説明

物理量センサ

【課題】意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまうことを防止することができる物理量センサを提供することにある。
【解決手段】物理量センサ1は、通常モードと調整モードのいずれかの動作モードで動作する。物理量センサ1は、通常モードでは、検出部11の検出出力を記憶部12の補正値を用いて補正して出力端子10bより出力し、調整モードでは、記憶部12の補正値を通信部14が外部装置より受け取った補正値に書き換える。物理量センサ1は、外部装置の要求に応じて、通常モードと調整モードのいずれの動作モードで動作するかを決定し、そのための構成として判別部15を備えている。そして、判別部15は、電源端子10aと出力端子10bの両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となることを、外部装置が調整モードを要求していると判断する際の条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物理量を検出することができる物理量センサが提供されている。この種の物理量センサとしては、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、荷重センサ、磁気センサなどが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1に示すものは、圧力センサ要素(pressure sensorelement)の出力を調整する信号処理装置(signal processor)を備えている。信号処理装置は、データ記憶装置(data storage device)に記憶された調整データ(calibrationdata)を用いて、圧力センサ要素の出力の調整を行う。このものでは、動作モードを調整モード(calibrationmode)に切り替えることで、データ記憶装置に調整データを書き込むことができる。そして、調整モードへの切り替えは、出力端子(output terminal)に、外部調整信号(externalcalibration signal)を与えることによって行うことができるようになっている。
【0004】
そのため、特許文献1に示すものでは、調整用の端子が不要であり、給電、出力、接地の3つの端子のみで、出力特性の調整等を行うことができる。
【特許文献1】米国特許第5805466号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すものでは、出力端子に、外部調整信号が与えられた際に、動作モードが調整モードに切り替えられる。そのため、輸送中や、組み込み中、使用中などに出力端子に電流が流れた際には、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わり、その結果、データ記憶装置に調整データが勝手に書き込まれたり、書き換えられたりして、出力特性が意図せずに変更されてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまうことを防止することができる物理量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、電源端子、出力端子、および接地端子を有し少なくとも電源端子と出力端子が外部装置に接続される端子部と、所定の物理量を検出する検出部と、特性情報を記憶する記憶部と、検出部の検出出力を出力端子より出力する出力部と、出力端子を通じて外部装置とシリアル通信する通信部と、外部装置が要求している動作モードを判別する判別部と、判別部の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を行う制御部とを備え、動作モードには、記憶部の特性情報を通信部が外部装置より受け取った特性情報に書き換える調整モードと、記憶部の特性情報の書き換えを許可しない通常モードとが含まれ、判別部は、電源端子と出力端子の両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となることを、外部装置が調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、電源端子または出力端子の一方のみを用いて動作モードの判別を行う場合に比べれば、動作モードの判別誤りが発生する確率を低減できる。したがって、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまうことを防止することができる。また、複数の物理量センサが外部装置の通信相手になる場合には、通信相手の出力端子の電位のみを異ならせることで、通信相手を特定することができる。そのため、通信データに識別用のIDを付加しなくても通信対象を特定することが可能になり、通信効率の向上を図ることができる。また、端子数を増やすことなく動作モードを切り替えることが可能になる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記判別部は、上記電源端子の電位が上記出力端子の電位以上であることを、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、上記判別部は、上記電源端子と上記出力端子のいずれか一方の電位が上記通常モード時とは異なる所定の状態となる前に、上記電源端子と上記出力端子のいずれか他方の電位が上記通常モード時とは異なる所定の状態となることを、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1〜3のうちいずれか1項の発明において、上記判別部は、上記条件を満たしている状態が所定時間継続された際に、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0015】
請求項5の発明では、請求項1〜4のうちいずれか1項の発明において、上記特性情報は、上記検出部の検出出力の補正値であり、上記出力部は、上記検出部の検出出力を上記記憶部に記憶された補正値を用いて補正して上記出力端子より出力することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、所望の出力特性を有する検出出力を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態の物理量センサ(以下、単に「センサ」と略称する)1は、図1に示すような物理量検出システムに利用される。
【0019】
図1に示す物理量検出システムは、例えば、電子制御装置(ElectronicControl Unit;ECU)による自動車のエンジン運転における電気的な制御に用いられる。この物理量検出システムは、2つのセンサ1と、外部装置であるECUよりなる管理装置2とで構成されている(ただし、図1では、一方のセンサ1のみを図示し、他方のセンサ1の図示を省略している)。このものでは、センサ1がスレーブ、管理装置2がマスタとして使用される。
【0020】
センサ1は、端子部(以下、スレーブ側端子部と称する)10と、検出部11と、記憶部12と、出力補正部(出力部)13と、通信部(以下、スレーブ側通信部と称する)14と、判別部15と、制御部(以下、スレーブ側制御部と称する)16とを備えている。なお、2つのセンサ1は、同一の物理量を検出するものであって、同一の筐体(図示せず)に収納されている(すなわち、モジュール化されている)。
【0021】
スレーブ側端子部10は、管理装置2との接続に使用される。スレーブ側端子部10は、電源端子10aと、出力端子10bと、接地端子10cとを備える3端子型のものである。
【0022】
電源端子10aは、センサ1に電力を供給するための端子である。電源端子10aを通じてセンサ1に供給された電力は、センサ1の各部を構成する電気部品等に供給される。なお、センサ1には、必要に応じて、電源端子10aを通じて得た電力を元にして所定の電圧を生成するための三端子レギュレータなどが設けられる。
【0023】
出力端子10bは、センサ1の検出出力を管理装置2に出力するための端子である。接地端子10cは、センサ1の電気回路に基準電位点を与えるための端子である。ここで、電源端子10aと出力端子10bとの間には、ダイオードD10が挿入されている。ダイオードD10は、アノードが出力端子10bに接続され、カソードが電源端子10aに接続されており、出力端子10bを静電気やサージから保護する役割を果たす。なお、電源端子10aと接地端子10cとの間には、電源ノイズや輻射ノイズなどの高周波ノイズ対策のために、バイパスコンデンサ(パスコン)が必要に応じて挿入される。
【0024】
検出部11は、所定の物理量を検出するためのものである。検出部11としては、例えば、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、荷重センサ、磁気センサなどの検出素子が挙げられる。このような検出部11は、例えば、物理量の検出値に応じた電位を有する信号(検出信号)を検出出力として出力する。
【0025】
記憶部12は、例えば、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリや、EEPROM、ヒューズ、OTPROMその他の電気的に書き込みが可能な記憶媒体)を備えている。この記憶部12には、センサ1に関する特性情報が書き込まれる。本実施形態において、特性情報は、検出部11の検出出力の補正(すなわち検出値の補正)に使用する補正値である。なお、上記特性情報は、センサ1の規格や、製品ID、クランプ電圧、その他種々のセンサ1に関する情報であってもよい。
【0026】
出力補正部13は、検出部11の検出出力を補正して出力する。より詳細には、出力補正部13は、検出部11より検出出力を得ると、検出出力より検出値を取得する。そして、出力補正部13は、取得した検出値を記憶部12に記憶された補正値を用いて補正する。そして、出力補正部13は、補正した検出値に応じた電位を有する信号を補正後の検出出力として出力端子10bに出力する。また、出力補正部13は、後述する通常モード時のみ動作する。
【0027】
本実施形態における出力補正部13は、検出出力の補正を行うにあたっては、取得した検出値に所定の加算値(オフセット値)を加算するオフセット処理と、オフセット処理後の値に所定の乗算値(ゲイン値)を乗算するゲイン処理とを行う。そのため、記憶部12に記憶された補正値には、上記オフセット値と上記ゲイン値とが含まれている。なお、上記オフセット値は正または負の値であり、上記ゲイン値は0を除く値である。
【0028】
上述したオフセット処理やゲイン処理は、例えば、検出部11が出力する検出出力の電位を所望の範囲内の値に設定することを目的として行われる。これは、センサ1の使用場所や使用状況によっては、検出出力の電位の大きさが、管理装置2で検出可能な大きさより大きくなって、正しい検出結果が得られない場合があるからである。この場合、出力補正部13によって検出出力を補正して、検出出力の大きさを管理装置2で検出可能な範囲内に収まるようにすることで、適切な検出結果を得ることが可能になる。また、出力補正部13の補正によって、部品等の特性にばらつきが原因で製品毎に検出出力の値の範囲が異なってしまうことを防止することができる。これによって、いずれの製品においても検出出力を所望の範囲内に収めることが可能となる。なお、出力補正部13は、上述のオフセット処理とゲイン処理に加えて、温度補正処理を実行するものであってもよく、さらに他の補正処理(例えば、検出出力の反転などの処理)を実行してもよいし、これら種々の処理を択一的に実行するものであってもよい。また、出力補正部13がどの処理を実行するかを、上述の特性情報に含めるようにしてもよい。さらに、出力補正部13は、検出部11の検出出力を補正した最終結果ではなく、その中間結果を出力端子10bに出力する機能を有していてもよい。このような出力補正部13の機能の切り替えは、上述の特性情報によって与えることができるようにしてもよい。
【0029】
スレーブ側通信部14は、記憶部12に記憶させる特性情報(補正値)を管理装置2から受け取るためのものである。このスレーブ側通信部14は、出力端子10bを利用して、管理装置2と有線による通信(シリアル通信)を行う。本実施形態では、スレーブ側通信部14は、主として、通信処理部14aと、スイッチQ10,Q11と、抵抗R10とを備えている。
【0030】
スイッチQ10は、nチャネルMOSFETであり、出力端子10bとグラウンド(基準電位点)との間に挿入されている。スイッチQ11は、pチャネルMOSFETであり、電源端子10aと出力端子10bとの間に挿入されている。抵抗R10は、スイッチQ10と出力端子10bとの間に挿入されている。なお、スイッチQ10,Q11としては、MOSFETなどの半導体スイッチング素子の他に、継電器等のオン・オフ制御が可能なスイッチを用いることができる。
【0031】
通信処理部14aは、管理装置2との間でシリアル信号の送受信を行うためのものである。通信処理部14aは、クロック回路と、判定回路とを有しており、これらを利用して、シリアル信号の受信処理(すなわちシリアル信号のビット列を識別する処理)を行う。上記判定回路は、コンパレータなどであって、出力端子10bの電位を信号受信用の閾値と比較することで、出力端子10bの電位がシリアル信号のハイレベルに対応する電位であるかロウレベルに対応する電位であるかを判定する。例えば、本実施形態では、信号受信用の閾値を10Vに設定してあり、上記判定回路は、出力端子10bの電位が10V超過であればシリアル信号がハイレベルと判定し、10V以下であればシリアル信号がロウレベルと判定する。
【0032】
また、通信処理部14aは、上記クロック回路を利用してスイッチQ10,Q11をオン・オフ制御することでシリアル信号の送信処理(送信するシリアル信号のビット列に応じて出力端子10bの電位を変化させる処理)を行う。このような通信処理部14aは、例えば、論理回路や、マイクロコンピュータ(マイクロコントローラ、略称としてマイコン、広義にはCPUとも称される)などを利用して構成されている。
【0033】
スレーブ側制御部16は、センサ1の全体的な制御を行う制御装置である。このようなスレーブ側制御部16は、例えば、マイクロコンピュータを備え、メモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより種々の機能を実現する。なお、スレーブ側制御部16は、スレーブ側通信部14の通信処理部14aと一体に構成されていてもよい。
【0034】
本実施形態において、スレーブ側制御部16は、通常モードと調整モードとの2種類の動作モードを有している(すなわち、センサ1は通常モードと調整モードのいずれか一方の動作モードで動作する)。
【0035】
調整モードでは、スレーブ側制御部16は、検出部11および出力補正部13の駆動を停止し、スレーブ側通信部14を駆動する。これによって、検出出力の出力を行わないようにし、また管理装置2とのシリアル通信を可能とする。そして、管理装置2とのシリアル通信によって補正値を取得すると、スレーブ側制御部16は、記憶部12の補正値を管理装置2より取得した補正値に書き換える処理を行う。書き換えが終了すると、スレーブ側制御部16は、スレーブ側通信部14を制御して、書き換え後の記憶部12の補正値を管理装置2に送信させる。すなわち、調整モードは、検出出力の出力を行わないが、記憶部12の補正値の書き換えは可能とするモードである。
【0036】
一方、通常モードでは、スレーブ側制御部16は、検出部11および出力補正部13を駆動し、スレーブ側通信部14の駆動を停止する。これによって、検出出力(出力補正部13で補正された検出出力)を出力端子10bに出力可能とし、また管理装置2とシリアル通信を行わないようにする。すなわち、通常モードは、検出出力の出力を行うが、記憶部12の補正値の書き換えは禁止するモードである。
【0037】
スレーブ側制御部16が調整モードと通常モードのいずれの動作モードで動作するかは、管理装置2の要求に応じて決定される。
【0038】
判別部15は、管理装置2がいずれの動作モードを要求しているかを判別するためのものであり、その判別結果をスレーブ側制御部16に通知する。よって、スレーブ側制御部16は、判別部15の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を実行する。
【0039】
本実施形態では、判別部15は、2つの過電圧検出部15a,15bと、比較部15cと、論理積回路部15dと、タイマ回路部15eとを備えている。
【0040】
一方の過電圧検出部15aは、出力端子10bの電位が所定の電圧を越えているか否かを検出する。過電圧検出部15aは、検出した出力端子10bの電位が6Vを越えていればハイレベル、6V以下であればロウレベルの信号を論理積回路部15dに出力する。他方の過電圧検出部15bは、電源端子10aの電位が所定の電圧を越えているか否かを検出する。過電圧検出部15bは、検出した電源端子10aの電位が6Vを越えていればハイレベル、6V以下であればロウレベルの信号を論理積回路部15dに出力する。これら過電圧検出部15a,15bはコンパレータなどを用いて実現可能であるから詳細な説明は省略する。
【0041】
比較部15cは、電源端子10aの電位と出力端子10bの電位を比較する。比較部15cは、電源端子10aの電位が出力端子10bの電位以上であればハイレベル、電源端子10aの電位が出力端子10bの電位未満であればロウレベルの信号を論理積回路部15dに出力する。このような比較部15cは、電源端子10aおよび出力端子10bの電位をそれぞれ分圧する分圧回路や、分圧回路で得られる分圧電圧を比較する比較回路などを用いて構成されている。
【0042】
論理積回路部15dは、AND回路である。論理積回路部15dには、2つの過電圧検出部15a,15bの出力と、比較部15cの出力とが入力される。そのため、論理積回路部15dは、過電圧検出部15aが出力する信号と、過電圧検出部15bが出力する信号と、比較部15cが出力する信号とが全てハイレベルであるときに、ハイレベルの信号をスレーブ側制御部16に出力する。一方、論理積回路部15dは、過電圧検出部15aが出力する信号と、過電圧検出部15bが出力する信号と、比較部15cが出力する信号との少なくとも1つがロウレベルであるときには、ロウレベルの信号をタイマ回路部15eに出力する。
【0043】
タイマ回路部15eは、論理積回路部15dの出力信号を監視する。タイマ回路部15eは、論理積回路部15dの出力信号がハイレベルである期間が、所定時間継続されると、スレーブ側制御部16にハイレベルの信号を出力する。それ以外の場合では、タイマ回路部15eは、スレーブ側制御部16にロウレベルの信号を出力する。
【0044】
そして、スレーブ側制御部16は、タイマ回路部15eからハイレベルの信号を受け取った際(すなわち、判別部15からハイレベルの信号を受け取った際)に、動作モードを調整モードに設定する。一方、スレーブ側制御部16は、タイマ回路部15eからロウレベルの信号を受け取った際(すなわち、判別部15からロウレベルの信号を受け取った際)に、動作モードを通常モードに設定する。
【0045】
管理装置2は、主として、端子部(以下、マスタ側端子部と称する)20と、2つの電源部21a,21bと、通信回路部22と、制御部(以下、マスタ側制御部と称する)23とを備えている。また、管理装置2は、各部20〜23を構成する電気機器等を収納する筐体(図示せず)を備えている。
【0046】
マスタ側端子部20は、センサ1との接続に使用される。マスタ側端子部20は、給電端子20aと、入力端子20bと、接地端子20cとを備える3端子型のものである。給電端子20aは、電源部21aからセンサ1に給電するための端子である。入力端子20bは、センサ1より検出出力を得るための端子である。入力端子20bは接続するセンサ1の数に応じた数だけ設けられる。本実施形態の場合、センサ1を2つ接続するために2つの入力端子20bが設けられているが、図1では図示を省略している。接地端子20cは、センサ1に基準電位点を与えるためのものであり、例えば車のボディ等に接続されている。したがって、センサ1は、電源端子10aを給電端子20aに電線(給電線)L1で、出力端子10bを入力端子20bに電線(出力線)L2で、接地端子10cを接地端子20cに電線(接地線)L3でそれぞれ接続することによって、管理装置2に接続される。なお、図1に示す例では、センサ1の接地端子10cは、必ずしも管理装置2の接地端子20cに接続する必要はなく、基準電位点を与えることができるものに接続されていればよい。
【0047】
2つの電源部21a,21bは、出力電圧を変更することができる可変型の電源である。一方の電源部(以下、必要に応じて第1の電源部と称する)21aは、給電端子20aに接続され、他方の電源部(以下、必要に応じて第2の電源部と称する)21bは、入力端子20bに接続されている。このような電源部21a,21bは、例えば、自動車に搭載されたバッテリや、バッテリの直流電圧を所定電圧に降圧可能な回路(降圧チョッパ回路やバンドギャップリファレンス回路)などを用いて構成されている。本実施形態において、各電源部21a,21bは、出力電圧として5Vと12Vとを択一的に選択することができるようになっている。このような電源部21a,21bは従来周知のものを採用することができるから詳細な説明は省略する。また、電源部21a,21bは、出力電圧を変えるための回路を備えているが、出力電圧が異なる2つの電源(本実施形態の場合は、12Vの電源と5Vの電源)よりなるものであってもよい。
【0048】
通信回路部22は、センサ1(センサ1のスレーブ側通信部14)と有線による通信(シリアル通信)を行うために使用される。通信回路部22は、2つのスイッチQ20,Q21と、2つの抵抗R20,R21とで構成されている。一方のスイッチQ20は、nチャネルMOSFETであり、入力端子20aとグラウンドとの間に挿入されている。また、スイッチQ20と入力端子20aとの間には抵抗R20が挿入されている。他方のスイッチQ21は、pチャネルMOSFETであり、入力端子20aと第2の電源部21bとの間に挿入されている。また、スイッチQ21には、抵抗R21が並列接続されている。
【0049】
マスタ側制御部23は、管理装置2の全体的な制御を行う制御装置である。このようなマスタ側制御部23は、例えば、マイクロコンピュータを備え、メモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより種々の機能を実現する。
【0050】
本実施形態におけるマスタ側制御部23は、図示しない入出力部からの指示に応じて、センサ1に動作モードの切り替えを要求する機能を有している。マスタ側制御部23は、上記入出力部より動作モードを通常モードに設定する旨の指示を受けた場合には、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を5Vに設定し、かつスイッチQ21をオフに設定する。一方、マスタ側制御部23は、動作モードを調整モードに設定する旨の指示を受けた場合には、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を12Vに設定し、かつスイッチQ21をオフに設定する。なお、上記入出力部は、ユーザが情報を入力するための操作ボタンなどの入力部と、ユーザに情報を提示するための画像表示装置などの出力部とを備えたユーザインタフェースであり、管理装置2と一体に、または別体に設けられる。
【0051】
また、マスタ側制御部23は、調整モード時には、通信回路部22とともに、スレーブ側通信部14との間でシリアル信号の送受信を行うマスタ側通信部を構成する。すなわち、マスタ側制御部23は、通信処理部14aと同様に、クロック回路と、判定回路とを有しており、これらを利用して、シリアル信号の受信処理(すなわちシリアル信号のビット列を識別する処理)を行う。マスタ側制御部23の判定回路は、通信処理部14aの判定回路と同様に、コンパレータなどであって、入力端子20bの電位(すなわち出力端子10bの電位)を信号受信用の閾値と比較することで、入力端子20bの電位がシリアル信号のハイレベルに対応する電位であるかロウレベルに対応する電位であるかを判定する。例えば、本実施形態では、信号受信用の閾値を10Vに設定してあり、マスタ側制御部23の判定回路は、入力端子20bの電位が10V超過であればシリアル信号がハイレベルと判定し、10V以下であればシリアル信号がロウレベルと判定する。
【0052】
一方、マスタ側制御部23は、上記クロック回路を利用してスイッチQ20,Q21をオン・オフ制御することでシリアル信号の送信処理(送信するシリアル信号のビット列に応じて入力端子20bの電位を変化させる処理)を行う。たとえば、シリアル信号をハイレベルに設定する際には、マスタ側制御部23は、スイッチQ20をオフ、スイッチQ21をオンに設定する。これによって、入力端子20bには、第2の電源部21bの出力電圧に等しい電位が与えられる(実際には、スイッチQ21のオン抵抗による電圧降下がある)。調整モード時には、第2の電源部21bの電位が12Vに設定されるから、入力端子20bの電位は12Vととなり、これは通信処理部14aの判定回路の信号受信用の閾値を越える値である。また、シリアル信号をロウレベルに設定する際には、マスタ側制御部23は、スイッチQ20をオン、スイッチQ21をオフに設定する。これによって、入力端子20bには、第2の電源部21bの出力電圧を抵抗R20,R21で分圧した電圧に等しい電位が与えられる。ここで、抵抗R20,R21の抵抗値は、第2の電源部21bの出力電圧(調整モード時は12V)を、通信処理部14aの判定回路の信号受信用の閾値を下回る値(例えば9V)に分圧可能な大きさに設定されている。
【0053】
ここで、スレーブ側通信部14における通信処理部14aの送信処理について説明する。通信処理部14aは、シリアル信号をハイレベルに設定する際には、スイッチQ10をオフ、スイッチQ11をオンに設定する。これによって、出力端子10bと電源端子10aとがスイッチQ11によって短絡される。その結果、出力端子10bには、第1の電源部21aの出力電圧に等しい電位が与えられる。ここで、スイッチQ11のオン抵抗による電圧降下があるから、出力端子10bの電位は電源端子10aの電位より僅かに低くなる。そのため、比較部15cの出力信号はハイレベルのままである。
調整モード時には、第1の電源部21aの電位が12Vに設定されるから、出力端子10bの電位は12Vととなり、これはマスタ側制御部23の判定回路の信号受信用の閾値を越える値である。また、通信処理部14aは、シリアル信号をロウレベルに設定する際には、スイッチQ10をオン、スイッチQ11をオフに設定する。これによって、出力端子10bには、第2の電源部21bの出力電圧を抵抗R10,R21で分圧した電圧に等しい電位が与えられる。ここで、抵抗R10の抵抗値は、第2の電源部21bの出力電圧(調整モード時は12V)を、マスタ側制御部23の判定回路の信号受信用の閾値を下回る値(例えば9V)に分圧可能な大きさに設定されている。
【0054】
マスタ側制御部23は、上述したように通信回路部22を制御して、上記入出力部を用いてユーザが入力した補正値をセンサ1に送信する機能を有する。このとき、マスタ側制御部23は、センサ1に補正値を送信してから所定時間以内にセンサ1からの応答(センサ1における更新後の補正値)が得られれば、補正値の更新が成功したと判断し、その旨を上記入出力部により使用者に通知する。また、マスタ側制御部23は、上記所定時間以内に、センサ1からの応答(センサ1における更新後の補正値)が得られなかったとき、あるいは、得られたがその補正値がセンサ1に送信した補正値と一致しなかったときに、補正値の更新が失敗したと判断し、その旨を上記入出力部により使用者に通知する。
【0055】
さらに、マスタ側制御部23は、入力端子20bに入力された検出出力を上記入出力部に出力して、上記入出力部にセンサ1の検出出力を表示させる機能を有する。ただし、この機能による動作(上記入出力部にセンサ1の検出出力を表示させる動作)は、通常モード時のみに行われ、調整モード時には行われない。また、マスタ側制御部23は、2つのセンサ1の検出出力を比較して、2つのセンサ1の一方の異常が発生しているか否かを判定する機能を有している。これによって、信頼性の高い検出結果を得ることができる。この他、マスタ側制御部23は、入力端子20bに入力された検出出力に応じて種々の制御を実行する機能を有する。
【0056】
以下、センサ1と管理装置2により構築された物理量検出システムの動作について説明する。
【0057】
まず、初期状態では、センサ1が通常モードであるとする。この初期状態では、管理装置2のマスタ側制御部23は、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を5Vに設定するとともに、スイッチQ21をオフとする。この場合、センサ1の電源端子10aには、5Vの電位が与えられるから、過電圧検出部15aはロウレベルの信号を出力する。また、センサ1の出力端子10bは、抵抗R21を介して電源部21bに接続されているから、センサ1の出力端子10bの電位は、電源部21bの出力電圧(5V)に、抵抗R21でプルアップされる。そのため、出力補正部13の出力値(本実施形態では5V)以下となる。よって、過電圧検出部15bはロウレベルの信号を出力する。そのため、論理積回路部15dからはロウレベルの信号が出力され、タイマ回路部15eからもロウレベルの信号が出力される。すなわち、判別部15は、管理装置2が通常モードを要求していると判断する。その結果、スレーブ側制御部16は動作モードを通常モードに設定する。よって、センサ1は、記憶部12に記憶されている補正値で検出部11の検出出力を補正して得られた検出出力(補正後の検出出力)を出力端子10bに出力する。出力端子10bに出力された補正後の検出出力は、入力端子20bに入力され、マスタ側制御部23によって上記入出力部に送られ、ユーザに提示される。
【0058】
一方、上記入出力部によって調整モードが選択されると、マスタ側制御部23は、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を12Vに設定するとともに、スイッチQ21をオフとする。この場合、センサ1の電源端子10aには、12Vの電位が与えられるから、過電圧検出部15aはハイレベルの信号を出力する。また、センサ1の出力端子10bの電位は、電源部21bの出力電圧(12V)に、抵抗R21でプルアップされている。このときの出力端子10bの電位は10Vを越えるように設定されており、過電圧検出部15bはハイレベルの信号を出力する。さらに、このときには、電源端子10aの電位が出力端子10bの電位以上となるから、比較部15cはハイレベルの信号を出力する。そのため、論理積回路部15dは、ハイレベルの信号を出力し、論理積回路部15dの出力信号がハイレベルである期間が所定時間継続されると、タイマ回路部15eは、スレーブ側制御部16にハイレベルの信号を出力する。
【0059】
すなわち、判別部15は、電源端子10aと出力端子10bの両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となる(6Vを越える)ことを、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件としている。また、判別部15は、電源端子10aの電位が出力端子10bの電位以上であることも、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件としている。そして、判別部15は、上記条件のすべてを満たしている状態が所定時間継続された際に、管理装置2が調整モードを要求していると判断し、その判断結果を、スレーブ側制御部16に与える。
【0060】
上述したように判断部15からハイレベルの信号が出力されるため、スレーブ側制御部16は動作モードを調整モードに設定する。よって、スレーブ側通信部14が駆動されて、管理装置2とのシリアル通信が可能になる。そして、使用者が上記入出力部を用いて補正値の入力を行うと、マスタ側制御部23は、入力された補正値をセンサ1に送信する。
【0061】
マスタ側通信部22は、上述したように、スイッチQ20,Q21を制御することで、電源端子10aの電位を調整し、これによって、シリアル信号の送信を行う。たとえば、マスタ側制御部23は、シリアル信号を送信するにあたっては、スタートビットを送信し、その後に補正値を示す補正値データの送信を行う。補正値データの送信後、マスタ側制御部23は、ストップビットを送信してセンサ1に送信を終えたことを通知する。
【0062】
スレーブ側制御部16は、スレーブ側通信部14でシリアル信号を受信すると、シリアル信号から補正値を得て、記憶部12の補正値を、管理装置2より得た補正値に書き換える。書き換えが終了すると、スレーブ側制御部16は、スレーブ側通信部14を制御して、書き換え後の記憶部12の補正値を示す応答データを管理装置2に送信する。また、スレーブ側通信部14は、シリアル信号を送信するにあたっては、スタートビットを送信し、その後に応答データの送信を行う。応答データの送信後、スレーブ側制御部16は、ストップビットを送信して管理装置2に送信を終えたことを通知する。
【0063】
マスタ側制御部23は、センサ1からのシリアル信号を受信すると、その応答データの補正値が、センサ1に送信した補正値データの補正値と等しいかどうかを確認し、等しければ、補正値の更新が成功したと判断し、等しくなければ、補正値の更新が失敗したと判断する。この判断結果は、上記入出力部によって使用者に通知される。
【0064】
この後に、上記入出力部によって通常モードが選択されると、マスタ側制御部23は、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を5Vに設定するとともに、スイッチQ21をオンとする。この場合、判別部15は、管理装置2が通常モードを要求していると判断するから、スレーブ側制御部16は動作モードを通常モードに設定する。
【0065】
以上述べたように、本実施形態のセンサ1では、判別部15は、電源端子10aと出力端子10bの両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となることを管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件としている。
【0066】
そのため、本実施形態のセンサ1によれば、電源端子10aまたは出力端子10bの一方のみを用いて動作モードの判別を行う場合に比べれば、動作モードの判別誤りが発生する確率を低減できる。したがって、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまうことを防止することができる。また、複数のセンサ1が管理装置2の通信相手になる場合には、通信相手の出力端子10bの電位のみを異ならせることで、通信相手を特定することができる。そのため、通信データに識別用のIDを付加しなくても通信対象を特定することが可能になり、通信効率の向上を図ることができる。また、端子数を増やすことなく動作モードを切り替えることが可能になる。
【0067】
本実施形態のセンサ1には、回路保護のために、電源端子10aと出力端子10bとの間にダイオードD10を挿入している。ここで、ダイオードD10のアノードは出力端子10bに、カソードは電源端子10aに接続されている。そのため、出力端子10bの電位が電源端子10aの電位よりも高くなると(電位差がダイオードD10のスレショルド電圧を越えると)、ダイオードD10を介して電源端子10aと出力端子10bが導通する。例えば、サージなどによって出力端子10bの電位が上昇した場合、ダイオードD10の導通により電源端子10aの電位までもが上昇することがある。このような場合には、意図せずに、電源端子10aと出力端子10bの両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態(本実施形態の場合は6V超過)となるおそれがある。
【0068】
そこで、本実施形態における判別部15は、出力端子10bの電位が電源端子10aの電位以下であることを、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件の1つとしている。そのため、単に、電源端子10aと出力端子10bの両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となっただけでは、動作モードが調整モードに切り替えられることがない。よって、ダイオードD10のような回路保護用の素子を設けた場合であっても、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0069】
また、判別部15は、上記条件を満たしている状態が所定時間継続された際に、管理装置2が調整モードを要求していると判断する。そのため、ノイズなどの影響によって意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性を低くすることができる。
【0070】
ところで、本実施形態のセンサ1では、上述したようにダイオードD10を備えている。そのため、管理装置2が2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を5Vから12Vに変更する際に、第1の電源部21aより先に第2の電源部21bの出力電圧が12Vになると、ダイオードD10によって電源端子10aと出力端子10bとが導通するおそれがある。例えば、電源端子10aの電位が5Vであるときに、出力端子10bの電位を12V、スイッチQ21をオフとしてしまうと、ダイオードD10によって電源端子10aと出力端子10bとが導通する。この場合には、出力端子10bの電位が、電源端子10aの電位よりダイオードD10のスレショルド電圧だけ高い値までしか上がらない。このとき、抵抗R21の抵抗値が小さいと、ダイオードD10に過大な電流が流れ、これは異常発熱の原因となってしまう。
【0071】
また、センサ1の回路要素としては、半導体スイッチング素子や、バルクに不純物を注入した拡散抵抗などの半導体素子を利用することができる。例えば、N型バルクにP型領域を形成してなるPNP型のバイポーラ・トランジスタや、PチャネルMOSFET、拡散抵抗などが挙げられる。ここで、半導体素子がN型バルクにP型領域を適宜形成してなるものである場合、使用時に、N型バルクを電源端子10aなどの電気回路中の最高電位に接続するのが一般的である。これは、P型領域とN型バルクとが導通してしまうことを防止するためである。
【0072】
しかしながら、本実施形態における管理装置2は、調整モードの要求時には、2つの電源部21a,21bそれぞれの出力電圧を5Vから12Vに変更する。このとき、第1の電源部21aより先に第2の電源部21bの出力電圧が12Vになると、半導体素子のP型領域とN型バルクとが導通し、その結果、過電流が流れたり、出力端子10bの電位をうまく設定することができなくなったりするおそれがある。
【0073】
したがって、管理装置2が2つの電源部21a,21bの出力電圧を変更する際には、第1の電源部21aの出力電圧と第2の電源部21bの出力電圧とが等しい状態を維持するか、第1の電源部21aの出力電圧が第2の電源部21bの出力電圧よりも高い状態を維持することが好ましい。
【0074】
そこで、管理装置2としては、調整モードの要求時に、第1の電源部21aの出力電圧を12Vに設定してから、第2の電源部21bの出力電圧を12Vに設定するものを採用することができる。
【0075】
このような管理装置2を採用する場合には、判別部15は、出力端子10bの電位が通常モード時とは異なる所定の状態(本実施形態では6V超過かどうか)となる前に、電源端子10aの電位が通常モード時とは異なる所定の状態(本実施形態では6V超過かどうか)となることを、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件とすることができる。このようにすれば、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0076】
なお、センサ1の構成によっては、出力端子10bの電位が電源端子10aの電位よりも高くなっても問題がないこと、あるいはそのほうが好適であることもあり得る。このような場合には、管理装置2としては、調整モードの要求時に、第2の電源部21bの出力電圧を12Vに設定してから、第1の電源部21aの出力電圧を12Vに設定するものを採用することができる。
【0077】
そして、このような管理装置2を採用する場合には、判別部15は、電源端子10aの電位が通常モード時とは異なる所定の状態となる前に、出力端子10bの電位が通常モード時とは異なる所定の状態となることを、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件とすることができる。このようにすれば、意図せずに動作モードが調整モードに切り替わってしまう可能性をより低くすることができる。
【0078】
すなわち、判別部15は、電源端子10aと出力端子10bのいずれか一方の電位が通常モード時とは異なる所定の状態となる前に、電源端子10aと出力端子10bのいずれか他方の電位が通常モード時とは異なる所定の状態となること(すなわち、電源端子10aと出力端子10bの電位変化の順番)を、管理装置2が調整モードを要求していると判断する際の条件とすることができる。
【0079】
なお、本実施形態のセンサ1では、少なくとも検出部11を除く部位は、モノリシックICにより構成されていてもよい。このようにすれば、センサ1の小型化を図ることができる。ここで、検出部11が、MEMS技術を利用した加速度センサであれば、検出部11もモノリシックICとして一体化することができる。また、検出部11が、ホール素子とその検出回路とからなる磁気センサである場合には、検出部11の検出回路をモノリシックICとして一体化してもよい。
【0080】
以上、本発明のセンサ1の実施形態について述べたが、上述のものは、あくまでも一実施形態に過ぎない。よって、本発明の技術的範囲は上記の例に限定されず、上述の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態の物理量センサを適用した物理量検出システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1 物理量センサ
2 管理装置(外部装置)
10 スレーブ側端子部(端子部)
10a 電源端子
10b 出力端子
10c 接地端子
11 検出部
12 記憶部
13 出力補正部(出力部)
14 スレーブ側通信部(通信部)
15 判別部
16 スレーブ側制御部(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子、出力端子、および接地端子を有し少なくとも電源端子と出力端子が外部装置に接続される端子部と、所定の物理量を検出する検出部と、特性情報を記憶する記憶部と、検出部の検出出力を出力端子より出力する出力部と、出力端子を通じて外部装置とシリアル通信する通信部と、外部装置が要求している動作モードを判別する判別部と、判別部の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を行う制御部とを備え、
動作モードには、記憶部の特性情報を通信部が外部装置より受け取った特性情報に書き換える調整モードと、記憶部の特性情報の書き換えを許可しない通常モードとが含まれ、
判別部は、電源端子と出力端子の両方の電位がそれぞれ通常モード時とは異なる所定の状態となることを、外部装置が調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
上記判別部は、上記電源端子の電位が上記出力端子の電位以上であることを、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする請求項1記載の物理量センサ。
【請求項3】
上記判別部は、上記電源端子と上記出力端子のいずれか一方の電位が上記通常モード時とは異なる所定の状態となる前に、上記電源端子と上記出力端子のいずれか他方の電位が上記通常モード時とは異なる所定の状態となることを、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断する際の条件とすることを特徴とする請求項1または2記載の物理量センサ。
【請求項4】
上記判別部は、上記条件を満たしている状態が所定時間継続された際に、上記外部装置が上記調整モードを要求していると判断することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の物理量センサ。
【請求項5】
上記特性情報は、上記検出部の検出出力の補正値であり、
上記出力部は、上記検出部の検出出力を上記記憶部に記憶された補正値を用いて補正して上記出力端子より出力することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の物理量センサ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−122185(P2010−122185A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298583(P2008−298583)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】