることができる。また、式1はユーザの位置を二次元空間で把握した例であるが、無線による位置検出により三次元空間でユーザ位置(x,y,z)を検出しても良い。この場合には、以下の式4のように仮想空間座標への変換を行っても良い。
【0035】
【数4】
【0036】
また、映像として表示するために、この表示座標を映像を表示する画面上の座標に映像平面座標として更に変換することができる。映像平面座標(α,β)は、以下の式5のように変換行列Qを用いて表される。
【0037】
【数5】
【0038】
図2は、物理現象表現システム100の動作を表すフローチャートである。まず、実位置検出部101が、実位置を検出する(ステップS101)。次に、仮想位置取得部102が、実位置検出部101によって検出された実位置に基づいて仮想位置を取得する(ステップS102)。次に、現象演算部103が、仮想位置取得部102によって取得された仮想位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算で求める(ステップS103)。次に、映像生成部104が、現象演算部103の演算結果に基づいて、演算された物理現象を表す映像を生成する(ステップS104)。そして、映像表示部106が、映像生成部104によって生成された映像を表示する(ステップS105)。図2に示される動作は、所定の間隔で繰り返し実行される。また、図2に示される処理は、パイプライン処理のように複数のステップが同時に並行して実行されても良い。
【0039】
<第一実施例>
図3は、物理現象表現システム100の第一実施例を表す図である。図3に示される物理現象表現システム100は、ユーザの位置(実位置)に対応付けて電子(移動体)の位置(仮想位置)を取得し、位置に応じた電子の挙動を演算し表示する。図3には、天井から吊されたプロジェクター106−1と、プロジェクター106−1から投影される映像を映し出すスクリーン106−2が示されている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は映像表示部106の具体例である。スクリーン106−2の前には、二人のユーザ601−1及び601−2が立っている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、ユーザ601−1及び601−2のそれぞれの位置に対応付けて、電子501−1及び501−2を表示する。なお、説明の便宜のため、以下の説明において用いる図面では、プロジェクター106−1の図及び符号と、スクリーン106−2の符号とを省略する。
【0040】
図4は、図3に示された物理現象表現システム100の第一実施例の動作を表すフローチャートである。まず、実位置検出部101が、ユーザ601−1の位置と、ユーザ601−2の位置とを検出する(ステップS201)。次に、仮想位置取得部102が、実位置検出部101によって検出された各実位置に基づいて、各ユーザに対応する仮想位置を取得する(ステップS202)。図3の場合は、ユーザが二人存在しているため、二つの仮想位置が取得される。
【0041】
現象演算部103は、まず、制御不能状態になって時間Trが経過していないユーザの位置情報についてはこれを用いない(ステップS203)。現象演算部103が、仮想位置取得部102によって取得された実空間における座標から、制御不能状態でない、または制御不能状態後Tr経過したユーザの各仮想空間座標を計算し、設定する(ステップS204)。次に、制御不能状態になってT0経過した移動体を仮想空間から消去する(ステップS205)。次に、現象演算部103が、各ユーザに対応する電子の仮想空間座標と動きに基づいて、表示座標における電子の位置と動きを演算する(ステップS206)。このとき、例えばユーザ601−1に対応する電子501−1と、ユーザ601−2に対応する電子501−2との間に生じる力や、予め仮想空間に設定されている場によって生じる力などを現象演算部103が演算する。
【0042】
また、制御不能状態になってT0以内の移動体についても、ユーザに対応する移動体と同様に演算される。次に、新規に制御不能状態になった移動体が検出される。移動体は、表示座標がユーザの仮想空間座標から距離R0以内の領域まで戻ってこられなくなったり、仮想空間座標から距離R0以内の領域から離れて一定時間が経過したり、ある表示座標の条件を満たした場合に制御不能状態と認定される。制御不能状態と認定されると、移動体にはユーザの仮想空間座標にむけた残留力が働かなくなり、移動体は自由運動を行う。このとき、制御不能状態になった移動体の表示を条件によって消去することができる。消去する場合の例は後述するが、特定の座標に入った場合に指定できる。そして、現象演算部103は、演算結果として得られた力に基づいてユーザに対応する移動体(電子)、および制御不能状態の移動体(電子)の動きを演算し、表示座標を出力する。次に、映像生成部104が、現象演算部103の演算結果に基づいて、各ユーザに対応する電子の動きを表す映像を生成する(ステップS208)。そして、映像表示部106が、映像生成部104によって生成された映像を表示する(ステップS209)。
【0043】
図5は、ユーザが移動した場合の映像の変化の例を表す図である。図3に示される位置から、ユーザ601−1及びユーザ601−2が互いに近付いた場合、各ユーザの位置の変化に応じて仮想位置も変化する。その結果、各ユーザに対応する電子の位置も一度は近付く。しかしながら、電子501−1及び電子501−2は同じ負の電荷を有しているため、式2で示される反発する力が生じる。そのため、ユーザ601−1及びユーザ601−2の実位置の距離に比べて、スクリーン106−2に映し出された電子501−1及び電子501−2の距離は離れている。このとき、スクリーン106−2には、ユーザ601−1及びユーザ601−2の移動につられて、一度は電子501−1及び電子501−2の距離が図5に示されるよりも近付く状態が映し出される。しかし、上述したような力が生じるため、その後に映し出される映像(例えば図5に示される映像)では、段階的に電子501−1及び電子501−2が互いに離れる方向に移動する。
【0044】
運動エネルギーを考慮することで、初めに近づく際に生じた互いに近づこうとする運動エネルギーが存在するため、ユーザ位置に厳密に従おうとする残留力と運動エネルギーにより、クーロン力により表せる反発力との釣り合う点が、残留力との釣り合いの距離より小さくなり、一度大きく近づいた後、運動エネルギーが無くなり、クーロン力による反発力が大きくなり、跳ね返り、再び残留力によりユーザの仮想空間位置に近づこうと運動を開始することを繰り返し、収束するまで振り子のような運動をさせることもできる。
【0045】
また、図5において、501−3は電磁波を表す波の表示である。電子やイオン、プラズマなど荷電子が運動をする場合、その周囲にはマクスウェルの方程式で示される電磁界の変化が生じる。この電磁界の変化は波として周囲の空間に伝搬する。図5は電子が左右方向に動作しているため、左右方向と直角の方向に電磁波が放射されていることを表している。電子が動作する周期により放射される電波の周波数が異なる。このため、電磁波の周波数により、表示される電磁波の色を変化させることもできる。例えば、周波数が高いほど青くし、低いほど赤くすることができる。ユーザ、もしくはユーザが持つ位置検出される物体を周期運動(上下に振ったり、左右に動いたり)させることにより、対応する電磁波を放射する表示を出すことができる。
【0046】
<第二実施例>
図6は、物理現象表現システム100の第二実施例を表す図である。図6に示される物理現象表現システム100は、ユーザの実位置に対応付けて電子の仮想位置を取得し、仮想位置に基づいて電子の挙動を演算し表示する。第二実施例の仮想空間には、地球502及び太陽504が存在する。地球502は、北極と南極とを結ぶ磁力線503を有する。第二実施例の仮想空間では、各ユーザに対応する電子501(501−1及び501−2)には、地球502の磁力線503や、地球502の万有引力などが作用する。
【0047】
図6に示される第二実施例では、スクリーン106−2の前には、二人のユーザ601−1及び601−2が立っている。プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、ユーザ601−1及び601−2のそれぞれの位置に対応付けて、電子501−1及び電子501−2を表示する。また、プロジェクター106−1及びスクリーン106−2は、仮想空間に配置されている地球502、地球502の磁力線503、太陽504を表示する。
【0048】
第二実施例では、図6に示されるように仮想空間に磁力線503が生じており、各電子は一定速度v0で動き続けるように設定されている。そのため、電子501−1及び電子501−2は磁力線503にフレミングの右手の法則による力を受け、その動きは磁力線503の回りを回転する動きに限定されてしまう。磁力線に沿った動きに運動エネルギーを持っていても、地球に近づくほど磁力が大きくなるように設定されており、磁力線に対し垂直方向の運動エネルギーが磁力の増大により大きくなるため、ある程度地球に近づいても、磁力線に水平方向の運動エネルギーはいずれ0になり、跳ね返ってもどってくる。図7は、第二実施例における電子の動きの特徴を表す図である。図7は、図6に示される位置からユーザ601−1及びユーザ601−2が矢印の方向に移動した場合の映像の例を表す図である。
【0049】
ユーザ601−1が磁力線503に沿わない動きをした場合、電子501−1の動きは以下のようになる。ユーザ601−1の位置(実位置)に応じて電子501−1の位置(仮想位置)が取得される。仮想位置は、ユーザ601−1の移動に伴って図6の電子501−1の位置から右方向に移動した位置となる。しかし、現象演算部103による演算の結果、電子501−1は磁力線503から離れようとしても、フレミングの右手の法則により、磁力線503の回りを回転する力に変換されてしまうため、仮想位置には移動することが出来ず磁力線503の回りを回転し続ける。もしユーザ601−1の移動に伴って電子501−1が磁力線503を離れたとしても、電子501−1はすぐに磁力線503上に戻る。この電子501−1はこの時点でユーザの制御を離れてしまうため制御不能状態となる。よって、時間Tr後にユーザ601−1に対応する位置で電子が再生成され、電子501−1は時間T0だけ運動を続けた後、消去される。
【0050】
ユーザ601−2が磁力線503に沿った動きをした場合、電子501−2の動きは以下のようになる。ユーザ601−2の位置(実位置)に応じて電子501−2の位置(仮想位置)が取得される。仮想位置は、ユーザ601−2の移動(ジャンプ)に伴って図6の電子501−2の位置から上方向に移動した位置となる。現象演算部103による演算の結果、電子501−2は磁力線503による力を受けるものの、ユーザ601−2の移動が磁力線503に沿った移動であったため、仮想位置に移動する。その後、ユーザ601−2が着地するのに伴って電子501−2は図6に示される位置に戻る。
【0051】
図8は、ユーザが磁力線503に沿った方向に大きく動くことで、磁力線503方向に運動エネルギーFmを与えた場合の電子の動きを示している。電子は磁力線503の回りを回転しながら、磁力線503沿いに運動を行うが、地球502に近づくと磁力が増大することで、近づくことができず、跳ね返ってくる様子が示されている。
【0052】
図9は太陽風505が地球502に到来し、磁気圏が擾乱を受けていることが映像表示されている状態を示している。太陽504から、太陽風505が放射され、高エネルギーのプラズマが地球502に到来していることが表示される。この太陽風505の影響により、磁力線503は縮こまるなどの変化をし、電子が地球502により近づくことができるようになる。このような状態で図8と同様に磁力線503方向に電子を投下すると、今度は跳ね返らずに地球502にぶつかることとなる。現象演算部103は、電子の表示位置(u,v,w)が地球502の大気座標の条件を表す存在位置に侵入したことを検出すると、電子の表示を消去し、代わりに地球502にオーロラ506を発生させるように映像生成部104に指定する。この場合も、電子は制御不能状態になったものとして、映像生成部104はユーザの仮想空間座標に一定時間後に電子を再生させる。このようにしてユーザは再生成された電子を次々に地球502に向けて投下することができ、オーロラ発生のメカニズムについて体験することができる。
【0053】
図4におけるフローチャートでは、ステップS307において電子の位置が、地球大気座標の条件に電子の表示座標が含まれることを検出し、電子の表示を消去し、制御不能状態とし、地球上でオーロラを光らせる映像を作成し(S208)、映像を表示させる(S209)。
【0054】
このように構成された第一実施形態では、ユーザの位置に基づいて物体や粒子などの移動体の位置が特定され、移動体の位置に応じて他の物体や粒子との相互作用が演算される。そして、その演算結果に基づいて、物理現象を表す映像が生成され表示される。そのため、ユーザは、自身が移動することによって、物体や粒子などの移動体の位置を変化させ、その変化によって生じる物理現象を視覚的に確認することが可能となる。したがって、ユーザは、物理現象をより感覚的に把握することが可能となる。
【0055】
また、各種の物理定数の値をユーザが自由に変更できるように構成された場合、ユーザが物理定数を変化させることによって、各物理定数によってどのように物理現象に変化が生じるか実感することが可能となる。そのため、それぞれの物理定数についての理解を深めることが可能となる。
さらに、光の速度を20km/hのように現実よりも小さく設定した場合に、現象演算部103は、電子を動かしたときのそれぞれの電子から見た経過時間の違いを演算しても良い。この場合、映像生成部104は、演算結果の経過時間を映像に表示しても良い。また、電子半径や光子半径が現実よりも大きく設定された場合、現象演算部103は電子の存在確率のもやを演算しても良い。この場合、映像生成部104は、演算結果のもやを視覚的に映像として表現しても良い。この場合、下記のようにクーロン力が働かないように設定されることによって、二つの電子の存在確率を近づけることで、干渉縞が生じる様子を観察できる。
【0056】
実世界において生じる複数の力のうち、仮想空間において生じる力を選択できるように構成された場合、クーロン力だけが働くように選択することや、ローレンツ力だけが働くように選択すること等によって、それぞれの力が物理現象に与える影響について視覚的に理解を深めることが可能となる。
また、ユーザは物理現象表現システム100の入力部105を操作し太陽風の発生を指示することによって、オーロラという神秘的な物理現象が発生する過程を視覚的に確認することが可能となる。
【0057】
<変形例>
実位置検出部101は、実位置としてユーザの位置を検出するのではなく、予め設定された物体の位置を検出しても良い。物体の例としては、例えばユーザが身につける物(例えばリストバンド、帽子、モーションキャプチャー用のマーカー等)や、ユーザが携帯する物(携帯電話機、カバンなど)や、ユーザがその位置を操作できる物(ラジオコントロールカー、ラジオコントロールヘリコプター、移動型ロボット等)等がある。
【0058】
物理現象表現システム100は、携帯装置を備える様に構成されても良い。この場合、物理現象表現装置110は、携帯装置に対して所定の信号を送信する送信部を備える。送信部は、現象演算部103における演算結果が所定の条件を満たした場合、満たされた条件に応じた信号を携帯装置に対して送信する。携帯装置は、ユーザに携帯される装置である。携帯装置は、物理現象表現装置110から信号を受信すると、受信した信号に応じて動作する。例えば、携帯装置はジャイロを備えており、所定の信号を受信するとジャイロを動作させることによってユーザに対して体が引っ張られる感覚を体感させる。より具体的には、現象演算部103が移動体に対して生じる力が所定以上であると演算した場合に、送信部は力が生じる方向を表す信号を送信する。携帯装置は、信号が表す方向に力が生じるようにジャイロを制御しても良い。
【0059】
映像生成部104は、物理現象、物体、粒子、力、場のうち、ユーザによって指定されたもののみを可視化するように映像を生成しても良い。可視化の指定は、入力部105を介して行われる。例えば、磁場の動きだけを可視化したり、電磁波のみを可視化したりしても良い。このように構成されることによって、見たい現象のみに着目することが可能となる。また、電磁波のうち、可視化される周波数帯域を指定出来るように構成されても良い。このように構成されることによって、電磁波の伝搬の様子を容易に確認することが可能となる。
【0060】
[第二実施形態]
図10は、物理現象表現システムの第二実施形態(物理現象表現システム200)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム200は、複数の実位置検出部201−1〜201−N、物理現象表現装置210、複数の映像生成部204−1〜201−N、複数の映像表示部205−1〜205−Nを備える。実位置検出部201−n、映像生成部204−n、映像表示部205−n(nは1〜Nの整数)は、同じ場所に設置されている。すなわち、実位置検出部201−nが位置を検出するユーザは、映像生成部204−nによって生成された映像を、映像表示部205−n上で見ることが可能である。同じ場所に設置された実位置検出部201−n、映像生成部204−n、映像表示部205−nには同一の識別情報が割り当てられる。
【0061】
実位置検出部201−n及び映像生成部204−nは、有線又は無線の通信で物理現象表現装置210に接続される。
実位置検出部201−nは、それぞれが設置された付近を移動するユーザの位置を検出する。実位置検出部201−nは、検出した実位置を、自身に割り当てられた識別情報とともに物理現象表現装置210へ送信する。各実位置検出部201−nの構成は、物理現象表現装置210への送信処理を除けば、第一実施形態における実位置検出部101と同じである。
【0062】
物理現象表示装置210は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置210は、物理現象表現プログラムの実行により、仮想位置取得部202、現象演算部203を備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置210の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。
【0063】
仮想位置取得部202は、物理現象表示装置210に接続された複数の実位置検出部201−nによって検出された各実位置について仮想位置を取得する。仮想位置取得部202には、全ての実位置検出部201−nに共通した仮想座標系が設定されていても良いし、実位置検出部201−n毎に異なる仮想座標系が設定されていても良い。仮想位置取得部202は、各位置検出部201−nから受信した識別情報と仮想位置とを対応付けて現象演算部203に出力する。仮想位置取得部202が仮想位置を取得する処理は、第一実施形態における仮想位置取得部102と同じである。
【0064】
現象演算部203は、仮想位置取得部202から出力された各仮想位置に基づいて、仮想空間において生じる物理現象を演算する。現象演算部203が行う演算は、第一実施形態における現象演算部103と同じである。現象演算部203は、演算の結果を各映像生成部204−nに送信する。送信される演算の結果には、各移動体の動きと、その移動体に対応する識別情報との組み合わせが含まれる。
【0065】
映像生成部204−nは、物理現象表示装置210から演算結果を受信する。映像生成部204−nは、演算結果に基づいて映像を生成する。映像生成部204−nには固有の座標系が予め設定されている。この座標系は、仮想位置取得部202において用いられる仮想座標系に対応する座標系である。映像生成部204−nは、受信した演算結果が表す仮想空間の映像を、予め設定された座標系に従って映像にする。このように予め設定された座標系で映像が生成されることによって、実位置検出部201−nによって検出されたユーザの位置に対応した位置に、正確に移動体を表示することが可能となる。
【0066】
映像生成部204−nは、自身の識別情報に対応する移動体を、他の移動体とは異なる態様で表示しても良い。例えば映像生成部204−nは、自身の識別情報に対応する移動体を、他の移動体よりも大きく表示しても良いし、他の移動体と異なる色で表示しても良いし、他の移動体と異なるパターンで点滅するように表示しても良い。
映像表示部205−nは、映像生成部204−nによって生成された映像を表示する。
【0067】
図11は、物理現象表現システム200の実施例を表す図である。図11では、二人のユーザ601−1及び601−2の位置に応じて、電子501−1及び電子501−2が表示されている。ユーザ601−1及びユーザ601−2とは異なる場所に設置された実位置検出部201−nも、他のユーザの位置を検出している。そのため、他のユーザに対応する移動体として、電子501−3、電子501−4、電子501−5が表示される。電子501−3、電子501−4、電子501−5は、それぞれに対応するユーザの位置に応じてその位置が変化する。
【0068】
図12は、図11とは異なる場所に設置された映像表示部205−nによって表示される映像の具体例を表す図である。図12には、図11に示されたユーザとは異なるユーザ601−3と、ユーザ601−3に対応する電子(移動体)501−5の映像が図示されている。図11の映像を生成する映像生成部204−nと、図12に映像を生成する映像生成部204−n’(n’は1〜Nの整数、nとn’とは異なる値)とには、異なる座標系が設定されている。そのため、生成される映像において、地球や磁力線などが表示される位置が、図11と図12とで異なる。したがって、図11の場合は、ユーザ601−1及びユーザ601−2の側に、電子501−1及び電子501−2を表示することが可能となる。同様に、図12の場合は、ユーザ601−3の側に、電子501−5を表示することが可能となる。なお、図11及び図12の例では、座標系の原点の位置が異なるのみであるが、各座標系において尺度(倍率)が異なっても良いし、回転しても良い。
【0069】
第二実施形態では、多地点に設置された位置検出部201−nが物理現象表現装置210に通信可能に接続され、多地点で検出された実位置に基づいて仮想空間における物理現象が演算される。そのため、ユーザは仮想空間における世界の広がりを体験することが可能となる。また、異なる地点から異なる仮想空間上の位置を体験することが可能となり、物理現象への理解をより一層深めることが可能となる。例えば、各ユーザの場所における座標系を変えることによって、各ユーザの仮想空間における場所を、地球の夜明け側、日没側、磁気圏尾部などのように様々な固有の場所に設定することができる。そのため、様々な固有の場所とのつながりを作成することが可能となる。すなわち、様々な固有の場所における物理現象を体験でき、ユーザの理解を深めることが可能となる。
また、第二実施形態では、第一実施形態と同様の効果を得ることも可能である。
【0070】
<変形例>
図13は、物理現象表現システム200の変形例における実施例を表す図である。物理現象表現システム200の変形例では、実位置検出部201−nが位置検出の対象としているユーザの画像を撮像する撮像装置が備えられる。各撮像装置は、撮像した映像を物理現象表現装置210に対して送信する。物理現象表現装置210は、現象演算部203による演算結果とともに、各撮像装置から受信した映像を各映像生成部104−nに送信する。映像生成部204−nは、他の場所のユーザに対応する移動体の映像とともに、そのユーザの映像(以下、「サブ映像」という。)を重ね合わせる。図13では、他の場所のユーザに対応する映像として、サブ映像602−1と、サブ映像602−2が表示されている。また、サブ映像のみを表示し、移動体の映像を表示しなくとも良い。
また、物理現象表現システム200は、第一実施形態における物理現象表現システム100と同様に変形して構成されても良い。
【0071】
[第三実施形態]
図14は、物理現象表現システムの第三実施形態(物理現象表現システム300)の構成を表す構成図である。物理現象表現システム300は、複数の物理現象表現装置310−1〜310−Nと、映像表示部305−1〜305−Nを備える。物理現象表現装置310−n及び映像表示部305−n(nは1〜Nの整数)は、同じ場所に設置されている。各物理現象表現装置310−1〜310−Nは、それぞれ異なる場所に設置されており、互いに通信可能に接続されている。
【0072】
物理現象表示装置310−n(nは1〜Nの整数)は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、物理現象表現プログラムを実行する。物理現象表現装置310−nは、物理現象表現プログラムの実行により、実位置検出部301−n、遅延部306−n、仮想位置取得部302−n、現象演算部303−n、映像生成部304−nを備える装置として機能する。なお、物理現象表現装置310−nの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。
【0073】
実位置検出部301−n、現象演算部303−n、映像生成部304−n、映像表示部305−nは、それぞれ第一実施形態における実位置検出部101、現象演算部103、映像生成部104、映像表示部106と同じ構成である。
【0074】
遅延部306−nは、実位置検出部301−nから出力された実位置の情報に遅延を付与して各物理現象表現装置310−nへ送信する。例えば、遅延部306−i(iは1〜Nの整数)が物理現象表現装置310−j(jは1〜Nの整数)へ実位置の情報を送信する場合、予め設定された遅延時間Tijを付与して送信する。具体的には、遅延部306−iは、実位置検出部301−iから出力された実位置の情報を一時的に記憶し、遅延時間Tijの時間が経過してから物理現象表現装置310−jへ実位置の情報を送信する。遅延時間Tijは、物理現象表現装置310−iが設置された場所と、物理現象表現装置310−jが設置された場所との実際の距離に応じて設定されても良い。すなわち、この距離が短いほど小さい遅延時間Tijが設定され、この距離が大きいほど大きい遅延時間Tijが設定されても良い。また、TijとTjiとは同じ値が設定されても良いし、異なる値が設定されても良い。また、全ての遅延時間に同じ値が設定されても良い。
【0075】
仮想位置取得部302−nは、各遅延部306−1〜306−Nから実位置の情報を受信し、各時点において受信している実位置に対応する仮想位置を取得する。仮想位置取得部302−nが実位置に対応する仮想位置を取得する処理は、第一実施形態における仮想位置取得部102と同じである。
【0076】
このように構成された第三実施形態では、各地点におけるユーザの移動は、所定の遅延時間が経過した後に、他の地点に設置された物理現象表現装置310に入力される。そのため、映像表示部305によって表示される映像では、他の地点におけるユーザの移動が所定の遅延時間経過後に反映される。したがって、仮想空間上での距離感をユーザが体感することが可能となる。例えば、地点iと地点jとの間の遅延時間Tijとして24時間が設定されると、地点iのユーザは1日前の地点jの情報を見ることとなる。このようにして、仮想空間内での地点jから地点iまでの光の伝搬距離を模擬することが可能であり、広大な仮想空間をユーザが体感することが可能となる。このとき、遅延時間の設定を、光の速度の設定値と連動させることで、光の速度が遅いほど、仮想空間中で遠くに設定した映像が昔の映像になることを確認することも可能となる。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
100,200,300…物理現象表現システム, 110,210,310…物理現象表現装置, 101,201−1〜201−N,301−1〜301−N…実位置検出部, 102,202,302−1〜302−N…仮想位置取得部, 103,203,303−1〜303−N…現象演算部, 104,204−1〜204−N,304−1〜304−N…映像生成部, 105…入力部, 106,205−1〜205−N,305−1〜305−N…映像表示部, 106−1…プロジェクター, 106−2…スクリーン, 501−1〜501−5…電子, 502…地球, 503…磁力線, 504…太陽, 505…太陽風, 506…オーロラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、
検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、
予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、
前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、
を備える物理現象表現装置。
【請求項2】
前記現象演算部は、前記仮想空間において働く力としてユーザによって指定された力のみが働くものとして前記物理現象を演算する、請求項1に記載の物理現象表現装置。
【請求項3】
前記現象演算部は、ユーザによって物理定数の変更が指定された場合、変更後の前記物理定数を用いて前記物理現象を演算する、請求項1又は2に記載の物理現象表現装置。
【請求項4】
前記映像生成部は、ユーザによって選択された可視化対象のみを可視化するように映像を生成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物理現象表現装置。
【請求項5】
複数の異なる場所毎に設置された実位置検出部、映像生成部及び映像表示部と、仮想位置取得部及び現象演算部と、を備える物理現象表現システムであって、
前記実位置検出部は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出し、
前記仮想位置取得部は、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、実空間の位置毎に取得し、
前記現象演算部は、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算し、
前記映像生成部は、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成し、
前記映像表示部は、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する、物理現象表現システム。
【請求項6】
異なる場所毎に設置された複数の物理現象表現装置を備える物理現象表現システムであって、
前記物理現象表現装置は、
自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、
前記実位置検出部の検出結果を、他の物理現象装置に対して遅延を与えて送信する遅延部と、
検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、他の物理現象装置から受信した前記検出結果及び自装置における検出結果のそれぞれの実空間の位置毎に取得する仮想位置取得部と、
予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、
前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成する映像生成部と、
自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する映像表示部と、
を備える物理現象表現システム。
【請求項7】
前記遅延部は、自身が設置された場所と、送信先の前記物理現象表現装置が設置された場所とに応じて決定される遅延を与えて前記検出結果を送信する、請求項6に記載の物理現象表現システム。
【請求項8】
一の物理現象表現装置が他の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延は、前記他の物理現象装置が前記一の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延と等しい、請求項6又は請求項7に記載の物理現象表現システム。
【請求項1】
ユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、
検出された位置に基づいて、仮想空間内の位置を取得する仮想位置取得部と、
予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、
前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を生成する映像生成部と、
を備える物理現象表現装置。
【請求項2】
前記現象演算部は、前記仮想空間において働く力としてユーザによって指定された力のみが働くものとして前記物理現象を演算する、請求項1に記載の物理現象表現装置。
【請求項3】
前記現象演算部は、ユーザによって物理定数の変更が指定された場合、変更後の前記物理定数を用いて前記物理現象を演算する、請求項1又は2に記載の物理現象表現装置。
【請求項4】
前記映像生成部は、ユーザによって選択された可視化対象のみを可視化するように映像を生成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物理現象表現装置。
【請求項5】
複数の異なる場所毎に設置された実位置検出部、映像生成部及び映像表示部と、仮想位置取得部及び現象演算部と、を備える物理現象表現システムであって、
前記実位置検出部は、自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出し、
前記仮想位置取得部は、検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、実空間の位置毎に取得し、
前記現象演算部は、予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算し、
前記映像生成部は、前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成し、
前記映像表示部は、自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する、物理現象表現システム。
【請求項6】
異なる場所毎に設置された複数の物理現象表現装置を備える物理現象表現システムであって、
前記物理現象表現装置は、
自身が設置された場所に位置するユーザによって指示された実空間の位置を検出する実位置検出部と、
前記実位置検出部の検出結果を、他の物理現象装置に対して遅延を与えて送信する遅延部と、
検出された位置に応じた仮想空間内の位置を、他の物理現象装置から受信した前記検出結果及び自装置における検出結果のそれぞれの実空間の位置毎に取得する仮想位置取得部と、
予め設定された前記仮想空間内の条件に基づいて、前記仮想位置取得部によって取得された各位置に物体又は粒子が存在した場合に生じる物理現象を演算する現象演算部と、
前記現象演算部による演算結果に基づいて、前記物理現象が生じた仮想空間の状態を表す映像を、自身が設置された場所に応じて生成する映像生成部と、
自身が設置された場所と同じ場所に設置された前記映像生成部によって生成された映像を表示する映像表示部と、
を備える物理現象表現システム。
【請求項7】
前記遅延部は、自身が設置された場所と、送信先の前記物理現象表現装置が設置された場所とに応じて決定される遅延を与えて前記検出結果を送信する、請求項6に記載の物理現象表現システム。
【請求項8】
一の物理現象表現装置が他の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延は、前記他の物理現象装置が前記一の物理現象表現装置に対して前記検出結果を送信する際に与える遅延と等しい、請求項6又は請求項7に記載の物理現象表現システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−226650(P2012−226650A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95040(P2011−95040)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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